特許第5698411号(P5698411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698411
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】自動調心油膜軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 23/04 20060101AFI20150319BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20150319BHJP
   F16D 1/09 20060101ALI20150319BHJP
   F16C 35/02 20060101ALI20150319BHJP
   F16C 17/04 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   F16C23/04 E
   F16C17/02 Z
   F16D1/06 T
   F16C23/04 D
   F16C35/02 C
   F16C17/04 Z
【請求項の数】15
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-512864(P2014-512864)
(86)(22)【出願日】2012年5月11日
(65)【公表番号】特表2014-515464(P2014-515464A)
(43)【公表日】2014年6月30日
(86)【国際出願番号】US2012037421
(87)【国際公開番号】WO2012161984
(87)【国際公開日】20121129
【審査請求日】2014年1月27日
(31)【優先権主張番号】13/114,407
(32)【優先日】2011年5月24日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510002268
【氏名又は名称】シーメンス インダストリー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Siemens Industry, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ピーター エヌ. オズグッド
(72)【発明者】
【氏名】トマス シー. ウォイトコウスキー ジュニア
【審査官】 上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第102008047270(DE,A1)
【文献】 特開昭61−048614(JP,A)
【文献】 特開平02−046315(JP,A)
【文献】 特開2002−327737(JP,A)
【文献】 特開2010−121644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 23/04
F16C 17/02
F16C 17/04
F16C 35/02
F16D 1/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸を回転可能に支持する油膜軸受であって、該軸受は、
前記軸を回転可能に支持する孔および球形の外面を有する球形ケーシングと、
前記球形ケーシングを含むチョックとを備え、
該チョックは、球形の内面を有するように内部を構成されており、該球形の内面は、前記球形ケーシングの前記球形の外面と協働して、中心点を中心とする前記軸の角回転を調節するように構成された軌道を規定し、
前記球形の内面は、前記チョックの円筒形の内面と前記球形ケーシングとの間に配置された、前記球形ケーシングの周方向で円形に配列された複数の個別の挿入体により規定されていて、該挿入体は球形の内面を有することを特徴とする、軸を回転可能に支持する油膜軸受。
【請求項2】
前記球形ケーシングの前記孔内に位置固定されたブシュをさらに備え、前記軸は前記ブシュ内で回転可能に支持されている、請求項1記載の油膜軸受。
【請求項3】
前記軸は、先細りした部分を有しており、前記油膜軸受は、前記軸と前記ブシュとの間に配置されたスリーブをさらに有しており、該スリーブは、前記軸と共に回転可能に、前記軸の先細りした部分に対して相補的な先細りした内面により前記軸に固定されていて、円筒形の外面で、前記ブシュ内回転可能に支持されている、請求項2記載の油膜軸受。
【請求項4】
前記挿入体は、前記チョックの前記円筒形の内面に接触する、三次元に湾曲された外面を有する、請求項1記載の油膜軸受。
【請求項5】
前記チョックは、軸方向で2つの合わせ半部に分割されていて、前記半部はそれぞれ、円形に配列された前記挿入体を含んでいる、請求項4記載の油膜軸受。
【請求項6】
前記挿入体を前記チョックの前記円筒形の内面に接触するように弾性的に押圧する手段を備える、請求項4記載の油膜軸受。
【請求項7】
前記挿入体の前記三次元に湾曲された外面は、軸受中心軸線を含む平面では該挿入体の前記球形の内面の曲率半径よりも大きな曲率半径を有し、前記軸受中心軸線に対して垂直方向に延びる平面では前記チョックの前記円筒形の内面の曲率半径よりも小さな曲率半径を有する、請求項4記載の油膜軸受。
【請求項8】
前記チョックは、軸方向で2つの合わせ半部に分割されていて、前記半部はそれぞれ、円形に配列された前記挿入体を含んでいる、請求項7記載の油膜軸受。
【請求項9】
前記挿入体を前記チョックの前記円筒形の内面に接触するように弾性的に押圧する手段を備える、請求項7記載の油膜軸受。
【請求項10】
前記チョックは、軸方向で2つの合わせ半部に分割されている、請求項1記載の油膜軸受。
【請求項11】
前記半部はそれぞれ、円形に配列された前記挿入体を含んでいる、請求項10記載の油膜軸受。
【請求項12】
前記挿入体を前記チョックの前記円筒形の内面に接触するように弾性的に押圧する手段を備える、請求項1記載の油膜軸受。
【請求項13】
前記球形ケーシングの円形端部に固定されたスラストパッドをさらに備え、該スラストパッドは前記軸の肩部に軸方向に係合するように構成され、かつ配置されている、請求項1記載の油膜軸受。
【請求項14】
軸を回転可能に支持する油膜軸受であって、該軸受は、
前記軸の円筒形の支持面に沿って軸方向に挿入するために構成されかつ寸法設計されたブシュでライニングされた円筒形の孔と、前記ブシュを取り囲む球形の外面とを有する球形ケーシングと、
前記球形ケーシングを含み、かつ前記球形ケーシングを取り囲む円筒形の内面を有するチョックと、
前記チョックの前記円筒形の内面と、前記球形ケーシングとの間に配置された、前記球形ケーシングの周方向に円形に配列された複数の個別の挿入体であって、該挿入体は、前記チョックの前記円筒形の内面に接触する三次元に湾曲された外面を備え、前記挿入体は、前記球形ケーシングの球形の外面と協働して、中心点を中心とした前記軸の角回転を調節するように構成された軌道を規定する分割された球状の内面を規定する、挿入体と、を備えることを特徴とする、軸を回転可能に支持する油膜軸受。
【請求項15】
軸を回転可能に支持する油膜軸受であって、当該軸受のアセンブリは、
前記軸を取り囲む球形ケーシングであって、該球形ケーシングにおいてブシュ内で前記軸が回転可能に支持されていて、かつ前記ブシュを取り囲む球形の外面を有している球形ケーシングと、
円筒形の内面を規定する2つの半部に軸方向で分割された、前記球形ケーシングを含むチョックと、
前記チョック半部のそれぞれに含まれる、複数の個別の挿入体の、前記球形ケーシングの周方向で円形の配列であって、該挿入体は、前記チョックの前記円筒形の内面と、前記球形ケーシングとの間に配置されており、前記挿入体は、前記球形ケーシングの前記球形の外面と協働して、中心点を中心とした前記軸の角回転を調節するように構成された軌道を規定する分割された球形の内面を規定しており、前記挿入体は、前記チョックの前記円筒形の内面と接触する三次元に湾曲された外面を有している、挿入体と、を備えることを特徴とする、軸を回転可能に支持する油膜軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本発明の実施の形態は、種々の工業用途において大きな荷重をかけられる大型の軸を回転可能に支持するために使用される流体動圧油膜軸受(hydrodynamic oil firm bearing)に関する。
【0002】
2.従来技術の説明
大きな荷重をかけられる回転用途に用いられる大型の軸(直径が1m以上)が存在する。この場合、荷重は種々の半径方向で加えられ得る。このような軸の回転速度は、速度が高くない間でも変化し、かついわゆる「振動(quiver)」を含み得る。この場合、軸は小さな揺動運動を長期間にわたって完全に一周することなしに受ける。多くの場合、軸も、曲げモーメントにさらされている。曲げモーメントは、軸受面のずれを引き起こすことがある。
【0003】
大型のころ軸受は、振動を受ける軸での使用には適していない。なぜならば、大型のころ軸受が、ころを支持する極めて薄い弾性流体的な膜を維持することができないからである。
【0004】
油膜軸受は、ころ軸受の実用的な代替手段を提供することができる。油膜軸受は、特に高粘度の流体と併用した場合に、該油膜軸受が大きな半径方向の荷重を規定されていない期間にわたって幅広い速度条件下で支持することができることが明らかになっている。しかし、このような軸受の適切な機能に対する要求は、特に大きな荷重をかけられる用途において、これらの軸受が軸に対して自ら調心することができることである。
【0005】
概要
要約すれば、本発明の態様は、改善された自動調心油膜軸受に関する。本明細書で使用されているように、「油膜軸受」という用語には、油膜が軸の回転によってのみ生じる流体動圧軸受も、流体動圧かつ流体静圧的な膜生成特性の組合せが同時に採用されているハイブリッド油膜軸受も含まれる。
【0006】
本発明の油膜軸受は、大きな荷重をかけられた大型の軸を回転可能に支持するように設計されている。この軸受は、中心軸線を有し、かつ軸を回転可能に含む孔を備える球形ケーシングを有する。球形ケーシングは、チョックの球形の内面と協働して、中心点を中心とした軸の角回転を調節するように構成された軌道を規定する、球形の外面を有している。
【0007】
本発明の態様では、軸は、球形ケーシングの孔内に位置固定されたブシュ内での回転可能に支持されている。
【0008】
好適には、チョックは軸方向で2つの合わせ半部に分割されていて、該半部は、外部を球形に形成された球形ケーシングを取り囲んで組み立てられている。
【0009】
本発明の別の態様では、チョックの球形の内面は、チョックの円筒形の内面と、球形ケーシングとの間に配置された個別の複数の挿入体により規定されている。複数の挿入体の円形の配列は、各チョック半部に含まれている。
【0010】
挿入体は、球形の内面を有していて、好適には、チョックの円筒形の内面と協働する三次元に湾曲された外面を有している。好適には、挿入体の三次元に湾曲された外面は、軸受中心軸線を含む平面ではその球形の内面の曲率半径よりも大きな曲率半径を有し、かつ軸受中心軸線に対して垂直方向に延びる平面では、チョックの円筒形の内面の曲率半径よりも小さな曲率半径を有している。
【0011】
本発明の別の態様では、チョックの円筒形の内面に接触させるように挿入体を弾性的に押圧する手段が設けられている。
【0012】
本発明のさらに別の態様では、スラストパッドが球形ケーシングの円形端部に固定されている。スラストパッドは、軸の保持肩部に軸方向で係合するように構成され、かつ配置されている。
【0013】
本発明のこれらの、または他の実施の形態、課題、特徴、利点は、添付の図面に関連して以下の詳細な説明を読むことによって、より明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のよる実施の形態を成す油膜軸受の長手方向の断面図である。
図2】本発明による別の実施の形態を成す油膜軸受の長手方向の断面図である。
図3図2に示した油膜軸受の上側部分を、軸受が軸から取り除かれた状態で示す拡大図である。
図4A図2および3に示された挿入体の斜視図である。
図4B図4Aに示された挿入体を示す側面図である。
図4C図4Aに示された挿入体の端部を示す図である。
図5】本発明による別の実施の形態による油膜軸受の長手方向の断面図である。
【0015】
詳細な説明
本発明の実施の形態、原理および特徴の理解を容易にするために、以下に本発明の実施の形態、原理および特徴を例示的な実施の形態に関連して説明する。
【0016】
種々の実施の形態を成す以下に説明される構成部材および材料は例示的であり、限定することを目的としない。本明細書で説明される材料と同一または類似の機能を発揮し得る多く適切な構成部材および材料は、本発明の実施の形態の範囲に包含される。
【0017】
図全体にわたって類似の参照番号が類似の部分を表している図を参照すると、本発明の実施の形態が詳細に説明されている。
【0018】
まず図1を参照すると、本発明に係る油膜軸受は、概して符合「10」で示されている。この軸受10は、中心軸線Aを有し、球形ケーシング12を備えている。球形ケーシング12は、好ましくはブシュ13でライニングされた孔を有している。孔内には軸14が回転可能に支持されている。
【0019】
チョック16は、球形ケーシング12を含んでいる。球形ケーシング12は、球形の外面12’を有しており、チョック16は球形の内面16’を備えるように内部を構成されている。互いに相補的な球形の面12’および16’は協働して、中心点Pを中心とした軸の角回転を調節するように構成された軌道18を規定する。
【0020】
チョック16は、好適には軸方向で2つの合わせ半部16a,16bに分割されている。これらの半部16a,16bは、球形ケーシング12を取り囲んで組み立てられており、従来の固定部材(図示せず)により結合されている。
【0021】
好適には、スラストパッド22が、球形ケーシングの円形端部に固定されている。スラストパッド22は、軸の肩部24に軸方向で係合するように構成されかつ配置されている。
【0022】
図2および図3は、本発明による別の油膜軸受26を示している。複数の個別の挿入体28が、チョック30の円筒形の内面30’と、球形ケーシング32との間に配置されている。チョック30は、同様に軸方向で2つの合わせ半部30a,30bに分割されている。各チョック半部30a,30bは、円形に配列された複数の挿入体を含んでいる。複数の挿入体28のうちの1つ挿入体の斜視図が図4Aに示されている。挿入体28は、チョックの円筒形の内面30’に接触する3次元に湾曲された外面34と、球形の内面36とを有し、これらの球形の内面36はチョック構造体の分割された球形の内面を形成するように連結する。球形ケーシング32の孔は、ブシュ38でライニングされており、該ブシュ内に軸14が支持されている。球形ケーシング32は、球形の外面32’を有している。該球形の外面32’は、挿入体28の球形の内面36と協働して、中心点Pを中心とした軸14の角回転を調節するように構成された軌道40を規定する。図4Bを参照すると、軸線Aを含む平面では、三次元に湾曲された外面34が、所定の曲率半径R2を有していることが判る。同様に、図4Cを参照すると、軸線Aに対して垂直方向に延びる平面では、三次元に湾曲された外面34が、所定の曲率半径R3を有している。曲率半径R2は、R1よりも大きく、曲率半径R3は、チョックの円筒形の内面の曲率半径よりも小さく形成されている。
【0023】
図3に示すように、ばね座金42は、挿入体28を、チョックの円筒形の内面30’に接触するように弾性的に押圧するピン44と協働する。
【0024】
図5は、本発明による例示的な別の実施の形態に係る油膜軸受46を開示している。本実施の形態では、軸14は、先細りしたネック部分48を備えている。内部で先細りしたスリーブ50が、先細りしたネック部分48に軸方向で収容され、かつ先細りしたネック部分48に対して回動不能に固定されている。スリーブ50は、円筒形の外面を有していて、該円筒形の外面は球形ケーシング54内に固定されたブシュ52内での回転可能に支持されている。上記で説明した実施の形態のように、球形ケーシング54は、球形の外面を有している。この球形の外面は、本実施の形態では、チョック56の2つの合わせ半部56a,56bにより規定された、該球形の外面に対して相補的な球形の内面に接触している。互いに対して相補的な球形の内面と球形の外面とは協働して、中心点Pを中心とした軸14の角回転を調節するように構成された軌道58を規定する。
【0025】
上記を考慮すれば、開示された各実施の形態において、軸が球形ケーシング内に回転可能に支持されており、球形ケーシングが中心点を中心とした角回転可能に支持されていることが当業者により十分に理解されるであろう。したがって、荷重作用の半径方向とは関係なしに荷重が曲げを引き起こす間、軸受面は軸と同軸に整合されたままである。軸の曲げに対する応答性および調節は、図2および図3に示すように、個別の複数の挿入体28が球形ケーシングとチョック内面の間に配置されていることによってさらに改善されている。
【0026】
図示はしていないが、当業者であれば、軸受の各回転面、たとえば軸受荷重領域および協働する球形の内面および外面により規定される軌道において軸とブシュとの間に、油を導入するための公知の手段が設けられていることがわかる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5