(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698481
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】プリザーブドフラワー、プリザーブドフラワーの開花調整方法、及び開花調整されたプリザーブドフラワーの製造方法、並びにそれらの方法に用いられるへら及び接着剤用容器
(51)【国際特許分類】
A41G 1/00 20060101AFI20150319BHJP
A41G 1/02 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
A41G1/00 D
A41G1/02
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2010-206839(P2010-206839)
(22)【出願日】2010年9月15日
(65)【公開番号】特開2012-62592(P2012-62592A)
(43)【公開日】2012年3月29日
【審査請求日】2013年8月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】508055560
【氏名又は名称】東 加織
(74)【代理人】
【識別番号】100136847
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼山 嘉成
(72)【発明者】
【氏名】東 加織
【審査官】
大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−68120(JP,A)
【文献】
特開2004−188400(JP,A)
【文献】
実開昭63−152678(JP,U)
【文献】
特開2009−67044(JP,A)
【文献】
特開2005−213703(JP,A)
【文献】
特開2007−126617(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3124544(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41G 1/00−1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い先端を有するノズル部を備える接着剤用容器を用いて、前記ノズル部の先端から、プリザーブドフラワーの萼の内側であって花托との接合部分にあたる最奥部分に接着剤を塗布し、花弁群の最外周になっている少なくとも1つの花弁の内側から前記花弁を広げ、前記花弁と前記萼とを挟んで接着し、前記最外周の花弁の全部又は一部を前記萼に接着して開花させる萼部開花調整工程と、
前記最外周の花弁の内側にある花弁群において、開花対象となる花弁の外側に前記ノズル部の先端を挿入して、前記開花対象の花弁と前記花托との接合部分にあたる最奥部分に接着剤を塗布し、前記開花対象の花弁の内側から当該花弁を広げて接着させ、前記花弁群における花弁を順次開花させる内側花弁開花調整工程とを備えることを特徴とする、プリザーブドフラワーの開花調整方法。
【請求項2】
前記内側花弁開花調整工程では、花弁のカーブに沿った曲面を先端部分に有するへらを用い、前記へらを、前記開花対象の花弁の内側から挿入して当該花弁を広げて接着させることを特徴とする、請求項1に記載の開花調整方法。
【請求項3】
前記萼部開花調整工程では、前記最外周の花弁の内側から指を挿入して当該花弁を広げて、当該花弁と前記萼とを指で挟んで接着させることを特徴とする、請求項1又は2に記載の開花調整方法。
【請求項4】
前記接着剤は、水性接着剤であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の開花調整方法。
【請求項5】
花弁群の最外周になっている全部又は一部の最外周花弁が、萼と花托との接合部分にあたる最奥部分に塗布された接着剤によって広げられた状態で固定されており、
前記最外周花弁の内側にある花弁群の全部又は一部の内側花弁が、当該内側花弁と前記花托との接合部分にあたる最奥部分で当該内側花弁の外側から塗布された接着剤によって広げられた状態で固定されていることを特徴とする、プリザーブドフラワー。
【請求項6】
細長い先端を有するノズル部を備える接着剤用容器を用いて、前記ノズル部の先端から、プリザーブドフラワーの萼の内側であって花托との接合部分にあたる最奥部分に接着剤を塗布し、花弁群の最外周になっている少なくとも1つの花弁の内側から前記花弁を広げ、前記花弁と前記萼とを挟んで接着し、前記最外周の花弁の全部又は一部を前記萼に接着して開花させる萼部開花調整工程と、
前記最外周の花弁の内側にある花弁群において、開花対象となる花弁の外側に前記ノズル部の先端を挿入して、前記開花対象の花弁と前記花托との接合部分にあたる最奥部分に接着剤を塗布し、前記開花対象の花弁の内側から当該花弁を広げて接着させ、前記花弁群における花弁を順次開花させる内側花弁開花調整工程とを備えることを特徴とする、開花調整されたプリザーブドフラワーの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の開花調整方法に用いるための接着剤用容器であって、
花弁と花弁との間、及び、萼と花弁との間に挿入可能な細長い先端を有するノズル部と、
接着剤を収容するためのボトル部とを備えることを特徴とする、接着剤用容器。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載の開花調整方法に用いるためのへらであって、
花弁が有するカーブに沿った形状を有し、花弁全体の大きさよりも小さく、花弁と花弁との間に挿入可能な少なくとも一つの曲面部と、
前記曲面部を端部に有する柄とを備えることを特徴とする、へら。
【請求項9】
大小二つの曲面部を備えることを特徴とする、請求項8に記載のへら。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリザーブドフラワー、プリザーブドフラワーの開花調整方法、及び開花調整されたプリザーブドフラワーの製造方法、並びにそれらの方法に用いられるへら、接着剤及び接着剤用容器に関し、より特定的には、簡単に美しくプリザーブドフラワーの開花調整を行うことができるようにするための発明である。
【背景技術】
【0002】
プリザーブドフラワーは、生花に薬品を用いて保存加工を施すことにより、水を補給することなく、生花のようなソフトな風合いを、長期間に渡り保つことができる花である。昨今では、ギフト、ディスプレイ、及びブライダルなどの商用の需要も拡大している。さらに、プリザーブドフラワーを使用したアレンジメントの製作を広く一般の方々も楽しんでいる状況である。
【0003】
既成のプリザーブドフラワーは、加工や出荷過程の都合上、生花が少しだけ開花した段階で花首のみを摘み取って、茎・葉のない状態で加工を施し、各メーカーの規格サイズに合わせて、箱詰めされてユーザに発送される。一般的に流通しているプリザーブドフラワーのサイズは、大別して特大輪(花径約6cm前後)、大輪(花径約5cm前後)、中輪(花径約4cm前後)、小輪(花径約3cm前後)、極小輪(花径約2cm前後)に分けられ、サイズ・カラーなど多種類のプリザーブドフラワーが供給されている。
【0004】
プリザーブドフラワーは、少しだけ開花した状態で保存加工されているので、少しだけ開花した状態以上に、自然に開花することがない。したがって、プリザーブドフラワーのアレンジメントを制作する際、より華やかにアレンジするためには、プリザーブドフラワーを開花するように整形しなければならない。
【0005】
そこで、プリザーブドフラワーを開花させる方法が考え出された。その1つとして、花弁の間に綿花などの詰め物をして花弁を押し広げるように開花させる方法がある。しかし、当該方法では、萼や花弁に大きな負担がかかり破損をすることも多く、微調整も難しい上、開花度合いも限られている。また、当該方法では、中の詰め物が動いたり外れて形がうまく保たれなかったり、外から見えてしまったりすることもあり不自然に見えてしまうという問題がある。そのため、当該方法では、安定的にきれいに開花させることが難しく、特に花弁が小さく深さが浅い、小輪や極小輪の花には不向きであった。
【0006】
別の一般的に行われている方法として、グルーガンという、ピストル状の器具を用いてホットメルトなどのビニール系の樹脂を熱で溶かした接着剤を使用する開花方法がある。
図9A及び
図9Bは、グルーガンを用いた開花方法を説明するための図である。
図9Aに示すように、まず、当該方法では、最外周の花弁を指で外側へ引っ張るように広げて、花弁の重なっている位置(
図9A上の80)に接着剤を塗布し、内側の花弁と外側の花弁とを指で挟んで、内側の花弁と外側の花弁とを接着する(従来工程1)。
図9Aでは、1カ所の接着位置を80としたが、接着位置は、通常、複数であることが多い。このようにして、まず、外周の全ての花弁を開花させる(従来工程2)。
【0007】
次に、中心に向かって巻き込むように重なっている内側の花弁85(
図9B参照)の外側の中程にグルーガンで接着剤を塗布する(従来工程3)。
図9Bに示す領域84は、グルーガンで接着剤を塗布する箇所の例を示す。グルーガンの先端部分は、鉛筆大である。したがって、グルーガンの先端部分は、
図9Bに示す領域84のように、花弁の中程までしか届かない。よって、花弁85への接着剤の塗布部分は、自ずと、領域84周辺となる。次に、接着剤を塗布した内側の花弁85の上部を指やピンセットで挟み外側に広げるように引っ張る(従来工程4)。次に、引っ張った内側の花弁85と、その外側にある花弁86とを指で軽く挟んで、内側の花弁85と外側の花弁86とを塗布した接着剤で接着する(従来工程5)。この接着によって、浸透性のないビニール系樹脂系の接着剤が盛り上るように接着される。これにより、花弁の間に隙間が保たれ開花させることができる。従来工程3〜5を複数の内側の花弁に対して繰り返して(従来工程6)、全体を開花させる。
図9Cは、開花した状態のプリザーブドフラワーの断面図である。
図9Cにおいて、領域84に塗布されて花弁同士を接着している接着剤を81で示す。
【0008】
特許文献1は、上記従来工程1及び2と、詰め物を利用した従来の開花方法とを組み合わせた方法を開示している。特許文献1に係る発明では、従来工程1及び2と同様にして、外側の花弁群に対して、花弁同士が重なる部分を接着して、外側の花弁群を外方へ押し広げる工程(特許文献1における第1整形工程)を施した後、内側の花弁群に対して略球形を呈し外表面が滑らかな軽量粒状体を挿入して花弁間の隙間を押し広げる工程(特許文献1における第2整形工程)を施して、開花調整する(特許文献1の請求項3等を参照)。
【0009】
特許文献2は、上記従来工程1〜6や特許文献1のように、花弁間を接着剤で接着することによって、開花させる方法とは異なる方法によって、プリザーブドフラワーを開花させる方法を開示している。特許文献2に開示されている方法では、特許文献2の
図1における位置(L2)で、花托が切り離される(特許文献2の段落0022参照)。次に、得られた切り離し花部材(9)の花弁下端に接着剤(10)が接着される。特許文献2の段落0025の第3行目〜5行目に記載されているように、接着剤(10)によって、花弁(2A)が自由に動くようになり、花弁(2A)の開花状態を調整できるようになる。具体的には、特許文献2の段落0031の第3行目〜4行目に記載されているように、接着剤が硬化する前に、花弁の開き度合いを調整して、接着剤が硬化したら、ベース材(12)から花弁を剥離して、開花状態となったプリザーブドフラワーを得ることができる。なお、ベース材(12)の代わりに、特許文献2の
図5に示されているようなテンプレート(13)を用いて、テンプレート13の湾曲面13cに沿って花弁の開き度合いを調整して、特許文献2の
図7に示されているように、接着剤が硬化した後に、切り離し花部材9を剥離することによって、開花された状態のプリザーブドフラワーが提供される(特許文献2の段落0032〜0040参照)。接着剤としては、従来工程1〜6や特許文献1のグルーガンで用いられるようなホットメルトであることが好ましいとされている。なお、特許文献2の
図3及び段落0027では、花弁開き用部材(11)を用いて花弁を開けるとよい旨が開示されている。
【0010】
特許文献3は、上記従来工程1〜6や特許文献1及び2とは、異なる開花方法を開示している。特許文献3に示されている開花方法では、花弁収束部(28)と花柱部(27)とに混合液(34)を含浸させて、混合液(34)を付着させた箇所の組織を軟化させて、花弁(18)の角度調整を容易にする(特許文献3の段落0075参照)。混合液(34)より、シクロヘキサンとノルマルヘプタンとが揮発した後、混合液(34)に含有されている増粘剤としてのスチレンブタジエンゴムがゴム塊となって残存し、当該ゴム塊が花弁の花托との結合を補強して、開花された状態の花弁が脱落するのを防止する(特許文献3の段落0078参照)。また、シクロヘキサンとノルマルヘプタンとが揮発した後であっても、ゴム塊は柔軟性を有しているので、数日程度であれば角度の再調整が可能となる(特許文献3の段落0089参照)。
【0011】
その他、特許文献4に開示されているように、花弁を分解して、再度開花状態に花弁を貼り合せる方法もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3649406号公報
【特許文献2】特開2009−67044号公報
【特許文献3】特開2009−68120号公報
【特許文献4】特開2003−268617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記従来工程1〜6のようにグルーガンを用いた方法は、花弁の上部を指やピンセットなどで挟み外側へ引っ張る必要があるため、萼や花弁の根元部分に大きな負担をかける。したがって、萼が折れたり、花弁が取れてしまったり、花弁の上部が裂けてしまうこともあり加減が難しい作業となる。加えて、グルーガンは熱くて扱いづらく、グルーガンで使用されるホットメルト接着剤は、瞬間的に接着してしまうので、花弁の微調整を行いにくい。そのため、安定的にきれいに仕上げるためにはかなりの熟練が必要とされる。また、このようなグルーガンを用いた方法で開花させる場合、グルーガンの先端部分の大きさや形状等の関係上、花弁を接着剤で汚したり、破損させたりせずに開花させるためには、どうしても接着位置が花弁の深さの中程周辺(
図9Bの領域84周辺)となる。したがって、開花幅(
図9Cの82)は小さく限られ、満開状態に大きく開花させることは難しい。さらに、場合によっては、接着部分が見えてしまうこともある。また花の中心部(
図9Cの83)などの花弁の込み入っている細部に対しては、開花させることが困難であるため、部分によっての開花度合いに差が生じる。結果、バランスの悪い不自然な開花になってしまうことも多い。また、グルーガンを用いた開花方法を、花弁の小さくて浅い、小輪・極小輪などの小さめのサイズの花に用いるのは、さらに困難となる。
【0014】
特許文献1に記載の開花方法の場合、略球形を呈し外表面が滑らかな軽量粒状体を利用しているので、従来のように詰め物が挿入されることとなるので、やはり、萼や花弁に負担がかかり破損するおそれがある。また、開花度合いの微調整も難しく、開花度合いも限られた範囲に限定されることとなる。加えて、軽量粒状体が動いたり外れたりして形が保持されなくなるおそれがある。また、軽量粒状体が外から見えてしまったりすることもあり不自然に見えてしまう場合がある。
【0015】
特許文献2に記載の開花方法の場合、花を切断して開花状体を作り上げるので、横方向から見た場合、どうしても、切断・接着部分が見えてしまう。したがって、アレンジメントを作成する際に、切断・接着部分が見えないようにするための制限を受けることとなる。
【0016】
特許文献3に記載の開花方法の場合、花弁収束部(28)及び花柱部(27)が軟化したとしても、花弁を広げる際には、花弁を指やピンセットで掴まなければならず、花弁や萼を破損させてしまう可能性がある。また、実際の花の形状は、花の種類によって区々であるので、特許文献3が想定しているように、花弁の付け根部分が軟化し、ゴム塊によって、花弁の開花を調整できない種類の花も存在すると予想される。また、混合液に溶解している増粘剤が、全ての花弁にできるかぎり均一に行き行き渡らない限り、開花調整を行いたい花弁を動かすことはできない。このように、特許文献3に記載の開花方法であったとしても、うまく開花調整ができない場合がある。
【0017】
特許文献4のように花弁を分解して、再度開花状態に花弁を貼り合せる方法は、大変細かい作業できれいに仕上げるためには、熟練が必要である。この方法は、比較的大きい花には有効であるが、小輪や極小輪には困難な上、アレンジメントを制作する際には、張り合わせた部分が目立たないようにするために、デザイン的な制約が生じる。
【0018】
本発明は、上記のような背景から、どのような大きさのプリザーブドフラワーでも、花弁を分解や切断をせずに自然な形状を保ったまま、簡単で安定的に美しく自在に開花度合いを調整することができる開花調整方法を提供することを目的とする。合わせて、本発明は、当該開花調整方法を利用したプリザーブドフラワー、プリザーブドフラワーの製造方法、及びそれらの方法に用いられるへら、接着剤及び接着剤用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために本発明は、以下のような構成を有する。本発明は、細長い先端を有するノズル部を備える接着剤用容器を用いて、ノズル部の先端から、プリザーブドフラワーの萼の内側であって花托との接合部分にあたる最奥部分に接着剤を塗布し、花弁群の最外周になっている少なくとも1つの花弁の内側から花弁を広げ、花弁と萼とを挟んで接着し、最外周の花弁の全部又は一部を萼に接着して開花させる萼部開花調整工程と、最外周の花弁の内側にある花弁群において、開花対象となる花弁の外側にノズル部の先端を挿入して、開花対象の花弁と花托との接合部分にあたる最奥部分に接着剤を塗布し、開花対象の花弁の内側から当該花弁を広げて接着させ、花弁群における花弁を順次開花させる内側花弁開花調整工程とを備えるプリザーブドフラワーの開花調整方法である。
【0020】
本発明によれば、細長い先端を有するノズル部を用いて、最奥部分で萼と花弁とを接着して最外周の花弁を広げ、その後、適宜、内側の花弁群の花弁の最奥部分で花弁同士を接着して広げることとなる。従来のように、グルーガンを用いる場合と異なり、最奥部分を接着するので、開花度合いを広くも狭くもすることができる。よって、開花幅を好みに調整できる。また、最奥部分で接着されているので、接着部分は、ほとんど視認されない。よって、どのような大きさのプリザーブドフラワーでも、花弁を分解や切断をせずに自然な形状を保ったまま、簡単で安定的に美しく自在に開花度合いを調整することができる。
【0021】
好ましくは、内側花弁開花調整工程では、花弁のカーブに沿った曲面を先端部分に有するへらを用い、へらを、開花対象の花弁の内側から挿入して当該花弁を広げて接着させるとよい。
【0022】
このように、へらを用いれば、最奥部分にへらを到達させて、花弁に負担をかけることなく、内側の花弁群を好みの開花度合いに順次開花させていくことが可能となる。
【0023】
好ましくは、萼部開花調整工程では、最外周の花弁の内側から指を挿入して当該花弁を広げて、当該花弁と萼とを指で挟んで接着させるとよい。
【0024】
このように、最外周の花弁と萼とを指で確実に接着することによって、全体の形状が安定することとなる。
【0025】
好ましくは、接着剤は、水性接着剤であるとよい。
【0026】
これにより、花弁に接着剤を浸透させることができ、花弁を安定して開花させることができる。
【0027】
また、本発明は、花弁群の最外周になっている全部又は一部の最外周花弁が、萼と花托との接合部分にあたる最奥部分に塗布された接着剤によって広げられた状態で固定されており、最外周花弁の内側にある花弁群の全部又は一部の内側花弁が、当該内側花弁と花托との接合部分にあたる最奥部分で当該内側花弁の外側から塗布された接着剤によって広げられた状態で固定されているプリザーブドフラワーである。
【0028】
このようなプリザーブドフラワーは、開花度合いが自由に調整されており、多彩なアレンジメントを可能とし、商品価値が増大する。
【0029】
また、本発明は、細長い先端を有するノズル部を備える接着剤用容器を用いて、ノズル部の先端から、プリザーブドフラワーの萼の内側であって花托との接合部分にあたる最奥部分に接着剤を塗布し、花弁群の最外周になっている少なくとも1つの花弁の内側から花弁を広げ、花弁と萼とを挟んで接着し、最外周の花弁の全部又は一部を萼に接着して開花させる萼部開花調整工程と、最外周の花弁の内側にある花弁群において、開花対象となる花弁の外側にノズル部の先端を挿入して、開花対象の花弁と花托との接合部分にあたる最奥部分に接着剤を塗布し、開花対象の花弁の内側から当該花弁を広げて接着させ、花弁群における花弁を順次開花させる内側花弁開花調整工程とを備える開花調整されたプリザーブドフラワーの製造方法である。
【0030】
また、本発明は、上記に記載の開花調整方法に用いるための接着剤用容器であって、花弁と花
弁との間、及び、萼と花
弁との間に挿入可能な細長い先端を有するノズル部と、接着剤を収容するためのボトル部とを備える。
【0031】
このようなノズル部によって、最奥部分に接着剤を塗布することが可能となる。
【0032】
また、本発明は、上記に記載の開花調整方法に用いるためのへらであって、花弁が有するカーブに沿った形状を有し、花弁全体の大きさよりも小さく、花弁と花
弁との間に挿入可能な少なくとも一つの曲面部と、曲面部を端部に有する柄とを備える。
【0033】
このようなへらによって、負担をかけることなく、花弁を広げることが可能となり、開花度合いの調整が容易となる。
【0034】
好ましくは、上記へらは、大小二つの曲面部を備えるとよい。
【0035】
これにより、花弁のサイズに合わせて、使用する曲面部を使い分けることができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、どのような大きさのプリザーブドフラワーでも、花弁を分解や切断をせずに自然な形状を保ったまま、簡単で安定的に美しく自在に開花度合いを調整することができる。
【0039】
本発明のこれら、及び他の目的、特徴、局面、効果は、添付図面と照合して、以下の詳細な説明から一層明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1A】
図1Aは、開花調整前のプリザーブドフラワーの斜視図である。
【
図2】
図2は、プリザーブドフラワーの花弁10の斜視図である。
【
図3】
図3は、本実施形態で用いる接着剤を収容するための接着剤用容器72である。
【
図4】
図4は、本実施形態で用いるへら62の斜視図である。
【
図5A】
図5Aは、本実施形態に係る開花調整方法の第1工程を示す図である。
【
図5B】
図5Bは、本実施形態に係る開花調整方法の第2工程を示す図である。
【
図6A】
図6Aは、本実施形態に係る開花調整方法の第3工程を示す図である。
【
図6B】
図6Bは、本実施形態に係る開花調整方法の第5工程を示す図である。
【
図7A】
図7Aは、下端部20の位置を推定する方法を説明するための図である。
【
図7B】
図7Bは、本実施形態に係る開花調整方法を施して開花調整した後のプリザーブドフラワーの断面図である。
【
図8A】
図8Aは、本実施形態に係る開花調整方法を利用して開花調整したプリザーブドフラワーと開花調整していないプリザーブドフラワーとを比較した写真である。
【
図9A】
図9Aは、グルーガンを用いた開花方法を説明するための図である。
【
図9B】
図9Bは、グルーガンを用いた開花方法を説明するための図である。
【
図9C】
図9Cは、開花した状態のプリザーブドフラワーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1Aは、開花調整前のプリザーブドフラワーの斜視図である。
図1Bは、プリザーブドフラワーの断面図である。
図1Bに示すように、プリザーブドフラワーは、複数の花弁10と、花托11と、1以上の萼12とを備える。花托11は、花弁10や萼12、雄しべや雌しべなどを接合している。
【0042】
図2は、プリザーブドフラワーの花弁10の斜視図である。花弁10は、
図2の破線で示す縦カーブ21と、破線で示す横カーブ22とを有する形状である。花弁10の下端部20で、花弁10は、花托11に接合している。花托11に複数の花弁が接合し、最外周の花弁11の回りを萼12が囲み、
図1Aに示すようなプリザーブドフラワーが形成されている。
【0043】
本実施形態において、上記のようなプリザーブドフラワーの構造を考慮し、萼12や花弁10に掛かる負担を最小限にして、花弁10と花托11の接合部分にあたる最奥部分(以下、最奥部分という)の中央の位置(たとえば、
図2に示す下端部20)で花弁11のカーブしている部分を無理なく接着し、特大輪から極小輪までどんな大きさのプリザーブドフラワーでも、自然な形状を保ちながら細部まで簡単で安定的にきれいに、さまざまな開花度合いに自在に開花調節ができるプリザーブドフラワーの開花調節方法を示す。
【0044】
まず、本実施形態で用いる器具について説明する。
図3は、本実施形態で用いる接着剤を収容するための接着剤用容器72である。接着剤用容器72は、ノズル部70と、ボトル部71とを備える。ノズル部70の先端は、最奥部分に、接着剤を点状に塗布できるように1mmほどの極細の口径を有する。なお、
図3では、ノズル部70は、先細りの細長い形状を有しているが、
図3に記載の形状に限定されるものではなく、先端が最奥部分に到達できるような細長い先端を有する形状であればよい。すなわち、ノズル部70は、花弁と花托との間、及び、萼と花托との間に挿入可能な細長い先端を有していればよい。ボトル部71には、接着剤が収容される。ボトル部71は、ペン型で、スリムな形状が好ましいがこれに限定されるものではない。接着剤としては、乾いたときに接着部分が盛り上がることないよう花びらにある程度浸透する水性接着剤が好ましく、乾くまでの間に微調整が可能なように瞬間接着タイプではなく速乾タイプが好ましく、透明(硬化後に透明であってもよい)であることが好ましい。たとえば、接着剤としては、酢酸ビニル樹脂やアクリル樹脂を水の中に分散させた水性接着剤を用いることができる。ただし、本発明において、接着剤の種類は特に限定されない。
【0045】
図4は、本実施形態で用いるへら62の斜視図である。へら62は、柄62の両端に、第1の曲面部60と、第2の曲面部61とを備える。第1及び第2の曲面部60及び61は、
図2に示す花弁10の縦カーブ21と、横カーブ22とに沿うように、少なくとも外側60a及び61aが湾曲している。第1及び第2の曲面部60及び61は、花弁全体の大きさよりも小さく、花弁10と花托11との間の最奥部分に挿入可能な程度の大きさを有する。本実施形態では、さらに、第1及び第2の曲面部60及び61は、先端部分60b及び61bが薄くなっている。花の大きさに合わせて使い分けができるように、第1の曲面部60は、第2の曲面部61に比べて大きい。柄62をペンを握るように持って、第1又は第2の曲面部60又は61を、最奥部分に差し込む。第1及び第2の曲面部60及び61の特徴的な形状によって、中心に向かって巻き込むように重なっている花弁10の間を傷つけることなく、スムーズに、第1及び第2の曲面部60及び61を花弁10の最奥部分にまで差し込むことができる。開花調整方法の詳細については、後述するが、接着剤を点状塗布した位置(
図2の20)を花弁10の内側から、へら62の第1又は第2の曲面部60又は61を、花弁10のカーブに接触させるように押さえることで接着剤を押し広げ、花弁10のカーブをつぶすことなく、指やピンセットなどの入らない最奥部分を接着し開花調整することができる。へら62の素材は、しっかりと接着部分を押さえることができるように、硬質で汚れをふき取れるような素材、たとえばプラスチックや金属などが好ましいが、特に限定されるものではない。なお、サイズの異なる曲面部を有するへらを複数用いてもよいので、第1及び第2の曲面部60及び61は、どちらか一つでもよい。
【0046】
次に、本実施形態に係る開花調整方法について詳細に説明する。
図5Aは、本実施形態に係る開花調整方法の第1工程を示す図である。第1工程では、
図5Aに示すように、全ての萼12の付け根部分に接着剤用容器72のノズル部70を差し込み、萼12の付け根部分に接着剤を塗布する。
【0047】
図5Bは、本実施形態に係る開花調整方法の第2工程を示す図である。
図5Bにおいて、接着剤は、斜線のハッチングにて示す(以下、同様)。第1工程によって、接着剤が萼12の付け根部分に塗布された状態で、一番外側の花弁10a(最外周花弁)の内側にたとえば人差し指32を差し込む。このとき、花弁10aの上部を起こすように引っ張って人差し指32を差し込むのではなく、花弁10aを指の厚みで押し広げるようにして人差し指32を差し込むとよい。人差し指32を差し込むと共に、萼12の外側から、同じ手の親指33で萼12を支える。そして、人差し指32と親指33の先端同士を合わせながら挟み込み、数秒押さえて、萼12と花弁10aとを接着させる。この第2工程を全ての萼12及び外側の花弁10aに施して、一周開花させる。ただし、好みの開花調整度合いによっては、全ての萼12及び外側の花弁10aに第2工程を施すのではなく、一部の萼12及び外側の花弁10aに第2工程を施してもよい。萼12及び外側の花弁10aを外側に広がるように接着すれば、開花度合いが大きくなる。逆に、萼12及び外側の花弁10aの広がり具合を小さくするように接着すれば、開花度合いが小さくなる。開花度合いは、プリザーブドフラワーの使用目的などに合わせて、適宜調整する。また、花の品種よっての咲き方や花弁のカーブにも特徴があるのでそれも考慮して開花度合いを調整するとよい。なお、第2工程では、へら62を用いて、最外周の花弁10aを広げて、へら62と指で萼12と花弁12aを挟んで、萼12と花弁12aを接着させてもよい。その他、第2工程では、へら62を用いて、最外周の花弁10aを広げて、指を差し込み、指同士で萼12と花弁12aを挟んで、萼12と花弁12aを接着させてもよい。
【0048】
図6Aは、本実施形態に係る開花調整方法の第3工程を示す図である。第2工程によって、萼12及び花弁10aが外側に広がった状態になっている。第3工程では、花弁10aの内側から、ノズル部70の先端を差し込み、花弁10aの次に重なりが一番外側になっている花弁10b(内側花弁)の下端部20付近(
図2も参照のこと)に、点状に接着剤を塗布する。
【0049】
第3工程の後、花弁10bを押し広げるようにして、花弁10aと花弁10bとを接着させる。花弁10aと花弁10bとを接着させる工程としては、二つの工程(「第4工程」及び「第5工程」)が考えられる。第4工程は、第2工程と同様、花弁10bの内側から指を挿入し、花弁10bと萼12とを指で挟み込んで、花弁10bを開花させる工程である。第4工程は、比較的指の差し込みやすい大輪の場合に利用可能である。第4工程が可能であれば、第4工程を繰り返して、花弁10bを1周分(若しくは1周の一部)開花させる。なお、花弁10bの内側の花弁10においても、第4工程が可能であれば、第4工程を繰り返して、順次花弁10を開花させる。
【0050】
図6Bは、本実施形態に係る開花調整方法の第5工程を示す図である。第5工程において、外側から下端部20付近に接着剤を塗布した花弁10bの内側からへら62の第1又は第2の曲面部60又は61を差し込む。それと共に、へら62を持っていない方の手のたとえば親指41を萼12にあてる。へら62の曲面部を花弁のカーブに沿わすように押さえて、花弁10bを広げ、曲面部60又は61と親指41とで花弁10b、花弁10a、及び萼12を挟んで接着する。第1又は第2の曲面部60又は61のどちらを差し込むかは、花弁10bの大きさ等を考慮して、適宜選択する。第5工程を繰り返して、花弁10bを1周分(若しくは1周の一部)開花させる。第4工程のように、指を差し込むことができないような場合、第5工程を利用して、花弁を開花させることができる。
【0051】
第4工程及び第5工程を適宜選択し、繰り替えしながら、内側の複数の花弁10c(内側花弁)を好みの開花度合いに開花させていく。接着剤がしっかりと乾くまでは、開花の足りないと思う部分はへら62を使ってしっかりと接着するようにもう一度押さえて、花弁を広げる。逆に、開花させすぎてしまった花弁は、外側にヘラを差し込み、当該花弁を起こすようにして、開花度合いを狭める。このようにして、接着剤が完全に硬化するまでの間に、微調整を行うことが可能である。
【0052】
第3〜第5工程において、接着剤を塗布したり、花弁を接着させる位置である下端部20は、花弁の最奥部分中央に位置するため、特に花弁に深さのある大きい花や、花の中心部分の込み入っている細部の花弁などでは、花弁の縦カーブ21(
図2参照)に隠れて、表面上からは目視できない場合がある。
図7Aは、下端部20の位置を推定する方法を説明するための図である。
図7Aは、花を上から見たときの図である。下端部20が目視できない場合でも、花弁の横カーブ22の中央部分52を目印に、花弁の外側の最奥部分までノズル部70を挿し込み接着剤を点状に塗布し、花弁の内側から開花調節用のへら62の第1又は第2の曲面部60又は61を最奥部分まで差し込む。そして、第1又は第2の曲面部60又は61を花弁に接触させるように押さえることで、先に塗布した接着剤を効果的に押し広げ、的確に下端部20の位置で接着させ、細部にいたるまで簡単で安定的に美しく、自在に開花調節をすることができる。
【0053】
図7Bは、本実施形態に係る開花調整方法を施して開花調整した後のプリザーブドフラワーの断面図である。本実施形態によれば、各花弁の間50を自在に調節することが可能となる。開花幅51は、従来の方法よりも広げることができると共に、必要に応じて狭く維持するなど、自在に調節ができる。接着部分には浸透性のある水溶性接着剤を使用しているので、接着部分が盛り上がるのを防止できる。また、透明な接着剤を使用しているので、接着していることがほとんど分からない。萼側や横側からなどどこから見ても、はじめから開花していたかのように自然な開花調整方法を提供することができる。
【0054】
このように、本実施形態によれば、まず、接着剤用容器72のノズル部70の先端から、全部又は一部の萼12の内側の最奥部分に接着剤を塗布して、最外周の花弁10aの内側から指又はへら62を差し込んで、最外周の花弁10aを広げ、花弁10aと萼12とを指で押さえて、挟み込むようにして接着させて、最外周の全部又は一部の花弁群を開花させる萼部開花調整工程(上記第1工程及び第2工程)を実施する。次に、まだ開花させていない内側の花弁群の最外周の花弁10bの外側の最奥部分の中央付近に、ノズル部70を差し込んで、ノズル部70の先端から点状に接着剤を塗布して、開花対象となる花弁10bの内側からへら62又は指を差し込んで、内側の花弁群の全部又は一部の花弁10bを広げ、萼12と花弁10bとを挟んで接着させる内側花弁開花調整工程(上記第3工程、第4工程、及び第5工程)を実施する。このように、細い先端を有するノズル部70を用いて、萼12と花弁10aとを接着して最外周の花弁10aを広げ、その後、適宜、へら62を用いて、内側の花弁群の花弁10bを広げることによって、どのような大きさのプリザーブドフラワーでも、花弁を分解や切断をせずに自然な形状を保ったまま、簡単で安定的に美しく自在に開花度合いを調整することができる。本実施形態による開花調整方法によれば、従来よりも開花幅を広げることができ、3分咲き、5分咲き、及び満開など様々に開花度合いを調整することができる。
【0055】
本実施形態に係る開花調整方法を用いて開花調整されたプリザーブドフラワーを製造することによって、花弁群の最外周になっている全部又は一部の最外周花弁が、萼と花托との接合部分にあたる最奥部分に塗布された接着剤によって広げられた状態で固定されており、最外周花弁の内側にある花弁群の全部又は一部の内側花弁が、当該内側花弁と花托との接合部分にあたる最奥部分で当該内側花弁の外側から塗布された接着剤によって広げられた状態で固定されているプリザーブドフラワーが得られる。
【0056】
内側花弁開花調整工程では、専用のへら62を用いるが、へら62の第1及び第2の曲面部60及び61は、花弁の縦カーブ及び横カーブに沿った形状を有する。したがって、巻き込むように重なっている内側の花弁群の間に花弁を傷つけることなく、第1及び第2の曲面部60及び61を滑り込ますことができる。よって、指やピンセットなどでは届かない花弁の最奥部分まで無理なく第1及び第2の曲面部60及び61を差し込むことができる。第1又は第2の曲面部60又は61を花弁のカーブに沿わすように押さえ、点状に塗布した接着剤を効果的に押し広げて接着することで、従来の方法のように指やピンセットなどで花弁の上部を引っ張る必要がなく、萼や花弁の根元部分や花弁自体に掛かる負担を最小限に抑えて開花度合いを調整することができる。これにより、従来の開花調整方法では難しかった中心部分の細い花弁や小輪及び極小輪を含め、どんな大きさのプリザーブドフラワーに対しても自在に開花度合いを調整することが可能となる。
【0057】
本実施形態で使用する接着剤用容器72は、先端が細長いノズル部70を有するので、萼や花弁の最奥部分まで無理なく差し込むことができる。したがって、的確な接着位置に必要量を塗布できる。また、接着剤が乾くまでの間には、開花させすぎた花弁の外側に開花専用のへら62を差し込み、花弁を起こすように使用することで開花度を微調整できる。したがって、従来の開花調整方法に比べて、細部まで簡単で安定的に美しく開花度合いを調整することができる。
【0058】
内側花弁開花調整工程において、接着剤を塗布する花弁の最奥部分の中央部分は、花弁の上辺中央部分によって特定することができる。したがって、製造者の熟練の度合いに関係なく的確に、最奥部分に接着剤を塗布することが可能となる。結果、簡単で安定的に美しく開花調整ができる。しかも、最奥部分に接着剤が塗布されているので、接着部分は目立つことがない。プリザーブドフラワーを分解や切断しなくても花の自然な形状を保ったまま、自在に開花調整ができるので、どの角度から見ても開花調整されていることがほとんど分からない。よって、デザイン的な制約もなく、華やかなアレンジメントを制作することが可能となり、商品価値も向上させることができる。
【0059】
さらに、使用頻度が少なかった小輪や極小輪などの小さいサイズのプリザーブドフラワーも、簡単に安定的に美しく、自在に開花調整ができるので、華やかさが増し、デザインのバリーエーションも増える。よって、小輪や極小輪などの小さいサイズのプリザーブドフラワーの使用頻度が多くなり、需要拡大も期待できる。
【0060】
また、本実施形態では、萼や花弁の最奥部を接着するため、萼や花弁と花托との付根部分を補強する役目を果たすことになり萼や花弁の破損や脱落を防ぐことができる。よって、特に、プリザーブドフラワーの商用使用に対しての安心感が増大する。
【実施例】
【0061】
図8Aは、本実施形態に係る開花調整方法を利用して開花調整したプリザーブドフラワーと開花調整していないプリザーブドフラワーとを比較した写真である。
図8A(a)は、開花調整していないプリザーブドフラワーを示す。
図8A(b),(c),及び(d)は、(b),(c),(d)の順番に、開花度合いを広げたプリザーブドフラワーの写真である。
図8Bは、
図8Aに示すプリザーブドフラワーの側面写真である。
図8A及び
図8Bに示すように、本実施形態に係る開花調整方法では、下端部20に接着剤が塗布され開花調整されるので、上面及び側面から見たときに、接着剤がほとんど視認されることなく、プリザーブドフラワーを開花させることができ、はじめから開花していたかのように自然な印象を与える。
【0062】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、どのような大きさのプリザーブドフラワーでも、花弁を分解や切断をせずに自然な形状を保ったまま、簡単で安定的に美しく自在に開花度合いを調整することができるプリザーブドフラワーの開花調整方法である。このような開花調整方法は、プリザーブドフラワーの手工業的製造工程において生産可能であり、産業上利用な発明である。さらに、本発明は、当該開花調整方法を用いてプリザーブドフラワーを製造する製造方法であり、産業上利用可能である。また、開花調整されたプリザーブドフラワーは、手工業的製造工程において生産されており、産業上利用可能な発明である。当該開花調整方法に用いられるへらや接着剤、接着剤用容器は、明らかに産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0064】
10,10a,10b,10c 花弁
11 花托
12 萼
20 下端部
21 縦カーブ
22 横カーブ
70 ノズル部
71 ボトル部
72 接着剤用容器
60 第1の曲面部
61 第2の曲面部
62 へら