特許第5698605号(P5698605)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698605
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】機器収納用キャビネット
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/18 20060101AFI20150319BHJP
【FI】
   H05K7/18 E
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-120827(P2011-120827)
(22)【出願日】2011年5月30日
(65)【公開番号】特開2012-248757(P2012-248757A)
(43)【公開日】2012年12月13日
【審査請求日】2014年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】早川 直希
【審査官】 遠藤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−271683(JP,A)
【文献】 実開平07−027214(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面が開放されたキャビネット本体を有し、当該キャビネット本体内に機器を組み付ける為の機器取付金具を備え、当該機器取付金具に機器を組み付けて収納する機器収納用キャビネットにおいて、
前記機器取付金具は、キャビネット本体に固定するための固定片を上部左右及び下部左右の4箇所備えると共に、前記キャビネット本体には前記固定片を連結する連結部を備え、
前記連結部は、前記上部左右端部の固定片と前記下部左右端部の固定片とで前後方向の固定位置が異なるよう配置され、
前記固定片が前記連結部に固定されると、前記機器取付金具は上方或いは下方に傾倒した状態で固定されることを特徴とする機器収納用キャビネット。
【請求項2】
個々の前記固定片に対して、前記連結部はキャビネット本体側面の前後2箇所に設けられ、上部の固定片が前後のうちの一方の連結部に固定され、下部の固定片が前後のうちの他方の連結部に固定されることを特徴とする請求項1記載の機器収納用キャビネット。
【請求項3】
前記連結部が前記キャビネット本体の側面に固着されたナットであり、前記固定片はボルトを使用して前記連結部に固定され、
前記ボルトにより前記固定片が前記ナットに固着されて前記機器取付金具が取り付けられることを特徴とする請求項1又は2記載の機器収納用キャビネット。
【請求項4】
前記機器取付金具は、上下の連結部に対応する固定片を両端に備え、前記キャビネット本体の側面に沿って左右端に配置される縦長の架け金具と、左右の前記架け金具間に掛け渡されるレール金具とを有し、
前記架け金具は上下対称に形成されると共に、前記固定片にはボルトを挿通する孔を有することを特徴とする請求項3記載の機器収納用キャビネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器等を収納するキャビネットに関し、詳しくは取り付けた機器への配線の接続やケーブルの引き回しが容易な機器収納用キャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
ブレーカ等の機器を収納する例えば分電盤等のようなキャビネットは、機器の取付や配線作業をし易くするために、機器を取り付ける作業時にキャビネット内に配置した機器取付金具を傾けておき、その状態で配線作業ができるよう構成されたものがある。例えば特許文献1では、機器を取り付けるためのレールをキャビネットから取り外して前傾させた状態で保持する保持金具をキャビネットの背面とレールとの間に設け、機器とキャビネット背面との間に一時的に広い空間を形成させることで配線作業をし易くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−271683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の構成は、機器取付金具であるレールは4隅がキャビネット背面にナットとボルトにより固着される構造であるため、レールを前傾させるためにはこの4箇所のナットを全て外さなければならず、作業が面倒であった。
また、機器を組み付けた後は前傾姿勢からキャビネット背面に平行な状態に戻されるため、レール背部の空間は配線やケーブルを引き回すには十分ではなく、外部から導入されたケーブル等はレールの前面側に配設され、機器の組み付けスペースを使用していた。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、機器取付金具とキャビネット背面との間の空間を配線空間として利用し易くし、更に外部から導入したケーブル等を機器取付金具の背部に無理なく配設できる機器収納用キャビネットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、前面が開放されたキャビネット本体を有し、当該キャビネット本体内に機器を組み付ける為の機器取付金具を備え、当該機器取付金具に機器を組み付けて収納する機器収納用キャビネットにおいて、前記機器取付金具は、キャビネット本体に固定するための固定片を上部左右及び下部左右の4箇所備えると共に、前記キャビネット本体には前記固定片を連結する連結部を備え、前記連結部は、前記上部左右端部の固定片と前記下部左右端部の固定片とで前後方向の固定位置が異なるよう配置され、前記固定片が前記連結部に固定されると、前記機器取付金具は上方或いは下方に傾倒した状態で固定されることを特徴とする。
この構成によれば、機器取付金具が傾斜した状態で取り付けられるため、機器取付金具の一方の背部空間を大きくでき、機器に接続する配線の収容空間として利用できる。よって、配線作業の際に機器取付金具を一時的に取り外す作業が必要がない。また、ケーブル導入側となる機器取付金具の一端を前方に配置されるよう傾倒させれば、機器取付金具の背部に直接ケーブルを導入することが可能であり、機器取付面を機器の組み付けに有効に利用できる。そして、すっきりした配線を実施できる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、個々の前記固定片に対して、前記連結部はキャビネット本体側面の前後2箇所に設けられ、上部の固定片が前後のうちの一方の連結部に固定され、下部の固定片が前後のうちの他方の連結部に固定されることを特徴とする。
この構成によれば、機器取付金具の傾倒方向を上向き或いは下向きに容易に変更できる。よって、キャビネットからの配線の引出方向が上下何れからであっても部材の変更や追加を必要とせず容易に対応できる。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の構成において、前記連結部が前記キャビネット本体の側面に固着されたナットであり、前記固定片はボルトを使用して前記連結部に固定され、前記ボルトにより前記固定片が前記ナットに固着されて前記機器取付金具が取り付けられることを特徴とする。
この構成によれば、キャビネット側の連結部はナットであるため、機器取付金具を取り付ける場合、固定片をスライドさせることで容易にナットに位置合わせでき、固定片を突起部に係合させるような面倒な操作が必要なく、作業し易い。また、連結部は側板に設けられるため、別途キャビネットの背板に立設させる等の必要が無く安価に構成できる。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載の構成において、前記機器取付金具は、上下の連結部に対応する固定片を両端に備え、前記キャビネット本体の側面に沿って左右端に配置される縦長の架け金具と、左右の前記架け金具間に掛け渡されるレール金具とを有し、前記架け金具は上下対称に形成されると共に、前記固定片にはボルトを挿通する孔を有することを特徴とする。
この構成によれば、左右の架け金具は同一の形状にできるため、機器取付金具は架け金具とレール部材の2種類の部材で構成することが可能であり、管理し易いし安価に構成できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、機器取付金具が傾斜した状態で取り付けられるため、機器取付金具の一方の背部空間を大きくでき、機器に接続する配線の収容空間として利用できる。よって、配線作業の際に機器取付金具を一時的に取り外す作業が必要がないし、ケーブル導入側となる機器取付金具の一端を前方に配置されるよう傾倒させれば、機器取付金具の背部に直接ケーブルを導入でき、機器取付面を機器の組み付けに有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る機器収納用キャビネットの一例を示す斜視図であり、扉板を省略したキャビネット本体を示している。
図2図1のキャビネット本体の分解図である。
図3】機器を取り付けた状態を説明するための断面説明図である。
図4】機器を取り付けた状態を説明するための他の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係る機器収納用キャビネットの一例を示す斜視図であり、前面が開放されたキャビネット本体を示している。図1において、1はキャビネット本体、2は収納する機器を組み付けるための機器取付金具であり、このキャビネット本体1の前面を図示しない扉板により閉塞して機器収納用キャビネットは構成される。
キャビネット本体1は、四角形の箱体であり、周囲を閉塞する左右側板3,3、天板4及び底板5と、背部を閉塞する背板6とを備えている。
【0013】
図2はキャビネット本体1と機器取付金具2とを分離した説明図であり、図2に示すように、キャビネット本体1の左右側板3,3の上下端部には、機器取付金具2を連結するためのナット7が溶接されている。ナット7は前後位置に2個(前側ナット7a,奥側ナット7b)取り付けられ、前後何れかが使用されて機器取付金具2が連結される。前側ナット7a同士、奥側ナット7b同士は、それぞれ背板6から同一の距離に設置されている。
【0014】
機器取付金具2は、左右に縦配置される略棒状の架け金具11と、左右の架け金具11,11間に掛け渡される略帯状のレール金具12とで構成され、架け金具11は側板3の上下に設けられたナット7,7間に掛け渡される長さを有し、レール金具12を取り付けるためにキャビネット本体1の背板6に平行に配置される取付面11aが長さ方向に一様に設けられている。この取付面11aには適宜部位にレール金具12をネジ止めするネジ孔13が設けられている。
【0015】
架け金具11の両端にはキャビネット本体1に固定するための固定片11bが設けられている。固定片11bは、側板3に面するよう取付面11aから直角に折り曲げ形成され、その略中央にはボルト(図示せず)を挿通するための透孔14が穿設されている。そして、両端に設けられた固定片11bは同一形状で形成され、架け金具11全体が長さ方向に対称に形成され、上下反転することで左右の架け金具11,11は同一部材が使用できるよう構成されている。
尚、固定片11bの透孔14は、架け金具11の長さ方向に長い長孔として形成されており、傾倒した状態での固定に加えてキャビネット背板6に平行となる従来の固定形態での取り付けも可能としている。
【0016】
一方、レール金具12は、架け金具11にネジ止めしたり機器を組み付けるための長孔15が適宜間隔で複数穿設されている。このレール金具12は、例えば公知のDINレールが使用される。
【0017】
このように構成された機器取付金具2のキャビネット本体1への取り付け、更に機器の組み付けを次に説明する。図1に示すように機器取り付け金具2の前面が斜め上方を向くよう傾倒させて取り付ける場合、上側固定片11bには奥側ナット7bを使用し、下側固定片11bには前側ナット7aを使用する。そして、使用するナット7に対して固定片11bを介して図示しないボルトを螺入し、機器取付金具2を取り付ける。
【0018】
図3はこの取付状態で機器8を搭載した様子を示している。このように機器取付金具2を後方に傾倒させて取り付けることで、キャビネット下部の機器取付金具2の背部に大きな空間を形成でき、キャビネット本体1の下部から配線16を引き出したりケーブルを引き込む場合、機器取付金具2の背部空間を利用して実施できる。尚、17はナット7に螺入したボルトを示している。
また、図4は高さ方向が短く機器を横方向のみに列設して搭載する構成のキャビネットの他の例を示している。このように架け金具11を短くできる場合は、機器取付金具2を大きく傾倒させることができ、配線16の機器への繋ぎ込みがし易くなる状態が更にし易く成る。
【0019】
このように、機器取付金具2が傾斜した状態で取り付けられているため、機器取付金具2の一方の背部空間を大きくでき、機器8に接続する配線16の収容空間として利用でき、スムーズに配線できる。よって、配線作業の際に機器取付金具2を一時的に取り外して配線する作業が必要がない。また、ケーブル導入側となる機器取付金具2の一端を前方に配置されるよう傾倒させれば、機器取付金具2の背部に直接ケーブル等を導入することが可能であり、機器取付面を有効に利用できる。そして、すっきりした配線を実施できる。
更に、ナット7を前後2箇所に設けたことで、機器取付金具2の傾倒方向を上向き或いは下向きに容易に変更でき、キャビネット内へのケーブル導入方向或いは配線を送出する方向が上下何れからであっても、部材の変更や追加を必要とせず容易に対応できる。
また、キャビネット本体1にはナット7を取り付けるだけなため、機器取付金具2を取り付ける際、固定片11bをスライドさせることで容易にナット7に位置合わせでき、突起部に係合させるような面倒な操作が必要なく、作業し易い。
また、ナット7はキャビネット本体1の側板3に設けられるため、別途キャビネット本体1の背板6に立設させる等の必要が無く安価に構成できるし、機器取付金具2は架け金具11とレール部材12の2種類の部材で構成されるので、管理し易いく安価に構成できる。
【0020】
尚、上記実施形態では機器取付金具2の下部を前方に配置して上向きに傾倒させた場合を示したが、上方から配線を送出する場合は、機器取付金具2を下方に傾倒させてキャビネット上部の機器取付金具2背部に大きな空間を形成すればよい。
また、キャビネット本体1を上下反転して使用可能に形成すれば、キャビネット本体1に設けるナット7は前後双方に設ける必要がなく、上下何れか一方を後方に設け、他方を前方に設けることで、傾倒方向の反転はキャビネット本体1を反転させることで実施できる。
【符号の説明】
【0021】
1・・キャビネット本体、2・・機器取付金具、7(7a,7b)・・ナット(連結部)、11・・架け金具、11b・・固定片、12・・レール金具、16・・配線、17・・ボルト。
図1
図2
図3
図4