特許第5698517号(P5698517)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5698517扁平形状繊維強化プラスチック線材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698517
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】扁平形状繊維強化プラスチック線材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20150319BHJP
   E04C 5/07 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   C08J5/04CEZ
   E04C5/07
【請求項の数】10
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2010-283860(P2010-283860)
(22)【出願日】2010年12月20日
(65)【公開番号】特開2012-131874(P2012-131874A)
(43)【公開日】2012年7月12日
【審査請求日】2013年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】306032316
【氏名又は名称】新日鉄住金マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075638
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 暎
(74)【代理人】
【識別番号】100169155
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】竹田 敏和
(72)【発明者】
【氏名】村上 信吉
(72)【発明者】
【氏名】荒添 正棋
【審査官】 家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/111679(WO,A1)
【文献】 特開2004−197325(JP,A)
【文献】 特開平08−039680(JP,A)
【文献】 特開昭63−205219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/04− 5/10,5/24
B29C70/04−70/56
D02G 1/00− 3/48
E04C 5/07
E04G23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)一方向に配列された複数本の強化繊維から成る強化繊維束に撚りを入れながら連続的に送給する工程、
(b)前記連続的に送給される強化繊維束にマトリックス樹脂を含浸させる工程、
(c)前記樹脂含浸され、撚りが入った強化繊維束を、所定の強さにて緊張させて強化繊維束の横断面を円形状とし、その後、前記横断面が円形状とされた強化繊維束の上下面に樹脂との離型性を持った高密度織物を配置した状態で、加熱された2枚の平板の間に引き込み、前記強化繊維の横断面を扁平形状に成形しながら樹脂を1次硬化させる工程、
(d)前記横断面が扁平形状の1次硬化された強化繊維束を、加熱された硬化炉を通し、2次硬化させる工程、
を備えた横断面が扁平形状とされる繊維強化プラスチック線材を製造することを特徴とする連続した扁平形状繊維強化プラスチック線材の製造方法。
【請求項2】
(a)一方向に配列された複数本の強化繊維から成る強化繊維束を連続的に送給する工程、
(b)前記連続的に送給される強化繊維束にマトリックス樹脂を含浸させる工程、
(c)前記樹脂含浸された強化繊維束に撚りを入れる工程、
(d)前記樹脂含浸され、撚りが入った強化繊維束を、所定の強さにて緊張させて強化繊維束の横断面を円形状とし、その後、前記横断面が円形状とされた強化繊維束の上下面に樹脂との離型性を持った高密度織物を配置した状態で、加熱された2枚の平板の間に引き込み、前記強化繊維の横断面を扁平形状に成形しながら樹脂を1次硬化させる工程、
(e)前記横断面が扁平形状の1次硬化された強化繊維束を、加熱された硬化炉を通し、2次硬化させる工程、
を備えた横断面が扁平形状とされる繊維強化プラスチック線材を製造することを特徴とする連続した扁平形状繊維強化プラスチック線材の製造方法。
【請求項3】
前記繊維強化プラスチック線材は、厚み(t)0.2mm〜5.0mm、幅(w)1.0mm〜10.0mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の扁平形状繊維強化プラスチック線材の製造方法。
【請求項4】
前記強化繊維束の撚り回数は、5回/m〜20回/mであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の扁平形状繊維強化プラスチック線材の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂含浸された強化繊維束は、500g/本〜3000g/本の強さにて緊張されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の扁平形状繊維強化プラスチック線材の製造方法。
【請求項6】
前記強化繊維束における前記強化繊維に対する前記マトリックス樹脂の含浸量は、体積比率(Vf)で36%〜60%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかの項に記載の扁平形状繊維強化プラスチック線材の製造方法。
【請求項7】
前記強化繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、PBO(ポリフェニレンベンズビスオキサゾール)繊維、ポリエステル繊維のいずれかであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかの項に記載の扁平形状繊維強化プラスチック線材の製造方法。
【請求項8】
前記マトリックス樹脂は、エポキシ樹脂、ビニールエステル樹脂、MMA樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、又はフェノール樹脂のいずれかであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかの項に記載の扁平形状繊維強化プラスチック線材の製造方法。
【請求項9】
前記高密度織物は、インチ長さ間の縦糸、緯糸の合計本数が210本以上投入された織物であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかの項に記載の扁平形状繊維強化プラスチック線材の製造方法。
【請求項10】
前記高密度織物は、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、又はビニロン繊維の連続フィラメント糸の単独織物、若しくは、混合織物のいずれかであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかの項に記載の扁平形状繊維強化プラスチック線材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

本発明は、扁平形状の繊維強化プラスチック線材の製造方法に関するものである。特に、扁平形状の繊維強化プラスチック線材及び斯かる扁平形状の繊維強化プラスチック線材をシート状に配列した繊維強化シートは、例えば、土木建築構造物であるコンクリート構造物、鋼構造物、繊維強化プラスチック構造物(本願明細書では、コンクリート構造物、鋼構造物、繊維強化プラスチック構造物などを含めて単に「構造物」という。)に接着して或いは埋入して補強するのに使用することができる。
【背景技術】
【0002】
構造物の補強方法として、近年、既存或いは新設の構造物の表面に連続繊維強化シートを貼り付けたり、巻きつけたりする接着工法が開発されている。
【0003】
しかしながら、上記接着工法は、単純な接着のみであり、FRP(繊維強化プラスチック)補強材の剥離による構造物の早期破壊により、終局耐力の補強硬化には限界がある一方、例えばコンクリート構造物のひび割れ抑制効果にも限界がある。その上、FRP補強材の高い性能が有効に活用されていない場合が多い。又、既存構造物のひび割れ損傷などの回復や死荷重に対する補強はできない。
【0004】
このような問題を改善するべく、シート状補強材に荷重を付与して緊張し、緊張状態にてシート状補強材を構造物表面に接着する緊張接着工法が用いられつつある。この緊張接着工法にて使用されるシート状補強材は、現在、樹脂を含浸していない繊維を一方向に引き揃えたシート、所謂、強化繊維シート、或いは、幅50mm以上の繊維強化プラスチックの平板を用いている。
【0005】
しかしながら、樹脂を含浸していない繊維を用いた強化繊維シートでは、製造上の問題或いは取り扱い時の問題から、強化繊維が必ずしも一方向に一様に引き揃えられていない。そのため、緊張力を導入するべく、強化繊維シートに荷重を付与して緊張する際に部分的な糸切れが発生し、充分な緊張力を導入し得ないことがある。つまり、強化繊維シートが緊張に必要な充分な力を発揮できないことがある。通常、緊張力は、最終破断荷重の50%〜30%減程度となっている。
【0006】
又、繊維強化プラスチック平板を用いる場合は、板幅が広いため接着する際に、接着面にボイドが混入して、充分な接着力を得ることが難しいといった問題がある。ボイドの発生を避けるために繊維強化プラスチック平板に孔を開けることが考えられるが、この場合には、繊維強化プラスチック平板の強化繊維を切断することとなり、好ましくない。
【0007】
そこで、本発明者らは、特許文献1に記載するように、強化繊維にマトリックス樹脂が含浸され、硬化された連続した繊維強化プラスチック線材を複数本、長手方向にスダレ状に引き揃え、その後線材を互いに固定用繊維材にて固定した繊維強化プラスチック線材シート、即ち、繊維強化シートを提案した。
【0008】
このような繊維強化シートは、緊張に際しての糸切れの問題を解決し、又、施工に際してのボイドの発生も回避して被補強面に対して充分な接着力を得ることができ、特に、緊張接着工法に基づくコンクリート構造物の補強などを極めて作業性良く実施することができる。
【0009】
一方、従来、上記繊維強化シートに使用される丸形状の連続した繊維強化プラスチック線材は、プルトルージョン法という引き抜き成形法にて製造されるのが通常であった。
【0010】
次に、図9を参照して、従来のプルトルージョン法に従った繊維強化プラスチック線材の製造方法について簡単に説明する。図9にて、左側から右側に強化繊維が移動し、その間に樹脂含浸、丸形状成形、1次加熱硬化、2次加熱硬化、巻き取りを行う工程を示している。
【0011】
図9に示すプルトルージョン法を実施する製造装置200によれば、巻き出し装置51の巻き出しボビン11(11a、11b)に巻かれた樹脂未含浸の、複数の強化繊維から成る強化繊維束f1は、回転軸12(12a、12b)を回転させることにより巻き出され、樹脂含浸工程へと送給される。
【0012】
つまり、ボビン11から巻き出された強化繊維束f1は、ガイド14のガイド穴15(15a、15b)により案内されて、次の工程である樹脂含浸工程へと送給される。
【0013】
樹脂含浸工程へと送給された強化繊維束f1は、入口ガイドローラ16により含浸ローラ18へと導入され、樹脂が含浸される。入口ガイドローラ16は、複数本の強化繊維から成る強化繊維束f1を樹脂含浸前に、強化繊維束f1を構成する複数の繊維を揃える役目である。
【0014】
含浸ローラ18は、強化繊維束f1を強制的に樹脂Rに浸ける役目で、樹脂含浸槽17に溜められた樹脂Rの中に、少なくとも下半分以上は浸かった状態で使用される。
【0015】
樹脂含浸槽17の出口部に設けた出口ガイドローラ19は、樹脂含浸強化繊維束f2を次工程の1次加熱硬化工程に送る前に揃える役目を持っている。
【0016】
樹脂含浸された強化繊維束f2は、加熱金型27Aに送給され、その後、加熱硬化炉27Bへと送給される。
【0017】
つまり、加熱金型27Aは、金型を用いた丸形状の成形と樹脂の1次硬化の役目を持っている。金型27Aには、所定の径をもった丸形状の溝27Aa、27Abが強化繊維束f2の移動方向に彫られており、この丸溝27Aa、27Abの中を樹脂含浸した強化繊維束f2が通過する際に、金型内部に組み込まれた熱線により加熱され、樹脂の1次硬化がなされ、半硬化された丸形状の繊維強化プラスチック線材2a、2bが得られる。
【0018】
繊維強化プラスチック線材内の樹脂含有量は、金型27Aの入口で余分の樹脂を絞ることでコントロールされるため、金型の穴溝27Aa、27Abに入れる強化繊維束f2の量を変えないと樹脂含有量を変えられないという欠点を持っている。
【0019】
又、金型27A内を樹脂含浸した強化繊維束f2が移動するため、樹脂と金型との間でくっ付くことは絶対に許されない。このため、樹脂には金型との間がくっ付かないように、大量の離型剤が含まれている。
【0020】
2次加熱炉27Bは、2次加熱硬化を行う工程である。ここでは、金型27Aにて半硬化された丸形状の繊維強化プラスチック線材2a、2bでの1次硬化の不足分を補うもので、ここで含浸樹脂の完全硬化がなされる。
【0021】
2次加熱炉27Bにて完全に硬化された線材2は、案内ガイド20のガイド穴21(21a、21b)を通って、巻き取り装置52のボビン30(30a、30b)へと送給され、回転軸31(31a、31b)の回りに回転するボビン30にて巻き取られる。
【0022】
上述のように、従来の引き抜き成形法では、丸形状の線材を成形するのに丸形状の開孔を持った加熱金型を用いるため、金型を通過させる際に抵抗が発生することから成形スピードが上げられないという問題がある。また、金型の大きさの制約等から、金型に設ける孔数に限界が発生し、一度に製造できる線材の本数が、多くても20本〜30本までという問題があった。線材の大きさ、幅など形状が変わると、金型交換が必要であった。そのため、コストアップとなる。
【0023】
更に、マトリックス樹脂と金型とのくっ付き防止のため、離型剤が使用され、その離型剤が線材表面に出ることから、この線材をシート状補強材(繊維強化シート)として構造物補強に使用した場合には、構造物へ接着する際、接着剤と線材表面との接着がうまくいかないという問題があった。そのため、繊維強化シートを使用する場合には、線材硬化後、サンドペーパ−等で表面の目粗しをしなくてはいけないという問題もあった。
【0024】
この問題のため、製造コストのアップや、表面の目粗し時の線材への疵付けによる品質低下をもたらしていた。
【0025】
そこで、本発明者らは、特許文献2に開示されるように、丸形状繊維強化プラスチック線材の製造方法を提案した。
【0026】
つまり、第一の製造方法は、
(a)一方向に配列された複数本の強化繊維から成る強化繊維束に撚りを入れながら連続的に送給する工程、
(b)連続的に送給される強化繊維束にマトリックス樹脂を含浸させる工程、
(c)樹脂含浸された強化繊維束を、所定の強さにて緊張させながら加熱して、強化繊維束の横断面を円形状として樹脂を硬化させる工程、
を備えた製造方法である。
【0027】
又、第二の製造方法は、
(a)一方向に配列された複数本の強化繊維から成る強化繊維束を連続的に送給する工程、
(b)連続的に送給される強化繊維束にマトリックス樹脂を含浸させる工程、
(c)樹脂含浸された強化繊維束に撚りを入れる工程、
(d)樹脂含浸され且つ撚りが入った強化繊維束を、所定の強さにて緊張させながら加熱して、強化繊維束の横断面を円形状として樹脂を硬化させる工程、
を備えた製造方法である。
【0028】
特許文献2に記載される製造方法は、
(1)強化繊維に撚りを入れ、マトリックス樹脂の樹脂含浸量をコントロールし、樹脂含浸強化繊維を加熱硬化させる際、強化繊維にテンション力を付与することにより、金型を用いなくても、丸形状の繊維強化プラスチック線材を製造することができる。
(2)金型を使用することがないため、一度に30本以上の線材製造も可能となり、且つ、マトリックス樹脂に離型剤を入れる必要もないことから、丸形状繊維強化プラスチック線材の表面目粗し作業も不要となり、大幅なコスト削減と品質改善を達成することができる。
といった利点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】特開2004−197325号公報
【特許文献2】特開2008−222846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
一方、コンクリート構造物、鋼構造物などの構造物に繊維強化シートを接着して補強する場合、繊維強化シートを構成する繊維強化プラスチック線材が丸形状だと、補強厚みが厚くなり、接着する樹脂量が多くなる。扁平形状だと同じ補強強度を出すのに補強厚みを薄くでき、接着する樹脂量を少なくできる。
【0031】
繊維強化プラスチック線材が、コンクリート構造物やガラス繊維強化プラスチック構造物等に埋め込まれる補強筋として使用される場合も同様に、補強筋を入れた箇所の板厚を薄くできることから、一定板厚内に多くの強化繊維を投入でき、一定体積内での繊維含有量(即ち、Vf)、構造物の目標の断面剛性や強度を丸形状のものに比較し、より薄い板厚で製作することができる。
【0032】
しかしながら、扁平形状の繊維強化プラスチック線材を丸形状と同様に引き抜き成形で作る場合は、金型上の制約があり、穴数の限界で製造本数の制約がある。また、マトリックス樹脂のくっ付き防止のため、離型剤の使用が必須となり、成形後の製品と後で接着させる樹脂やコンクリートとの接着がうまく行かないという問題が発生していた。
【0033】
また、本発明者らの研究実験の結果によると、樹脂含浸した複数本の繊維(繊維束)に撚りを入れ、一定張力で引っ張り、丸形状にした後、平板で一定厚みに成形しないと、均一に近い幅で製作できないことが分かった。つまり、扁平にする前の形状がランダムな形状では、一定板厚で、均一に近い幅での成形はできない。
【0034】
一方、型が平板であることから上下間の隙間を調整することにより1つの型で種々の厚みの形状を作り出すことができる。
【0035】
更に、本発明者らは、丸形状を平板形状とするために平板形状の型(金型)を使用し、平板形状型と扁平な線材製品との離型は、離型剤を使用するのではなく、接着剤と接着しない薄い布(ピールプライというポリエステル系の織物等)を、成形する線材の上下面に連続して挿入し、硬化後、剥ぎ取ることで対応し得ることが分かった。この方法は、引き抜き成形では、形状を持った金型のため皺が発生し、採用が困難であった。
【0036】
また、丸形状線材を平板形状(扁平形状)線材に成形する型が、平板形状であることから、型が薄くでき、狭い範囲で、2段、3段に上下に設置でき、一度に成形できる線材本数を、例えば、30本以上、300本程度にまでも増やすことができ効率的である。
【0037】
また、単に平板形状型内に樹脂を含浸した丸形状繊維束を引き込むだけでよいこと、及び、その上下に離型用の薄い布で保護され、金属の型と樹脂含浸の繊維束とが直接触れないことから、樹脂含浸の繊維束へのダメージが少なく、製造中の糸切れの頻度が殆どなく、大幅に成形歩留まりを上げることができることが分かった。
【0038】
本発明は、斯かる本発明者らの新規な知見に基づきなされたものである。
【0039】

従って、本発明の目的は、成形スピードの制約や、一度に製造できる本数制約を除去し、且つ離型剤を使用せず、成形後の目粗し等の作業をなくし、製造コストの大幅削減と製品品質の大幅アップを図ることのできる扁平形状繊維強化プラスチック線材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0040】

上記目的は本発明に係る扁平形状繊維強化プラスチック線材の製造方法にて達成される。要約すれば、本発明の第一の態様によれば、
(a)一方向に配列された複数本の強化繊維から成る強化繊維束に撚りを入れながら連続的に送給する工程、
(b)前記連続的に送給される強化繊維束にマトリックス樹脂を含浸させる工程、
(c)前記樹脂含浸され、撚りが入った強化繊維束を、所定の強さにて緊張させて強化繊維束の横断面を円形状とし、その後、前記横断面が円形状とされた強化繊維束の上下面に樹脂との離型性を持った高密度織物を配置した状態で、加熱された2枚の平板の間に引き込み、前記強化繊維の横断面を扁平形状に成形しながら樹脂を1次硬化させる工程、
(d)前記横断面が扁平形状の1次硬化された強化繊維束を、加熱された硬化炉を通し、2次硬化させる工程、
を備えた横断面が扁平形状とされる繊維強化プラスチック線材を製造することを特徴とする連続した扁平形状繊維強化プラスチック線材の製造方法が提供される。
【0041】
本発明の第二の態様によれば、
(a)一方向に配列された複数本の強化繊維から成る強化繊維束を連続的に送給する工程、
(b)前記連続的に送給される強化繊維束にマトリックス樹脂を含浸させる工程、
(c)前記樹脂含浸された強化繊維束に撚りを入れる工程、
(d)前記樹脂含浸され、撚りが入った強化繊維束を、所定の強さにて緊張させて強化繊維束の横断面を円形状とし、その後、前記横断面が円形状とされた強化繊維束の上下面に樹脂との離型性を持った高密度織物を配置した状態で、加熱された2枚の平板の間に引き込み、前記強化繊維の横断面を扁平形状に成形しながら樹脂を1次硬化させる工程、
(e)前記横断面が扁平形状の1次硬化された強化繊維束を、加熱された硬化炉を通し、2次硬化させる工程、
を備えた横断面が扁平形状とされる繊維強化プラスチック線材を製造することを特徴とする連続した扁平形状繊維強化プラスチック線材の製造方法が提供される。
【0042】
本発明にて一実施態様によれば、前記繊維強化プラスチック線材は、厚み(t)0.2mm〜5.0mm、幅(w)1.0mm〜10.0mmである。
【0043】
本発明にて他の実施態様によれば、前記強化繊維束の撚り回数は、5回/m〜20回/mである。
【0044】
本発明にて他の実施態様によれば、前記樹脂含浸された強化繊維束は、500g/本〜3000g/本の強さにて緊張される。
【0045】
本発明にて他の実施態様によれば、前記強化繊維束における前記強化繊維に対する前記マトリックス樹脂の含浸量は、体積比率(Vf)で36%〜60%である。
【0046】
本発明にて他の実施態様によれば、前記強化繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、PBO(ポリフェニレンベンズビスオキサゾール)繊維、ポリエステル繊維のいずれかである。
【0047】
本発明にて他の実施態様によれば、前記マトリックス樹脂は、エポキシ樹脂、ビニールエステル樹脂、MMA樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、又はフェノール樹脂のいずれかである。
【0048】
本発明にて他の実施態様によれば、前記高密度織物は、インチ長さ間の縦糸、緯糸の合計本数が210本以上投入された平織物である。
【0049】

本発明にて他の実施態様によれば、前記高密度織物は、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、又はビニロン繊維の連続フィラメント糸の単独織物、若しくは、混合織物のいずれかである。
【発明の効果】
【0052】
本発明によれば、一定厚で、略一定幅とされる扁平形状の繊維強化プラスチック線材を、効率良く、一度に多量製造でき、しかも、歩留まり向上、離型剤不要、製作後の製品の目粗し不要等で、大幅なコスト削減と品質改善を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】本発明に係る扁平形状繊維強化プラスチック線材の製造方法の一実施例を説明するため製造装置の概略構成図である。
図2】本発明に係る扁平形状繊維強化プラスチック線材の製造方法の一実施例を説明するため製造装置の概略構成図であり、図2(a)は平面図であり、図2(b)は正面図である。
図3】本発明に係る扁平形状繊維強化プラスチック線材製造装置における加熱板装置の一実施例を示す概略構成図である。
図4】本発明に係る扁平形状繊維強化プラスチック線材の製造方法の一実施例を説明するための製造装置における巻き出しボビンの作動を説明する概略構成図である。
図5】本発明の繊維強化シートを構成する扁平形状繊維強化プラスチック線材の断面図である。
図6】本発明の繊維強化シートの一実施例を示す斜視図である。
図7】本発明に係る扁平形状繊維強化プラスチック線材の製造方法の他の実施例を説明するための製造装置の概略構成図である。
図8】本発明に係る扁平形状繊維強化プラスチック線材の製造方法の他の実施例を説明するための製造装置における巻き取りボビンの作動を説明する概略構成図である。
図9】従来のプルトルージョン法を説明するための線材製造装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、本発明に係る扁平形状繊維強化プラスチック線材の製造方法と、その製造方法にて製造された繊維強化プラスチック線材、及びその線材を用いて製作された繊維強化シートについて、図面に即して詳しく説明する。
【0055】
実施例1
図1図4に、本発明に係る扁平形状繊維強化プラスチック線材を製造するための製造装置100(100A、100B)の一実施例を示す。また、図5に、本発明に従って作製された扁平形状の繊維強化プラスチック線材2の断面構造を示し、図6に、斯かる扁平形状繊維強化プラスチック線材2を使用したスダレ状繊維強化シート1の一実施例を示す。
【0056】
本実施例にて、製造装置100(100A、100B)は、繊維送給、樹脂含浸、巻取セクション100A(図1)と、繊維緊張、扁平成形、加熱硬化セクション100B(100B1、100B2)(図2)とにて構成される。
【0057】
図1は、製造装置100の繊維送給、樹脂含浸、巻取セクション100Aを示しており、図面上、左側から右側に複数本の強化繊維fから成る強化繊維ストランド(強化繊維束)f1が移動し、その間に撚り加工と樹脂含浸を行う。
【0058】
図2(a)、(b)は、製造装置100の繊維緊張、扁平成形、加熱硬化セクション100B(成形1次硬化セクション100B1、2次硬化セクション100B2)を示しており、図面上、左側から右側に撚り加工と樹脂含浸工程を施された強化繊維f2が移動し、所定の緊張下に扁平形状成形と樹脂硬化を行う。
【0059】
更に説明すると、図1に示す繊維送給、樹脂含浸、巻取セクション100Aでは、複数(通常、3〜18個)の、本実施例では図面を簡単とするために2つの繊維供給用の巻き出しボビン(筒状の糸巻き)11(11a、11b)が用意され、各ボビン11には、樹脂未含浸の強化繊維fを所定本数収束した強化繊維ストランド(強化繊維束)f1が巻回されている。
【0060】
各ボビン11に巻回された強化繊維束f1は、樹脂含浸槽17が配置された樹脂含浸工程へと連続的に送給される。同時に、強化繊維束f1には撚りが入れられる(強化繊維束供給、撚り加工工程)。
【0061】
つまり、樹脂含浸工程へと送給された強化繊維束f1は、樹脂含浸槽17にて樹脂含浸され、樹脂含浸された強化繊維束f2は、撚りを入れながら巻き取り用ボビン22(22a、22b)に巻き取られる(樹脂含浸、撚り加工工程)。
【0062】
図2(a)、(b)に示す繊維緊張、加熱硬化セクション100Bでは、樹脂含浸され、且つ、撚りが入れられた強化繊維束f2は、複数(通常、50〜300個)の、本実施例では図面を分かり易くするために図1に対応して2つとされるボビン22(22a、22b)から巻き出され、成形1次硬化セクション100B1の1次加熱硬化用加熱板装置27aへと導入され、加熱硬化(1次硬化)される。この時、樹脂含浸強化繊維束f2には、所定の緊張力が加えられた状態にて扁平形状成形と1次加熱硬化がなされる(強化繊維束緊張、扁平成形、1次加熱硬化工程)。扁平形状とされ且つ1次硬化された強化繊維束f3は、引き続いて2次硬化セクション100B2の2次加熱硬化炉27bへと導かれ、更に加熱硬化(2次硬化)される(2次加熱硬化工程)。加熱硬化(2次硬化)された強化繊維束、即ち、強化繊維プラスチック線材2は、巻き取り用のボビン30(30a、30b)に巻き取られる。
【0063】
次に、上記各工程を、更に詳しく説明する。
【0064】
(強化繊維束供給、撚り加工工程)
本実施例では、図4をも参照するとより良く理解されるように、繊維送給、樹脂含浸、巻取セクション100Aでは、ボビン11(11a、11b)は、巻き出し装置51に設けられた回転軸12(12a、12b)に取り付けられ、さらに、この回転軸12は、巻き出し装置の回転主軸13(13a、13b)に回転自在に取り付けられている。
【0065】
各ボビン11(11a、11b)は、駆動モータM及び歯車伝達機構Gにより、各ボビン11(11a、11b)の回転軸12(12a、12b)の回りに回転して、ボビン11(11a、11b)に巻回された強化繊維束f1を巻き出す。同時に、各ボビン11(11a、11b)は、それぞれ、上述のように、回転軸12(12a、12b)の回りに回転しながら、回転軸12(12a、12b)と共に回転主軸13(13a、13b)の回りに回転される。
【0066】
つまり、ボビン11は、回転軸12の回りに回転し、同時に回転主軸13の回りにも回転して、強化繊維束f1を巻き出す。
【0067】
ボビン11から巻き出された強化繊維束f1は、ガイド14に形成したガイド穴15(15a、15b)により案内され、入口ガイドロール16により樹脂含浸槽17内へと導入される。
【0068】
上記構成により、樹脂含浸槽17を設けた含浸工程へと供給される強化繊維束f1には撚りが入ったものが供給される。
【0069】
ボビン11の回転主軸13の回りの回転数と、強化繊維束f1の巻き出しスピードとを調節することにより、1m当たりに入れる撚り回数を制御することができる。
【0070】
本実施例によると、詳しくは後述するように、厚み(t)0.2mm〜5.0mm、幅(w)1.0mm〜10.0mmとされる扁平形状とされる前の繊維強化プラスチック線材の線径は、直径0.5mm〜8.0mmであることが好ましい。従って、含浸工程へと供給される強化繊維束f1は、例えば、強化繊維として炭素繊維を使用する場合には、線径6〜10μmの炭素繊維(フィラメント)fを3000〜320000本を収束した炭素繊維ストランド(炭素繊維束)f1を使用することとなる。
【0071】
また、強化繊維束f1の撚り回数は、5回/m〜20回/mであることが好ましい。詳しくは後述する。
【0072】
(樹脂含浸工程)
樹脂含浸槽17には、マトリックス樹脂Rが収容されており、含浸槽17の入口部には、上述のように、強化繊維束f1を案内する入口ガイドローラ16が配置されている。また、含浸槽17内には、含浸ローラ18が配置されており、含浸槽17の出口部には出口ガイドローラ対19が配置されている。
【0073】
入口ガイドローラ16は、強化繊維束f1に樹脂を含浸させる工程において、含浸槽17に供給される強化繊維束f1を構成する複数の繊維fを、含浸前に揃える役目である。
【0074】
含浸ローラ18は、強化繊維束f1を強制的に樹脂Rに浸ける役目で、含浸槽17に溜められた樹脂Rの中に、少なくとも下半分以上は浸かった状態で使用される。
【0075】
出口ガイドローラ対19(19a、19b)は、樹脂が含浸された強化繊維束f2をしごく役目で、ここで樹脂付着量が制御される。
【0076】
つまり、上下のローラ19a、19bの押し付け圧力を制御することにより、強化繊維束f2に含浸される樹脂量が制御される。
【0077】
本実施例では、強化繊維fに対するマトリックス樹脂の含浸量は、体積比率(Vf)で36%〜60%であることが好ましい。詳しくは後述する。
【0078】
樹脂含浸された強化繊維束f2は、ガイド20に形成したガイド穴21(21a、21b)により案内され、巻き取り装置52における巻き取りボビン22(22a、22b)により巻き取られる。
【0079】
各巻き取りボビン22は、それぞれ、回転軸23(23a、23b)の回りに回転駆動されている。
【0080】
樹脂含浸された強化繊維束f2を巻きつけたボビン22は、取り外され、図2に示す緊張、扁平成形、加熱硬化セクション100Bにおける成形、加熱硬化工程へと供給される。
【0081】
(緊張、扁平成形、加熱硬化工程)
図2(a)、(b)を参照すると、緊張、扁平成形、加熱硬化セクション(以下の説明では、単に「成形硬化セクション」と記載することもある。)100Bでは、上記巻き取り装置52にて樹脂含浸強化繊維束f2を巻き取ったボビン22(22a、22b)が、巻き出し装置53の回転軸24(24a、24b)に設置される。即ち、巻き取りボビン22は、緊張、扁平成形、硬化工程における巻き出しボビンとして機能する。
【0082】
巻き出しボビン22に巻かれた樹脂含浸した、撚り加工済みの未硬化強化繊維束f2は、ボビン22を回転軸24(24a、24b)の回りに回転させることにより巻き出される。強化繊維束f2は、ガイド25を通って成形硬化セクション100Bを通され、巻き取り装置54の巻き取りボビン30(30a、30b)に巻き取られる。
【0083】
成形硬化セクション100Bは、樹脂含浸、撚り加工済みの未硬化強化繊維束f2を扁平形状に成形すると同時に1次硬化(半硬化)するための加熱板装置27aを備えた成形1次硬化セクション100B1と、扁平形状に成形され且つ半硬化された強化繊維束f3を2次硬化するための硬化炉27bを備えた2次加熱硬化セクション100B2とにて構成される。
【0084】
更に説明すると、この巻き出し装置53には、電磁ブレーキ等の機能が付与されており、ボビン22から巻き出される未硬化樹脂含浸強化繊維束f2に適切な緊張力を与えることができる。
【0085】
つまり、巻き出し装置53と加熱板装置27aとの間で、撚りが入れられた、且つ、未硬化樹脂含浸の強化繊維束f2に適切な緊張力を与えることにより、束となっている強化繊維fを一様に緊張し、強化繊維束f2の横断面形状を円形断面、即ち、丸形状とすることができる。
【0086】
尚、本願明細書、特許請求の範囲にて、「円形」とは、断面における縦方向、横方向における直径比が1.0〜1.5の範囲内とされる「略円形」をも含めて意味するものとする。
【0087】
このように、本実施例によれば、巻き出しボビン22に電磁ブレーキをかけつつ、未硬化強化繊維束f2を巻き出し、加熱板装置27a及び硬化炉27bを通して、巻き取りボビン30との間で、適切な緊張力をかけながら、加熱板装置27aにて扁平形状へと成形し、且つ1次硬化(半硬化)させ、次いで、加熱硬化炉27bにて樹脂を完全に硬化させる。
【0088】
本実施例にて、緊張力としては、樹脂含浸された強化繊維束f2に500g/本〜3000g/本の強さを付与するのが好ましい。
【0089】
巻き出しボビン22から巻き出される撚り加工済みの、且つ、未硬化の樹脂含浸強化繊維f2は、ガイド25に形成したガイド穴26(26a、26b)により案内され、加熱板装置27a、加熱硬化炉27bへと連続的に供給される。
【0090】
各巻き出しボビン22は、それぞれ、回転軸24(24a、24b)の回りに回転駆動される。
【0091】
本実施例にて、加熱板装置27aは、図3に示す構造とされる。
【0092】
つまり、加熱板装置27aは、本実施例では、上下方向に対称配置され、且つ、互いに平行にしかも本実施例では水平に配置された2枚の第1及び第2加熱板27a1、27a2とを備えている。各加熱板27a1、27a2は、それぞれ、互いに対向する内側面を構成する、通常、例えば、鋼、ステンレススチールなどの金属製とされる成形用平板27a3、27a4と、成形用平板27a3、27a4の外側に一体に設けられたパネルヒータ(熱源)27a5、27a6を備えている。
【0093】
各加熱板27a1、27a2は、互いに対向する内側面間に挿入される丸形状線材を厚み(t)、幅(w)の扁平形状の線材へと成形するために、少なくとも幅方向(加熱板装置27a内へと挿入される線材の移動方向に対して直交する方向)両側に厚み調整用シム板27a7が配置され、所定の距離(t1、ここで、t1>t)だけ離間されている。
【0094】
図示するように、各加熱板27a1、27a2は、厚み調整用シム板27a7を挟持して上下加熱板締付金具270にて一体とされる。即ち、上下加熱板締付金具270は、第1加熱板27a1の外側(図3にて上側)に位置した水平金具271と、第2加熱板27a2の外側(図3にて下側)に位置した水平金具272とを備えている。水平金具271、272は、幅方向において、第1、第2加熱板27a1、27a2の幅(W27a)より大とされ、両側へと突出している。水平金具271、272は、この突出した部分を利用して、ボルト273が貫通して配置され、ナット274にて締め付けることにより、各加熱板27a1、27a2及び厚み調整用シム板27a7を挟持して一体に保持する。図3では、上下加熱板締付金具270は、加熱板装置27aの長さL27aに沿って一つだけ図示されているが、加熱板装置27aの長さL27aに応じて適当数、例えば、2〜4個程度配置される。
【0095】
上述のように、本発明によれば、型が平板であることから上下間の隙間を調整することにより一型で種々の厚みの形状を作り出すことができる。
【0096】
また、丸形状線材を扁平形状線材に成形する型が、平板形状であることから、型が薄くでき、狭い範囲で、2段、3段に上下に設置でき、一度に成形できる線材本数を増やすことができ効率的である。実際上、同時成形できる線材の本数は、従来の30本以上は可能であり、100〜300本程度は何ら問題ない。
【0097】
また、単に平板形状型内に樹脂を含浸した丸形状繊維束を引き込むだけでよいこと、及び、その上下に離型用の薄い布で保護され、金属の型と樹脂含浸の繊維束とが直接触れないことから、樹脂含浸の繊維束へのダメージが少なく、製造中の糸切れの頻度が殆どなく、大幅に成形歩留まりを上げることができることが分かった。
【0098】
一方、加熱硬化炉27bは、入口と出口以外、基本的には閉構造となっており、内部にヒーター機能、若しくは、熱風循環機能等を持ち、加熱板装置27aから送給される半硬化強化繊維f3を加熱できるようになっている。
【0099】
ここで、本発明によれば、図2(b)、図3をも参照すると理解されるように、加熱板装置27aは、上下方向に対称配置された第1及び第2加熱板27a1、27a2の内側を、加熱板装置27a内へと挿入される線材の移動方向(即ち、加熱板装置27aの長さL27aの方向)に沿って上面ピールプライ63及び下面ピールプライ64が配置される。同様に、2次硬化炉27bにおいても、硬化炉27b内へと挿入される線材の移動方向(即ち、硬化炉27bの長さL27bの方向)に沿って上面ピールプライ63及び下面ピールプライ64が配置される。
【0100】
本実施例では、上面ピールプライ63及び下面ピールプライ64は、図2(a)、(b)に示すように、加熱板装置27aの入口側から2次硬化炉27bの出口側へと貫通して配置されている。つまり、上面ピールプライ63及び下面ピールプライ64は、それぞれ、加熱板装置27aの入口側に配置された巻き出しリール61a、62aから巻き出され、2次硬化炉27bの出口側に配置された巻取りリール61b、62bに巻き取られる。
【0101】
上面ピールプライ63及び下面ピールプライ64は、成形硬化セクション100B、即ち、成形1次硬化セクション100B1(即ち、加熱板装置27a内)及び2次硬化セクション100B2(即ち、2次硬化炉27b内)において、成形硬化セクション100Bを移動する線材を上下にて挟持する態様で配置されている。
【0102】
従って、巻き出し装置53から巻き出された撚り加工済みの未硬化樹脂含浸強化繊維f2は、上面ピールプライ63及び下面ピールプライ64にて上下方向から挟持された態様にて成形1次硬化セクション100B1(即ち、加熱板装置27a内)を移動され、丸形状から扁平形状への成形及び半硬化の加熱硬化が行われる。引き続いて、2次硬化セクション100B2(即ち、2次硬化炉27b内)へと導入され更なる加熱硬化が行われる。
【0103】
通常、成形硬化セクション100Bを移動する強化繊維束の移動速度は0.3〜2.0m/分とされ、また、加熱板装置27a内の温度は、120〜140℃、2次硬化炉27b内の温度は、130〜150℃とされる。
【0104】
成形硬化セクション100Bを移動する強化繊維束の移動速度、並びに、加熱板装置27a内の温度及び2次硬化炉27b内の温度は、含浸されている樹脂の種類によって決められる。
【0105】
加熱板装置27a、硬化炉27bの長さ(L27a、L27b)を長くすることにより、繊維強化プラスチック線材の製造スピードが上げられ、後で述べる金型を用いた方式より高生産性を達成することができる。
【0106】
上記上面ピールプライ63及び下面ピールプライ64は、強化繊維束に含浸された樹脂との離型性を持った高密度織物とされる。
【0107】
本発明において、「高密度織物」とは、加熱板装置内に強化繊維束を引き込み、通過させる際、強化繊維束を傷つけないように、金型との間の緩衝材として働き、強化繊維束を守る役目と、2次硬化炉内で一方向に撚りを入れられた扁平形状の製品が捻じれないように拘束し、出側の巻き取り装置に捻じれのない扁平ストランドを供給する役目、及び高密度織物を剥いだ後、扁平ストランドの表面に、微小な凹凸を発生させ、構造物に貼り付けて補強する時、若しくは、樹脂の中に入れて補強材として使用する時、樹脂との付着性を大きく向上させる役目を持っている。
【0108】
そのためには、樹脂との離型性をある程度持っていることは、勿論であるが、織物の折り目の間で入り込まないように、緻密な織り構造であることが必要である。そのためには、インチ長さ間の縦糸、緯糸の合計本数が210本以上投入された、高密度の織物が必須となる。例えば、縦糸×緯糸(50D×75D、75D×75D、84D×84Dなど)をインチ長さ間で投入本数が合計210本以上となるように配置された高密度織物である。
【0109】
このような役目を果たすものとして、離型フィルムも考えられるが、離型フィルムは剥がれやすくするために、離型剤が必要となったり、フィルムを剥いだ後、表面が円滑で樹脂との付着性が十分でないという問題があり、あまり推薦できない。
【0110】
本実施例にて、高密度織物は、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、などの連続フィラメント糸の単独織物、若しくは、混合織物のいずれかとされる。
【0111】
上述のように、高密度織物は、インチ長さ間の縦糸、緯糸が合計210本以上、通常400本以下、配置された織物であり、平織物であるのが好ましい。また、インチ長さ間の縦糸、緯糸の合計が210本未満であると、剥がれ難いといった問題がある。また、400本を越えると高価となるといった問題がある。また、本実施例にて、織物の厚みt2は、0.1〜0.3mmとされ、通常0.15〜0.2mmの厚みが好適である。
【0112】
上記説明した本発明に従った製造方法によれば、次のような利点がある。
【0113】
先ず、扁平形状の繊維強化プラスチック線材を丸形状線材と同様に引き抜き成形で作る場合は、金型上の制約があり、穴数の限界で製造本数の制約がある。また、マトリックス樹脂のくっ付き防止のため、離型剤の使用が必須となり、成形後の製品と後で接着させる樹脂やコンクリートとの接着がうまく行かないという問題が発生していた。
【0114】
つまり、品質面において、本発明の方法は、従来の引き抜き成形における金型方式と違って離型剤を使用しないため、出来上がった繊維強化プラスチック線材と接着剤との接着力が良く、繊維強化プラスチック線材の表面の目粗し等の処理が不要になり、線材表面に疵を付ける危険も無く、品質面、コスト面で優れている。
【0115】
また、本発明者らの研究実験の結果によると、扁平形状の線材は、樹脂含浸した複数本の繊維(繊維束)に撚りを入れ、一定張力で引っ張り、丸形状にした後、平板形状の型(金型)で一定厚みに成形しないと、均一に近い幅で製作できないことが分かった。つまり、扁平にする前の形状がランダムな形状では、一定板厚(t)で、均一に近い幅(w)での成形はできない。
【0116】
更に、本発明者らは、丸形状を扁平形状とするために平板形状の型(金型)を使用し、平板形状型と扁平な製品との離型は、離型剤を使用するのではなく、接着剤と接着しない薄い布(ポリエステル系の織物とされるピールプライ)を、成形する上下面に連続して挿入し、硬化後、剥ぎ取ることで対応し得ることが分かった。この方法は、引き抜き成形では、形状を持った金型のため皺が発生し、採用が困難であった。
【0117】
また、丸形状を扁平形状に成型する型が、平板形状であることから、型が薄くでき、狭い範囲で、2段、3段に上下に設置することもでき、一度に成形できる本数を増やすことが可能であり、効率的である。上述のように、最大300本程度までは可能である。
【0118】
一方、型が平板であることから上下間の隙間を調整することにより1つの型で種々の厚みの形状のものを作り出すことができる。
【0119】
つまり、本実施例の方式では、加熱板装置27a及び硬化炉27bの内断面積の全体を使用して樹脂含浸強化繊維を配置し、通すことができ、限られた容積内で、一度に製造できる本数が、従来の引き抜き成形のような金型方式に比較し格段に多く、非常に効率のよい製造方法となっている。
【0120】
また、本実施例の方式では、丸形状線材を成形するには、強化繊維にある一定以上の撚りをいれた樹脂含浸した強化繊維に、適切な緊張力を付与することにより達成することができる。また、本実施例の方式では、樹脂含浸の丸形状繊維束を単に平板形状型内に引き込むだけでよいこと、及び、その上下に離型用の薄い布(高密度織物)で保護され、金属の型と樹脂含浸の繊維束とが直接触れないことから、樹脂含浸の繊維束へのダメージが少なく、製造中の糸切れの頻度が殆どなく、大幅に成形歩留まりを上げ得ることが分かった。
【0121】
(繊維強化プラスチック線材)
次に、図5を用いて、本製造法で製造された繊維強化プラスチック線材2について説明する。
【0122】
図5に、本実施例の製造法で製造された繊維強化プラスチック線材2の断面を示す。繊維強化プラスチック線材2は、横断面形状が扁平形状、即ち、矩形状とされ、複数本の強化繊維fにマトリックス樹脂Rが含浸されている。
【0123】
本実施例の製造法で製造される繊維強化プラスチック線材2には、撚りが1m当り5回から20回の範囲のいずれかで入れられている。5回/m未満であると樹脂硬化前にテンションをいれても安定した円形状(丸形状)を確保するのが難しく、撚りが20回/mを越えると扁平の形状の成形が難しくなり、20回/mを越えることは好ましくない。特に、撚りは、10回/mから15回/mの範囲が最適である。
【0124】
又、この繊維強化プラスチック線材2を構成する強化繊維fとマトリックス樹脂Rとの比率は、マトリックス樹脂の体積比率(Vf)で、36%から60%の範囲が使用可能である。36%未満であると樹脂が不足し、製造後の繊維強化プラスチック線材2の強度等の物性が低下する。一方、60%を越えると過剰となり、樹脂硬化時に樹脂ダレが発生し丸形状を確保するのが難しくなる。特に、マトリックス樹脂の体積比率は、40%から50%の範囲が最適である。
【0125】
さらに、マトリックッス樹脂を硬化させる際にいれるテンション(緊張)力に関しては繊維束(ストランド)f1に対し500g/本から3000g/本が妥当である。500g/本未満だと、丸形状を確保するのが難しくなり、3000g/本を越えると製造途中で強化繊維fが破断するというトラブルが発生し、安定した製造ができなくなるという問題がでてくる。テンション力は、特に、1000g/本から2000g/本の範囲が最適である。
【0126】
本実施例の製造法で製造される扁平形状繊維強化プラスチック線材2は、厚み(t)0.2mm〜5.0mm、幅(w)1.0mm〜10.0mm、が妥当である。厚み(t)が0.2mm未満であると、製造時に強化繊維fの破断が頻発する。一方、厚み(t)が5.0mmを超えると、樹脂含浸強化繊維f2を巻き取る際に、繊維fの腰折れが発生し、硬化後の繊維強化プラスチック線材2の強度等の物性低下が著しくなる。繊維強化プラスチック線材2は、特に、厚み(t)0.4mm〜1.5mm、幅(w)1.2mm〜4.5mm、が好適である。
【0127】
一方、本実施例の製造法においては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、PBO(ポリフェニレンベンズビスオキサゾール)繊維、ポリエステル繊維が使用可能であるが、中でも炭素繊維が好適に使用される。電気絶縁を要するマーケット、金属との電気腐食のあるマーケット等の特殊用途向けに他の繊維が使用される。
【0128】
又、本実施例の製造法においては、エポキシ樹脂、ビニールエステル樹脂、MMA樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂が使用可能であるが、中でもエポキシ樹脂が好適に使用される。高温で使用されるマーケット、特殊耐食性の要求されるマーケット等の特殊用途向けに他の樹脂が用いられる。
【0129】
(実験例)
次に、本実施例の扁平形状繊維強化プラッスチック線材2の製造法について更に具体的に実験例について説明する。
【0130】
実験例1
本実験例では、図1図4の装置を用いて、基本製品として、下記の態様にて扁平形状繊維強化プラスチック線材2を製造した。
【0131】
強化繊維fは、平均径7μm、収束本数15000本のPAN系炭素繊維ストランド(炭素繊維束f1)(三菱レイヨン株式会社製「TR50」(商品名))を用い、マトリックス樹脂Rとして、120℃硬化のエポキシ樹脂(三井化学株式会社製「エポミックR140P」(商品名))を使用した。
【0132】
本実験例にて、撚り回数は10回/mとし、樹脂含浸量として、樹脂体積比率(Vf)45%で樹脂未硬化の樹脂含浸ストランド(炭素繊維束f2)を製造した。加熱板装置27aの両加熱板間隔(t1)は0.8mmとし、ストランド走行方向長さ(L27a)は、1.5m、幅(W27a)は、300mm、とした。加熱板27a1、27a2の温度は、120℃とした。
【0133】
2次加熱炉27bは、幅(W27b)400mm、長さ(L27b)10m、硬化炉内温度140℃であった。
【0134】
樹脂含浸ストランドf2は、テンション力2000g/本が付加され、上面、下面ピールプライ63、64の間に挟持されて、加熱板装置27a及び硬化炉27b内を移動速度5mm/secにて移動された。
【0135】
本実験例では、上面、下面ピールプライ63、64としては、エアーテック社製の高密度織物である「Release Ply F」(商品名)を使用した。この高密度織物の仕様は以下の通りであった。
【0136】
高密度織物
繊維 ポリエステル繊維
目付け 95g/m2
縦糸、緯糸の合計:230本/インチ間
厚さ(t2) 0.15mm
【0137】
上記構成にて、樹脂含浸ストランドf2は、加熱板装置27aにて断面が矩形状に成形された1次硬化(半硬化)状態のストランドf3とされ、その後、2次硬化炉27b内にて完全に硬化された繊維強化プラスチック線材2が得られた。繊維強化プラスチック線材2は、2次硬化炉27bの出口にて、上面、下面ピールプライ63、64から極めて円滑に、何ら問題なく剥離された。
【0138】
このようにして得た繊維強化プラスチック線材2は、厚さ(t)0.6mm、幅(w)1.7mmの扁平形状の断面を有していた。
【0139】
比較材として、撚り回数3回/m、5回/m、20回/m、30回/mを入れたものを、他の製造条件は、上記基本製品と同様にして製造した。
【0140】
これら繊維強化プラスチック線材を、それぞれ、断面形状について比較した。結果を表1に示す。
【0141】
【表1】
【0142】
上記の表から分かるように、撚り回数5回/m未満だと、幅変動が基準幅±20%を超え、ストランドシートとして使用する際、ストランド間の隙間を大きくとる必要があり、繊維含有量を増やす目的を達成することが難しくなる。
【0143】
一方、撚り回数20回/mを超え始めると、製品の厚みが、金型のセット厚みから、乖離を始め、制御が利かなくなり、目標の厚みを得ることが難しくなる。これは、2次硬化の際、高温のため樹脂が柔らかく、撚りにより繊維がふくらみ厚みが戻ることに起因すると思われる。
【0144】
次に、撚り回数10回/mを固定して、樹脂含浸量をそれぞれ、樹脂体積比率で45%、36%、30%、60%、65%に変更したものを、他の製造条件は、本実験例の上記基本製品と同じで製造した。
【0145】
これら繊維強化プラスチック線材を、それぞれ、断面形状について比較し、また、製品の引張試験を実施して比較した。結果を表2に示す。
【0146】
【表2】
【0147】
上記の表から分かるように、樹脂含浸量が36%未満になると、樹脂不足から表面にカサツキが多発し、強度低下が起こり、また樹脂含浸量60%を超えると、樹脂量が増え、樹脂流れが大きくなり、製品幅が変動し、形状の確保が難しくなることが分かる。
【0148】
なお、高密度織物に付着する樹脂量を測定した結果、ストランド1本に含まれる樹脂量の約10%から15%が付着し、結果、硬化したストランドはその分樹脂含有率が低くなることが分かった。
【0149】
次に、撚り回数10回/m、樹脂含浸量45%で固定し、樹脂硬化時のテンション力を2000g/本、400g/本、500g/本、3000g/本、3500g/本に変更したものを、他の製造条件は、本実験例の上記基本製品と同じで製造した。
【0150】
これら繊維強化プラスチック線材を、それぞれ、断面形状について比較し、また、製品の引張試験を実施して比較した。結果を表3に示す。
【0151】
【表3】
【0152】
上記の表から分かるように、テンション力が500g/本未満になると、幅変動が基準幅の±20%を超えた状態となり、一定厚み内で繊維含有率を上げる目的から外れ、扁平ストランドとしての役目を果たさなくなる。テンション力3000g/本を超えると、製造時に炭素繊維の破断が発生し、製造が難しくなると同時に、製品の強度低下が著しくなることが分かる。
【0153】
実施例2
次に、図7及び図8を参照して、本発明に係る繊維強化プラスチック線材の他の製造方法及び製造装置について説明する。
【0154】
本実施例の製造装置は、実施例1の製造装置100と同様の構成とされ、繊維送給、樹脂含浸、巻取セクション100Aと、繊維緊張、扁平成形、加熱硬化セクション100Bとを有している。
【0155】
ただ、本実施例にて、繊維送給、樹脂含浸、巻取セクション100Aは、図7及び図8に示すように、繊維に対する撚り加工を樹脂含浸後において実施している点でのみ、実施例1の製造装置100と異なっている。従って、実施例1と同じ構成及び同じ機能をなす部材には、同じ参照番号を付し、詳しい説明は省略する。
【0156】
また、本実施例における製造装置100の繊維緊張、扁平成形、加熱硬化セクション100Bは、実施例1の製造装置100と同様とされるので、実施例1の説明を援用し、本実施例での説明は省略する。
【0157】
図7は、本実施例における製造装置100の繊維送給、樹脂含浸、巻取セクション100Aを示しており、図面上、左側から右側に複数本の強化繊維fから成る強化繊維ストランド(強化繊維束)f1が移動し、その間に樹脂含浸と撚り加工とを行う。
【0158】
つまり、図7を参照すると、本実施例の繊維送給、樹脂含浸、巻取セクション100Aにおいては、巻き出し装置51に、複数の強化繊維供給用の巻き出しボビン(筒状の糸巻き)11(11a、11b)が用意され、各ボビン11には、樹脂未含浸の強化繊維fを所定本数収束した強化繊維ストランド(強化繊維束)f1が巻回されている。
【0159】
各ボビン11に巻回された強化繊維束f1は、ガイド14のガイド穴15a、15bにガイドされて、樹脂含浸工程へと連続的に送給される(強化繊維束供給工程)。
【0160】
樹脂含浸工程へと送給された強化繊維束f1は、樹脂含浸槽17にて樹脂含浸される。
樹脂含浸工程の構成及びその作業内容は、実施例1と同様である。
【0161】
樹脂含浸された強化繊維束f2は、巻き取り装置52における巻き取り用ボビン22(22a、22b)に巻き取られる。
【0162】
この時、巻き取りボビン22(22a、22b)は、図8をも参照するとより良く理解されるように、巻き取り装置52に設けられた回転軸23(23a、23b)に取り付けられ、さらに、この回転軸23は、巻き取り装置52の回転主軸32(32a、32b)に回転自在に取り付けられている。
【0163】
各ボビン22は、駆動モータM及び歯車伝達機構Gにより、各ボビン22の回転軸23の回りに回転して、樹脂含浸された強化繊維束f2を巻き取る。同時に、各ボビン22(22a、22b)は、それぞれ、上述のように、回転軸23(23a、23b)の回りに回転しながら、回転軸23(23a、23b)と共に回転主軸32(32a、32b)の回りに回転される。
【0164】
つまり、ボビン22は、回転軸23の回りに回転し、同時に回転主軸32の回りにも回転して、強化繊維束f2を巻き取る。
【0165】
従って、樹脂含浸槽17から、出口ガイドローラ対19(19a、19b)及びガイド20に形成したガイド穴21(21a、21b)により案内され、ボビン22により巻き取られた強化繊維束f2には、撚り加工が施される。
【0166】
ボビン22の回転主軸32の回りの回転数と、強化繊維束f2の巻き取りスピードとを調節することにより、1m当たりに入れる撚り回数を制御することができる。
【0167】
本実施例によると、実施例1と同様に、丸形状の繊維強化プラスチック線材の線径は、直径0.5mm〜8.0mmであることが好ましい。従って、含浸工程へと供給される強化繊維束f1は、例えば、強化繊維として炭素繊維を使用する場合には、線径6〜10μmの炭素繊維(フィラメント)fを3000〜320000本を収束した炭素繊維ストランド(炭素繊維束)f1を使用することとなる。
【0168】
また、強化繊維束f1の撚り回数は、5回/m〜20回/mであることが好ましい。
【0169】
樹脂含浸された強化繊維束f2を巻きつけたボビン22は、取り外され、次工程の加熱、硬化工程に供給される。
【0170】
本実施例においても、実施例1と同様の構成とされる、図2(a)、(b)、図3に示す繊維緊張、扁平成形、加熱硬化セクション100Bが使用される。
【0171】
つまり、図2を参照すると、上記樹脂含浸工程にて樹脂含浸強化繊維束f2を巻き取ったボビン22(22a、22b)が、巻き出し装置53の回転軸24(24a、24b)に設置される。即ち、巻き取りボビン22は、緊張、扁平成形、加熱硬化工程における巻き出しボビンとして機能する。
【0172】
巻き出しボビン22に巻かれた樹脂含浸した未硬化強化繊維束f2は、ボビン22を回転軸24(24a、24b)の回りに回転させることにより巻き出される。強化繊維束f2は、加熱板装置27a、加熱硬化炉27bを通され、巻き取りボビン30(30a、30b)に巻き取られる。
【0173】
本実施例においても、実施例1と同様にして、樹脂含浸され、撚り加工が施された強化繊維束f2は、ボビン22から巻き出され、加熱板装置27aにて扁平形状に成形され、1次硬化される。次いで、加熱硬化炉27bへと導入され、加熱硬化(2次硬化)される(強化繊維束緊張、扁平成形、加熱硬化工程)。加熱硬化(2次硬化)された強化繊維束、即ち、強化繊維プラスチック線材2は、巻き取り用ボビン30に巻き取られる。
【0174】
実施例1の製造方法と、本実施例の製造方法とを比較すると、両実施例の製造方法の違いは、実施例1の製造方法によると、繊維送給、樹脂含浸、巻取セクション100Aと、繊維緊張、加熱硬化セクション100Bとを接続して製造工程を連続化することが可能である。これに対して、本実施例の製造方法によると、製造工程の連続化が難しい。
【0175】
一方、実施例1の製造方法では、厚み(t)1.0mm、幅(w)3.3mmを超えるような大きい扁平(矩形断面)形状の繊維強化プラスチック線材を製造する際、撚りを入れた後樹脂含浸すると、強化繊維束f1の内部まで充分に樹脂が含浸するのが難しくなるという問題がある。
【0176】
従って、実施例1、2の製造方法は、製造する品種により使い分けるのが妥当である。
【0177】
(実験例)
次に、本実施例の繊維強化プラッスチック線材2の製造法について更に具体的に実験例について説明する。
【0178】
実験例2
本実験例では、図7図8図2及び図3の装置を用いて繊維強化プラスチック線材2を製造した。
【0179】
実施例1で説明した実験例1と同様に、強化繊維fは、平均径7μm、収束本数15000本のPAN系炭素繊維ストランド(炭素繊維束f1)(三菱レイヨン株式会社製「TR50」(商品名))を用い、マトリックス樹脂Rとして、120℃硬化のエポキシ樹脂(三井化学株式会社製「エポミックR140P」(商品名))を使用した。
【0180】
又、撚り回数は10回/m、樹脂含浸量は樹脂体積比率45%、扁平成形、樹脂硬化時のテンション力2000g/本、加熱板装置27aの温度120℃、硬化炉27bの炉内温度140℃、上下面ピールプライ63、64及び繊維束f2、f3などの移動速度5mm/sec、で繊維強化プラスチック線材2を製造した。
【0181】
尚、加熱板装置27a、硬化炉27b等の製造装置100の構成は、実験例1と同じとした。
【0182】
その結果、製品の断面形状は、実施例1の実験例1の基本となる製造方法で製造された繊維強化プラスチック線材とほぼ同一で、製品の破断荷重も表4に示すように、ほとんど実験例1のものと同じであった。
【0183】
このことから、繊維強化プラスチック線材2を製造する方法として、実験例1、2で製造される製品に差がないことが分かった。
【0184】
【表4】
【0185】
実施例3
次に、図6を参照して、上記実施例1、2にて作製された繊維強化プラスチック線材2を使用した繊維強化シートの一実施例について説明する。
【0186】
図6に、本発明の繊維強化シート1の一実施例を示す。繊維強化シート1は、上記実施例1、2にて作製した、連続した扁平形状繊維強化プラスチック線材2を複数本、長手方向にスダレ状に引き揃え、各線材2を互いに固定用繊維材3にて固定される。
【0187】
繊維強化プラスチック線材2は、一方向に配向された多数本の連続した強化繊維fにマトリクス樹脂Rが含浸され硬化された横断面が扁平形状とされる細長形状のものであり、弾性を有している。従って、斯かる弾性の繊維強化プラスチック線材2をスダレ状に、即ち、線材2が互いに近接離間して引き揃えられたシート形状とされる繊維強化シート1は、その長手方向に弾性を有している。そのために、例えば、繊維強化シート1は、搬送時には、所定半径にて巻き込んだ状態にて持ち運びが可能であり、極めて可搬性に富んでいる。また、繊維強化シート1は、繊維強化プラスチック線材2にて構成されているために、搬送時に、従来の未含浸強化繊維シートのように、強化繊維の配向が乱れたり、また、緊張力導入時に、強化繊維の配向乱れに起因した糸切れを生じるといった心配は全くない。
【0188】
上述のように、本実施例で使用する繊維強化プラスチック線材2は、横断面にて厚み(t)0.2mm〜5.0mm、幅(w)1.0mm〜10.0mmの横断面が扁平形状(即ち、矩形状)(図5)とされる。
【0189】
上述のように、一方向に引き揃えスダレ状とされた繊維強化シート1において、各線材2は、互いに空隙(g)=0.1〜20.0mmだけ近接離間して、固定用繊維材3にて固定される。また、このようにして形成された繊維強化シート1の長さ(L)及び幅(W)は、補強される構造物の寸法、形状に応じて適宜決定されるが、取扱い上の問題から、一般に、全幅(W)は、100〜500mmとされる。又、長さ(L)は、100m以上のものを製造し得るが、使用時においては、適宜切断して使用される。
【0190】
又、各線材2を固定用繊維材3にて固定する方法としては、図6に示すように、例えば、固定用繊維材3として横糸を使用し、一方向にスダレ状に配列された複数本の線材2から成るシート形態とされる線材、即ち、連続した線材シートを、線材に対して直交して一定の間隔(P)にて打ち込み、編み付ける方法を採用し得る。横糸3の打ち込み間隔(P)は、特に制限されないが、作製された繊維強化シート1の取り扱い性を考慮して、通常1〜15cm間隔の範囲で選定される。
【0191】
このとき、横糸3は、例えば直径2〜50μmのガラス繊維或いは有機繊維を複数本束ねた糸条とされる。又、有機繊維としては、ナイロン、ビニロンなどが好適に使用される。
【0192】
次に、本発明の繊維強化シートの実験例について説明する。
【0193】
実験例3
本発明のシート状補強材である繊維強化シート1を使用して、緊張接着工法に従ってコンクリート梁を補強した。
【0194】
本実験例では、図6を参照して説明した構成の繊維強化シート1を使用した。
【0195】
繊維強化シート1における繊維強化プラスチック線材2は、実験例1、2にて作製した繊維強化プラスチック線材2を使用した。線材2は、厚み(t)0.6mm、幅(w)1.7mmの扁平断面を有していた。
【0196】
このようにして得た繊維強化プラスチック線材2を、一方向に引き揃えてスダレ状に配置し、各線材2を互いに空隙(g)だけ近接離間して、固定用繊維材3にて固定した。
【0197】
このようにして作製した繊維強化シート1は、幅(W)が200mm、長さ(L)が100mであった。各線材2間の間隙(g)は、0.4〜0.5mmであった。実験では、繊維強化シート1の長さは500cmに切断して使用した。
【0198】
次に、上記繊維強化シート1を使用してコンクリート梁を緊張接着工法により、次のようにして補強した。
【0199】
先ず、本実験例では、繊維強化シート1をコンクリート梁に接着するに先立って、繊維強化シート1に緊張力100000Nを導入した。緊張力導入時に、何ら糸切れを発生することがなく、炭素繊維の破断強度近くまで充分な緊張力を導入することができた。
【0200】
繊維強化シート1が緊張状態に維持された状態にて、コンクリート梁シート貼着面に対面した側から繊維強化シート1にマトリクス樹脂を塗布し、次いで、繊維強化シート1をコンクリート梁貼着面に接着した。この時、接着力を上げるため繊維強化シート回り全体をバグフィルムで覆い、真空ポンプでバグフィルム内の空気を抜き、真空圧で梁に押し付けながら接着した。繊維強化シート1の貼着面に、何らボイドを発生することなく、コンクリート梁に極めて良好に接着することができた。
【0201】
上記実験例3では、コンクリート構造物の補強に関して説明したが、本発明の繊維強化シート1は、鋼構造物の補強に際しても同様に適用することでき、同様の作用効果を達成し得る。
【0202】
また、本発明の繊維強化シート1は、上記実験例で説明した緊張接着工法以外の、単に、構造物に接着して補強する補強工法に、更には、ガラス繊維等の繊維強化プラスチック構造物内に埋入して補強する方法にも好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0203】
1 繊維強化シート
2 扁平形状繊維強化プラスチック線材
3 固定用繊維材
11 巻き出しボビン
17 樹脂含浸槽
22 巻き取りボビン(巻き出しボビン)
27a 加熱板装置
27a1、27a2 第1及び第2加熱板
27a3、27a4 成形用平板
27a5、27a6 パネルヒータ(熱源)
27b 加熱硬化炉
32 巻き取りボビン
63 上面ピールプライ(高密度織物)
64 下面ピールプライ(高密度織物)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9