【実施例】
【0056】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また実施例および比較例に於いて示す「部」及び「%」は特に明示しない限り絶乾質量部及び絶乾質量%を示す。
【0057】
(実施例1)
<支持体の形成>
フリーネスをCSFは450mlに調整した広葉樹晒クラフトパルプL−BKPからなるパルプスラリー中の絶乾パルプ100%に対し、タルク(NTL:日本タルク社製)5部、硫酸バンド1部、カチオン化でんぷん(ケート308:日本NSC社製)0.5部、酸性ロジンサイズ剤(AL1212、星光PMC社製)0.5部の配合で調整した紙料を各々長網抄紙機にて抄紙し、坪量90g/m
2の2層を抄き合わせ180g/m
2の基紙を製造した。
<サイズ液の塗布>
酸化澱粉(王子エースA:王子コーンスターチ社製)糊液をサイズ液とし、基紙の両面に乾燥塗工量が片面当たり1g/m
2となるようにサイズプレスで塗布し、シリンダードライヤーで乾燥した。スチールカレンダーを用いて線圧40kg/cm、25℃、2ニップ1パスの条件で表面処理を行った。
<バック層下塗りの形成>
平均粒子径3.3μmのデラミクレー(CAPIM−NP:イメリス ミネラルズ・ジャパン社製)100部の顔料にラテックス(L−1537:旭化成ケミカルズ社製)15部と水を混合し、固形分70%の塗工液を得た。該バック層の塗工液を絶乾塗工量10g/m
2となるように、インク受理層と反対側の支持体裏面に塗工・乾燥して、バック層の下塗りを形成した。
<バック層最表層の形成>
平均粒子径3.3μmのデラミクレー(CAPIM−NP:イメリス ミネラルズ・ジャパン社製)70部、平均粒子径350nmの有機顔料(L−8900:旭化成ケミカルズ社製、変性スチレン系共重合体のプラスチックピグメント、密実タイプ)20部、軽質炭酸カルシウム(TP123CS:奥多摩工業社製)10部の顔料に、ラテックス(L−1537:旭化成ケミカルズ社製)15部及び水を混合し、固形分50%の塗工液を得た。最表層バック層の塗工液を絶乾塗工量10g/m
2となるように、インク受理層と反対側のバック層下塗り層を形成した裏面に塗工・乾燥して、バック層の最表層を形成した。
<インク受容層の形成>
サイズプレス処理した支持体に、顔料として合成シリカ(ミズカシルP−78A、水澤化学工業社製)100部、結着剤としてポリビニルアルコール(PVA117:クラレ社製)10部及びエチレン−酢酸ビニル(ポリゾールEVA AD−10:昭和高分子社製)40部、更にカチオン性ポリマー(パピオゲンP−105:センカ社製)10部を用い、固形分濃度22%のインク受容層用塗工液を得た。続いて、このインク受容層用塗工液をエアーナイフコーターで絶乾塗工量10g/m
2となるように塗布・乾燥してインク受容層を塗設した。
<光沢発現層の形成>
次いで、光沢発現層塗料の顔料として、気相法シリカ(レオロシールQS30、トクヤマ社製)70部及びパールネックレス状コロイダルシリカ(スノーテックスPS−M、日産化学工業社製)30部、結着剤としてポリビニルアルコール(PVA−124:クラレ社製)6部及びアクリル樹脂(ビニブラン2684、ガラス転移温度20℃:日信化学社製)6部を用いて固形分20%の光沢発現層用塗工液を得た。この光沢発現層用塗工液をエアーナイフコーターで絶乾塗工量10g/m
2となるように塗布した。次いで、凝固剤としてホウ酸を1%及びホウ酸ナトリウム1%を含む水溶液を凝固液として絶乾塗布量1.5g/m
2となるように更に塗布して凝固処理を行ったのち、得られた塗工層表面が湿潤状態にあるうちに表面温度105℃のキャストドラムに圧着し、所謂ゲル化キャスト法(凝固法)によって実施例1のインクジェット記録用光沢紙を作製した。ここで得られた光沢紙の紙厚は190μmとなった。
【0058】
(実施例2)
支持体の形成で使用する酸性サイズ剤を0.25部とした以外は実施例1と同様にアルバム用インクジェット光沢紙を得た。
【0059】
(実施例3)
バック層の有機顔料を20部から10部、デラミクレーを70部から80部とした以外は実施例1と同様にアルバム用インクジェット光沢紙を得た。
【0060】
(実施例4)
バック層の有機顔料を20部から30部、デラミクレーを70部から60部とした以外は実施例1と同様にアルバム用インクジェット光沢紙を得た。
【0061】
(実施例5)
バック層の有機顔料を平均粒子径200nmのL−8999(旭化成ケミカルズ社製、変性スチレン系共重合体のプラスチックピグメント、密実タイプ)とした以外は実施例1と同様にアルバム用インクジェット光沢紙を得た。
【0062】
(実施例6)
バック層の有機顔料を平均粒子径500nmのL−8801(旭化成ケミカルズ社製、変性スチレン系共重合体のプラスチックピグメント、密実タイプ)とした以外は実施例1と同様にアルバム用インクジェット光沢紙を得た。
【0063】
(実施例7)
光沢発現層を形成するときのキャスト温度を95℃とした以外は実施例1と同様にアルバム用インクジェット光沢紙を得た。
【0064】
(実施例8)
支持体の形成する時の坪量を60g/m
2の3層を抄き合わせ180g/m
2とした以外は実施例1と同様にアルバム用インクジェット光沢紙を得た。
【0065】
(実施例9)
バック層の下塗り層を設けなかった以外は実施例1と同様にアルバム用インクジェット光沢紙を得た。
【0066】
(実施例10)
光沢発現層を形成するときのキャスト法をリウェットキャスト法(再湿潤法)とした以外は実施例1と同様にアルバム用インクジェット光沢紙を得た。リウェットキャスト法の具体的条件としては、実施例1と同様に光沢発現層用塗工液をエアーナイフコーターで絶乾塗工量10g/m
2となるように塗布したのち、アーチドライヤーで水分6%前後となるまで乾燥、温水をリウェット液として再湿潤し、キャストドラム温度110℃でキャスト処理して、実施例10のインクジェット記録用光沢紙を作製した。ここで得られた光沢紙の紙厚は190μmとなった。
【0067】
(実施例11)
光沢発現層を形成するための塗工液に使用する顔料を気相法シリカ(レオロシールQS30、トクヤマ社製)30質量部、パールネックレス状コロイダルシリカ(スノーテックスPS−M、日産化学工業社製)70質量部とした以外は実施例1と同様にアルバム用インクジェット光沢紙を得た。
【0068】
(実施例12)
支持体を形成する際、坪量60g/m
2の2層を抄き合わせ120g/m
2の基紙に変更した以外は、実施例1と同様にアルバム用インクジェット光沢紙を得た。ここで得られた光沢紙の紙厚は130μmとなった。
【0069】
(実施例13)
支持体を形成する際、坪量90g/m
2の3層を抄き合わせ270g/m
2の基紙に変更した以外は、実施例1と同様にアルバム用インクジェット光沢紙を得た。ここで得られた光沢紙の紙厚は270μmとなった。
【0070】
(実施例14)
支持体を形成する際、酸性ロジンサイズ剤(AL1212、星光PMC社製)を0.5部から1.0部に変更した以外は、実施例1と同様にアルバム用インクジェット光沢紙を得た。ここで得られた光沢紙のコブ吸収度は5g/m
2となった。
【0071】
(実施例15)
バック層の有機顔料を平均粒子径1000nmのローペイクHP1055(ローム・アンド・ハーツ社製、スチレン−アクリル系有機顔料、中空タイプ)とし、かつその有機顔料を20部から3部、デラミクレーを70部から97部とした以外は実施例1と同様にアルバム用インクジェット光沢紙を得た。
【0072】
(実施例16)
バック層の有機顔料を平均粒子径1000nmのローペイクHP1055(ローム・アンド・ハーツ社製、スチレン−アクリル系有機顔料、中空タイプ)とし、かつその有機顔料を20部から13部、デラミクレーを70部から87部とした以外は実施例15と同様にアルバム用インクジェット光沢紙を得た。
【0073】
(実施例17)
バック層の有機顔料を平均粒子径500nmのニッポールMH5055(日本ゼオン社製、スチレン−アクリル系有機顔料、中空タイプ)20部から7部、デラミクレーを70部から93部とした以外は実施例1と同様にアルバム用インクジェット光沢紙を得た。
【0074】
(実施例18)
バック層の有機顔料を平均粒子径1100nmのAE852(JSR社製、スチレン−アクリル系有機顔料、中空タイプ)とした以外は実施例17と同様にアルバム用インクジェット光沢紙を得た。
【0075】
(比較例1)
光沢発現層塗料を塗工後キャスト処理せずに、熱風乾燥した後キャレンダーで平滑処理をした以外は実施例1と同様にアルバム用インクジェット光沢紙を得た。
【0076】
(比較例2)
支持体の形成で使用する酸性サイズ剤を0.1質量部とした以外は実施例1と同様にアルバム用インクジェット光沢紙を得た。
【0077】
(比較例3)
支持体の形成で単層抄きとし180g/m
2の基紙を製造したとした以外は実施例1と同様にアルバム用インクジェット光沢紙を得た。
【0078】
このようにして得られたアルバム用インクジェット記録シートにおいて、厚さ、テーバー剛度、光沢度、インクジェット印字品質、アルバム製本の加工適性をそれぞれ下記の方法で評価し、表1に示した。
【0079】
<厚さ>
JISP 8118:1998「紙及び板紙‐厚さ及び密度の試験方法」で規定する測定方法に従い、紙の厚さを測定した。
【0080】
<支持体裏面層の吸水度測定>
JIS P−8140:1998「紙及び板紙−吸水度試験方法−コッブ法」で規定する測定方法に従い、裏面の吸水度を測定した。尚、接触時間は30秒とした。
【0081】
<光沢度測定>
JIS Z―8741:1997「鏡面光沢度−測定方法」規定する測定方法に従い、アルバム用インクジェット光沢紙の表面の鏡面光沢度を測定した。尚、入射角は20度で測定した。
【0082】
<インクジェット印字品質>
PX−G5300(セイコーエプソン社製)で印字して、印字の滲みの度合いを主体として目視評価した。
◎:滲みがなく、非常に明瞭に文字が読み取れる。(実用レベル)
○:滲みが少なく、明瞭に文字が読み取れる。(実用レベル)
△:滲みがややあり、少し文字が読み取りにくく、劣る。(使用下限)
×:滲みがあり、文字が読み取りにくく、劣る。(使用不可)
【0083】
<アルバム製本の加工適性>
得られたアルバム用インクジェット記録シートについて、
1.A3判のインクジェット記録シートに画像をインクジェット印字後、折機(スタール:ハイデル社製)にて印字面を谷折の二つ折りでA4判とし、これを10枚準備する。
2.糊丁合い機(全自動丁合い機:ミタニ社製)で糊付け、丁合いし10枚重ねる。
3.圧着加工後、背固め加工(背固め機:芳野社製)したサンプルについて端面のずれ及び糊のは見出し等に付いて視感評価し加工適性を評価した。
◎:端面のズレや糊のはみ出しは無く非常にきれいにアルバム加工できる。(実用レベル)
○:端面のズレ若しくは糊のはみ出しはほぼ無くアルバム加工できる。(実用レベル)
△:端面のズレ若しくは糊のはみ出しが多少あるがアルバム加工できる。(使用下限)
×:端面のズレ若しくは糊のはみ出しがあり使用できない。(使用不可)
【0084】
<紙癖>
アルバム製本の加工適性を評価したサンプルを平置きとし、台からの浮き具合等により紙癖(反り)について評価した。
◎:各ページについて全くそりが無く、製本した状態でも各ページ間に全く隙間が無く良好。(実用レベル)
○:各ページについて若干反りはあるが、製本した状態は各ページ間に全く隙間が無く良好。(実用レベル)
△:各ページについてやや反りはあるが、製本した状態でも各ページ間に若干隙間がある程度で使用可能。(使用下限)
×:各ページについて反りが大きく、製本した状態でも各ページ間に隙間が出来、使用不可。(使用不可)
【0085】
<コックリング>
得られたアルバム用インクジェット記録シートのコックリングについて評価した。具体的には、・・・・糊付け加工後の印刷面を観察しそのボコツキの程度を視感評価した。
◎:ボコツキが全く無く良好。(実用レベル)
○:ボコツキが無く良好。(実用レベル)
△:多少ボコツキがあるが使用可能レベル。(使用下限)
×:ボコツキが大きく使用不可。(使用不可)
【0086】
【表1】
PP:プラスチックピグメント
【0087】
表1より、実施例1〜18が優れた性質を達成しており好ましいことが判る。比較例1〜3は上記条件から外れるもので、本発明のアルバム用インクジェット記録シートとしては不適である。即ち、比較例1の場合にはキャスト処理をしないため写真ライクとならずアルバム用紙としての機能を果たさない。比較例2の場合はコブ吸水度が高くなったため糊の吸収が過大となり結果的に光沢面がボコついてしまう。比較例3の場合は単層抄きとしたため地合が悪化し、裏面に糊付けしたときに助長され、結果的に光沢面がボコついてしまう。
【0088】
以上に説明した通り、本発明を実施することで、光沢度が高く、写真ライクな画像が得られ、且つアルバム製本の加工適性に優れたアルバム用インクジェット用光沢紙を提供することができる。