特許第5698422号(P5698422)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5698422硬化性組成物及びこれを用いてなる目地構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5698422
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】硬化性組成物及びこれを用いてなる目地構造
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/02 20060101AFI20150319BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20150319BHJP
   C08K 5/3435 20060101ALI20150319BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20150319BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20150319BHJP
   C08K 5/544 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   C08L71/02
   C08L33/14
   C08K5/3435
   E04F13/08 Y
   C09K3/10 G
   C08K5/544
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-538943(P2014-538943)
(86)(22)【出願日】2014年4月23日
(86)【国際出願番号】JP2014061492
【審査請求日】2014年8月12日
(31)【優先権主張番号】特願2013-91225(P2013-91225)
(32)【優先日】2013年4月24日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-143107(P2013-143107)
(32)【優先日】2013年7月8日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-194865(P2013-194865)
(32)【優先日】2013年9月20日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】305044143
【氏名又は名称】積水フーラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】池内 拓人
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/112340(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/094275(WO,A1)
【文献】 特開2012−211299(JP,A)
【文献】 特開平04−249577(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/037368(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/047837(WO,A1)
【文献】 特開2012−072293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00− 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)100重量部と、
加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体(B)30〜200重量部と、
アルキルアルコキシシランとアミノアルコキシシランとの加水分解縮合物であり且つ窒素原子の含有量が1重量%以上であるアルコキシシランオリゴマー(C)1〜10重量部
を含むことを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
アルコキシシランオリゴマー(C)は、−(CH23−NH2、−(CH23−NHR、−(CH23−NH(CH22−NH2、及び、−(CH23−NH(CH22−NH(CH22−NH2からなる群から選ばれた少なくとも一種のアミノプロピル官能基を有していることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。(式中、Rは、炭素数が1〜18個のアルキル基、炭素数が3〜18個の一価の飽和脂環式炭化水素基、又は、炭素数が6〜12個のアリール基である。)
【請求項3】
アルコキシシランオリゴマー(C)は、式:−(CH23−NH(CH22−NH2で表されるアミノプロピル官能基を有していることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
アクリル系重合体(B)が、1分子中に平均して1〜2個の加水分解性シリル基を有することを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
アクリル系重合体(B)が、主鎖両末端のうち少なくとも一方に加水分解性シリル基を有することを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
NOR型ヒンダードアミン系光安定剤を含有していることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
建築構造物の壁部を構成している壁部材と、
上記壁部材間に形成された目地部に充填された請求項1に記載の硬化性組成物の硬化物と
を含むことを特徴とする目地構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雰囲気中の湿気により硬化して、耐候性に優れた硬化物を与える硬化性組成物、及びこれを用いてなる目地構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、架橋可能な加水分解性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体を含有する硬化性組成物が知られている(例えば、特許文献1)。硬化性組成物は、雰囲気中に含まれる湿気により架橋可能な加水分解性シリル基が加水分解した後に脱水縮合することによって、接着性に優れた硬化物を生じる。
【0003】
このような硬化性組成物は、例えば、建築構造物の外壁などにおいて、モルタル板、コンクリート板、ALC(Autoclaved Light-weight Concrete)板、金属板などの外壁部材間の接合部(いわゆる「目地部」)に充填することによって、外壁部材同士を接合するために用いられている。このように硬化性組成物を使用することによって、外壁部材間の接合部から建築構造物内部へ雨水が浸入することを抑制している。
【0004】
建築構造物の外壁では、温度変化に伴って外壁部材が膨張又は収縮したり、地震や強風による振動や外力によって外壁部材が移動したりするために、目地部の幅は僅かであるが変化を生じる。そのため、硬化性組成物には、硬化後に優れたゴム弾性を有し、伸縮可能とすることによって、目地部の幅の変化に追随できることが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2008−1833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の硬化性組成物では、硬化後、経時的にゴム弾性が低下して硬くなり、目地部の幅の変化が生じた際に目地部の幅の変化に追随して伸縮することが困難となり、接着界面での剥離や外壁部材の損傷が生じたり、硬化性組成物の硬化物に亀裂(クラック)が生じたりして、雨水が建築構造物内へ浸入し、漏水を引き起こすといった問題があった。
【0007】
したがって、本発明は、硬化後に優れたゴム弾性を長期間に亘って維持することができる硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の硬化性組成物は、
加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)100重量部と、
加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体(B)30〜200重量部と、
アルキルアルコキシシランとアミノアルコキシシランとの加水分解縮合物であり且つ窒素原子の含有量が1重量%以上であるアルコキシシランオリゴマー(C)1〜10重量部
を含むことを特徴とする。
【0009】
[ポリアルキレンオキサイド(A)]
硬化性組成物に含まれているポリアルキレンオキサイド(A)は、加水分解性シリル基を有している。加水分解性シリル基とは、珪素原子に1〜3個の加水分解性基が結合してなる基である。
【0010】
加水分解性シリル基の加水分解性基としては、特に限定されず、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。
【0011】
なかでも、加水分解性シリル基としては、加水分解反応が穏やかであることから、アルコキシシリル基が好ましい。アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、及びトリフェノキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;ジメトキシメチルシリル基、及びジエトキシメチルシリル基などのジメトキシシリル基;並びに、メトキシジメトキシシリル基、及びエトキシジメチルシリル基などのモノアルコキシシリル基が挙げられる。なかでも、ジアルコキシシリル基がより好ましく、ジメトキシメチルシリル基が特に好ましい。
【0012】
ポリアルキレンオキサイド(A)は、1分子中に平均して、1〜2個の加水分解性シリル基を有していることが好ましい。ポリアルキレンオキサイド(A)における加水分解性シリル基の数が1個以上であると、硬化性組成物の硬化性が向上する。また、ポリアルキレンオキサイド(A)における加水分解性シリル基の数が2個以下であると、硬化性組成物の硬化物の機械的強度又は伸び性が向上する。また、ポリアルキレンオキサイド(A)は、その主鎖の両末端のうち少なくとも一方に加水分解性シリル基を有していることが好ましい。
【0013】
なお、ポリアルキレンオキサイド(A)中における、1分子当たりの加水分解性シリル基の平均個数は、1H−NMRにより求められるポリアルキレンオキサイド(A)中の加水分解性シリル基の濃度、及びGPC法により求められるポリアルキレンオキサイド(A)の数平均分子量に基づいて算出することができる。
【0014】
ポリアルキレンオキサイド系重合体(A)としては、主鎖が、一般式:−(R−O)n−(式中、Rは炭素数が1〜14のアルキレン基を表し、nは、繰り返し単位の数であって正の整数である。)で表される繰り返し単位を含有する重合体が好ましく挙げられる。ポリアルキレンオキサイド系重合体の主鎖骨格は一種のみの繰り返し単位からなっていてもよいし、二種以上の繰り返し単位からなっていてもよい。
【0015】
ポリアルキレンオキサイド系重合体(A)の主鎖骨格としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド共重合体、及びポリプロピレンオキサイド−ポリブチレンオキサイド共重合体などが挙げられる。なかでも、ポリプロピレンオキサイドが好ましい。ポリプロピレンオキサイドによれば、硬化後に優れたゴム弾性及び接着性に優れる硬化性組成物を提供することができる。
【0016】
ポリアルキレンオキサイド系重合体(A)の数平均分子量は、10,000〜50,000が好ましく、15,000〜30,000がより好ましい。ポリアルキレンオキサイド系重合体(A)の数平均分子量が10,000以上であると、硬化性組成物の硬化物の機械的強度又は伸び性が向上する。ポリアルキレンオキサイド系重合体(A)の数平均分子量が50,000以下であると、硬化性組成物の塗工性が向上する。
【0017】
なお、本発明において、ポリアルキレンオキサイド系重合体(A)の数平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値を意味する。GPC法による測定においては、例えば、GPCカラムとして東ソー製Shodex KF800Dを用い、溶媒としてクロロホルムなどを用いることができる。
【0018】
加水分解性シリル基を含有しているポリアルキレンオキサイド系重合体(A)は、市販されているものを用いることができる。例えば、主鎖骨格がポリプロピレンオキサイドであり、主鎖骨格の末端にジメトキシメチルシリル基を有しているポリアルキレンオキサイド系重合体としては、旭硝子社製 製品名「エクセスター S2410」、及びカネカ社製 製品名「S203」などが挙げられる。
【0019】
[アクリル系重合体(B)]
硬化性組成物に含まれているアクリル系重合体(B)は、加水分解性シリル基を有している。
【0020】
加水分解性シリル基としては、硬化性組成物の硬化物が長期間に亘って優れたゴム弾性を維持することができるので、アルコキシシリル基が好ましい。アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、及びトリフェノキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;ジメトキシメチルシリル基、及びジエトキシメチルシリル基などのジアルコキシシリル基;並びに、メトキシジメトキシシリル基、及びエトキシジメチルシリル基などのモノアルコキシシリル基が挙げられる。なかでも、ジアルコキシシリル基がより好ましく、ジメトキシメチルシリル基が特に好ましい。
【0021】
アクリル系重合体(B)は、1分子中に平均して、1〜2個の加水分解性シリル基を有しているのが好ましい。アクリル系重合体(B)は、1分子中に平均して、1〜1.8個の加水分解性シリル基を有しているのがより好ましい。アクリル系重合体(B)における加水分解性シリル基の数が1以上であると、硬化性組成物の硬化性が向上する。アクリル系重合体(B)における加水分解性シリル基の数が2以下であると、硬化性組成物の硬化物の機械的強度又は伸び性が向上する。また、アクリル系重合体(B)は、その主鎖の両末端のうち少なくとも一方に加水分解性シリル基を有していることが好ましく、主鎖の両末端に加水分解性シリル基を有していることが好ましい。
【0022】
なお、アクリル系重合体(B)中における、1分子当たりの加水分解性シリル基の平均個数は、1H−NMRにより求められるアクリル系重合体(B)中の加水分解性シリル基の濃度、及びGPC法により求められるアクリル系重合体(B)の数平均分子量に基づいて算出することができる。
【0023】
アクリル系重合体(B)の主鎖骨格としては、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート系モノマーをラジカル重合して得られるアクリル系重合体が挙げられる。なお、(メタ)アクリレートは、メタクリレート又はアクリレートを意味する。
【0024】
アクリル系重合体(B)の主鎖を構成する(メタ)アクリレート系モノマーとして、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−3−メチルブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−[アクリロイルオキシ]エチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、及び2−[アクリロイルオキシ]エチル−2−ヒドロキシプロピルフタル酸などが挙げられる。これらの(メタ)アクリレート系モノマーは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0025】
アクリル系重合体(B)において、他のモノマーを共重合することも可能である。このようなモノマーとしては、例えば、スチレン、インデン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、p−クロロメチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、ジビニルベンゼンなどのスチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、安息香酸ビニル、珪皮酸ビニルなどのビニルエステル基を持つ化合物、無水マレイン酸、N−ビニルピロリドン、N−ビニルモルフォリン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、tert−アミルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、エチレングリコールブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールメチルビニルエーテル、安息香酸(4−ビニロキシ)ブチル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ブタン−1,4−ジオール−ジビニルエーテル、ヘキサン−1,6−ジオール−ジビニルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール−ジビニルエーテル、イソフタル酸ジ(4−ビニロキシ)ブチル、グルタル酸ジ(4−ビニロキシ)ブチル、コハク酸ジ(4−ビニロキシ)ブチルトリメチロールプロパントリビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、3−アミノプロピルビニルエーテル、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルビニルエーテル、ウレタンビニルエーテル、ポリエステルビニルエーテルなどのビニロキシ基を持つ化合物などを挙げることができる。これらのモノマーは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0026】
なかでも、アクリル系重合体(B)の主鎖骨格としては、ブチル(メタ)アクリレート及びメチル(メタ)アクリレートの共重合体が好ましく、ブチルアクリレート及びメチルメタアクリレートの共重合体がより好ましい。主鎖骨格が上記共重合体からなるアクリル系重合体(B)によれば、硬化後に伸び性及び柔軟性が両立された硬化物を形成することが可能な硬化性組成物が得られる。
【0027】
アクリル系重合体(B)の重合方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができ、例えば、フリーラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、UVラジカル重合法、リビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法、リビングラジカル重合法などの各種重合法が挙げられる。
【0028】
アクリル系重合体(B)への加水分解性シリル基の導入方法としては、特に限定されず、例えば、分子中に不飽和基を導入したアクリル系重合体に、加水分解性シリル基を有するヒドロシランを作用させてヒドロシリル化する方法など、公知の方法を利用することができる。
【0029】
アクリル系重合体(B)の数平均分子量は、12,000〜50,000が好ましく、15,000〜30,000がより好ましい。アクリル系重合体(B)の数平均分子量が50,000以下であると、硬化性組成物の塗工性が向上する。アクリル系重合体(B)の数平均分子量が12,000以上であると、硬化性組成物の硬化物の機械的強度又は伸び性が向上する。
【0030】
なお、本発明において、アクリル系重合体の数平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値を意味する。GPC法による測定においては、例えば、GPCカラムとして東ソー製Shodex KF800Dを用い、溶媒としてクロロホルムなどを用いることができる。
【0031】
硬化性組成物中におけるアクリル系重合体(B)の含有量は、ポリアルキレンオキサイド系重合体(A)100重量部に対して、30〜200重量部であるが、50〜150重量部が好ましい。硬化性組成物中におけるアクリル系重合体(B)の含有量が30重量部以上であると、硬化性組成物の硬化物は長期間に亘って優れたゴム弾性を維持する。硬化性組成物中におけるアクリル系重合体(B)の含有量が200重量部以下であると、硬化性組成物の塗工性が向上する。
【0032】
[アルコキシシランオリゴマー(C)]
硬化性組成物は、アルキルアルコキシシランとアミノアルコキシシランとの加水分解縮合物であるアルコキシシランオリゴマー(C)を含む。即ち、硬化性組成物は、アルキルアルコキシシランとアミノアルコキシシランとを加水分解させた後に縮合させてなるアルコキシシランオリゴマー(C)を含む。
【0033】
アルキルアルコキシシランとは、少なくとも1個のアルキル基と、少なくとも2個のアルコキシ基とがケイ素原子に直接結合している化合物を意味する。アルキルアルコキシシランは、1個のアルキル基と、3個のアルコキシ基とがケイ素原子に直接結合しているモノアルキルトリアルコキシシランが好ましい。アルキルアルコキシシランとして、具体的には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、及びヘキシルトリメトキシシランなどが挙げられ、エチルトリエトキシシランが好ましい。
【0034】
アミノアルコキシシランとは、1分子中に、アミノ基含有官能基を少なくとも1個有し、且つ少なくとも2個のアルコキシ基がケイ素原子に直接結合している化合物を意味する。アミノ基含有官能基は、ケイ素原子に直接結合していることが好ましい。アミノアルコキシシランは、一分子中に、アミノ基含有官能基を1個有し、且つ3個のアルコキシ基がケイ素原子に直接結合している化合物が好ましい。
【0035】
アミノ基含有官能基としては、硬化性組成物の硬化が促進され、硬化性組成物の接着性がより向上すると共に、硬化性組成物の硬化物が長期間に亘って優れたゴム弾性を維持するので、アミノプロピル官能基が好ましい。アミノプロピル官能基としては、−(CH23−NH2、−(CH23−NHR、−(CH23−NH(CH22−NH2(3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピル基)、及び、−(CH23−NH(CH22−NH(CH22−NH2(3−[[2−(2−アミノエチルアミノ)エチル]アミノ]プロピル基)からなる群から選ばれた少なくとも一種のアミノプロピル官能基が好ましい。アミノプロピル官能基としては、各種基材への接着性に優れていると共に、硬化性組成物の硬化物が長期間に亘って優れたゴム弾性を維持するので、−(CH23−NH(CH22−NH2がより好ましい。
【0036】
−(CH23−NHRにおいて、Rは、炭素数が1〜18個のアルキル基、炭素数が3〜18個の一価の飽和脂環式炭化水素基、又は、炭素数が6〜12個のアリール基である。
【0037】
炭素数が1〜18のアルキル基としては、直鎖状のアルキル基及び分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基などが挙げられる。直鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基及びn−ブチル基が好ましい。分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。
【0038】
炭素数が3〜18個の飽和脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基,シクロヘプチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられ、シクロヘキシル基が好ましい。
【0039】
炭素数が6〜12個のアリール基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、トリル基、o−キシリル基が挙げられ、フェニル基が好ましい。
【0040】
アミノアルコキシシランとしては、具体的には、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−メチル−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチル−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−n−ブチル−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−n−ブチル−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリメトキシシラン、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリエトキシシラン、[3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピル]トリメトキシシラン、[3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピル]トリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−メチル−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−メチル−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−n−ブチル−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−n−ブチル−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルメチルジメトキシシラン、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルメチルジエトキシシラン、[3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピル]メチルジメトキシシラン、[3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピル]メチルジエトキシシランなどが挙げられる。アミノアルコキシシランとしては、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリメトキシシラン、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリエトキシシランが好ましく、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリエトキシシランがより好ましい。
【0041】
アルコキシシランオリゴマー(C)は、モノアルキルトリアルコキシシランと、1個のアミノプロピル官能基及び3個のアルコキシ基がケイ素原子に直接結合しているアミノアルコキシシランとの加水分解縮合物が好ましい。
【0042】
アルコキシシランオリゴマー(C)は、モノアルキルトリアルコキシシランと、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリアルコキシシランとの加水分解縮合物が好ましい。
【0043】
アルコキシシランオリゴマー(C)は、モノアルキルトリエトキシシランと、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリアルコキシシランとの加水分解縮合物が好ましい。
【0044】
アルコキシシランオリゴマー(C)は、モノアルキルトリアルコキシシランと、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリエトキシシランとの加水分解縮合物が特に好ましい。
【0045】
アルコキシシランオリゴマー(C)は、エチルトリエトキシシランと、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリエトキシシランとの加水分解縮合物が特に好ましい。
【0046】
アルコキシシランオリゴマー(C)は、アルキルアルコキシシランが有するアルコキシ基と、アミノアルコキシシランが有するアルコキシ基とを加水分解させてシラノール基を形成させた後、これらのシラノール基同士を縮合させることにより得られる。なお、シラノール基とは、ケイ素原子に直接結合しているヒドロキシ基(≡Si−OH)を意味する。
【0047】
また、アルコキシシランオリゴマー(C)は、市販されているものを用いることができる。例えば、エボニックデクサ社製 製品名「ダイナシラン1146」などが挙げられる。
【0048】
アルコキシシランオリゴマー(C)の粘度は、100mPa・s以下が好ましく、50mPa・s以下がより好ましく、30mPa・s以下が特に好ましい。アルコキシシランオリゴマー(C)の粘度が100mPa・s以下であると、アルコキシシランオリゴマー(C)が接着界面に移行し、硬化性組成物が十分な接着力を発現するので好ましい。
【0049】
アルコキシシランオリゴマー(C)の粘度は、JIS Z8803に準拠して20℃、回転数60rpmの条件下にてB型粘時計を用いて測定した値をいう。
【0050】
アルコキシシランオリゴマー(C)の重量平均分子量は、500〜1,000が好ましく、550〜900がより好ましく、600〜850が特に好ましい。アルコキシシランオリゴマー(C)の重量平均分子量が500以上であると、硬化性組成物の硬化物が優れたゴム弾性を有しているので好ましい。アルコキシシランオリゴマー(C)の重量平均分子量が1000以下であると、アルコキシシランオリゴマー(C)が接着界面に移行し、硬化性組成物の接着性が向上し好ましい。
【0051】
なお、本発明において、アルコキシシランオリゴマー(C)の重量平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値を意味する。GPC法による測定においては、例えば、GPCカラムとして東ソー製Shodex KF800Dを用い、溶媒としてテトラヒドロフランなどを用いることができる。
【0052】
硬化性組成物中におけるアルコキシシランオリゴマー(C)の含有量は、ポリアルキレンオキサイド系重合体(A)100重量部に対して、1〜10重量部であるが、1.5〜5重量部が好ましい。硬化性組成物中におけるアルコキシシランオリゴマー(C)の含有量が1重量部以上であると、硬化性組成物の接着性が向上する。また、硬化性組成物中におけるアルコキシシランオリゴマー(C)の含有量が10重量部以下であると、硬化性組成物の硬化物が長期間に亘って優れたゴム弾性を維持する。
【0053】
アルコキシシランオリゴマー(C)中における窒素原子の含有量は、1重量%以上であり、3〜10重量%が好ましく、5〜10重量%がより好ましく、5〜8重量%が特に好ましく、5〜7重量%が最も好ましい。窒素原子の含有量が上記範囲内であるアルコキシシランオリゴマー(C)によれば、硬化性組成物の耐湿接着性をより向上させることができ、このような硬化性組成物は長期間に亘って優れたゴム弾性を維持することが可能な硬化物を形成することができる。なお、アルコキシシランオリゴマー(C)中における窒素原子の含有量は、アミノアルコキシシランなどの窒素原子を分子中に含むアルコキシシランにより調整することができる。
【0054】
アルコキシシランオリゴマー(C)中における窒素原子の含有量は、CHN元素分析装置によって測定された値をいう。例えば、下記の測定条件で求めることができる。
・装置:CHN元素分析装置(Elementar製 vario EL III)
・試料の量:10mg
・燃焼管温度:950℃
・還元管温度:500℃
・キャリアーガス:200mL/min
・検出器:TCD
・標準試料:Acetanilide(元素分析用標準試料)C=71.09%, H=6.710%, N=10.36%)
・定量法:標準試料による多点検量線方式
【0055】
[可塑剤]
硬化性組成物は、可塑剤をさらに含んでいてもよい。可塑剤として、具体的には、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレートなどのフタル酸エステル類、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレンオキサイド類、及びアクリル系重合体などが挙げられ、アクリル系重合体が好ましい。アクリル系重合体は、加水分解性シリル基を含有していないアクリル系重合体を少なくとも含む。経時でのゴム弾性低下を防ぐため、アクリル重合体は、加水分解性シリル基を含んでいてもよく、1分子中に平均して、加水分解性シリル基を0.1〜0.5個含んでいることが好ましい。アクリル重合体の1分子中における加水分解性シリル基の平均個数が0.1個以上であると、可塑剤がアクリル系重合体(B)の主鎖に取り込まれて、可塑剤のブリードアウトが抑制されるので、硬化性組成物の硬化物が長期間に亘って優れたゴム弾性をする。また、アクリル重合体の1分子中における加水分解性シリル基の平均個数が0.5個以下であると、アクリル系重合体(B)及び可塑剤による架橋密度が高くなりすぎず、硬化性組成物を可塑化して、硬化性組成物の硬化物が優れたゴム弾性を有する。また、アクリル重合体の重量平均分子量は、500〜10,000が好ましく、1000〜5000がより好ましい。アクリル重合体の重量平均分子量が500以上であると、アクリル系重合体(B)からの可塑剤のブリードアウトを抑制することができる。また、アクリル系重合体の重量平均分子量が10,000以下であると。硬化性組成物を十分に可塑化して、硬化性組成物の硬化物が優れたゴム弾性を有する。
【0056】
硬化性組成物中における可塑剤の含有量は、ポリアルキレンオキサイド系重合体(A)及びアクリル系重合体(B)の合計100重量部に対して、100重量部以下が好ましく、70重量部以下がより好ましく、1〜70重量部が特に好ましい。硬化性組成物中における可塑剤の含有量が高過ぎると、可塑剤がブリードを起こす虞れがある。
【0057】
[充填剤]
硬化性組成物は、充填剤をさらに含んでいるのが好ましい。充填剤によれば、機械的強度に優れている硬化物を得ることが可能な硬化性組成物を提供することができる。
【0058】
充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、含水ケイ酸、無水ケイ酸、微粉末シリカ、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、クレー、タルク、カーボンブラック、及びガラスバルーンなどを挙げることができる。これらの充填剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なかでも、炭酸カルシウムが好ましく用いられる。
【0059】
炭酸カルシウムの平均粒子径は、0.01〜5μmが好ましく、0.05〜2.5μmがより好ましい。このような平均粒子径を有している炭酸カルシムによれば、機械的強度及び伸び性に優れている硬化物を得ることができ、且つ優れた接着性を有している硬化性組成物を提供することができる。
【0060】
また、炭酸カルシウムは、脂肪酸や脂肪酸エステルなどにより表面処理されているのが好ましい。脂肪酸や脂肪酸エステルなどにより表面処理されている炭酸カルシウムによれば、硬化性組成物にチキソトロピー性を付与できると共に炭酸カルシムが凝集することを抑制することができる。
【0061】
硬化性組成物中における充填剤の含有量は、ポリアルキレンオキサイド系重合体(A)及びアクリル系重合体(B)の合計100重量部に対して、1〜700重量部が好ましく、10〜200重量部がより好ましい。硬化性組成物中における充填剤の含有量が1重量部以上であると、充填剤の添加による効果が十分に得られる。また、硬化性組成物中における充填剤の含有量が700重量部以下であると、硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物が優れた伸び性を有する。
【0062】
[脱水剤]
硬化性組成物は、脱水剤をさらに含んでいるのが好ましい。脱水剤によれば、硬化性組成物を保存している際に、空気中などに含まれている水分によって硬化性組成物が硬化することを抑制することができる。
【0063】
脱水剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、及びジフェニルジメトキシシランなどのシラン化合物;並びにオルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、及びオルト酢酸エチル等のエステル化合物などを挙げることができる。これらの脱水剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なかでも、ビニルトリメトキシシランが好ましい。
【0064】
硬化性組成物中における脱水剤の含有量は、ポリアルキレンオキサイド系重合体(A)及びアクリル系重合体(B)の合計100重量部に対して、0.5〜20重量部が好ましく、1〜15重量部がより好ましい。硬化性組成物中における脱水剤の含有量が0.5重量部以上であると、脱水剤により得られる効果が十分に得られる。また、硬化性組成物中における脱水剤の含有量が20重量部以下であると、硬化性組成物が優れた硬化性を有する。
【0065】
[シラノール縮合触媒]
硬化性組成物は、シラノール縮合触媒を含有していることが好ましい。シラノール縮合触媒とは、ポリアルキレンオキサイド系重合体(A)が含有する加水分解性シリル基、アクリル系重合体(B)が有する加水分解性シリル基、及びアルコキシシランオリゴマー(C)が含有するアルコキシシリル基などが加水分解することにより形成されたシラノール基同士の脱水縮合反応を促進させるための触媒である。
【0066】
シラノール縮合触媒としては、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジラウリルオキシカルボニル−ジスタノキサン、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫フタレート、ビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、オクチル酸錫、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、ビス(ジブチル錫ビストリエトキシシリケート)オキサイド、及びジブチル錫オキシビスエトキシシリケートなどの有機錫系化合物;テトラ−n−ブトキシチタネート、及びテトライソプロポキシチタネートなどの有機チタン系化合物などが挙げられる。これらのシラノール縮合触媒は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0067】
シラノール縮合触媒としては、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジラウリルオキシカルボニル−ジスタノキサンが好ましい。このようなシラノール縮合触媒によれば、硬化性組成物の硬化速度を容易に調整することができる。
【0068】
硬化性組成物中におけるシラノール縮合触媒の含有量は、ポリアルキレンオキサイド系重合体(A)及びアクリル系重合体(B)の合計100重量部に対して、1〜10重量部が好ましく、1〜5重量部がより好ましい。硬化性組成物中におけるシラノール縮合触媒の含有量が1重量部以上であると、硬化性組成物の硬化速度を速くして、硬化性組成物の硬化に要する時間の短縮化を図ることができる。また、硬化性組成物中におけるシラノール縮合触媒の含有量が10重量部以下であると、硬化性組成物が適度な硬化速度を有し、硬化性組成物の貯蔵安定性及び取扱性を向上させることができる。
【0069】
[他の添加剤]
硬化性組成物は、チキソ性付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、沈降防止剤、及び溶剤など他の添加剤を含んでいてもよい。なかでも、チキソ性付与剤、紫外線吸収剤、及び酸化防止剤が好ましく挙げられる。
【0070】
チキソ性付与剤は、硬化性組成物にチキソトロピー性を発現せることができるものであればよい。チキソ性付与剤としては、水添ひまし油、脂肪酸ビスアマイド、ヒュームドシリカなどが好ましく挙げられる。
【0071】
硬化性組成物中におけるチキソ性付与剤の含有量は、ポリアルキレンオキサイド系重合体(A)及びアクリル系重合体(B)の合計100重量部に対して、0.1〜200重量部が好ましく、1〜150重量部がより好ましい。硬化性組成物中におけるチキソ性付与剤の含有量が0.1重量部以上であると、硬化性組成物にチキソトロピー性を効果的に付与することができる。また、硬化性組成物中におけるチキソ性付与剤の含有量が200重量部以下であると、硬化性組成物が適度な粘度を有し、硬化性組成物の取扱性が向上する。
【0072】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられ、及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。硬化性組成物中における紫外線吸収剤の含有量は、ポリアルキレンオキサイド系重合体(A)及びアクリル系重合体(B)の合計100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、0.1〜10重量部がより好ましい。
【0073】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、モノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、及びポリフェノール系酸化防止剤などが挙げられ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく挙げられる。硬化性組成物中における酸化防止剤の含有量は、ポリアルキレンオキサイド系重合体(A)及びアクリル系重合体(B)の合計100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、0.3〜10重量部がより好ましい。
【0074】
[光安定剤]
硬化性組成物は、ヒンダードアミン系光安定剤を含んでいることが好ましい。ヒンダードアミン系光安定剤によれば、硬化後に優れたゴム弾性をより長期間に亘って維持することができる硬化性組成物を提供することができる。
【0075】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケートの混合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重縮合物などが挙げられる。
【0076】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、NOR型ヒンダードアミン系光安定剤が好ましく挙げられる。NOR型ヒンダードアミン系光安定剤によれば、硬化後に経時的なゴム弾性の低下が抑制されている硬化性組成物を提供することができる。
【0077】
NOR型ヒンダードアミン系光安定剤は、ピペリジン環骨格に含まれている窒素原子(N)に酸素原子(O)を介してアルキル基(R)が結合しているNOR構造を有している。NOR構造におけるアルキル基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜18がより好ましく、18が特に好ましい。アルキル基としては、直鎖状のアルキル基、分岐鎖状のアルキル基、及び、環状のアルキル基(飽和脂環式炭化水素基)が挙げられる。
【0078】
直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基などが挙げられる。分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどが挙げられる。環状のアルキル基(飽和脂環式炭化水素基)としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられる。また、アルキル基を構成している水素原子が、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)又はヒドロキシル基などで置換されていてもよい。
【0079】
NOR型ヒンダードアミン系光安定剤としては、下記式(I)で示されるヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。
【0080】
【化1】
【0081】
NOR型ヒンダードアミン系光安定剤を用いる場合、NOR型ヒンダードアミン系光安定剤と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤又はトリアジン系紫外線吸収剤とを組み合わせて用いることが好ましい。これにより、硬化後に経時的なゴム弾性の低下がより高く抑制されている硬化性組成物を提供することができる。
【0082】
硬化性組成物中におけるヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、ポリアルキレンオキサイド系重合体(A)及びアクリル系重合体(B)の合計100重量部に対して、0.01〜20重量部が好ましく、0.1〜10重量部がより好ましい。
【0083】
硬化性組成物は、接着性に優れていると共に、優れたゴム弾性を長期間に亘って維持することができる硬化物を形成することができることから、シーリング材、コーティング材、接着剤、及び塗料など各種用途に使用することができる。なかでも、シーリング材として用いられることが好ましく、目地構造用シーリング材として用いられることがより好ましい。
【0084】
硬化性組成物を目地部に施工して目地構造を得る方法としては、硬化性組成物を目地部に充填した後に養生させて硬化させる方法が用いられる。得られる目地構造は、建築構造物の壁部を構成している壁部材と、互いに隣接する壁部材間に形成された目地部に充填された、硬化性組成物の硬化物とを含む。建築構造物の壁部としては、例えば、外壁、内壁、天井部などが挙げられる。壁部材としては、例えば、外壁部材、内壁部材、天井部材などが挙げられる。
【0085】
目地部は、特に制限されないが、建築構造物の外壁、内壁、及び天井における目地部などが挙げられる。本発明の硬化性組成物は、硬化後に優れたゴム弾性を長期間に亘って維持することができることから、気温や日照等の温度変化による部材の膨張や収縮による、或いは振動や風圧などの作用による目地部の幅の変化に対して優れた追随性を呈し、部材の損傷や建築構造物内への漏水を防止することができる。したがって、建築構造物の外壁における目地部など、所謂、「ワーキングジョイント」とも呼ばれる幅の変化が大きい目地部をシーリングするために好適に用いられる。
【0086】
建築構造物の外壁における目地部としては、例えば、モルタル板、コンクリート板、窯業系サイディングボード、金属系サイディングボード、ALC板、及び金属板などの外壁部材間の接合部にできる目地部が挙げられる。
【発明の効果】
【0087】
本発明の硬化性組成物は、加水分解性シリル基を含有するポリアルキレンオキサイド(A)100重量部、加水分解性シリル基を含有するアクリル系重合体(B)30〜200重量部、及びアルキルアルコキシシランとアミノアルコキシシランとを加水分解させ縮合させてなるアルコキシシランオリゴマー(C)1〜10重量部を含むことによって、接着性に優れると共に、長期間に亘って優れたゴム弾性を維持することができる硬化物を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0088】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【実施例】
【0089】
(合成例1:アクリル系重合体(B1))
撹拌機、冷却器、温度計及び窒素ガス導入口を備えた0.5Lセパラブルフラスコに、n−ブチルアクリレート(日本触媒社製)100g、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学社製、商品名「KBM−502」)0.6g、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン(連鎖移動剤、信越化学社製、商品名「KBM−802」)0.9g及び酢酸エチル100gを供給して混合し、モノマー混合溶液を作製した。
【0090】
モノマー混合溶液中に窒素ガスを20分間に亘ってバブリングすることによって、モノマー混合溶液中の溶存酸素を除去した。次に、セパラブルフラスコ内の空気を窒素ガスで置換した後、モノマー混合溶液を撹拌しながら環流に達するまで昇温した。
【0091】
1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.024gを酢酸エチル1gに溶解させて第1重合開始剤溶液を作製した。第1重合開始剤溶液をモノマー混合溶液に供給した。
【0092】
1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.036gを酢酸エチル1gに溶解させて第2重合開始剤溶液を作製した。第1重合開始剤溶液をモノマー混合溶液に供給してから1時間経過した後、第2重合開始剤溶液をモノマー混合溶液に更に供給した。
【0093】
ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド0.048gを酢酸エチル1gに溶解させて第3重合開始剤溶液を作製した。第2重合開始剤溶液をモノマー混合溶液に供給してから2時間経過した後、第3重合開始剤溶液をモノマー混合溶液に更に供給した。
【0094】
ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド0.12gを酢酸エチル1gに溶解させて第4重合開始剤溶液を作製した。第2重合開始剤溶液をモノマー混合溶液に供給してから3時間経過した後、第4重合開始剤溶液をモノマー混合溶液に更に供給した。
【0095】
ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド0.36gを酢酸エチル1gに溶解させて第5重合開始剤溶液を作製した。第2重合開始剤溶液をモノマー混合溶液に供給してから4時間経過した後、第5重合開始剤溶液をモノマー混合溶液に更に供給した。
【0096】
第1重合開始剤溶液をモノマー混合溶液に供給してから7時間経過した後、反応溶液を室温まで冷却して重合を終了させた。ジメトキシメチルシリル基を有するアクリル系重合体(B1)を含む酢酸エチル溶液を得た。
【0097】
次に、エバポレーターで酢酸エチルを除去して、アクリル系重合体(B1)を得た。得られたアクリル系重合体(B1)は、1分子中に平均してジメトキシメチルシリル基を1.47個有しており、数平均分子量が20,000であった。
【0098】
(合成例2:アクリル系重合体(B4))
撹拌機、冷却器、温度計及び窒素ガス導入口を備えた0.5Lセパラブルフラスコに、n−ブチルアクリレート(日本触媒社製)100g、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学社製、商品名「KBM−502」)0.9g、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン(連鎖移動剤、信越化学社製、商品名「KBM−802」)0.9g及び酢酸エチル100gを供給して混合し、モノマー混合溶液を調製した。
【0099】
上記モノマー混合溶液を用いたこと以外は合成例1と同様の要領で重合を行った。ジメトキシメチルシリル基を有するアクリル系重合体(B4)を含む酢酸エチル溶液を得た。
【0100】
次に、エバポレーターで酢酸エチルを除去して、アクリル系重合体(B4)を得た。得られたアクリル系重合体(B4)は、1分子中に平均してジメトキシメチルシリル基を1.85個有しており、数平均分子量が20,000であった。
【0101】
(合成例3:アクリル系重合体(B5))
撹拌機、冷却器、温度計及び窒素ガス導入口を備えた0.5Lセパラブルフラスコに、n−ブチルアクリレート(日本触媒社製)100g、3−メタクリロキシプロピルメチルトリメトキシシラン(信越化学社製、商品名「KBM−503」)0.6g、3−メルカプトプロピルメチルトリメトキシシラン(連鎖移動剤、信越化学社製、商品名「KBM−803」)0.9g及び酢酸エチル100gを供給して混合し、モノマー混合溶液を調製した。
【0102】
上記モノマー混合溶液を用いたこと以外は合成例1と同様の要領で重合を行った。ジメトキシメチルシリル基を有するアクリル系重合体(B4)を含む酢酸エチル溶液を得た。
【0103】
次に、エバポレーターで酢酸エチルを除去して、アクリル系重合体(B5)を得た。得られたアクリル系重合体(B5)は、1分子中に平均してトリメトキシシリル基を1.45個有しており、数平均分子量が20,000であった。
【0104】
(実施例1〜9及び比較例1〜6)
ジメトキシメチルシリル基を含有し且つ主鎖骨格がポリプロピレンオキサイドからなるポリアルキレンオキサイド(A)(旭硝子株式会社製 製品名「エクセスター S2410」)と、
ジメトキシメチルシリル基を有するアクリル系重合体(B1)(1分子当たりのジメトキシメチルシリル基の平均個数:1.47個、数平均分子量:20,000)と、
ジメトキシメチルシリル基を主鎖の両末端に含有するアクリル系重合体(B2)(1分子当たりのジメトキシメチルシリル基の平均個数:1.7個、数平均分子量:22,000、主鎖モノマー成分:n−ブチルアクリレート、エチルアクリレート及びn−オクタデシルアクリレート、カネカ社製 製品名「SA420S」)と、
ジメトキシメチルシリル基を主鎖の両末端に含有するアクリル系重合体(B3)(1分子当たりのジメトキシメチルシリル基の平均個数:1.7個、数平均分子量:28,000、主鎖モノマー成分:n−ブチルアクリレート及びn−オクタデシルアクリレート、カネカ社製 商品名「SA310S」)と、
上記合成例2で得られた、ジメトキシメチルシリル基を有するアクリル系重合体(B4)(1分子当たりのジメトキシメチルシリル基の平均個数:1.85個、数平均分子量:20,000)と、
上記合成例3で得られた、トリメトキシシリル基を有するアクリル系重合体(B5)(1分子当たりのトリメトキシシリル基の平均個数:1.45個、数平均分子量:20,000)と、
アルコキシシランオリゴマー(C1)(エチルトリエトキシシランと3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリエトキシシランとの加水分解縮合物、窒素原子の含有量:6重量%、粘度(20℃):20mPa・s、エボニックデグサジャパン社製 製品名「ダイナシラン1146」)と、
アルコキシシランオリゴマー(C2)(アルキルアルコキシシランとアミノアルコキシシランとの加水分解縮合物、窒素原子の含有量:0.7重量%、粘度(20℃):20mPa・s、信越化学工業株式会社製 製品名「X−40−2651」)と、
アミノシランカップリング剤(N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製 製品名「KBM−603」)と、
可塑剤(1)(加水分解性シリル基を含有していないアクリル系重合体、重量平均分子量:2,000、東亞合成株式会社製 製品名「UP1110」)と、
可塑剤(2)(加水分解性シリル基を1分子当たり平均して0.2個含有しているアクリル系重合体、重量平均分子量:2,400、東亞合成社製 製品名「US6100」)と、可塑剤(3)(加水分解性シリル基を1分子当たり平均して0.7個含有しているアクリル系重合体、重量平均分子量:2,800、東亞合成社製 製品名「US6400」)と、
コロイダル炭酸カルシウム(神島化学工業社製 製品名「PLS−505」)と、
重質炭酸カルシウム(日東粉化工業株式会社社製 製品名「NCC2310」)と、
脱水剤(ビニルトリメトシシラン,信越化学工業株式会社製 製品名「KBM−1003」)と、
シラノール縮合触媒(1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジラウリルオキシカルボニル−ジスタノキサン、日東化成株式会社製 製品名「ネオスタンU−130」)と、
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASFジャパン社製 製品名「チヌビン326」)と、
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASFジャパン社製 製品名「イルガノックス1010」)と、
NH型ヒンダードアミン系光安定剤(BASFジャパン社製 製品名「チヌビン770」)と、
上記式(I)で示されるNOR型ヒンダードアミン系光安定剤(BASFジャパン社製 製品名「チヌビン123」)とを、
それぞれ表1及び表2に示した配合量となるようにして、密封した攪拌機中で減圧しながら均一になるまで混合することにより硬化性組成物を得た。
【0105】
(評価)
硬化性組成物を用いて、JIS A1439 4.21に準拠して、H型試験体を作製した。具体的には、アルマイト処理を施したアルミニウム板(縦50mm×横50mm×厚み3mm)2枚を用い、これらのアルミニウム板の間にスペーサーを挟むことによってアルミニウム板間の中央部に直方体状の空間(縦12mm×横50mm×高さ12mm)を形成した。この空間に硬化性組成物を空気が入らないように充填した。硬化性組成物の充填後、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で硬化性組成物を14日間放置した。しかる後、硬化性組成物をさらに温度30℃の雰囲気下で14日間放置した。硬化性組成物を養生させて硬化させることにより、2枚のアルミニウム板が硬化性組成物の硬化物によって接着一体化されてなるH型試験体を作製した。
【0106】
そして、作製直後のH型試験体について、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で、引張速度50mm/分での引張試験をJIS A1439に準拠して行い、50%モジュラス[N/cm2]及び最大荷重時伸び[%]を測定した。得られた結果を、表1における「初期」の欄にそれぞれ記載した。
【0107】
次に、H型試験体を、さらに温度90℃の雰囲気下で70日間放置した。この放置後のH型試験体について、上記と同様にして、50%モジュラス[N/cm2]及び最大荷重時伸び[%]を測定し、得られた結果を、表1における「90℃、70日後」の欄にそれぞれ記載した。
【0108】
なお、比較例1の硬化性組成物では、硬化性組成物の硬化物によって2枚のアルミニウム板を接着一体化せずにH型試験体を作製できなかったため、評価を行うことができなった。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の硬化性組成物は、硬化後に優れたゴム弾性を長期間に亘って維持するので、例えば、建築構造物の外壁を構成している外壁部材の間に形成された接合部への充填材として好適に用いることができる。
【要約】
本発明の硬化性組成物は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)と、加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体(B)と、アルキルアルコキシシランとアミノアルコキシシランとの加水分解縮合物であり且つ窒素原子の含有量が1重量%以上であるアルコキシシランオリゴマー(C)とを含むことを特徴とする。