(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698311
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】転削インサート
(51)【国際特許分類】
B23C 5/20 20060101AFI20150319BHJP
【FI】
B23C5/20
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-128918(P2013-128918)
(22)【出願日】2013年6月19日
(62)【分割の表示】特願2006-69443(P2006-69443)の分割
【原出願日】2006年3月14日
(65)【公開番号】特開2013-176846(P2013-176846A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2013年6月19日
(31)【優先権主張番号】0500622-6
(32)【優先日】2005年3月16日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】507226695
【氏名又は名称】サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100133008
【弁理士】
【氏名又は名称】谷光 正晴
(72)【発明者】
【氏名】トード エングストローム
(72)【発明者】
【氏名】マグナス アストローム
【審査官】
山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許出願公開第01297922(EP,A1)
【文献】
特開平06−179111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/20,
B23B 27/14−27/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心(C)から間隔を開けて離れ、面を仕上げる第2の切れ刃(5)に移行するところのコーナで出会う一対の主切れ刃(4)を備え、前記第2の切れ刃(5)は、前記一対の主切れ刃(4)の間で前記コーナを規定する二等分線と交差し、個々の主切れ刃(4)の内側にはすくい面内の皿状底面(12)の方に傾斜している傾斜面(11)が形成された転削インサートにおいて、
前記底面(12)よりも高い位置にある頂面を有し、前記二等分線に沿って前記第2の切れ刃(5)から内側に延びると共に、前記第2の切れ刃(5)に接続する肩(15)を備え、前記第2の切れ刃(5)と活発に協働する前記主切れ刃(4)の前記傾斜面(11)が、前記肩(15)のところまで延びており、
前記肩(15)の前記頂面(16)の幅が、前記第2の切れ刃(5)から離れるに従い連続して増加し、続いて、前記肩(15)が前記第2の切れ刃(5)の中心(C)の方へ向かって内向きにテーパ形状となることによって、前記頂面(16)の幅が連続して減少することを特徴とする転削インサート。
【請求項2】
前記第2の切れ刃(5)の近傍にある前記肩(15)の幅が、前記第2の切れ刃(5)の長さと同等の長さである請求項1に記載の転削インサート。
【請求項3】
前記肩(15)の頂面(16)が、略平坦に傾斜する移行面(19,20,21)を介して前記すくい面(1)の周辺部分に移行する請求項1又は2に記載の転削インサート。
【請求項4】
前記主切れ刃(4)及び前記第2の切れ刃(5)が、突出している前記肩(15)と同等ないしはそれより低い共通の平面内に配置されている請求項1〜3の何れか1項に記載の転削インサート。
【請求項5】
個々の主切れ刃(4)に隣接している前記傾斜面(11)が、前記第2の切れ刃(5)の近傍に位置する二つの前記肩(15)の間で延びている請求項1〜4の何れか1項に記載の転削インサート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中心から間隔を開けて離れ、面を仕上げる第2の切れ刃に変化するコーナで出会う一対の主切れ刃を備え、第2の切れ刃は一対の主切れ刃の間でコーナを規定する二等分線に交差し、各主切れ刃の内側ですくい面の皿形状の底面の方へ傾斜する傾斜面が形成された転削インサートに関する。
【背景技術】
【0002】
上述した切削インサートは、正面フライスのための転削工具に使用されている。この適用に関し、切削インサートは、中心軸の回りを回転可能であるカッタボディの周方向で間隔を開けて配置される多数のポケット内で、インサート座に固定されている。被削材を加工中のボディは、回転と同時に、通常は中心軸に対して垂直である並進方向に送り動作する。これに関し、カッタの主切れ刃は、所望の切り込みで被削材から切り屑を除去するために、カッタボディの回転軸から半径方向外側に面している。一方、切削インサートの第2の切れ刃(通常は、当業者によってワイパ切れ刃と言われている)は、仕上げ面又は切り屑を除去した後の被削材に形成される略平面上で面を滑らかにする効果をもたらすために、平面内で配置され、外周の主切れ刃より内側に向けられている。異なる目的のために、ほとんどの場合フラットである切削インサートは、カッタボディに関して異なる角度で配置されることができる。したがって、個々の切削インサートは、単に軸方向だけでなく半径方向にも、回転軸に対する正の角度だけでなく、負の角度で傾斜、又は負の角度に倒して配置されることもできる。一般に、切削インサートは、小さい角度又は負の角度よりも大きいすくい角(軸方向の角度)で容易に又はより効果的に機能する。しかしながら、切削インサートの強度及び形状、例えば実施可能な逃げ角は、実施できる最大すくい角に制限を課す。
【0003】
本発明が解決しようとする問題は、正面フライスの切削インサートに関係している。切削を容易にする切削インサート、すなわち、最初に説明したタイプの正の幾何学形状を有する切削インサートは、カッタボディに大きいすくい角(>15°)で取り付けられることで、工具寿命があまりにも短くなる危険がある。特に、このような切削インサートは、コーナにおける第2の切れ刃又はワイパ切れ刃の近傍のすくい面の制限された部分と、主切れ刃の移行部とが、温度の高い切り屑によって剥がされることによって、連続して機械的な損傷を受ける。
【0004】
このような損傷が、それ自体制限されるならば、熱によって軟化する切り屑は、短時間で吸着し、内側にあるすくい面の領域をそれと共に引っ張る。このようにして、すくい面のジオメトリを決定する切削インサートの表面層の大きな部分を剥離する。当業者によると、このような損傷は”トップスライス破損”と称されている。このタイプの損傷は、特に、丸みのある大きな切れ刃を有し、加工される材料が大量の熱エネルギを生じるときに生じる。
【0005】
上記問題に対して想定される解決は、切削インサートの側面を平面形状に形成することである。このような方法で、切削インサートの第2の切れ刃が強くなり、切り屑の滑りと剪断に対する抵抗力を持つことができるようになる。しかしながら、このような切削インサートは、特に、頂部側に対する切り屑の接触長さがかなり大きくなるため、結果としての切削力の増加で、かなり悪い作用がもたらされる。
【0006】
(従来技術の更なる説明)
特許文献1により、フライス用の切削インサートは、従前から知られている。インサートは、面を仕上げる4つの第2の切れ刃の内の個々の切れ刃に隣接し、すくい面の周囲の部分よりも高い位置に配置されている平面を有している。しかしながら、このケースでは、個々の主切れ刃に隣接するポジの切削傾斜面が欠如している。したがって、すくい面の溝状又は波状部分が、コーナ面のすくい角より大きいネガのすくい角で主切れ刃から内側に延びている。
【0007】
特許文献2により、フライス用切削インサート、片削り用の正確には90゜のインサートが従前から知られている。切削インサートは、個々のコーナの近傍において、すくい面の残部に対して隆起している隆起部を備えている。隆起部は、ワイパ切れ刃からインサートの中心に延びている。しかしながら、このケースにおいて、ワイパ切れ刃と隆起部は、相互に出会う2つの主切れ刃の間の2等分線によって規定されるように、インサートの実際のコーナを形成する曲線切れ刃部分に対して平行に配置されている。これは、問題のインサートが、上記インサートのように損傷するという同じリスクをもっている。より特別には、トップスライス破損は、コーナにおける破損しやすい曲線切れ刃部分で生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許番号第6,050,752号明細書
【特許文献2】スウェーデン特許番号第6,050,752号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した問題を解決すること、正面フライスのための改良された切削インサートを提供することを目的とする。したがって、本発明の主な目的は、効率が良く、切削が容易で、すくい面での機械的損傷に対する改良された抵抗力を有する正面フライスインサートを提供する。特に、切削インサートは、フライスカッタボディに対して大きいすくい角で装着されるべきである。さらに、他の目的は、基本形状がポジ、すなわち、大きい逃げ角と主切れ刃に隣接する正の傾斜面を有し、複数の切れ刃が形成された切削インサートを提供することである。さらに、切削インサートは、個々の主切れ刃から分離された切り屑に関して最も短い可能な接触長さを保証する。また、製造が容易な切削インサートを提供することを目的とする。本発明によると、少なくとも主な目的は、請求項1の特徴部分で規定されている構成要件によって得られている。本発明の好ましい実施形態は、さらに、従属請求項で規定されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一態様では、中心から間隔を開けて離れ、面を仕上げる第2の切れ刃に移行するところのコーナで出会う一対の主切れ刃を備え、前記第2の切れ刃は、前記一対の主切れ刃の間で前記コーナを規定する二等分線と交差し、個々の主切れ刃の内側にはすくい面内の皿状底面の方に傾斜している傾斜面が形成された転削インサートにおいて、前記底面よりも高い位置にある頂面を有し、前記二等分線に沿って前記第2の切れ刃から内側に延びる肩を備え、前記第2の切れ刃と活発に協働する前記主切れ刃の前記傾斜面が、前記肩のところまで延びていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の他の態様では、上記の転削インサートにおいて、前記第2の切れ刃の近傍にある前記肩の幅が、前記第2の切れ刃の長さと同等の長さである。
【0012】
また、本発明の他の態様では、上記の転削インサートにおいて、前記肩の頂面が、略平坦に傾斜する移行面を介して前記すくい面の周辺部分に移行する。
【0013】
また、本発明の他の態様では、上記の転削インサートにおいて、前記主切れ刃及び前記第2の切れ刃が、突出している前記肩と同等ないしはそれより低い共通の平面内に配置されている。
【0014】
また、本発明の他の態様では、上記の転削インサートにおいて、前記肩の中心方向で前記頂面の幅が、前記第2の切れ刃から離れるに従い連続して増加する。
【0015】
また、本発明の他の態様では、上記の転削インサートにおいて、個々の主切れ刃に隣接している前記傾斜面が、前記第2の切れ刃の近傍に位置する二つの前記肩の間で延びている。
【0016】
本発明による切削インサートの基本的効果は、傾斜面によって、主切れ刃に関して効率的な切り屑排出能力を維持し、個々のコーナに隣接する肩の存在によって、特に、いわゆるトップスライス破損の影響を受けやすい切削インサートの領域内において、つまり、切削インサートの個々のコーナの領域内において、改良された強度と工具寿命を得ることである。肩の材料がもたらすところの機械的強度だけではなく、第2の切れ刃から熱を逃がす肩の機能は、本発明による切削インサートの耐久性に役立っている。したがって、適当な冷却と共に、第2の切れ刃先端の材料の温度は実質的に低下し、トップスライス破損を是正する。上述した利点及び改善は、切削インサートが、大きい軸方向すくい角が望ましいものであるとき、問題なく使用されることができるという事実によって、保証される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明による切削インサートの第1の実施形態の斜め上からみた斜視図である。
【
図2】切削インサートの主切れ刃に隣接するすくい面の図案を示す拡大された詳細断面図である。
【
図4】
図3によるA−A線に沿って切断した断面図である。
【
図5】
図3によるB−B線に沿って切断した断面図である。
【
図6】本発明による切削インサートの第2の実施形態を示す斜視図である。
【
図7】
図6による切削インサートすくい面の幾何学形状を示す拡大された詳細断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1〜5は、本発明にしたがって作られた金属材料(他の材料にも適用することができる)の正面フライス用の切削インサートを示す。実際に、切削インサートは、通常、硬さと耐摩耗性に優れる超硬合金又はこれに相等する他の材料から作られている。
【0019】
慣習的には、切削インサートはすくい面として機能する頂面1と、下面2を有し、その間には符号3で示されている外周逃げ面が延びている。一例として、切削インサートは複数の切れ刃をもっている。より詳細には、切削インサートは四角を基本形状とし、頂面1と逃げ面3との間の移行部に形成された4つの主切れ刃4を提供する。個々の主切れ刃4は、第2の切れ刃又はワイパ切れ刃5と共に機能する。ワイパ切れ刃5は、主切れ刃に対して一定の角度で延びている。この実施形態において、隣接する主切れ刃4は、相互に90゜で交差するように延び、二等分線D(
図3参照)によって規定されたコーナで出会う。個々の第2の切れ刃5は、二等分線Dと90゜の角度を作り、これは、個々の主切れ刃4と第2の切れ刃5の仮想延長線との間の角度δは45゜になるということを意味する。他には、頂面1と下面2とが互いに平行であり、切削インサートの中立面を規定するということが指摘されるべきである。さらに、切削インサートは、1点鎖線で示される仮想平面と共に逃げ面3が鋭角α(
図2参照)を形成する限りポジであり、中立面に対して垂直である。角度αは、小さくて7°大きくて30゜である。一例として、角度αは20度になる。
【0020】
上で指摘されたように、主切れ刃4は、被削材から切り屑を除去させる目的を持っている。一方、第2の切れ刃は、切り屑除去によってもたらされる被削材の概ね平坦な面を仕上げる目的を持っている。切れ刃4,5の間において符号6で示される移行部は、制限された半径で曲がっている。また、適当な第2の切れ刃5は、湾曲形状が目視できない大きい曲率半径によって形成されることもできる。したがって、
図3による平面図において、切れ刃5は直線として示される線として表されている。
【0021】
図2を参照すると、
図2は、個々の主切れ刃4に隣接している切削インサートの頂面又はすくい面1の形状を詳細に示している。逃げ面3に最も近い部分には、強化されたチャンファ面7がある。このチャンファ面7は、分岐線8を介して、チャンファ面7に対して鈍角を形成する第2のチャンファ面9に移行する。さらに、分岐線10を介して、チャンファ面9がスロープ面11に移行する。このスロープ面1は、順に、すくい面1において符号12で示された皿穴(底面)の方に向かって下方又は内方へ傾く。
図1〜5による例で、面11と面12の間の移行部は、第3の分岐線13からなっている。
【0022】
少なくともチャンファ面9は、皿穴又は底面より高い位置にあるということが、
図2の拡大断面図から明瞭に示されている。例では、面7,9,11,12は平面として示されている。しかしながら、これは、面が湾曲した形状をもつことができる可能性を排除しない。例えば、内方又は下方に傾斜した傾斜面11は、凹状に湾曲した形状を持つことができる。
図1〜5による実施形態の皿状の底面12は、平坦であり、通常の締付ねじ(図示しない)用の中心穴14まで延びているということが指摘されるべきである。この穴の中心軸は、また、切削インサートの中心を構成する。
【0023】
示されている切削インサートがこれまで記載されている限りにおいて、切削インサートは、本質的に従前から知られている。しかしながら、傾斜面11をもっているこのタイプの周知の切削インサートの特徴は、全ての主切れ刃だけでなくコーナに向かうそれらの端部の移行部も内側に向かっているということである。
【0024】
本発明による切削インサートの特徴は、全体として符号15で示され肩が、頂面16を有し、皿穴又は底面12より高い位置にあり、個々の第2の切れ刃5から内側に延びているということである。例では、チャンファ面は切削インサートの中立面と平行である。肩15のチャンファ面9と頂面16は共通の平面に配置されている。言い換えると、このケースでは、肩の頂面16は、平面であり、かつ、切削インサートの中立面に対して平行である。しかしながら、以下で明らかとなるように、肩の他の図案もまた実施可能である。
【0025】
図3において、肩15の幅、例えば、これは、第2の切れ刃の長さと概ね等しい大きさである第2の切れ刃5に平行な方向で頂面16の延長によって決定される。肩の長さは、頂面16の延長として第2の切れ刃5からの長さで示される。示される好ましい実施形態において、肩は、次のような形状を持っている。頂面の幅は、頂面が湾曲した境界線17からそれることによって画定されるという事実によって、第2の切れ刃方向で連続して増加し、続いて、より詳細には、頂面が湾曲した境界線18からそれることによって画定されるという事実によって、切削インサートの中心に向かって内側にテーパとなっている。肩の示される形状の特徴は、肩の頂面16が、平坦で傾斜した移行部を介してすくい面の周辺部分11,12へ移行するということである。より詳細には、境界線17に隣接する頂面16は、平坦に傾斜している凹状の湾曲移行部19を介して皿穴面(底面)に移行している。一方、境界線18に区画される頂面16の内側部分は、移行部19と同様の移行部20を介して皿穴面に移行している。中心穴14の方を向くその端部で、頂面16は同様にして平坦に傾斜する移行面21を介して底面12に移行する。
【0026】
これに関して、全ての対の切れ刃4が、概ね真直であり、切削インサートの中立面に対して平行である共通の平面に配置されているということを考慮すべきである。図示例において、個々の肩15は、頂面16から下側部分で等しい厚みであり、平坦形状である。これは、頂面16が切れ刃4,5より高い位置に配置されているが、頂面16が、その全長に沿って、切れ刃4,5に共通する平面に対して平行であるということを意味する。
【0027】
さらに、異なる主切れ刃4の内側の個々の傾斜面11が、二つの隣接する肩15の間に跨って延びているということが注目に値する。言い換えると、すくい面に沿って切り屑の接触長さを短くする目的をもっている傾斜面11は、本質的に個々の主切れ刃4の全長に沿って延びている。このような方法で、切れ刃による容易な切削の可能が、切れ刃の全長に沿って維持されるということが保証される。言い換えると、これが意味することは、切削インサートが、小さい切り込みだけではなく、最大の切り込みが主切れ刃の実際の長さによって決定されるところの大きい切り込みの場合にも利用することができる。なぜなら、切削インサートは、一体的に、好ましくは圧縮成型及び焼結によって作られ、説明された肩が切削インサートの一体部分として構成されているということが自明である。これに関して、切削インサートは、製造方法に関係して、切削インサートのコーナや肩を相互に識別できる異なる凸部22を有するように作られることもできるということが指摘されるべきである。この方法で、使用者による切削インサートの割り出しが容易となる。
【0028】
図6、7において、他の実施形態が示されている。この実施形態は、傾斜面11に隣接する皿状底面12が、より詳細には、底面12の最も低い部分よりも高い位置の頂面がランド23に移行することによって、制限された延長部分を持っていて、上述した実施形態とは異なっている。この方法で、切り屑停止面24が、底面12とランド23との間の移行部に形成されている。言い換えると、このケースにおいて、切削インサートの頂面の大きい部分に沿って延びるというよりはむしろ、底面12はフルート形状を形成する。
【0029】
しかしながら、本発明の目的によれば、肩15は、切削インサートの4つのコーナのそれぞれの一つに隣接して形成されている。個々の肩の頂面は、
図6に明瞭に示されるように、少なくともすくい面24の領域まで延びるべきである。
【0030】
図7において、傾斜面11が、どのようにして切削インサートの中立面と鈍角βを形成するかが示されている。図示例では、かなり広い制限内において変更することができるけれども、この角度は10°である。しかしながら、実際に、角度βは少なくとも5°、適切には少なくとも7°に設定すべきである。一方、25°を超えるべきではなく、好ましくは20°を超えるべきではない。角度αが20°になり、角度βが単に10°になるとすると、傾斜面11と逃げ面3との間の角度(参照符号はしめされていない)は60°になる。この角度も変更でき、好ましくは50°又は55°の範囲内、およびそれ以上である。
【0031】
要するに、実際に、上述した肩の寸法は適当なものであるということが指摘されるべきである。中位の大きさの切削インサート(10〜20mmの範囲内の切れ刃長を有する)では、それ故に、個々の肩は0.05mm〜0.15mmの範囲内の厚みをもつことができる。これに関して、厚みは、頂面又は肩の最も高い点と周囲の皿状すくい面との間の差によって決定される。
【0032】
(発明の実施可能な変更)
本発明は、上述した実施形態や図面で示された形態に制限されるものではない。このため、個々の肩の形状や寸法は、以下の請求項の範囲内で変更することができる。例えば、肩の頂面は、平面であることは必ずしも必要ではなく、例えば、湾曲形状又は平面形状とは異なる他の形状に変えることができる。したがって、肩の頂面において、切り屑ガイド又は切り屑に影響を与える構成の異なるもの、例えば、溝などを作ることも可能である。さらに、肩の頂面は、図示されるものではないように配置されることもできる。例えば、頂面は、最も高い頂部の後で、再び切削インサートの中心の方向の延長部で内方又は下方に傾斜するように、第2の切れ刃から内方又は上方に同じように傾斜又は曲がるように形成されることもできる。主切れ刃の全長に沿って延びる主切れ刃の内側に配置された傾斜面を内方又は下方に傾斜させることは、好ましいことであるけれども、より制限された切り込みが受け入れられならば、傾斜面の延長部分を短く形成することもできる。さらに、本発明は、第2の切れ刃及び主切れ刃の4つ以上の協働作用する対の他の数を有する切削インサートを受け入れることができるということが強調されるべきである。
【符号の説明】
【0033】
1,16 頂面(すくい面)
2 下面
3 逃げ面
4 主切れ刃
5 ワイパ切れ刃(第2の切れ刃)
6 移行部
7 チャンファ面
8,10,13 分岐線
11 傾斜面
12 底面
15 肩
17,18 湾曲した境界線
19,20 移行面
24 切り屑停止面(すくい面)