(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも炭化水素系ガスと酸素系ガスと炭酸ガスを原料ガスとして導入し、上記原料ガスを触媒と接触反応させて主として水素と一酸化炭素からなる合成ガスを製造する合成ガスの製造方法であって、
炭化水素系ガスの燃焼反応と改質反応を、改質器内における共通の触媒が充填された共通の反応領域で同時に行なうことにより、燃焼反応によって生じた熱を改質反応に必要な熱に充当する熱中和運転を行なう際に、
上記改質器内における燃焼反応と改質反応を0.5MPa以下の低圧域で反応させ、
発生した改質ガス中に存在する炭酸ガスをPSA装置により吸着分離するとともに、上記PSA装置における吸着搭から排出されるリサイクルガスを圧縮しないで還流路に還流させてリサイクルするようにしたことを特徴とする合成ガス製造方法。
上記PSA装置において吸着搭から排出されるリサイクルガスをリサイクルする際に、吸着搭上部からの排気を還流路に還流させてリサイクルするようにした請求項1〜3のいずれか一項に記載の合成ガス製造方法。
少なくとも炭化水素系ガスと酸素系ガスと炭酸ガスを原料ガスとして導入し、上記原料ガスを触媒と接触反応させて主として水素と一酸化炭素からなる合成ガスを製造するための改質器を有する合成ガスの製造装置であって、
炭化水素系ガスの燃焼反応と改質反応を、改質器内における共通の触媒が充填された共通の反応領域で同時に行なうことにより、燃焼反応によって生じた熱を改質反応に必要な熱に充当する熱中和運転を行なう際に、上記改質器内における燃焼反応と改質反応を0.5MPa以下の低圧域で反応させるよう制御し、
発生した改質ガス中に存在する炭酸ガスを吸着分離するPSA装置を備えるとともに、上記PSA装置における吸着搭から排出されるリサイクルガスを圧縮しないで還流路に還流させてリサイクルするように構成されたことを特徴とする合成ガス製造装置。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に、改質ガスの製造プロセスでは、外部加熱装置が必要であるうえ、高温、高圧下での反応であるため、これらへの耐性を考慮する必要があることから、設備の使用材料の制限を受ける。このため、設備サイズが大きくなり、設備コストも割高となっていた。例えば、上記特許文献2にも開示されているように、改質器内は場合によって1000〜1200℃にも達するとされている。
【0010】
また、H
2/COが1程度の低H
2/CO比の合成ガスを製造するためには、下記の式(1)に示すような反応が有利である。
CH
4+CO
2→2H
2+2CO…(1)
【0011】
しかしながら、CO
2のみで改質すると、触媒上にカーボンが析出し、触媒活性を低下させたり、装置内に閉塞箇所が生じて圧力損失が異常に高くなったりする等の問題があった。
【0012】
このため、例えば、上記特許文献3では、内部熱供給型(オートサーマルリフォーミング)炭酸ガス改質方式の原料ガスにスチームを添加している。これにより、改質触媒上では、炭酸ガス改質反応と並行して水蒸気改質反応が進行し、炭化水素の分解反応によるカーボン析出が起こりにくくなる。さらに、原料のスチーム分圧が上がることで、下記の式(2)に示したような析出カーボンのガス化反応が進行する結果、カーボンの析出が抑えられる。
C+H
2O→CO+H
2…(2)
【0013】
ところが、上記のようにスチームによってカーボン析出を抑制するためには、水蒸気の過剰な添加が必要であった。
【0014】
さらに、天然ガスや軽質炭化水素の水蒸気/炭酸ガス改質における反応プロセスでは、製品の合成ガスに不純分としてCO
2が副生成し、その除去が必要となる。
【0015】
このようなCO
2の除去方法としては一般的に、例えば、上記非特許文献2に示されるように、セレクソールやセパソルブ吸収液を用いる物理吸収法や、アルカノールアミンや炭酸カリウムに代表されるアルカリ塩水溶液を用いた化学吸収法などで説明されるような吸収法が行われている。
【0016】
ところが、これらの吸収法では、吸収液の取り扱いや再生システム等を構築するため、システムが複雑で、設備サイズが大きくなり、設備コストも嵩むという問題があった。また、スチーム等を使用するため、純水発生装置やスチーム発生装置等の設備も必要になっていた。
【0017】
一方、合成ガスの製造に対して上記従来技術のPSA法を適用してCO
2をリサイクルすることを考えると、例えば、次のようなものになる。
【0018】
図1は、上記従来技術の合成ガスの製造にPSA法を適用することで想定されるシステム図である。
【0019】
このシステムは、酸素を導入する酸素導入路1、炭酸ガスを導入する炭酸ガス導入路2、炭化水素系ガスとして天然ガスを導入する炭化水素導入路3、スチームを導入するスチーム導入路8が原料ガス導入路4に合流し、これらの原料ガスが改質器5に導入されるようになっている。
【0020】
上記炭化水素導入路3には、天然ガス中の付臭成分であるイオウ分を除去する脱硫器7が設けられている。また、上記炭化水素導入路3には、脱硫用の水素ガスを導入するために改質ガスの一部を導入する改質ガス導入路9が合流している。
【0021】
上記炭酸ガス導入路2は、改質ガス取出路11に設けられた第1熱交換器18によって合成ガスと炭酸ガスを熱交換し、予熱された炭酸ガスを原料ガス導入路4に合流させるようになっている。また、上記炭化水素導入路3は、改質ガス取出路11に設けられた第2熱交換器19によって合成ガスと炭化水素を熱交換し、予熱された炭化水素を原料ガス導入路4に合流させるようになっている。
【0022】
一方、原料ガス導入路4には、スチームを導入するスチーム導入路8が合流しており、改質触媒上では、炭酸ガス改質反応と並行して水蒸気改質反応を進行させるようになっている。
【0023】
上記改質器5は、低圧下で運転すると改質器5自体も大型にせざるを得ないことから、一般には高圧下で反応させることが行われる。したがって、酸素導入路1、炭酸ガス導入路2、炭化水素導入路3には、それぞれ酸素ガス圧縮機10a、炭酸ガス圧縮機10b、炭化水素圧縮機10cが設けられ、各原料ガスを所定の高圧にして改質器5に導入するようになっている。
【0024】
上記改質器5で改質された合成ガスは、改質ガス取出路11によって取り出され、冷却器12で冷却され、気液分離器13で水分等の液体が除去される。図において、符号14は冷却水導入路14、符号15はドレン管15である。
【0025】
気液分離器13で液体が除去された改質ガスは、PSA装置20で炭酸ガス(CO
2)が吸着除去されて製品の合成ガスとして利用に供される。PSA装置20で吸着除去された炭酸ガスは、PSA装置20の搭底部から真空ポンプ16で脱着され、リサイクル炭酸ガスホルダー22に一次貯留されたのち、所定の反応圧力まで昇圧するためにリサイクル炭酸ガス圧縮機21で圧縮されて炭酸ガス導入路2に還流され、リサイクルされる。
【0026】
一方、吸着搭を減圧する際にPSA装置20の搭頂部から排出されるオフガスは、PSA装置20の運転圧力まで昇圧するためにリサイクルガス圧縮機23で圧縮されて気液分離器13の下流に還流されてリサイクルされる。
【0027】
上記のように、合成ガスの製造に対し、単に従来からあるPSA法を適用してCO
2をリサイクルするシステムでは、例えば、各原料ガスを所定の反応圧力に昇圧するために酸素ガス圧縮機10a、炭酸ガス圧縮機10b、炭化水素圧縮機10cを設けたり、PSA装置20の搭頂部から排出されるオフガスを昇圧するリサイクルガス圧縮機23を設けたりする必要がある。このように、多数の機器を設置しなければならず、設備自体やその設置面積も大きくなって設備コストが嵩むうえ、駆動エネルギーも嵩んでランニングコスト面でも好ましくないものであった。また、CO
2のリサイクルにPSA法を用いた合成ガスの製造プロセスは、現実問題としてこれまで提案されたものがなく、適切な運転条件等も確立されていなかった。
【0028】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、炭酸ガスのリサイクルにPSA法を用い、小型の設備でエネルギー効率のよい合成ガス製造方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記目的を達成するため、本発明の合成ガス製造方法は、少なくとも炭化水素系ガスと酸素系ガスと炭酸ガスを原料ガスとして導入し、上記原料ガスを触媒と接触反応させて主として水素と一酸化炭素からなる合成ガスを製造する合成ガスの製造方法であって、
炭化水素系ガスの燃焼反応と改質反応を、改質器内における共通の触媒が充填された共通の反応領域で同時に行なうことにより、燃焼反応によって生じた熱を改質反応に必要な熱に充当する熱中和運転を行なう際に、
上記改質器内における燃焼反応と改質反応
を0.5MPa以下の低圧域で反応させ、
発生した改質ガス中に存在する炭酸ガスをPSA装置により吸着分離するとともに、上記PSA装置における吸着搭から排出されるリサイクルガスを圧縮しないで還流路に還流させてリサイクルするようにしたことを要旨とする。
【0030】
また、上記目的を達成するため、本発明の合成ガス製造装置は、少なくとも炭化水素系ガスと酸素系ガスと炭酸ガスを原料ガスとして導入し、上記原料ガスを触媒と接触反応させて主として水素と一酸化炭素からなる合成ガスを製造するための改質器を有する合成ガスの製造装置であって、
炭化水素系ガスの燃焼反応と改質反応を、改質器内における共通の触媒が充填された共通の反応領域で同時に行なうことにより、燃焼反応によって生じた熱を改質反応に必要な熱に充当する熱中和運転を行なう際に、上記改質器内における燃焼反応と改質反応
を0.5MPa以下の低圧域で反応させるよう制御し、
発生した改質ガス中に存在する炭酸ガスを吸着分離するPSA装置を備えるとともに、上記PSA装置における吸着搭から排出されるリサイクルガスを圧縮しないで還流路に還流させてリサイクルするように構成されたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明の合成ガス製造方法および装置では、上記改質器内における燃焼反応と改質反応
を0.5MPa以下の低圧域で反応させ、PSA装置における吸着搭から排出されるリサイクルガスを圧縮しないで還流路に還流させてリサイクルするため、圧縮機としては、各原料ガスを導入するための圧縮機をなくすことができる。また、改質器の耐圧設計も大幅に緩和され、設備効率およびエネルギー効率が大幅に向上する。また、PSA装置の各吸着搭から排出される塔内ガスをリサイクルすることにより、原料としてリサイクルできる炭酸ガスの回収率を高め、製品ガスである合成ガスの回収率を向上することができる。このように、炭酸ガスのリサイクルにPSA法を用い、ハンドリングのわずらわしい吸収法を用いず、地球温暖化ガスである炭酸ガスを系外に放出することなく、従来未反応として廃棄されていた炭酸ガスを最大限に有効利用し、小型の設備でエネルギー効率のよい合成ガス製造方法および装置を提供することができる。
【0032】
本発明において、上記PSA装置における炭酸ガス吸着分離において、
吸着剤が充填された吸着搭に対して改質ガスを導入して炭酸ガスを吸着剤に吸着させる吸着工程と、
吸着搭内を減圧して吸着剤に吸着させた炭酸ガスを脱着させて回収する回収工程とを行ない、
上記吸着工程の後に、吸着搭内の圧力を大気圧に戻す際に排出される塔内ガスを還流路に還流させてリサイクルする大気排気リサイクル工程をさらに行う場合には、
吸着工程後、吸着搭内を大気圧に戻す際に排出される製品リッチな塔内ガスをリサイクルすることにより、製品ガスとしての合成ガスの回収率がより向上する。これにより、PSA装置を適用し、製品ガスである合成ガスの濃度を維持しながら、炭酸ガスをリサイクルしながら運転して炭酸ガスの廃棄率を減少し、製品への転換効率を向上する。
【0033】
本発明において、上記回収工程の前に、吸着搭内に炭酸ガスを導入して吸着搭内の炭酸ガス濃度を上昇させる炭酸ガスパージ工程をさらに行う場合には、
回収工程の前に吸着搭内の炭酸ガス濃度を向上させ、回収ガス中の炭酸ガス濃度を向上させて、改質用原料としてリサイクル可能とすることで炭酸ガスの廃棄率を減少し、製品への転換効率を向上する。
【0034】
本発明において、上記PSA装置において吸着搭から排出されるリサイクルガスをリサイクルする際に、吸着搭上部からの排気を還流路に還流させてリサイクルするようにした場合には、
吸着搭下部から排気すると、吸着搭下部に残存した炭酸ガスを排出してしまうことになると考えられ、吸着搭上部から排気した方が、回収ガス中の炭酸ガス濃度が高くなり、炭酸ガスの回収率も向上する。
【0035】
本発明において、上記PSA装置における炭酸ガス吸着分離において、
吸着搭内にパージガスを流しながら吸引する吸引パージ工程を実施しない場合には、
吸引パージ工程ではその間に塔内ガスが廃棄されてしまうところ、その工程をなくすことにより、炭酸ガスの回収、リサイクル率を向上し、炭酸ガスの廃棄率を減少して製品への転換効率を向上する。
【発明を実施するための形態】
【0037】
つぎに、本発明を実施するための形態を説明する。
【0038】
図2は、本発明が適用される合成ガス製造装置の概要を示す図である。なお、
図1と同様の部分には同じ符号を使用して説明している。
【0039】
この装置は、酸素を導入する酸素導入路1、炭酸ガスを導入する炭酸ガス導入路2、炭化水素ガスとして天然ガスを導入する炭化水素導入路3が、原料ガス導入路4に合流し、これらの原料ガスが改質器5に導入され、上記原料ガスを改質触媒と接触反応させて主として水素と一酸化炭素からなる合成ガスを製造するもととなる改質ガスを発生させるようになっている。本発明が製造の対象とする合成ガスは、主としてH
2/COが1程度の低H
2/CO比の合成ガスをいう。
【0040】
上記改質器5には、四元系の改質触媒が充填され、炭化水素系ガスの燃焼反応と改質反応を、改質器5内における共通の触媒が充填された共通の反応領域で同時に行なうことにより、燃焼反応によって生じた熱を改質反応に必要な熱に充当する熱中和運転を行なうようになっている。
【0041】
上記改質器5には、四元系の改質触媒として、Rh修飾(Ni−CeO
2)−Pt触媒が充填され、1つの反応領域で炭化水素の燃焼反応と改質反応が同時に行なわれる。
【0042】
すなわち、炭化水素の一部を完全燃焼させて炭化水素をCO
2とH
2Oとに変換させる燃焼反応と、この燃焼反応により生成したCO
2とH
2O、および原料ガスとして導入したCO
2を残余の炭化水素と反応させてH
2とCOとに変換させる改質反応とを、前記触媒上で進行させるのである。
【0043】
例えば、炭化水素がメタンの場合を例にあげて説明すると、その反応は全体として上述したとおり、下記の式(1)のように表わされる。
CH
4+CO
2→2H
2+2CO…(1)
【0044】
実際は、(3)〜(5)式のように、燃焼反応で生成したCO
2とH
2OがさらにCH
4と改質反応を起こしてCOとH
2に変換するという逐次反応となっている。
CH
4+2O
2→CO
2+2H
2O …(3)
CH
4+CO
2→2CO+2H
2 …(4)
2CH
4+2H
2O→2CO+6H
2 …(5)
【0045】
反応温度は350〜900℃、さらに400〜800℃程度が好適である。CH
4とO
2の燃焼反応は発熱反応であり、CH
4とCO
2、もしくはCH
4とCO
2とH
2Oの改質反応は吸熱反応である。したがって、これらの両反応を共通の触媒上において共通の反応領域で同時に発生させることにより、燃焼反応によって生じた熱を改質反応に必要な熱に充当する熱中和運転を行なう。これにより、外部加熱装置等から反応熱を付与することなく、改質反応を進行させることができる。
【0046】
このとき、装置の起動時に改質器5内の反応領域を200〜300℃に予熱するとともに、原料ガスの供給温度を250〜450℃となるように制御することにより、燃焼反応と改質反応が熱平衡状態となってその後同時進行する。
【0047】
上記改質触媒としては、四元系触媒であるRh修飾(Ni−CeO
2)−Pt触媒が使用される。そして、上記Rh修飾(Ni−CeO
2)−Pt触媒を使用することにより、炭化水素系ガスの燃焼反応と改質反応とを同じ反応領域内で同時に行なうようになっている。
【0048】
すなわち、炭化水素の一部を完全燃焼させて炭化水素をCO
2とH
2Oとに変換させる燃焼反応と、この燃焼反応により生成したCO
2とH
2O、および原料ガスとして導入したCO
2を残余の炭化水素と反応させてH
2とCOとに変換させる改質反応とを、前記触媒上で進行させ、炭化水素をH
2とCOとに変換させて改質を行うのである。
【0049】
上記Rh修飾(Ni-CeO
2)-Pt触媒は、例えば、適当な細孔分布を有するアルミナ担体表面にRhを担持させ、ついでPtを担持させ、さらにNiとCeO
2とを同時担持させることにより得られる。ただし、担体の材質や形状の選択、被覆物形成の有無またはその材質の選択は、種々のバリエーションが可能である。
【0050】
Rhの担持は、Rhの水溶性塩の水溶液を含浸後、乾燥、焼成、水素還元することにより行われる。また、Ptの担持は、Ptの水溶性塩の水溶液を含浸後、乾燥、焼成、水素還元することにより行われる。NiおよびCeO
2の同時担持は、Niの水溶性塩およびCeの水溶性塩の混合水溶液を含浸後、乾燥、焼成、水素還元することにより行われる。
【0051】
上に例示した手順により、目的とするRh修飾(Ni−CeO
2)−Pt触媒が得られる。各成分の組成は重量比で、Rh:Ni:CeO
2:Pt=(0.05−0.5):(3.0−10.0):(2.0−8.0):(0.3−5.0)、望ましくは、Rh:Ni:CeO
2:Pt=(0.1−0.4):(4.0−9.0):(2.0−5.0):(0.3−3.0)に設定することが好ましい。
【0052】
なお、上記における各段階での水素還元処理を省略し、実際の使用に際して触媒を高温で水素還元して用いることもできる。各段階で水素還元処理を行ったときも、さらに使用に際して触媒を高温で水素還元して用いることができる。
【0053】
上記改質器5内における燃焼反応と改質反応を行わせる際の反応圧力は、通常、常圧ないし加圧条件で行われるが、本発明では、所定の低圧域で反応させることが行われる。
【0054】
具体的には、上記改質器5内の反応圧力は、0.5MPa以下の低圧域を好適に採用することができ、例えば0〜0.1MPa程度の圧力域を使用することができる。
【0055】
ここで、上記炭化水素導入路3には、天然ガス中の付臭成分であるイオウ分を除去する脱硫器7が設けられている。また、上記炭化水素導入路3には、脱硫用の水素ガスを導入するために改質ガスの一部を導入する改質ガス導入路9が合流している(図示の※1)。
【0056】
上記炭酸ガス導入路2は、改質ガス取出路11に設けられた第1熱交換器18によって改質ガスと炭酸ガスを熱交換し、予熱された炭酸ガスを原料ガス導入路4に合流させるようになっている。また、上記炭化水素導入路3は、改質ガス取出路11に設けられた第2熱交換器19によって改質ガスと炭化水素を熱交換し、予熱された炭化水素を原料ガス導入路4に合流させるようになっている。
【0057】
上記改質器5は、上述したように、外部加熱装置を備えていないため、従来の装置に比べてそれだけ小型化を実現している。また、低圧域での運転であるので、従来に比べて耐圧設計が大幅に簡素化できる。また、低圧域での運転であるので、従来必要であった酸素ガス圧縮機10a、炭酸ガス圧縮機10b、炭化水素圧縮機10cが設けられておらず、設備面での大幅な効率化が図られている。
【0058】
上記改質器5で改質された改質ガスは、改質ガス取出路11によって取り出され、冷却器12で冷却され、気液分離器13で水分等の液体が除去される。図において、符号14は冷却水導入路14、符号15はドレン管15である。
【0059】
上記改質器5での改質反応後の改質ガスの組成は、主としてH
2、CO、CO
2、H
2O、CH
4である。このうち製品ガスとしての合成ガスは、H
2、COであり、残りのCO
2、H
2O、CH
4が不純分となる。これらの不純分のうち、未反応のCH
4は例えば0.2mol%程度と極めて少なく、H
2Oは大部分が気液分離器13で液体として除去される。
【0060】
したがって、上記気液分離器13で液体が除去された改質ガスは、主としてH
2、CO、CO
2であり、このうち、再度原料となりうるCO
2をPSA装置20で回収し、リサイクルすることが行われる。
【0061】
上記気液分離器13で液体が除去された改質ガスは、改質ガス路27を通ってPSA装置20に導入される。PSA装置20に導入される改質ガスは、改質ガスホルダー25に一時的に貯留され、改質ガス圧縮機26で所定の吸着圧力まで昇圧される。PSA装置20に導入された改質ガスは、吸着搭30内で炭酸ガス(CO
2)等の不純分が吸着除去される。不純分が除去された製品としての合成ガスは、製品ガス路28から取り出され、利用に供される。
【0062】
PSA装置20で吸着除去された炭酸ガスは、PSA装置20の吸着搭30の底部から真空ポンプ16で脱着され、リサイクル路37を通ってリサイクル炭酸ガスホルダー22に一時貯留されたのち、所定の反応圧力まで昇圧するためにリサイクル炭酸ガス圧縮機21で圧縮され、還流路38を通って炭酸ガス導入路3に還流されてリサイクルされる(図示の※2)。リサイクルされる炭酸ガスのうち一部は、炭酸ガスパージ路33を通じて吸着搭30内の炭酸ガスパージに使用される。
【0063】
一方、PSA装置20の各吸着搭30から排出される塔内ガスは、圧縮機等で圧縮されることなく還流路29を通って気液分離器13の下流側の改質ガス路27に還流されてリサイクルされる。
このようにすることにより、圧縮機としては、PSA装置20に導入する改質ガスを圧縮する改質ガス圧縮機26を設け、各原料ガスを導入するための圧縮機をなくすことができ、設備効率およびエネルギー効率が大幅に向上した。また、PSA装置20の各吸着搭30から排出される塔内ガスをリサイクルすることにより、炭酸ガスのリサイクル率を高め、製品ガスである合成ガスの回収率を向上することができた。
【0064】
ここで、上記PSA装置20の各吸着搭30に充填する吸着剤としては、炭酸ガスを吸着しうるものであれば、特に限定するものではなく、各種のものを使用することができる。例えば、活性炭、シリカゲル、カーボンモレキュラーシーブ、合成ゼオライト、活性アルミナ等を例示することができる。
【0065】
図3は、上記PSA装置20の詳細を説明する図である。
【0066】
この例では、第1吸着搭30A、第2吸着搭30B、第3吸着搭30C、第4吸着搭30Dが並列に接続されている。各吸着搭30A〜30Dでは、それぞれ、吸着工程、第1均圧工程、大気排気リサイクル工程、大気排気工程、炭酸ガスパージ工程、回収工程、第2均圧工程、復圧工程の8工程が順次実施される。
【0067】
以下、各工程の詳細について説明する。
【0068】
なお、本実施形態における説明において、「第1〜第4の吸着搭」をまとめて「吸着搭」と表現して説明するときは「吸着搭30」のように、アルファベットを省略した符号30を付して表す。他の構成における説明でも同様とする。
【0069】
吸着工程は、吸着剤が充填された吸着搭30に対し、改質ガス圧縮機26で所定の吸着圧力(例えば0.65MPa程度)に昇圧した改質ガスを導入し、不純分である炭酸ガスおよびH
2Oを吸着剤に吸着させ、製品ガスとしての合成ガスを精製する工程である。
【0070】
第1均圧工程は、吸着工程が終了した吸着圧力の吸着搭30(相対的に高圧である)の塔内に残留している製品リッチなガスを、後述する回収工程が終了した真空状態の吸着搭30(相対的に低圧である)へ移動、回収して両吸着搭30を均圧化する工程である。
【0071】
大気排気リサイクル工程は、上記吸着工程の後に、吸着搭30内の圧力を大気圧に戻す際に排出される製品リッチな塔内ガスを還流路29に還流させ、再びPSA装置20に導入してリサイクルする工程である。
このように、吸着工程および第1均圧工程後、吸着搭30内を大気圧に戻す際に排出される製品リッチな塔内ガスをリサイクルすることにより、製品ガスとしての合成ガスの回収率がより向上する。これにより、PSA装置20を適用し、製品ガスである合成ガスの濃度を維持しながら、炭酸ガスをリサイクルしながら運転して炭酸ガスの廃棄率を減少し、製品への転換効率を向上した。
【0072】
このとき、本実施形態では、上記PSA装置20において吸着搭30から排出されるリサイクルガスをリサイクルする際に、吸着搭30上部からの排気を還流路29に還流させてリサイクルするようにしている。
吸着搭30下部から排気すると、吸着搭30下部に残存した炭酸ガスを排出してしまうことになると考えられ、吸着搭30上部から排気した方が、回収ガス中の炭酸ガス濃度が高くなり、炭酸ガスの回収率も向上する。
【0073】
大気排気工程は、大気排気リサイクル工程の終了した吸着搭30内に残存するガスを排気し、吸着搭30内を減圧する工程である。
【0074】
炭酸ガスパージ工程は、上記大気排気工程の終了後、後述する回収工程の前に、吸着搭30内に炭酸ガスパージ路33を通じて炭酸ガスを導入し、吸着搭30内の炭酸ガス濃度を上昇させる工程である。炭酸ガスパージ工程で吸着搭30に導入する炭酸ガスは、回収工程において回収されてリサイクル炭酸ガスホルダー22に貯留されていた炭酸ガスを、リサイクル炭酸ガス圧縮機21で昇圧して導入する。
このようにすることにより、回収工程の前に吸着搭30内の炭酸ガス濃度を向上させ、回収ガス中の炭酸ガス濃度を向上させて、改質用原料としてリサイクル可能とすることで炭酸ガスの廃棄率を減少し、製品への転換効率を向上した。
【0075】
回収工程は、吸着搭30内を真空ポンプ16で減圧して吸着剤に吸着させた炭酸ガスを脱着させて回収する工程である。回収された炭酸ガスは、上述したように還流路38を通してリサイクルされ、一部は炭酸ガスパージ路33を通して吸着搭30のパージガスとして用いられる。
【0076】
第2均圧工程は、上述した第1均圧工程とシンクロして行われるもので、回収工程が終了した真空状態の吸着搭30(相対的に低圧である)に対し、吸着工程が終了した吸着圧力の吸着搭30(相対的に高圧である)から塔内に残留している製品リッチなガスを移動、回収して両吸着搭30を均圧化する工程である。
【0077】
復圧工程は、第2均圧工程が終了した吸着搭30に対し、製品ガスの一部を導入し、次に行われる吸着工程に備えて塔内圧力を所定の吸着圧力まで復圧させる工程である。
【0078】
このように、本実施形態では、上記PSA装置20における炭酸ガス吸着分離において、吸着搭30内に窒素ガス等のパージガスを流しながら真空ポンプで吸引する吸引パージ工程は実施しないようになっている。
吸引パージ工程ではその間に塔内ガスが廃棄されてしまうところ、その工程をなくすことにより、炭酸ガスの回収、リサイクル率を向上し、炭酸ガスの廃棄率を減少して製品への転換効率を向上した。
【0079】
図4は、第1〜第4吸着搭30A〜30Dにおいて、上記8工程を実施する際の運転工定表を示す。
【0080】
各吸着搭30A〜30Dにおいて、それぞれSTEP1〜16の16ステップが設定され、実行される。
【0081】
第1吸着搭30Aでは、STEP1〜4において吸着工程を実施し、STEP5において第1均圧工程、STEP6において大気排気リサイクル工程、STEP7において大気排気工程、STEP8において炭酸ガスパージ工程、STEP9〜12において回収工程、STEP13において第2均圧工程、STEP14〜16において復圧工程をそれぞれ実施する。
【0082】
第2吸着搭30Bでは、STEP1において第2均圧工程を実施し、STEP2〜4において復圧工程、STEP5〜8において吸着工程、STEP9において第1均圧工程、STEP10において大気排気リサイクル工程、STEP11において大気排気工程、STEP12において炭酸ガスパージ工程、STEP13〜16において回収工程をそれぞれ実施する。
【0083】
第3吸着搭30Cでは、STEP1〜4において回収工程を実施し、STEP5において第2均圧工程、STEP6〜8において復圧工程、STEP9〜12において吸着工程、STEP13において第1均圧工程、STEP14において大気排気リサイクル工程、STEP15において大気排気工程、STEP16において炭酸ガスパージ工程をそれぞれ実施する。
【0084】
第4吸着搭30Dでは、STEP1において第1均圧工程を実施し、STEP2において大気排気リサイクル工程、STEP3において大気排気工程、STEP4において炭酸ガスパージ工程、STEP5〜8において回収工程を実施し、STEP9において第2均圧工程、STEP10〜12において復圧工程、STEP13〜16において吸着工程をそれぞれ実施する。
【0085】
このように、第1〜第4吸着搭30A〜30Dにおいて、各工程を時間的にずらせて行うことにより、吸着工程を間断なく行って製品ガスが途切れなく得られるようになっている。
【0086】
つぎに、
図3に戻って本実施形態のPSA装置20の詳細について説明する。
【0087】
第1〜第4吸着搭30A〜30Dには、各々搭下部に、吸着工程の際に改質ガスを導入する第1〜第4改質ガス導入路31A〜31Dがそれぞれ接続されている。一方、搭上部には、吸着工程の際に不純分が吸着除去された製品ガスを取り出す第1〜第4製品ガス路28A〜28Dがそれぞれ接続されている。
【0088】
第1〜第4吸着搭30A〜30Dには、各々搭上部に、第1均圧工程および第2均圧工程の際に、吸着工程が終了した吸着圧力の吸着搭30(相対的に高圧である)の塔内に残留している製品リッチなガスを、回収工程が終了した真空状態の吸着搭30(相対的に低圧である)へ移動、回収するための第1〜第4均圧路36A〜36Dがそれぞれ連通している。
【0089】
第1〜第4吸着搭30A〜30Dには、各々搭上部に、大気排気リサイクル工程の際に、吸着搭30内の圧力を排出して還流路29に還流させて再びPSA装置20に導入してリサイクルするための第1〜第4大気排気リサイクル路35A〜35Dがそれぞれ連通している。
このように、搭上部からの排気を還流路29に還流させてリサイクルするようにしているため、上述したように、回収ガス中の炭酸ガス濃度が高くなり、炭酸ガスの回収率も向上する。
【0090】
上記第1〜第4大気排気リサイクル路35A〜35Dは、大気排気工程の際に、吸着搭30内に残存するガスを排気して搭内を減圧するための大気排気路としても機能する。
これらの機能の切り換えは、弁操作によって実現する。すなわち、第1〜第4大気排気リサイクル路35A〜35Dとして機能させるときは還流路29の開閉弁を開け、大気排気路として機能させるときは、オフガス路39の開閉弁を開ける開閉制御が行われる。
【0091】
第1〜第4吸着搭30A〜30Dには、各々搭下部に、炭酸ガスパージ工程の際に、吸着搭30内に炭酸ガスパージ路33を通じて炭酸ガスを導入する第1〜第4炭酸ガスパージ路33A〜33Dが連通している。
【0092】
第1〜第4吸着搭30A〜30Dには、各々搭下部に、回収工程の際に、搭内を真空ポンプ16で減圧して吸着剤に吸着させた炭酸ガスを脱着させて回収するための第1〜第4回収路32A〜32Dが連通している。
【0093】
第1〜第4吸着搭30A〜30Dには、各々搭上部に、復圧工程の際に、第2均圧工程が終了した吸着搭30に対して製品ガスの一部を導入して所定の吸着圧力まで復圧させるための第1〜第4復圧路34A〜34Dが連通している。
【0094】
各工程の切り換え動作は、それぞれの流路に設けられたバルブの開閉操作を制御することによって実現する。
【0095】
以上の構成により、本実施形態の合成ガス製造方法および装置では、上記改質器5内における燃焼反応と改質反応
を0.5MPa以下の低圧域で反応させ、PSA装置20における吸着搭30から排出されるリサイクルガスを圧縮しないで還流路29に還流させてリサイクルするため、圧縮機としては、各原料ガスを導入するための圧縮機をなくすことができる。また、改質器5の耐圧設計も比較的簡易なものでよく、設備効率およびエネルギーが大幅に向上する。また、PSA装置20の各吸着搭30から排出される塔内ガスをリサイクルすることにより、炭酸ガスのリサイクル率を高め、製品ガスである合成ガスの回収率と濃度を向上することができる。このように、炭酸ガスのリサイクルにPSA法を用い、小型の設備でエネルギー効率のよい合成ガス製造方法および装置を提供することができる。
【0096】
また、上記PSA装置20における炭酸ガス吸着分離において、
吸着剤が充填された吸着搭30に対して改質ガスを導入して炭酸ガスを吸着剤に吸着させる吸着工程と、
吸着搭30内を減圧して吸着剤に吸着させた炭酸ガスを脱着させて回収する回収工程とを行ない、
上記吸着工程の後に、吸着搭30内の圧力を大気圧に戻す際に排出される塔内ガスを還流路29に還流させてリサイクルする大気排気リサイクル工程をさらに行う場合には、
吸着工程後、吸着搭30内を大気圧に戻す際に排出される製品リッチな塔内ガスをリサイクルすることにより、製品ガスとしての合成ガスの回収率がより向上する。これにより、PSA装置20を適用し、製品ガスである合成ガスの濃度を維持しながら、炭酸ガスをリサイクルしながら運転して炭酸ガスの廃棄率を減少し、製品への転換効率を向上する。
【0097】
また、上記回収工程の前に、吸着搭30内に炭酸ガスを導入して吸着搭30内の炭酸ガス濃度を上昇させる炭酸ガスパージ工程をさらに行う場合には、
回収工程の前に吸着搭30内の炭酸ガス濃度を向上させ、回収ガス中の炭酸ガス濃度を向上させて、改質用原料としてリサイクル可能とすることで炭酸ガスの廃棄率を減少し、製品への転換効率を向上する。
【0098】
また、上記PSA装置20において吸着搭30から排出されるリサイクルガスをリサイクルする際に、吸着搭30上部からの排気を還流路29に還流させてリサイクルするようにした場合には、
吸着搭30下部から排気すると、吸着搭30下部に残存した炭酸ガスを排出してしまうことになると考えられ、吸着搭30上部から排気した方が、回収ガス中の炭酸ガス濃度が高くなり、炭酸ガスの回収率も向上する。
【0099】
また、上記PSA装置20における炭酸ガス吸着分離において、
吸着搭30内にパージガスを流しながら吸引する吸引パージ工程を実施しない場合には、
吸引パージ工程ではその間に塔内ガスが廃棄されてしまうところ、その工程をなくすことにより、炭酸ガスの回収、リサイクル率を向上し、炭酸ガスの廃棄率を減少して製品への転換効率を向上する。
【実施例】
【0100】
つぎに、実施例について説明する。
【0101】
まず、PSA装置20の各吸着搭30に充填する吸着剤を、つぎのようにして選定した。
【0102】
一般的な活性炭であるガス分離用精製用粒状活性炭であるクラレコール(GA系)(クラレケミカル社製)を用いてCO、CO
2の吸着性能を調査した。313(K)クラレコールGAは、CO
2の吸着能力に優れているが、COもある程度吸着してしまう。この傾向は、他の活性炭でも想定されることである。そこで、活性アルミナ(プロカタリーゼ社製 型番:D2−5)について、同様の吸着性能を調べた。
【0103】
図5に活性炭における吸着等温線を、
図6に活性アルミナにおける吸着等温線を示す。これらの図から明らかなように、活性アルミナでは、CO
2に対する吸着能力は高いが、COに対する吸着能力が低いため、本発明が対象とする合成ガスに対するCO
2の分離効率は、活性アルミナが優れている。また、当該活性アルミナは、H
2Oの吸着能力にも優れており、CO
2とH
2Oを同時に吸着して合成ガスの不純分を効果的に除去することが可能である。
【0104】
上述したように、PSA装置20で除去しなければならない不純分は、CO
2と、液体として分離しきれなかった少量のH
2Oであることから、CO
2とH
2Oを同時に吸着しうる活性アルミナを好適に用いることができ、以下の実施例は活性アルミナを吸着剤として使用した。
【0105】
図7は、A搭、B搭2本の吸着搭および均圧搭の3搭からなるモデル装置を使用した吸着試験を行った工程図である。
【0106】
ここで、大気排気工程は、吸着工程、均圧(1)の後に、塔内を大気圧に戻すために塔内ガスを排出する工程である。真空排気(1)は、大気排気後の吸着搭内を真空ポンプで吸引し、吸着された炭酸ガスを脱着する工程である。真空パージは、真空排気(1)後の吸着搭内に、窒素ガスを流しながら真空ポンプで吸引し、さらに炭酸ガスを脱着する工程である。真空排気(2)は、真空パージの際に塔内に導入された窒素ガスを真空ポンプで吸引、排出する工程である。均圧(1)、均圧(2)、復圧は、上述した工程説明と同様である。
【0107】
原料ガスは、H
2が3.374NL/min、CO
2が0.874NL/minとした。また、吸着圧力は0.65MPaGである。ここで用いた吸着搭の内径は28mm、高さは2300mm、容積は1.42Lである。また、吸着剤は、上述した活性アルミナ(プロカタリーゼ社製 型番:D2−5)を用い、充填量1.17kg/bed、充填密度826.1kg/m
3である。
【0108】
この装置でCO
2回収率を上げるため、CO
2を回収する真空排気(1)工程直前で、可能な限り吸着したCO
2を吸着搭内にとどめておく必要がある。そこで、吸着搭下部から大気排気を行った場合と、吸着搭上部から大気排気を行った場合について、CO
2の回収率と濃度を調査した。
【0109】
表1は、吸着搭上部と下部からそれぞれ大気排気を行ったときのCO
2の回収率と濃度を測定した結果である。
なお、ここでのCO
2回収率は、下記の式(6)で表される。
CO
2回収率=回収ガス流量×回収ガス中のCO
2濃度/原料ガス中のCO
2量…(6)
【0110】
下記の表1からわかるとおり、吸着搭上部から大気排気する方が、吸着搭下部から大気排気をするよりもCO
2の回収率が84.9%、濃度が92.30%といずれも優れていることがわかる。これは、吸着搭下部から大気排気をした場合、吸着搭上部に残留している製品ガスにより吸着搭下部のCO
2を押し出してしまうからと考えられる。
【0111】
【表1】
【0112】
また、炭酸ガス改質の原料として用いても改質性能に影響が少ないCO
2濃度が98%以上の回収ガスを得るために、真空排気(1)工程の前に、上述した炭酸ガスパージ工程を実施し、吸着搭内のCO
2濃度を上昇させ、回収ガスのCO
2濃度の向上を図った。
【0113】
表2は炭酸ガスパージ工程を行ったときと行わなかったときのCO
2の回収率と濃度を測定した結果である。運転条件は、真空パージのN
2真空パージガス流量は2.0NL/min、パージ時間は50secとした。
なお、ここでのCO
2回収率は、下記の式(7)で表される。
CO
2回収率=(回収ガス流量×回収ガス中CO
2濃度)/(原料ガス中CO
2量+CO
2パージ流量)…(7)
【0114】
下記の表2からわかるとおり、炭酸ガスパージ工程を実施することにより、回収ガスCO
2濃度は、99.13%まで向上し、回収ガスを炭酸ガス改質の原料として用いても改質性能に影響が少ない目標CO
2濃度である98%を達成した。
【0115】
【表2】
【0116】
また、CO
2回収率のさらなる向上を図るため、真空パージ工程の有無について検討を行った。
【0117】
表3は、真空パージ工程を行ったときと行わなかったときの回収ガスのCO
2回収率と濃度、製品ガスの濃度と回収率を測定した結果である。
表3の結果からわかるように、真空パージ工程を実施しないことにより、真空パージ工程および真空排気(2)で排気されていたCO
2を回収にまわせることとなり、CO
2回収率が98.5%まで上昇した。
【0118】
【表3】
【0119】
また、製品である合成ガスの回収率を向上させるため、大気排気していた排ガスをリサイクルすることを検討した。
【0120】
表4は、大気排気分をリサイクルする大気排気リサイクルを行ったときと行わなかったときの製品ガスの濃度と回収率を測定した結果である。
【0121】
表4の結果からわかるように、大気排気リサイクル工程を行わないよりも実施した方が、製品回収率は13ポイント程度上昇して94.9%になった。
【0122】
【表4】
【0123】
本実施例は、四元系の改質触媒であるRh修飾(Ni−CeO
2)−Pt触媒を用いた炭酸ガス改質反応を利用して合成ガスの製造を行い、圧縮機をPSA装置20の前段階に配置して各原料導入路の圧縮機を不要とした。PSA装置20は、吸着剤として活性アルミナを用い、吸着搭上部からの大気排気を行ない、その大気排気をリサイクルするようにした。また、炭酸ガスパージ工程を実施するとともに、真空パージ工程を実施しないようにした。
【0124】
このようにすることにより、低圧域での改質反応によって合成ガスを得ることが可能となり、800℃以下での反応ができることから、装置自体の耐性基準を大幅に緩和することができた。また、合成ガスの製造工程にPSA装置を用い、原料としてリサイクルできるCO
2の回収率を高め、CO
2の回収率98.5%、濃度99.23%を実現した。これにより、ハンドリングのわずらわしい吸収法を用いず、地球温暖化ガスである炭酸ガスを系外に放出することなく、従来未反応として廃棄されていたCO
2を最大限に有効利用できるプロセスを確立できた。