特許第5698543号(P5698543)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698543
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】建設機械の尿素水タンク構造
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20150319BHJP
【FI】
   F01N3/08 B
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-6230(P2011-6230)
(22)【出願日】2011年1月14日
(65)【公開番号】特開2012-145086(P2012-145086A)
(43)【公開日】2012年8月2日
【審査請求日】2013年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 敬弘
(72)【発明者】
【氏名】中村 剛志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 謙輔
(72)【発明者】
【氏名】東 宏行
【審査官】 今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−250168(JP,A)
【文献】 特開2009−079551(JP,A)
【文献】 特開平07−328453(JP,A)
【文献】 特開2010−138848(JP,A)
【文献】 特開2004−324651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回体と、この旋回体内に設けられたエンジンと、このエンジンの駆動力によって駆動される油圧ポンプとを有する建設機械に備えられ、
前記旋回体内に設けられ、前記エンジンから排出される排気ガスを浄化する尿素水を貯蔵する尿素水タンクを備えた建設機械の尿素水タンク構造において、
前記尿素水タンクの周囲を囲むと共に、前記旋回体内に前記尿素水タンクを固定する固定部材と、この固定部材と前記尿素水タンクとの間に介在させて前記尿素水タンクを保持する断熱材とを備え
前記固定部材は枠体を含み、
前記断熱材は、前記固定部材と前記尿素水タンクとの間に部分的に配置され、さらに前記尿素水タンクの周囲のうち前記エンジン及び前記油圧ポンプの少なくとも一方に近い側面に接触する空気層に配置されたことを特徴とする建設機械の尿素水タンク構造。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械の尿素水タンク構造において、
前記断熱材のうち、前記尿素水タンクの底部に設けられる断熱材はラバー材からなることを特徴とする建設機械の尿素水タンク構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンから排出される排気ガスを浄化する尿素水を貯蔵する尿素水タンクを備えた建設機械の尿素水タンク構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、油圧ショベル等の建設機械は、履帯等を有して走行する走行体と、この走行体の上方に旋回フレームを介して連結され、左右方向に旋回する旋回体と、この旋回体の前方に設けられ、各アクチュエータを有して掘削等の作業を行うフロント作業機とを備えている。旋回体は、内部に設けられたエンジンと、このエンジンの駆動力によって駆動され、各アクチュエータに油圧を供給する油圧ポンプとを有している。また、旋回体には、エンジンから排出される排気ガスを外部へ放出する排気管が設けられている。
【0003】
ここで、エンジンから排出される排気ガスには、有害な窒素酸化物が含まれているので、この窒素酸化物を還元することによって水と窒素に分解し、排気ガス中に含まれる窒素酸化物の濃度を低減してから排気ガスを大気へ排出する必要がある。そのため、建設機械は、排気ガス中に含まれる窒素酸化物を還元して浄化する排気ガス浄化装置を備えている。
【0004】
例えば、この排気ガス浄化装置は、尿素水を貯蔵する尿素水タンクと、排気管に設けられた還元触媒と、排気管のうち還元触媒よりも上流側に配設され、尿素水タンクから供給された尿素水を排気管内へ噴射する噴射装置とを有している。そして、噴射装置によって噴射された尿素水が排気ガスの熱で加水分解され、生成したアンモニアが還元触媒において排気ガス中に含まれる窒素酸化物と還元反応することによって窒素酸化物を無害な水と窒素に分解して浄化している。
【0005】
このように、噴射装置によって排気管内へ噴射される尿素水は液体状態で尿素水タンクに蓄えられているが、尿素水の融点は約−11度であるので、外気の温度が低下することによって尿素水タンクに貯蔵された尿素水が凍結する可能性がある。仮に、尿素水タンク内の尿素水が凍結した場合には、ヒータ等によって暖めて解凍する作業が必要であり、この尿素水の解凍作業が煩雑になることが懸念されていた。そこで、従来より尿素水タンクをエンジンや油圧ポンプ等の熱源の近くに配置することによって尿素水タンク内の尿素水が凍結することを防止したり、エンジンや油圧ポンプ等が駆動することによって発生する熱で凍結した尿素水を解凍することが行われている。
【0006】
例えば、エンジンや油圧ポンプ等の近くに尿素水タンクが配置された装置の従来技術の1つとして、油圧ポンプの下方に配置され、液体還元剤、すなわち尿素水を内部に貯留する尿素水タンクと、この尿素水タンクへ尿素水を補給すべくカウンタウェイトに設けられた補給口とを備え、尿素水の補給作業を行い易くしてメンテナンス性を高めた作業機械の排ガス後処理装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−68395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1に開示された従来技術の作業機械の排ガス後処理装置では、尿素水を貯蔵する尿素水タンクが油圧ポンプの下方に設けられているので、油圧ポンプの運転熱が尿素水タンクに伝達して尿素水タンク内の尿素水が暖められ、尿素水の凍結が防止されている。しかし、旋回体の内部には、油圧ポンプだけでなくエンジンやマフラ等の熱を発生させる機器が配置されており、エンジンの駆動熱やマフラ内を流通する高温の排気ガスの熱によって尿素水タンク内の尿素水の温度が必要以上に上昇する可能性がある。特に、油圧ショベル等の建設機械は、自走風による旋回体内部の冷却が期待できないので、旋回体内における尿素水タンクの配置によっては尿素水タンクが50℃以上の高温となる場合がある。
【0009】
万一、尿素水タンク内の尿素水の温度が過度に上昇した場合には、貯蔵された尿素水の一部が気化して蒸発するので、尿素水タンク内の尿素水の濃度が変化する。これにより、噴射装置が適切な濃度の尿素水を排気管内に供給することができず、排気管内において排気ガス中の窒素酸化物を十分に浄化することができない虞がある。また、尿素水が蒸発するとアンモニアが発生するので、発生したアンモニアによって尿素水タンクが腐食し、尿素水タンクが劣化することが懸念されている。
【0010】
ここで、一般的に尿素水タンクは尿素水に対して耐食性の高い樹脂やステンレス等の材料で形成されているが、材料が高価であったり、あるいは製造工程における理由から尿素水タンクの肉厚を大きく設定することが難しくなっている。そのため、掘削等の作業に伴う振動によって尿素水タンクに強い負荷が加わった場合には、尿素水タンクの本体が衝撃で破損したり、あるいは尿素水タンクのうち旋回体内に固定されている部分から亀裂が生じ、尿素水タンクから尿素水が漏れることが懸念されている。
【0011】
本発明は、このような従来技術の実情からなされたもので、その目的は、尿素水タンク内の尿素水の温度が上昇することを抑えると共に、車体の振動に伴う尿素水タンクにかかる負荷を低減することができる建設機械の尿素水タンク構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するために、本発明の建設機械の尿素水タンク構造は、旋回体と、この旋回体内に設けられたエンジンと、このエンジンの駆動力によって駆動される油圧ポンプとを有する建設機械に備えられ、前記旋回体内に設けられ、前記エンジンから排出される排気ガスを浄化する尿素水を貯蔵する尿素水タンクを備えた建設機械の尿素水タンク構造において、前記尿素水タンクの周囲を囲むと共に、前記旋回体内に前記尿素水タンクを固定する固定部材と、この固定部材と前記尿素水タンクとの間に介在させて前記尿素水タンクを保持する断熱材とを備え、前記固定部材は枠体を含み、前記断熱材は、前記固定部材と前記尿素水タンクとの間に部分的に配置され、さらに前記尿素水タンクの周囲のうち前記エンジン及び前記油圧ポンプの少なくとも一方に近い側面に接触する空気層に配置されたことを特徴としている。
【0013】
このように構成した本発明は、旋回体内に設けられたエンジンや油圧ポンプ等の機器が発生する熱によって旋回体内の温度が高くなった場合でも、尿素水タンクを旋回体内に固定する固定部材と尿素水タンクとの間に断熱材を介在させることにより、この断熱材によって固定部材の外側の熱が尿素水タンクに伝わることを抑えることができる。これにより、尿素水タンク内の尿素水の温度が上昇することを抑制することができるので、尿素水タンク内の尿素水の濃度を一定範囲内に維持することができる。また、尿素水タンクに貯蔵された尿素水の蒸発を抑えることができるので、尿素水タンク内におけるアンモニアの発生量を低減することができ、尿素水タンクがアンモニアによって腐食して劣化することを抑制することができる。
【0014】
また、本発明は、固定部材が尿素水タンクの周囲を囲んで旋回体内に尿素水タンクを固定し、断熱材が固定部材と尿素水タンクとの間に介在して尿素水タンクを保持することにより、作業に伴って車体に振動が生じても尿素水タンクが固定部材の内側で動くことを防止しているので、尿素水タンクが受ける振動の衝撃を緩和することができる。また、上述したように尿素水タンクは断熱材を介して保持されており、固定部材と接触することがないので、尿素水タンクが固定部材から局部的に強い応力を受けることを回避することができ、尿素水タンクが破損することを抑制することができる。このように、尿素水タンク内の尿素水の温度が上昇することを抑えると共に、車体の振動に伴う尿素水タンクにかかる負荷を低減することができる。
【0016】
また、本発明によれば、少ない部材で尿素水タンクを旋回体内に固定することができるので、コストを削減することができる。
【0017】
また、本発明によれば、部分的に配置された各断熱材の間に尿素水タンクと接触する空気層を確保することができる。ここで、一般的に空気は熱伝導率が低く、高い断熱効果を有するので、尿素水タンクの周囲の全体に断熱材を設けなくても部分的に配置された断熱材と空気層によって旋回体内における熱が尿素水タンクに伝わることを抑えることができる。これにより、固定部材と尿素水タンクとの間の断熱材の量を減らすことができるので、コストを大幅に削減することができる。
【0018】
また、本発明に係る建設機械の尿素水タンク構造は、前記発明において、前記断熱材のうち、前記尿素水タンクの底部に設けられる断熱材はラバー材からなることを特徴としている。このように構成すると、ラバー材が尿素水タンクを下方から支持することにより、ラバー材の弾性によって尿素水タンクにかかる負荷をより緩和することができる。特に、尿素水タンクの底部は自重に対する垂直抗力を断熱材から受けることになるので、尿素水タンクの他の部分よりも大きな負荷がかかる。そして、尿素水タンクの底部が自重、すなわち尿素水タンク(重量物)の荷重に対する抗力を断熱材から受けることに加え、作業等の振動の影響も受け易くなる。従って、ラバー材が尿素水タンクを下方から支持することにより、尿素水タンクの耐久性及び防振性をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の建設機械の尿素水タンク構造は、旋回体内に設けられたエンジンと、このエンジンの駆動力によって駆動される油圧ポンプとを有する建設機械に備えられており、旋回体内に設けられ、エンジンから排出される排気ガスを浄化する尿素水を貯蔵する尿素水タンクを備えている。そして、建設機械の尿素水タンク構造は、尿素水タンクの周囲を囲むと共に、旋回体内に尿素水タンクを固定する固定部材と、この固定部材と尿素水タンクとの間に介在させて尿素水タンクを保持する断熱材とを備えている。そのため、この断熱材によって固定部材の外側の熱が尿素水タンクに伝わることを抑えることができる。これにより、尿素水タンク内の尿素水の温度上昇を抑えて尿素水の濃度を一定範囲内に維持することができる。また、尿素水タンクに貯蔵された尿素水の蒸発を抑えることによってアンモニアの発生量も低減することができ、尿素水タンクがアンモニアによって腐食して劣化することを抑制することができる。
【0020】
さらに、本発明の建設機械の尿素水タンク構造は、固定部材が尿素水タンクの周囲を囲んで旋回体内に尿素水タンクを固定し、断熱材が固定部材と尿素水タンクとの間に介在して尿素水タンクを保持することにより、作業に伴って車体に振動が生じても尿素水タンクが固定部材の内側で動くことを防止すると共に、尿素水タンクが断熱材によって固定部材から局部的に強い応力を受けることを回避することができ、尿素水タンクが破損することを抑制することができる。このように、尿素水タンク内の尿素水の温度が上昇することを抑えると共に、車体の振動に伴う尿素水タンクにかかる負荷を低減することができる。これにより、従来よりも尿素水タンク内の尿素水の温度を適切に保持することができると共に、尿素水タンクの耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る尿素水タンク構造の第1実施形態が備えられる建設機械の一例として挙げた油圧ショベルを示す側面図である。
図2】本発明に係る建設機械の尿素水タンク構造の第1実施形態の構成を示す側面図である。
図3図2に示す本発明の第1実施形態に備えられる箱体の構成を説明する斜視図である。
図4】本発明の第1実施形態に備えられる固定部材の他の例の構成を説明する図である。
図5図4に示す固定部材における枠体の構成を説明する図である。
図6】本発明に係る建設機械の尿素水タンク構造の第2実施形態の構成を示す側面図である。
図7】本発明に係る建設機械の尿素水タンク構造の第3実施形態の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る建設機械の尿素水タンク構造を実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0023】
[第1実施形態]
本発明に係る建設機械の尿素水タンク構造の第1実施形態は、例えば図1に示すように油圧ショベル1に設けられる。この油圧ショベル1は、走行体2と、この走行体2の上側に配置され、旋回フレーム3aを有する旋回体3と、この旋回体3の前方に取り付けられて上下方向に回動するフロント作業機4とを備えている。また、旋回体3は、前方にキャブ7を備え、後方にカウンタウェイト6を備え、また、これらキャブ7及びカウンタウェイト6の間にエンジンルーム5と、このエンジンルーム5の上部に設けられた車体カバー15とを備えている。なお、車体カバー15には後述のエンジンから排出される排気ガスを外部へ放出する排出口10が設けられている。
【0024】
旋回体3は、図示されていないが、エンジンルーム5に設けられたエンジンと、このエンジンの駆動力によって駆動され、フロント作業機4に油圧を供給する油圧ポンプと、エンジンから排出される排気ガスを浄化する尿素水を貯蔵する後述の尿素水タンクとを有している。また、旋回体3は、エンジンと車体カバー15の排出口10とを接続し、エンジンから排出される排気ガスを排出口10へ導く排気管と、この排気管に設けられた還元触媒と、排気管のうち還元触媒よりも上流側に配設され、尿素水タンクから供給された尿素水を排気管内へ噴射する噴射装置とを有している。そして、噴射装置によって噴射された尿素水から生成したアンモニアが還元触媒において排気ガス中に含まれる有害な窒素酸化物を還元して無害な水と窒素に分解するようになっている。
【0025】
本発明に係る建設機械の尿素水タンク構造の第1実施形態は、図2に示すように上述した尿素水11aを貯蔵する尿素水タンク11と、この尿素水タンク11の周囲を囲むと共に、旋回体3内に尿素水タンク11を固定する後述の固定部材と、この固定部材と尿素水タンク11との間に介在させて尿素水タンク11を保持する断熱材13a,13bとを備えている。
【0026】
具体的には尿素水タンク11は、尿素水11aを補給するために上部に設けられた補給口11cと、尿素水11aが外部に漏れないように閉塞された蓋11bとを有しており、尿素水タンク11の角部は丸みを帯びた形状をしている。上述の固定部材は、例えば箱体12を含んでおり、この箱体12は、下部に設けられ、土台となる底板12aと、この底板12aに立設する4枚の側板12bと、上部に設けられ、尿素水タンク11を取り入れ又は取り出し可能に形成された上蓋12cとを有している。
【0027】
これらの4枚の側板12b及び底板12aは、図3に示すように平板を溶接等で接合して形成されている。また、底板12aの四隅には、図2に示すように箱体12を旋回体3内に固定するボルト15をそれぞれ取り付けるために4つの取付部35がそれぞれ設けられており、4枚の側板12bのうち1枚の側板12bの上端には、上蓋12cを開閉可能にするヒンジ17が取付部19を介して設けられている。また、4枚の側板12bのうちヒンジ17が設けられている側板12bと反対側の側板12bの上端には、上蓋12cを閉じた際に上蓋12cに合わさる載置台18が設けられている。なお、側板12bの平板の大きさは、尿素水タンク11の高さよりも大きく設定され、底板12a及び上蓋12cの平板の大きさは、尿素水タンク11の幅よりも大きく設定されており、尿素水タンク11が補給口11cを含めて箱体12の中に収納されるようになっている。
【0028】
そして、箱体12と尿素水タンク11の下部及び側部との間に断熱材13aが密着するように敷き詰められている。また、箱体12と尿素水タンク11の上部との間には、断熱材13bが尿素水タンク11の補給口11cを囲むように挟み込まれており、箱体12の上蓋12cを開いて尿素水タンク11の補給口11cから尿素水11aを補給できるようになっている。例えば、断熱材13bは、箱体12の内側の幅と同じ寸法の大きさに設定された幅の直方体から形成され、中央部分に尿素水タンク11の蓋11bの直径よりも大きな貫通孔13b1を有している。また、箱体12の上蓋12cがヒンジ17によって断熱材13a,13bを下方に押圧して密閉するようになっている。このように、尿素水タンク11は断熱材13a,13bに保持された状態で箱体12の中に収納されており、この箱体12は、例えば側面がエンジンの近傍に配置され、旋回フレーム3aにボルト15によって固定されている。
【0029】
このように構成した本発明の第1実施形態によれば、旋回体3内に設けられたエンジンや油圧ポンプ等の機器が発生する熱によって旋回体3内の温度が高くなった場合でも、箱体12と尿素水タンク11の下部及び側部との間に断熱材13aが敷き詰められ、箱体12と尿素水タンク11の上部との間に断熱材13bが尿素水タンク11の補給口11cを囲むように挟み込まれているので、断熱材13a,13bによって箱体12の外側の熱が箱体12に収納された尿素水タンク11に伝わることを抑えることができる。これにより、尿素水タンク11内の尿素水11aの温度が上昇することを抑制することができるので、尿素水タンク11内の尿素水11aの濃度を一定範囲内に維持することができる。従って、噴射装置が適切な濃度の尿素水11aを排気管内に供給することができるので、排気管内において排気ガス中の窒素酸化物を十分に浄化することができ、信頼性を高めることができる。
【0030】
また、エンジンや油圧ショベル等の熱を発生させる機器の近傍に配置されても、尿素水タンク11内の尿素水11aの温度が上昇することを抑制することができ、尿素水タンク11に貯蔵された尿素水11aの蒸発を抑えることができるので、尿素水タンク11内におけるアンモニアの発生量を低減することができ、尿素水タンク11がアンモニアによって腐食して劣化することを抑制することができる。
【0031】
また、本発明の第1実施形態は、尿素水タンク11は断熱材13a,13bに保持された状態で箱体12の中に収納されているので、例えば油圧ショベル1の掘削等の作業に伴って車体に振動が生じても尿素水タンク11が箱体12の中で動くことを防止することができ、尿素水タンク11が受ける振動の衝撃を緩和することができる。また、尿素水タンク11の角部は丸みを帯びているので、断熱材13a,13bが尿素水タンク11の形状に合わせて密着して尿素水タンク11を保持し易くなっており、大きな振動数の振動の影響も軽減することができる。
【0032】
さらに、尿素水タンク11は箱体12の中で断熱材13a,13bに覆われて保持されており、箱体12の内壁と接触することがないので、尿素水タンク11が箱体12から局部的に強い応力を受けることを回避することができる。特に、尿素水タンク11は断熱材13a,13bによって箱体12を旋回フレーム3aに固定するボルト15にも接触しないので、尿素水タンク11がボルト15と繰り返し接触して疲労することを防止することができる。従って、尿素水タンク11が破損することを抑制することができる。このように、尿素水タンク11内の尿素水11aの温度が上昇することを抑えると共に、車体の振動に伴う尿素水タンク11にかかる負荷を低減することができる。これにより、尿素水タンク11内の尿素水11aの温度を適切に保持することができると共に、尿素水タンク11の耐久性を向上させることができる。
【0033】
また、本発明の第1実施形態は、固定部材は箱体12を含んでいることにより、尿素水タンク11を旋回体3内に設置する場合には、例えば箱体12の上蓋12cを開いて箱体12の下部に断熱材13aを敷き、尿素水タンク11を箱体12の側板12bに接触しないように箱体12の下部に敷き詰められた断熱材13aの上に載置する。そして、尿素水タンク11と箱体12の側板12bとの間に断熱材13aを詰め込んだ後に断熱材13bの貫通孔13b1を尿素水タンク11の蓋11b及び補給口11cに通して断熱材13bを箱体12の上部に敷き詰め、上蓋12cを閉じて箱体12を旋回フレーム3aにボルト15によって固定する。このように、ボルト15を締結する工具を使用するだけでその他の特別な工具を使用することがないので、尿素水タンク11の設置作業を容易に行うことができ、作業者の負担を軽減することができる。
【0034】
また、箱体12を旋回体3内に設置した後でも箱体12の蓋12cを開いて尿素水タンク11の補給口11cから尿素水11aを補給することができるので、尿素水タンク11に貯蔵された尿素水11aの補給等のメンテナンス作業も容易に行うことができ、作業効率を向上させることができる。さらに、箱体12は旋回体3内に備えられた機器の間等に形成されたスペースに配設し易く、これらの機器間のスペースを有効に活用することができる。これにより、箱体12を設置したことに伴って箱体12と旋回体3内の機器や旋回体3の壁面との間に新たにデッドスペースが生じることを抑えることができる。
【0035】
なお、上述した本発明の第1実施形態では、図2に示すように固定部材が箱体12を含んでいる場合について説明したが、この場合に限らず、図4、5に示すように固定部材が、箱体12の代わりに例えば枠体25を含んでいても良い。この場合、固定部材は、図5に示す枠体25の6面のうち少なくとも1つの面、例えば図4に示すように4つの側面にそれぞれ格子状に設けられた平板22,23a,23bを含んでいる。
【0036】
具体的には、枠体25は、図5に示すように12本のL字型のブラケット25aを溶接等によって継ぎ合わせて構成されており、枠体25の各側面には、図4に示すように長方形の形状を有する1枚の平板22が、横枠を形成するブラケット25aの内側の中央部分を接続するように溶接等によって取り付けられている。さらに枠体25の各側面には、長方形の形状を有する2枚の平板23a,23bが、平板22と直交するように縦枠を形成するブラケット25aにそれぞれ取り付けられており、これら2つの平板23a,23bのうち平板23aは、縦枠を形成するブラケット25aの中央位置よりも若干上側に配置され、平板23bは、縦枠を形成するブラケット25aの中央位置よりも若干下側に配置されている。
【0037】
このように構成すれば、固定部材は枠体25を含んでいるので、上述したように例えば12本のL字型のブラケット25aを溶接等によって継ぎ合わせることにより、固定部材の枠組みを容易かつ安価に作成することができる。これにより、固定部材の製作コストを削減することができる。また、固定部材の枠体25の6面のうち4つの側面にそれぞれ格子状に設けられた平板22,23a,23bを取り付けることにより、固定部材の枠体25が格子状に設けられた平板22,23a,23bによって支持されるので、油圧ショベル1の掘削等の作業に伴う振動や長期間に渡る使用によって枠体25が変形することを防止することができる。
【0038】
さらに、平板22,23a,23bが固定部材の枠体25と尿素水タンク11との間に介在する断熱材13aを外側から支持しているので、枠体25の内側に尿素水タンク11を堅固に固定することができる。従って、固定部材の枠体25の側面に設けられた平板22,23a,23bによって枠体25の強度を高めることができると共に、枠体25の内側に配置された尿素水タンク11の安定性を高めることができる。
【0039】
このように、固定部材が枠体25を含んでおり、この枠体25の4つの側面に平板22,23a,23bをそれぞれ格子状に設けた場合について説明したが、断熱材が剛性を有する場合には図5に示すように枠体25に平板22,23a,23bを設けなくても良い。
【0040】
[第2実施形態]
図6は本発明に係る建設機械の尿素水タンク構造の第2実施形態の構成を示す側面図である。
【0041】
本発明の第2実施形態が前述した第1実施形態と異なるのは、第1実施形態が図2に示すように固定部材が箱体12を含んでおり、箱体12と尿素水タンク11の下部及び側部との間に断熱材13aが密着するように敷き詰められ、さらに箱体12と尿素水タンク11の上部との間に断熱材13bが尿素水タンク11の補給口11cを囲むように挟み込まれているのに対して、第2実施形態は、図6に示すように断熱材13c,13d1,13d2,13eが、例えば箱体12と尿素水タンク11との間に部分的に配置されたことである。
【0042】
この場合、断熱材13cが尿素水タンク11を下方から支持するように箱体12の下部に敷き詰められており、断熱材13eが尿素水タンク11を上方から支持するように箱体12の上部に敷き詰められている。また、2つの断熱材13d1,13d2は、尿素水タンク11を側方から支持するように尿素水タンク11の周囲を囲んでリング状に設けられ、これら2つの断熱材13d1、13d2のうち断熱材13d1は、箱体12の中央よりも若干上側に断熱材13eから離れた位置に配置され、断熱材13d2は、箱体12の中央よりも若干下側に断熱材13cから離れた位置に配置されている。
【0043】
従って、箱体12の内側では、隣接する断熱材13cと断熱材13d2の間、断熱材13d2と断熱材13d1の間、断熱材13d1と断熱材13eの間に尿素水タンク11と接触する空気層20がそれぞれ形成されている。なお、本発明の第2実施形態では、尿素水タンク11の補給口11dは、箱体12から上方へ抜け出るように第1実施形態の補給口11cよりも長く設定されている。
【0044】
また、本発明の第2実施形態は、第1実施形態の上蓋12cと異なり、中央に尿素水タンク11の補給口11dが貫通する貫通孔21c1を有する上蓋21cを備えており、この上蓋21cの四隅にはボルト30が通る図示しない貫通孔がそれぞれ設けられている。また、箱体12の上部の四隅には、上蓋21cの四隅に合わさるように取付部31がそれぞれ取り付けられており、これら各取付部31はボルト30が通る図示しない貫通孔を有している。そして、上蓋21cの貫通孔21c1に尿素水タンク11の補給口11dを挿通させた状態で上蓋21cの四隅の貫通孔が箱体12の上部の各取付部31の貫通孔に合わさるように箱体12の上に上蓋21cを載置し、4つのボルト30を上蓋21cの貫通孔及び取付部31の貫通孔にそれぞれ通して各ボルト30をナット32に締結することによって上蓋21cを箱体12に固定している。その他の構成は第1実施形態と同じである。
【0045】
このように構成した本発明の第2実施形態によれば、断熱材13c,13d1,13d2,13eは、箱体12と尿素水タンク11との間に部分的に配置されていることにより、隣接する断熱材13cと断熱材13d2の間、断熱材13d2と断熱材13d1の間、断熱材13d1と断熱材13eの間に尿素水タンク11と接触する空気層20を確保することができる。ここで、一般的に空気は熱伝導率が低く、高い断熱効果を有するので、尿素水タンク11の周囲の全体に断熱材を設けなくても部分的に配置された断熱材13c,13d1,13d2,13eと空気層20によって旋回体3内における熱が尿素水タンク11に伝わることを抑えることができる。これにより、箱体12と尿素水タンク11との間の断熱材の量を減らすことができるので、コストを大幅に削減することができる。
【0046】
[第3実施形態]
図7は本発明に係る建設機械の尿素水タンク構造の第3実施形態の構成を示す側面図である。
【0047】
本発明の第3実施形態が前述した第1実施形態と異なるのは、第1実施形態が図2に示すように箱体12と尿素水タンク11の下部及び側部との間に断熱材13aが密着するように敷き詰められ、さらに箱体12と尿素水タンク11の上部との間に断熱材13bが尿素水タンク11の補給口11cを囲むように挟み込まれているのに対して、第3実施形態は、図7に示すように第2実施形態と同様に断熱材は、例えば箱体12と尿素水タンク11との間に部分的に配置され、断熱材のうち、尿素水タンク11の底部に設けられる断熱材はラバー材27からなっていることである。また、本発明の第3実施形態では、断熱材のうち、尿素水タンク11の上部及び側部に設けられる断熱材もラバー材27からなっている。
【0048】
具体的には、箱体12と尿素水タンク11との間に13個のラバー材27が尿素水タンク11の周囲に部分的に挟み込まれており、これらの13個のラバー材27はそれぞれ直方体の形状を有している。すなわち、尿素水タンク11の下方には、13個のラバー材27のうち3個のラバー材27が配置されており、これら3個のラバー材27のうち1個のラバー材27は尿素水タンク11の中央部分を下方から支持するように配置され、他の2個のラバー材27は尿素水タンク11の底面の両端を下方からそれぞれ支持するように配置されている。また、尿素タンク11の側方には、残りの10個のラバー材27のうち8個のラバー材27が2個ずつ配置されており、これら各2個のラバー材27は、尿素水タンク11の各側面のうち上下の両端を側方からそれぞれ支持するように配置されている。さらに、尿素水タンク11の上方には、残りの2個のラバー材27が配置されており、尿素水タンク11の上面の両端を上方からそれぞれ支持するように配置されている。従って、箱体12の内側では、各ラバー材27の間に尿素水タンク11と接触する空気層20がそれぞれ形成されている。
【0049】
そして、本発明の第3実施形態は、尿素水タンク11の周囲のうちエンジン及び油圧ポンプの少なくとも一方に近い側、例えば尿素水タンク11の周囲のうちエンジンに近い側に配置された断熱材13fを備えている。上述したように、箱体12は、例えば側面がエンジンの近傍に配置されているので、断熱材13fは、尿素水タンク11の4つの側面のうちエンジンに最も近い側面に接触する空気層20に配置されている。
【0050】
このように構成した本発明の第3実施形態によれば、箱体12と尿素水タンク11との間に13個のラバー材27が尿素水タンク11の周囲に部分的に挟み込まれており、これら13個のラバー材27が尿素水タンク11を外側からそれぞれ支持することにより、13個のラバー材27の弾性によって尿素水タンク11にかかる負荷をより緩和することができる。特に、尿素水タンク11の底部は自重、すなわち尿素水タンク11(重量物)の荷重に対する垂直抗力を断熱材から受けることになるので、尿素水タンク11の他の部分よりも大きな負荷がかかる。そして、尿素水タンク11の底部が自重に対する抗力を断熱材から受けることに加え、作業等の振動の影響も受け易くなる。従って、本発明の第3実施形態では、尿素水タンク11の下方に配置された3個のラバー材27が尿素水タンク11を下方から支持すると共に、2個ずつ尿素水タンク11の側方に配置された8個のラバー材27が尿素水タンク11を側方から支持することにより、尿素水タンク11の耐久性及び防振性をより向上させることができる。
【0051】
また、本発明の第3実施形態は、断熱材13fが、尿素水タンク11の4つの側面のうちエンジンに最も近い側面に接触する空気層20に配置されているので、断熱材13fによってエンジンの駆動熱が尿素水タンク11にそのまま伝わることを防止することができ、エンジンの駆動熱の断熱を効率的に行うことができる。これにより、尿素水タンク11の周囲のうちエンジンに近い側にだけ断熱材13fを設けることにより、断熱材の量を減らしてコストをより削減することができる。
【0052】
なお、上述した本発明の第1、第3実施形態では、箱体12の上蓋12cがヒンジ17によって開閉可能に取り付けられており、本発明の第2実施形態では、箱体12の上蓋21cがボルト30とナット32によって取り付けられた場合について説明したが、この場合に限らず、尿素水タンクの補給口の位置や大きさ等に応じて、その他の部材によって固定部材に蓋をするようにしても良い。
【符号の説明】
【0053】
1 油圧ショベル(建設機械)
3 旋回体
5 エンジンルーム
10 排出口
11 尿素水タンク
11a 尿素水
11b 蓋
11c,11d 補給口
12 箱体(固定部材)
12a 底板
12b 側板
12c,21c 上蓋
13a,13b,13c,13d1,13d2,13e,13f 断熱材
15、30 ボルト
17 ヒンジ
18 載置台
19,31,35 取付部
20 空気層
13b1,21c1 貫通孔
22,23a,23b 平板
25 枠体(固定部材)
25a ブラケット
27 ラバー材(断熱材)
32 ナット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7