(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ターボ過給機(17)付ディーゼルエンジン(11)の排気管(16)に設けられたパティキュレートフィルタ(23)と、前記フィルタ(23)より排ガス上流側の排気管(16)に設けられた第1酸化触媒(31)と、前記第1酸化触媒(31)より排ガス上流側の排気管(16)に設けられた第1選択還元型触媒(41)と、前記第1選択還元型触媒(41)より排ガス上流側の排気管(16)に挿入された噴射ノズル(26a)を有しこの噴射ノズル(26a)から前記第1選択還元型触媒(41)に向って炭化水素系液体(26d)を噴射する炭化水素系液体添加手段(26)と、前記エンジン(11)の運転状況を検出する運転状況検出手段(28)と、前記運転状況検出手段(28)の検出出力に基づいて前記炭化水素系液体添加手段(26)を制御するコントローラ(29)とを備えたディーゼルエンジンの排ガス浄化装置において、
前記パティキュレートフィルタ(23)より排ガス下流側の排気管(16)に第2選択還元型触媒(42)が設けられ、
前記噴射ノズル(26a)より排ガス上流側の排気管(16)に第2酸化触媒(62)が設けられ、
前記運転状況検出手段(28)が、前記エンジン(11)の回転速度を検出する回転センサ(28a)と、前記エンジン(11)の負荷を検出する負荷センサ(28b)と、前記第1選択還元型触媒(41)の入口に設けられ排気管(16)内の排ガス温度を検出する温度センサ(27)とを有し、
前記排気管(14)と吸気管(13)とがEGRパイプ(19)により前記エンジン(11)をバイパスして連通接続され、
前記EGRパイプ(19)にこのEGRパイプ(19)から前記吸気管(13)に還流される排ガスの流量を調整するEGR弁(21)が設けられ、
前記エンジン(11)の負荷が急激に増大して前記排ガスの圧力が急激に増大し、前記噴射ノズル(26a)から噴射された前記炭化水素系液体(26d)が炭化水素の微粒子となって、前記第1選択還元型触媒(41)、前記第1酸化触媒(31)及び前記フィルタ(23)を通過したときに、前記炭化水素の微粒子が前記第2選択還元型触媒(42)で捕捉されるように構成され、
排ガス温度が150〜300℃と低温領域から中高温領域になって、前記第1選択還元型触媒(41)の入口側の排ガス温度が前記第1選択還元型触媒(41)が高活性を示す温度まで上昇していないけれども前記第2選択還元型触媒(42)が高活性を示す温度まで上昇したときに、前記コントローラ(29)は、前記温度センサ(27)、前記回転センサ(28a)及び前記負荷センサ(28b)の各検出出力に基づいて、前記EGR弁(21)を制御して前記EGRパイプ(19)を開くとともに、前記炭化水素系液体添加手段(26)を制御して前記噴射ノズル(26a)から前記炭化水素系液体(26d)を噴射するように構成され、
排ガス温度が250〜400℃と中高温領域から高温領域になって、前記第1選択還元型触媒(41)の入口側の排ガス温度が前記第1選択還元型触媒(41)が高活性を示す温度まで上昇したときに、前記コントローラ(29)は、前記温度センサ(27)、前記回転センサ(28a)及び前記負荷センサ(28b)の各検出出力に基づいて、前記EGR弁(21)を制御して前記EGRパイプ(19)を開いたまま、前記炭化水素系液体添加手段(26)を制御して前記噴射ノズル(26a)からの前記炭化水素系液体(26d)の噴射量を増やすように構成された
ことを特徴とするディーゼルエンジンの排ガス浄化装置。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の排ガス浄化装置として、エンジンの排気管にNOx触媒が設けられ、このNOx触媒の入口に設けられた第1噴射ノズルがNOx触媒に向けて炭化水素系液体を噴射し、この第1噴射ノズルに第1調整弁を介して炭化水素系液体供給手段が上記液体を供給するように構成されたエンジンの排ガス浄化装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この排ガス浄化装置では、NOx触媒より排ガス下流側の排気管に酸化触媒が設けられ、酸化触媒の入口に設けられた第2噴射ノズルが酸化触媒に向けて炭化水素系液体を噴射し、この第2噴射ノズルに第2調整弁を介して上記炭化水素系液体供給手段が液体を供給するように構成される。また酸化触媒より排ガス下流側の排気管にパティキュレート捕集器が設けられ、この捕集器の内部にパティキュレートフィルタが収容される。更にエンジンの回転速度を検出する回転センサと、エンジンの負荷を検出する負荷センサと、NOx触媒の入口の排気管内の排ガス温度を検出する温度センサと、パティキュレート捕集器の入口の排気管内の圧力を検出する圧力センサの各検出出力に基づいて、コントローラが第1及び第2調整弁を開閉し液体の第1及び第2噴射ノズルへの供給量を調整するように構成される。
【0003】
このように構成されたエンジンの排ガス浄化装置では、エンジンが中高負荷で、中高速域の運転状態にあって、排気マニホルドから排出される排ガス温度が250〜500℃の温度範囲で、しかも捕集器の入口圧力のみが所定の圧力より高いときには、コントローラは第1調整弁を開き、第2調整弁は閉じたままにする。これにより第1噴射ノズルから所定量だけ液体がNOx触媒に噴射され、このNOx触媒を通過した排ガスに含まれるNOxは高い効率でN
2に還元される。温度センサが250〜300℃の温度を検出するときには、排ガスに含まれる未燃の炭化水素とパティキュレートがパティキュレート捕集器のフィルタに捕集される。温度センサが300〜500℃の温度を検出すると、NOx触媒及び酸化触媒を通過した排ガスはNOx触媒での還元反応により400〜600℃の温度に上昇する。この高温の排ガスがフィルタに流入すると、フィルタに堆積していたパティキュレートが燃焼し、燃焼ガスとなってフィルタを通過する。パティキュレートフィルタに触媒が担持されることにより、低温でパティキュレートの燃焼が進むようになる。また500℃を越えると特にパティキュレート中の煤が燃焼を開始する。 圧力センサが所定の高い圧力を検出すると、コントローラは第1調整弁を開いた状態で、第2調整弁を5〜10分間だけ開く。この開放時間は圧力センサの圧力が高いほど長く決められる。第2噴射ノズルから所定量の液体が酸化触媒に噴射される。この噴射量は第1噴射ノズルの噴射量と比べて微量である。第2噴射ノズルからの液体が噴射されると、酸化触媒においてHC濃度が高まり、このHCをはじめとして排ガスに含まれるCOの酸化作用が促進され、H
2OやCO
2に転化される。同時にこの酸化触媒の反応熱により酸化触媒を通過した排ガスの温度が更に高まり、これによりフィルタに残存していたパティキュレートは完全に燃焼し除去されるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の特許文献1に示されたエンジンの排ガス浄化装置では、エンジンの過渡運転時であってエンジン負荷が急激に増大したときに、排ガス圧力の急激な増大により第1噴射ノズルから噴射された炭化水素の流速が一気に上昇して、炭化水素がNOx触媒を通過してしまうおそれがあった。
【0006】
本発明の目的は、エンジン負荷が急激に増大して排ガス圧力の急激な増大により噴射ノズルから噴射された炭化水素の流速が一気に上昇しても、炭化水素を確実に捕捉して炭化水素の大気中への排出を抑制できる、ディーゼルエンジンの排ガス浄化装置を提供することにある。本発明の別の目的は、高温の排ガス中に含まれるNOxを更に効率良く捕捉してNOxの大気中への排出を低減できる、ディーゼルエンジンの排ガス浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点は、
図1に示すように、ターボ過給機付ディーゼルエンジン11の排気管16に設けられたパティキュレートフィルタ23と、このフィルタ23より排ガス上流側の排気管16に設けられた第1酸化触媒31と、第1酸化触媒31より排ガス上流側の排気管16に設けられた第1選択還元型触媒41と、第1選択還元型触媒41より排ガス上流側の排気管16に挿入された噴射ノズル26aを有しこの噴射ノズル26aから第1選択還元型触媒41に向って炭化水素系液体26dを噴射する炭化水素系液体添加手段26と、エンジン11の運転状況を検出する運転状況検出手段28と、運転状況検出手段28の検出出力に基づいて炭化水素系液体添加手段26を制御するコントローラ29とを備えたディーゼルエンジンの排ガス浄化装置において、パティキュレートフィルタ23より排ガス下流側の排気管16に第2選択還元型触媒42が設けられ、噴射ノズル26aより排ガス上流側の排気管16に第2酸化触媒62が設けられ、運転状況検出手段28が、エンジン11の回転速度を検出する回転センサ28aと、エンジン11の負荷を検出する負荷センサ28bと
、第1選択還元型触媒41の入口に設けられ排気管16内の排ガス温度を検出する温度センサ27とを有し、
排気管14と吸気管13とがEGRパイプ19によりエンジン11をバイパスして連通接続され、EGRパイプ19にこのEGRパイプ19から吸気管13に還流される排ガスの流量を調整するEGR弁21が設けられ、エンジン11の負荷が急激に増大して排ガスの圧力が急激に増大し、噴射ノズル26aから噴射された炭化水素系液体26dが炭化水素の微粒子となって、第1選択還元型触媒41、第1酸化触媒31及びフィルタ23を通過したときに、炭化水素の微粒子が第2選択還元型触媒42で捕捉されるように構成され
、排ガス温度が150〜300℃と低温領域から中高温領域になって、第1選択還元型触媒41の入口側の排ガス温度が第1選択還元型触媒41が高活性を示す温度まで上昇していないけれども第2選択還元型触媒42が高活性を示す温度まで上昇したときに、コントローラ29は、温度センサ27、回転センサ28a及び負荷センサ28bの各検出出力に基づいて、EGR弁21を制御してEGRパイプ19を開くとともに、炭化水素系液体添加手段26を制御して噴射ノズル26aから炭化水素系液体26dを噴射するように構成され、排ガス温度が250〜400℃と中高温領域から高温領域になって、第1選択還元型触媒41の入口側の排ガス温度が第1選択還元型触媒41が高活性を示す温度まで上昇したときに、コントローラ29は、温度センサ27、回転センサ28a及び負荷センサ28bの各検出出力に基づいて、EGR弁21を制御してEGRパイプ19を開いたまま、炭化水素系液体添加手段26を制御して噴射ノズル26aからの炭化水素系液体26dの噴射量を増やすように構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の観点の排ガス浄化装置では、エンジン負荷が急激に増大して排ガス圧力の急激な増大により噴射ノズルから噴射された炭化水素系液体(微粒子化した炭化水素)の流速が一気に上昇し、この微粒子化した炭化水素が第1選択還元型触媒で還元剤として機能せずに、第1選択還元型触媒、第1酸化触媒及びフィルタを通過してしまっても、この微粒子化した炭化水素が第2選択還元型触媒でNOxの還元剤として機能する。即ち、上記微粒子化した炭化水素は第2選択還元型触媒で確実に捕捉される。この結果、微粒子化した炭化水素の大気中への排出を抑制できる。
【0011】
また、本発明の
第1の観点の排ガス浄化装置では、エンジンの高負荷運転時に、エンジンから排出された高温の排ガス中のNOが第2酸化触媒で酸化されてNO
2が生成され、第1選択還元型触媒に導入されるので、噴射ノズルから噴射された炭化水素系液体と排ガス中のNO
2とが第1選択還元型触媒で高効率で反応し、高温の排ガス中に含まれるNOxを更に効率良くN
2に還元することができる。この結果、排ガス中のNOxの大気中への排出を更に低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
(なお、以下の記載の「第1の実施の形態」は「参考の形態」である。)
<第1の実施の形態>
図1に示すように、ディーゼルエンジン11の吸気ポートには吸気マニホルド12を介して吸気管13が接続され、排気ポートには排気マニホルド14を介して排気管16が接続される。吸気管13には、ターボ過給機17のコンプレッサハウジング17aと、ターボ過給機17により圧縮された吸気を冷却するインタクーラ18とがそれぞれ設けられ、排気管16にはターボ過給機17のタービンハウジング17bが設けられる。コンプレッサハウジング17aにはコンプレッサ回転翼17cが回転可能に収容され、タービンハウジング17bにはタービン回転翼17dが回転可能に収容される。コンプレッサ回転翼17cとタービン回転翼17dとはシャフト17eにより連結され、エンジン11から排出される排ガスのエネルギによりタービン回転翼17d及びシャフト17eを介してコンプレッサ回転翼17cが回転し、このコンプレッサ回転翼17cの回転により吸気管13内の吸入空気が圧縮されるように構成される。また排気マニホルド14と吸気管13とはEGRパイプ19によりエンジン11をバイパスして連通接続される。即ち、このEGRパイプ19は排気マニホルド14から分岐し、インタクーラ18より吸気下流側の吸気管13に合流する。またEGRパイプ19にはこのEGRパイプ19から吸気管13に還流される排ガス(EGRガス)の流量を調整するEGR弁21が設けられる。なお、
図1の符号22はEGRパイプ19を通る排ガス(EGRガス)を冷却するEGRクーラである。
【0014】
排気管16の途中にはパティキュレートフィルタ23が設けられ、このフィルタ23より排ガス上流側の排気管16には第1酸化触媒31が設けられる。また第1酸化触媒31より排ガス上流側の排気管16には第1選択還元型触媒41が設けられ、フィルタ23より排ガス下流側の排気管16には第2選択還元型触媒42が設けられる。即ち上記排気管16の途中にはエンジン側(排ガス上流側)から順に、第1選択還元型触媒41と、第1酸化触媒31と、パティキュレートフィルタ23と、第2選択還元型触媒42とが設けられる。これらの触媒41,31,42及びフィルタ23は排気管16の直径を拡大した筒状のコンバータ24に収容される。第1選択還元型触媒41はモノリス触媒であって、コージェライト製のハニカム担体に銅系ゼオライト、コバルト系ゼオライト、銀−アルミナ、イリジウム触媒等がコーティングされたものである。銅系ゼオライトの具体例としては、Na型のZSM−5ゼオライトのNaイオンをCuイオンとイオン交換した物質である銅イオン交換ゼオライト(Cu−ZSM−5)が挙げられる。コバルト系ゼオライトの具体例としては、Na型のZSM−5ゼオライトのNaイオンをCoイオンとイオン交換した物質であるコバルトイオン交換ゼオライト(Co−ZSM−5)が挙げられる。上記第1選択還元型触媒41は排ガス温度が300℃以上の高温域で排ガス中のNOxを還元する触媒活性が高くなる特性を有する。
【0015】
また第1酸化触媒31はモノリス触媒であって、コージェライト製のハニカム担体に白金−アルミナ、白金−パラジウム−アルミナ、白金−ゼオライト、白金−パラジウム−ゼオライト、白金−ゼオライト−アルミナ等がコーティングされたものである。白金−ゼオライトは、Na型のZSM−5ゼオライトのNaイオンをHイオンとイオン交換した物質である水素イオン交換ゼオライト粉末(H−ZSM−5)を含むスラリーをコーティングした後、Ptを担持させて構成される。白金−ゼオライト−アルミナは、上記水素イオン交換ゼオライト粉末(H−ZSM−5)及びγ−アルミナ粉末を含むスラリーをコーティングした後、Ptを担持させて構成される。上記第1酸化触媒31は、排ガス中のNOをNO
2に酸化する機能と、噴射ノズル26aから噴射された炭化水素を酸化して排ガスの温度を上げることによりフィルタ23に堆積したパティキュレートを燃焼させる機能とを有する。
【0016】
パティキュレートフィルタ23は酸化触媒としての機能を有する触媒付ハニカムフィルタであって、
図2に示すように、コージェライトのようなセラミックスからなる多孔質の隔壁23aで仕切られた多角形断面を有する。このフィルタ23はこれらの隔壁23aにより多数の互いに平行に形成された貫通孔23bの相隣接する入口部23cと出口部23dを封止部材23eにより交互に封止することにより構成される。また隔壁23aには、Pt,Pd等の貴金属が直接担持されるか、或いはγ−アルミナ粉末を含むスラリーを隔壁23aにコーティングした後、Pt,Pd等の貴金属が担持される。これによりフィルタ23に煤の酸化力が付与される。このフィルタ23では、
図2の破線矢印で示すように、フィルタ23の入口側から導入されたエンジンの排ガスが多孔質の隔壁23aを通過する際に、この排ガスに含まれる微粒子がろ過されて、出口側から排出されるようになっている。また第2選択還元型触媒42はモノリス触媒であって、コージェライト製のハニカム担体にPt系又はPt−Pd系の選択還元型触媒がコーティングされたものである。Pt系の選択還元型触媒の具体例としては、白金−アルミナ、白金−ゼオライト、白金−シリカ−アルミナ等が挙げられ、Pt−Pd系の選択還元型触媒の具体例としては、白金−パラジウム−アルミナ、白金−パラジウム−ゼオライト、白金−パラジウム−シリカ−アルミナ等が挙げられる。上記第2選択還元型触媒42は排ガス温度が150〜250℃の中高温域で排ガス中のNOxを還元する触媒活性が高くなる特性を有する。
【0017】
一方、第1選択還元型触媒41の排ガス上流側の排気管16には、炭化水素系液体添加手段26の噴射ノズル26aが第1選択還元型触媒41に向けて設けられる。炭化水素系液体添加手段26は、上記噴射ノズル26aと、この噴射ノズル26aに一端が接続された液体供給管26bと、この液体供給管26bの他端に接続され炭化水素系液体26dが貯留されたタンク26cとを有する。また液体供給管26bには噴射ノズル26aへの炭化水素系液体26dの供給量を調整する流量調整弁26eが設けられ、流量調整弁26eとタンク26cとの間の液体供給管26bにはタンク26c内の炭化水素系液体26dを噴射ノズル26aに供給可能なポンプ26fが設けられる。流量調整弁26eは第1〜第3ポート26g,26h,26iを有する三方弁であり、第1ポート26gはポンプ26fの吐出口に接続され、第2ポート26hは噴射ノズル26aに接続され、更に第3ポート26iは戻り管26jを介してタンク26cに接続される。また炭化水素系液体26dは軽油である。なお、流量調整弁26eがオンすると第1ポート26gと第2ポート26hが連通し、オフすると第1ポート26gと第3ポート26iが連通するように構成される。
【0018】
噴射ノズル26aと第1選択還元型触媒41との間の排気管16、即ち第1選択還元型触媒41の入口には排気管16内の排ガス温度を検出する温度センサ27が設けられる。またエンジン11の回転速度は回転センサ28aにより検出され、エンジン11の負荷は負荷センサ28bにより検出される。回転センサ28a及び負荷センサ28bにより運転状況検出手段28が構成される。温度センサ27、回転センサ28a及び負荷センサ28bの各検出出力はコントローラ29の制御入力に接続され、コントローラ29の制御出力はEGR弁21、流量調整弁26e及びポンプ26fにそれぞれ接続される。コントローラ29にはメモリ29aが設けられる。このメモリ29aには、エンジン回転速度、エンジン負荷、第1選択還元型触媒41入口の排ガス温度等に応じたEGR弁21の開度及び流量調整弁26eの開度や、ポンプ26fの作動の有無が予め記憶される。
【0019】
このように構成されたディーゼルエンジン11の排ガス浄化装置の動作を説明する。エンジン11の始動直後のように、エンジン11の低負荷運転時(排ガス温度が150℃未満と極めて低い場合)には、第1選択還元型触媒41の入口側の排ガス温度が低過ぎて第1選択還元型触媒41によりNOxを殆ど還元できないので、コントローラ29は、温度センサ27、回転センサ28a及び負荷センサ28bの各検出出力に基づいて、EGR弁21を制御しEGRパイプ19を所定の開度で開き、排ガスを吸気に対して10〜30%となるように還流する。これによりエンジン11の排ガスの一部であるEGRガスがEGRパイプ19、EGRクーラ22、吸気管13及び吸気マニホルド12を通ってエンジン11に還流されるので、エンジン11における燃料の燃焼温度が低下し、NOxの発生を抑制できる。また排ガス温度が低いため、EGRガスがEGRクーラ22を通過しても、EGRガスがEGRクーラ22を流通するエンジン冷却水を殆ど昇温させない。なお、炭化水素系液体添加手段26のポンプ26fは不作動のままにし、かつ流量調整弁26eにより液体供給管26bを閉じて、噴射ノズル26aから炭化水素系液体26dを噴射しない状態に保つ。
【0020】
エンジン11が低負荷運転から中負荷運転に移行すると、即ち排ガス温度が150〜300℃と低温領域から中高温領域になると、第1選択還元型触媒41の入口側の排ガス温度が比較的高くなり、第1選択還元型触媒41でのNOxの還元活性は未だ十分に高くないけれども、第2選択還元型触媒42でのNOxの還元活性は十分に高くなる。このため、コントローラ29は、温度センサ27、回転センサ28a及び負荷センサ28bの各検出出力に基づいて、EGR弁21を制御してEGRパイプ19を所定の開度で開き、排ガスを吸気に対して10〜30%となるように還流する。同時に炭化水素系液体添加手段26のポンプ26fを作動させるとともに流量調整弁26eを制御して液体供給管26bを所定の開度で開く。噴射ノズル26aから噴射された炭化水素系液体26dは炭化水素の微粒子(以下、HC微粒子という)となり、排ガスとともに第1選択還元型触媒41に導入される。このとき排ガス温度は第1選択還元型触媒41が高活性を示す温度まで上昇していないけれども、第1選択還元型触媒41にて上記HC微粒子と排ガス中のNOxとが反応し、ある程度の量のNOxがN
2に還元される。第1選択還元型触媒41を通過した排ガスが第1酸化触媒31に導入されると、排ガス中のNOが第1酸化触媒31にてNO
2に酸化され、フィルタ23を通って第2選択還元型触媒42に導入される。このとき排ガス温度は第2選択還元型触媒42が高活性を示す温度まで上昇しているため、第2選択還元型触媒42にて上記HC微粒子と排ガス中のNO
2とが反応し、大部分のNO
2がN
2に還元される。
【0021】
エンジン11が中負荷運転から高負荷運転に移行すると、即ち排ガス温度が250〜400℃と中高温領域から高温領域になると、第1選択還元型触媒41の入口側の排ガス温度が更に高くなるので、コントローラ29は、温度センサ27、回転センサ28a及び負荷センサ28bの各検出出力に基づいて、EGR弁21を制御してEGRパイプ19を所定の開度で開き、排ガスを吸気に対して10〜30%となるように還流する。同時に炭化水素系液体添加手段26のポンプ26fを作動させるとともに流量調整弁26eを制御して液体供給管26bを所定の開度で開いてその流量を増やす。噴射ノズル26aから噴射された炭化水素系液体26dはHC微粒子となり、排ガスとともに第1選択還元型触媒41に導入される。このとき排ガス温度は第1選択還元型触媒41が高活性を示す温度まで上昇しているので、第1選択還元型触媒41にて上記HC微粒子と排ガス中のNOxとが反応し、大部分のNOxがN
2に還元される。第1選択還元型触媒41を通過した排ガスが第1酸化触媒31に導入されると、排ガス中に僅かに残留するNOxのうちNOが第1酸化触媒31にてNO
2に酸化され、フィルタ23を通って第2選択還元型触媒42に導入される。このとき排ガス温度は第2選択還元型触媒42が高活性を示す温度を越えて上昇しておりNOxの還元活性は低いけれども、第2選択還元型触媒42にて上記HC微粒子と排ガス中のある程度のNO
2とが反応し、N
2に還元される。この結果、エンジン11の中負荷運転域から高負荷運転域にかけて排ガス中のNOxを効率良く低減できる。
【0022】
一方、エンジン11の負荷が急激に増大して排ガスの圧力が急激に増大すると、排ガスの流速が急激に上昇するため、炭化水素系液体添加手段26の噴射ノズル26aから噴射されたHC微粒子の流速も一気に上昇し、HC微粒子が第1選択還元型触媒41で還元剤として機能せずに、第1選択還元型触媒41、第1酸化触媒31及びフィルタ23を通過してしまう場合がある。しかし、第1選択還元型触媒41、第1酸化触媒31及びフィルタ23を通過したHC微粒子は、第2選択還元型触媒42でNOxの還元剤として機能する。即ち、HC微粒子は第2選択還元型触媒42で確実に捕捉されるので、HC微粒子の大気中への排出を抑制できる。
【0023】
<第2の実施の形態>
図2は本発明の第2の実施の形態を示す。
図2において
図1と同一符号は同一部品を示す。この実施の形態では、噴射ノズル26aより排ガス上流側の排気管16に第2酸化触媒62が設けられる。この第2酸化触媒62は排気管16より大径のコンバータ63に収容される。また第2酸化触媒62は第1酸化触媒31と同一に構成される。即ち、第2酸化触媒62はモノリス触媒であって、コージェライト製のハニカム担体に白金−アルミナ、白金−パラジウム−アルミナ、白金−ゼオライト、白金−ゼオライト−アルミナ等がコーティングされたものである。上記第2酸化触媒62は、排ガス中のNOをNO
2に酸化する機能を有する。上記以外は第1の実施の形態と同一に構成される。
【0024】
このように構成されたディーゼルエンジン11の排ガス浄化装置の動作を説明する。エンジン11の高負荷運転時に、エンジン11から排出された高温の排ガス中のNOが第2酸化触媒62で酸化されてNO
2が生成され、第1選択還元型触媒41に導入される。これにより噴射ノズル26aから噴射された炭化水素系液体26dと排ガス中のNO
2とが第1選択還元型触媒41で高効率で反応するので、高温の排ガス中に含まれるNOxを更に効率良くN
2に還元することができる。この結果、排ガス中のNOxの大気中への排出を更に低減できる。上記以外の動作は第1の実施の形態の動作と略同様であるので、繰返しの説明を省略する。
【実施例】
【0025】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
(なお、以下の記載の「実施例1」は「参考例」である。)
<実施例1>
図1に示すように、7600ccのターボ過給機付ディーゼルエンジン11の排気マニホルド12から吸気管12にEGRガスを還流するEGRパイプ19を設け、このEGRパイプ19にEGR弁21を設けた。また排気管16には、排ガス上流側から順に第1選択還元型触媒41、第1酸化触媒31、パティキュレートフィルタ23及び第2選択還元型触媒42を設けた。更に第1選択還元型触媒41より排ガス上流側の排気管16には炭化水素系液体26dを噴射する噴射ノズル26aを設けた。なお、第1選択還元型触媒41はハニカム担体に銅イオン交換ゼオライトをコーティングしたものであり、第1酸化触媒31はハニカム担体に白金−パラジウム−アルミナをコーティングしたものであり、第2選択還元型触媒42はハニカム担体に白金−パラジウム−アルミナをコーティングしたものである。この排ガス浄化装置を実施例1とした。
【0026】
<実施例2>
噴射ノズルより排ガス上流側の排気管に第2酸化触媒を設けたこと以外は、実施例1と同一に構成した。この排ガス浄化装置を実施例2とした。なお、第2酸化触媒はハニカム担体に白金−パラジウム−アルミナをコーティングしたものである。
【0027】
<比較例1>
第2選択還元型触媒を排気管に設けなかったこと以外は、実施例1と同一に構成した。この排ガス浄化装置を比較例1とした。
【0028】
<比較試験1及び評価>
実施例1、実施例2及び比較例1の排ガス浄化装置によるNOx低減率をそれぞれ測定した。具体的には、排ガス温度が150〜400℃と中高温領域から高温領域の範囲となるように、エンジンの負荷を周期的に変化させてNOx低減率をそれぞれ測定した。その結果を
図4に示す。
【0029】
図4から明らかなように、150〜300℃の中高温域では、実施例1、実施例2及び比較例1の装置によりNOx低減率が略同一であったが、300〜400℃の高音域では、比較例1の装置ではNOx低減率が低かったのに対し、実施例1の装置ではNOx低減率が比較例1より僅かに上昇し、実施例2の装置ではNOx低減率が大幅に向上した。
【0030】
<比較試験2及び評価>
実施例1及び比較例1の排ガス浄化装置において、エンジンの負荷を負荷率10%から100%に急激に増大させると同時に、炭化水素系液体添加手段の噴射ノズルから0.78cc/秒の炭化水素系液体を噴射させた。このときに大気中に放出されるHCの量を測定した。具体的なHCの検出方法はFID法(水素炎イオン化検出法)を用いた。その結果、比較例1の装置では、300ppmと比較的多くのHCが検出されたのに対し、実施例1の装置では、HCの検出量は100ppmと少なくなった。