特許第5698393号(P5698393)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698393
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/46 20060101AFI20150319BHJP
   C08F 2/38 20060101ALI20150319BHJP
   C08F 4/00 20060101ALI20150319BHJP
   C08F 12/00 20060101ALI20150319BHJP
   C08F 20/00 20060101ALI20150319BHJP
   G03F 7/028 20060101ALI20150319BHJP
   C09D 4/00 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   C08F2/46
   C08F2/38
   C08F4/00
   C08F12/00
   C08F20/00
   G03F7/028
   C09D4/00
【請求項の数】20
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2014-18930(P2014-18930)
(22)【出願日】2014年2月3日
(62)【分割の表示】特願2012-127990(P2012-127990)の分割
【原出願日】2012年6月5日
(65)【公開番号】特開2014-77148(P2014-77148A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2014年4月24日
(31)【優先権主張番号】特願2011-128140(P2011-128140)
(32)【優先日】2011年6月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】元藤 梓平
(72)【発明者】
【氏名】向井 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】樋口 晋太郎
(72)【発明者】
【氏名】中山 雅敏
【審査官】 繁田 えい子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−259319(JP,A)
【文献】 特開2005−99359(JP,A)
【文献】 特開平10−207067(JP,A)
【文献】 特開2006−321926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C09D
C09J
G03F 7
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エネルギー線、酸及び塩基からなる群より選ばれる少なくとも1種によりチオールを発生する化合物(A)、重合性化合物(B)並びに活性エネルギー線重合開始剤(C)を含有する活性エネルギー線硬化型組成物であって、(A)が酸によりチオールを発生する化合物(A2)及び塩基によりチオールを発生する化合物(A3)から選ばれる少なくとも1種であり、
(A)が酸によりチオールを発生する化合物(A2)である場合は、活性エネルギー線により酸を発生する酸発生剤(D)をさらに含有し、
(A)が塩基によりチオールを発生する化合物(A3)である場合は、活性エネルギー線により塩基を発生する塩基発生剤(E)をさらに含有する活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項2】
化合物(A)が、下記一般式(1)〜(4)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【化1】
[式中、R1〜R3、R5〜R8は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜30の1価の炭化水素基であり、R4は炭素数2〜30の2価の炭化水素基であり、X1〜X6は、酸及び塩基からなる群より選ばれる少なくとも1種によりこれらと結合している硫黄原子との結合が切断される1価の置換基である。]
【請求項3】
置換基X1〜X6が、それぞれ独立にピリジルエチレン基、t−ブトキシカルボニル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、アセチル基、ベンゾイル基及び下記一般式(5)〜(8)で表される基からなる群より選ばれる置換基である請求項2に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【化2】
[式中、R9〜R11、R13〜R16は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜30の1価の炭化水素基であり、R12は炭素数2〜30の2価の炭化水素基であり、*はそれが付された少なくとも1つの結合により一般式(5)〜(8)で表される置換基が、一般式(1)〜(4)におけるX1〜X6が結合している硫黄原子に結合していることを表す。]
【請求項4】
化合物(A)が、下記一般式(9)〜(17)で表される化合物及び下記化学式(18)で表される構造単位を2個以上有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【化3】
[式中、X7〜X13は、それぞれ独立にピリジルエチレン基、t−ブトキシカルボニル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、アセチル基及びベンゾイル基からなる群より選ばれる1価の置換基である。]
【請求項5】
重合性化合物(B)が、下記エステル化合物(B1)、炭素数3〜35の(メタ)アクリルアミド化合物(B2)、(B1)以外の炭素数4〜100の(メタ)アクリレート化合物(B3)、炭素数6〜35の芳香族ビニル化合物(B4)及び炭素数3〜20のビニルエーテル化合物(B5)からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
エステル化合物(B1):エチレン性不飽和結合含有基(x)を有し、ウレタン基及びウレア基を有さないエステルであって、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル及びピロメリット酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種のエステル化合物。
【請求項6】
重合性化合物(B)がエステル化合物(B1)を含有し、(B1)が、下記一般式(19)〜(21)で表される少なくとも1種の化合物である請求項5に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【化4】
[式中、R14〜R22は、それぞれ独立に下記一般式(22)〜(26)のいずれかで表される置換基である。]
【化5】
[式中、R23、R25、R27は、それぞれ独立に炭素数2〜12の2価の脂肪族炭化水素基であり、R24、R26、R28はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、*はそれが付された結合により一般式(22)〜(26)で表される置換基が上記一般式(19)〜(21)におけるオキシカルボニル基の酸素原子と結合していることを表す。]
【請求項7】
エステル化合物(B1)が有するエチレン性不飽和結合含有基(x)が、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、1−プロペニル基及びアリル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基である請求項5又は6に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項8】
重合性化合物(B)が下記(メタ)アクリレート化合物(B31)を含有し、(B)中の(B31)の含有量が(B)の重量を基準として0.1〜100重量%である請求項5〜7のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
メタアクリレート化合物(B31):エステル化合物(B1)以外の炭素数4〜100の(メタ)アクリレート化合物(B3)であって、ウレタン基及び/又はウレア基を有する化合物。
【請求項9】
ウレタン基及び/又はウレア基を有する(メタ)アクリレート(B31)が、分子中に水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートを含有する活性水素成分(H)と有機ポリイソシアネート成分(I)とが反応されて得られる化合物であり、(I)が、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート及び1,5−ナフタレンジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のイソシアネートである請求項8に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項10】
活性エネルギー線重合開始剤(C)が、アシルホスフィンオキサイド骨格を有する重合開始剤(C1)、α−アミノアセトフェノン骨格を有する重合開始剤(C2)、ベンジルケタール骨格を有する重合開始剤(C3)、α−ヒドロキシアセトフェノン骨格を有する重合開始剤(C4)、ベンゾイン骨格を有する重合開始剤(C5)、オキシムエステル骨格を有する重合開始剤(C6)及びチタノセン骨格を有する重合開始剤(C7)からなる群より選ばれる少なくとも1種のラジカル重合開始剤である請求項1〜9のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項11】
活性エネルギー線により酸を発生する酸発生剤(D)が、スルホニウム塩(D1)及び/又はヨードニウム塩(D2)である請求項1〜10のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項12】
ヨードニウム塩(D2)が、下記化学式(27)で表される化合物である請求項11に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【化6】
【請求項13】
活性エネルギー線により塩基を発生する塩基発生剤(E)が、オキシム骨格を有する化合物(E1)、4級アンモニウム塩(E2)及び4級アミジン塩(E3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の塩基発生剤である請求項1〜12のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項14】
活性エネルギー線により塩基を発生する塩基発生剤(E)が4級アンモニウム塩(E2)及び4級アミジン塩(E3)であり、下記一般式(28)〜(30)で表される化合物である請求項13に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【化7】
[式中、R29〜R56は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアシル基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、ニトロ基、カルボキシル基、水酸基、メルカプト基、アミノ基、シアノ基、フェニル基、ナフチル基、下記一般式(31)で表される基及び下記一般式(32)で表される基からなる群より選ばれる原子又は置換基である。R29〜R38のいずれか1つは下記一般式(31)又は下記一般式(32)で表される置換基であり、R39〜R46のいずれか1つは下記一般式(31)又は下記一般式(32)で表される置換基であり、R47〜R56のいずれか1つは下記一般式(31)又は下記一般式(32)で表される置換基である。]
【化8】
[式中、R57〜R60は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基であり、R61〜R63は、それぞれ独立に水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基であり、(X14-及び(X15-は、それぞれ陰イオンを表し、aは2〜4の整数であり、*はそれが付された結合により一般式(31)又は(32)で表される置換基が、上記一般式(28)〜(30)における炭素原子に結合していることを表す。]
【請求項15】
4級アミジン塩(E3)が下記一般式(33)で表される化合物である請求項13又は14に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【化9】
[式中、(X16-は、陰イオンを表す。]
【請求項16】
活性エネルギー線硬化型組成物の重量を基準として、それぞれ化合物(A)の含有量が0.001〜30重量%、重合性化合物(B)の含有量が10〜99.948重量%〔ただし、エステル化合物(B1)の含有量が0〜80重量%〕、活性エネルギー線重合開始剤(C)の含有量が0.05〜30重量%、活性エネルギー線により酸を発生する酸発生剤(D)の含有量が0.001〜30重量%である請求項5〜15のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項17】
活性エネルギー線硬化型組成物の重量を基準として、それぞれ化合物(A)の含有量が0.001〜30重量%、重合性化合物(B)の含有量が10〜99.948重量%〔ただし、エステル化合物(B1)の含有量が0〜80重量%〕、活性エネルギー線重合開始剤(C)の含有量が0.05〜30重量%、活性エネルギー線により塩基を発生する塩基発生剤(E)の含有量が0.001〜30重量%である請求項5〜15のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項18】
活性エネルギー線硬化型組成物の重量を基準として、それぞれ化合物(A)の含有量が0.001〜30重量%、重合性化合物(B)の含有量が40〜99.949重量%〔ただし、エステル化合物(B1)の含有量が0〜80重量%〕、活性エネルギー線重合開始剤(C)の含有量が0.05〜30重量%である請求項5〜15のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項19】
ハードコート用、レジスト用又はUV硬化インク用である請求項1〜18のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項20】
樹脂成型品のハードコート用又はディスプレイのハードコート用である請求項1〜19のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無溶剤型で使用できるアクリレート材料を用いたラジカル重合型の活性エネルギー線硬化型材料の検討が進められており、コーティング剤、接着剤、インキなどに有用に用いられている。このアクリレート系材料は、一般的に硬化時間が短く、低温での硬化が可能であり、一液型で無溶剤化が可能であるため、省資源、環境汚染の低減化を図れるという利点を有している。
【0003】
しかしながら、ラジカル重合は、重合反応組成物中の溶存酸素や空気中の酸素等により阻害されるために、硬化が遅くなり生産性に問題が生じる場合がある。窒素等の不活性雰囲気下で重合を行えばこの問題は解決できるものの、省スペース・省力化を目指した作業工程の短縮、簡略化等が強く求められており、このような方法は実用的ではない。
【0004】
酸素による重合阻害の抑制を目的として、オレフィン化合物とチオール化合物とを組み合わせたラジカル付加反応型材料が提案されている(例えば特許文献1)。
しかし、オレフィン化合物とチオール化合物はマイケル付加等により、暗部でも反応が進行してしまう為、貯蔵安定性が低い等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−285113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ハードコート(樹脂成型品のハードコート若しくはディスプレイのハードコート)、レジスト又はUV硬化インク等のさまざまな分野に適用が可能で、硬化反応に対する酸素阻害が小さく、低露光量で硬化することができ、酸素阻害が大きくなる薄膜でも硬化することができ、貯蔵安定性が高い活性エネルギー線硬化型組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、本発明に到達した。即ち本発明は、活性エネルギー線、酸及び塩基からなる群より選ばれる少なくとも1種によりチオールを発生する化合物(A)、重合性化合物(B)並びに活性エネルギー線重合開始剤(C)を含有する活性エネルギー線硬化型組成物であって、(A)が酸によりチオールを発生する化合物(A2)及び塩基によりチオールを発生する化合物(A3)から選ばれる少なくとも1種であり、(A)が酸によりチオールを発生する化合物(A2)である場合は、活性エネルギー線により酸を発生する酸発生剤(D)をさらに含有し、(A)が塩基によりチオールを発生する化合物(A3)である場合は、活性エネルギー線により塩基を発生する塩基発生剤(E)をさらに含有する活性エネルギー線硬化型組成物である。
上記以外は参考発明である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、以下の効果を奏する。
(1)本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、低露光量で硬化が可能である。
(2)本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、薄膜でも硬化が可能である。
(3)本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、貯蔵安定性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、活性エネルギー線、酸及び塩基からなる群より選ばれる少なくとも1種によりチオールを発生する化合物(A)、重合性化合物(B)並びに活性エネルギー線重合開始剤(C)を含有する活性エネルギー線硬化型組成物であり、(A)が酸によりチオールを発生する化合物(A2)である場合は、活性エネルギー線により酸を発生する酸発生剤(D)をさらに含有し、(A)が塩基によりチオールを発生する化合物(A3)である場合は、活性エネルギー線により塩基を発生する塩基発生剤(E)をさらに含有する活性エネルギー線硬化型組成物である。
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、活性エネルギー線を照射する前は、組成物中にチオールを含んでいないので、貯蔵安定性が高い。
【0010】
本発明における化合物(A)は、活性エネルギー線、酸及び塩基から選ばれる少なくとも1種によりチオールを発生する化合物であり、活性エネルギー線によりチオールを発生する化合物(A1)、酸によりチオールを発生する化合物(A2)及び塩基によりチオールを発生する化合物(A3)が含まれる。
(A1)には、200nm〜800nmの波長に吸収領域を有する保護基、または少なくとも一つの水素原子が300nm〜800nmの波長に吸収領域を有する有機基で置換されたメチル基にてチオール基が保護されている化合物が含まれる。例えば、トリス{S−(9−メチルフルオレニル)}チオシアヌル酸及びS−ベンジル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール等が挙げられる。
(A2)には、酸により分解する保護基にてチオール基が保護されている化合物が含まれる。例えば、S−アセチルチオ尿素、S−ベンゾイル−2−メルカプトベンゾイミダゾール、S−(2−ピリジニルエチル−2−メルカプトピリミジン及びS−(t−ブトキシカルボニル)−4,6−ジメチル−2−メルカプトピリミジン等が挙げられる。
(A3)には、塩基により分解する保護基にてチオール基が保護されている化合物が含まれる。例えば、2−メルカプトベンゾイミダゾールのジスルフィド化物、チオシアヌル酸のジスルフィド化物及びS−(9−フルオレニルメチル)−5−メルカプト−1−メチルテトラゾール等が挙げられる。
【0011】
本発明における、活性エネルギー線、酸及び塩基から選ばれる少なくとも1種によりチオールを発生する化合物(A)のうち、チオールの発生効率の観点から、好ましいものとしては、下記一般式(1)〜(4)で表される化合物である。(A)は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
一般式(1)〜(4)で表される化合物は、共通骨格(−S−C=(N)−N)を有しており、この骨格を有していることにより、酸素阻害を抑制する効果が高くなり、硬化性(低露光量及び/又は薄膜でも硬化する)が向上する。
【0012】
【化1】
【0013】
式中、R1〜R3、R5〜R8は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜30の1価の炭化水素基であり、R4は炭素数2〜30の2価の炭化水素基であり、X1〜X6は活性エネルギー線、酸及び塩基からなる群より選ばれる少なくとも1種によりこれらと結合している硫黄原子との結合が切断される1価の置換基である。
【0014】
前記一般式(1)〜(4)におけるX1〜X6のうち、チオールの発生効率の観点から、好ましいものとしては、(A1)としては、フルオレニルメチル基及びベンジル基であり、(A2)としては、ピリジルエチレン基、t−ブトキシカルボニル基、アセチル基及びベンゾイル基であり、(A3)としては、フルオレニルメトキシカルボニル基及び下記一般式(5)〜(8)で表される置換基である。
【0015】
【化2】
【0016】
式中、R9〜R11、R13〜R16は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜30の1価の炭化水素基であり、R12は炭素数2〜30の2価の炭化水素基であり、*はそれが付された結合により一般式(5)〜(8)で表される置換基が、前記一般式(1)〜(4)におけるX1〜X6が結合している硫黄原子に結合していることを表す。
【0017】
前記化合物(A)として、チオールの発生効率の観点から、更に好ましくは、下記一般式(9)〜(17)で表される化合物、及び下記化学式(18)で表される構造単位を2個以上有する化合物から選ばれる1種以上である。
【化3】
【0018】
式中、X7〜X13はそれぞれ独立にピリジルエチレン基、t−ブトキシカルボニル基、フルオレニルメチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、アセチル基及びベンゾイル基からなる群から選ばれる1価の置換基である。
【0019】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物中の化合物(A)の含有量は、酸素阻害の抑制効果の観点及び硬化物の表面硬度の観点から、活性エネルギー線硬化型組成物の重量を基準として、好ましくは0.001〜30重量%、更に好ましくは0.01〜20重量%である。
【0020】
本発明で用いる化合物(A)は、例えば、有機溶剤中、チオ尿酸等のチオール化合物と、ハロゲン化物等のチオール基と反応する化合物とを、必要により触媒(トリエチルアミン等)の存在下で反応させた後、有機溶剤を減圧留去することで得ることができる。
【0021】
本発明における重合性化合物(B)としては、ラジカル重合性化合物及びイオン重合性化合物等の公知の化合物を用いることができる。(B)は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのうち、硬化速度の観点でラジカル重合性化合物が好ましい。また、必要により、ハイドロキノン、メチルエーテルハイドロキノン類等の重合禁止剤を併用してもよい。
重合性化合物(B)のうち、硬化性(低露光量及び/又は薄膜でも硬化する)の観点から、好ましいものとしては、例えば、下記エステル化合物(B1)、炭素数3〜35の(メタ)アクリルアミド化合物(B2)、(B1)以外の炭素数4〜100の(メタ)アク
リレート化合物(B3)、炭素数6〜35の芳香族ビニル化合物(B4)、炭素数3〜20のビニルエーテル(B5)等が挙げられ、更に好ましいものとしては、下記エステル化合物(B1)及び下記(メタ)アクリレート化合物(B31)である。(B1)は活性エネルギー線硬化型組成物の硬化物の表面硬度及び密着性の観点から好ましく、(B31)は酸素阻害の抑制効果の観点から好ましい。
エステル化合物(B1):エチレン性不飽和結合含有基(x)を有し、ウレタン基及びウレア基を有さないエステルであって、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル及びピロメリット酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種のエステル化合物。
メタアクリレート化合物(B31):エステル化合物(B1)以外の炭素数4〜100の(メタ)アクリレート化合物(B3)において、ウレタン基及び/又はウレア基を有する化合物。
尚、上記及び以下において、「アクリレート」、「メタクリレート」の双方又はいずれかを指す場合「(メタ)アクリレート」と、「アクリル」、「メタクリル」の双方又はいずれかを指す場合「(メタ)アクリル」と、それぞれ記載することがある。
【0022】
上記のエチレン性不飽和結合含有基(x)を有し、ウレタン基及びウレア基を有さないエステルであって、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル及びピロメリット酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種のエステル化合物(B1)は、例えば、エチレン性不飽和結合含有基(x)及び水酸基を有する化合物と、フタル酸(イソフタル酸及びテレフタル酸を含む)、トリメリット酸及びピロメリット酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸とを反応させることにより得ることができる。
【0023】
エステル化合物(B1)が有する、エチレン性不飽和結合含有基(x)として、硬化性(低露光量及び/又は薄膜でも硬化する)の観点から、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、1−プロペニル基及びアリル基が好ましく、さらに好ましいのはアリル基である。
エステル(B1)が複数の(x)を有する場合、複数の(x)はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0024】
エステル化合物(B1)のうち、硬化性(低露光量及び/又は薄膜でも硬化する)の観点から、好ましいものとしては、下記一般式(19)〜(21)で表される化合物である。(B1)は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
【化4】
【0026】
式中、R14〜R22は、それぞれ独立に下記一般式(22)〜(26)のいずれかで表される置換基である。
【0027】
【化5】
【0028】
式中、R23、R25、R27は、それぞれ独立に炭素数2〜12の2価の脂肪族炭化水素基であり、R24、R26、R28はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、*はそれが付された結合により一般式(22)〜(26)で表される置換基が上記一般式(19)〜(21)におけるオキシカルボニル基の酸素原子と結合していることを表す。
【0029】
一般式(19)〜(21)で表される化合物のうち、表面硬度及び密着性の観点から、好ましいのは一般式(20)又は(21)で表される化合物であり、さらに好ましいのは一般式(20)で表される化合物である。一般式(22)〜(26)で表される置換基のうち、表面硬度及び密着性の観点から、好ましいのは一般式(22)、(25)又は(26)で表される置換基であり、さらに好ましいのは一般式(26)で表される置換基である。
これらのうち、酸素阻害の抑制効果の観点から、特に好ましいのは、一般式(20)で表される化合物においてR16〜R18が一般式(22)で表される置換基でありR23がエチレン基でR24が水素原子である化合物、一般式(20)で表される化合物においてR16〜R18が一般式(25)で表される置換基でありR28が水素原子である化合物、一般式(20)で表される化合物においてR16〜R18が一般式(26)で表される置換基である化合物、一般式(21)で表される化合物においてR19〜R22が一般式(22)で表される置換基でありR23がエチレン基でR24が水素原子である化合物、及び一般式(21)で表される化合物においてR19〜R22が一般式(25)で表される置換基でありR28が水素原子である化合物であり、最も好ましいのは、一般式(20)で表される化合物においてR16〜R18が一般式(26)で表される置換基である化合物である。
【0030】
エステル化合物(B1)は、例えば、有機溶剤中、トリメリット酸等の酸と、エチレン性不飽和結合含有基(x)及び水酸基を有する化合物とを、必要により酸触媒(パラトルエンスルホン酸等)の存在下で反応させた後、有機溶剤を減圧留去することで得ることができる。
【0031】
炭素数3〜35の(メタ)アクリルアミド(B2)としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド及びN,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリロイルモルフォリン以外のものなどが挙げられる。
【0032】
上記エステル化合物(B1)以外の、炭素数4〜100の(メタ)アクリレート(B3)としては、例えば以下のウレタン基及びウレア基を有さない単官能〜六官能の(メタ)アクリレート、並びにウレタン基及び/又はウレア基を有する(メタ)アクリレート(B31)が挙げられる。
単官能(メタ)アクリレートとしては、エチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ
)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−n−ブチルシクロへキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、4−ブロモブチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピレンモノアクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシルカルビトール(メタ)アクリレート、アルコキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2−テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4−クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノビニルエーテルモノアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキサイドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキサイドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキサイド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキサイド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキサイドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキサイドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキサイドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴプロピレンオキサイドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、EO変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、PO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート及びEO変性−2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0033】
二官能(メタ)アクリレートとしては、1,4−ブタンジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオール(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリ
ン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート及びトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0034】
三官能の(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びエトキシ化グリセリントリアクリレート等が挙げられる。
【0035】
四官能の(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールのEO付加物のテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0036】
五官能の(メタ)アクリレートとしては、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0037】
六官能の(メタ)アクリレートとしては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート及びカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0038】
ウレタン基及び/又はウレア基を有する(メタ)アクリレート(B31)としては、上記単官能〜六官能の(メタ)アクリレートにおいて、分子中に水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートを含有する活性水素成分(H)と有機ポリイソシアネート成分(I)とを反応させて得られる(メタ)アクリレートが含まれる。
【0039】
活性水素成分(H)における分子中に水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートとしては、炭素数5〜8のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート[例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート]、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0040】
これらのうち、硬化性(低露光量及び/又は薄膜でも硬化する)の観点から好ましいのは、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートである。
【0041】
活性水素成分(H)における上記{分子中に水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有す
る(メタ)アクリレート}以外の成分としては、ポリオール及び鎖伸長剤等が挙げられる。
【0042】
ポリオールとしては、水酸基当量(水酸基価から算出される水酸基1個当たりの平均分子量)150以上の高分子ポリオール及び水酸基当量150未満の低分子ポリオールが挙げられる。
【0043】
水酸基当量150以上の高分子ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0044】
ポリエーテルポリオールとしては、脂肪族ポリエーテルポリオール及び芳香族環含有ポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0045】
脂肪族ポリエーテルポリオールとしては、例えばポリオキシエチレンポリオール(ポリエチレングリコール等)、ポリオキシプロピレンポリオール(ポリプロピレングリコール等)、ポリオキシエチレン/プロピレンポリオール及びポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
【0046】
芳香族ポリエーテルポリオールとしては、ビスフェノール骨格を有するポリオール、例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド(以下、EOと略記)付加物[ビスフェノールAのEO2モル付加物、ビスフェノールAのEO4モル付加物、ビスフェノールAのEO6モル付加物、ビスフェノールAのEO8モル付加物、ビスフェノールAのEO10モル付加物及びビスフェノールAのEO20モル付加物等]及びビスフェノールAのプロピレンオキサイド(以下、POと略記)付加物[ビスフェノールAのPO2モル付加物、ビスフェノールAのPO3モル付加物及びビスフェノールAのPO5モル付加物等]並びにレゾルシンのEO又はPO付加物等が挙げられる。
【0047】
ポリエーテルポリオールは、脂肪族又は芳香族低分子量活性水素原子含有化合物に、付加触媒(アルカリ金属水酸化物及びルイス酸等の公知の触媒)の存在下にEO又はPOを開環付加反応させることで得られる。
【0048】
ポリエーテルポリオールの数平均分子量(以下、Mnと略記)は通常300以上、硬化性(低露光量及び/又は薄膜でも硬化する)及び粘度(作業性)の観点から、好ましくは300〜10,000、さらに好ましくは300〜6,000である。本発明におけるポリオールの数平均分子量の測定は、溶剤としてテトラヒドロフランを用い、ポリエチレングリコールを標準としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される。但し、低分子ポリオールのMnは化学式からの計算値である。
【0049】
ポリエステルポリオールとしては、縮合型ポリエステル、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール及びヒマシ油系ポリオールが挙げられる。
【0050】
縮合型ポリエステルは、低分子量(Mn300以下)多価アルコールと多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体〔酸無水物、酸ハロゲン化物、若しくは低分子量アルキル(アルキル基の炭素数1〜4)エステル〕とのポリエステルである。
低分子量多価アルコールとしては、水酸基当量が30以上150未満の2価〜8価又はそれ以上の脂肪族多価アルコール及び水酸基当量が30以上150未満の2価〜8価又はそれ以上のフェノールのアルキレンオキサイド低モル付加物が使用できる。
縮合型ポリエステルに使用できる低分子量多価アルコールのうち、硬化性(低露光量及び/又は薄膜でも硬化する)及び粘度(作業性)の観点から、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサ
ングリコール、ビスフェノールAのEO又はPO低モル付加物及びこれらの併用が好ましい。
【0051】
縮合型ポリエステルに使用できる多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体としては、脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フマル酸及びマレイン酸等)、脂環式ジカルボン酸(ダイマー酸等)、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸及びフタル酸等)及び3価又はそれ以上のポリカルボン酸(トリメリット酸及びピロメリット酸等)、これらの無水物(無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸及び無水トリメリット酸等)、これらの酸ハロゲン化物(アジピン酸ジクロライド等)、これらの低分子量アルキルエステル(コハク酸ジメチル及びフタル酸ジメチル等)及びこれらの併用が挙げられる。
【0052】
縮合型ポリエステルとしては、例えばポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンイソフタレートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレンプロピレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリブチレンヘキサメチレンアジペートジオール、ポリジエチレンアジペートジオール、ポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペートジオール、ポリ(3−メチルペンチレンアジペート)ジオール、ポリエチレンアゼレートジオール、ポリエチレンセバケートジオール、ポリブチレンアゼレートジオール、ポリブチレンセバケートジオール及びポリネオペンチルテレフタレートジオール等が挙げられる。
【0053】
ポリラクトンポリオールは、上記低分子量多価アルコールへのラクトンの重付加物であり、ラクトンとしては、炭素数4〜12のラクトンが使用でき、例えばγ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン及びε−カプロラクトン等が挙げられる。
ポリラクトンポリオールとしては、例えばポリカプロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオール及びポリカプロラクトントリオール等が挙げられる。
【0054】
ポリカーボネートポリオールは、低分子量多価アルコールへのアルキレンカーボネートの重付加物であり、アルキレンカーボネートとしては炭素数2〜8のアルキレンカーボネートが使用でき、例えばエチレンカーボネート及びプロピレンカーボネート等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールの市販品としては、ニッポラン980R[Mn=2,000,日本ポリウレタン工業(株)製]、T5652[Mn=2,000、旭化成(株)製]及びT4672[Mn=2,000、旭化成(株)製]が挙げられる。
【0055】
ヒマシ油系ポリオールには、ヒマシ油及びポリオール又はアルキレンオキサイドで変性されたヒマシ油が含まれる。変性ヒマシ油はヒマシ油とポリオールとのエステル交換及び/又はアルキレンオキサイド付加により製造できる。ヒマシ油系ポリオールとしては、ヒマシ油、トリメチロールプロパン変性ヒマシ油、ペンタエリスリトール変性ヒマシ油及びヒマシ油のEO(4〜30モル)付加物等が挙げられる。
【0056】
水酸基当量150未満の低分子ポリオールとしては、脂肪族2価アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール及び1,6−ヘキサンジオール等)及び脂肪族3価アルコール(トリメチロールプロパン及びグリセリン等)が挙げられる。
ポリオールは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0057】
鎖伸長剤としては、水、炭素数2〜10のジアミン(例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、トルエンジアミン及びピペラジン)、ポリアルキレンポリアミン(例えばジエチレントリアミン及びトリエチレンテトラミン)、ヒドラジン又はヒドラジン骨格を有する化合物(酸ヒドラジド等)(例えばアジピン酸ジヒドラジド等の二塩基酸ジヒドラジド)並びに炭素数2〜10のアミノアルコール(例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール及びトリエタノールアミン等)等が挙げられる。
鎖伸長剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0058】
有機ポリイソシアネート成分(I)としては、2〜3個又はそれ以上のイソシアネート基を有する炭素数6〜20(イソシアネート基中の炭素を除く、以下同様)の芳香族ポリイソシアネート、炭素数2〜18の脂肪族ポリイソシアネート、炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネート及び炭素数8〜15の芳香脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。
【0059】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば1,3−又は1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−又は2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート、m−又はp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートが挙げられる。
【0060】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えばエチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート及び2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエートが挙げられる。
【0061】
脂環式ポリイソシアネートとしては、例えばイソホロンジイソシアネート、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス (2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート及び2,5−又は2,6−ノルボルナンジイソシアネートが挙げられる。
【0062】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えばm−又はp−キシリレンジイソシアネート及びα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0063】
ポリイソシアネートの内で表面硬度及び密着性の観点から好ましいのは、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート及び1,5−ナフタレンジイソシアネートである。
有機ポリイソシアネート成分(I)は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0064】
本発明におけるウレタン基及び/又はウレア基を有する(メタ)アクリレート(B31)は、通常の方法により製造することができ、例えば、分子中に水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートを必須成分として含有する活性水素成分(H)と有機ポリイソシアネート成分(I)とを一括して反応させてもよいし、分子中に水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートを含有しない活性水素成分(H)と有機ポリイソシアネート成分(I)とを反応させて得られるイソシアネート基を末端に有するウレタン/ウレアプレポリマーと分子中に水酸基及び(メタ)アクリロイル基
を有する(メタ)アクリレートとを反応させてもよい。
【0065】
有機ポリイソシアネート成分(I)のイソシアネート基の当量に対する活性水素成分(H)の活性水素の当量の比率(活性水素の当量/イソシアネート基の当量)は、0.1〜10が好ましく、0.9〜1.2が特に好ましい。また、反応温度は、30〜150℃が好ましく、50〜100℃が更に好ましい。尚、反応の終点は、例えば、赤外線吸収スペクトルにおけるイソシアネート基の吸収(2250cm-1)の消失や、JIS K 7301−1995に記載の方法でイソシアネート基含有率を求めることで確認できる。
【0066】
重合性化合物(B)中のウレタン基及び/又はウレア基を有する(メタ)アクリレート(B31)の含有量は、酸素阻害の抑制効果の観点及び硬化性(低露光量及び/又は薄膜でも硬化する)の観点から、重合性化合物(B)の重量を基準として、好ましくは0.1〜100重量%、さらに好ましくは5〜90重量%である。
【0067】
炭素数6〜35の芳香族ビニル化合物(B4)としては、ビニルチオフェン、ビニルフラン、ビニルピリジン、スチレン、メチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロルメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、3−プロピルスチレン、4−プロピルスチレン、3−ブチルスチレン、4−ブチルスチレン、3−ヘキシルスチレン、4−ヘキシルスチレン、3−オクチルスチレン、4−オクチルスチレン、3−(2−エチルヘキシル)スチレン、4−(2−エチルヘキシル)スチレン、アリルスチレン、イソプロペニルスチレン、ブテニルスチレン、オクテニルスチレン、4−t−ブトキシカルボニルスチレン、4−メトキシスチレン及び4−t−ブトキシスチレン等が挙げられる。
【0068】
炭素数3〜35のビニルエーテル(B5)としては、例えば以下の単官能又は多官能ビニルエーテルが挙げられる。
単官能ビニルエーテルとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフリフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル及びフェノキシポリエチレングリコールビニルエーテルが挙げられる。
【0069】
多官能ビニルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテル等のジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリ
メチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル及びプロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルが挙げられる。
【0070】
(B1)〜(B5)以外のその他の重合性化合物(B6)としては、アクリロニトリル、ビニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及びバーサチック酸ビニル等)、アリルエステル(酢酸アリル等)、ハロゲン含有単量体(塩化ビニリデン及び塩化ビニル等)及びオレフィン(エチレン及びプロピレン等)等が挙げられる。
【0071】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物中の重合性化合物(B)の含有量は、活性エネルギー線硬化型組成物が(A)、(B)及び(C)を含有する組成物である場合は、酸素阻害の抑制効果の観点及び硬化性(低露光量及び/又は薄膜でも硬化する)の観点から、活性エネルギー線硬化型組成物の重量を基準として、好ましくは40〜99.949重量%、更に好ましくは60〜99.89重量%である。
また、活性エネルギー線硬化型組成物が(A)、(B)、(C)及び(D)を含有する組成物、又は(A)、(B)、(C)及び(E)を含有する組成物である場合は、酸素阻害の抑制効果の観点及び硬化性(低露光量及び/又は薄膜でも硬化する)の観点から、活性エネルギー線硬化型組成物の重量を基準として、好ましくは10〜99.948重量%、更に好ましくは35〜99.88重量%である。
【0072】
また、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物中の、エステル化合物(B1)の含有量は、表面硬度及び密着性の観点から、活性エネルギー線硬化型組成物の重量を基準として、好ましくは0〜80重量%、更に好ましくは1〜60重量%、特に好ましくは5〜40重量%である。
【0073】
本発明における活性エネルギー線重合開始剤(C)としては、例えばアシルホスフィンオキサイド骨格を有する重合開始剤(C1)、α−アミノアセトフェノン骨格を有する重合開始剤(C2)、ベンジルケタール骨格を有する重合開始剤(C3)、α−ヒドロキシアセトフェノン骨格を有する重合開始剤(C4)、ベンゾイン骨格を有する重合開始剤(C5)、オキシムエステル骨格を有する重合開始剤(C6)、チタノセン骨格を有する重合開始剤(C7)、有機過酸化物重合開始剤(C8)、アゾ化合物重合開始剤(C9)及びその他の重合開始剤(C10)が挙げられる。(C)は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ここで、アシルホスフィンオキサイド骨格を有する重合開始剤(C1)とは、アシルホスフィンオキサイドの一部が別の基に置換した化合物である重合開始剤を意味する。α−アミノアセトフェノン骨格を有する重合開始剤(C2)とは、α−アミノアセトフェノンの一部が別の基に置換した化合物である重合開始剤を意味する。ベンジルケタール骨格を有する重合開始剤(C3)とは、α−ジヒドロキシアセトフェノンの一部が別の基に置換した化合物である重合開始剤を意味する。α−ヒドロキシアセトフェノン骨格を有する重合開始剤(C4)とは、α−モノヒドロキシアセトフェノンの水酸基以外の一部が別の基に置換した化合物である重合開始剤を意味する。ベンゾイン骨格を有する重合開始剤(C5)とは、ベンゾインの一部が別の基に置換した化合物である重合開始剤を意味する。オキシムエステル骨格を有する重合開始剤(C6)とは、N−アセチルジメチルオキシムの
一部が別の基に置換した化合物である重合開始剤を意味する。チタノセン骨格を有する重合開始剤(C7)とは、チタノセンの一部が別の基に置換した化合物である重合開始剤を意味する。有機過酸化物重合開始剤(C8)とは、ペルオキシ基を有する化合物である重合開始剤を意味する。また、アゾ化合物重合開始剤(C9)とは、アゾ基を有する化合物である重合開始剤を意味する。
【0074】
アシルホスフィンオキサイド骨格を有する重合開始剤(C1)としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド[BASFジャパン社製(LUCILIN TPO)]及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド[BASFジャパン社製(IRGACURE 819)]等が挙げられる。
【0075】
α−アミノアセトフェノン骨格を有する重合開始剤(C2)としては、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン[BASFジャパン社製(IRGACURE 907)]、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン[BASFジャパン社製(IRGACURE 369)]及び1,2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン[BASFジャパン社製(IRGACURE 379)]等が挙げられる。
【0076】
ベンジルケタール骨格を有する重合開始剤(C3)としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン[BASFジャパン社製(IRGACURE 651)]等が挙げられる。
【0077】
α−ヒドロキシアセトフェノン骨格を有する重合開始剤(C4)としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン[BASFジャパン社製(IRGACURE 184)]、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン[BASFジャパン社製(DAROCUR 1173)]、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン[BASFジャパン社製(IRGACURE 2959)]及び2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン[BASFジャパン社製(IRGACURE 127)]等が挙げられる。
【0078】
ベンゾイン骨格を有する重合開始剤(C5)としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテル等が挙げられる。
【0079】
オキシムエステル骨格を有する重合開始剤(C6)としては、1,2−オクタンジオン−1−(4−[フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)][BASFジャパン社製(IRGACURE OXE 01)]及びエタノン−1−(9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(0−アセチルオキシム)[BASFジャパン社製(IRGACURE OXE 02)]等が挙げられる。
【0080】
チタノセン骨格を有する重合開始剤(C7)としては、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム[BASFジャパン社製(IRGACURE 784)]等が挙げられる。
【0081】
有機過酸化物重合開始剤(C8)としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ−
(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、2,5,−ジメチル−2,5,−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3,−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド及びt−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド等が挙げられる。
【0082】
アゾ化合物重合開始剤(C9)としては、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)及び2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等が挙げられる。
【0083】
その他の重合開始剤(C10)としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン等が挙げられる。
【0084】
これらのうち、光硬化性の観点から好ましいのは、アシルホスフィンオキサイド骨格を有する重合開始剤(C1)、α−アミノアセトフェノン骨格を有する重合開始剤(C2)、ベンジルケタール骨格を有する重合開始剤(C3)、α−ヒドロキシアセトフェノン骨格を有する重合開始剤(C4)、ベンゾイン骨格を有する重合開始剤(C5)、オキシムエステル骨格を有する重合開始剤(C6)及びチタノセン骨格を有する重合開始剤(C7)であり、さらに好ましいのはアシルホスフィンオキサイド骨格を有する重合開始剤(C1)である。
【0085】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物中の活性エネルギー線重合開始剤(C)の含有量は、光硬化性の観点から、活性エネルギー線硬化型組成物の重量を基準として、好ましくは0.05〜30重量%、更に好ましくは0.1〜20重量%である。
【0086】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、(A)として(A2)を含有する場合は、さらに(D)を含有する。また、(A)として(A3)を含有する場合は、さらに(E)を含有する。(A)として(A2)及び/又は(A3)を含有する場合は、さらに、活性エネルギー線により酸を発生する酸発生剤(D)及び/又は活性エネルギー線により塩基を発生する塩基発生剤(E)を含有する。
(A2)を含有する場合、(D)から発生した酸により(A2)からチオールが発生し、硬化反応での酸素阻害を抑制し、硬化性が向上する。また、(A3)を含有する場合、(E)により発生した塩基により(A3)からチオールが発生し、硬化反応での酸素阻害を抑制し、硬化性が向上する。また、(A)として(A1)を含有する場合も、活性エネルギー線硬化型組成物中に(D)及び/又は(E)を含有することにより、活性エネルギー重合開始剤(C)だけの場合よりも、組成物の内部の硬化性が向上するので好ましい。
【0087】
活性エネルギー線により酸を発生する酸発生剤(D)としては、例えばスルホニウム塩(D1)及びヨードニウム塩(D2)が挙げられる。(D)は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0088】
スルホニウム塩(D1)としては、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート、トリフェニルスルホニウムブロミド、トリ−p−トリルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、トリ−p−トリルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、[p−(フェニルメルカプト)フェニル]ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスファート[サンアプロ(株)製「CPI−100P]及び[p−(フェニルメルカプト)フェニル]ジフェニルスルホニウム[トリ(パーフルオロエチル)]トリフルオロホスファート等が
挙げられる。
【0089】
ヨードニウム塩(D2)としては、ヨードニウム(4−メチルフェニル){4−(2−メチルプロピル)フェニル}−ヘキサフルオロフォスフェート[BASFジャパン社製(DAROCUR 250)]、ヨードニウム[ビス(4−t−ブチルフェニル)]ヘキサフルオロフォスフェート、ヨードニウム[ビス(4−t−ブチルフェニル)]トリフルオロ[トリス(パーフルオロエチル)]フォスフェート、ヨードニウム[ビス(4−メトキシフェニル)]トリフルオロ[トリス(パーフルオロエチル)]フォスフェート、ヨードニウム[ビス(4−メトキシフェニル)][テトラキス(パーフルフェニル)]ボレート及び下記化学式(27)で表される化合物等が挙げられる。
【0090】
【化6】
【0091】
これらのうち、光硬化性の観点から化学式(27)で表される化合物が好ましい。
また、酸発生剤は、光硬化性の観点から、活性エネルギー線により分解して発生した酸の強度が高いものが好ましい。酸強度は、BF4-<PF6-<AsF6-<SbF6-の順に高くなる。
また、毒性が低く、光硬化性が高い観点から、特に好ましくはPF3(C2F5)3-であ
る。
活性エネルギー線硬化型組成物中に含まれる(C)と(D)との組み合わせは、光硬化性の観点から、アシルホスフィンオキサイド骨格を有する重合開始剤(C1)とヨードニウム塩(D2)との組み合わせが好ましい。
【0092】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物中の酸発生剤(D)の含有量は、光硬化性の観点から、活性エネルギー線硬化型組成物の重量を基準として、好ましくは0.001〜30重量%、更に好ましくは0.05〜25重量%、特に好ましくは0.1〜20重量%である。
活性エネルギー線硬化型組成物中の化合物(A)と酸発生剤(D)との重量比{(A)の重量/(D)の重量}は、酸素阻害抑制の観点から、0.01/1〜10/1が好ましく、さらに好ましくは0.1/1〜5/1である。
【0093】
本発明における塩基発生剤(E)は、特に限定されないが、オキシム骨格を有する化合物(E1)、4級アンモニウム塩骨格を有する化合物(E2)及び4級アミジン塩骨格を有する化合物(E3)が含まれる。
【0094】
オキシム骨格を有する化合物(E1)としては、例えば、O−アシロキシム等が挙げられる。
4級アンモニウム塩骨格を有する化合物(E2)及び4級アミジン塩骨格を有する化合物(E3)としては、下記一般式(28)〜(30)で表される化合物等が挙げられ、より好ましくは下記一般式(33)で表される化合物等が挙げられる。
【0095】
【化7】
【0096】
式中、R29〜R56は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアシル基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、ニトロ基、カルボキシル基、水酸基、メルカプト基、アミノ基、シアノ基、フェニル基、ナフチル基、下記一般式(31)で表される基及び下記一般式(32)で表される基からなる群から選ばれる原子又は置換基であって、R29〜R38のいずれか1つは下記一般式(31)又は下記一般式(32)で表される置換基であり、R39〜R46のいずれか1つは下記一般式(31)又は下記一般式(32)で表される置換基であり、R47〜R56のいずれか1つは下記一般式(31)又は下記一般式(32)で表される置換基である。]
【0097】
【化8】
【0098】
式中、R57〜R60は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基であり、R61〜R63は、それぞれ独立に水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基であり、(X14-及び(X15-は、それぞれ陰イオンを表し、aは2〜4の整数であり、*はそれが付された結合により各置換基が、上記一般式(28)〜(30)における炭素原子に結合していることを表す。
【0099】
【化9】
【0100】
式中、(X16-は、陰イオンを表す。
【0101】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が挙げられ、フッ素及び塩素が好ましい。
【0102】
炭素数1〜20のアシル基としては、例えばホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、イソブチリル基、バレリル基及びシクロヘキシルカルボニル基等が挙げられる。
【0103】
炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−又はiso−プロピル基、n−、sec−又はtert−ブチル基、n−、iso−又はneo−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基等が挙げられる。
【0104】
炭素数1〜20のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−又はiso−プロポキシ基、n−、sec−又はtert−ブトキシ基、n−、iso−、又はneo−ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基及びオクチルオキシ基等が挙げられる。
【0105】
炭素数1〜20のアルキルチオ基としては、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n−又はiso−プロピルチオ基、n−、sec−又はtert−ブチルチオ基、n−、iso−又はneo−ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基及びオクチルチオ基等が挙げられる。
【0106】
炭素数1〜20のアルキルシリル基としては、例えばトリメチルシリル基及びトリイソプロピルシリル基等のトリアルキルシリル基等が挙げられる。ここでアルキルは直鎖構造でも分岐構造でも構わない。
【0107】
一般式(28)で表される化合物はアントラセン骨格、一般式(29)で表される化合物はチオキサントン骨格、一般式(30)で表される化合物はベンゾフェノン骨格を有する化合物であり、それぞれi線(365nm)付近に最大吸収波長を有する化合物の一例である。R29〜R56は吸収波長の調整、感度の調整、熱安定性、反応性、分解性等を考慮して変性させるものであり、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、ニトロ基、カルボキシル基、水酸基、メルカプト基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、炭素数1〜20のアシル基、アミノ基、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基、ナフチル基からなる群から選ばれる原子又は置換基で目的に応じて変性される。但し、R29〜R56のいずれか1つは一般式(31)又は一般式(32)で表される置換基である。
【0108】
一般式(31)で表される置換基は、カチオン化したアミジン骨格を有する置換基であり、aは2〜4の整数である。この置換基としては、aが4である1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセンがカチオン化した構造を有する置換基及びaが2である1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネンがカチオン化した構造を有する置換基が好ましい。R57とR58は水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、好ましいのは水素原子及び炭素数1〜10のアルキル基、更に好ましいのは水素原子及び炭素数1〜5のアルキル基である。
【0109】
一般式(32)は4級アンモニウム構造を有しており、R9とR60は水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、好ましくは水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基、更に好ましくは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。また、R61〜R63は水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基を表し、直鎖でも分岐でも環状でもよい。R61〜R63は好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、特に好ましくは炭素数1〜5のアルキル基である。
【0110】
一般式(31)で表される化合物は、活性エネルギー線の照射により、R57とR58が結合した炭素と窒素の間の結合が解裂してアミジン骨格を有する塩基性化合物を生成し、一般式(32)で表される化合物は活性エネルギー線の照射により、R59とR60が結合した炭素と窒素の間の結合が解裂して3級アミンが生成する。本発明においては、光硬化性の観点から、活性エネルギー線により分解して発生した塩基の強度が高いものが好ましく、具体的には、一般式(31)で表される置換基を有する化合物が好ましく、さらに好ましくは一般式(31)においてaが4である1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセンがカチオン化した置換基を有する化合物である。
【0111】
一般式(31)〜(33)において(X14-〜(X16-で表される陰イオンとしては、ハロゲン化物アニオン、水酸化物アニオン、チオシアナートアニオン、炭素数1〜4のジアルキルジチオカルバメートアニオン、炭酸アニオン、炭酸水素アニオン、ハロゲンで置換されていてもよい脂肪族又は芳香族カルボキシアニオン(安息香酸アニオン、トリフルオロ酢酸アニオン、パーフルオロアルキル酢酸アニオン、及びフェニルグリオキシル酸アニオン等)、ハロゲンで置換されていてもよい脂肪族又は芳香族スルホキシアニオン(トリフルオロメタンスルホン酸アニオン等)、6フッ化アンチモネートアニオン(SbF6−)、ホスフィンアニオン[6フッ化ホスフィンアニオン(PF6-)及び3フッ化トリス(パーフルオロエチル)ホスフィンアニオン(PF3(C253-)等]及びボレートアニオン(テトラフェニルボレート及びブチルトリフェニルボレートアニオン等)等が挙げられ、これらの内、光分解性の観点から、脂肪族又は芳香族カルボキシイオン及びボレートアニオンが好ましい。
【0112】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物中の塩基発生剤(E)の添加量は、酸素阻害の抑制効果の観点から、活性エネルギー線硬化型組成物の重量を基準として、好ましくは0.001〜30重量%、更に好ましくは0.05〜25重量%、特に好ましくは0.1〜20重量%である。
活性エネルギー線硬化型組成物中の化合物(A)と塩基発生剤(E)との重量比{(A)の重量/(E)の重量}は、酸素阻害抑制の観点から、0.01/1〜10/1が好ましく、さらに好ましくは0.1/1〜5/1である。
【0113】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物には、必要により有機溶剤、増感剤、密着性付与剤(シランカップリング剤等)、レベリング剤及び重合禁止剤等を添加してもいい。
【0114】
有機溶剤としては、グリコールエーテル(エチレングリコールモノアルキルエーテル及びプロピレングリコールモノアルキルエーテル等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン等)、エステル(エチルアセテート、ブチルアセテート、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート及びプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート等)、芳香族炭化水素(トルエン、キシレン、メシチレン及びリモネン等)、アルコール(メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ゲラニオール、リナロール及びシトロネロール等)及びエーテル(テトラヒドロフラン及び1,8−シネオール等)等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
有機溶剤の添加量は、活性エネルギー線硬化型組成物の重量に対して0〜400重量%であることが好ましく、更に好ましくは3〜350重量%、特に好ましくは5〜300重量%である。
【0115】
増感剤としては、ケトクマリン、フルオレン、チオキサントン、アントラキノン、ナフ
チアゾリン、ビアセチル、ベンジル及びこれらの誘導体、ペリレン並びに置換アントラセン等が挙げられる。増感剤の添加量は、活性エネルギー線硬化型組成物の重量に対して0〜100重量%が好ましく、更に好ましくは1〜95重量%、特に好ましくは5〜90重量%である。
【0116】
密着性付与剤としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、尿素プロピルトリエトキシシラン、トリス(アセチルアセトネート)アルミニウム及びアセチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。密着性付与剤の添加量は、活性エネルギー線硬化型組成物の重量に対して0〜100重量%が好ましく、更に好ましくは1〜95重量%、特に好ましくは5〜90重量%である。
【0117】
レベリング剤としては、フッ素系のレベリング剤(パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物等)、シリコーン系のレベリング剤(アミノポリエーテル変性シリコーン、メトキシ変性シリコーン及びポリエーテル変性シリコーン等)が挙げられる。レベリング剤の添加量は、活性エネルギー線硬化型組成物の重量に対して、添加効果及び透明性の観点から好ましくは0〜20重量%、更に好ましくは0.05〜10重量%、特に好ましくは0.1〜5重量%である。
【0118】
重合禁止剤としては、ハイドロキノン及びメチルエーテルハイドロキノン類等が挙げられる。重合禁止剤の添加量は、活性エネルギー線硬化型組成物の重量に対して0〜2重量%が好ましく、更に好ましくは0〜0.5重量%である。
【0119】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、更に、使用目的に合わせて、無機微粒子、分散剤、消泡剤、チクソトロピー付与剤、スリップ剤、難燃剤、帯電防止剤、酸化防止剤及び紫外線吸収剤等、活性エネルギー線硬化型組成物、感光性組成物、熱硬化性組成物、塗料に添加可能な公知の添加剤を添加することができる。具体的には、公知文献(特開2010−132895号公報、特開2009−030047号公報、特開2010−222554号公報及び2008−116493号公報等)等に記載のものが挙げられる。
【0120】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、活性エネルギー線、酸及び塩基からなる群から選ばれる少なくとも1種によりチオールを発生する化合物(A)、重合性化合物(B)、活性エネルギー線重合開始剤(C)、必要により、活性エネルギー線により酸を発生する酸発生剤(D)及び活性エネルギー線により塩基を発生する塩基発生剤(E)の少なくとも一方、並びに必要により有機溶剤その他の成分等を、ディスパーサー等で混合撹拌することで得られる。混合撹拌温度は、通常10℃〜40℃、好ましくは20℃〜30℃である。
【0121】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、更にカルボキシル基を有するポリマーを添加することによりネガ型レジストパターンの形成に使用することができる。
【0122】
本発明におけるカルボキシル基を有するポリマーとしては、クレゾールノボラック型酸変性エポキシアクリレート樹脂等の公知の化合物を用いることができ、例えば、CCR−1218H、CCR−1159H、CCR−1222H、CCR−1314H、PCR−1191H、TCR−1335H、ZAR−2001H、及びZCR−1569H[以上、全て日本化薬(株)製]等が挙げられる。カルボキシル基を有するポリマーの添加量は、活性エネルギー線硬化型組成物の重量に対して、現像性の観点から、好ましくは0〜200重量%、更に好ましくは0〜100重量%である。
【0123】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、塗料及びインキ等に従来使用されている顔料を添加することによりUV硬化インクに使用することができる。顔料の添加量は、活性エネルギー線硬化型組成物の重量に対して、隠蔽性及び硬化性の観点から、好ましくは0〜300重量%、更に好ましくは0〜200重量%である。
【0124】
顔料としては、黄鉛、亜鉛黄、紺青、硫酸バリウム、カドミウムレッド、酸化チタン、亜鉛華、ベンガラ、アルミナ、炭酸カルシウム、群青、カーボンブラック、グラファイト及びチタンブラック等が挙げられる。
【0125】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、顔料を用いる場合その分散性及び活性エネルギー線硬化型組成物の保存安定性を向上させるために、顔料分散剤を添加できる。
顔料分散剤としては、ビックケミー社製顔料分散剤(Anti−Terra−U、Disperbyk−101、103、106、110、161、162、164、166、167、168、170、174、182、184及び2020等)、味の素ファインテクノ社製顔料分散剤(アジスパーPB711、PB821、PB814、PN411及びPA111等)、ルーブリゾール社製顔料分散剤(ソルスパーズ5000、12000、32000、33000及び39000等)が挙げられる。これらの顔料分散剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。顔料分散剤の添加量は、活性エネルギー線硬化型組成物の重量に対して、隠蔽性及び硬化性の観点から好ましくは0〜20重量%、更に好ましくは0〜10重量%である。
【0126】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物の基材への塗布方法としては、スピンコート、ロールコート及びスプレーコート等の公知のコーティング法並びに平版印刷、カルトン印刷、金属印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷及びグラビア印刷といった公知の印刷法を適用できる。また、微細液滴を連続して吐出するインクジェット方式の塗布も適用できる。
塗工膜厚は、硬化乾燥後の膜厚として、0.5〜300μmが好ましく、乾燥性及び硬化性の観点から、さらに好ましい上限は250μmであり、耐摩耗性、耐溶剤性及び耐汚染性の観点から、さらに好ましい下限は1μmである。
【0127】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を有機溶剤で希釈して使用する場合は、塗工後に乾燥することが好ましい。乾燥方法としては、例えば熱風乾燥(ドライヤー等)が挙げられる。乾燥温度は、10〜200℃が好ましく、塗膜の平滑性及び外観の観点からさらに好ましい上限は150℃、乾燥速度の観点からさらに好ましい下限は30℃である。
【0128】
本発明における活性エネルギー線としては、活性光線及び電子線等が挙げられる。
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を活性光線照射で硬化させる際のエネルギー源としては、一般的に使用されている高圧水銀灯の他、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ及びハイパワーメタルハライドランプ等(UV・EB硬化技術の最新動向、ラドテック研究会編、シーエムシー出版、138頁、2006)が使用できる。また、LED光源を使用した照射装置も好適に使用できる。
【0129】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を電子線照射で硬化させる際のエネルギー源としては、一般的に使用されている電子線照射装置を使用することができる。
電子線の照射量(Mrad)は、通常0.5〜20、活性エネルギー線硬化型組成物の硬化性、硬化物の可撓性並びに硬化膜及び基材の損傷防止の観点から、好ましくは1〜15である。
【0130】
活性光線又は電子線の照射時及び/又は照射後に、酸発生剤(D)及び/又は塩基発生剤(E)から発生した酸及び/又は塩基を拡散させる目的で、活性エネルギー線硬化型組
成物の温度を30℃〜200℃にしてもよく、さらに好ましくは35℃〜150℃、次にさらに好ましくは40℃〜120℃である。
【実施例】
【0131】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に規定しない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
なお、実施例5〜6、17、29〜30、40、および44は、参考例である。
【0132】
製造例1
[チオールを発生する化合物(A1−1){化学式(34)で表される化合物}の合成]
【0133】
【化10】
【0134】
温度計、撹拌機を備えたフラスコに、チオシアヌル酸177部、トリエチルアミン100部、アセトン500部を仕込み、氷浴にて液温を20℃以下に保ちながら、9−(塩化メチル)フルオレン644部を少しずつ滴下した後、室温(約25℃)にもどし、更に2時間攪拌して反応液を得た。酢酸エチル500部、5%NaOH水溶液500部を加えて有機層を洗浄した後、分液操作にて水層を除去し、有機層を130部の水で3回洗浄した。ついで有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥した後、酢酸エチルを減圧留去して、黄色固体として(A1−1)604部を得た(収率85%)。
【0135】
製造例2
[チオールを発生する化合物(A1−2){化学式(35)で表される化合物}の合成]
【0136】
【化11】
【0137】
「チオシアヌル酸177部」を「3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール101部」に、「9−(塩化メチル)フルオレン644部」を「ベンジルクロライド127部」に変更する以外は製造例1と同様にして黄色固体として(A1−2)182部を得た(収率95%)。
【0138】
製造例3
[チオールを発生する化合物(A2−1){化学式(36)で表される化合物}の合成]
【0139】
【化12】
【0140】
「チオシアヌル酸177部」を「チオ尿素76部」に、「9−(塩化メチル)フルオレン644部」を「塩化アセチル79部」に変更する以外は製造例1と同様にして淡黄色固体として(A2−1)109部を得た(収率92%)。
【0141】
製造例4
[チオールを発生する化合物(A2−2){化学式(37)で表される化合物}の合成]
【0142】
【化13】
【0143】
「チオシアヌル酸177部」を「2−メルカプトベンゾイミダゾール150部」に、「9−(塩化メチル)フルオレン644部」を「塩化ベンゾイル141部」に変更する以外は製造例1と同様にして黄色固体として(A2−2)240部を得た(収率95%)。
【0144】
製造例5
[チオールを発生する化合物(A2−3){化学式(38)で表される化合物}の合成]
【0145】
【化14】
【0146】
「チオシアヌル酸177部」を「2−メルカプトピリミジン112部」に、「9−(塩
化メチル)フルオレン644部」を「ビニルピリジン105部」に変更する以外は製造例1と同様にして黄色固体として(A2−3)213部を得た(収率98%)。
【0147】
製造例6
[チオールを発生する化合物(A2−4){化学式(39)で表される化合物}の合成]
【0148】
【化15】
【0149】
「チオシアヌル酸177部」を「4,6−ジメチル−2−メルカプトピリミジン140部」に、「9−(塩化メチル)フルオレン644部」を「二炭酸ジ−tert−ブチル218部」に変更する以外は製造例1と同様にして黄色固体として(A2−4)240部を得た(収率100%)。
【0150】
製造例7
[チオールを発生する化合物(A3−1){化学式(15)で表される化合物}の合成]
【0151】
【化16】
【0152】
温度計、撹拌機を備えたフラスコに、2−メルカプトベンゾイミダゾール150部、過酸化水素水500部を仕込み、氷浴にて液温を20℃以下に保ちながら、2時間攪拌して反応液を得た。酢酸エチル500部、5%NaOH水溶液500部を加えて有機層を洗浄した後、分液操作にて水層を除去し、有機層を130部の水で3回洗浄した。ついで有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥した後、酢酸エチルを減圧留去して、黄色固体として(A3−1)268部を得た(収率90%)。
【0153】
製造例8
[チオールを発生する架橋構造を有する化合物(A3−2){化学式(18)で表される構造単位を2個以上有する化合物}の合成]
【0154】
【化17】
【0155】
「2−メルカプトベンゾイミダゾール150部」を「チオシアヌル酸177部」に変更する以外は製造例7と同様にして黄色固体として(A3−2)170部を得た(収率98%)。
【0156】
製造例9
[チオールを発生する化合物(A3−3){化学式(40)で表される化合物}の合成]
【0157】
【化18】
【0158】
「チオシアヌル酸177部」を「5−メルカプト−1−メチルテトラゾール116部」に、「9−(塩化メチル)フルオレン644部214.69」を「クロロぎ酸9−フルオレニルメチル259部」に変更する以外は製造例1と同様にして黄色固体として(A3−3)311部を得た(収率92%)。
【0159】
製造例10
<エステル(B1−1)の合成>
温度計、空気・窒素混合気体の導入管、撹拌機、分水器、還流冷却器を備えたフラスコに、トリメリット酸210部、2−ヒドロキシエチルアクリレート365.4部、トルエン70部、p−トルエンスルホン酸5部及びp−メトキシフェノール2部を仕込み、空気・窒素混合気体の気流下で撹拌しながら120℃まで昇温して、生成する水を分水器により連続的に系外へ除去しながら、反応液の酸価が5以下となるまで反応した。反応終了後、トルエンを減圧下に留去して、アクリロイル基を有するトリメリット酸エステル(B1−1)を得た。
【0160】
製造例11
<エステル(B1−2)の合成>
温度計、空気・窒素混合気体の導入管、撹拌機、分水器、還流冷却器を備えたフラスコに、ピロメリット酸254部、酢酸ビニル344部、水酸化カルシウム5部及びトルエン70部を仕込み、空気・窒素混合気体の気流下で撹拌しながら120℃まで昇温して、生成する水を分水器により連続的に系外へ除去しながら、反応液の酸価が5以下となるまで反応した。冷却後、水で3回洗浄し、トルエンを減圧下に留去して、ビニル基を有するピロメリット酸エステル(B1−2)を得た。
【0161】
製造例12
<エステル(B1−3)の合成>
温度計、空気・窒素混合気体の導入管、撹拌機、分水器、還流冷却器を備えたフラスコに、トリメリット酸210部、アリルクロライド76.5部、トルエン70部及びトリエチルアミン101部を仕込み、25℃にて空気・窒素混合気体の気流下で20時間撹拌した。反応終了後、析出物を濾過により除去し、トルエンを減圧下に留去して、アリル基を有するトリメリット酸エステル(B1−3)を得た。
【0162】
製造例13
<ウレタンアクリレート(B31−1)の合成>
撹拌機、空気・窒素混合気体の導入管、冷却管及び温度計を備えたフラスコに、酢酸ブチル568部、ヘキサメチレンジイソシアネート168部、p−メトキシフェノール1.2部及びジブチル錫ジアセテート1.2部を仕込み、空気・窒素混合気体の気流下で70℃に昇温した後、温度を70±10℃に維持しながら「ライトアクリレートPE3A」[共栄社化学(株)製:ペンタエリスリトールジアクリレートとペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(重量比は約5:60:35)]795部を1時間かけて滴下した。滴下終了後、空気・窒素混合気体の気流下のまま70℃で3時間反応させて、酢酸ブチルを減圧下に留去してウレタンアクリレート(B31−1)を得た。
【0163】
製造例14
<ウレタンアクリレート(B31−2)の合成>
『「ライトアクリレートPE3A」795部』を「2−ヒドロキシエチルアクリレート243.6部」に変更する以外は製造例11と同様にしてウレタンアクリレート(B31−2)を得た。
【0164】
製造例15
<ウレタンアクリレート(B31−3)の合成>
「ヘキサメチレンジイソシアネート 168部」を「4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート262部」に、『「ライトアクリレートPE3A」795部』を『「ネオマーDA−600」(三洋化成工業(株)製:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物)831部』に変更する以
外は製造例11と同様にしてウレタンアクリレート(B31−3)を得た。
【0165】
製造例16
<ウレタンアクリレート(B31−4)の合成>
『「ライトアクリレートPE3A」795部』を「2−ヒドロキシエチルアクリレート243.6部」に、「ヘキサメチレンジイソシアネート 168部」を「イソホロンジイソシアネート222部」に変更する以外は製造例11と同様にして目的とするウレタンアクリレート(B31−4)を得た。
【0166】
製造例17
[酸発生剤(D−1){化学式(27)で表される化合物}の合成]
【0167】
【化19】
【0168】
温度計、撹拌機を備えたフラスコに、トルエン6.5部、イソプロピルベンゼン8.1部、ヨウ化カリウム5.35部及び無水酢酸20部を酢酸70部に溶解させ、10℃まで冷却し、温度を10±2℃に保ちながら、濃硫酸12部と酢酸15部の混合溶液を1時間かけて滴下した。25℃まで昇温して24時間撹拌した。その後、反応溶液にジエチルエーテル50部を加え、水で3回洗浄し、ジエチルエーテルを減圧下に留去した。残渣にカリウム[トリフルオロ{トリス(パーフルオロエチル)}ホスフェート]118部を水100部に溶解させた水溶液を加え、25℃で20時間撹拌した。その後、反応溶液に酢酸エチル500部を加え、水で3回洗浄し、酢酸エチルを減圧留去することで淡黄色固体の酸発生剤(D−1)5.0部を得た。
【0169】
製造例18
[塩基発生剤(E3−1){下記化学式(41)で表される化合物}の合成]
【0170】
【化20】
【0171】
(1)メチルチオキサントン[中間体(E3−1−1)]の合成:
温度計、撹拌機を備えたフラスコに、ジチオサリチル酸[和光純薬工業(株)製]10
部を硫酸139部に溶解させ、1時間室温(約25℃)で攪拌した後、氷浴にて冷却して冷却溶液を得た。ついで、この冷却溶液の液温を20℃以下に保ちながら、トルエン25部を少しずつ滴下した後、室温(約25℃)にもどし、更に2時間攪拌して反応液を得た。水815部に反応液を少しずつ加えた後、析出した黄色固体を濾別した。この黄色固体をジクロロメタン260部に溶解させ、水150部を加え、更に24%KOH水溶液6.7部を加えて水層をアルカリ性とし、1時間攪拌した後、分液操作にて水層を除去し、有機層を130部の水で3回洗浄した。ついで有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥した後、有機溶剤を減圧留去して、中間体(E3−1−1)(黄色固体)8.7部を得た。尚、中間体(E3−1−1)は、2−メチルチオキサントンと3−メチルチオキサントンの混合物である。
【0172】
(2)2−ブロモメチルチオキサントン[中間体(E3−1−2)]の合成:
温度計、撹拌機、分水器、還流冷却器を備えたフラスコに、中間体(E3−1−1)2.1部をシクロヘキサン120部に溶解させ、これにN−ブロモスクシンイミド[和光純薬工業(株)製]8.3部及び過酸化ベンゾイル[和光純薬工業(株)製]0.1部を加え、還流下で4時間反応させた後(3−メチルチオキサントンは反応しない)、溶剤(シクロヘキサン)を留去し、そこへクロロホルム50部を加えて残渣を再溶解させてクロロホルム溶液を得た。クロロホルム溶液を30部の水で3回洗浄し、分液操作により水層を除去した後、有機溶剤を減圧留去して、褐色固体1.7部を得た。これを酢酸エチルで再結晶させて(3−メチルチオキサントンはここで除かれる)、中間体(E3−1−2)(黄色固体)1.5部を得た。
【0173】
(3)8−(9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イル)メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムブロマイド[中間体(E3−1−3)]の合成:
温度計、撹拌機を備えたフラスコに、中間体(E3−1−2)(2−ブロモメチルチオキサントン)1.0部をジクロロメタン85gに溶解し、これに1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン[サンアプロ(株)製「DBU」]0.5部を滴下した後(滴下後発熱した)、室温(約25℃)下、1時間攪拌し、有機溶剤を減圧留去して、白色固体2.2部を得た。この白色固体をテトラヒドロフラン/ジクロロメタン混合溶液で再結晶させて、中間体(E3−1−3)(白色固体)1.0部を得た。
【0174】
(4)塩基発生剤(E3−1)の合成:
温度計、撹拌機を備えたフラスコに、ナトリウムテトラフェニルボレート塩[ナカライテスク(株)製]0.8部を水17部で溶解させた水溶液に、あらかじめクロロホルム50部に中間体(E3−1−3)1.0部を溶解させた溶液を少しずつ滴下した後、1時間室温(約25℃)で攪拌し、水層を分液操作により除き、有機層を30部の水で3回洗浄した。有機溶剤を減圧留去して、黄色固体を得た。この黄色固体をアセトニトリル/エーテル混合溶液で再結晶させて、塩基発生剤(E3−1)(淡黄白色粉末)1.3部を得た。
【0175】
実施例1[ハードコート用活性エネルギー線硬化型組成物;酸発生剤によるチオール発生]
チオールを発生する化合物(A2−4)1部、エステル(B1−3)14部、ウレタンアクリレート(B31−1)63部、ウレタンアクリレート(B31−2)15部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド[BASFジャパン(株)製「LUCILIN TPO」](C−1)5部、酸発生剤(D−1)1部、及びレベリング剤としてアミノポリエーテル変性シリコーン[信越化学(株)製「KF−889」]1部を一括で配合し、ディスパーサーで均一に混合撹拌し、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物(Q−1)を得た。
【0176】
実施例2〜24
実施例1と同様に、表1及び2の配合割合で一括で配合し、ディスパーサーで均一に混合撹拌してハードコート用活性エネルギー線硬化型組成物(Q−2)〜(Q−24)を作成した。
【0177】
比較例1[ハードコート用活性エネルギー線硬化型組成物;チオール発生を発生する化合物(A)を含まない場合]
実施例1と同様に、表2の配合割合で一括で配合し、ディスパーサーで均一に混合撹拌して比較用のハードコート用活性エネルギー線硬化型組成物(Q’−1)を得た。
【0178】
比較例2[ハードコート用活性エネルギー線硬化型組成物;チオール発生を発生する化合物(A)を含まず、チオール化合物を含む場合]
実施例1と同様に、表2の配合割合で一括で配合し、ディスパーサーで均一に混合撹拌して比較用のハードコート用活性エネルギー線硬化型組成物(Q’−2)を得た。
【0179】
[硬化前の組成物及び硬化後塗膜の性能評価]
実施例1〜24及び比較例1〜2で得た各ハードコート用活性エネルギー線硬化型組成物(Q−1)〜(Q−24)及び(Q’−1)〜(Q’−2)を、表面処理を施した厚さ100μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム[東洋紡(株)製コスモシャインA4300]に、アプリケーターを用いて膜厚が20μm又は1μmとなるように塗布して、大気雰囲気下又は窒素雰囲気下で、ベルトコンベア式UV照射装置(アイグラフィックス株式会社「ECS−151U」)を使用して露光を行った。
なお、鉛筆硬度、密着性、透過率及びヘイズ(透明性)については、大気雰囲気下で150mJ/cm2露光した塗膜で評価した。
硬化後の塗膜について以下の方法で性能評価を行った結果を表1及び2に示す。
【0180】
[性能評価方法]
(1)貯蔵安定性
硬化前の組成物(Q−1)〜(Q−24)及び(Q’−1)〜(Q’−2)について、配合直後及び3ヶ月間(25℃、湿度65%)保管した際の粘度(25℃)を測定し、下記の式に当てはめて評価した。尚、粘度は粘度測定装置[FUNGILAB社製「ビスコエリートB型」]を用いて測定した。表1及び2において、配合直後と保管後の粘度比の数値が1に近いほど、貯蔵安定性が高いことを示す。
配合直後と保管後の粘度比=(3ヵ月保管後の粘度/配合直後の粘度)
【0181】
(2)硬化性
大気雰囲気下で硬化後の塗膜及び窒素雰囲気下で硬化後の塗膜に対して、塗膜表面を指触及び爪で強く引っ掻くことにより、表面にタックがなく、かつ爪で傷つかなくなる点の露光量を測定した。
【0182】
(3)鉛筆硬度
大気雰囲気下で硬化後の塗膜に対して、JIS K−5400に準拠して、鉛筆硬度を測定した。
【0183】
(4)密着性
大気雰囲気下で硬化後の塗膜に対して、JIS K−5400に準拠して、碁盤目セロハンテープ剥離試験により密着性を評価した。
【0184】
(5)透過率及びヘイズ(透明性)
大気雰囲気下で硬化後の塗膜に対して、JIS−K7105に準拠し、全光線透過率測定装置[商品名「haze−garddual」BYK gardner(株)製]を用いて透過率及びヘイズを測定した。いずれも単位は%である。
【0185】
【表1】
【0186】
【表2】
表1及び2中、各成分は下記の通りである。
A1−1:製造例1で得た化学式(34)で表される化合物であって、活性エネルギー線
によりチオールを発生する化合物
A1−2:製造例2で得た化学式(35)で表される化合物であって、活性エネルギー線によりチオールを発生する化合物
A2−1:製造例3で得た化学式(36)で表される化合物であって、酸によりチオールを発生する化合物
A2−2:製造例4で得た化学式(37)で表される化合物であって、酸によりチオールを発生する化合物
A2−3:製造例5で得た化学式(38)で表される化合物であって、酸によりチオールを発生する化合物
A2−4:製造例6で得た化学式(39)で表される化合物であって、酸によりチオールを発生する化合物
A3−1:製造例7で得た化学式(15)で表される化合物であって、塩基によりチオールを発生する化合物
A3−2:製造例8で得た化学式(18)で表される化合物であって、塩基によりチオールを発生する化合物
A3−3:製造例9で得た化学式(40)で表される化合物であって、塩基によりチオールを発生する化合物
B1−1:製造例10で得たエステル化合物
B1−2:製造例11で得たエステル化合物
B1−3:製造例12で得たエステル化合物
B31−1:製造例13で得たウレタンアクリレート化合物
B31−2:製造例14で得たウレタンアクリレート化合物
B31−3:製造例15で得たウレタンアクリレート化合物
B31−4:製造例16で得たウレタンアクリレート化合物
B3−5:「ネオマーDA−600」(三洋化成工業(株)製:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物)
開始剤(C−1):2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド[BASFジャパン(株)製「LUCILIN TPO」]
D−1:製造例17で得た化学式(27)で表される酸発生剤
E3−1:製造例18で得た化学式(41)で表される塩基発生剤
レベリング剤:アミノポリエーテル変性シリコーン[信越化学(株)製「KF−889」]
チオール化合物:ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(昭和電工(株)製、「カレンズMT PE1」)
【0187】
表1及び2から、本発明のハードコート用活性エネルギー線硬化型組成物(Q−1)〜(Q−24)は、膜厚20μm及び1μmでの硬化性について、比較の組成物(Q’−1)〜(Q’−2)よりも低露光量で硬化しており、硬化性が高いことが分かる。また、(Q−1)〜(Q−24)は、大気雰囲気下での硬化性と窒素雰囲気下での硬化性とで、ほとんど変化しておらず、酸素阻害の抑制効果が高いことが分かる。また、(Q−1)〜(Q−24)は、鉛筆硬度、密着性及び透明性が優れており、ハードコート用活性エネルギー線硬化型組成物として優れていることが分かる。更に、(Q−1)〜(Q−24)は、配合直後と保管後との粘度比が1であり、保管前と保管後で粘度がほとんど変化しておらず、公知の酸素阻害抑制剤であるチオール化合物を用いた(Q’−2)よりも、貯蔵安定性に優れていることが分かる。
【0188】
実施例25〜38[ネガ型レジスト用活性エネルギー線硬化型組成物]
実施例1と同様に、表3の配合割合で一括で配合し、ディスパーサーで均一に混合撹拌してネガ型レジスト用活性エネルギー線硬化型組成物(Q−25)〜(Q−38)を作成した。
【0189】
比較例3[ネガ型レジスト用活性エネルギー線硬化型組成物;チオール発生を発生する化合物(A)を含まない場合]
実施例1と同様に、表3の配合割合で一括で配合し、ディスパーサーで均一に混合撹拌してネガ型レジスト用活性エネルギー線硬化型組成物(Q’−3)を作成した。
【0190】
比較例4[ネガ型レジスト用活性エネルギー線硬化型組成物;チオール発生を発生する化合物(A)を含まず、チオール化合物を含む場合]
実施例1と同様に、表3の配合割合で一括で配合し、ディスパーサーで均一に混合撹拌して比較用のハードコート用活性エネルギー線硬化型組成物(Q’−4)を得た。
[硬化前の組成物及び硬化後塗膜の性能評価]
実施例25〜38及び比較例3〜4で得た各ネガ型レジスト用活性エネルギー線硬化型組成物を、表面処理を施した厚さ100μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム[東洋紡(株)製コスモシャインA4300]に、アプリケーターを用いて膜厚20μm又は10μmとなるように塗布した。続いて減圧下(30mmHg)で、80℃で3分間、プレベークを行い、溶剤を乾燥させた。次に幅が15μmの線状マスクをセットした後、大気雰囲気下又は窒素雰囲気下で露光した。露光についてはベルトコンベア式UV照射装置(アイグラフィックス株式会社「ECS−151U」)を使用した。
【0191】
[性能評価方法]
(1)貯蔵安定性
硬化前の組成物(Q−25)〜(Q−38)及び(Q’−3)〜(Q’−4)について、配合直後及び3ヶ月間(25℃、湿度65%)保管した際の粘度(25℃)を測定し、下記の式に当てはめて評価した。尚、粘度は粘度測定装置[FUNGILAB社製「ビスコエリートB型」]を用いて測定した。表3において、配合直後と保管後の粘度比の数値が1に近いほど、貯蔵安定性が高いことを示す。
配合直後と保管後の粘度比=(3ヵ月保管後の粘度/配合直後の粘度)
【0192】
(2)硬化性
大気雰囲気下で硬化後の塗膜及び窒素雰囲気下で硬化後の塗膜に対して、塗膜表面を指触及び爪で強く引っ掻くことにより、表面にタックがなく、かつ爪で傷つかなくなる点の露光量を測定した。
【0193】
[塗膜現像性評価]
現像性については、大気雰囲気下で150mJ/cm2露光した後、露光後の試験体を
1%NaCO3水溶液に100秒浸漬した後、イオン交換水を噴霧することでアルカリ現像を行った。続いて減圧下(30mmHg)で、80℃で3分間、ポストベークを行った。
現像後塗膜の現像性を、光学顕微鏡にて目視観察し、パターニングできている面積(%)を評価した結果を表3に示す。
【0194】
【表3】
【0195】
表3中、各成分(A)〜(E)、レベリング剤及びチオール化合物(カレンズMT P
E1)は表1及び2と同様である。また、その他の成分として、下記のものを使用した。カルボキシル基を有するポリマー:CCR−1314H[日本化薬(株)製]
有機溶剤:エチレングリコールモノメチルエーテル[東京化成工業(株)製]
【0196】
表3から、本発明のネガ型レジスト用活性エネルギー線硬化型組成物(Q−25)〜(Q−38)は、膜厚20μm及び10μmでの硬化性について、比較の組成物(Q’−3)〜(Q’−4)よりも低露光量で硬化しており、硬化性が高いことが分かる。また、(Q−25)〜(Q−38)は、大気雰囲気下での硬化性と窒素雰囲気下での硬化性とで、ほとんど変化しておらず、酸素阻害の抑制効果が高いことが分かる。また、(Q−25)〜(Q−38)は、現像性も優れており、ネガ型レジスト用活性エネルギー線硬化型組成物として優れていることが分かる。更に、(Q−25)〜(Q−38)は、公知の酸素阻害抑制剤であるチオール化合物を用いた(Q’−4)よりも、貯蔵安定性が優れていることが分かる。
【0197】
実施例39〜52[UVインク用活性エネルギー線硬化型組成物]
[インク組成物の調製]
<高濃度顔料分散液の調製>
酸化チタン[石原産業社製「タイペークR−930」]42部、顔料分散剤[ルーブリゾール社製「ソルスパーズ32000」]5部、N,N−ジエチルアクリルアミド[興人(株)製「DEAA」](B2−1)31部及びチオールを発生する化合物(A1−1)22部からなる混合物を、ボールミルを用いて3時間混練することにより顔料濃度42%の顔料分散剤液を調製した。
<顔料を含有するインク組成物の調製>
実施例1と同様に、表4の配合割合で一括で配合し、ディスパーサーで均一に混合撹拌してUVインク用活性エネルギー線硬化型組成物(Q−39)〜(Q−52)を作成した。
【0198】
比較例5[UVインク用活性エネルギー線硬化型組成物]
実施例1と同様に、表4の配合割合で一括で配合し、ディスパーサーで均一に混合撹拌してUVインク用活性エネルギー線硬化型組成物(Q’−5)を作成した。
【0199】
比較例6[ネガ型レジスト用活性エネルギー線硬化型組成物;チオール発生を発生する化合物(A)を含まず、チオール化合物を含む場合]
実施例1と同様に、表4の配合割合で一括で配合し、ディスパーサーで均一に混合撹拌して比較用のハードコート用活性エネルギー線硬化型組成物(Q’−6)を得た。
【0200】
[硬化前の組成物及び硬化後塗膜の性能評価]
実施例39〜52及び比較例5〜6で得た各UVインク用活性エネルギー線硬化型組成物を、表面処理を施した厚さ100μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム[東洋紡(株)製コスモシャインA4300]に、アプリケーターを用いて膜厚20μm又は10μmとなるように塗布した。露光については下記の照射装置を用いて、大気雰囲気下又は窒素雰囲気下にて実施した。露光についてはベルトコンベア式UV照射装置(アイグラフィックス株式会社「ECS−151U」)を使用した。露光量は365nmとして80mJ/cm2であった。
【0201】
[性能評価法]
(1)貯蔵安定性
硬化前の組成物(Q−39)〜(Q−52)及び(Q’−5)〜(Q’−6)について、配合直後及び3ヶ月間(25℃、湿度65%)保管した際の粘度(25℃)を測定し、下記の式に当てはめて評価した。尚、粘度は粘度測定装置[FUNGILAB社製「ビス
コエリートB型」]を用いて測定した。表4において、配合直後と保管後の粘度比の数値が1に近いほど、貯蔵安定性が高いことを示す。
配合直後と保管後の粘度比=(3ヵ月保管後の粘度/配合直後の粘度)
【0202】
(2)硬化性
大気雰囲気下で硬化後の塗膜及び窒素雰囲気下で硬化後の塗膜の光照射直後の硬化性を、指触及び爪で強く引っ掻くことにより、以下の評価基準で評価した結果を表4に示す。
◎:表面にタックがなく、爪で傷つかない。
○:表面にタックがなく、爪で傷はつかないが、跡が残る。
△:表面にタックはないが、爪で傷つく。
×:表面にタックがあり、爪で傷つく。
【0203】
【表4】
【0204】
表4中、各成分(A)〜(E)、レベリング剤及びチオール化合物(カレンズMT P
E1)は表1及び2と同様である。また、その他の成分として、下記のものを使用した。顔料分散液:「高濃度顔料分散液の調製」で得た顔料分散液
【0205】
表4から、本発明のUVインク用活性エネルギー線硬化型組成物(Q−39)〜(Q−52)は、膜厚20μm及び10μmでの硬化性にいついて、比較の組成物(Q’−5)及び(Q’−6)よりも低露光量で硬化しており、硬化性が高く、UVインク用として適していることが分かる。また、(Q−39)〜(Q−52)は、大気雰囲気下での硬化性と窒素雰囲気下での硬化性とで、ほとんど変化しておらず、酸素阻害の抑制効果が高いことが分かる。更に、(Q−39)〜(Q−52)は、公知のチオール化合物を用いた(Q’−6)よりも、貯蔵安定性が優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0206】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、ハードコート(樹脂成型品のハードコート若しくはディスプレイのハードコート)、レジスト又はUV硬化インク等のさまざまな分野に適用が可能で、酸素阻害が小さく、薄膜硬化性に優れ、貯蔵安定性が高いため、樹脂成型品ハードコート用途及びディスプレイハードコート用途(ブラウン管、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ又はタッチパネル用)において有用である。本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を硬化させた硬化膜は偏光板の保護膜としても有用である。また、硬化膜のレジストパターンの現像性に優れるため、レジスト用としても有用であり、少エネルギー量でも高着色剤濃度で厚膜硬化可能であるため、UV硬化インク(UV印刷インク及びUVインクジェット印刷インク等)用としても有用である。