【実施例】
【0055】
本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0056】
[
実施例1]クロストリディウム・ヒストリティカム由来のコラゲナーゼGのカルボキシル末端にヒスチジンタグを連結した融合コラゲナーゼ(融合コラゲナーゼG)の発現
(1−1)コラゲナーゼG遺伝子断片の調製
クロストリディウム・ヒストリティカム由来のコラゲナーゼG遺伝子の5’側末端から3’側末端までを、クロストリディウム・ヒストリティカム由来のゲノムDNAを鋳型にしたPCRにより増幅した。この際、増幅されたコラゲナーゼG遺伝子の3’側末端が
XbaI認識配列となり、さらに、本遺伝子のストップコドンに続いて
BamHI認識配列が付加されるプライマーを設計した。その結果、非特許文献1に記載の天然のコラゲナーゼGのカルボキシル末端アミノ酸配列の2箇所に変異(配列番号:1の1007番目と1008番目のアミノ酸)が導入され、配列番号:2に記載のアミノ酸配列に改変された。
【0057】
本PCRに使用したプライマーは以下の通りである。
colG-F:
ATGAAAAAAAATATTTTAAAGATTC(配列番号:9)
colG-R:
CCGGATCCTATCTAGATACCCTTAACT(配列番号:10)
増幅されたコラゲナーゼG遺伝子断片は、
BamHIにより消化した。
【0058】
(1−2)ヒスチジンタグをコードする領域を含んだDNA断片の調製
6個の連続したヒスチジン残基からなるヒスチジンタグをコードするDNAを調製するために、市販のベクターであるpET−24a(+)を鋳型としたPCRを実施し、ヒスチジンタグをコードするDNAを増幅した。また、本DNA断片には、ヒスチジンタグをコードするDNAに加えて本ベクターに由来するマルチクローニングサイト、T7ターミネーターに対応する遺伝子断片も含まれるようにした。本増幅DNA断片の5’側末端に
XbaI及び3’側末端に
BamHI認識配列を含む形でプライマーを設計した。
【0059】
本PCRに使用したプライマーは以下の通りである。
His-F:
GCTCTAGAAAGCTTGCGGCCGCACTCGA(配列番号:11)
His-R:
CGGGATCCGGATATAGTTCCTCCT(配列番号:12)
増幅されたヒスチジンタグをコードする領域を含んだDNA断片は、
XbaI及び
BamHIにより二重消化した。
【0060】
(1−3)
lacZプロモーター断片の調製
融合コラゲナーゼを発現させるためのプロモーターとして、
lacZプロモーターを調製した。本DNA断片は、pUC19を鋳型としたPCRに増幅した。この際、増幅DNA断片の5’側末端に
HindIII認識配列を含む形でプライマーを設計した。
【0061】
本PCRに使用したプライマーは以下の通りである。
lac-F:
CCGGCAAGCTTGCCCAATACGCAAACCG(配列番号:13)
lac-R:
AGCTGTTTCCTGTGTGAA(配列番号:14)
増幅された
lacZプロモーター断片は、
HindIIIにて消化した。
【0062】
(1−4)ヒスチジンタグを連結した融合コラゲナーゼGの発現ベクターの構築
前記の方法で調製した3種のDNA断片を、5’側末端より、
lacZプロモーター、コラゲナーゼG遺伝子、ヒスチジンタグを含んだDNA断片の順に連結されるように、市販のベクターであるpBR322に挿入した。まず、
lacZプロモーター、コラゲナーゼG遺伝子をpBR322に挿入した。つまり、前記のように調製した
lacZプロモーター領域、及びコラゲナーゼG遺伝子断片をリン酸化した後、
HindIII及び
BamHIにて二重消化したpBR322へ挿入し、pColG(
図1)を構築した。なお、
lacZ遺伝子プロモーター領域(PlacZ)と
colG遺伝子の連結は平滑末端にて行なった。続いて、
XbaI及び
BamHIにて二重消化したpColGに、前記の方法で調製したヒスチジンタグをコードするDNAを挿入し、pColG-His(
図2)を構築した。最終的にpBR322に挿入されたDNAは、配列表:4に記載の1番から3396番までの塩基配列を持つDNAとなった。
【0063】
(1−5)融合コラゲナーゼG発現大腸菌の造出
常法に従ってpColG-Hisを大腸菌Escherichia coli χ1776株に形質転換し、20μg/mlのジアミノピメリン酸、100μg/mlチミジン、50μg/mlアンピシリンを添加したLB寒天培地で37℃、一昼夜培養し、融合コラゲナーゼG発現大腸菌を造出した。
【0064】
[
実施例2]融合コラゲナーゼG発現大腸菌の培養、及びCBDを有するコラゲナーゼGの選択的回収
(2−1)融合コラゲナーゼG発現大腸菌の培養
実施例1で得た融合コラゲナーゼG発現大腸菌を、100mlの培地を加えた250mlの三角フラスコに植菌し、200rpmにて28℃、16時間、撹拌培養した。本培養に使用した培地は、100μg/mlのジアミノピメリン酸、20μg/mlチミジン、50μg/mlアンピシリン、0.1mMのIPTGを添加したTB培地(1.2%トリプトン、2.4%イーストエクストラクト、0.94%リン酸水素二カリウム、0.22%リン酸二水素カリウム、0.8%グリセロール)とした。
【0065】
(2−2)融合コラゲナーゼG発現大腸菌の抽出液の調製
(2−1)で得られた培養終了液を遠心分離することにより菌体を回収し、回収された菌体を10mlのPOPculture Regent(メルク社製)にて溶菌させ、菌体内のタンパク質を抽出した。溶菌液の遠心分離により得られる上清を、遺伝子組換え体を除去するために0.2μmの膜にてろ過し、融合コラゲナーゼG発現大腸菌の抽出液とした。
【0066】
(2−3)アフィニティクロマトグラフィによるCBDを有する融合コラゲナーゼGの選択的回収
(2−2)で得られた融合コラゲナーゼG発現大腸菌の抽出液から分解コラゲナーゼを除去するために、ヒスチジンタグに対するアフィニティクロマトグラフィであるニッケルキレートカラムによる分画を行った。前記の方法で調製した融合コラゲナーゼG発現大腸菌の抽出液10mlに、60mlのニッケルキレートカラム結合用緩衝液(0.5MのNaCl、20mMイミダゾールを添加した20mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5))を添加し、ニッケルキレートカラム結合用緩衝液で平衡化した100mlのニッケルキレートカラムに通液した。その後、適当量のニッケルキレートカラム結合用緩衝液でカラム洗浄し、ニッケルキレートカラムに吸着できない分解コラゲナーゼを除去した後に、500mMのイミダゾールを添加したニッケルキレートカラム結合用緩衝液100mlを通液し、CBDを有する融合コラゲナーゼGを回収した。
【0067】
(2−4)分解コラゲナーゼの除去の確認
融合コラゲナーゼG抽出液からの分解コラゲナーゼの除去を確認するために、融合コラゲナーゼG発現大腸菌の抽出液およびアフィニティクロマトグラフィに供した融合コラゲナーゼG溶液について、活性染色を実施した。(2−2)で得られた融合コラゲナーゼG発現大腸菌の抽出液0.25μlおよび(2−3)で得られたアフィニティクロマトグラフィに供した融合コラゲナーゼG溶液2.5μlをZymogram−PAGE mini(テフコ社製)に供し、活性染色を実施した。その結果、融合コラゲナーゼG発現大腸菌の抽出液には、プロテーゼ活性を示す5本のバンドが観察された(
図3)。一方、アフィニティクロマトグラフィに供した融合コラゲナーゼG溶液は、前記の5本のバンドの内、最大の分子量を示す1本のバンドが主要なバンドとして観察された(
図4)。これらのバンドの比較と分析から、大腸菌で融合コラゲナーゼGを発現させた場合、CBDの一部又は全部が分解されることが判明した。以上の結果から、融合コラゲナーゼG発現大腸菌の抽出液をアフィニティクロマトグラフィにより精製することにより、CBDの一部又は全部が分解されたコラゲナーゼを除去し、CBDを有する融合コラゲナーゼを選択的に回収できることが示された。
【0068】
[
実施例3]クロストリディウム・ヒストリティカム由来のコラゲナーゼHのカルボキシル末端にヒスチジンタグを連結した融合コラゲナーゼの発現
(3−1)コラゲナーゼH遺伝子断片の調製
クロストリディウム・ヒストリティカム由来のコラゲナーゼH遺伝子の5’側末端から3’側末端までを、クロストリディウム・ヒストリティカム由来のゲノムDNAを鋳型にしたPCRにより増幅した。この際、増幅されたコラゲナーゼH遺伝子の3’側末端が
XbaI認識配列となり、さらに、本遺伝子のストップコドンに続いて
BamHI認識配列が付加されるプライマーを設計した。その結果、非特許文献2に記載の天然のコラゲナーゼHのアミノ酸配列のカルボキシル末端アミノ酸配列1箇所に変異(配列番号:5の980番目のアミノ酸)が導入され、配列番号:6に記載のアミノ酸配列に改変された。
【0069】
本PCRに使用したプライマーは以下の通りである。
colH-F:
ATGAAAAGGAAATGTTTATC(配列番号:15)
colH-R:
CCGGATCCTATCTAGATACTGAACCTT(配列番号:16)
増幅されたコラゲナーゼH遺伝子断片は、
BamHIにより消化した。
【0070】
(3−2)ヒスチジンタグをコードする領域を含んだDNA断片の調製
ヒスチジンタグをコードする領域を含んだDNA断片は、実施例1と同様の方法により調製した。
【0071】
(3−3)
lacZプロモーター断片の調製
lacZプロモーター断片は、実施例1と同様の方法により調製した。
【0072】
(3−4)ヒスチジンタグを連結した融合コラゲナーゼHの発現ベクターの構築
前記の方法で調製した3種のDNA断片を、5’側末端より、
lacZプロモーター、コラゲナーゼH遺伝子、ヒスチジンタグを含んだDNA断片の順に連結されるように、市販のベクターであるpBR322に挿入した。まず、
lacZプロモーター、コラゲナーゼH遺伝子をpBR322に挿入するために、前記のように調製した
lacZプロモーター領域、及びコラゲナーゼH遺伝子断片をリン酸化した後、
HindIII及び
BamHIにて二重消化したpBR322に挿入しpColH(
図5)を構築した。なお、
lacZ遺伝子プロモーター領域とコラゲナーゼH遺伝子の連結は平滑末端にて行なった。続いて、
XbaI及び
BamHIにて二重消化したpColHに、前記の方法で調製したヒスチジンタグをコードするDNAを含んだDNA断片を挿入しpColH-His(
図6)を構築した。最終的にpBR322に挿入されたDNAは、配列表:8に記載の1番から3105番までの塩基配列を持つDNAとなった。
【0073】
(3−5)融合コラゲナーゼH発現大腸菌の造出
融合コラゲナーゼH発現大腸菌は実施例1と同様の方法で造出された。
【0074】
[
実施例4]融合コラゲナーゼH発現大腸菌の培養、及びCBDを有する融合コラゲナーゼHの選択的回収
(4−1)融合コラゲナーゼH発現大腸菌の培養
実施例3で得た融合コラゲナーゼH発現大腸菌を、実施例2に記載の方法で培養し、培養液を得た。
【0075】
(4−2)融合コラゲナーゼH発現大腸菌の抽出液の調製
(4−1)で得られた培養終了液から、実施例2に記載の方法で、融合コラゲナーゼH発現大腸菌の抽出液を得た。
【0076】
(4−3)アフィニティクロマトグラフィによるCBDを有する融合コラゲナーゼHの選択的回収
(4−2)で得られた融合コラゲナーゼH発現大腸菌の抽出液を、実施例2に記載の方法でアフィニティクロマトグラフィに供し、CBDを有する融合コラゲナーゼHを回収した。
【0077】
(4−4)分解コラゲナーゼ除去の確認
融合コラゲナーゼHからの分解コラゲナーゼの除去の程度を確認するために、実施例2に記載の方法で、電気泳動の後に活性染色を実施した。その結果、融合コラゲナーゼH発現大腸菌の抽出液には、プロテーゼ活性を示す4本のバンドが観察された(
図7)。一方、アフィニティクロマトグラフィに供した融合コラゲナーゼH溶液は、前記の4本のバンドの内、最大の分子量を示す1本のバンドが主要なバンドとして観察された(
図8)。こられのバンドの比較と分析から、大腸菌で発現させた融合コラゲナーゼHにおけるCBDの一部又は全部が分解されたことが判明した。以上の結果から、融合コラゲナーゼH発現大腸菌の抽出液をアフィニティクロマトグラフィにより精製することにより、CBDの一部又は全部が分解されたコラゲナーゼを除去し、CBDを有する融合コラゲナーゼHが選択的に回収できることが示された。