(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698552
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】ケーシング回転圧入装置
(51)【国際特許分類】
E02D 7/22 20060101AFI20150319BHJP
【FI】
E02D7/22
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-23827(P2011-23827)
(22)【出願日】2011年2月7日
(65)【公開番号】特開2012-162912(P2012-162912A)
(43)【公開日】2012年8月30日
【審査請求日】2013年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000177416
【氏名又は名称】三和機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100061619
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 武文
(74)【代理人】
【識別番号】100092945
【弁理士】
【氏名又は名称】新関 千秋
(72)【発明者】
【氏名】濱野 衛
(72)【発明者】
【氏名】鳥飼 光俊
(72)【発明者】
【氏名】嶋野 亨
(72)【発明者】
【氏名】野中 義夫
(72)【発明者】
【氏名】山崎 一雄
(72)【発明者】
【氏名】山本 幹夫
【審査官】
富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−208655(JP,A)
【文献】
特開2002−098340(JP,A)
【文献】
特開2008−267105(JP,A)
【文献】
特開2003−184088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/22
F24C 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に接地すべきベースフレーム(1)と、該ベースフレーム(1)上に昇降シリンダ(3)にて昇降自在に支持された昇降フレーム(2)との少くとも一対のフレームを備え、
上記一対のフレーム(1)、(2)は、平面視矩形の基盤(1a)、(2a)の前側辺から前方に至るに従い左右幅の狭くなるほぼ直角二等辺三角形状の三角盤(4)、(5)を、その直角尖端(T)を前方へ張り出した状態で、水平に延出してなり、
上記一対のフレーム(1)、(2)に、上記三角盤(4)、(5)に食いこむ開口であって、上記三角盤(4)、(5)における上記直角尖端(T)を通る中線(d)上に中心(c)をおく円形のケーシング挿通口(6)、(7)を、上記直角尖端(T)に近づけて開設し、
上記中心(c)を基準に、上記直角尖端(T)の反対側の上記一対のフレーム(1)、(2)に、上記昇降シリンダ(3)をはじめ、他のケーシング回転、圧入機器を搭載した、
ケーシング回転圧入装置。
【請求項2】
上記ベースフレーム(1)と昇降フレーム(2)とに、それぞれ複数の昇降シリンダ(3)及びケーシング回転、圧入機器を上記中線(d)を境に左右対称位置にそれぞれ設置し、
上記ベースフレーム(1)に4本のアウトリガー(22)を、そのうち1本を上記三角盤の直角尖端部(T)に、他の2本を、上記中線(d)上にある重心(G)より前方であって、上記中線(d)を境として左右対称位置に、残りの1本を上記重心(G)より後方の位置に、それぞれ設置した、
上記請求項1のケーシング回転圧入装置。
【請求項3】
上記昇降シリンダ(3)は、2本を上記中線(d)上にある重心(G)の前方であって、上記中線(d)を境として左右対称位置に設置し、
上記ベースフレーム(1)に、上記中線(d)上にある重心(G)より後方の位置に、上記昇降フレーム(2)の水平を調整するための水平調整シリンダ(21)を設置した、
上記請求項1または請求項2に記載のケーシング回転圧入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ケーシング全旋回型、ケーシング往復回転型等のケーシング回転圧入装置におけるケーシング回転、圧入機器を搭載するフレームに関するものであり、ケーシング回転圧入装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、全旋回ケーシング圧入装置における回転・圧入機器を搭載するフレームは、地盤上に接地すべきほぼ矩形盤状の水平ベースフレームと、上記ベースフレーム上に平行に位置する同じく矩形盤状の昇降フレームとからなり、この一対のフレームの中心にケーシングを垂直に挿通する円形のケーシング挿通口を開設し、その一方のベースフレームに上記昇降フレームを昇降駆動すべき油圧シリンダ内蔵の4本の上下スライドガイド及び4本のアウトリガーを、又他方の昇降フレームに、回転円筒体を上記ケーシング挿通口と同心位置に回転自在に支承し、上記回転円筒体を回転駆動する4個の油圧モータ及び上記回転円筒体にケーシングをチャックする4個のチャックシリンダを、それぞれ上記ケーシング挿通口の中心に装置の重心が位置するように対称的配置で搭載してある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のケーシング回転圧入装置では、上記のように回転、圧入機器を搭載したフレームが、ケーシング挿通口の中心について各機器を対称的配置で搭載してあるから、建造物が建てこんだ空地等、特に狭隘なコーナー地盤では、フレームを接地できても隣地との境界線近くにケーシングを圧入することは殆んど不可能に近い。
本願第1発明は、狭隘なコーナー地盤等で隣地との境界線近くまで食いこんでケーシング圧入施工を可能にする装置を提供することを目的とする。
本願第2発明は、狭隘なコーナー地盤においてもベースフレームの水平設定を確実に行うことのできるケーシング回転圧入装置を提供することを目的とする。
本願第3発明は、狭隘なコーナー地盤においても昇降フレームの水平を精確に調整することのできるケーシング回転圧入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題解決の手段として、
請求項1の発明は、
地盤に接地すべきベースフレーム
(1)と、該ベースフレーム
(1)上に昇降シリンダ
(3)にて昇降自在に支持された昇降
フレーム
(2)との少くとも一対のフレームを備え、
上記一対のフレーム
(1)、(2)は、平面視矩形の基盤
(1a)、(2a)の前側辺から前方に至るに従い左右幅の狭くなるほぼ直角二等辺三角形状の三角盤
(4)、(5)を、その直角尖端
(T)を前方へ張り出した状態で、水平に延出してなり、
上記一対のフレーム
(1)、(2)に、上記三角盤
(4)、(5)に食いこむ開口であって、上記三角盤
(4)、(5)における上記直角尖端
(T)を通る中線
(d)上に中心
(c)をおく円形のケーシング挿通口
(6)、(7)を、上記直角尖端
(T)に近づけて開設し、
上記中心(c)を基準に、上記直角尖端(T)の反対側の上記一対のフレーム
(1)、(2)に、上記昇降シリンダ
(3)をはじめ、他のケーシング回転、圧入機器を搭載した、
ケーシング回転圧入装置としたものである。
また、請求項2の発明は、
上記ベースフレーム
(1)と昇降フレーム
(2)とに、それぞれ複数の昇降シリンダ
(3)及びケーシング回転、圧入機器を上記中線
(d)を境に左右対称位置にそれぞれ設置し、
上記ベースフレーム
(1)に4本のアウトリガー
(22)を、そのうち1本を上記三角盤の直角尖端部
(T)に、他の2本を、上記中線
(d)上にある重心
(G)より前方であって、上記中線
(d)を境として左右対称位置に、残りの1本を上記重心
(G)より後方の位置に、それぞれ設置した、
上記請求項1のケーシング回転圧入装置としたものである。
また、請求項3の発明は、
上記昇降シリンダ
(3)は、2本を上記中線
(d)上にある重心
(G)の前方であって、上記中線
(d)を境として左右対称位置に設置し、
上記ベースフレーム
(1)に、上記中線
(d)上にある重心
(G)より後方の位置に、上記昇降フレーム
(2)の水平を調整するための水平調整シリンダ
(21)を設置した、
上記請求項1または請求項2に記載のケーシング回転圧入装置としたものである。
【発明の効果】
【0005】
本願第1発明では、狭隘なコーナー地盤に対してフレームの三角盤の直角尖端を押し入れた状態で設置でき、ケーシングを隣地との境界線に近い位置で容易に圧入することができる。
本願第2発明では、狭隘なコーナー地盤においても4本のアウトリガーの操作によりベースフレームを水平に設置することができ、特に三角盤の直角尖端をコーナー地盤に押し入れた際、直角尖端部のアウトリガーが三角盤の尖端部を確実に保持してベースフレームの水平設定を容易に行うことができる。
本願第3発明のケーシング回転圧入装置によれば、ケーシングの回転、圧入作業を繰り返すうちに、装置の重心の偏在等に起因して、昇降フレームに前後傾斜が発生することがあるが、このような場合水平調整シリンダの伸縮駆動により上記前後傾斜を修正して水平状態で、ケーシング圧入作業をすることができ、ケーシングの垂直圧入を確保することができ、ケーシング圧入作業精度を向上させつつ狭隘箇所におけるケーシングの垂直圧入を実現できる。
【実施例】
【0007】
以下、ケーシング全旋回圧入装置のフレームに実施した例について図面を参照して詳述する。
図1、2、3において、本装置のフレームは、地盤に接地(設置)すべき水平ベースフレーム(1)と、該ベースフレーム(1)上に平行して昇降油圧シリンダ(3)、(3)にて昇降駆動自在に支持された昇降フレーム(2)とを備える。
【0008】
上記ベースフレーム(1)及び昇降フレーム(2)は、互に同形同寸法の平面盤で、
図1に示すように平面視矩形の基盤(1a)、(2a)の各前辺から前方に至るに従い左右幅の狭くなる直角二等辺三角形の三角盤(4)、(5)を、その直角尖端部(T)を前方へ張り出した状態で、水平に延出して形成する。
各フレーム(1)、(2)には、上記三角盤(4)、(5)における直角尖端部(頂部)(T)を通る中線(d)上に中心(c)をおく円形のケーシング挿通口(6)、(7)を、上記三角盤(4)、(5)に本例では円形挿通口の略半面を食いこませた状態で、それぞれ開設してある。
【0009】
上記2個の昇降油圧シリンダ(3)、(3)は、上記ベースフレーム(1)上において、
図4に示す後述の装置全体の重心(G)より前方にあって、上記中線(d)を境とした左右対称位置に設ける。すなわち本例では、ケーシング挿通口(6)の中心(c)を通る上記中線(d)と交差する直交線(f)上にあって中心(c)から略等距離の位置のベースフレーム(1)に各シリンダの一端を取付け、各シリンダ他端を昇降フレーム(2)に取付けている。
【0010】
さらに、
図5に示すように内筒(8a)に外筒(8b)を摺動自在に差し合わせてなる伸縮自在の2本の昇降ガイドポスト(8)、(8)を、上記昇降シリンダ(3)、(3)の後方に上記中線(d)を境にして左右対称位置に配置している。昇降ガイドポスト(8)、(8)の内筒(8a)の一端をベースフレーム(1)に固定し、外筒(8b)を昇降フレーム(2)に固定してそれぞれ取りつけてある。本例では、昇降ガイドポスト(8)、(8)を、中線(d)と交差する直交線(m)上に対称的に配置している。
【0011】
上記昇降フレーム(2)のケーシング挿通口(7)に対応する位置に、回転円筒(9)をベアリング(10)を介して回転自在に支承する。該回転円筒(9)の外周に固定された大歯車(11)に、2個の油圧モータ(12)、(12)の出力軸に固定された駆動歯車(13)、(13)からアイドル歯車(14)、(14)を経て回転が伝達される。
【0012】
上記油圧モータ(12)、(12)は、昇降フレーム(2)の矩形基盤(2a)の後部上に同じく中線(d)を境とする左右対称位置に設ける。本例では直交線(m)上に対称的に設置され、又両油圧モータ(12)、(12)から上記大歯車(11)へそれぞれ回転を伝達する歯車列(13)(14)、(13)(14)も同様に中線(d)を境に左右対称位置に設置されている。
【0013】
上記昇降フレーム(2)の上方には、ケーシング挿通口(16)を有するチャック用スライドフレーム(15)を、該挿通口(16)を昇降フレーム(2)のケーシング挿通口(7)と合致させた状態で、3本のチャック駆動用油圧シリンダ(17)‥を介して上下駆動自在に支持している。このスライドフレーム(15)の下面に、ベアリング(18)を介してチャック保持リング(19)を回転自在に設けている。該保持リング(19)の下面に、多数枚のクサビ状チャックシュー(20)…をそれぞれリンクを介して連結し、各チャックシュー(20)…を、挿通口に挿通したケーシング(P)と上記回転円筒(9)との間に位置させている。
ケーシング(P)は各チャックシュー(20)…により固定状態に支持されるので、ベースフレーム(1)及び昇降フレーム(2)のケーシング挿通口(6)、(7)およびチャック用スライドフレーム(15)の挿通口(16)はケーシング(P)の外径より大径に設定している。
【0014】
上記3本のチャック駆動用油圧シリンダ(17)‥は、上記中心(c)を中心とする同心円上に配置し、そのうち1本のチャック駆動用油圧シリンダ(17)は上記直角尖端部Tに対応する位置に、他の2本は上記中線(d)を境に左右対称位置に設置される。本例では互に略120度の角度間隔をあけて3箇所に配置している。
【0015】
上記のように、本装置では各種の回転、圧入機器が、中線(d)を境に左右対称位置に配置されるから、装置全体の重心は、
図4に示すように中線(d)上における黒丸印で示した点(G)となる。
【0016】
ベースフレーム(1)の下面側には4本のアウトリガー(22)‥を取付ける。その4本のうちの1本は直角尖端部(T)に取りつけられ、他の2本は、上記重心(G)よりも前方であって上記中線(d)を境として左右対称位置に取りつけられ、残りの1本は上記重心(G)よりも後方の上記中線(d)上に取りつけられる。本例では、上記他の2本は、上記昇降シリンダ(3)、(3)の直下に取りつけられる。
【0017】
さらに、上記昇降フレーム(2)は、昇降シリンダ(3)、(3)の駆動により、昇降ガイドポスト(8)、(8)にガイドされて昇降し、それによりケーシング(P)の圧入を行うのであるが、上記重心(G)が昇降シリンダ(3)、(3)より後方にあるため、昇降フレーム(2)の昇降を繰り返す等に起因して、昇降フレーム(2)が前後に傾斜する傾向がある。これを防止するため、上記昇降シリンダ(3)と同一構成の水平調整油圧シリンダ(21)を採用し、これを上記重心(G)よりも若干後方にあってベースフレーム(1)上の中線(d)上にシリンダ一端を固定し、シリンダピストンを昇降フレーム(2)に連結してある。
したがって、水平調整油圧シリンダ(21)によりベースフレーム(1)に対して昇降フレーム(2)の傾斜を修正して水平にすると、例え、ベースフレーム(1)が地盤上面に対して傾斜しても、ベースフレーム(1)に対して昇降フレーム(2)を傾斜させることにより、地盤上面に対する昇降フレーム(2)の水平状態を維持し、ケーシング(P)の軸心方向を前後方向の傾斜に対して垂直状態に修正できる。
(25)はベースフレーム(1)と昇降フレーム(2)の矩形基盤(1a)、(2a)の後辺、(26)は矩形基盤(1a)、(2a)の左右辺、(27)は三角盤(4)、(5)の斜辺部である。
【0018】
使用においては、
図1に示す狭隘なコーナー地盤(W)に、ベースフレーム(1)と昇降フレーム(2)の三角盤(4)、(5)を押し入れ、コーナー地盤(W)に三角盤(4)、(5)の斜辺部(27)、(27)を対峙させる。
ベースフレーム(1)の下面側に設けた4本のアウトリガー(22)‥の4本のうちの1本は直角尖端部(T)に取りつけられ、他の2本は、上記重心(G)よりも前方であって上記中線(d)を境として左右対称位置に取りつけられ、残りの1本は上記重心(G)よりも後方の上記中線(d)上に取りつけているので、各アウトリガー(22)…を傾斜に合わせて接地させると、ベースフレーム(1)と昇降フレーム(2)の前後左右方向において水平状態に接地させられる。その際、直角尖端部(T)のアウトリガー(22)が三角盤(4)、(5)を安定状態に保持する。次に、ケーシング(P)をクレーンで吊って挿通口(16)、(7)、回転円筒(9)、挿通口(6)に挿通する。
【0019】
ケーシング(P)はチャックシュー(20)…を楔入して回転円筒(9)に固定状態となる。
この状態で、油圧モータ(12)、(12)の回転させて回転円筒(9)に伝達すると、ケーシング(P)の回転が開始される。次に、昇降油圧シリンダ(3)、(3)及び水平調整シリンダ(21)の駆動によりケーシング(P)を地中に圧入する。その際、水平調整シリンダ(21)を伸縮させて昇降フレーム(2)を後方から支えて前後方向の水平を維持する。
このように、平面視において、狭隘なコーナー地盤(W)の角部に、ベースフレーム(1)と昇降フレーム(2)の三角盤(4)、(5)の直角尖端部(T)を差し入れて、三角盤(4)、(5)の斜辺部(27)、(27)を対峙させられるので、矩形基盤(1a)、(2a)であれば後辺(25)とコーナー地盤(W)との間にできる三角形の隙間分、ケーシング(P)を狭隘なコーナー地盤(W)に隣地との境界線に近い位置にて垂直圧入させられる。
【符号の説明】
【0020】
1 ベースフレーム
2 昇降フレーム
3 昇降油圧シリンダ
4、5 三角盤
6、7 ケーシング挿通口
21 水平調整油圧シリンダ
22 アウトリガー
G 重心
P ケーシング
T 直角尖端部