特許第5698601号(P5698601)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698601
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】折板屋根受具
(51)【国際特許分類】
   E04D 3/36 20060101AFI20150319BHJP
【FI】
   E04D3/36 A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-114175(P2011-114175)
(22)【出願日】2011年5月20日
(65)【公開番号】特開2012-241455(P2012-241455A)
(43)【公開日】2012年12月10日
【審査請求日】2014年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175973
【氏名又は名称】三晃金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 邦男
(72)【発明者】
【氏名】大野 文義
(72)【発明者】
【氏名】塚越 勇
(72)【発明者】
【氏名】井上 五丈
(72)【発明者】
【氏名】深田 伸一
【審査官】 南澤 弘明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−047195(JP,A)
【文献】 実開平04−052115(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 3/36−3/362
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上板と下板とを有するケーシングと、第1ローラ及び第2ローラと、帯状の形成バンドと、帯状の抵抗力バンドとからなり、前記ケーシングの上板と下板との間に、前記第1ローラ及び第2ローラが水平軸上を回転可能に設けられ、前記上板の下面側の一方側と前記下板の上面側の他方側との間に前記形成バンドの一端と他端とがそれぞれ固定され、該形成バンドの中間が前記第1ローラと第2ローラとの間に食い違い状に巻き掛けされると共に、前記抵抗力バンドの一端が前記上板の下面側の一方側に固着され、且つその中間が前記第1ローラと前記形成バンドの間に挟持されると共に、その他端は自由端としてなるローラマイトバネユニット上にガイド部材が設けられ、前記第1ローラ又は第2ローラの軸部及び前記ガイド部材が、前記ケーシングの両側に形成された横長孔を介して前記ケーシングに対して摺動可能に設けられ、前記ガイド部材は屋根面固定用の部位としてなることを特徴とする折板屋根受具。
【請求項2】
上板と下板とを有するケーシングと、第1ローラ及び第2ローラと、帯状の形成バンドと、帯状の抵抗力バンドとからなり、前記ケーシングの上板と下板との間に、前記第1ローラ及び第2ローラが水平軸上を回転可能に設けられ、前記上板の下面側の一方側と前記下板の上面側の他方側との間に前記形成バンドの一端と他端とがそれぞれ固定され、該形成バンドの中間が前記第1ローラと第2ローラとの間に食い違い状に巻き掛けされると共に、前記抵抗力バンドの一端が前記上板の下面側の一方側に固着され、且つその中間が前記第1ローラと前記形成バンドの間に挟持されると共に、その他端は自由端としてなるローラマイトバネユニットの下側には台座が、その前後にガイド部材がそれぞれ設けられ、前記第1ローラ又は第2ローラの軸部が前記台座上の軸受部に回転のみ可能に設けられ、前記ケーシングの両側に形成された横長孔を介して前記ケーシングが前記台座及び前記ガイド部材に対して摺動可能に設けられ、前記ケーシングは屋根面固定用の部位としてなることを特徴とする折板屋根受具。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記第1ローラ及び第2ローラの直径を異なるようにしつつ、前記第1ローラ径を大きくし、且つ前記形成バンド及び抵抗力バンドの横幅を一定としてなることを特徴とする折板屋根受具。
【請求項4】
請求項1又は2において、前記第1ローラ及び第2ローラの直径を同等となるようにし、且つ前記形成バンド及び抵抗力バンドの横幅を一定としてなることを特徴とする折板屋根受具。
【請求項5】
請求項1,2,3又は4において、記第1ローラ及び第2ローラには、前記形成バンド,前記抵抗力バンドの横幅でその合計分の板厚分だけ深さが下がるような段部がそれぞれに分割されて形成されてなることを特徴とする折板屋根受具。
【請求項6】
請求項1,2,3,4又は5において、前記抵抗力バンドの複数枚として積層状態にしてなることを特徴とする折板屋根受具。
【請求項7】
請求項1,2,3,4,5又は6において、前記屋根面固定用の部位としての吊子が設けられ、前記ケーシング上又は横に固着されてなることを特徴とする折板屋根受具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折板屋根の流れ方向で且つ長手方向が長尺な屋根板材において、その長手方向に熱伸縮が発生しても、良好に対応できる折板屋根受具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、折板屋根の流れ方向で且つ長手方向が長尺な屋根板材において、その長手方向に熱伸縮が発生しても、該熱伸縮に対応するような受具が種々開発されている。その折板屋根において、山部と谷部とが連続する折板屋根では、外気温度の変化によって、屋根板材の長手方向が長尺な場合、その長手方向に沿って伸縮する。
【0003】
この伸縮量は、夏等の高温時には極めて大きく、熱歪が発生することにより、特に馳締等の連結部の吊子及び支持具による固定箇所では、熱伸縮による大きな歪が現れて、きしみ音が出る音鳴り現象が発生していたので、これを解消すべく、熱伸縮に対応して適宜可動する可動型屋根受具(スライド型固定金具ともいう。)が開発されており、この種のものとして特許文献1及び特許文献2に開示されている。
【0004】
該可動型屋根受具は、施工時の温度条件並びに、完成後の使用状態における伸び側、縮み側の変位を吸収するため、確実にスライド代を確保する必要がある。しかし、施工時、スライド中央位置に吊子をセットした(センタリング)状態で可動型屋根受具を取り付けても、その後屋根葺き作業等を行うと、その段階で可動型屋根受具の吊子が勝手にスライドしてしまい、不適切な(伸縮吸収代が無い)位置で屋根板材に固定されることがしばしば生じ得る。
【0005】
この場合、伸縮代のない可動型屋根受具に熱伸縮力が集中し、可動型屋根受具が破損する虞も生じていた。折板屋根の屋根板材によって施工された屋根で、特に大形建造物においては、従来の可動型屋根受具を使用しても、そのスライド性能が十分発揮されないことがあった。また、固定型屋根受具(拘束型固定金具ともいう。)に対して、屋根板材の過大な熱伸縮による荷重が働き、前記固定型屋根受具には損傷が引き起こされることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−255648
【特許文献2】特開2009−203718
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような破損については次の要因が考えられる。その折板屋根板材には、熱伸縮力以外に、屋根板材自身の重量、積雪荷重、風荷重、地震荷重等の様々の負荷が掛かる。これらの負荷が掛かった状態では、円滑にスライドしないことが生じ得る。また建物の供用期間中にはこれらの負荷により、スライド性能が低下することが考えられる。一般には熱伸縮に対応できるような可動型屋根受具については、特許文献1及び特許文献2に開示されているが、これらの特許文献1,2では上記の問題点や或は施工時、スライド中央位置から吊子がずれてしまうという不都合な点は解決されていない。
【0008】
また、一般に、二重屋根に使用される固定型屋根受具の方が熱伸縮による負荷は大きい。これは、二重屋根を使用する建物では、空調等を備えることが一般であり、そのために、躯体や二重屋根の下葺き用の屋根板材の温度条件の変動が小さく、上葺き用の屋根板材の温度変化がそのまま熱伸縮負荷として断熱具にかかることになる。また、上葺き屋根板材の下に断熱材があることで、熱が上葺き屋根板材の下に逃げにくくなるため、上葺き屋根板材の温度変動が大きくなり、可動型屋根受具の開発の要望がある。
【0009】
金属製の折板屋根の熱伸縮による場合には、その長さ位置、例えば、先端の50mの位置と、その箇所より20m内側では、伸縮量が相違し、伸縮量に応じた,ばね定数となって、これを変えるには現実的には困難である。そこで、どの位置でも、同じ力が作用するものが望まれていた。その役割をなす原理機構として、ローラマイトばねが存在していることが判明しているが、如何にして応用するかは重要な課題であった。
【0010】
そのローラマイトばねにおいては、抵抗力及び耐久性は、帯状の形成バンドの曲げ性状に大きく依存しており、その両方を満足させるには、あまり形成バンドの厚みを上げられないし、ロール径を大型化することも問題視されている。その大型化及び形状などの面で実用範囲が限定される。特に、前記形成バンドが両ロール間で圧縮されることで、バンド寿命に大きく影響するものである。
【0011】
本発明が解決しようとする課題(技術的課題又は目的等)は、折板屋根の流れ方向としての屋根板材の長手方向が長尺で、その長手方向に熱伸縮が発生しても、それを良好に追従することができ、特に、伸縮量の変化にかかわらず、どの位置でも、同じ力が作用するように開発し、その力で抵抗力を持たせるようにすることを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、発明者は上記課題を解決すべく鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、上板と下板とを有するケーシングと、第1ローラ及び第2ローラと、帯状の形成バンドと、帯状の抵抗力バンドとからなり、前記ケーシングの上板と下板との間に、前記第1ローラ及び第2ローラが水平軸上を回転可能に設けられ、前記上板の下面側の一方側と前記下板の上面側の他方側との間に前記形成バンドの一端と他端とがそれぞれ固定され、該形成バンドの中間が前記第1ローラと第2ローラとの間に食い違い状に巻き掛けされると共に、前記抵抗力バンドの一端が前記上板の下面側の一方側に固着され、且つその中間が前記第1ローラと前記形成バンドの間に挟持されると共に、その他端は自由端としてなるローラマイトバネユニット上にガイド部材が設けられ、前記第1ローラ又は第2ローラの軸部及び前記ガイド部材が、前記ケーシングの両側に形成された横長孔を介して前記ケーシングに対して摺動可能に設けられ、前記ガイド部材は屋根面固定用の部位としてなることを特徴とする折板屋根受具としたことにより、前記課題を解決した。
【0013】
請求項2の発明を、上板と下板とを有するケーシングと、第1ローラ及び第2ローラと、帯状の形成バンドと、帯状の抵抗力バンドとからなり、前記ケーシングの上板と下板との間に、前記第1ローラ及び第2ローラが水平軸上を回転可能に設けられ、前記上板の下面側の一方側と前記下板の上面側の他方側との間に前記形成バンドの一端と他端とがそれぞれ固定され、該形成バンドの中間が前記第1ローラと第2ローラとの間に食い違い状に巻き掛けされると共に、前記抵抗力バンドの一端が前記上板の下面側の一方側に固着され、且つその中間が前記第1ローラと前記形成バンドの間に挟持されると共に、その他端は自由端としてなるローラマイトバネユニットの下側には台座が、その前後にガイド部材がそれぞれ設けられ、前記第1ローラ又は第2ローラの軸部が前記台座上の軸受部に回転のみ可能に設けられ、前記ケーシングの両側に形成された横長孔を介して前記ケーシングが前記台座及び前記ガイド部材に対して摺動可能に設けられ、前記ケーシングは屋根面固定用の部位としてなることを特徴とする折板屋根受具としたことにより、前記課題を解決した。
【0014】
請求項3の発明を、請求項1又は2において、前記第1ローラ及び第2ローラの直径を異なるようにしつつ、前記第1ローラ径を大きくし、且つ前記形成バンド及び抵抗力バンドの横幅を一定としてなることを特徴とする折板屋根受具としたことにより、前記課題を解決した。また、請求項4の発明を、請求項1又は2において、前記第1ローラ及び第2ローラの直径を同等となるようにし、且つ前記形成バンド及び抵抗力バンドの横幅を一定としてなることを特徴とする折板屋根受具としたことにより、前記課題を解決した。
【0015】
請求項5の発明を、請求項1,2,3又は4において、記第1ローラ及び第2ローラには、前記形成バンド,前記抵抗力バンドの横幅でその合計分の板厚分だけ深さが下がるような段部がそれぞれに分割されて形成されてなることを特徴とする折板屋根受具としたことにより、前記課題を解決した。請求項6の発明を、請求項1,2,3,4又は5において、前記抵抗力バンドの複数枚として積層状態にしてなることを特徴とする折板屋根受具としたことにより、前記課題を解決した。請求項7の発明を、請求項1,2,3,4,5又は6において、前記屋根面固定用の部位としての吊子が設けられ、前記ケーシング上又は横に固着されてなることを特徴とする折板屋根受具としたことにより、前記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明においては、ケーシングは固定してガイド部が可動するものであり、折板屋根の流れ方向で且つ屋根板材の長手方向が長尺で、その長手方向に熱伸縮が発生しても、ローラマイトばねユニットが可動して、良好に追従することができ、弾性力にて一定の抵抗力を持たせるようにすることができる。特に、折板屋根が熱伸縮しても、形成バンド及び抵抗力バンドの存在にて、熱伸縮力に対しての反力(抵抗力)が発生することとなり、折板屋根を伸びにくくすると同時に熱歪み等を最小限にできる折板屋根受具を提供できる。特に、本発明では、ローラマイトばねによる力が、長手方向の熱伸縮量が変化しても、どのような位置であっても一定であることが最大の効果であると共に、その力を抜いた(解除)したときには、その位置に留まるようになるという効果がある。さらに、抵抗力バンドの取付状態を確実にでき、長年の使用に対して耐久性を得られる。
【0017】
また、請求項2の発明では、ケーシングが可動するものであり、請求項1の発明と同等の効果を奏する。請求項3の発明では、前記第1ローラ及び第2ローラの直径を異なるようにし、バンド幅を一定としたことで、より小型化できると共に、簡易な構成で比較的安価に提供できる利点がある。請求項4の発明では、前記第1ローラ及び第2ローラの直径を同等にしても、少し嵩張るが、請求項3の発明と同等の効果を生ずる。請求項5の発明では、前記形成バンドが外れないと共に、バンドにロール圧縮が作用せず、耐久性が向上するという効果がある。請求項6の発明では、小型であっても格段と抵抗力を持たせるようにすることができる利点がある。請求項7の発明では、屋根部位に取付が簡易にできる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(A)は本発明の第1実施形態の斜視図、(B)は(A)に使用するローラマイトばね箇所の主要部材の斜視図、(C)は(B)の簡易側面図、(D)は(C)と等価図面、(E)は第1ローラの正面図である。
図2】(A)は本発明の第1実施形態の側面図、(B)は(A)の縦断側面図、(C)は(A)のY1−Y1矢視断面図である。
図3】(A)は本発明の第1実施形態の基本位置の縦断側面図、(B)は(A)において左方向に力が作用した場合の縦断側面図、(C)は(A)において右方向に力が作用した場合の縦断側面図である。
図4】(A)は第1実施形態の本発明を二重屋根に取付けた要部縦断側面図、(B)は(A)を含む二重屋根の概略正面図である。
図5】(A)は本発明の第2実施形態の通常位置の縦断側面図、(B)は(A)において右方向に力が作用した場合の状態図、(C)は(A)において左方向に力が作用した場合の状態図である。
図6】(A)第2実施形態の本発明を馳締折板屋根に取付けた要部正面図、(B)は第2実施形態の本発明を重合折板屋根に取付けた要部断面図、(C)は第2実施形態の本発明を嵌合折板屋根に取付けた要部断面図である。
図7】(A)はローラマイトばねの原理構成の断面図、(B)は(A)に作用する変位置に対する力の関係グラフ、(C)は(A)の状態から左側にロールを移動させた状態図、(D)は(A)の状態から右側にロールを移動させた状態図である。
図8】(A)は図1(D)と同等図、(B)は(A)のY2―Y2矢視断面図である。
図9】(A)は別の実施形態であって、抵抗力バンドを2枚とした状態図、(B)は(A)のY3―Y3矢視断面図である。
図10】(A)は別の実施形態であって、抵抗力バンドを3枚とした状態図、(B)は(A)のY4―Y4矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の2つの実施形態について図面に基づいて説明する。図1乃至図4は、第1実施形態である。図5及び図6が第2実施形態である。特に、本発明の第1実施形態は、図1及び図2に示すように、ローラマイトばねユニットAが固定状態とされ、軸部21付き第1ローラ2と、第2ローラ3とが可動可能に構成されている。
【0020】
つまり、主に、ケーシング1と、軸部21付き第1ローラ2と、第2ローラ3と、帯状の形成バンド4と、帯状の抵抗力バンド5とからなる前記ローラマイトばねユニットAと、ガイド部材6とから構成されている。すなわち、本発明は、後述するローラマイトばね(図7参照)構成自体ではなく、これを応用したものである。具体的には、ローラマイトばね構成に対して抵抗力バンド5を加えた構成である。
【0021】
何れにしても、頂部61と両側部62,62とからなる門形状などのガイド部材6が、固定状態の前記ローラマイトばねユニットA(ケーシング1は固定状態)に対して摺動可能に設けられている。前記ガイド部材6は、屋根面固定部8(吊子81等)など一体形成されていることが多い。さらには、重合折板屋根〔図6(B)参照〕の場合には、前記ガイド部材6の頂部に直接に取付けられることもあるし、図6(C)の場合のように、嵌合折板屋根の場合には、屋根面固定部8は、嵌合用吊子となる。81aは吊子部、81bは取付部である。
【0022】
前記ケーシング1は、横長で断面四角形の中空状をなし、上板11と下板12との間の両側に側板13, 13が設けられている。必要に応じて後部板14(図2及び図3のそれぞれ(A)及び(B)において右側端)で塞がれているが、前側(同図のおいてそれぞれ左側端)は開口15されている。また、前記後部板14は設けないで開口にすることもある。
【0023】
前記側板13,13には、横長孔15,15が形成されている。前記ケーシング1内には、第1ローラ2及び第2ローラ3が水平軸上を回転可能に設けられている。具体的には、前記第1ローラ2の両側に突出した軸部21,21が前記横長孔15,15に遊挿されて回転しつつ摺動可能に構成されている。そして前記第1ローラ2に対する前記第2ローラ3は接触する程度に近接して配置されている。また、第2ローラ3にも軸部31を設けることもある。
【0024】
前記形成バンド4及び抵抗力バンド5共に、ばね鋼材製で、板厚t=一定で、しかも、原則として板幅bも一定に形成されている。さらに、前記第1ローラ2の外径rは、前記第2ローラ3の外径rよりも小さく形成されている。実施形態の図面では、約2倍程度に形成されているが、これ以上にしたり、同等の径にすることもある。前記形成バンド4及び抵抗力バンド5共に、弾性性状を持ちうる板材であれば、可能であり、材質に限定されない。さらに、前記抵抗力バンド5は、ワイヤ、糸でも使用可能である。
【0025】
前記第1ローラ2及び第2ローラ3には、前記形成バンド4の横幅でその板厚分だけ深さが下がるような段部22,32が形成されることがある〔図1(E)参照〕。このようにすると、図3(A)〜(C)、図5(A)〜(C)のように前記第1ローラ2などが繰り返し移動、回転しても、前記形成バンド4が外れないと共に、バンドにロール圧縮が作用せず、耐久性が向上するという効果がある。また、抵抗力バンド5用の段部も、前記第1ローラ2のみに形成することもある。
【0026】
前記ケーシング1の上板11の下面側の一方側〔図2(A)及び(B)の左側参照]と、前記下板12の上面側の他方側〔図2(A)及び(B)の右側参照]との間に前記形成バンド4の一端と他端とがそれぞれ固定されている。そして、該形成バンド4の中間が前記第1ローラ2と第2ローラ3との間に食い違い状(S字状又は逆S字状など)に巻き掛けされている。この食い違い状は、図1乃至図3において、この紙面上から見ると、逆S字状をなしているが、裏から見たとするとS字状と見ることができるという総称である。
【0027】
さらに、前記抵抗力バンド5の中間が前記第1ローラ2と前記形成バンド4の間に挟持されつつ、前記抵抗力バンド5の一端〔図2(A)及び(B)の左側端参照]は、前記形成バンド4の一端と共に前記ケーシング1の上板11の下面側の一方側〔図2(A)及び(B)の左側参照]にビス4aなどで固着され、前記抵抗力バンド5の他端(自由端)は、前記第1ローラ2と第2ローラ3との間であって、前記ケーシング1の前側〔図2(A)及び(B)の左側参照]の開口15から突出するように構成され、このようにしてローラマイトばねユニットAが構成されている。
【0028】
第1実施形態では、ローラマイトばねユニットAのケーシング1が固定状態とされ、軸部21付き第1ローラ2が前記ケーシング1の左右の横長孔15内を可動可能に設けられている。具体的には、前記軸部21の両端が、前記ガイド6の側部に回転のみ可能に設けられ、前記軸部21と共に前記ガイド6が前記横長孔15の範囲内で摺動可能に設けられている。つまり、屋根面固定部8(吊子81等)が固着された前記ガイド6が、前記形成バンド4及び前記抵抗力バンド5を介して固定状態の前記ケーシング1に対して摺動可能に設けられている。
【0029】
第1実施形態での前記ローラマイトばねユニットAのケーシング1には、この下部に、下部屋根支持台座7Aが固着されている。具体的には、図4(A)に示すように、下部側の折板屋根Rの馳部に対して載置される台座本体71Aと、その馳部を押圧する押圧部72Bとからなり、取付時には、ボルトにて押圧固定するように構成されている。
【0030】
図4(A)及び(B)に示すような二重屋根の場合に熱伸縮の度合いが大きく、屋根面固定部8(吊子81等)付きのガイド6が摺動する効果は大きいものであるが、図示しないが、前記ローラマイトばねユニットAのケーシング1が、一重屋根の梁,母屋などの構造材に設けることも多い
【0031】
ここで、ローラマイトばねについての作用を解説しておく。この場合は、抵抗力バンド5は除いておく。つまり、基本的には、図7に示すように、ケーシング1(方形状フレーム)と、第1ローラ2,第2ローラ3と、可撓性の形成バンド4とからなる。該形成バンド4の板厚t及び幅bは一定とし、第1ローラ2の外径r、第2ローラ3の外径rとする。これらを条件とする。そして、第1ローラ2,第2ローラ3の中心のM(モーメント)の釣り合いと、はりの理論を適用すると(E:ヤング率)、力Fは数式1のようになる。
【0032】
【数1】
【0033】
すなわち、力F=一定となる。つまり、前記第2ローラ3が、図7(B)のように移動して変位(変位量W)しても、力Fに変化はなく、一定値となっている。このことは、コイルばね(コイルスプリングばね)の線形とは著しく異なる値である。また、板厚tが厚い場合(1mm以上など)には、繰返し荷重に対して、早期に破断してしまう欠点があり、このため、板厚tを薄材(約0.2mm〜約0.5mm程度が好ましい。
【0034】
本発明においては、特に、前記形成バンド4と同等材質で板厚t及び幅bは一定とした抵抗力バンド5の中間が前記第1ローラ2と前記形成バンド4の間に挟持されている構成としたものである。このようにすると、前記形成バンド4のみで構成した場合に比較して、数倍から十数倍に力Fが作用するものである。さらに、破断寿命を飛躍的に増加させることができる。
【0035】
また、図9のように、2枚、図10のように、3枚という複数の抵抗力バンド5を設けることもある。このように構成することで、前記形成バンド4のみで構成した場合に比較して、数倍から十数倍に力Fを作用させることができるとともに、著しく小型化ができる。つまり、第1ローラ2及び第2ローラ3の直径を小径にできる。このように、本発明は、前記抵抗力バンド5を介在させ、簡単な構成ながら、形成バンド4のみとは異なり、数倍から十数倍の抵抗力を得ることができ、さらには、破断寿命をも向上させうる。
【0036】
このような、効果を奏するにかかわらず、図7(C)の位置又は図7(D)の位置になるように力Fを加えても、該力Fを取り除いた瞬間でも、そのままの位置で静止状態を保っている。
【0037】
まず、施工時においては、折板屋根Rの屋根板材91を、本発明の折板屋根受具を介して取付けたときには、図3(A)に示すように、前記ケーシング1の略中央位置に第1ローラ2が位置するような中立位置にセットされている。具体的には、屋根施工直後であっても、常に、前記吊子81のセンタリングが保持できる。
【0038】
施工後において、前記折板屋根Rの屋根板材9が長手方向に熱伸縮した場合であって、例えば、図3(B)において、紙面の左側に伸張したときには、前記屋根板材9に固定されている屋根面固定部8(吊子81)と前記ローラマイトばねユニットAは、同時に紙面の左側に移動する。
【0039】
すると、Fなる力で前記第2ローラ3が動く。このとき、最大の点は、コイルばねとは異なり、ローラマイトばねでは、力F=一定となる点が大きい。図3(B)において、一方側(同図において右側)で押圧されつつ反力Fが生ずる。つまり、折板屋根Rの熱による伸長に対して前記ローラマイトばねの付勢力が作用し、左側への伸長を抑制する作用をなす。
【0040】
施工後において、例えば、図3(C)において、紙面の右側に伸張したときには、前記屋根板材9に固定されている屋根面固定部としての吊子81と折板屋根Rとが同時に紙面の右側に力Fにて移動する。すると、本発明品にも同一の力Fが、反対方向なる左側方向に反力として作用する。このとき、一定の力にできる。つまり、折板屋根Rの熱による伸長に対して前記形成バンド4及び抵抗力バンド5の付勢力が作用し、右側への伸長を抑制する作用をなすものである。
【0041】
本願発明の第2実施形態は、前記ローラマイトばねユニットAの第1ローラ2及び第2ローラ3の位置が移動不能に構成される(定位置)と共に、前記ケーシング1が前記ガイドに対して移動可能に構成されたタイプである。前記ケーシング1に前記屋根面固定部8が固定状態に構成されている。具体的には、図5に示すように、構成部材としては、第1実施形態と同様な部材の他に台座7Bが必要となる。
【0042】
位置として固定状態の前記第1ローラ2の軸部21に対して前記ケーシング1が移動可能に構成されている。つまり、構成的には、前記台座7Bを除いては、第1実施形態の構成部材と同様である。すなわち、前記ローラマイトばねユニットAの構成は、第1実施形態と同一である。そして、第1ローラ2及び第2ローラ3の位置が可動するのが第1実施形態であり、その位置が固定状態であるのが第2実施形態である。
【0043】
つまり、第2実施形態では、第1ローラ2の軸部21の両端部が、前記台座7Bのベース状の台座本体71Bの両側に立設された軸受部72B,72Bの回転のみ可能に設けられている。また、前記ガイド6は門形状をなし、前記台座本体71Bの前後位置に設けられ、前記ケーシング1が前記横孔部16,16を介して移動可能(摺動可能)に構成されている。
【0044】
また、第2実施形態での屋根面固定部8としての吊子81は、図6に示すように、前記ケーシング1上に固着されつつ、適宜移動可能(摺動可能)に構成されている。その作用としては、第2実施形態では、第1ローラ2の軸部21の両端部が軸受部72B,72Bに回転のみ可能に設けられ、移動不能(定位置)であるが、今度は、前記ケーシング1が可動するものであり、作用的には第1実施形態と同一の作用をなす。特に、図6においては、一重屋根の場合をであって、第2実施形態の場合について記載したが、この場合でも、二重屋根対応にできるのは勿論である。
【0045】
特に、第1実施形態及び第2実施形態でも、施工時においては、ローラマイトばねの作用により、常に、前記吊子81のセンタリングが保持できる。さらに、施工後において、前記折板屋根Rの流れ方向で且つ屋根板材9が長手方向に熱伸縮した場合であって、どの位置であっても、常に同一の反力としての力Fが生ずる。つまり、折板屋根Rの熱による伸長に対して前記ローラマイトばねの付勢力が作用し、左側又は右側への伸長を抑制する作用をなす。特に、センタリング保持のみならず、任意の位置での保持も可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…ケーシング、11…上板、12…下板、2…第1ローラ、15…横長孔、
22,32…段部、3…第2ローラ、4…形成バンド、5…抵抗力バンド、
A…ローラマイトばねユニット、6…ガイド部材、81…吊子。
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