特許第5698320号(P5698320)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698320
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】ルーズリーフ綴具
(51)【国際特許分類】
   B42F 13/16 20060101AFI20150319BHJP
   B42F 13/26 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   B42F13/16 B
   B42F13/26
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-162609(P2013-162609)
(22)【出願日】2013年8月5日
(65)【公開番号】特開2015-30225(P2015-30225A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2014年12月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593196528
【氏名又は名称】株式会社カネダ技研
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】金田 亨
【審査官】 荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5216168(JP,B1)
【文献】 特許第5226146(JP,B1)
【文献】 特開平11−348481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42F 13/00−13/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合わせに配置されて互いに平行に延びる二枚の基板と、それらの基板のそれぞれに一体に形成され、該基板の表面側に延びて相互に共同してリング形状をなす複数対の半リング部分と、前記基板の裏面側で該基板の長手方向に対して平行に配置した軸部と、前記基板の裏面側に、前記軸部を取り囲んで各基板と一体に設けられて、該軸部の周りでの各基板の回動変位を可能にする軸受け筒部とを具え、
各基板の、軸部の周りでの回動変位により、複数対の半リング部分を、対をなす該半リング部分のそれぞれの先端部が互いに近接してリング形状を形成する閉鎖位置と、それぞれの先端部が互いに離隔する開放位置との間で移動可能としてなるルーズリーフ綴具であって、
前記基板の表面に、対をなす半リング部分の閉鎖位置で基板の回動変位を拘束する一箇所以上のプレートロック手段を設け、該プレートロック手段を、一方の基板の表面から他方の基板側に延びるとともに該基板の長手方向に向けて折れ曲がる屈曲アーム部分と、他方の基板の表面に周辺領域より隆起させて形成されて、屈曲アーム部分の折れ曲がり端部が一方の基板側からのみ乗り越え可能なアーム留め部分とで構成してなる、ルーズリーフ綴具。
【請求項2】
他方の基板の表面に形成した前記アーム留め部分が、一方の基板側に、前記周辺領域からの隆起高さを一方の基板から離れるに従って漸増させてなるガイド傾斜面を有するものとしてなる、請求項1に記載のルーズリーフ綴具。
【請求項3】
他方の基板表面で前記アーム留め部分の後方側に、アーム留め部分を乗り越えた折れ曲がり端部が嵌り込んで配置される収納スペースを設けてなる、請求項1もしくは2に記載のルーズリーフ綴具。
【請求項4】
基板の長手方向に隣接する前記軸受け筒部の相互間に、それぞれの基板の、長手方向に沿う相対変位を許容する間隙を設け、当該間隙に、二枚の基板の相互を長手方向に沿う向きに付勢する弾性部材を配置し、
前記弾性部材により、二枚の基板の相互を、基板の長手方向に沿う向きで屈曲アーム部分の折れ曲がり端部が前記収納スペースへ入り込む方向に付勢してなる、請求項3に記載のルーズリーフ綴具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、互いに平行な二枚の基板のそれぞれが、それらの裏面側に配置した軸部の周りで回動変位することにより、各基板の表面側に一体形成した複数対の半リング部分を、それらのそれぞれの先端部が互いに近接してリング形状を形成する閉鎖位置と、それぞれの先端部が互いに離隔する開放位置との間で移動可能に構成してなるルーズリーフ綴具に関するものであり、特には、半リング部分の開閉操作を容易なものとし、また、半リング部分を閉鎖位置で確実に固定することのできる技術を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の綴具として従来は、特許文献1に記載されているように、二枚の基板と、それらの基板のそれぞれに一体形成されて、基板の表面側で半円環状に延びる半リング部分と、基板の裏面側に配置されて基板と平行な軸部と、二枚の基板のそれぞれに、前記の軸部を取り囲む態様で設けた軸受け筒部とを具えるものがある。
かかる綴具は、二枚の基板のそれぞれを、前記軸部の周りで回動変位させることにより、該基板の回動変位に伴って、それぞれの基板に一体形成した半リング部分を、それぞれの先端部が互いに離隔する開放位置と、先端部が互いに接近する閉鎖位置との間で移動可能としたものであり、とりわけ、特許文献1に記載されたこの綴具では、それに綴じたルーズリーフ用紙のそれぞれが、閉鎖位置でリング形状を形作る複数対の半リング部分に沿って略360°回転することができる。
【0003】
ところで、特許文献1に記載された綴具では、それぞれの半リング部分の各先端部に、対をなす半リング部分が閉鎖位置に移動した際に相互に引っ掛かる鉤状の「綴杆係止部」を形成し、それらの各「綴杆係止部」により、対をなす半リング部分の相互を閉鎖位置で固定することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−224869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、上記の綴具では、半リング部分を閉鎖位置でロックする際に、それぞれの基板の表面側に半円環状に延びる半リング部分の先端部に形成した「綴杆係止部」だけで、半リング部分を固定するものとし、そして、この「綴杆係止部」は、半リング部分の、使用者が操作する基板から離れて位置する先端部に形成されていることから、たとえば、二枚の基板間の、使用に伴って生じる位置ずれや、基板その他の部材の成形精度のいかん等に起因して、対をなす「綴杆係止部」の相互で引っ掛けることが困難となる場合があり、それ故に、半リング部分の閉鎖位置での固定による、ルーズリーフ用紙の保持を確実に行い得ることの保証がないという問題があった。
【0006】
この発明は、先に述べた従来技術が抱えるこのような問題を解決することを課題とするものであり、それの目的とするところは、半リング部分の閉鎖位置での、基板の固定及びその解除の操作を容易かつ確実に行うことのできるルーズリーフ綴具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のルーズリーフ綴具は、隣り合わせに配置されて互いに平行に延びる二枚の基板と、それらの基板のそれぞれに一体に形成され、該基板の表面側に延びて相互に共同してリング形状をなす複数対の半リング部分と、前記基板の裏面側で該基板の長手方向に対して平行に配置した軸部と、前記基板の裏面側に、前記軸部を取り囲んで各基板と一体に設けられて、該軸部の周りでの各基板の回動変位を可能にする軸受け筒部とを具え、
各基板の、軸部の周りでの回動変位により、複数対の半リング部分を、対をなす該半リング部分のそれぞれの先端部が互いに近接してリング形状を形成する閉鎖位置と、それぞれの先端部が互いに離隔する開放位置との間で移動可能としてなるルーズリーフ綴具であって、
前記基板の表面に、対をなす半リング部分の閉鎖位置で基板の回動変位を拘束する一箇所以上のプレートロック手段を設け、該プレートロック手段を、一方の基板の表面から他方の基板側に延びるとともに該基板の長手方向に向けて折れ曲がる屈曲アーム部分と、他方の基板の表面に周辺領域より隆起させて形成されて、屈曲アーム部分の折れ曲がり端部が一方の基板側からのみ乗り越え可能なアーム留め部分とで構成してなるものである。
【0008】
ここで、このルーズリーフ綴具では、他方の基板の表面に形成した前記アーム留め部分が、一方の基板側に、前記周辺領域からの隆起高さを一方の基板から離れるに従って漸増させてなるガイド傾斜面を有することが好ましい。
【0009】
またここでは、他方の基板表面で前記アーム留め部分の後方側に、屈曲アーム部分の、アーム留め部分を乗り越えた折れ曲がり端部が嵌り込んで配置される収納スペースを設けることが好ましい。
この場合、基板の長手方向に隣接する前記軸受け筒部の相互間に、それぞれの基板の、長手方向に沿う相対変位を許容する間隙を設けるとともに、当該間隙に、二枚の基板の相互を長手方向に沿う向きに付勢する弾性部材を配置し、それにより、前記弾性部材で、二枚の基板の相互を、基板の長手方向に沿う向きで屈曲アーム部分の折れ曲がり端部が前記収納スペースへ入り込む方向に付勢することが一層好ましい。
【発明の効果】
【0010】
この発明のルーズリーフ綴具によれば、基板の表面に、対をなす半リング部分の閉鎖位置で基板の回動変位を拘束する一箇所以上のプレートロック手段を設け、そして、かかるプレートロック手段を、先述したような屈曲アーム部分とアーム留め部分とで構成したことにより、対をなす半リング部分を開放位置から閉鎖位置へ移動させるに当って、使用者は、基板を軸部周りに回動変位させるだけで、屈曲アーム部分の折れ曲がり端部が、自身の弾性変形を伴いながらアーム留め部分を乗り越えることになり、それにより、二枚の基板の相互を、半リング部分の閉鎖位置でロックすることができる。なお、基板のロック状態の解除は、二枚の基板を長手方向に相対変位させることで、折れ曲がり端部の乗り越え動作なしに、屈曲アーム部分をアーム留め部分から外すことによって行うことができる。
【0011】
従って、このルーズリーフ綴具では、一般に半リング部分側ではなく基板側を狭持する使用者が、その基板側に設けたプレートロック手段で、半リング部分の閉鎖位置における基板の固定操作及び、その解除操作を行うことができるので、それらの操作を容易かつ確実に行うことができる。
【0012】
ここで、他方の基板の表面に形成した前記アーム留め部分が、一方の基板側に、前記周辺領域からの隆起高さを一方の基板から離れるに従って漸増させてなる、平坦面状もしくは曲面状等のガイド傾斜面を有するものとしたときは、半リング部分を閉鎖位置へ移動させるため、基板を回動変位させた際に、屈曲アーム部分の折れ曲がり端部が、アーム留め部分のガイド傾斜面上を滑動し、それにより、ガイド傾斜面に案内される折れ曲がり端部が、アーム留め部分を乗り越え易くなるので、プレートロック手段による基板のロック操作を、より円滑で容易に行うことができる。
【0013】
ここにおいて、他方の基板表面で前記アーム留め部分の後方側に、屈曲アーム部分の折れ曲がり端部が、アーム留め部分を前方側から乗り越えた後に嵌り込んで配置される収納スペースを設けたときは、半リング部分の閉鎖位置で収納スペースに嵌り込んだ折れ曲がり端部により、二枚の基板を、より安定した姿勢で確実に固定することができる。
【0014】
このような収納スペースを設けた上で、二枚の基板の相互を長手方向に沿う向きに付勢する弾性部材を、互いに隣接する前記軸受け筒部の相互間の間隙に配置して、該弾性部材により、二枚の基板の相互を、基板の長手方向に沿う向きで屈曲アーム部分の折れ曲がり端部が前記収納スペースへ入り込む方向に付勢させたときは、基板の相互を意図的に相対変位させない限りは、弾性部材の付勢力によって、折れ曲がり端部が収納スペースに配置された状態が確保されることになるので、プレートロック手段をより有効に機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明のルーズリーフ綴具の一の実施形態について示す正面図及び側面図である。
図2図1のルーズリーフ綴具を、基板の回動変位に基いて半リング部分が開放位置へ移動するまでの各状態で示す正面図である。
図3図1のルーズリーフ綴具に設けたプレートロック手段による基板のロック動作を示す部分拡大斜視図である。
図4図1のルーズリーフ綴具に設けたプレートロック手段による基板のロック解除動作を示す部分拡大斜視図である。
図5図1のルーズリーフ綴具の、基板表面に設けたプレートロック手段を、基板の相対変位の前後の状態で示す部分拡大平面図である。
図6図3(a)のVI−VI線に沿う断面図である。
図7図1のルーズリーフ綴具の長手方向の中央部を、半リング部分が開放位置に移動した状態で示す拡大正面図である。
図8】ルーズリーフ綴具に設けることのできるコイルばねの変形例を示す、図7と同様の図である。
図9図8のルーズリーフ綴具に設けたコイルばねを、綴具から取り出して示す正面図および平面図である。
図10図1(a)のX−X線に沿う断面図および、半リング部分が開放位置に移動した状態での同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に図面に示すところに基いて、この発明の実施形態について説明する。
図1(a)及び(b)のそれぞれに正面図及び側面図で例示するルーズリーフ綴具1は、隣り合わせに配置されて互いに平行に、図ではいずれも上下方向に延びる長尺平板状の二枚の基板2a、2bと、それらの基板2a、2bのそれぞれに一体に形成され、たとえば各基板2a、2bの外側面から表面F側に半円環状に延びる複数対の半リング部分3a、3bと、基板2a、2bの裏面B側に配置した、基板2a、2bと平行に延びる軸部4と、それぞれの基板2a、2bの裏面Bに、軸部4を取り囲む態様で各基板2a、2bに一体形成されて、たとえば、内部に軸部4が配置される中空円筒状等のそれぞれの軸受け筒部5a、5bとを具えてなる。
【0017】
なおここでは、二枚の基板2a、2bのうち、図1(a)の正面図で図の左側に位置するものを一方の基板2aとするとともに、同図の右側に位置するものを他方の基板2bとし、そして、一方の基板2a側の半リング部分3aと、基板2a、2bの長手方向に直交する同図の左右方向に該半リング部分3aに隣接して位置する、他方の基板2b側の半リング部分3bとを一対として、それらを、基板2a、2bの長手方向に沿って、所要の間隔をおいて複数対並べて配置している。
また、図示の実施形態では、図1(b)に側面図で示すところから明らかなように、一方の基板2aに一体形成した複数の軸受け筒部5aと、他方の基板2bに一体形成した複数の軸受け筒部5bとのそれぞれを、基板2a、2bの長手方向に沿って、互い違いに配置している。なお、この綴具1の長手方向の一端部(図1では下端部)及び他端部(図1では上端部)のそれぞれには、使用者の保持に供されるそれぞれの摘み部分2c、2dが設けられている。
【0018】
そしてまた、この綴具1では、たとえば金属材料もしくは樹脂材料等からなる一本の軸部4は、中心軸線が共通となるように同軸に配置した各軸受け筒部5a、5bの内側を通過して延在するものとし、この軸部4は、一方の基板2aと他方の基板2bとを、それらのそれぞれの軸受け筒部5a、5bで互いに連結するべく機能する。なお、図示は省略するが、軸部は、基板の長手方向に分割された二本以上とすることもでき、この場合は、たとえば、複数本の軸部のそれぞれを、軸受け筒部5a、5bのそれぞれに一体形成することも可能である。
【0019】
かかる綴具1の構成によれば、使用者が、たとえば、摘み部分2c、2dを保持してそれらを基板2a、2bの長手方向の中央部に向けて押すことにより、後述のプレートロック手段によるロックを解除して、単一の軸部4が通過するそれぞれの軸受け筒部5a、5bと一体をなす各基板2a、2bを、軸部4の周りで回動変位させることができる。この回動変位に伴い、各基板2a、2bに設けた半リング部分3a、3bは、図2(a)に示す状態を経て、図2(b)に示すように、対をなす半リング部分3a、3bのそれぞれの先端部が互いに離隔する開放位置へ移動することになる。またこの状態で、基板2a、2bを、軸部4の周りで、上述したところとは逆向きに回動変位させることにより、半リング部分3a、3bは、図1(a)に示すような、対をなす半リング部分3a、3bのそれぞれの先端部が近接するとともに当接してリング形状を形成する閉鎖位置へ移動する。
【0020】
このように、基板2a、2bの回動変位によって、半リング部分3a、3bを開放位置と閉鎖位置との間で移動可能とすることにより、半リング部分3a、3bの開放位置では、図示しないルーズリーフ用紙の側部に設けられる複数の貫通孔に、半リング部分3a、3bを先端部から挿入するか、あるいは、貫通孔に半リング部分3a、3bが挿入されて綴じられたルーズリーフ用紙を、半リング部分3a、3bから取り外すことで、図示しないルーズリーフ用紙の、綴具1からの着脱が可能となり、また、ルーズリーフ用紙の貫通孔に半リング部分3a、3bを挿入した状態で、半リング部分3a、3bを閉鎖位置に移動させた場合は、一枚以上のルーズリーフ用紙を綴じることができる。
【0021】
なおこの実施形態では、基板2a、2bの長手方向に隣接する軸受け筒部5a、5bの相互間に、それぞれの基板2a、2bの、長手方向に沿う相対変位を許容する間隙Gを設け、そして、基板2a、2bの裏面B側で、たとえば、互いに隣接する軸受け筒部5a、5bの相互間の間隙Gのうちの一つに、弾性部材6としてのコイルばねを挟み込んで、これを軸部4の中心軸線と同軸に配設している。この構成によれば、弾性部材6により、基板2a、2bは相互に、その長手方向に沿って、対をなす半リング部分3a、3bの相互が整列する向きへ付勢されることになり、また、基板2a、2bが長手方向に相対変位されると、弾性部材6はその軸線方向に圧縮変形されることになる。
【0022】
ここにおいて、この発明では、基板2a、2bの表面F側で、長手方向に隣接する半リング部分3a、3bの相互間に、半リング部分3a、3bの閉鎖位置で基板の回動変位を拘束する一箇所以上のプレートロック手段7を設け、それにより、その閉鎖位置で基板2a、2bを固定して、対をなす半リング部分3a、3bが閉鎖位置で形成するリング形状を維持させ、先述したルーズリーフ用紙の保持を可能とする。
【0023】
より詳細には、上記のプレートロック手段7は、図3に拡大斜視図で示すように、一方の基板2aに設けられ、該基板2aの表面Fから他方の基板2b側に延びるとともに、その延在途中で基板2a、2bの長手方向の一方側に向けて折れ曲がる折れ曲がり端部8aを有する屈曲アーム部分8と、他方の基板2bの表面Fで前記屈曲アーム部分8の配設位置と対応する位置に、周辺領域よりも隆起させて形成したアーム留め部分9とで構成する。なお、それらの屈曲アーム部分8およびアーム留め部分9のそれぞれは、射出成形等によって各基板2a、2bと一体に形成することが製造能率の向上との観点から好ましいが、基板2a、2bとは別個の部品として形成して各基板2a、2bに固定ないし固着によって事後的に取り付けることもできる。
【0024】
このようなプレートロック手段7の配設によれば、半リング部分3a、3bを開放位置から閉鎖位置へ移動させるべく、基板2a、2bを回動変位させると、図3(a)に示すように、屈曲アーム部分8の折れ曲がり端部8aが、自身の、基板表面から離隔する方向(図では上方)への若干の弾性変形を伴って、アーム留め部分9を一方の基板2a側から乗り越えることになる。その後は、折れ曲がり端部8aは、アーム留め部分9を逆方向からは乗り越えることができないので、図3(b)に示すように、アーム留め部分9に引っ掛かって保持されることになり、その結果として、二枚の基板2a、2bを、半リング部分3a、3bの閉鎖位置でロックすることができる。
【0025】
一方、プレートロック手段7による基板2a、2bのロック状態を解除するには、図4(a)に矢印で示すように、基板2a、2bの相互を長手方向に相対変位させ、屈曲アーム部分8の折れ曲がり端部8aとアーム留め部分9とを、相互に接触しない位置まで長手方向にずらすことにより行うことができる。その状態で基板2a、2bを回動変位させることにより、半リング部分3a、3bを開放位置へ移動させることができる。なお、基板2a、2bを相対変位させた後の、このような、半リング部分3a、3bの開放位置への、基板2a、2bの回動変位は、綴具1に綴じたルーズリーフ用紙ないし表紙の自重によって自然と生じることが確認されているも、かかる回動変位を補助するため、弾性部材に、後述するような、基板2a、2bの内側面を付勢する脚部26b、26cを設けることも可能である。
【0026】
ルーズリーフ綴具1を使用する使用者は一般に、半リング部分3a、3bの開閉操作を行うに当って、半リング部分3a、3bではなく、基板2a、2bの、たとえば長手方向端部の摘み部分2c、2dを指等で摘まんで持つことになるところ、この発明では、半リング部分3a、3bの閉鎖位置で基板2a、2bを固定するためのロック手段を、半リング部分3a、3b側ではなく、使用者が直接的に保持する基板2a、2b側に設けたプレートロック手段7としたことにより、半リング部分の先端に設けたリングロック手段のみで固定する従来の綴具に比して、半リング部分3a、3bの閉鎖位置での基板2a、2bの固定及び固定解除の操作が極めて容易となって、操作性を大きく高めることができる。
【0027】
ここで図示の実施形態では、プレートロック手段7の屈曲アーム部分8は、一方の基板2aの表面Fの周辺領域から盛り上がらせて形成されて、図5に平面図で示すように、他方の基板2b側に向けて基板2a、2bの長手方向に略垂直に延びる主要部、及び、その主要部に連続して主要部の延在方向に対して略直角に折れ曲って前記長手方向に沿って延びる、主要部より狭幅の折れ曲がり端部8aで構成しているが、屈曲アーム部分8の形状は、かかる限定されるものではない。
【0028】
またここで、他方の基板2bの表面Fで、アーム留め部分9の、上記ガイド傾斜面9aを設けた前方側(一方の基板2a側)とは逆側の後方側には、プレートロック手段7による基板2a、2bの固定状態で、屈曲アーム部分8の折れ曲がり端部8aが入り込んで配置される収納スペース10を設けることが好ましい。これにより、基板2a、2bの固定状態をより安定的に維持することができるからである。
【0029】
なお図示の綴具1では、図5(a)及び(b)に示すように、他方の基板2bの表面Fで、一方の基板2a側に位置して長手方向に延びるアーム留め部分9の後方側に、アーム留め部分9に連続する隆起部11を設け、そして、アーム留め部分9と隆起部11とで区画される、他方の基板2bの表面領域を、上記の収納スペース10としている。すなわち、ここでは、一方の基板2a側の屈曲アーム部分8と、他方の基板2bの、アーム留め部分9及び隆起部11からなる部分との、いずれも平面視でL字状をなす二つのL型部分の嵌め合わせによって、基板2a、2bの相互を、半リング部分3a、3bの閉鎖位置で固定することとしている。
【0030】
この場合、弾性部材6は、先述したように、二枚の基板2a、2bの相互を長手方向に沿って半リング部分2a、2bの相互を整列させる方向で、かつ、折れ曲がり端部8aが収納スペース10に入り込む方向に付勢するものとすることが好ましい。なおここで、プレートロック手段7による基板2a、2bの固定状態を解除するには、たとえば摘み部分2c、2dを長手方向中央部に向けて押すことにより、弾性部材6の当該付勢力に抗して基板2a、2bを相対変位させることにより行うことが可能である。
【0031】
またこの場合、プレートロック手段7の固定状態の解除を容易かつ確実に行い得るものとするため、図5に示すように、折れ曲がり端部8aの、収納スペース10への長手方向の入り込み長さLiは、同図に白抜き矢印で示すように、二枚の基板2a、2bの相互を最も大きく変位させた際の最大相対変位量Lsよりも小さくする。
なお、アーム留め部分9の内縁部Eから頂部Tまでの幅Wcは、屈曲アーム部分8の、基板2aからの迫出し長さのうち、折れ曲がり端部8aの部分を除いた長さLpよりも短くすることにより、屈曲アーム部分8の、アーム留め部分9に対する適切な乗り越え及び係合を実現することができる。
【0032】
そしてまた、プレートロック手段7のアーム留め部分9は、図6に断面図で示すように、一方の基板2a側の部分の、基板2bの表面Fの周辺領域からの隆起高さを、一方の基板2aから離れるに従って漸増させることで、そこに、基板表面Fに対して傾斜するガイド傾斜面9aを有することが好ましい。
それにより、半リング部分3a、3bを閉鎖位置へ移動させるに際し、アーム留め部分9に接近した屈曲アーム部分8の折れ曲がり端部8aが、アーム留め部分9を乗り越えるときに、アーム留め部分9の、一方の基板2a側に位置するガイド傾斜面9aが、その上を滑動する折れ曲がり端部8aの乗り越え動作を案内するので、プレートロック手段7による基板2a、2bの固定を、より円滑かつ容易に行うことが可能になる。
【0033】
このガイド傾斜面9aは、図示のような一の平坦面とすることができる他、図示は省略するが、屈曲アーム部分8側(図6では上方側)に凸状ないし、基板2bの表面F側(図6では下方側)に凹状の、一もしくは複数の曲面または、複数の平坦面とすることもできる。
また、ガイド傾斜面9aの、基板2bの表面Fに対する傾き角度は、図6に示すような、基板2a、2bの長手方向に直交する断面視で、軸部4の中心軸線周りで回転運動するアーム留め部分9の内縁部Eの軌跡の、その内縁部Eにおける接線の同様の角度よりも大きくすることが好ましい。
【0034】
この綴具1で好ましくは、一方および他方の基板2a、2bのそれぞれの表面Fで、上述したようなプレートロック手段7の配設箇所の周辺領域に、他の領域よりも一段窪んだ窪地領域Arをそれぞれ設け、そして、それらの各窪地領域Arに、屈曲アーム部分8およびアーム留め部分9のそれぞれを配置する。このことによれば、プレートロック手段7の、基板表面からの突出量を小さく抑えることができるので、綴具1の使用時に、それに綴じたルーズリーフ用紙の、プレートロック手段7との干渉等を防止することができる。
【0035】
ところで、二枚の基板2a、2bの相互を長手方向に沿って付勢する上述した弾性部材6は、複数個設けることも可能であるが、ここでは一個を、図7に拡大正面図で示すように、基板2a、2bの長手方向の中央部分に配設している。
図7に示すこの弾性部材6としてのコイルばねは単に、自身の軸線方向の圧縮及び復元に基き、二枚の基板2a、2bの相互を長手方向に沿って付勢する機能だけを有するものである。なお、そのような付勢力により、半リング部分3a、3bの閉鎖位置で、屈曲アーム部分8をアーム留め部分9の後方側の収納スペース10へ入り込ませて、プレートロック手段7による基板2a、2bのロック状態を確保することができる。
【0036】
この一方で、上記の単なるコイルばねに代えて、図8に示すような、脚部26b、26c付きのコイルばねである弾性部材26(いわゆるねじりコイルばね)を設けることもできる。この弾性部材26は、より詳細には、図9(a)および(b)に、綴具1から取り出して示すところから明らかなように、たとえば、螺旋状に巻回した金属製等の巻き線からなる本体部26aの、軸線方向の両端部に存在する巻始端及び巻終端のそれぞれを、コイル外周よりも半径方向外側に向けて直線状に延長させることにより、軸線方向の各端部に、それぞれの脚部26b、26cを設けたものである。この場合、それぞれの脚部26b、26cを、図8に示すように、各基板2a、2bの、半リング部分3a、3bの閉鎖位置で互いに近接して対向する内側面のそれぞれに設けた、基板表裏方向に延びる各溝部に当接させて配置することができる。これにより、脚部26b、26c付き弾性部材26は、上述したような、基板2a、2bの相互を長手方向に沿って付勢する機能のみならず、脚部26b、26cによって、半リング部分3a、3bを開放位置へ移動させるように、軸部4の周りの基板2a、2bの回動方向で、基板2a、2bを押し広げる方向に付勢するべくも機能することになる。
【0037】
弾性部材26のこのような構成により、半リング部分3a、3bの閉鎖位置から、図4(a)に示すように、基板2a、2bの相互を長手方向に沿って相対変位させる操作を行うだけで、弾性部材26の脚部26b、26cが基板2a、2bを内側面側から押し広げるべく付勢して、図4(b)に示すように、基板2a、2bが、軸部4の周りで回動変位するとともに、半リング部分3a、3bが開いて開放位置へ自動的に移動することになる。それにより、半リング部分3a、3bを開く操作が極めて容易となる。半リング部分3a、3bを開放位置から閉鎖位置へ移動させるには、弾性部材26の脚部26b、26cの付勢力に抗して、基板2a、2bを軸部4の周りで回動変位させることにより行うことができる。
【0038】
但し、脚部26b、26cを有しない一般的な弾性部材6を設けた場合、上記の脚部26b、26c付きの弾性部材6のように基板2a、2bを強制的に押し広げることはできないものの、実際の綴具1の使用状態では、基板2a、2bの相互を長手方向に相対変位させて、プレートロック手段7のロック状態を解除するだけで、半リング部分3a、3bに綴じたルーズリーフ用紙や表紙等の自重によって、半リング部分3a、3bは開放位置へ自動的に移動することになる。脚部を有しない弾性部材6を用いる場合は、基板2a、2bの内側面に、脚部を位置決め配置するための、図8に示すような溝部を形成することが不要になるとともに、綴具1を製造する際の、各構成部材の組立てが容易になるという利点がある。
【0039】
図示の実施形態では、弾性部材6を、それぞれの基板2a、2bに一体形成した各軸受け筒部5a、5bの相互間の間隙Gの一つに配置しているが、図示は省略するが、基板2a、2bの裏面B側に、軸受け筒部5a、5bとは異なる部分としてのばね受け部を設けて、そこに弾性部材6を配置することも可能である。
【0040】
ところで、このような綴具1では、半リング部分3a、3bが、図10(a)に示す閉鎖位置から、図10(b)に示す開放位置まで移動した際に、半リング部分3a、3bが最も大きく開いたその開放位置での、対をなす半リング部分3a、3bの開き角度θを、軸部4の中心軸線の周りで測って、90°〜180°の範囲とすることが好ましい。開き角度θを、この範囲内とすることで、図示しないルーズリーフ用紙の、綴具1に対する着脱を、何の不自由もなしに行うことができるとともに、半リング部分の開放位置での、ルーズリーフ用紙の意図しない外れを有効に防止することができる。
【0041】
なお、この発明では、図1及び2に示すように、基板2a、2bの長手方向の少なくとも一端側に、半リング部分3a、3bを開閉する際に使用者が狭持する摘み部分2c、2dを設けることが好ましい。
【0042】
より詳細には、図示の綴具1においては、それの一端部(ここでは下端部)では、図1に示すように、最も一端側(下端側)に位置する、一方の基板2a側の軸受け筒部5aに、一端側の摘み部分2cを設け、また、綴具1の他端部(ここでは上端部)では、最も他端側(上端側)に位置する、他方の基板2b側の軸受け筒部5bに、他端側の摘み部分2dを設けている。そして、最も一端側の軸受け筒部5aは、図1(b)に示すように、それに隣接する、他方の基板2b側の軸受け筒部5bとの間に、所要の比較的大きな間隙Gを設けて配置されており、このことは、綴具1の他端側の、最も他端側の軸受け筒部5bについても同様である。
図1に示す構造によれば、半リング部分3a、3bが閉じた状態で、使用者が、それぞれの摘み部分2c、2dを狭持するとともに、各摘み部分2c、2dを、綴具1の長手方向の中央に向けて押すことで、最も一端側の、上記の大きな間隙Gが狭まる向きに基板2a、2bを相対変位させて、プレートロック手段7によるロック状態を解除することができる。
【0043】
一方、図示は省略するが、使用者が、綴具1の両端部に設けた摘み部分2c、2dを、綴具1の長手方向の外側に向けて引っ張ることで、間隙Gが広がる向きに基板2a、2bを相対変位させることによって、プレートロック手段7によるロック状態を解除されるように、軸受け筒部5aの配設位置、間隙Gの大きさ等を設計変更することができる。
【0044】
以上に述べたようなルーズリーフ綴具1によれば、上述したプレートロック手段7を設けたことにより、ルーズリーフ用紙を綴具1に綴じるための、半リング部分の閉鎖位置での基板2a、2bの固定を極めて容易に、かつ確実に行うことができるので、すぐれた操作性を実現することができ、しかも、半リング部分3a、3bの先端部の設計自由度を高めることができる。
【0045】
なお上述した実施形態は、対をなす半リング部分3a、3bの先端部に、それらのそれぞれで、軸線方向の一方側と他方側の半部を互い違いに切り欠いて形成した切欠き部分のそれぞれが、半リング部分3a、3bの閉鎖位置で互いに整合することにより、それらの切欠き部分が接触するだけで係合することなしに、半リング部分3a、3bによるリング形状が形成されるものとしている。
但し、半リング部分3a、3bの先端部には、互いに接近したそれらの先端部を係合させる、図示しないリングロック手段を設けることも可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 ルーズリーフ綴具
2a、2b 基板
2c、2d 摘み部分
3a、3b 半リング部分
4 軸部
5a、5b 軸受け筒部
6、26 弾性部材
26a 本体部
26b、26c 脚部
7 プレートロック手段
8 屈曲アーム部分
8a 折れ曲がり端部
9 アーム留め部分
9a ガイド傾斜面
10 収納スペース
11 隆起部
Ar 窪地領域
F 基板表面
B 基板裏面
G 間隙
Li 折れ曲がり端部の、収納スペースへの入り込み長さ
Ls 基板の最大相対変位量
Lp 屈曲アーム部分8の、折れ曲がり端部8aの部分を除く迫出し長さ
Wc アーム留め部分の幅
E アーム留め部分の内縁部
T アーム留め部分の頂部
θ 半リング部分の開き角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10