(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記異物除去部は、前記挿入部の先端部に設けられた、前記処置具の挿抜方向に対して傾斜した凹凸面であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の内視鏡。
前記異物除去部は、前記処置具の挿抜方向に対して傾斜した、前記挿入部の先端部の傾斜面に設けられた1又は2以上の凸部であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の内視鏡。
前記異物除去部は、前記挿入部の先端部に設けられた前記処置具の挿抜方向に対して傾斜した傾斜面と、前記開口部に連通する処置具挿通チャンネルの内壁面との境界部に形成されたエッジ部であることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
前記異物除去部は、前記先端部から突出した突出部に設けられ、かつ前記突出部は、前記先端部に設けられた洗浄ノズルと前記先端部の外周部との接線を含む平面よりも低い位置にあることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
なお、以下の説明に用いる各図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものもあり、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、及び各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるものではない。
(第1の実施の形態)
(構成)
図1は、本実施の形態に係わる医療装置としての内視鏡の構成を示す構成図である。内視鏡1は、被写体内の観察対象部位へ挿入する細長の挿入部2と、この挿入部2の基端部に連設された操作部3と、この操作部3の側面より延設されたユニバーサルケーブル4と、を有して構成されている。
【0014】
細長い挿入部2は、その先端に、撮像ユニットなどを搭載する先端硬質部である先端部11を有し、この先端部11の基端側に湾曲自在な可動部としての湾曲部12が連設されている。さらに、この湾曲部12の基端側に表面が軟性の管状の部材より形成される長尺で可撓性を有する可撓管部13が連設されている。
【0015】
操作部3は、操作把持部を構成する操作部本体14と、挿入部2の可撓管部13の基端側に接続される折れ止め部15と、この折れ止め部15の近傍に配設された挿入部2内の処置具挿通チャンネルの開口部16と、を有して構成されている。
【0016】
操作部本体14には、挿入部2の湾曲部12を湾曲操作するための複数の湾曲操作ノブ17が回動自在に配設されるとともに、送気送水等のためにユーザにより操作されるスイッチ類18などが設けられている。なお、湾曲操作ノブ17は、湾曲部12を上下方向に湾曲操作するためのUD湾曲操作ノブと、湾曲部12を左右方向に湾曲操作するためのRL湾曲操作ノブとを有し、これらが重畳配設されている。
【0017】
図2は、挿入部2の先端部11の先端面の構成図である。
図2は、挿入部2の先端部の先端面を平面視したときの先端面の構成を示す。
図2に示すように、先端部11の先端面11aには、観察窓21,照明窓22,23、洗浄ノズル24,及び処置具開口部25が設けられている。
【0018】
対物窓である観察窓21の基端側すなわち背後には、観察窓21を通った被写体からの観察光を撮像し、内視鏡装置のモニタに内視鏡画像(
図6参照)として表示するための対物レンズ及び撮像素子からなる撮像ユニット21a(
図3参照)が配置されている。照明窓22,23の基端側すなわち背後には、各照明窓から被写体に照明光を照射するための、照明レンズと、ライトガイド(あるいは発光素子)とが配置されている。洗浄ノズル24の基端側すなわち背後には、洗浄ノズル24から観察窓21の表面を水で洗浄するために、水を流す送水管路があり、洗浄ノズル24に接続されている。撮像ユニット、ライトガイド、送水管路、処置具挿通チャンネル等は、図示しない先端硬質部材内に取り付けられている。
【0019】
処置具開口部25は、挿入部2内の処置具挿通チャンネル25a(
図3参照)と連通しており、操作部3の開口部16から挿入された処置具(例えば電気メス)が処置具開口部25から突没できるように構成された開口である。
【0020】
処置具開口部25の開口縁部の一部には、処置具に付着した異物を除去するための異物除去面26が形成されている。異物除去部としての異物除去面26は、処置具開口部25の開口縁部において、観察窓21側の開口縁部の一部が削り取られるようにして形成されている。
【0021】
図3は、
図2のIII−III線に沿った、内視鏡1の挿入部2の先端部11の部分断面図である。なお、
図3では、関連のある構成部材のみが示され、他の部材は、省略されている。先端部11は、図示しない先端硬質部材の先端側に装着された先端カバー11bを有する。先端硬質部材の基端側は、糸巻き部11cにより、先端硬質部材に固定されたシース11dによって覆われている。
図3では、観察窓21の基端側に設けられた撮像ユニット21aの一部と、処置具開口部25に連通する処置具挿通チャンネル25aが示されている。すなわち、内視鏡1は、少なくとも撮像部を有する挿入部2の先端部11に処置具開口部25を有し、その開口部25と連通し処置具31を挿抜可能な処置具挿通チャンネル25aを有する。
【0022】
異物除去面26は、
図2及び
図3に示すように、観察窓21から離れるにつれて、先端面11aからの深さが深くなり、かつ先端面11a上の削り取りの幅が広くなるように、形成されている。言い換えると、異物除去面26は、処置具開口部25の開口縁部の観察窓21の中心に最も近い部分が、最も深くなるように、形成されている凹部である。
さらに、挿入部2の先端部の先端面11aを平面視したときに、処置具開口部25の中心と観察窓21の中心とを結ぶ線LC(二点鎖線で示す)上に、異物除去面26を形成するように削り取られた開口縁部の中央を位置付け、この線LC上において、異物除去面26の縁部が、観察窓21に近くなり、かつその線LCから離れるに従って、異物除去面26の縁部が、観察窓21から遠くなるように形成されている。
【0023】
従って、異物除去面26がこのような斜面を有しているので、後述するように、処置具31の先端部31aを生体組織に押し付けて傾斜させたときの傾斜方向が、線LCから外れる方向であっても、先端部31aは、異物除去面26の傾斜面に沿って滑って、その傾斜方向が線LCに一致するように、自然に誘導される。
【0024】
また、異物除去面26は、処置具31の先端部31aが異物除去面26に当たっているときに、処置具開口部25の開口縁部において、内視鏡画像内に処置具31の先端部31aが写り込む範囲(すなわち撮像ユニットの視野範囲)に入るような範囲に形成されている。よって、撮像ユニットの視野範囲内に、処置具31の先端部31aが写りこむことで、術者が確実に異物の除去作業が行えるようになっている。また、開口部25の開口縁部の一部にだけ、すなわち部分的に最小限に、異物除去面26を設けるので、挿入部2の先端部の先端面のレイアウトの自由度の制約も少なくなり、挿入部2の細経化にも繋がる。
【0025】
なお、異物除去面26が形成される処置具開口部25の開口縁部における範囲は、
図2において点線R1で示すように、上述した撮像ユニットの視野範囲を含む、やや広い範囲でもよい。
【0026】
異物除去面26の表面は、先端面11aとは表面性状の異なる面であり、例えば細かな凹凸が形成されている。その凹凸は、後述するように、処置具の先端部に付着した異物が擦り取ることができる程度の凹凸である。例えば、異物除去面26は、異物の除去性を高めるように、凹凸のヤスリ状である。
【0027】
以上のように、処置具31に付着した異物を除去するための異物除去部である異物除去面26は、処置具開口部25の開口縁部の少なくとも一部に、設けられている。そして、異物除去面26は、その開口縁部における撮像部である撮像ユニットのための対物窓である観察窓21側の一部に設けられている。異物除去面26は、挿入部2の先端部11に設けられた、処置具31の挿抜方向に対して傾斜した凹凸面である。
(作用)
図3から
図5を用いて、処置具31の先端部31aに付着した異物がどのように除去されるかを説明する。
図3では、処置具挿通チャンネル25a内には、処置具31が挿通されて、その先端部31aが処置具開口部25から突出している。例えば、術者は、内視鏡1を用いて、高周波電流を用いた電気メスである処置具31を処置具挿通チャンネル25aに挿通させて、内視鏡的粘膜下層剥離述(ESD:Endoscopic Submucosal Dissection)の処置を行うことができる。
図3では、処置具31の先端部31aが、病変部を含む生体組織LTに触れている。
【0028】
内視鏡的粘膜下層剥離述では、術者は、内視鏡1の処置具挿通チャンネル25aの処置具開口部25から、処置具31のESD用ナイフ(フレックスナイフ、ITナイフ等)である先端部31aを突出させ、内視鏡装置のモニタに表示される観察視野範囲内にて先端部31aを粘膜下層にもぐりこませ、高周波焼灼装置にて通電し粘膜剥離を行うことができる。その際、術者は、先端部11からの処置具31の先端部31aの突出長を調整しつつ、内視鏡1の湾曲操作を行って先端部31aの向きを変えながら切開及び剥離を行う。
【0029】
繰り返し通電を行い、切開と剥離を続けていると、血液等によるナイフの焦げ付きが先端部31aの表面に付着する。
図4は、処置具31の先端部31aに異物が付着した状態を示す、内視鏡1の挿入部2の先端部11の部分断面図である。
図4は、生体組織等の焦げ付きである異物FMが先端部31aの外表面全体に付着している状態を示している。
【0030】
図5は、異物が除去されるときの状態を示す、内視鏡1の挿入部2の先端部11の部分断面図である。
術者は、先端部31aに付着した異物FMを除去するとき、まず、内視鏡装置のモニタに表示される内視鏡像を見ながら、生体粘膜LTとの距離に応じて先端部31aを処置具開口部25から突出させる。
【0031】
そして、述者は、処置具31の先端部31a(例えばESDナイフ)を生体粘膜LTに押し付けて、
図5に示すように、処置具挿通チャンネル25aの処置具開口部25に設けられた異物除去面26に先端部31aを押し付けるように傾ける。先端部31aをこのように傾けることにより、異物除去面26に処置具31の先端部31aが接触する。この接触した状態において、挿入部2の軸方向に沿って処置具31を前後に進退させると、
図5において矢印で示すように、処置具31の先端部31aは、異物除去面26に対して移動する。その結果、先端部31aの異物FMと異物除去面26が擦れあうので、先端部31aの表面に付着した焦げ付き、汚物等の異物FMが機械的に除去される。なお、異物除去面26に処置具31の先端部31aが接触した状態において、挿入部2の軸方向に沿って挿入部2を前後に進退させてもよく、処置具31の先端部31aは異物除去面26に対して相対的に移動する。
【0032】
異物FMの除去後は、処置具31の先端部31aを押し付けていた生体組織LTとの距離を適切に確保することにより、先端部31aが、異物除去面26へ押し付けられ傾いた状態から、
図3に示したように、異物除去面26への押し付け状態から解放され真っ直ぐに伸びた状態に戻るので、術者は、通常の処置を行うことができる。
【0033】
図6から
図8は、内視鏡装置のモニタ上に表示される内視鏡画像の例を示す図である。
図6は、処置具31の先端部31aを処置具開口部25から突出させたときの内視鏡画像の例を示す図である。
図6の内視鏡画像41では、処置具31の先端部31aとその先端部31aの基端側のシース部31bが表示されている。術者は、
図6に示す内視鏡画像41を見ながら、生体組織LTに対して処置を行うことができる。
【0034】
また、術者は、処置具31の先端部31aの表面に異物FMが付着した場合、処置具31を基端側に引き込む(すなわち先端部31aを処置具開口部25の処置具挿通チャンネル25a内に引っ込ませる)と、内視鏡画像は、
図7のようになる。
【0035】
図7は、処置具31の先端部31aに付着した異物FMを除去するために、基端側に引き込んだときの内視鏡画像の例を示す図である。
図7に示すように、先端部31aには、異物FM(二点鎖線で示す)が付着している。
図7の内視鏡画像41を見ながら、術者は、内視鏡画像に先端部31aが写り込まれている状態を維持しつつ、処置具31の先端部31aを生体組織LTに押し付けた状態で、例えば処置具31を挿入部2の軸方向に沿って前後させることによって、先端部31aに付着した異物を除去することができる。
【0036】
図8は、術者が、先端部31aを異物除去部26の最も深い部分に向かう方向から外れた方向に傾斜させながら、先端部31aを生体組織LTに押し付けたときの、内視鏡画像の例を示す図である。
【0037】
例えば、
図2において、2点鎖線L1で示すように、術者が先端部31aを生体組織LTに押し付けたとする。
図2及び
図3に示したように、異物除去面26は、処置具開口部25の中心と観察窓21の中心とを結ぶ線LCに直交する断面において、断面形状の中央部分が最も先端面11aから最も深くなるように形成されている。よって、
図8に示すように、術者が、先端部31aを異物除去部26の最も深い中央部分から外れた方向に傾斜させながら、先端部31aを生体粘膜LTに押し付けたとしても、先端部31aは、異物除去部26の表面に沿ってその最も深い中央部分に向かう方向に自然に移動する。すなわち、
図2において二点鎖線L1で示す方向に、先端部31aを生体組織LTに押し付けても、先端部31aは、線LCで示す、異物除去面26の最も深い中央部分に向かう方向A1に自然に修正される。
図8の内視鏡画面41上においても、先端部31aが矢印A1で示す方向に変化することにより、術者はこの修正を見ることができる。
【0038】
よって、上述した異物除去面26によれば、術者が処置具31を生体組織LTに押し付けて傾けた際に、先端部31aがより確実に内視鏡の観察視野内に写り込むようになるので、術者は、内視鏡画像の略中央で焦げ付き等の異物除去作業を行うことができる。
【0039】
また、異物除去面26が処置具挿通チャンネル25aの処置具開口部25の開口縁部の少なくとも一部に設けられているので、処置具挿通チャンネル25aの内径が小さくなることはなく、処置具の挿通性にも影響は無く、結果として通常の操作性が確保されている。
【0040】
上述した実施の形態の変形例について説明する。
(変形例1)
上述した異物除去面26は、凹凸であるが、1又は2以上の突起を有する面でもよい。
図9は、異物除去面26Aが、異物除去部としての1つの凸部26aを有する例を説明するための先端部11の部分断面図である。
図9の異物除去面26Aも、
図2に示す異物除去面26と同様に、処置具31の挿抜方向に対して傾斜した面である。
図9に示すような、異物除去面26Aに形成された1つの凸部26aによっても、先端部31aの異物FMを除去することができる。なお、凸部26aは、点状の突起形状でも、刃形状でもよい。さらに、凸部26aは、2以上でもよい。
(変形例2)
さらに、上述した異物除去部は、処置具挿通チャンネル25aとの段差部に設けられたエッジ部であってもよい。
図10は、先端面11aの傾斜面26Bと処置具挿通チャンネル25aとの段差部26bに設けられたエッジ部を説明するための先端部11の部分断面図である。
図10の傾斜面26Bも、
図2に示す異物除去面26と同じ位置に形成されている。段差部26bの処置具挿通チャンネル25a側には、異物除去部としてのエッジ部26b1が形成されている。すなわち、異物除去部は、挿入部2の先端部に設けられた処置具31の挿抜方向に対して傾斜した傾斜面と、処置具開口部25に連通する処置具挿通チャンネル25aの内壁面との境界部に形成されたエッジ部である。
【0041】
よって、
図10に示すような、段差部26bに設けられたエッジ部26b1によっても、処置具31の先端部31aの異物FMを除去することができる。
(変形例3)
さらに、異物除去部は、先端面11aに設けられていてもよい。
図11は、異物除去部26Cが、処置具開口部25の周囲の一部に、先端面11aから突出するように設けられている例を説明するための先端部11の部分断面図である。
【0042】
図11の異物除去部26Cも、挿入部2の先端部の先端面を平面視したときに、
図2に示す異物除去面26と同じ位置に形成されている。異物除去部26Cは、先端面11aから突出した突出部26cの、処置具開口部25側に設けられている。異物除去部26Cは、上述した異物除去面26と同様に凹凸部を有している。さらに、異物除去部26Cが設けられた突出部26cの先端面11aからの高さは、洗浄ノズル24と先端カバー11bの周辺部との接線(一点鎖線で示す)を含む平面PPよりも低い高さを有する。
【0043】
すなわち、異物除去部26Cは、挿入部2の先端部の先端面から突出した突出部26cに設けられ、かつ突出部26cは、先端部に設けられた洗浄ノズル24と先端部の外周部との接線を含む平面PPよりも低い位置にあり、先端部が生体組織LTに当接しても、異物除去部26Cが生体組織LTを傷つけることがない。
よって、
図11に示すような、異物除去部26Cによっても、先端部31aの異物FMを除去することができる。
(変形例4)
上述した実施の形態では、異物除去面26は、処置具開口部25の開口縁部の一部に設けられているが、異物除去面は、処置具開口部25の開口縁部の周囲すなわち全周に亘って設けても良い。
【0044】
図12は、本変形例に係る挿入部2の先端部の先端面の構成図である。
図13は、
図12のXIII−XIII線に沿った、内視鏡1の挿入部2の先端部11の部分断面図である。
【0045】
本変形例4では、異物除去部である異物除去面26Dは、処置具開口部25の開口縁部の全周に亘って設けられている。このような構成によっても、先端部31aの異物FMを除去することができる。異物除去面26Dも、異物の除去性を高めるように、凹凸のヤスリ状の凹凸を有する。本変形例4の内視鏡によれば、処置具31の先端部31aの傾きがあらゆる角度に向いていても、焦げ付き等の異物の除去作業が可能になる。特に、内視鏡1の被検体内のポジションや被検体の解剖学的特性により一方向のみの処置具の押し付けが困難な時にも、いずれの方向に処置具31の先端部31aを傾斜させても、異物除去部に擦り付けることができるので、異物の確実な除去が可能になる。
なお、本変形例4において、異物除去部としての異物除去面が、凹凸部を有しているが、本変形例4の異物除去部は、上述した変形例1及び2のような異物除去部であってもよい。
【0046】
以上のように、上述した実施の形態及び各変形例に係る内視鏡によれば、術者は、焦げ付き等の異物の付着した処置具を、体外に出してブラッシングをすることなく、被写体内で異物の除去を行うことができる。
【0047】
例えば、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)において、粘膜を高周波焼灼により切開、剥離を繰り返していく際に、ESD用処置具のナイフ部分には粘膜組織の付着物や、血液、炭化物等による焦げ付きが付着し、それに伴い高周波焼灼時の切れ味が落ちる。従来は、焦げ付きが発生し切れ味が落ちてくると、処置を中断し、ESD用処置具を一旦内視鏡から抜去し、ナイフ部の焦げ付きをブラシ等でこすり落とし、その後再度処置具挿通チャンネルに挿入し処置を再開するという手順を繰り返し行っており、非常に煩雑な作業であった。しかし、上述した本実施の形態及び各変形例の内視鏡によれば、このような繁雑な作業が必要なく、被検体内で異物の除去ができ、術者の疲労軽減、手技時間の短縮にも繋がる。
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、術者が処置具の先端部を生体組織に押し付けるようにして傾斜させて、先端部を異物除去部に当接させているが、本実施の形態の内視鏡は、術者が処置具の先端部を生体組織に押し付けなくても、処置具の先端部を異物除去部に押し付けることができる押し付け構造を有している。
【0048】
図14は、本実施の形態に係る挿入部2の先端部11Aの断面図である。
図14は、挿入部2の軸方向に直交する断面図である。
図15は、
図14のXV−XV線に沿った、内視鏡1の挿入部2の先端部11Aの部分断面図である。
図14は、
図15のXIV−XIV線に沿った、内視鏡1の挿入部2の先端部11Aの部分断面図である。
本実施の形態において、第1の実施の形態の内視鏡と同じ構成要素については、同じ符号を付して説明は省略し、異なる構成について説明する。
【0049】
図14に示すように、先端部11A内には、観察窓21の基端側に配置された撮像ユニット21a、照明窓22,23の基端側に配置されたライトガイド(あるいは発光素子)22a、23a、洗浄ノズル24に接続された送水管路24a、及び処置具挿通チャンネル25aが設けられている。
【0050】
本実施の形態では、異物除去部26Eは、
図15に示すように、先端カバー11b1の、処置具開口部25の開口縁部の一部に形成されている。異物除去部26Eは、刃形状を有する。
【0051】
さらに、先端部11A内には、処置具31の先端部31aを異物除去部に押し付ける押し付け機構51が設けられている。押し付け機構51は、誘導ワイヤ52と、誘導ワイヤ52に接続された可動部材53と、誘導台54とを有して構成されている。
図15に示すように、誘導台54は、処置具開口部25の基端側の空間部25A内に配置され、その空間部25A内において、後述するように回動可能となっている。
【0052】
誘導ワイヤ52は、挿入部2の軸方向に移動可能なように、挿入部2内に設けられた誘導ワイヤ52用の誘導ワイヤ用チャンネル11e内に挿通されており、術者が操作部3に設けられた図示しない操作レバーなどを操作することにより、基端側に引き込むことが可能となっている。例えば、誘導ワイヤ52は、挿入部2の基端側に引っ張るように、バネ部材などにより常時付勢されており、操作レバーを操作すると、誘導ワイヤ52が、挿入部2の基端側に引かれるようになっている。
【0053】
誘導ワイヤ52の先端に接続された円柱状の可動部材53は、一部が細く形成されている細径部53aを有する。挿入部2の軸方向における誘導ワイヤ52の移動と共に、可動部材53もその軸方向に沿って移動する。可動部材53は、先端部11Aの先端側の位置と、基端側の位置の2つの位置の間で移動可能となっている。
【0054】
誘導台54は、先端部11の先端硬質部材11fに固定された軸部材55を回動中心に回動可能な部材である。誘導台54は、先端部31aを押圧する押圧部54aと、可動部材53の細径部53aに係合する係合部54bとを有する。
【0055】
押圧部54aは、
図14に示すように、略半円筒形状を有し、かつその略半円筒形状の内側に、処置具31の先端部31aが係合する形状を有する。
誘導台54は、略L字形状の部材であり、L字形状の部材の一方の延出部が押圧部54aで、他方の延出部が係合部54bとなっている。
図15に示すように、軸部材55がL字形状の部材の屈曲部を通るように、配置される。
【0056】
誘導台54の係合部54bが可動部材53の細径部53aと係合しているので、可動部材53が基端側に移動すると、誘導台54は、軸部材55を軸中心として回動する。可動部材53が先端部11Aの先端側の位置にあるとき、押圧部54aは、空間部25A内において、内壁面側に位置し、可動部材53が先端部11Aの基端側の位置にあるとき、押圧部54aは、空間部25A内の中央部に位置するように、誘導台54と可動部材53は、配置される。
【0057】
例えば、術者が操作部3において誘導ワイヤ52を引き込むように操作レバーなどを操作すると、可動部材53は、誘導ワイヤ52により基端側へ引っ張られ、基端側の位置へ移動する。その結果、誘導台54は、軸部材55の軸回りに回動して、押圧部54aが、先端部11Aの空間部25Aの中央部に移動する。このときに、処置具31の先端部31aが先端部11A内にあれば、先端部31aは、押圧部54aによって押圧されて、傾斜し、その傾斜した方向にある異物除去部26Eに当接し押し付けられる。
【0058】
先端部31aが異物除去部26Eに当接している状態で、術者が処置具31を前後させると、先端部31aの表面に付着した異物を異物除去部26Eによって擦り取ることができる。
【0059】
以上のように、本実施の形態の内視鏡では、処置具の先端部を異物除去部に誘導可能な処置具誘導台を有する押し付け機構が、処置具挿通チャンネルの処置具開口部の近傍に設けられている。そして、誘導台54の押圧部54aが処置具開口部25内に配置され、その押圧部54aが配置される位置と対向する位置に、異物除去部26Eが配置される。誘導ワイヤ52を牽引手段により基端側に牽引すると、誘導台54が軸部材55の軸回りに回動して、押圧部54aが処置具31の先端部31aを、異物除去部26Eに押し付ける。この状態で、述者が処置具31を進退させることにより、先端部31aと異物除去部26Eが擦れ合うので、処置具31に付着した異物を除去することができる。
【0060】
以上のように、本実施の形態によれば、処置具の先端部を生体組織に押し付けることなく、術者は、手元の操作で容易に先端部を異物除去部に押し付けることが可能になり、操作性が向上する。
【0061】
なお、上記の例では、異物除去部26Eは、先端部11の構成部材側(上記では先端カバー11b1)に設けられているが、押し付け機構(例えば、誘導台54の押圧部54aの表面)に設けてもよい。
さらになお、本実施の形態においても、第1の実施の形態で説明した変形例1、2、3は適用可能である。
【0062】
ところで、内視鏡に関する各種工夫としては、次のようなものがある。なお、以下の説明において、上述した構成と同一の構成要素については、同じ符号を付して説明は省略する。
まず、処置具の先端部の異物を除去するために、送水により除去する各種方法につき説明する。
【0063】
図16及び
図17は、処置具の先端部の焦げ付きを除去するために、処置具挿通チャンネルの処置具開口部に向けて送水可能な異物除去用送水ノズルを先端部11に設けた第1の例を示す。
【0064】
図16は、挿入部2の先端部11の先端面11a1の構成図である。
図16は、挿入部2の先端部の先端面を平面視したときの先端面の構成を示す。
図16に示すように、先端部11の先端面11a1には、観察窓21,照明窓22,23、洗浄ノズル24,及び処置具開口部25が設けられており、さらに、異物除去用送水ノズル101も設けられている。
【0065】
図17は、
図16のXVII−XVII線に沿った、内視鏡1の挿入部2の先端部11の部分断面図である。
図17に示すように、処置具31の先端部31aが先端面11a1から突出した状態で、手元の操作あるいはフットスイッチ等で送水操作を行うことで、異物除去用送水ノズル101から送水し、その水圧により先端部31aに付着した焦げ付き等の異物の除去を行うことができる。送水管路101aは、観察窓21の対物レンズ面を洗う送気送水管路から分岐する形で供給しても良いし、専用管路を設け、送水ポンプと接続しても良い。
【0066】
以上のような構成によっても、術者は、焦げ付き等の異物の付着した処置具のナイフ部を、内視鏡から一旦抜くことなく、手元の操作にて選択的に除去し、継続して処置が行える。
【0067】
図18及び
図19は、処置具の先端部の焦げ付きを除去するために、処置具挿通チャンネルの処置具開口部に向けて送水可能な洗浄ノズルにより異物除去を行うようにした第2の例を示す。
図18は、挿入部2の先端部11の先端面11a2の構成図である。
図18は、挿入部2の先端部の先端面を平面視したときの先端面の構成を示す。
図18に示すように、先端部11の先端面11a2には、観察窓21,照明窓22,23、洗浄ノズル24A,及び処置具開口部25が設けられている。
【0068】
図19は、
図18のXIX−XIX線に沿った、内視鏡1の挿入部2の先端部11の部分断面図である。
図18及び
図19に示すように、洗浄ノズル24Aの送水方向は、観察窓21および処置具開口部25に向けられている。すなわち、
図18に示すように、観察窓21を洗浄する洗浄ノズル24Aと、観察窓21の中心、および処置具開口部25の中心が、略一直線上に並ぶように配置されている。
【0069】
図19に示すように、処置具31の先端部31aが先端面11a1から突出した状態で、手元の操作あるいはフットスイッチ等で送水操作を行うことで、洗浄ノズル24Aから送水し、観察窓21の洗浄時の水圧により先端部31aに付着した焦げ付き等の異物の除去を行うことができる。
【0070】
以上のような構成によっても、術者は、焦げ付き等の異物の付着した処置具のナイフ部を、内視鏡から一旦抜くことなく、手元の操作にて選択的に除去し、継続して処置が行える。さらに、
図16及び
図17の構成に比べて、洗浄ノズル24Aは、観察窓21の洗浄と、処置具31の洗浄の2つの洗浄のために共用されるので、先端部11の細径化に繋がる効果もある。
【0071】
図20及び
図21は、処置具の先端部の焦げ付きを除去するために、処置具挿通チャンネルの処置具開口部に向けて送水可能な前方送水口を先端部11に設けるようにした第3の例を示す。
【0072】
図20は、挿入部2の先端部11の先端面11a3の構成図である。
図20は、挿入部2の先端部の先端面を平面視したときの先端面の構成を示す。
図20に示すように、先端部11の先端面11a3には、観察窓21,照明窓22,23、洗浄ノズル24,及び処置具開口部25が設けられており、さらに、前方送水口102も設けられている。
この前方送水口102は、例えば観察している被写体に付着した血液等の異物を洗い流すために、観察視野内の被写体に送水するために設けられている。
【0073】
図21は、
図20のXXI−XXI線に沿った、内視鏡1の挿入部2の先端部11の部分断面図である。
図20に示すように、観察窓21、処置具開口部25、前方送水口102の順に略一直線上にレイアウトすると共に、処置具開口部25に連通する処置具挿通チャンネル25aの軸中心L2と前方送水方向L3が観察視野範囲内で交わり、かつ前方送水の送水方向L3と、観察中心軸L4を被写界深度内にて交差するように配した。このような構成になるように、前方送水口102の孔は、処置具開口部25側に傾けて形成されている。
【0074】
処置具31の先端部31aが先端面11a3から突出した状態で、手元の操作あるいはフットスイッチ等で送水操作を行うことで、前方送水口102から送水し、その水圧により先端部31aに付着した焦げ付き等の異物の除去を行うことができる。
【0075】
以上のような構成によっても、術者は、焦げ付き等の異物の付着した処置具のナイフ部を、内視鏡から一旦抜くことなく、手元の操作にて、前方送水を利用して選択的に除去し、継続して処置が行える。また、術者は、観察視野内で焦げ付き等の異物の除去状態を確認できると共に、処置具が無いときの前方送水操作時も確実に観察視野内にて目的の患部等に送水することが可能になる。
【0076】
図22〜
図24は、処置具の先端部の焦げ付きを除去するために、前方送水機能を利用した第4の例を示す。
図22は、挿入部2の先端部11の処置具挿通チャンネルと前方送水管路の部分断面図である。
図23は、
図22において、処置具挿通チャンネルに処置具が挿通されている状態の部分断面図である。先端部11の先端面11a4には、前方送水口103が設けられている。そして、
図22及び
図23に示すように、処置具挿通チャンネル25aと前方送水用の前方送水管路103aが、挿入部2内で並走しており、さらに、挿入部2の先端部11内で前方送水管路103aから分岐して処置具挿通チャンネル25aに連通する分岐管路103bが設けられている。すなわち、前方送水管路103aの水は、前方送水側管路103cを介して前方送水口103へ送られると共に、分岐管路103bを介して処置具挿通チャンネル25aにも送られるように構成されている。
【0077】
処置具31の先端部31aが先端面11a4から突出した状態で、手元の操作あるいはフットスイッチ等で送水操作を行うことで、前方送水管路103aの水は、前方送水側管路103cを介して前方送水口103へ送られると共に、分岐管路103bを介して処置具挿通チャンネル25aにも送られる。処置具挿通チャンネル25aに送られた水Wは、処置具31に当たり、処置具31を伝って先端部31aまで流れていく。その水圧により先端部31aに付着した焦げ付き等の異物の除去を行うことができる。
【0078】
以上のような構成によっても、術者は、焦げ付き等の異物の付着した処置具のナイフ部を、内視鏡から一旦抜くことなく、手元の操作にて、前方送水を利用して選択的に除去し、継続して処置が行える。
【0079】
なお、送水管路103aに、切替弁を設けて、処置具31の洗浄時には、前方送水管路103aの水は、分岐管路103bを介して処置具挿通チャンネル25aへのみ送られるようにしてもよい。
図24は、前方送水管路103aに設けられた切替弁104を説明するための、先端部11の前方送水管路103aの部分断面図である。
図24に示すように、前方送水管路103aの分岐部に切替弁104が設けられている。前方送水側管路103cを介して前方送水を行うときは、切替弁104は、点線で示す位置にあり、処置具31の先端部31aの洗浄を行うときは、切替弁104は、実線で示す位置に切り替わる。この切替弁104の切替は、術者の手元の操作部で切り替え可能となっている。
【0080】
このような切替弁104を前方送水管路103aの分岐部に設けることにより、術者は、意図する送水方向に選択的に送水が可能になり、前方送水と焦げ付き除去のための送水を選択的に行うことが可能になる。
【0081】
図25は、処置具の先端部の焦げ付きを除去するために、軟性の前方送水管路を利用した第5の例を示す。
図25は、挿入部2の先端部11の処置具挿通チャンネルと前方送水管路のみの断面を示す部分断面図である。軟性の前方送水チューブ105が、先端部11の先端面11aから突没可能に、挿入部2に設けられている。前方送水チューブ105の先端部には、湾曲操作用のワイヤ106の先端部が固定されている。ワイヤ106の先端部は、前方送水チューブ105の先端部の処置具開口部25側で固定されている。そのワイヤ106は、挿入部2の軸方向に沿って基端側へ引き込み可能に構成されており、操作部3において、その引き込み操作が可能となっている。
【0082】
従って、術者が処置具31の先端部31aの洗浄を行うとき、ワイヤ106を操作して基端側に引き込むと、前方送水チューブ105の先端部は、矢印で示す方向に曲がって、処置具31の先端部31a側に向くので、水Wが先端部31aに当たって洗浄を行うことができる。
【0083】
図26は、処置具の先端部の焦げ付きを除去するために、処置具の先端部から送水が行われるようにした第6の例を示す。
図26は、挿入部2の先端部11の処置具開口部25から、処置具31Aの先端部31a1が突出しているときの、先端部11の部分断面図である。処置具31Aの先端部31a1には、円筒状部を有する電極107と、半球形状の先端チップ108とを有する。半球形状の先端チップ108の凸部側が、先端側で、半球形状の先端チップ108の底面側が、電極107の先端部と接続されている。電極107は、先端チップ108の底面まで延出している。特に、異物は、この先端チップ108の底面側の電極に、付着し易い。
【0084】
電極用の通電ワイヤ109が、処置具31A内を通っており、接続部110において、電極107と接続されている。電極107は、接続部110と共に、処置具31A内で支持されている。
【0085】
円筒状の電極107の基端部は、接続部110において、送水チューブ111に接続されており、送水チューブ111の中を流れる水が、円筒状の電極107内を通って、半球形状の先端チップ108内の流路108aにも流れるように構成されている。流路108aは、先端チップ108内で複数に分岐しており、先端チップ108の底面部に設けられた複数の開口部と連通している。
【0086】
従って、術者が処置具31Aの先端部31a1の洗浄を行うとき、送水チューブ111から先端チップ108に送水し、先端チップ108の底面部に設けられた複数の開口部から水Wを放出させると、水Wが、底面部に付着した異物を押し出し、かつ電極107に当たって洗浄を行うことができる。
【0087】
次に、処置具の先端部の異物を除去するために、物理的に除去する各種方法につき説明する。
図27は、処置具の先端部の焦げ付きを除去するために、処置具開口部から突出した処置具の先端部をブラシにより除去する構成を説明するための図である。
【0088】
図27に示すように、先端部11には、ブラシ挿通用管路112が設けられており、ブラシ挿通用管路112内に、先端にブラシ114を有する線部材113が挿通可能となっている。線部材113とブラシ114は弾性を有する。さらに、ブラシ挿通用管路112の先端側は、処置具開口部25側へ向かうように曲がって形成されている。
【0089】
図27の処置具31Bは、先端部31a2には、円筒状部を有する電極107と、半球形状の先端チップ108とを有する。また、線部材113は、操作部3における述者による操作により、先端面11aから突没可能となっている。
【0090】
よって、処置具31Bの先端部31a2に異物が付着したときには、術者は、ブラシ挿通用管路112内に配置されている線部材113を先端部11側に移動させて、ブラシ114を、処置具31Bの先端部31a2に向けて突出させて、ブラシ114を電極107に対して擦りつけることによって、異物を除去することができる。
【0091】
図28から
図30は、処置具の先端部の焦げ付きを除去するために、処置具開口部から突出した処置具の先端部を処置具開口部25に設けた、弾性を有する異物除去部材により除去する構成を説明するための図である。
【0092】
図28は、挿入部2の先端部11の処置具開口部25の部分断面図である。処置具開口部25には、円筒状の異物除去部材115が固定されて設けられている。弾性を有する異物除去部材115は、ゴム、スポンジ等の弾性部材である。円筒状の異物除去部材115の内径は、処置具31Bの先端チップ108の外径よりも小さい。
【0093】
図29は、処置具開口部25から処置具31Bの先端部31a2が突出しているときの、挿入部2の先端部11の処置具開口部25の部分断面図である。処置具31Bは、異物除去部材115の内径を広げた状態で、先端部31a2により、処置を行うことができる。
【0094】
図30は、処置具31Bの先端部に付着した異物を除去するときの、挿入部2の先端部11の処置具開口部25の部分断面図である。
処置部31Bの先端に異物が付着したときは、術者は、
図30に示すように、先端チップ108の底面側を、異物除去部材115の内径が縮んでいる部分の位置まで、処置具31Bを基端側に引き込む。
図30の状態で、先端チップ108の底面側が異物除去部材115に接触している。よって、術者は、
図30の状態で、処置具31Bを軸回りに回動させることによって、電極107と異物除去部材115が擦れて、異物を除去することができる。なお、異物除去部材115は、弾性部材に代えて、ブラシ状の部材でもよい。
さらに、異物除去部材115を処置具開口部25に設けたので、
図29に示すように、処置具31Bのふらつきも防止される。
【0095】
次に、内視鏡の細径化のための工夫につき説明する。
まず、処置具挿通チャンネルのためのチャンネルチューブについての工夫を説明する。
図31及び
図32は、処置具挿通チャンネルのためのチャンネルチューブを示す挿入部2の先端部11の部分断面図である。処置具挿通チャンネル25aは、処置具開口部25に設けられたチャンネルパイプ121と、チャンネルパイプ121の基端部に被せられて装着されたチャンネルチューブ122により形成される。
【0096】
チャンネルパイプ121は、先端部11に固定されている。チャンネルパイプ121の基端部は、やや外径が大きくなっており、チャンネルチューブ122が抜けないようにするための抜け止め用フランジ部121aとなっている。その抜け止め用フランジ部121aに引っかかるように、チャンネルチューブ122は、チャンネルパイプ121の基端部に被せられている。そのため、チャンネルパイプ121の抜け止め用フランジ部121aの周囲のチャンネルチューブ122も外径が大きくなっている。
【0097】
内視鏡1の挿入部2は、細径化が望まれている。そこで、
図31及び
図32に示すように、チャンネルチューブ122の外径が大きくなっている部分の周囲が削られている。
図31及び
図32において、点線で示す部分が削られている。
その結果、チャンネルパイプ121との接続部のみにおいて、チャンネルチューブ122の外径部分が薄肉化されている。
【0098】
チャンネルパイプ121とチャンネルチューブ122は接着剤にて固定し、その上から更に、糸巻き部123により強固に固定が行われている。接着面は従来と同等に確保しつつ、固定力に影響しない外径側のみが削り落されている。なお、接着強度を確保できる機種では、
図32に示すように、糸巻き部123を省略して、糸をなくして更なるチャンネルチューブの薄肉化を行うようにしても良い。
【0099】
従って、内視鏡1の挿入部2の細径化が図られ、さらに、先端部11の組立時に、他の内蔵物との干渉を避けることもできる。
【0100】
次に、チャンネルチューブの孔あきを防止する工夫について説明する。
ここでは、処置具挿通チャンネル25aのためのチャンネルチューブの肉厚は周方向において一様でなく、チャンネルチューブは、部分的に厚肉の部分を有している。そして、先端部11の組み付け時に、チャンネルチューブの軸回りの位置を調整して、チャンネルチューブの厚肉側が、湾曲部12の湾曲時における湾曲半径の大きい方になるように、チャンネルチューブは挿入部2内に組み付けられる。
【0101】
図33は、チャンネルチューブ122の構成を説明するための断面図である。
図33に示すように、チャンネルチューブ122の肉厚は、周方向において異なっている。
図33に示すように、チャンネルチューブ122の一方側の肉厚d1は、他方の肉厚d2よりも大きい。
図34は、湾曲操作がされたときに、チャンネルチューブ122内を走行する処置具31Cの状態を説明するための図である。
【0102】
例えば、湾曲操作がされた状態で、処置具31Cが進退される際、処置具31Cは、湾曲部12内では、チャンネルチューブ122内の湾曲半径の大きい側を走行する。湾曲部12内の湾曲始めの箇所や、湾曲半径が小さい箇所では、
図34に示すように、チャンネルチューブ122の湾曲半径の大きい側の内壁に処置具31Cの先端が接触してから、その後は、処置具31Cがチャンネルチューブ122の湾曲半径の大きい側の内壁に沿って走行して行く。よって、湾曲部12内では、処置具31Cの先端とチャンネルチューブ122の内壁との接触が繰り返され、チャンネルチューブ122が削れ、肉厚が薄くなっていく。
また、挿入部2の湾曲部12の湾曲角は、内視鏡の用途に応じて、内視鏡毎に湾曲角度は夫々ことなり、上下方向と、左右方向で湾曲角度が異なる機種も存在する。
【0103】
そこで、ここでは、このような湾曲角度が異なる湾曲角を有する内視鏡において、湾曲部12内における湾曲半径が大きい側のチャンネルチューブ122の肉厚が厚くなるように、先端部の組み付け時に、チャンネルチューブ122を挿入部2内に配置する。その結果、湾曲部12が曲げられたときに、処置具31Cの先端は、湾曲半径が大きい側に位置する肉厚の厚い内壁に接触するので、チャンネルチューブ122の孔あきに至るまでの使用期間を従来よりも長くすることができる。
【0104】
次に、先端部内の先端硬質部への各内蔵物の組立性向上についての工夫について説明する。
本工夫では、先端硬質部材123のライトガイド22a(あるいは23aでもよい)の先端部の差込部の孔の一部には、切り欠き部123aが形成されている。この切り欠き部123aは、内蔵物差込部の孔の一部が、ライトガイド22aの先端部が斜めに挿入可能なように切り欠かれたものである。
図35は、先端部11の断面図である。
図36は、先端硬質部材内に、ライトガイド22aを組み付ける様子を説明するための図である。
【0105】
図36に示すように、ライトガイド22aの先端部は、切り欠き部123aにより挿入部2の軸方向に対して平行でなく、斜め方向から、差込部の孔へ挿入することができる。よって、先端硬質部材123へのライトガイド22aの先端部の組み付け時に、他の内蔵物との干渉を回避することができ、組立性が向上する。
なお、ライトガイド22aの固定のためのビス等は、切り欠き部123aを避けるように、
図35の紙面に直交する方向に沿って、押し込まれるので、ビス等による固定は、確実に行うことができる。
さらになお、ここでは、内蔵物としてライトガイド22aを例に挙げて、先端硬質部材123へのライトガイド22aの先端部の組み付けを説明したが、他の内蔵物についても同様に、本工夫は適用可能である。
【0106】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。