【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るX線CT装置(コンピュータ断層撮影装置)の構成を示すブロック図である。X線CT装置100は、架台10とコンピュータシステム20から構成される。架台10は、患者(被検体)Pに関する投影データを収集するもので、回転フレーム11、X線管球12、X線検出器13、データ収集部14、非接触型のデータ伝送装置15、スリップリング16、架台駆動部17を含む。X線管球12、X線検出器13、及びデータ収集部14は、患者の断層画像を収集する撮影部を構成する。
【0017】
回転フレーム11は、回転駆動するリングであり、X線管球12とX線検出器13を搭載している。回転フレーム11の中央部分は開口しており、開口部に、寝台の天板18に載置された患者Pが挿入される。X線管球12は、X線を発生する真空管であり、X線管球12には、X線の曝射に必要な電力(管電流、管電圧)が高電圧発生部28(後述)からスリップリング16を介して供給される。X線管球12は、供給された高電圧により電子を加速させターゲットに衝突させることで、有効視野領域FOV内に載置された患者Pに対してX線を曝射する。
【0018】
X線検出器13は、患者Pを透過したX線を検出するものであり、X線管球12に対向して回転フレーム11に取り付けられている。X線検出器13は、例えばマルチスライスタイプの検出器であり、シンチレータとフォトダイオードを組み合わせて構成した複数の検出素子が、二次元的に配列されている。
【0019】
データ収集部14は、DAS(Data Acquisition System) と呼ばれ、X線検出器13からチャンネルごとに出力される信号を電圧信号に変換し、増幅し、さらにデジタル信号に変換する。このデジタルデータは、非接触型のデータ伝送装置15を介してコンピュータシステム20に送られる。架台駆動部17は、回転フレーム11を回転駆動する。この回転駆動により、X線管球12とX線検出器13とが対向しながら、患者Pの体軸を中心に螺旋状に回転することになる。
【0020】
コンピュータシステム20は、バスライン201を含み、前処理部21、システム制御部22、記憶部23、再構成処理部24、画像処理部25、表示部26、操作部27、高電圧発生部28を備えている。前処理部21は、データ収集部14からの生データを、非接触データ伝送装置15を介して受け取り感度補正やX線強度補正を行う。
【0021】
システム制御部22は、バスライン201に接続されている。またシステム制御部22はCPU221を含み、ROMに格納されたプログラムに従ってX線CT装置100の全体的な制御を行い、スキャン処理画像生成処理、画像表示処理等を行う。
【0022】
前処理部21によって各種の補正を受けた生データは、投影データと呼ばれ、バスライン201を介して記憶部23に一旦記憶される。再構成処理部24は、複数種類の再構成法を装備し、操作者によって選択された再構成法により画像データを再構成する。
【0023】
画像処理部25は、再構成処理部24によって生成された再構成画像データに対して、ウィンドウ変換、RGB処理等の表示のための画像処理を行い、表示部26に出力する。また画像処理部25は、システム制御部22の制御のもとにインプラント施術を支援する支援画像を表示部26に表示する。
【0024】
インプラントの情報は予めプログラミングされており、インプラントの形状、本数、サイズ等をユーザに選択させ、選択されたインプラントの画像を画面上に表示させる。インプラント画像は、患者を撮影した画像とともに表示する。このため画像処理部25は、オペレータの指示に基づき、任意断面の断層像、任意方向からの投影像、3次元画像等の生成を行い、表示部26に出力する。
【0025】
また画像処理部25は、インプラント画像の表示に際して、解剖学的に侵食してはならない血管や神経、副鼻腔等の部位を抽出する。また撮影した骨部位を抽出し、骨密度(骨の強度)を算出する。さらに抽出した部位の情報をもとにインプラントの埋入位置を算出し、インプラントの埋入位置を指示するインプラント画像を生成する。またインプラント画像を撮影画像に重畳してインプラント施術を支援する支援画像を生成する。
【0026】
記憶部23は、生データのほかに、再構成処理した断層像データ等の画像データを記憶する。表示部26は、画像処理部25から入力したコンピュータ断層画像等のCT画像やインプラント施術を支援する支援画像を表示する。操作部27は、キーボードや各種スイッチ、マウス等を備え、操作者(オペレータ)によって操作され、各種のスキャン条件等を入力する。またインプラントの埋入に際してインプラントの選択やインプラント位置の修正操作等を行う。
【0027】
高電圧発生部28は、スリップリング16を介して、X線の曝射に必要な電力をX線管球12に供給する。尚、X線CT装置100は、ネットワークを介して、RIS(Radiology Information System)サーバ、PACS等(図示せず)の他の装置と通信を行い、ネットワークを介して、PACS等に画像データ、患者情報等を保存することもできる。
【0028】
さらにシステム制御部22は、入力されたスキャン条件に基づいて、高電圧発生部28、架台駆動部17、及び天板19の体軸方向への送り量、送り速度、X線管球12とX線検出器13の回転速度、回転ピッチ、及びX線の曝射タイミング等を制御し、患者の所望の撮影領域に対して多方向からX線コーンビーム又はX線ファンビームを曝射させ、X線CT画像のデータ収集(スキャン)処理を行う。
【0029】
以下、本発明の特徴であるインプラント施術を支援する画像表示処理について説明する。尚、以下の説明では歯科治療におけるインプラントの埋入を例に述べる。
図2は、X線CT装置100の動作を示すフローチャートであり、主に画像処理部25の動作を示すものである。
【0030】
図2において、ステップS1では患者(被検体)の歯牙を中心とする部位の撮影を行う。ステップS2では、撮影した画像を表示する際に、解剖学的に侵食してはならない部位である血管や神経、副鼻腔等の場所を抽出する。血管や神経、副鼻腔等の部位は、CT値を基に抽出する。
【0031】
次にステップS3では、撮影した画像をもとに骨密度(骨の強度)を算出する。骨密度は、撮影した画像のCT値から推定し、骨密度が予め設定した値よりも高い部位を抽出する。ステップS4ではステップS2、S3で抽出した神経や血管部分、及び骨部分の画像を表示する。例えば患者の下顎や上顎部分を上(下)から見た画像と、横から見た画像と、正面から見た画像を表示する。これらの画像は、所謂、平面図、側面図、正面図に相当する3方向から見た平面画像である。また3方向画像に加えて、下顎や上顎部分の全体を見るために3D画像を表示する。
【0032】
また骨密度が高い部分と骨密度が低い部分を区別するため、骨密度が高い部分は温色系で色表示し、骨密度が低い部分は冷色系で色表示するように階層的に着色を施す。また神経と血管の部分も同様に色を変えて視覚的に見やすいように着色して表示する。
【0033】
ステップS5では、インプラント情報を入力する。このステップS5では、予めインプラントの情報をプログラミングしておき、インプラントの形状、本数、サイズ等のインプラント情報をユーザ(医師、技師等)が選択できるようにしている。
【0034】
ステップS6では、インプラントの埋入位置や埋入方向、埋入の深さ等を算出し、撮影画像に重ねてインプラントの埋入を指示するインプラント画像を表示する。即ち、ステップS2、S3で算出した解剖学的に侵食してはならない部分の情報と骨密度の値、及びインプラントの情報(形状、本数、サイズ等)をもとに、インプラントの位置、方向、埋入深さ等を決定する。またステップS6では、インプラント画像を表示し、インプラントの最適な位置を表示する。
【0035】
インプラントの埋入位置としては、解剖学的に侵食してはならない部分から例えば3mmほど離れている部分を候補として挙げる。次にインプラントを埋入すると骨が薄すぎてインプラントが飛び出さないような場所や角度を考慮し、その中で最も骨密度の高い位置を最適な埋入位置を算出して表示する。
【0036】
またインプラントの埋入本数が2本以上選択されたときには、インプラントを埋め込むのに実歯とインプラントの間で最低限あけなければならない間隔、インプラント同士で最低限あけなければならない間隔などの条件も自動的に加味して埋入位置を決定する。さらにインプラントの埋入位置を決めた後に、画面上に表示されたインプラントを手動で操作し操作者が埋入位置を修正することができるようにする。
【0037】
上記したように画像処理部25は、解剖学的に侵食してはならない血管や神経、副鼻腔等の部位や骨部位を抽出する抽出部と、抽出した部位の情報をもとにインプラントの埋入位置を算出する算出部と、インプラント画像を撮影画像に重畳してインプラント施術を支援する支援画像を生成する画像生成部として機能する。
【0038】
以下、
図3〜
図6を参照してインプラントの施術を支援する支援画像について説明する。
【0039】
図3は、患者の下顎部分を上から見た画像であり、下顎などの骨部分31と、歯牙32及び血管・神経部分33を含む。血管・神経部分33は、骨部分31や歯牙32と区別可能な色(例えば赤色)で表示し、解剖学的に侵食してはならない部分であることを明示するようにしている。また骨部分31は凡例40で示すように、骨密度が高い部分は温色系41で色表示し、骨密度が低い部分は冷色系42で色表示するように階層的に着色する(尚、図では着色を省いている)。
【0040】
図3において、インプラント34は、例えば欠損した歯牙321の部分に埋入されるものとし、埋入位置35が明確に分かるように表示する。インプラント34の情報は予めプログラミングされているため、形状、本数、サイズなどがユーザによって選択され、選択されたインプラント34の形状が画面上に表示される。インプラントを選択するため、各種のインプラントを模した画像を画面に表示し、操作部27の操作によって選択するようにしている。
【0041】
図4は下顎部分を横から見た画像である。横から見た画像では、インプラント34の埋入位置と埋入方向(角度α)が分かる。
図4で斜線を施した部分は骨密度の高い部分である。またインプラント34を埋入したときに、血管・神経部分33を侵食しないように、インプラント34の先端と血管・神経部分33の間隔は、例えば3mm以上離れた部分を埋入の候補として表示する。尚、
図4において、インプラント34の埋入の深さや、埋入角度α、骨の厚さを示す数値等の画像を同時に表示してもよい。
【0042】
図5は、下顎部分を正面から見た画像である。
図5は、下顎の右側の部分に欠損した歯牙321があることや、インプラント34の埋入位置や埋入方向が分かる。また血管・神経部分33の位置も分かる。こうして、複数の角度方向から見た3つの平面画像を表示することにより、インプラント34の埋入位置と埋入方向等をユーザは正確に把握することができる。
【0043】
図6は、下顎部分の全体を立体的に表示した3D画像である。3つの平面画像以外に3D画像を表示することで、インプラント34の埋入位置をより明確に表示することができ、血管・神経部分33とインプラント34との位置関係も明確に把握することができる。
【0044】
尚、
図3〜
図6で表示されたインプラント34の埋入位置等は、CPU221と画像処理部25によって算出した候補であり、ユーザが修正することができる。この場合、表示されたインプラント34の画像は手動操作によって修正され、修正されたインプラント34の画像が表示される。
【0045】
また修正する場合も、血管・神経部分33の位置や骨密度が色によって視覚的に区分可能な形態で表示されるため、解剖学的に侵食してはならない部分との間隔や、骨が薄すぎてインプラントが飛び出さないような場所や角度を考慮して修正することができる。
【0046】
また、2本以上のインプラント34を埋入するときには、インプラント34と実歯との間で最低限あけなければならない間隔や、インプラント同士で最低限あけなければならない間隔が自動的に加味されて表示される。
【0047】
図3〜
図6に示す画像は、いずれかの画像を選択的に表示することもできるが、1画面に任意の画像を同時に表示するようにしてもよい。また下顎部分の撮影画像の表示例を掲げたが、上顎部分の画像を表示してもよい。この場合は上顎部分を下から見た画像や下から見た立体画像を表示すると良い。
【0048】
このように本発明の実施形態では、インプラント施術を支援する画像を平面画像や立体画像で表示することができ、かつ解剖学的に侵食してはならない部位や、骨密度などの強度を表示することができるため、インプラント施術を支援し、インプラントの埋入にかかる時間を低減することができる。
【0049】
尚、以上の説明では、X線CT装置によって撮影した画像を処理する例を説明したが、部分CT撮影を行う歯科治療専用のX線撮影装置を使用してもよい。また、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。