特許第5698412号(P5698412)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5698412超硬構造体、ツールエレメント、およびこれらを作製する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698412
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】超硬構造体、ツールエレメント、およびこれらを作製する方法
(51)【国際特許分類】
   B23B 27/14 20060101AFI20150319BHJP
   B23B 27/20 20060101ALI20150319BHJP
   C04B 35/583 20060101ALI20150319BHJP
   C04B 37/00 20060101ALN20150319BHJP
【FI】
   B23B27/14 B
   B23B27/20
   C04B35/58 103H
   !C04B37/00 Z
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-513140(P2014-513140)
(86)(22)【出願日】2012年5月25日
(65)【公表番号】特表2014-522322(P2014-522322A)
(43)【公表日】2014年9月4日
(86)【国際出願番号】EP2012059851
(87)【国際公開番号】WO2012163838
(87)【国際公開日】20121206
【審査請求日】2013年12月10日
(31)【優先権主張番号】1108975.2
(32)【優先日】2011年5月27日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】61/490,836
(32)【優先日】2011年5月27日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506231892
【氏名又は名称】エレメント シックス リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】512107972
【氏名又は名称】エレメント、シックス、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ELEMENT SIX GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(72)【発明者】
【氏名】アンダーシン スティグ オキ
(72)【発明者】
【氏名】リース ベルント ハインリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ラヒマン フランク フリードリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ニルソン ラース イヴァー
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−190146(JP,A)
【文献】 特開2003−192443(JP,A)
【文献】 特開昭58−064329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/14
B23B 27/20
C04B 35/583
C04B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理済み多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)構造体を作製するための方法であって、
超硬合金材料を含む基板を準備するステップと、
cBN材料を含む複数の超硬結晶粒を合わせて超硬結晶粒の集合体を形成するステップと、
基板の表面に隣接して超硬結晶粒の集合体を配置して焼結前成形体をもたらすステップと、
焼結前成形体を、cBN材料が熱力学的に安定である少なくとも5ギガパスカル(GPa)の超高圧および少なくとも1,200℃の高温に曝し、それによって超硬合金材料を含む基板に接合しているPCBN構造体を準備するステップと、
圧力を超高圧からcBN材料が熱力学的に安定でない処理圧力に低減し
温度を下げて、少なくとも5分の処理期間にわたって700℃超の処理温度にして、処理済みPCBN構造体を生産するステップであって、熱処理が前記基板を別の基板に拡散接合することでないことを条件とするステップとを含む、方法。
【請求項2】
処理圧力が最大で2ギガパスカル(GPa)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
PCBN構造体が、Tiを含む材料およびAlを含む材料を含むマトリックス中に分散したcBN結晶粒を含むPCBN材料を含み、cBN結晶粒の含量が、PCBN材料の少なくとも35体積%である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
処理期間が、PCBN構造体の冷却によって互いに切り離されたサブ期間に分割され、累積処理期間が、少なくとも5分である、請求項1からのいずれかに記載の方法。
【請求項5】
少なくとも700℃の温度に少なくとも1分の期間にわたって、処理済みPCBN構造体を加熱することを含むさらなる処理を含む、請求項1からのいずれかに記載の方法。
【請求項6】
PCBN構造体が、ディスク形状をしており、少なくとも20mmの直径を有する、請求項1からのいずれかに記載の方法。
【請求項7】
PCBN構造体が基板に接合しており、PCBN構造体と基板を合わせた厚さが少なくとも1.5mmである、請求項1からのいずれかに記載の方法。
【請求項8】
PCBN構造体が基板に接合しており、PCBN構造体の厚さが少なくとも0.5mmであり、基板の厚さが少なくとも2mmである、請求項1からのいずれかに記載の方法。
【請求項9】
処理済みPCBN構造体を加工してツール用エレメントを形成するステップを含む、請求項1からのいずれかに記載の方法。
【請求項10】
処理期間にわたって温度を700℃超の処理温度に維持しながら圧力を超高圧から処理圧力に下げるステップを含む、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
超高圧から周囲圧力に圧力を低減するステップと、700℃未満の温度にPCBN構造体を冷却するステップと、次いで処理期間にわたって少なくとも700℃の温度にPCBN構造体を加熱するステップとを含む、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
温度を700〜1,100℃の範囲内の処理温度に維持しながら圧力を超高圧から1GPa未満の処理圧力に下げる、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、超硬構造体(super−hard structure)、超硬構造体を含むツールエレメント、およびこれらを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多結晶ダイヤモンド(PCD)材料および多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)材料は、超硬材料の例である。PCBN材料は、金属および/またはセラミック材料を含み得るマトリックス中に埋め込まれた立方晶窒化ホウ素(cBN)材料の結晶粒を含む。PCD材料は、ダイヤモンドの結晶粒を含み、これらのうちの相当数は、互いに直接結合している。超硬構築物(super−hard construction)は、それぞれの超硬合金(cemented carbide)基板と一体的に形成されたPCDまたはPCBN構造体を含むことができる。一部の超硬構築物は、ツール用エレメントを形成するために加工されるとき、寸法が歪んだ状態になる傾向があり得る。
米国特許第6,517,902号には、コバルトバインダーで超硬炭化タングステン(cemented tungsten carbide)の基板に結合した多結晶ダイヤモンドのフェーシングテーブル(facing table)を有するプリフォームエレメントを熱処理する形式が開示されている。基板は、六方最密結晶構造内に少なくとも30体積%のコバルトバインダーを伴った界面領域を含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
処理済み超硬構造体を作製するための方法であって、多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)材料または多結晶ダイヤモンド(PCD)材料から選択される超硬材料を含む超硬構造体を準備するステップと、超硬材料が熱力学的に安定でない(例えば、これが準安定である)処理圧力にて、700℃超の処理温度で、少なくとも約5分の処理期間(時間)にわたって超硬構造体を熱処理にかけて、処理済み超硬構造体を生産するステップとを含む、方法が提供される。
【0004】
本方法の様々な組合せおよびバリエーションが本開示によって想定されており、これらのうち、以下のものが非限定的で非網羅的な例である。
例示的な方法では、超硬構造体を、高圧、周囲圧力、または低圧もしくは実質的に真空で熱処理にかけることができる。処理圧力は、最大で約2GPaまたは最大で約1GPaとすることができ、または処理圧力は、最大で周囲圧力(大気圧)とすることができ、または圧力は、大気圧未満(例えば、実質的に真空)であってもよい。
本方法は、超硬材料が熱力学的に安定である超高圧および高温でダイヤモンドまたはcBN材料を含む結晶粒から選択される超硬材料の複数の結晶粒を焼結して超硬構造体をもたらすステップを含むことができる。
本方法は、超硬合金材料を含む基板を準備するステップと、ダイヤモンドまたはcBNから選択される材料を含む複数の超硬結晶粒を合わせて超硬結晶粒の集合体を形成するステップと、基板の表面に隣接して超硬結晶粒の集合体を配置して焼結前成形体をもたらすステップと、超硬結晶粒の材料が熱力学的に安定である超高圧および高温に焼結前成形体を曝すステップと、基板に接合して形成された超硬構造体を含む超硬構築物を生産するステップとを含むことができる。いくつかの例では、次いで超硬構築物を、少なくとも約700℃の温度に少なくとも約5分間曝し、引き続いて切断してツール用エレメントを生産することができる。
本方法は、ある時間、例えば、少なくとも約5分にわたって温度を約700℃超に維持しながら圧力を超高圧から下げるステップを含むことができる。本方法は、少なくとも約5分の処理期間にわたって、超高圧から超硬材料が熱力学的に安定でない処理圧力に圧力を下げ、約700℃超の処理温度に温度を下げて、処理済み超硬構造体をもたらすステップを含むことができる。本方法は、温度を約700℃〜約1,100℃の範囲内に維持しながら超高圧から圧力を下げて約1GPa未満にするステップを含むことができる。本方法は、超高圧から周囲圧力に圧力を低減するステップと、約700℃未満の温度に超硬構造体を冷却するステップと、次いで処理期間にわたって少なくとも約700℃の温度で超硬構造体を処理するステップとを含むことができる。
【0005】
いくつかの例では、超硬結晶粒は、ダイヤモンドまたはcBNを含むことができ、超高圧は、少なくとも約5GPaであり得、高温は、少なくとも約1,200℃であり得、圧力は、温度を約700℃〜約1,100℃の範囲内に維持しながら約1GPa未満または実質的に周囲圧力に下げることができる。圧力は、急速に下げてもよい。例示的な方法は、1分当たり最大で約2℃または1分当たり最大で約1℃の平均冷却速度で、超硬構築物の温度を約200℃未満の温度に下げるステップを含むことができる。例示的な方法は、超高圧から周囲圧力に圧力を下げるステップと、約700℃未満の温度に超硬構造体を冷却するステップと、次いである処理期間にわたって少なくとも約700℃の温度で超硬構造体を加熱するステップとを含むことができる。
【0006】
本方法は、集合体内に結合材を導入するステップであって、結合材は、互いに直接に、または超硬結晶粒が分散されるマトリックスとして機能することによって超硬結晶粒を一緒に結合することができる、ステップを含むことができる。結合材は、超硬材料用触媒材料、および/または超硬材料と反応することができる材料を含むことができる。超高圧は、少なくとも約5GPaであり得、高温は、少なくとも約1,200℃である。
【0007】
いくつかの例では、超硬構造体は、Tiを含む材料およびAlを含む材料を含むマトリックス中に分散したcBN結晶粒を含み、またはこれから本質的になるPCBN材料を含むことができ、cBN結晶粒の含量は、PCBN構造体の少なくとも約35体積%または少なくとも約50体積%および最大で約75または最大で約90体積%である。この例の一変形では、マトリックスは、不可避な軽微な量の他の材料および不純物は別として、Tiを含む材料およびAlを含む材料からなり得る(すなわち、Tiを含む材料およびAlを含む材料から本質的になる)。この特定の変形では、マトリックスは、炭化チタンおよび/または炭窒化チタン、ならびにアルミニウムのホウ化物および/または窒化物から本質的になり得る。
いくつかの例では、本方法は、超硬合金基板上に焼結されたPCBN構造体を含む構築物を準備するステップと、実質的に非酸化雰囲気下で約800℃〜900℃の範囲内の処理温度に少なくとも約30分間、構築物を加熱するステップとを含むことができる。
いくつかの例では、超硬構造体は、熱的に安定な多結晶ダイヤモンド(PCD)構造体を含み、またはこれから本質的になり得る。PCD構造体の少なくともある量は、約400℃超の温度に曝露された後、硬度の実質的な悪化を呈さない場合がある。PCD構造体は、約2重量%未満の触媒的活性化状態のダイヤモンド用触媒金属を含有してもよい。PCD材料中に含まれるダイヤモンド結晶粒同士間の間隙は、実質的に空の空隙であり得る。PCD材料の間隙は、SiCなどのセラミック材料または炭酸塩化合物で少なくとも部分的に満たされていてもよい。PCD構造体は、ダイヤモンド用触媒材料が枯渇している領域を含むことができる。
【0008】
例示的な方法のいくつかの変形では、処理期間を分割してより短い期間にすることができ、すなわち、処理期間は、超硬構造体の冷却によって互いに切り離れたサブ期間を含むことができ、累積処理期間は、少なくとも約5分、少なくとも約15分、または少なくとも約30分とすることができる。
超硬構造体が超硬合金材料を含む基板に接合された、上記請求項のいずれかに記載の方法。例えば、超硬構造体は、基板中に含まれる超硬合金材料からのバインダー材によって基板に結合することができる。本方法は、超硬構築物中に含まれる超硬構造体を準備するステップであって、超硬構造体は、超硬合金材料を含む基板に接合して形成することができるステップと、超硬構築物を処理して処理済み超硬構築物をもたらすステップとを含むことができる。
いくつかの例では、処理期間は、少なくとも約15分、少なくとも約30分、または60分超とすることができる。処理温度は、少なくとも約750℃または少なくとも約800℃とすることができる。
【0009】
本方法は、1分当たり最大で約100℃の平均急冷速度で処理温度から超硬構造体を冷却(急冷)するステップを含み得る。
本方法は、少なくとも約700℃の温度に少なくとも約1分の期間にわたって、処理済み超硬構造体または超硬構築物を加熱することを含むさらなる処理を含むことができる。
超硬構築物を作製するための方法の特定の例では、超硬合金基板上に焼結されたPCBN構造体を含むPCBN構築物は、真空などの実質的に非酸化雰囲気下で、約800℃〜900℃の範囲内の温度に少なくとも約30分間これを加熱することによってもたらされ、処理される。温度は、約1,250℃未満であってもよい。
いくつかの例示的な方法では、処理済み超硬構造体を、1秒当たり最大で約50℃、1秒当たり20℃、または1秒当たり最大で約10℃の平均急冷速度で、最大で約200℃、最大で約100℃の温度、または周囲温度に冷却することができる。本方法の一変形では、超硬構造体を、1分当たり最大で約10℃または最大で約5℃の速度で、処理温度から約500℃未満の温度に冷却することができ、一変形では、超硬構造体を、1分当たり約2℃で、最大で約600℃から最大で約400℃に冷却することができる。本方法の一変形では、超硬構造体を、最大で約450℃から周囲温度により急速に冷却させることができる。特定の例では、処理済み超硬構造体を空気中または窒素中で冷却させることができる。冷却速度は、超硬構造体の温度に応じて変更することができ、温度が下がるにつれて上昇させることができる。
【0010】
いくつかの例では、超硬構造体は、一般にディスク形状とすることができ、少なくとも約20mm、少なくとも約40mm、または少なくとも約60mmの直径または辺長などの寸法を有することができる。超硬構造体と基板を合わせた厚さは、少なくとも約1.5mm、少なくとも約2mm、および最大で約10mm、または最大で約7mmであり得る。超硬構造体の厚さは、少なくとも約0.5mmとすることができ、基板の厚さは、少なくとも約2mmとすることができる。基板の厚さは、最大で約10mmであり得る。他の例では、処理済み超硬構造体は、ディスク形状以外の形状を有することでき、一般に、例えば、円筒形または多角形であってもよい。
一例では、本方法は、処理済み超硬構造体を加工してツール用エレメントを形成するステップを含み、このエレメントは、さらに加工されて工作機械または他の切削工具もしくは穴あけ工具のためのインサートを形成することができる。例えば、処理済み超硬構造体は、レーザー、放電加工(EDM)、または他の手段によって切断されてツール用エレメントを形成することができ、このエレメントは、例えば研削によってさらに加工され得る。熱処理後の処理済み超硬構造体を切断すると、熱処理前の超硬構造体の切断と比較して、寸法公差が改善されたツール用エレメントがもたらされる可能性が高い。
【0011】
本方法は、処理済み超硬構造体を加工(切断など)してツール用超硬エレメント、例えば、工作機械または他の切削工具もしくは穴あけ工具などを形成するステップを含むことができる。
本方法は、超硬構造体を含むツール用超硬エレメントを準備するステップと、700℃超の処理温度で少なくとも約1分の処理期間(時間)にわたって超硬エレメントを加熱して処理済み超硬エレメントを生産するステップとを含むことができる。
いくつかの例では、超硬構造体は、炭化タングステン(WC)粒子、およびコバルト(Co)を含むバインダー材を含む超硬合金基板に接合することができ、WC粒子は、少なくとも約0.5μmの平均サイズDを有し、基板中のWC粒子の含量は、少なくとも約75重量%または少なくとも約85重量%、および最大で約95重量%であり、基板中のバインダー材の含量は、少なくとも約5重量%および最大で約25重量%である。一特定変形では、WC粒子は、最大で約10μmの平均サイズDを有する場合がある。超硬合金材料の熱膨張係数は、少なくとも約5.2×10-6/Kであり得る。超硬合金材料の熱膨張係数は、最大で約7×10-6/Kである場合がある。
【0012】
処理温度は、ある期間にわたって約700℃〜約900℃の範囲内とすることができる。時間での処理期間は、少なくとも約(0.8×D)−0.1、最大で約(4.3×D)−1.7とすることができる。超硬合金のバインダー材は、式Coxyzによる化合物を含む固溶体または分散粒子の形態で、少なくとも約10重量%のタングステン(W)を含有することができ、式中、Xは1〜7の範囲内の値である。一特定変形では、基板は、場合によって、名目上純粋なCoまたはCoとNiとの合金を含むバインダー材の理論値の少なくとも約70%および/または最大で約85%の磁気モーメント(または磁気飽和)を有する場合がある。したがって例えば、バインダーがCoから実質的になる場合、基板は、少なくとも約0.7×201.9μT.m3/kg×[Co]=[Co]×141μT.m3/kg、最大で約0.85×201.9μT.m3/kg×[Co]=[Co]×172μT.m3/kgの磁気飽和を有する場合があり、式中、[Co]は、超硬合金材料中のCoの重量分率である。
【0013】
例示的な超硬合金材料は、約4μm〜約20μmまたは約10μmの範囲内の平均サイズDを有するWC粒子を含むことができ、少なくとも約1.1×(100×[Co])-1.2/D+3.3)の保磁力Hc(kA/mで)を有することができ、式中、Dは、μmでのものであり、[Co]は、超硬合金材料中のCoの重量%である。他の例示的な超硬合金材料は、約0.2μm〜約4μmの範囲内の平均サイズD、および少なくとも約1.1×(200×[Co])-1.2/D+3.3)の保磁力Hc(kA/mで)を有するWC粒子を含むことができ、式中、Dは、μmでのものであり、[Co]は、超硬合金材料中のCoの重量%である。
例示的な処理は、超硬構造体、超硬構築物、および/またはこれらから得られるツール用のツールエレメントの寸法制御が改善される側面を有する可能性が高い。
非限定例を、添付の図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】例示的な超硬構築物の斜視図である。
図2】例示的な独立した超硬構造体の斜視図である。
図3】例示的な超硬構造体、およびこれから切断した例示的な超硬エレメントの平面図である。
図4】超硬エレメントを備える例示的なツールインサートの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照すると、例示的な超硬構築物10は、超硬合金基板14に接合して形成された超硬構造体12を含むことができる。図2を参照すると、例示的な超硬構造体12は、独立しており、超硬合金基板に接合していない場合がある。
図3を参照すると、処理済み超硬構造体10を、切断および/または他の方法で加工してツールインサート用超硬エレメント30を生産することができる。図4は、キャリア本体42に接合した超硬エレメント30を備えるツールインサート40を示す。
PCBN構造体をもたらす例示的な方法は、米国特許第7,867,438号に見出すことができる。いくつかの例では、超硬構造体は、基板に接合して形成され、超硬構築物中に含まれている場合があり、他の例では、超硬構造体は、実質的に独立しており、基板に接合していない場合がある。
【0016】
特定の理論によって束縛されることを望まないが、開示した処理済み超硬構築物を加熱処理すると、超硬構造体と基板の熱膨張性の差異から生じる場合のある、処理済み超硬構築物内の残留応力を軽減する効果を有することができる。このような差異により、超高圧および高温でエレメントを焼結した後にこれを冷却する際のバイメタル効果に起因して処理済み超硬構築物が曲がることさえあり得る。別の理論は、開示した処理済み超硬構築物を加熱処理すると、ある特定の材料相の非常に小さい結晶粒(例えば、ナノサイズ結晶粒)の析出など、超硬合金基板中の微細構造が変化することであり得る。熱処理温度が約700℃より実質的に低い場合、熱エネルギーが、利点をもたらすのに十分でない場合があり、熱処理の時間が約5分より実質的に短い場合、処理済み超硬構築物中に生じる変化の範囲または程度が十分でない場合がある。温度が高すぎる場合、超硬構造体は、実質的に劣化する場合がある。
非限定例について、より詳細に以下に記載し、以下の表に要約する。
【0017】
【表1】
【実施例】
【0018】
(例1)
超硬合金基板に接合したPCBN構造体を含む処理済み超硬構築物を、基板上に直接cBN結晶粒およびマトリックス材料を焼結するステップを含む方法によって準備した。基板は、直径約50mmおよび厚さ約4.5mmを有し、コバルトを含むバインダー内に分散した約1μmの平均サイズを有する炭化タングステン(WC)結晶粒を含むディスクの形態であった。基板中のWC結晶粒の含量は、約94重量%であり、残りの6重量%は、マトリックス材料であった。超硬合金材料の磁気飽和は、7.8G.cm3/g〜9.5G.cm3/gの範囲内であり、磁気保磁力は、15.1kA/m〜17.5kA/mの範囲内であり、熱膨張係数は、約5.4×10-6/Kであった。
【0019】
炭窒化チタン粉末をAl粉末と混合した。この場合、炭窒化チタンとAl粉末の重量比は、90:10であった。粉末混合物を加熱し、粉砕し、有機溶媒で摩砕した。約1μmの平均粒度を有するcBN粉末を、混合物中65体積%のCBNを実現する比で添加した。粉砕された粉末は、摩砕前後の粉砕媒体の重量の差異によって測定したところ、摩砕からの軽微な量の炭化タングステンを含有していた。
摩砕後に、スラリーを真空下で乾燥させ、基板上で層を形成して、焼結前成形体を形成した。焼結前成形体を超高プレス用カプセル内に集め、約5GPaの圧力および約1,300℃の温度に数分間曝して、基板に一体的に接合したPCBN材料の焼結層を含む構築物を形成し、これを周囲温度に冷却させた。PCBN材料は、炭窒化チタンおよびアルミニウムのホウ化物を含むマトリックス内に埋め込まれた約65体積%のcBMを含んでいた。
PCBN構築物を真空下の炉内に置き、約850℃の温度に約120分の期間にわたって加熱し、この温度を約60分間維持した。次いで温度を約350分の期間にわたって約500℃に、次いで約5分にわたって約490℃に下げ、最後に窒素ガスを炉内に流し、PCBNエレメントを周囲温度に冷却した。
【0020】
(例2)
PCBN層中のcBN結晶粒の含量が約60体積%であり、cBN結晶粒の平均サイズが約1μmであり、基板中のWC結晶粒の含量が約87重量%であり、残りの13重量%がマトリックス材料であったことを除いて、PCBN構築物を例1と同様に準備した。超硬合金材料の磁気飽和は、18.4G.cm3/g〜20G.cm3/gの範囲内であり、磁気保磁力は、9kA/m〜10.5kA/mの範囲内であり、熱膨張係数は、約6.8×10-6/Kであった。
【0021】
(例3)
PCBN層中のcBN結晶粒の含量が約50体積%であり、cBN結晶粒の平均サイズが約1μmであり、基板中のWC結晶粒の含量が約87重量%であり、残りの13重量%がマトリックス材料であったことを除いて、PCBN構築物を例1と同様に準備した。
【0022】
(例4)
超硬合金基板に接合したPCBN構造体を含む処理済み超硬構築物を、基板上に直接cBN結晶粒およびマトリックス材料を焼結するステップを含む方法によって準備した。基板は、直径約50mmおよび厚さ約4.5mmを有し、コバルトを含むバインダー内に分散した炭化タングステン(WC)結晶粒を含むディスクの形態であった。基板中のWC結晶粒の含量は、約87重量%であり、残りの約13重量%は、バインダー材であった。
炭窒化チタン粉末をAl粉末と混合した。この場合、炭窒化チタンとAl粉末の重量比は、90:10であった。粉末混合物を加熱し、粉砕し、有機溶媒で摩砕した。約1μmの平均サイズを有するCBN粉末を、混合物中50体積%のCBNを実現する比で添加し、次いで混合物をさらに摩砕した。摩砕後に、スラリーを乾燥させ、成形して緑色成形体にした。
摩砕後に、スラリーを真空下で乾燥させ、基板上で層を形成して焼結前成形体を形成した。焼結前成形体を超高プレス用カプセル内に集め、約5GPaの圧力および約1,300℃の温度に数分間曝して、基板に一体的に接合したPCBN材料の焼結層を形成した。PCBN材料は、炭窒化チタンおよびアルミニウムのホウ化物を含むマトリックス内に埋め込まれた約50体積%のcBMを含んでいた。
【0023】
本明細書で使用するある特定の用語を以下に簡単に説明する。
本明細書において、「超硬(super−hard)」または超硬(ultra−hard)材料は、少なくとも約25GPaのビッカース硬さを有する。合成および天然ダイヤモンド、多結晶ダイヤモンド(PCD)、立方晶窒化ホウ素(cBN)、および多結晶cBN(PCBN)材料は、超硬材料の例である。合成ダイヤモンドは、人工ダイヤモンドとも呼ばれ、製造されたダイヤモンド材料である。PCD構造体は、PCD材料を含み、またはこれから本質的になり、PCBN構造体は、PCBN材料を含み、またはこれから本質的になる。超硬材料の他の例としては、炭化ケイ素(SiC)などのセラミック材料を含むマトリックスによって、または共結合WC材料などの超硬合金材料によって結び付いたダイヤモンドまたはcBN結晶粒を含むある特定のコンポジット材がある(例えば、米国特許第5,453,105号または同第6,919,040号に記載されている)。例えば、ある特定のSiC結合ダイヤモンド材料は、SiCマトリックス(これは、SiC以外の形態で軽微な量のSiを含有し得る)中に分散した少なくとも約30体積%のダイヤモンド結晶粒を含むことができる。SiC結合ダイヤモンド材料の例は、米国特許第7,008,672号、同第6,709,747号、同第6,179,886号、同第6,447,852号、および国際公開第2009/013713号に記載されている。
【0024】
PCBN材料は、金属またはセラミック材料を含むマトリックス内に分散した立方晶窒化ホウ素(cBN)の結晶粒を含む。例えば、PCBN材料は、Ti含有化合物、例えば、炭化チタン、窒化チタン、炭窒化チタンなど、ならびに/または窒化アルミニウムなどのAl含有化合物、ならびに/またはCoおよび/もしくはWなどの金属を含有する化合物を含むマトリックス材料中に分散した少なくとも約35体積%または少なくとも約50体積%のcBN結晶粒を含むことができる。いくつかの型(または「グレード」)のPCBN材料は、少なくとも約80体積%、またはさらには少なくとも約90体積%のcBN結晶粒を含む場合がある。
【0025】
多結晶ダイヤモンド(PCD)材料は、ダイヤモンド結晶粒の塊(すなわち、複数の集合体)を含み、これらの相当な部分は、互いに直接、相互結合しており、PCD材料中のダイヤモンドの含量は、材料の少なくとも約80体積%である。ダイヤモンド結晶粒同士間の間隙は、合成ダイヤモンド用触媒材料を含むバインダー材で少なくとも部分的に満たされている場合があり、またはこれらは、実質的に空であってもよい。合成ダイヤモンド用触媒材料は、合成または天然ダイヤモンドが熱力学的に安定である温度および圧力で、合成ダイヤモンド結晶粒の成長、および/または合成もしくは天然ダイヤモンド結晶粒の直接的なインターグロースを促進することができる。ダイヤモンド用触媒材料の例は、Fe、Ni、Co、Mn、およびこれらを含むある特定の合金である。PCD材料を含む超硬構造体は、触媒材料が、ダイヤモンド結晶粒同士間の組織内空隙を残して間隙から除去された少なくとも1つの領域を含み得る。PCD材料は、グレードに適したサイズ分布を有するダイヤモンド結晶粒の凝集塊を準備するステップと、凝集塊中に触媒材料または添加材を任意選択により導入するステップと、ダイヤモンド用触媒材料源の存在下で、ダイヤモンドがグラファイトより熱力学的に安定であり、触媒材料が溶融している圧力および温度に凝集した塊を曝すステップとを含むプロセスによって作製することができる。これらの条件下で、溶融した触媒材料は、凝集した塊内に源から浸潤することができ、焼結プロセスにおいてダイヤモンド結晶粒同士間の直接的なインターグロースを促進することによってPCD構造体を形成する可能性が高い。凝集塊は、緩いダイヤモンド結晶粒、またはバインダー材によって結び付いたダイヤモンド結晶粒を含むことができる。異なるPCDグレードは、異なる微細構造および異なる機械的性質、例えば、弾性(またはヤング)係数E、弾性率、抗折力(TRS)、靭性(いわゆるK1C靭性など)、硬度、密度、および熱膨張係数(CTE)などを有する場合がある。異なるPCDグレードは、使用の際に異なって機能する場合もある。例えば、異なるPCDグレードの摩耗率および破壊抵抗は、異なっている場合がある。
【0026】
熱的に安定なPCD材料は、約400℃を超える、またはさらには約700℃を超える温度に曝露された後、実質的な構造的劣化または硬度もしくは耐摩耗性の悪化を呈さない少なくとも一部分または少なくともある量を含む。例えば、約2重量%未満のダイヤモンド用触媒金属、例えば、触媒的活性化状態(例えば、元素形態)のCo、Fe、Ni、Mnなどを含有するPCD材料は、熱的に安定であり得る。触媒的活性化状態の触媒材料を実質的に含まないPCD材料は、熱的に安定なPCDの例である。例えば、間隙が実質的に空隙であるか、SiCなどのセラミック材料または炭酸塩化合物などの塩材料で少なくとも部分的に満たされているPCD材料は、熱的に安定であり得る。ダイヤモンド用触媒材料が枯渇しており、または触媒材料が触媒として相対的に活性が低い形態である、少なくも有意な領域を有するPCD構造体は、熱的に安定なPCDとして記述され得る。
【0027】
上記に説明したように、PCD材料およびPCBN材料は、超硬合金基板などの基板上の適当なバインダーまたは触媒材料の存在下で、複数のダイヤモンドまたはcBN結晶粒をそれぞれ焼結することによってもたらすことができる。こうして生産されるPCDまたはPCBN構造体は、基板に接合して形成され、それぞれの構造体が焼結体に形成されるプロセスの間に基板に結合したPCDまたはPCBN構造体を含む構築物の一体部分となる可能性が高い。
【0028】
超硬合金材料は、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)などの金属、または金属合金を含むバインダー材内に分散した炭化タングステン(WC)または炭化チタン(TiC)などの金属炭化物の粒子を含む。バインダー相は、焼結成形体として炭化物粒子を一緒に固めると言うことができる。超硬合金材料は、様々な組成を有することができる。いくつかの例では、超硬合金材料は、少なくとも約0.1重量%〜約10重量%のバナジウム(V)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、および/またはハフニウム(Hf)を含有することができ、これらは、バインダー材中の固溶体の形態であってもよく、かつ/または炭化物形態であってもよい。ナノ粒子は、バインダー材中で分散していることができ、V、Cr、Ta、Ti、Mo、Nb、および/またはHfを含有することができる。いくつかの例では、超硬合金は、少なくとも0.01重量%および最大で5重量%のRu、Rh、Pd、Re、Os、In、および/またはPtから選択される1種または複数種の金属を含有する場合がある。磁気的性質の測定を使用して、微細構造の側面および超硬合金材料の性質を間接的に測定することができる。保磁力(または単に保磁力もしくは飽和保持力)および磁気モーメント(または磁気飽和)が、このような目的で使用される。
図1
図2
図3
図4