【実施例】
【0074】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0075】
実施例1 イソブタノール生産遺伝子のクローニングと発現
(1) 微生物からの染色体DNAの抽出
バチルス サブチリス168 NBRC14144からの染色体DNA抽出は、NBRC Medium No.802培地 [Polypepton 10g、Yeast extract 2g、MnSO
4.7H
2O 1gを蒸留水1Lに溶解] に、白金耳を用いて植菌後、対数増殖期まで37℃で振盪培養し、菌体を集菌後、DNAゲノム抽出キット(商品名:GenomicPrep Cells and Tissue DNA Isolation Kit、アマシャム社製)を用いて、取扱説明書に従い、集めた菌体から染色体DNAを回収した。
【0076】
コリネバクテリウム グルタミカム R (FERM P-18976) からの染色体DNA抽出及びコリネバクテリウム カゼイ(Corynebacterium casei)JCM12072からのトータルDNA抽出は、A培地 [(NH
2)
2CO 2g、(NH
4)
2SO
4 7g、KH
2PO
4 0.5 g、K
2HPO
4 0.5 g、MgSO
4.7H
2O 0.5 g、0.06% (w/v) Fe
2 SO
4.7H
2O + 0.042% (w/v) MnSO
4.2H
2O 1 ml、0.02% (w/v) biotin solution 1 ml、0.01% (w/v) thiamin solution 2 ml、yeast extract 2 g、vitamin assay casamino acid 7 gを蒸留水1Lに溶解] に、炭素源として、最終濃度4%になるように50% (w/v)グルコース溶液を添加し、白金耳を用いて植菌後、対数増殖期まで33℃で振盪培養し、菌体を集菌後、DNAゲノム抽出キット(商品名:GenomicPrep Cells and Tissue DNA Isolation Kit、アマシャム社製)を用いて、取扱説明書に従い、集めた菌体から染色体DNAを回収した。
【0077】
エシェリヒア コリ K12 MG1655からの染色体DNA抽出は、LB培地 [tryptone 10 g、yeast extract 5 g、NaCl 5 gを蒸留水1 Lに溶解] に、白金耳を用いて植菌後、対数増殖期まで37℃で振盪培養し、菌体を集菌後、DNAゲノム抽出キット(商品名:GenomicPrep Cells and Tissue DNA Isolation Kit、アマシャム社製)を用いて、取扱説明書に従い、集めた菌体から染色体DNAを回収した。
【0078】
ラクトコッカス ラクティスNBRC100933からの染色体DNA抽出は、MRS培地(DIFCO社製)に、白金耳を用いて植菌後、対数増殖期まで30℃で浸透培養し、菌体を集菌後、DNAゲノム抽出キット(商品名:GenomicPrep Cells and Tissue DNA Isolation Kit、アマシャム社製)を用いて、取扱説明書に従い、集めた菌体から染色体DNAを回収した。
【0079】
シュードモナス プチダ F1 ATCC700007からの染色体DNA抽出は、Nutrient Broth培地(DIFCO社製)に白金耳を用いて植菌後、対数増殖期まで30℃で浸透培養し、菌体を集菌後、DNAゲノム抽出キット(商品名:GenomicPrep Cells and Tissue DNA Isolation Kit、アマシャム社製)を用いて、取扱説明書に従い、集めた菌体から染色体DNAを回収した。
【0080】
サッカロマイセス セレビシエ NBRC2376からの染色体DNA抽出は、YM培地 [Glucose 10g、Peptone 5g、Yeast extract 3g、Malt extract 3gを蒸留水1Lに溶解] に、白金耳を用いて植菌後、対数増殖期まで28℃で浸透培養し、菌体を集菌後、DNAゲノム抽出キット(商品名:GenomicPrep Cells and Tissue DNA Isolation Kit、アマシャム社製)を用いて、取扱説明書に従い、集めた菌体から染色体DNAを回収した。
【0081】
スタフィロコッカス エピデルミディス NBRC12993からの染色体DNA抽出は、NBRC Medium No.802培地 [Polypepton 10g、Yeast extract 2g、MnSO
4.7H
2O 1gを蒸留水1Lに溶解] に、白金耳を用いて植菌後、対数増殖期まで30℃で浸透培養し、菌体を集菌後、DNAゲノム抽出キット(商品名:GenomicPrep Cells and Tissue DNA Isolation Kit、アマシャム社製)を用いて、取扱説明書に従い、集めた菌体から染色体DNAを回収した。
【0082】
(2) クローニングベクターの構築
クローニングベクターpCRB22の構築
コリネバクテリウム カゼイ JCM12072由来のプラスミドpCASE1のDNA複製起点(以降、pCASE1-oriと記す)配列、及びクローニングベクターpHSG298(タカラバイオ株式会社製)をそれぞれ含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際して、pCASE1-ori配列、クローニングベクターpHSG298をそれぞれクローン化するべく、配列番号1(pCASE1-ori配列)、配列番号2(クローニングベクター−pHSG298)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを合成し、使用した。
【0083】
pCASE1-ori配列増幅用プライマー
(a-1); 5’- AT
AGATCT AGAACGTCCGTAGGAGC -3’ (配列番号3)
(b-1); 5’- AT
AGATCT GACTTGGTTACGATGGAC -3’ (配列番号4)
尚、プライマー(a-1)及び(b-1)には、BglII制限酵素部位が付加されている。
【0084】
クローニングベクターpHSG298増幅用プライマー
(a-2); 5’- AT
AGATCT AGGTTTCCCGACTGGAAAG -3 (配列番号5)
(b-2); 5’- AT
AGATCT CGTGCCAGCTGCATTAATGA -3’ (配列番号6)
尚、プライマー(a-2)及び(b-2)には、BglII制限酵素部位が付加されている。
【0085】
鋳型DNAは、Japan. Collection of Microorganisms (JCM)より入手したコリネバクテリウム カゼイ JCM12072から抽出したトータルDNA及びクローニングベクターpHSG298(タカラバイオ株式会社製)を用いた。
実際のPCRは、サーマルサイクラー GeneAmp PCR System 9700(アプライド・バイオシステムズ社製)を用い、反応試薬としてTaKaRa LA Taq(タカラバイオ株式会社製)を用いて下記の条件で行った。
【0086】
反応液:
以上を混合し、この50μlの反応液をPCRにかけた。
*) pCASE1-ori配列を増幅する場合はプライマー(a-1)と(b-1)の組み合わせ、クローニングベクターpHSG298を増幅する場合はプライマー(a-2)と(b-2)の組み合わせで行った。
【0087】
PCRサイクル:
デナチュレーション過程 :94℃、60秒
アニーリング過程 :52℃、60秒
エクステンション過程 :72℃
pCASE1-ori配列:150秒
クローニングベクターpHSG298:180秒
以上を1サイクルとし、30サイクル行った。
【0088】
上記で生成した反応液10μlを0.8%アガロースゲルにより電気泳動を行い、pCASE1-ori配列の場合約1.4-kb、クローニングベクターpHSG298の場合、約2.7-kbのDNA断片が検出できた。
【0089】
上記のPCRにより増幅したコリネバクテリウム カゼイ株由来のプラスミドpCASE1-ori配列含む約1.4-kb DNA断片10μl及びクローニングベクターpHSG298を含む約2.7-kb DNA断片10μlを各々制限酵素BglIIで切断し、70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ (タカラバイオ株式会社製)1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションA液とした。
得られたライゲーションA液を、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、カナマイシン50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
【0090】
培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素BglIIでそれぞれ切断し、挿入断片を確認した。この結果、クローニングベクターpHSG298約2.7-kbのDNA断片に加え、pCASE-ori配列の約1.4-kb DNA断片が認められた。
pCASE1-ori配列を含むクローニングベクターをpCRB22と命名した。
【0091】
クローニングベクターpCRB11の構築
コリネバクテリウム グルタミカム内で複製可能なプラスミドpCG1 [(特開昭57−134500)] 由来のDNA複製起点(以降、pCG1-oriと記す)配列、及びクローニングベクターpHSG398(タカラバイオ株式会社製)をそれぞれ含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際して、pCG1-ori配列、クローニングベクターpHSG398をそれぞれクローン化するべく、配列番号7(pCG1-ori配列)、配列番号8(クローニングベクターpHSG398)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを合成し、使用した。
【0092】
pCG1-ori配列増幅用プライマー
(a-3); 5’- AT
AGATCT AGCATGGTCGTCACAGAG -3’ (配列番号9)
(b-3); 5’- AT
AGATCT GGAACCGTTATCTGCCTATG -3’ (配列番号10)
尚、プライマー(a-3)及び(b-3)には、BglII制限酵素部位が付加されている。
【0093】
クローニングベクターpHSG398増幅用プライマー
(a-4); 5’- AT
AGATCT GTCGAACGGAAGATCACTTC -3’ (配列番号11)
(b-4); 5’- AT
AGATCT AGTTCCACTGAGCGTCAG -3’ (配列番号12)
尚、プライマー(a-4)及び(b-4)には、BglII制限酵素部位が付加されている。
【0094】
鋳型DNAは、pCG1 [(特開昭57−134500)] 及びクローニングベクターpHSG398(タカラバイオ株式会社製)を用いた。
実際のPCRは、サーマルサイクラー GeneAmp PCR System 9700(アプライド・バイオシステムズ社製)を用い、反応試薬としてTaKaRa LA Taq(タカラバイオ株式会社製)を用いて下記の条件で行った。
【0095】
反応液:
以上を混合し、この50μlの反応液をPCRにかけた。
*) pCG1-ori配列を増幅する場合はプライマー(a-3)と(b-3)の組み合わせ、クローニングベクターpHSG398を増幅する場合はプライマー(a-4) と (b-4) の組み合わせで行った。
【0096】
PCRサイクル:
デナチュレーション過程 :94℃、60秒
アニーリング過程 :52℃、60秒
エクステンション過程 :72℃
pCG1-ori配列:120秒
クローニングベクターpHSG398:150秒
以上を1サイクルとし、30サイクル行った。
【0097】
上記で生成した反応液10μlを0.8%アガロースゲルにより電気泳動を行い、pCG1-ori配列の場合約1.9-kb、クローニングベクターpHSG398の場合、約2.2-kbのDNA断片が検出できた。
【0098】
上記のPCRにより増幅したプラスミドpCG1由来pCG1-ori遺伝子含む約1.9-kb DNA断片10μl及びクローニングベクターpHSG398を含む約2.2-kb DNA断片10μlを各々制限酵素BglIIで切断し、70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ (タカラバイオ株式会社製) 1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションB液とした。
得られたライゲーションB液を、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、クロラムフェニコール50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
【0099】
培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素BglIIでそれぞれ切断し、挿入断片を確認した。この結果、クローニングベクターpHSG398約2.2-kbのDNA断片に加え、pCG1-ori配列の約1.9-kb DNA断片が認められた。
pCG1-ori配列を含むクローニングベクターをpCRB11と命名した。
【0100】
クローニングベクターpCRB15の構築
クローニングベクターpCRB11を含むDNA断片及びpSELECT-zeo-mcs(インビトロジェン株式会社製)由来のゼオシン耐性遺伝子をそれぞれ含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際して、クローニングベクターpCRB11及びゼオシン耐性遺伝子をそれぞれクローン化するべく、配列番号13(pCRB11)及び配列番号14(ゼオシン耐性遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを合成し、使用した。
【0101】
クローニングベクターpCRB11配列増幅用プライマー
(a-5); 5’- AT
GATATC CGAAGTGATCTTCCGTTCGA -3’ (配列番号15)
(b-5); 5’- AT
GATATC AAGGCAGTTATTGGTGCCCT -3’ (配列番号16)
尚、プライマー(a-5)及び(b-5)には、EcoRV制限酵素部位が付加されている。
【0102】
ゼオシン耐性遺伝子増幅用プライマー
(a-6); 5’- AT
GATATC TAGCTTATCCTCAGTCCTGC -3’ (配列番号17)
(b-6); 5’- AT
GATATC CCATCCACGCTGTTTTGACA -3’ (配列番号18)
尚、プライマー(a-6)及び(b-6)には、EcoRV制限酵素部位が付加されている。
【0103】
鋳型DNAは、クローニングベクターpCRB11及びpSELECT-zeo-mcs(インビトロジェン株式会社製)を用いた。
実際のPCRは、サーマルサイクラー GeneAmp PCR System 9700(アプライド・バイオシステムズ社製)を用い、反応試薬としてTaKaRa LA Taq(タカラバイオ株式会社製)を用いて下記の条件で行った。
【0104】
反応液:
以上を混合し、この50μlの反応液をPCRにかけた。
*) クローニングベクターpCRB11配列を増幅する場合はプライマー(a-5)と(b-5)の組み合わせ、ゼオシン耐性遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-6) と (b-6) の組み合わせで行った。
【0105】
PCRサイクル:
デナチュレーション過程 :94℃、60秒
アニーリング過程 :52℃、60秒
エクステンション過程 :72℃
pCRB11配列:200秒
ゼオシン耐性遺伝子:45秒
以上を1サイクルとし、30サイクル行った。
【0106】
上記で生成した反応液10μlを0.8%アガロースゲルにより電気泳動を行い、クローニングベクターpCRB11配列の場合約3.3-kb、ゼオシン耐性遺伝子の場合約0.5-kbのDNA断片が検出できた。
【0107】
上記のPCRにより増幅したクローニングベクターpCRB11を含む約3.3-kb DNA断片10μl及びpSELECT-zeo-mcsプラスミド由来ゼオシン耐性遺伝子を含む約0.5-kb DNA断片10μlを各々制限酵素EcoRVで切断し、70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ (タカラバイオ株式会社製) 1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションC液とした。
得られたライゲーションC液を、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、ゼオシン25μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
【0108】
培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素EcoRVでそれぞれ切断し、挿入断片を確認した。この結果、クローニングベクターpCRB11由来約3.3-kbのDNA断片に加え、ゼオシン耐性遺伝子の場合、約0.5-kb DNA断片が認められた。
ゼオシン耐性遺伝子を含むクローニングベクターをpCRB15と命名した。
【0109】
クローニングベクターpCRB205の構築
クローニングベクターpCRC200〔Yasuda, K. et al., Analyses of the acetate-producing pathways in Corynebacterium glutamicum under oxygen-deprived conditions. Applied Microbiology and Biotechnology. 77:853-860 (2007)〕を含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際して、pCRC200をクローン化するべく、配列番号19(pCRC200)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを合成し、使用した。
【0110】
pCRC200増幅用プライマー
(a-7); 5’- CTCT
ACTAGT GTCGAC GGATCC TTGTGTGGAATTGTGAGCGG -3’
(配列番号20)
(b-7); 5’- CTCT
ACTAGT CATACGAGCCGGAAGCATAA -3’
(配列番号21)
尚、プライマー(a-7)には、SpeI、SalI及びBamHI制限酵素部位が、プライマー(b-7)には、SpeI制限酵素部位が付加されている。
【0111】
鋳型DNAは、tacプロモーターを含有するクローニングベクターpCRC200を用いた。
実際のPCRは、サーマルサイクラー GeneAmp PCR System 9700(アプライド・バイオシステムズ社製)を用い、反応試薬としてTaKaRa LA Taq(タカラバイオ株式会社製)を用いて下記の条件で行った。
【0112】
反応液:
以上を混合し、この50μlの反応液をPCRにかけた。
*) pCRC200遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-7)と(b-7)の組み合わせで行った。
【0113】
PCRサイクル:
デナチュレーション過程 :94℃、60秒
アニーリング過程 :52℃、60秒
エクステンション過程 :72℃、300秒
以上を1サイクルとし、30サイクル行った。
【0114】
上記で生成した反応液10μlを0.8%アガロースゲルにより電気泳動を行い、クローニングベクターpCRC200約5.0-kb DNA断片が検出できた。
上記のPCRにより増幅したpCRC200由来遺伝子を含む約5.0-kb DNA断片10μlを制限酵素SpeIで切断し、70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させた後、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ(タカラバイオ株式会社製)1unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションD液とした。
得られたライゲーションD液を、塩化カルシウム法 〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、クロラムフェニコール50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
【0115】
培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素SpeIで切断し、挿入制限酵素部位を確認した。
クローニングベクターpCRC200に制限酵素部位SpeI、SalI及びBamHIサイトを付加したクローニングベクターをpCRB205と命名した。
【0116】
クローニングベクターpCRB207の構築
コリネバクテリウム グルタミカムR由来のグリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ(glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)をコードするgapA遺伝子のプロモーター配列(以降、PgapAと記す)を含むDNA断片、及びクローニングベクターpKK223-3(ファルマシア社製)由来rrnBT1T2双方向ターミネーター配列(以降、ターミネーター配列と記す)を含むDNA断片をを以下の方法により増幅した。
PCRに際して、PgapA配列及びターミネーター配列をそれぞれクローン化するべく、配列番号22(PgapA配列)、配列番号23(ターミネーター配列)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを合成し、使用した。
【0117】
PgapA配列増幅用プライマー
尚、プライマー(a-8)には、SalI制限酵素部位が、プライマー(b-8)には、SalI、BamHI及びNcoI制限酵素部位が付加されている。
【0118】
ターミネーター配列増幅用プライマー
(a-9); 5’- CTCT
GCATGC CCATGG CTGTTTTGGCGGATGAGAGA -3’
(配列番号26)
(b-9); 5’- CTCT
GCATGC TCATGA AAGAGTTTGTAGAAACGCAAAAAGG -3
(配列番号27)
尚、プライマー(a-9)には、SphI及びNcoI制限酵素部位が、プライマー(b-9)には、SphI及びBspHI制限酵素部位が付加されている。
【0119】
鋳型DNAは、コリネバクテリウム グルタミカム R (FERM P-18976)から抽出した染色体DNA及びpKK223-3プラスミド(ファルマシア社製)を用いた。
実際のPCRは、サーマルサイクラー GeneAmp PCR System 9700(アプライド・バイオシステムズ社製)を用い、反応試薬としてTaKaRa LA Taq(タカラバイオ株式会社製)を用いて下記の条件で行った。
【0120】
反応液:
以上を混合し、この50μlの反応液をPCRにかけた。
*) PgapA配列を増幅する場合はプライマー(a-8)と(b-8)の組み合わせ、ターミネーター配列を増幅する場合はプライマー(a-9) と (b-9) の組み合わせで行った。
【0121】
PCRサイクル:
デナチュレーション過程 :94℃、60秒
アニーリング過程 :52℃、60秒
エクステンション過程 :72℃
PgapA配列:45秒
ターミネーター配列:30秒
以上を1サイクルとし、30サイクル行った。
【0122】
上記で生成した反応液10μlを0.8%アガロースゲルにより電気泳動を行い、PgapA配列の場合約0.6-kb、ターミネーター配列の場合、約0.4-kbのDNA断片が検出できた。
【0123】
上記のPCRにより増幅したコリネバクテリウム グルタミカム R由来PgapA配列を含む約0.6-kb DNA断片10μlとクローニングベクターpCRB22約4.1-kbを各々制限酵素SalIで切断し、70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ (タカラバイオ株式会社製) 1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションE液とした。
得られたライゲーションE液を、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、カナマイシン50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
【0124】
培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素SalIでそれぞれ切断し、挿入断片を確認した。この結果、クローニングベクターpCRB22約4.1-kbのDNA断片に加え、PgapA配列)の約0.6-kb DNA断片が認められた。
PgapA配列を含むクローニングベクターをpCRB206と命名した。
【0125】
上記PCRにより増幅したpKK223-3プラスミド由来ターミネーター配列を含む約0.4-kb DNA断片10μlを制限酵素NcoI及びBspHIで、上述のクローニングベクターpCRB206 2μlを制限酵素NcoIで切断し、70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ (タカラバイオ株式会社製) 1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションF液とした。
得られたライゲーションF液を、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、カナマイシン50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
【0126】
培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素で切断し、挿入断片を確認した。この結果、クローニングベクターpCRB206約4.7-kbのDNA断片に加え、ターミネーター配列の約0.4-kb DNA断片が認められた。
rrnBT1T2ターミネーター配列を含むクローニングベクターをpCRB207と命名した。
【0127】
クローニングベクターpCRB208の構築
コリネバクテリウム グルタミカムR由来のL-乳酸デヒドロゲナーゼ(L-lactate dehydrogenase)をコードするldhA遺伝子のプロモーター配列(以降、PldhAと記す)を含むDNA断片を以下の方法により増幅した。
PCRに際して、PldhA配列をクローン化するべく、配列番号28(PldhA配列)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを合成し、使用した。
【0128】
PldhA配列増幅用プライマー
(a-10); 5’- CTCT
GTCGAC CGGAACTAGCTCTGCAATGA -3’
(配列番号29)
(b-10); 5’- CTCT
GTCGAC GGATCC CATATG CGATCCCACTTCCTGATTTC -3’
(配列番号30)
尚、プライマー(a-10)には、SalI制限酵素部位が、プライマー(b-10)には、SalI、BamHI及びNcoI制限酵素部位が付加されている。
【0129】
鋳型DNAは、コリネバクテリウム グルタミカムR (FERM P-18976)から抽出した染色体DNAを用いた。
実際のPCRは、サーマルサイクラー GeneAmp PCR System 9700(アプライド・バイオシステムズ社製)を用い、反応試薬としてTaKaRa LA Taq(タカラバイオ株式会社製)を用いて下記の条件で行った。
【0130】
反応液:
以上を混合し、この50μlの反応液をPCRにかけた。
*) PldhA配列を増幅する場合はプライマー(a-10)と(b-10)の組み合わせ行った。
【0131】
PCRサイクル:
デナチュレーション過程 :94℃、60秒
アニーリング過程 :52℃、60秒
エクステンション過程 :72℃、30秒
以上を1サイクルとし、30サイクル行った。
【0132】
上記で生成した反応液10μlを0.8%アガロースゲルにより電気泳動を行い、PldhA配列約0.4-kbのDNA断片が検出できた。
【0133】
上記のPCRにより増幅したコリネバクテリウム グルタミカムR由来PldhA配列を含む約0.4-kb DNA断片10μlとクローニングベクターpCRB22 2μl約4.1-kbを各々制限酵素SalIで切断し、70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ (タカラバイオ株式会社製) 1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションG液とした。
得られたライゲーションG液を、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、カナマイシン50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
【0134】
培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素SalIで切断し、挿入断片を確認した。この結果、クローニングベクターpCRB22約4.1-kbのDNA断片に加え、PldhA配列の約0.4-kb DNA断片が認められた。
PldhA配列を含むクローニングベクターをpCRB208と命名した。
【0135】
(3) イソブタノール生産遺伝子のクローニング
バチルス サブチリス由来のイソブタノール生産遺伝子のクローニング
バチルス サブチリス由来のアセトヒドロキシ酸 シンターゼをコードするalsS遺伝子を含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際して、alsS遺伝子をクローン化するべく、配列番号31(バチルス サブチリスalsS遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
【0136】
alsS遺伝子増幅用プライマー
(a-11); 5’- CTCT
CCATGG TGACAAAAGCAACAAAAGAACAAAAATCC -3’
(配列番号32)
(b-11); 5’- CTCT
CCATGG AGATCT CTAGAGAGCTTTCGTTTTCATGAG -3’
(配列番号33)
尚、プライマー(a-11)には、NcoI制限酵素部位が、プライマー(b-11)には、NcoI及びBglII制限酵素部位が付加されている。
【0137】
コリネバクテリウム グルタミカム由来のイソブタノール生産遺伝子のクローニング
コリネバクテリウム グルタミカム由来のアセトヒドロキシ酸 シンターゼをコードするilvB-ilvN遺伝子、アセトヒドロキシ酸 イソメロレダクターゼをコードするilvC遺伝子、ジヒドロキシ酸 デヒドラターゼをコードするilvD遺伝子をそれぞれ含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
【0138】
PCRに際して、ilvB-ilvN-ilvC遺伝子及びilvD遺伝子をそれぞれクローン化するべく、配列番号34(コリネバクテリウム グルタミカムilvB-ilvN-ilvC遺伝子)及び配列番号35(コリネバクテリウム グルタミカムilvD遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
【0139】
ilvB-ilvN-ilvC遺伝子増幅用プライマー
(a-12); 5’- GA
CCCGGG AGTAAAGGAGCCAGAAAGTCGTGAA -3’
(配列番号36)
(b-12); 5’- GA
CCCGGG CCTGCAGG TGCCTTATGTACAAAGTGCACAGCA -3’
(配列番号37)
尚、プライマー(a-12)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-12)には、SmaI及びSse8387I制限酵素部位が付加されている。
【0140】
ilvD遺伝子増幅用プライマー
(a-13); 5’- CTCT
TCATGA TCCCACTTCGTTCAAAAGTC -3’
(配列番号38)
(b-13); 5’- CTCT
TCATGA TTAGTCGACCTGACGGAC -3’
(配列番号39)
尚、プライマー(a-13)及び(b-13)には、BspHI制限酵素部位が付加されている。
【0141】
エシェリヒア コリ由来のイソブタノール生産遺伝子のクローニング
エシェリヒア コリ由来のアルコール デヒドロゲナーゼをコードするadhP遺伝子を含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際して、adhP遺伝子をクローン化するべく、配列番号40(エシェリヒア コリadhP遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
【0142】
adhP遺伝子増幅用プライマー
(a-14); 5’- CTCT
CCATGG AGGCTGCAGTTGTTACGAAG -3’
(配列番号41)
(b-14); 5’- CTCT
CCATGG AGATCT TTAGTGACGGAAATCAATCACCAT -3’
(配列番号42)
尚、プライマー(a-14)には、NcoI制限酵素部位が、プライマー(b-14)には、NcoI及びBglII制限酵素部位が付加されている。
【0143】
ラクトコッカス ラクティス由来のイソブタノール生産遺伝子群のクローニング
ラクトコッカス ラクティス由来の2-ケト酸 デカルボキシラーゼをコードするkivD遺伝子を含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際して、kivD遺伝子をクローン化するべく、配列番号43(ラクトコッカス ラクティスkivD遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
【0144】
kivD遺伝子増幅用プライマー
尚、プライマー(a-15)には、NcoI制限酵素部位が、プライマー(b-15)には、NcoI及びBglII制限酵素部位が付加されている。
【0145】
シュードモナス プチダ由来のイソブタノール生産遺伝子のクローニング
シュードモナス プチダ由来のアルコール デヒドロゲナーゼをコードするadh遺伝子を含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際してadh遺伝子をクローン化するべく、配列番号46(シュードモナス プチダadh遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーをアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems) 社製「394 DNA/RNA シンセサイザー (synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
【0146】
adh遺伝子増幅用プライマー
(a-16); 5’- CTCT
TCATGA AAGCTGCTGTCGTTGC -3’ (配列番号47)
(b-16); 5’- CTCT
TCATGA CTCGAG TCAGCCTTCGAACTGTATCAC -3’
(配列番号48)
尚、プライマー(a-16)には、BspHI制限酵素部位が、プライマー(b-16)には、BspHI及びXhoI制限酵素部位が付加されている。
【0147】
サッカロマイセス セレビシエ由来のイソブタノール生産遺伝子のクローニング
サッカロマイセス セレビシエ由来のアルコール デヒドロゲナーゼをコードするadh2遺伝子を含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際してadh2遺伝子をクローン化するべく、配列番号49(サッカロマイセス セレビシエadh2遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
【0148】
adh2遺伝子増幅用プライマー
尚、プライマー(a-17)には、NcoI制限酵素部位が、プライマー(b-17)には、NcoI及びBglII制限酵素部位が付加されている。
【0149】
スタフィロコッカス エピデルミディス由来のイソブタノール生産遺伝子群のクローニング
スタフィロコッカス エピデルミディス由来の2-ケト酸 デカルボキシラーゼ(別名;インドール-3-ピルベート デカルボキシラーゼ)をコードするipd遺伝子(locus tag; NP_765765)を含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際してipd遺伝子をクローン化するべく、配列番号52(スタフィロコッカス エピデルミディスipd遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを合成し、使用した。
【0150】
ipd遺伝子増幅用プライマー
尚、プライマー(a-18)には、NcoI制限酵素部位が、プライマー(b-18)には、NcoI及びBglII制限酵素部位が付加されている。
【0151】
鋳型DNAは、バチルス サブチリスは、NITE Biological Resource Center(NBRC)より入手したバチルス サブチリス168 NBRC14144から抽出した染色体DNAを用いた。コリネバクテリウム グルタミカムは、コリネバクテリウム グルタミカムRから抽出した染色体DNAを用いた。エシェリヒア コリは、エシェリヒア コリK12 MG1655から抽出した染色体DNAを用いた。ラクトコッカス ラクティスは、NITE Biological Resource Center(NBRC)より入手したラクトコッカス ラクティスNBRC100933から抽出した染色体DNAを用いた。サッカロマイセス セレビシエは、NITE Biological Resource Center(NBRC)より入手したサッカロマイセス セレビシエNBRC 2376から抽出した染色体DNAを用いた。スタフィロコッカス エピデルミディスは、NITE Biological Resource Center(NBRC)より入手したスタフィロコッカス エピデルミディスNBRC12993から抽出した染色体DNAを用いた。シュードモナス プチダは、American Type Culture Collection (ATCC)より入手したシュードモナス プチダF1 ATCC700007から抽出した染色体DNAを用いた。
【0152】
実際のPCRは、サーマルサイクラー GeneAmp PCR System 9700(アプライド・バイオシステムズ社製)を用い、反応試薬としてTaKaRa LA Taq(タカラバイオ株式会社製)を用いて下記の条件で行った。
【0153】
反応液:
以上を混合し、この50μlの反応液をPCRにかけた。
【0154】
*) バチルス サブチリスalsS遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-11) と (b-11) の組み合わせ、コリネバクテリウム グルタミカムilvB-ilvN-ilvC遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-12) と (b-12) 、ilvD遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-13) と (b-13) の組み合わせ、エシェリヒア コリadhP遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-14) と (b-14) の組み合わせ、ラクトコッカス ラクティスkivD遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-15) と (b-15) の組み合わせ、シュードモナス プチダadh遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-16) と (b-16) の組み合わせ、サッカロマイセス セレビシエadh2遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-17) と (b-17) の組み合わせ、スタフィロコッカス エピデルミディスipd遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-18) と (b-18) の組み合わせで行った。
【0155】
PCRサイクル:
以上を1サイクルとし、30サイクル行った。
【0156】
上記で生成した反応液10μlを0.8%アガロースゲルにより電気泳動を行い、バチルス サブチリスalsS遺伝子の場合約1.8-kb、コリネバクテリウム グルタミカムilvB-ilvN-ilvC遺伝子の場合約3.7-kb、コリネバクテリウム グルタミカムilvD遺伝子の場合約2.0-kb、エシェリヒア コリadhP遺伝子の場合約1.0-kb、ラクトコッカス ラクティスkivD遺伝子の場合約1.7-kb、シュードモナス プチダadh遺伝子の場合約1.0-kb、サッカロマイセス セレビシエadh2遺伝子の場合約1.1-kb、スタフィロコッカス エピデルミディスipd遺伝子の場合約1.7-kbのDNA断片が検出できた。
【0157】
(4) イソブタノール生産遺伝子発現プラスミドの構築
イソブタノール生産遺伝子のpKK223-3へのクローニング
上記(3)のPCRにより増幅したコリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvB-ilvN-ilvC遺伝子を含む約3.7-kb DNA断片10μl及びtacプロモーターを含有するクローニングベクターpKK223-3(ファルマシア社製)2μlを各々制限酵素SmaIで切断し、70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ (タカラバイオ株式会社製) 1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションH液とした。
【0158】
得られたライゲーションH液を、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、アンピシリン50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
【0159】
各々培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素SmaIでそれぞれ切断し、挿入断片を確認した。この結果、プラスミドpKK223-3約4.6-kbのDNA断片に加え、コリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvB-ilvN-ilvC遺伝子(ライゲーションH液)の場合、長さ約3.7-kbの挿入断片が認められた。
コリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvB-ilvN-ilvC遺伝子を含むプラスミドをpKK223-3-ilvB-ilvN-ilvC/CGと命名した。
【0160】
イソブタノール生産遺伝子のpCRB1へのクローニング
上述のプラスミドpKK223-3-ilvB-ilvN-ilvC/CGから、tacプロモーター及びコリネバクテリウム グルタミカムR由来ilvB-ilvN-ilvC遺伝子を含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際して、tacプロモーター及びコリネバクテリウム グルタミカムR由来ilvB-ilvN-ilvC遺伝子(配列番号55;Ptac-ilvB-ilvN-ilvC配列)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを合成し、使用した。
【0161】
Ptac-ilvB-ilvN-ilvC配列増幅用プライマー
(a-19); 5’- AT
GCAAGC TTCGGCTGTGCAGGTCGTAAAT -3’ (配列番号56)
(b-19); 5’- AC
GCAAGC TTCGCTTATGTACAAAGTGCAC -3’ (配列番号57)
尚、プライマー(a-19)及び(b-19)には、HindIII制限酵素部位が付加されている。
【0162】
鋳型DNAは、上述のプラスミドpKK223-3-ilvB-ilvN-ilvC/CGを用いた。
実際のPCRは、サーマルサイクラー GeneAmp PCR System 9700(アプライド・バイオシステムズ社製)を用い、反応試薬としてTaKaRa LA Taq(タカラバイオ株式会社製)を用いて下記の条件で行った。
【0163】
反応液:
以上を混合し、この50μlの反応液をPCRにかけた。
*) Ptac-ilvB-ilvN-ilvC配列を増幅する場合はプライマー(a-19)と(b-19)の組み合わせで行った。
【0164】
PCRサイクル:
デナチュレーション過程 :94℃、60秒
アニーリング過程 :52℃、60秒
エクステンション過程 :72℃、240秒
以上を1サイクルとし、30サイクル行った。
【0165】
上記で生成した反応液10μlを0.8%アガロースゲルにより電気泳動を行い、Ptac-ilvB-ilvN-ilvC配列約3.9-kbのDNA断片が検出できた。
【0166】
上記のPCRにより増幅したtacプロモーター配列及びコリネバクテリウム グルタミカムR由来ilvB-ilvN-ilvC配列を含む約3.9-kb DNA断片10μlと約4.1-kbのクローニングベクターpCRB1 〔Nakata, K. et al., Vectors for the genetics engineering of corynebacteria; in Saha, B.C. (ed.):Fermentation Biotechnology, ACS Symposium Series 862. Washington, American Chemical Society: 175-191 (2003)〕2μlを各々制限酵素HindIIIで切断し、70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ (タカラバイオ株式会社製) 1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションI液とした。
得られたライゲーションI液を、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、クロラムフェニコール50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
【0167】
培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素HindIIIでそれぞれ切断し、挿入断片を確認した。この結果、クローニングベクターpCRB1約4.1-kbのDNA断片に加え、Ptac-ilvB-ilvN-ilvC配列(ライゲーションI液)の場合、約3.9-kbのDNA断片が認められた。
コリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvB-ilvN-ilvC遺伝子を含むプラスミドをpCRB1-ilvB-ilvN-ilvC/CG(
図1)と命名した。
【0168】
イソブタノール生産遺伝子のpCRB207へのクローニング
上記項(3)に示したPCRにより増幅したバチルス サブチリス株由来alsS遺伝子を含む約1.8-kb DNA断片、エシェリヒア コリ株由来adhP遺伝子を含む約1.0-kb DNA断片、ラクトコッカス ラクティス株由来kivD遺伝子を含む約1.7-kb DNA断片、サッカロマイセス セレビシエ株由来adh2遺伝子を含む約1.1-kb DNA断片及びスタフィロコッカス エピデルミディス株由来ipd遺伝子を含む約1.7-kb DNA断片 10μl及びPgapAプロモーターを含有するクローニングベクターpCRB207 2μlを各々制限酵素NcoIで切断し、70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ (タカラバイオ株式会社製) 1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションJ液、K液、L液、M液及びN液とした。
【0169】
同じく、上記項(3)に示したPCRにより増幅したコリネバクテリウム グルタミカム株由来 ilvD遺伝子を含む約2.0-kb DNA断片及びシュードモナス プチダ株由来adh遺伝子を含む約1.0-kb DNA断片10μlを制限酵素BspHIで、PgapAプロモーターを含有するクローニングベクターpCRB207 2μlを制限酵素NcoIで切断し、70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ(タカラバイオ株式会社製) 1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションO液及びP液とした。
【0170】
得られた7種のライゲーションJ液、K液、L液、M液、N液、O液及びP液それぞれを、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、カナマイシン50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
【0171】
各々培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素でそれぞれ切断し、挿入断片を確認した。この結果、プラスミドpCRB207約5.1-kbのDNA断片に加え、バチルス サブチリス株由来alsS遺伝子(ライゲーションJ液)の場合、長さ約1.8-kbの挿入断片が、エシェリヒア コリ株由来adhP遺伝子(ライゲーションK液)の場合、長さ約1.0-kbの挿入断片が、ラクトコッカス ラクティス株由来kivD遺伝子(ライゲーションL液)の場合、長さ約1.7-kbの挿入断片が、サッカロマイセス セレビシエ株由来adh2遺伝子(ライゲーションM液)の場合、長さ約1.1-kbの挿入断片が、スタフィロコッカス エピデルミディス株由来ipd遺伝子(ライゲーションN液)の場合、長さ約1.7-kbの挿入断片が、コリネバクテリウム グルタミカム株由来 ilvD遺伝子(ライゲーションO液)の場合、長さ約2.0-kbの挿入断片、シュードモナス プチダ株由来adh遺伝子(ライゲーションP液)の場合、長さ約1.0-kbの挿入断片が認められた。
【0172】
バチルス サブチリス株由来alsS遺伝子を含むプラスミドをpCRB207-alsS/BS、エシェリヒア コリ株由来adhP遺伝子を含むプラスミドをpCRB207-adhP/EC、ラクトコッカス ラクティス株由来kivD遺伝子を含むプラスミドをpCRB207-kivD/LL、サッカロマイセス セレビシエ株由来adh2遺伝子を含むプラスミドをpCRB207-adh2/SC、スタフィロコッカス エピデルミディス株由来ipd遺伝子を含むプラスミドをpCRB207-ipd/SE、コリネバクテリウム グルタミカム株由来 ilvD遺伝子を含むプラスミドをpCRB207-ilvD/CG、シュードモナス プチダ株由来adh遺伝子を含むプラスミドをpCRB207-adh/PPとそれぞれ命名した(
図1)。
【0173】
(5) ブタノール生産遺伝子活性測定株の構築
上述のプラスミド1種類pCRB1-ilvB-ilvN-ilvC/CGを用いて、電気パルス法 [Agric. Biol. Chem.、Vol.54、443-447(1990) 及び Res. Microbiol.、Vol.144、181-185(1993)] により、コリネバクテリウム グルタミカムR ldhA mutant [J. Mol. Microbiol. Biotechnol.、Vol. 8、243-254(2004)] を形質転換し、クロラムフェニコール5μg/mlを含むA寒天培地に塗布した。
【0174】
上述のプラスミド7種類pCRB207-alsS/BS、pCRB207-adhP/EC、pCRB207-kivD/LL、pCRB207-adh2/SC、pCRB207-ipd/SE、pCRB207-ilvD/CG、及びpCRB207-adh/PPを用いて、電気パルス法 [Agric. Biol. Chem.、Vol.54、443-447(1990) 及び Res. Microbiol.、Vol.144、181-185(1993)] により、コリネバクテリウム グルタミカムR ldhA mutant [J. Mol. Microbiol. Biotechnol.、Vol. 8、243-254(2004)] を形質転換し、カナマイシン 50μg/mlを含むA寒天培地に塗布した。
【0175】
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素で切断し、挿入断片を確認した。この結果、上記で作製のプラスミドpCRB1-ilvB-ilvN-ilvC/CG、pCRB207-alsS/BS、pCRB207-adhP/EC、pCRB207-kivD/LL、pCRB207-adh2/SC、pCRB207-ipd/SE、pCRB207-ilvD/CG、及びpCRB207-adh/PPの導入が認められた。
【0176】
得られた株をコリネバクテリウム グルタミカムR ldhA mutant/ pCRB1-ilvB-ilvN-ilvC/CG、ldhA mutant/ pCRB207-alsS/BS、ldhA mutant/ pCRB207-adhP/EC、ldhA mutant/ pCRB207-kivD/LL、ldhA mutant/ pCRB207-adh2/SC、ldhA mutant/ pCRB207-ipd/SE、ldhA mutant/ pCRB207-ilvD/CG及びldhA mutant/ pCRB207-adh/PPと命名した。
【0177】
実施例2 イソイソブタノール生産遺伝子を導入したコリネバクテリウム グルタミカムにおける酵素活性測定
実施例1において構築したイソイソブタノール生産遺伝子をそれぞれ単独で導入したコリネバクテリウム グルタミカムR ldhA mutant(以降、コリネバクテリウム グルタミカム単一遺伝子導入株と記す)(ただし、例外としてilvB-ilvN-ilvCは同一のプラスミド上に連結されている)におけるイソイソブタノール生産関連酵素、すなわちアセトヒドロキシ酸シンターゼ(AHAS)、アセトヒドロキシ酸イソメロレダクターゼ(AHAIR)、ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(DHAD)、2-ケト酸デカルボキシラーゼ(KDC)、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)の活性を以下の方法により測定した。尚、コントロールとして、宿主として用いたコリネバクテリウム グルタミカムR ldhA mutantも同様の方法にて測定した。
【0178】
(1)AHAS、AHAIR、DHAD、ADHの活性測定
コリネバクテリウム グルタミカム単一遺伝子導入株を、カナマイシン50μg/mlを含むA寒天培地[(NH
2)
2CO 2g、(NH
4)
2SO
4 7g、KH
2PO
4 0.5 g、K
2HPO
4 0.5 g、MgSO
4.7H
2O 0.5 g、0.06% (w/v) Fe
2 SO
4.7H
2O + 0.042% (w/v) MnSO
4.2H
2O 1 ml、0.02% (w/v) biotin solution 1 ml、0.01% (w/v) thiamin solution 2 ml、yeast extract 2 g、vitamin assay casamino acid 7 g、glucose 40 g、寒天 15 gを蒸留水1Lに懸濁] に塗布し、28℃、20時間暗所に静置した。
【0179】
上記のプレートで生育したコリネバクテリウム グルタミカム単一遺伝子導入株を、カナマイシン50μg/mlを含むA液体培地[(NH
2)
2CO 2g、(NH
4)
2SO
4 7g、KH
2PO
4 0.5 g、K
2HPO
4 0.5 g、MgSO
4.7H
2O 0.5 g、0.06% (w/v) Fe
2 SO
4.7H
2O + 0.042% (w/v) MnSO
4.2H
2O 1 ml、0.02% (w/v) biotin solution 1 ml、0.01% (w/v) thiamin solution 2 ml、yeast extract 2 g、vitamin assay casamino acid 7 g、glucose 40 gを蒸留水1Lに溶解] 10mlの入った試験管に一白金耳植菌し、28℃にて15時間、好気的に振盪培養を行った。
【0180】
上記条件で生育したコリネバクテリウム グルタミカム単一遺伝子導入株を、カナマイシン50μg/mlを含むA液体培地100mlに植菌し、28℃にて15時間、好気的に振盪培養を行った。コリネバクテリウム グルタミカムR ldhA mutantは、A培地にカナマイシンを添加しないこと以外は同様の条件にて培養した。
【0181】
このようにして培養増殖されたそれぞれの菌体を、遠心分離 (4℃、8,000×g, 10分)により回収した。得られた菌体を、破砕液1(100mMトリス−塩酸緩衝液pH 7.5、2mMジチオスレイトール)により洗浄した。再び遠心分離し、回収した菌体を1mlの破砕液1で懸濁した後、ガラスビーズ1gを加え、超音波破砕機(Biorupter、コスモバイオ社製)により30分間ホモジナイズした。その後遠心分離(4℃、15,000×g、10分)により不溶性物質を取り除き、酵素液1を得た。タンパク質量はBio-Rad protein assay(Bio-Rad社製)により測定した。このようして得られた酵素液を用い、以下に記載の方法でAHAS、AHAIR、DHADおよびADH活性を測定した。
【0182】
AHAS活性は、ピルビン酸を基質とし、ピルビン酸の減少に伴う333nmの吸光度減少を指標とした(Craig M.et.al., Mutagenesis of Escherichia coli acetohydroxyacid synthase isoenzyme II and characterization of three herbicide-insensitive forms. Biochem. J., 335:653-661 (1998))。活性測定に用いた反応液は50mMリン酸カリウムpH 8.0、10mM塩化マグネシウム、0.1mMTPP、0.1mM FAD、50mM ピルビン酸ナトリウムであり、吸光度測定には分光光度計DU-800(BECKMAN社製)を用いた。30℃で反応液に酵素液1を添加し、10分間静置後50mMとなるようにピルビン酸ナトリウムを加え、反応液の吸光度減少の傾きとピルビン酸ナトリウムを含まない反応液の吸光度減少の傾きの差から、モル吸光係数17.5M
-1cm
-1 を利用して活性値を算出した。
【0183】
実施例1で構築したAHASをコードする遺伝子の導入株であるコリネバクテリウム グルタミカムR ldhA mutant/pCRB1-ilvB-ilvN-ilvC/CG、ldhA mutant/pCRB207-alsS/BSの2株、及びコントロールとして宿主として用いたコリネバクテリウム グルタミカムR ldhA mutantのAHAS活性測定の結果を以下の表に示す(1Uは1分間に1μmolの基質を消費する酵素量を示す)。
【0184】
【表1】
【0185】
AHAIR活性は、アセト乳酸とNADPHから2,3-ジヒドロキシイソ吉草酸を形成する際の、NADPHの減少に伴う340nmの吸光度減少を指標とした(Ruyex., et.al., Characterization of enzymes of the branched-chain amino acid biosynthetic pathway in Methanococcus spp. J. Bacteriol., 173:2086-2092 (1991))。活性測定に用いた反応液は100mM トリス−塩酸緩衝液pH 7.6、10mM 塩化マグネシウム、0.15mM NADPH、10mM アセト乳酸であり、吸光度測定には分光光度計DU-800(BECKMAN社製)を用いた。30℃で酵素液1を反応液に添加することにより反応を開始し、反応液の吸光度減少の傾きとアセト乳酸を含まない反応液の吸光度減少の傾きの差から、モル吸光係数6.22M
-1cm
-1を利用して活性値を算出した。
【0186】
実施例1で構築したAHAIRをコードする遺伝子の導入株であるコリネバクテリウム グルタミカムR ldhA mutant/pCRB1-ilvB-ilvN-ilvC/CG及びコントロールとして宿主として用いたコリネバクテリウム グルタミカムR ldhA mutantのAHAIR活性測定の結果を以下の表に示す(1Uは1分間に1μmolの基質を消費する酵素量を示す)。
【0187】
【表2】
【0188】
DHAD活性は、2,3-ジヒドロキシイソ吉草酸から2-ケトイソ吉草酸を形成する際の、2-ケトイソ吉草酸の増加に伴う340nmの吸光度上昇を指標とした(Dennis H.F., et.al., The role and properties of the iron-sulfur cluster in Escherichia coli dihydroxy-acid dehydratase. J. Biol. Chem., 268:14732-14742 (1993))。活性測定に用いた反応液は、50mM トリス−塩酸緩衝液pH 8.0、10mM塩化マグネシウム、6mM 2,3-ジヒドロキシイソ吉草酸であり、吸光度測定には分光光度計DU-800(BECKMAN社製)を用いた。30℃で酵素液1を反応液に添加することにより反応を開始し、反応液の吸光度減少の傾きと2,3-ジヒドロキシイソ吉草酸を含まない反応液の吸光度減少の傾きの差から、モル吸光係数190M
-1cm
-1を利用して活性値を算出した。
【0189】
実施例1で構築したDHADをコードする遺伝子の導入株であるコリネバクテリウム グルタミカムR ldhA mutant/pCRB207-ilvD/CG、及びコントロールとして宿主として用いたコリネバクテリウム グルタミカムR ldhA mutantのDHAD活性測定の結果を以下の表に示す(1Uは1分間に1μmolの基質を消費する酵素量を示す)。
【0190】
【表3】
【0191】
ADH活性は、イソブチルアルデヒドからイソブタノールを形成する際の、NADHの減少を340nmの吸光度減少を指標とした(Durre, P. et al., Enzymatic investigtations on butanol dehydrogenase and butyraldehyde dehydrogenase in extracts of Clostridium acetobutylicum. Appl. Microbiol. Biotechnol. 26:268-272 (1987))。反応液の組成は50mM MES緩衝液(pH6.0)、0.15mM NADH、40mM イソブチルアルデヒドであり、吸光度測定は分光光度計Ultraspec 2100 pro(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用いて95% N
2、5% H
2で置換された嫌気チャンバー (COY社製)内にて行った。30℃で反応液に酵素液2を添加し10分間静置後、40mMとなるようにイソブチアルデヒドまたは対照試料として同体積の純水を加え、それぞれの吸光度減少の差からモル吸光係数6,220M
-1cm
-1を利用して活性値を算出した。
【0192】
実施例1で構築したADHをコードする遺伝子の導入株であるコリネバクテリウム グルタミカムR ldhA mutant/pCRB207-adh2/SC、ldhA mutant/pCRB207-adhP/EC、ldhA mutant/pCRB207-adh/PP及びコントロールとして宿主として用いたコリネバクテリウム グルタミカムR ldhA mutantのADH活性測定の結果を以下の表に示す(1Uは1分間に1μmolの基質を消費する酵素量を示す)。
【0193】
【表4】
【0194】
(2)KDCの活性測定
コリネバクテリウム グルタミカム単一遺伝子導入株を、カナマイシン 50μg/ml含むA寒天培地 [(NH
2)
2CO 2g、(NH
4)
2SO
4 7g、KH
2PO
4 0.5 g、K
2HPO
4 0.5 g、MgSO
4.7H
2O 0.5 g、0.06% (w/v) Fe
2 SO
4.7H
2O + 0.042% (w/v) MnSO
4.2H
2O 1 ml、0.02% (w/v) biotin solution 1 ml、0.01% (w/v) thiamin solution 2 ml、yeast extract 2 g、vitamin assay casamino acid 7 g、glucose 40 g、寒天 15 gを蒸留水1Lに懸濁] に塗布し、28℃、20時間暗所に静置した。
【0195】
上記のプレートで生育したコリネバクテリウム グルタミカム単一遺伝子導入株を、カナマイシン50μg/mlを含むA液体培地[(NH
2)
2CO 2g、(NH
4)
2SO
4 7g、KH
2PO
4 0.5 g、K
2HPO
4 0.5 g、MgSO
4.7H
2O 0.5 g、0.06% (w/v) Fe
2 SO
4.7H
2O + 0.042% (w/v) MnSO
4.2H
2O 1 ml、0.02% (w/v) biotin solution 1 ml、0.01% (w/v) thiamin solution 2 ml、yeast extract 2 g、vitamin assay casamino acid 7 g、glucose 40 gを蒸留水1Lに溶解] 10mlの入った試験管に一白金耳植菌し、28℃にて15時間、好気的に振盪培養を行った。
【0196】
上記条件で生育したコリネバクテリウム グルタミカム単一遺伝子導入株を、カナマイシン50μg/ml を含有したA液体培地100mlに植菌し、28℃にて15時間、好気的に振盪培養を行った。コリネバクテリウム グルタミカムR ldhA mutantは、A培地にカナマイシンを添加しないこと以外は同様の条件にて培養した。
【0197】
このようにして培養増殖されたそれぞれの菌体を、遠心分離 (4℃、8,000×g, 10分)により回収した。得られた菌体を、BT(-グルコース)液体培地 [(NH
2)
2CO 2g、(NH
4)
2SO
4 7g、KH
2PO
4 0.5 g、K
2HPO
4 0.5 g、MgSO
4.7H
2O 0.5 g、0.06% (w/v) Fe
2 SO
4.7H
2O + 0.042% (w/v) MnSO
4.2H
2O 1 ml、0.02% (w/v) biotin solution 1 ml、0.01% (w/v) thiamin solution 2 mlを蒸留水1Lに溶解] 40mlに懸濁し50mlメディウム瓶に移した。以降の操作は95% N
2、5% H
2で置換された嫌気チャンバー (COY社製)内で行った。嫌気チャンバー 内でメディウム瓶を開放し2時間攪拌することで培地及び菌体を嫌気置換した。遠心分離(4℃、5,000×g、10分)により菌体を回収し、破砕液2 (50mM MOPS緩衝液 pH 7.0) により洗浄した。再び遠心分離し、回収した菌体を1mlの破砕液2で懸濁した後、ガラスビーズ2gを加え、1分間のボルテックスミキサーによるホモジナイズと1分間の氷上静置を10回繰り返して菌体を破砕した。その後遠心分離(4℃、5,000×g、10分)により不溶性物質を取り除き、酵素液2を得た。得られた酵素液2を用い、以下に記載の方法でKDC活性を測定した。
【0198】
KDC活性は、酵母由来アルコール脱水素酵素 (Roche社製) を併用した2段階反応を利用して測定した。すなわち、KDCによる2-ケトイソ吉草酸からイソブチルアルデヒドへの変換と同時に、酵母由来アルコール脱水素酵素によるイソブチルアルデヒドからイソブタノールへの変換を行う。この反応では1分子の2-ケトイソ吉草酸からイソブタノールを形成する際に、1分子のNADHを消費することから、KDC活性はNADHの減少に伴う340nmの吸光度減少を指標とした。反応液の組成は50mM MES緩衝液pH6.0、5mM 塩化マグネシウム、1.5mM TPP、0.2mM 2-ケトイソ吉草酸、0.15mM NADH、20U酵母由来アルコール脱水素酵素であり、吸光度測定は分光光度計Ultraspec 2100 pro(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用いて95% N
2、5% H
2で置換された嫌気チャンバー (COY社製)内にて行った。30℃で反応液に酵素液2を添加し10分間静置後、6mM 2-ケトイソ吉草酸または対照試料として同体積の純水を加え、それぞれの吸光度減少の差からモル吸光係数6,220M
-1cm
-1を利用して活性値を算出した。
【0199】
実施例1で構築したKDCをコードする遺伝子の導入株であるコリネバクテリウム グルタミカムR ldhA mutant/pCRB207-kivD/LL、ldhA mutant/pCRB207-ipd/SEの2株、及びコントロールとして宿主として用いたコリネバクテリウム グルタミカムR ldhA mutantのHBD活性測定の結果を以下の表に示す(1Uは1分間に1μmolの基質を消費する酵素量を示す)。
【0200】
【表5】
【0201】
実施例3 コリネバクテリウム グルタミカム IBU1、IBU2、IBU3、IBU4、IBU5の創製
(1) ブタノール生産遺伝子のクローニング
バチルス サブチリス由来のイソブタノール生産遺伝子のクローニング
バチルス サブチリス由来のアセトヒドロキシ酸 シンターゼをコードするalsS遺伝子を含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際して、alsS遺伝子をクローン化するべく、バチルス サブチリスの配列(配列番号58;alsS遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
【0202】
alsS遺伝子増幅用プライマー
(a-20);5’-CTCT
CCCGGG AAACTTTTTAGAAAGGTGTGTTTCACCCGTGTTGACAAAAGCAACAAAAGAAC -3’
(配列番号59)
(b-20);5’-CTCT
CCCGGG AGATCT CTAGAGAGCTTTCGTTTTCATGA -3’
(配列番号60)
【0203】
尚、プライマー(a-20)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-20)には、SmaI及びBglII制限酵素部位が付加されている。
【0204】
コリネバクテリウム グルタミカム由来のイソブタノール生産遺伝子のクローニング
コリネバクテリウム グルタミカム由来のアセトヒドロキシ酸 シンターゼをコードするilvB-ilvN遺伝子、アセトヒドロキシ酸 イソメロレダクターゼをコードするilvC遺伝子、ジヒドロキシ酸 デヒドラターゼをコードするilvD遺伝子をそれぞれ含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
【0205】
PCRに際して、ilvB-ilvN-ilvC遺伝子、ilvC遺伝子及びilvD遺伝子をそれぞれクローン化するべく、コリネバクテリウム グルタミカムの配列(配列番号34;ilvB-ilvN-ilvC遺伝子)、(配列番号61:ilvC遺伝子)及び(配列番号62:ilvD遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
【0206】
ilvB-ilvN-ilvC遺伝子増幅用プライマー
(a-12); 5’- GA
CCCGGG AGTAAAGGAGCCAGAAAGTCGTGAA -3’
(配列番号36)
(b-12); 5’- GA
CCCGGG CCTGCAGG TGCCTTATGTACAAAGTGCACAGCA -3’
(配列番号37)
尚、プライマー(a-12)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-12)には、SmaI及びSse8387I制限酵素部位が付加されている。
【0207】
ilvC遺伝子増幅用プライマー
(a-21); 5’- CTCT
CCATGG CTATTGAACTGCTTTATGATG -3’
(配列番号63)
(b-21); 5’- CTCT
CCATGG AGATCT TTAAGCGGTTTCTGCGCGA -3’
(配列番号64)
尚、プライマー(a-21)には、NcoI制限酵素部位が、プライマー(b-21)には、NcoI及びBglII制限酵素部位が付加されている。
【0208】
ilvD遺伝子増幅用プライマー
(a-22); 5’- GA
CCCGGG GAGCAGATTTGAAAAGCGCATCATG -3’
(配列番号65)
(b-22); 5’- GA
CCCGGG GGTACC GTATTTGCAACGGGGAGCTCCACCA -3’
(配列番号66)
尚、プライマー(a-22)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-22)には、SmaI及びKpnI制限酵素部位が付加されている。
【0209】
エシェリヒア コリ由来のイソブタノール生産遺伝子のクローニング
エシェリヒア コリ由来のアセトヒドロキシ酸 シンターゼをコードするilvB-ilvN遺伝子、アセトヒドロキシ酸 イソメロレダクターゼをコードするilvC遺伝子、ジヒドロキシ酸 デヒドラターゼをコードするilvD遺伝子及びアルコールデヒドロゲナーゼをコードするadhP遺伝子を含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
【0210】
PCRに際して、ilvB-ilvN遺伝子、ilvC遺伝子、ilvD遺伝子及びadhP遺伝子をクローン化するべく、エシェリヒア コリの配列(配列番号67;ilvB-ilvN遺伝子)、(配列番号68;ilvC遺伝子)、(配列番号69;ilvD遺伝子)及び(配列番号40;adhP遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
【0211】
ilvB-ilvN遺伝子増幅用プライマー
(a-23); 5’- CTCT
CCCGGG ATGGCAAGTTCGGGCACAA -3’
(配列番号70)
(b-23); 5’- CTCT
CCCGGG AGATCT TTACTGAAAAAACACCGCGATCTT-3’
(配列番号71)
尚、プライマー(a-23)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-23)には、SmaI及びBglII制限酵素部位が付加されている。
【0212】
ilvC遺伝子増幅用プライマー
(a-24); 5’- CTCT
CCCGGG ATGGCTAACTACTTCAATACACTG -3’
(配列番号72)
(b-24); 5’- CTCT
CCCGGG AGATCT TTAACCCGCAACAGCAATACG-3’
(配列番号73)
尚、プライマー(a-24)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-24)には、SmaI及びBglII制限酵素部位が付加されている。
【0213】
ilvD遺伝子増幅用プライマー
(a-25); 5’- CTCT
TTTAAA ATGCCTAAGTACCGTTCCG -3’
(配列番号74)
(b-25); 5’- CTCT
TTTAAA AGATCT TTAACCCCCCAGTTTCGATTTAT-3’
(配列番号75)
尚、プライマー(a-25)には、DraI制限酵素部位が、プライマー(b-25)には、DraI及びBglII制限酵素部位が付加されている。
【0214】
adhP遺伝子増幅用プライマー
(a-14); 5’- CTCT
CCATGG AGGCTGCAGTTGTTACGAAG -3’
(配列番号41)
(b-14); 5’- CTCT
CCATGG AGATCT TTAGTGACGGAAATCAATCACCAT -3’
(配列番号42)
尚、プライマー(a-14)には、NcoI制限酵素部位が、プライマー(b-14)には、NcoI及びBglII制限酵素部位が付加されている。
【0215】
ラクトコッカス ラクティス由来のブタノール生産遺伝子群のクローニング
ラクトコッカス ラクティス由来の2-ケト酸 デカルボキシラーゼをコードするkivD遺伝子を含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際して、kivD遺伝子をクローン化するべく、ラクトコッカス ラクティスの配列(配列番号43;kivD遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
【0216】
kivD遺伝子増幅用プライマー
尚、プライマー(a-15)には、NcoI制限酵素部位が、プライマー(b-15)には、NcoI及びBglII制限酵素部位が付加されている。
【0217】
シュードモナス プチダ由来のイソブタノール生産遺伝子のクローニング
シュードモナス プチダ由来のアルコール デヒドロゲナーゼをコードするadh遺伝子を含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際してadh遺伝子をクローン化するべく、シュードモナス プチダの配列(配列番号46;adh遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーをアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems) 社製「394 DNA/RNA シンセサイザー (synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
【0218】
adh遺伝子増幅用プライマー
(a-16); 5’- CTCT
TCATGA AAGCTGCTGTCGTTGC -3’ (配列番号47)
(b-16); 5’- CTCT
TCATGA CTCGAG TCAGCCTTCGAACTGTATCAC -3’
(配列番号48)
尚、プライマー(a-16)には、BspHI制限酵素部位が、プライマー(b-16)には、BspHI及びXhoI制限酵素部位が付加されている。
【0219】
サッカロマイセス セレビシエ由来のイソブタノール生産遺伝子のクローニング
サッカロマイセス セレビシエ由来のアルコール デヒドロゲナーゼをコードするadh2遺伝子を含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際してadh2遺伝子をクローン化するべく、サッカロマイセス セレビシエの配列(配列番号49;adh2遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
【0220】
adh2遺伝子増幅用プライマー
尚、プライマー(a-17)には、NcoI制限酵素部位が、プライマー(b-17)には、NcoI及びBglII制限酵素部位が付加されている。
【0221】
鋳型DNAは、バチルス サブチリスは、NITE Biological Resource Center(NBRC)より入手したバチルス サブチリス168 NBRC14144から抽出した染色体DNAを用いた。コリネバクテリウム グルタミカムは、コリネバクテリウム グルタミカムRから抽出した染色体DNAを用いた。エシェリヒア コリは、エシェリヒア コリK12 MG1655から抽出した染色体DNAを用いた。ラクトコッカス ラクティスは、NITE Biological Resource Center(NBRC)より入手したラクトコッカス ラクティスNBRC100933から抽出した染色体DNAを用いた。シュードモナス プチダは、American Type Culture Collection (ATCC)より入手したシュードモナス プチダF1 ATCC700007から抽出した染色体DNAを用いたサッカロマイセス セレビシエは、NITE Biological Resource Center(NBRC)より入手したサッカロマイセス セレビシエNBRC 2376から抽出した染色体DNAを用いた。
【0222】
実際のPCRは、サーマルサイクラー GeneAmp PCR System 9700(アプライド・バイオシステムズ社製)を用い、反応試薬としてTaKaRa LA Taq(タカラバイオ株式会社製)を用いて下記の条件で行った。
【0223】
反応液:
以上を混合し、この50μlの反応液をPCRにかけた。
【0224】
*) バチルス サブチリスalsS遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-20) と (b-20) の組み合わせ、コリネバクテリウム グルタミカムilvB-ilvN-ilvC遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-12) と (b-12) 、ilvC遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-21) と (b-21)、ilvD遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-22) と (b-22) の組み合わせ、エシェリヒア コリilvB-ilvN遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-23)と(b-23)、ilvC遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-24)と(b-24)、ilvD遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-25)と(b-25)、adhP遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-14) と (b-14) の組み合わせ、ラクトコッカス ラクティスkivD遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-15) と (b-15) の組み合わせ、シュードモナス プチダadh遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-16) と (b-16) の組み合わせ、サッカロマイセス セレビシエadh2遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-17) と (b-17) の組み合わせで行った。
【0225】
PCRサイクル:
以上を1サイクルとし、30サイクル行った。
【0226】
上記で生成した反応液10μlを0.8%アガロースゲルにより電気泳動を行い、バチルス サブチリスalsS遺伝子の場合約1.8-kb、コリネバクテリウム グルタミカムilvB-ilvN-ilvC遺伝子の場合約3.7-kb、コリネバクテリウム グルタミカムilvC遺伝子の場合約1.0-kb、コリネバクテリウム グルタミカムilvD遺伝子の場合約2.0-kb、エシェリヒア コリilvB-ilvN遺伝子の場合約2.0-kb、エシェリヒア コリilvC遺伝子の場合約1.5-kb、エシェリヒア コリilvD遺伝子の場合約1.9-kb、エシェリヒア コリadhP遺伝子の場合約1.0-kb、ラクトコッカス ラクティスkivD遺伝子の場合約1.7-kb、シュードモナス プチダadh遺伝子の場合約1.0-kb、サッカロマイセス セレビシエadh2遺伝子の場合約1.1-kbのDNA断片が検出できた。
【0227】
(2) イソブタノール生産遺伝子発現プラスミドの構築
イソブタノール生産遺伝子のpKK223-3へのクローニング
上記(1)のPCRにより増幅したコリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvB-ilvN-ilvC遺伝子を含む約3.7-kb DNA断片、コリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvD遺伝子を含む約2.0-kb DNA断片、エシェリヒア コリ株由来ilvB-ilvN遺伝子を含む約2.0-kb DNA断片及びエシェリヒア コリ株由来ilvC遺伝子を含む約1.5-kb DNA断片10μl及びtacプロモーターを含有するクローニングベクターpKK223-3(ファルマシア社製)2μlを各々制限酵素SmaIで切断し、70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ (タカラバイオ株式会社製) 1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションQ液、R液、S液及びT液とした。
【0228】
同じく、上記のPCRにより増幅したエシェリヒア コリ株由来ilvD遺伝子を含む約1.9-kb DNA断片10μlを制限酵素DraIで、tacプロモーターを含有するクローニングベクターpKK223-3(ファルマシア社製)2μlを制限酵素SmaIで切断し、70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ(タカラバイオ株式会社製)1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションU液とした。
得られた5種のライゲーションQ液、R液、S液、T液及びU液それぞれを、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、アンピシリン50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
【0229】
各々培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素でそれぞれ切断し、挿入断片を確認した。この結果、プラスミドpKK223-3約4.6-kbのDNA断片に加え、コリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvB-ilvN-ilvC遺伝子(ライゲーションQ液)の場合、長さ約3.7-kbの挿入断片が、コリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvD遺伝子(ライゲーションR液)の場合、長さ約2.0-kbの挿入断片が、エシェリヒア コリ株由来ilvB-ilvN遺伝子(ライゲーションS液)の場合、長さ約2.0-kbの挿入断片が、エシェリヒア コリ株由来ilvC遺伝子(ライゲーションT液)の場合、長さ約1.5-kbの挿入断片が、エシェリヒア コリ株由来ilvD遺伝子(ライゲーションU液)の場合、長さ約1.9-kbの挿入断片が認められた。
【0230】
コリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvB-ilvN-ilvC遺伝子を含むプラスミドをpKK223-3-ilvB-ilvN-ilvC/CG、コリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvD遺伝子を含むプラスミドをpKK223-3-ilvD/CG、エシェリヒア コリ株由来ilvB-ilvN遺伝子を含むプラスミドをpKK223-3-ilvB-ilvN/EC、エシェリヒア コリ株由来ilvC遺伝子を含むプラスミドをpKK223-3-ilvC/EC、エシェリヒア コリ株由来ilvD遺伝子を含むプラスミドをpKK223-3-ilvD/ECとそれぞれ命名した。
【0231】
イソブタノール生産遺伝子のpCRB1へのクローニング
上述のプラスミドpKK223-3-ilvB-ilbN-ilvC/CG及びpKK223-3-ilvD/CGから、tacプロモーターを含むコリネバクテリウム グルタミカムR由来ilvB-ilvN-ilvC遺伝子及びilvD遺伝子のDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際して、tacプロモーター及びコリネバクテリウム グルタミカムR由来ilvB-ilvN-ilvC遺伝子(配列番号55;Ptac-ilvB-ilvN-ilvC配列)、ilvD遺伝子(配列番号76;Ptac-ilvD配列)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを合成し、使用した。
【0232】
Ptac-ilvB-ilvN-ilvC配列増幅用プライマー
(a-19); 5’- AT
GCAAGC TTCGGCTGTGCAGGTCGTAAAT -3’(配列番号56)
(b-19); 5’- AC
GCAAGC TTCGCTTATGTACAAAGTGCAC -3’(配列番号57)
尚、プライマー(a-19)及び(b-19)には、HindIII制限酵素部位が付加されている。
【0233】
Ptac-ilvD配列増幅用プライマー
(a-26); 5’- ATAT
CCTGCAGG CTAGCGCTGTGCAGGTCGTAAATCAACT -3’
(配列番号77)
(b-26); 5’- ATATGCTAGCT
CCTGCAGG TATTTGCAACGGGGAGCTC -3’
(配列番号78)
尚、プライマー(a-26)及び(b-26)には、Sse8387I制限酵素部位が付加されている。
【0234】
鋳型DNAは、上述のプラスミドpKK223-3-ilvB-ilbN-ilvC/CG及びpKK223-3-ilvD/CGを用いた。
実際のPCRは、サーマルサイクラー GeneAmp PCR System 9700(アプライド・バイオシステムズ社製)を用い、反応試薬としてTaKaRa LA Taq(タカラバイオ株式会社製)を用いて下記の条件で行った。
【0235】
反応液:
以上を混合し、この50μlの反応液をPCRにかけた。
*) Ptac-ilvB-ilvN-ilvC配列を増幅する場合はプライマー(a-19)と(b-19)の組み合わせ、Ptac-ilvD配列を増幅する場合はプライマー(a-26)と(b-26)の組み合わせで行った。
【0236】
PCRサイクル:
デナチュレーション過程 :94℃、60秒
アニーリング過程 :52℃、60秒
エクステンション過程 :72℃
Ptac-ilvB-ilvN-ilvC配列:240秒
Ptac-ilvD配列:150秒
以上を1サイクルとし、30サイクル行った。
【0237】
上記で生成した反応液10μlを0.8%アガロースゲルにより電気泳動を行い、Ptac-ilvB-ilvN-ilvC配列約3.9-kb及びPtac-ilvD配列約2.2-kbpのDNA断片が検出できた。
【0238】
上記のPCRにより増幅したtacプロモーター配列及びコリネバクテリウム グルタミカム R由来ilvB-ilvN-ilvC配列を含む約3.9-kb DNA断片10μlと約4.1-kbのクローニングベクターpCRB1 〔Nakata, K. et al., Vectors for the genetics engineering of corynebacteria; in Saha, B.C. (ed.):Fermentation Biotechnology, ACS Symposium Series 862. Washington, American Chemical Society : 175-191 (2003)〕 2μlを各々制限酵素HindIIIで切断し、70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ (タカラバイオ株式会社製) 1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションV液とした。
得られたライゲーションV液を、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、クロラムフェニコール50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
【0239】
培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素HindIIIでそれぞれ切断し、挿入断片を確認した。この結果、プラスミドpCRB1約4.1-kbのDNA断片に加え、コリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvB-ilvN-ilvC遺伝子(ライゲーションV液)の場合、長さ約3.9-kbの挿入断片が認められた。
コリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvB-ilvN-ilvC遺伝子を含むプラスミドをpCRB1-ilvB-ilvN-ilvC/CGと命名した。
【0240】
上記のPCRにより増幅したtacプロモーター配列及びコリネバクテリウム グルタミカム R由来ilvD配列を含む約2.2-kb DNA断片10μlと約8.0-kbのpCRB1-ilvB-ilvN-ilvC/CG 2μlを各々制限酵素Sse8387Iで切断し、70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ (タカラバイオ株式会社製) 1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションW液とした。
【0241】
得られたライゲーションW液を、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、クロラムフェニコール50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
【0242】
培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素Sse8387Iで切断し、挿入断片を確認した。この結果、プラスミドpCRB1-ilvB-ilvN-ilvC/CG約8.0-kbのDNA断片に加え、コリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvD遺伝子(ライゲーションW液)の場合、長さ約2.2-kbの挿入断片が認められた。
【0243】
コリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvB-ilvN-ilvC遺伝子及びilvDを含むプラスミドをpCRB1-ilvB-ilvN-ilvC/CG-ilvD/CGと命名した(
図2)。
【0244】
また、上述のプラスミドpKK223-3-ilvB-ilvN/ECを制限酵素BamHI及びBglIIで切断し、アガロース電気泳動後、アガロースゲルからQIAquick Gel Extraction Kit(株式会社キアゲン社製)によって回収したtacプロモーターとエシェリヒア コリ株由来ilvB-ilvN遺伝子を連結した約2.3-kbのDNA断片と、BamHIで切断したクローニングベクターpCRB1を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ(タカラバイオ株式会社製) 1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションX液とした。
【0245】
得られたライゲーションX液を用い、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、クロラムフェニコール 50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
【0246】
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素で切断し、挿入断片を確認した。この結果、プラスミドpCRB1約4.1-kbのDNA断片に加え、エシェリヒア コリ株由来ilvB-ilvN遺伝子(ライゲーションX液)の場合、長さ約2.3-kbの挿入断片が認められた。
エシェリヒア コリ株由来ilvB-ilvN遺伝子を含むプラスミドをpCRB1-ilvB-ilvN/ECと命名した。
尚、このプラスミドは、制限酵素部位BamHIが1箇所のみ存在する。
【0247】
次に、上述のプラスミドpKK223-3-ilvC/ECを制限酵素BamHI及びBglIIで切断し、アガロース電気泳動後、アガロースゲルからQIAquick Gel Extraction Kit(株式会社キアゲン社製)によって回収したtacプロモーターとエシェリヒアコリ株由来ilvC遺伝子を連結した約1.7-kbのDNA断片と、BamHIで切断した上述のプラスミドpCRB1-ilvB-ilvN/ECを混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ(タカラバイオ株式会社製) 1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションY液とした。
得られたライゲーションY液を用い、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、クロラムフェニコール 50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
【0248】
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素で切断し、挿入断片を確認した。この結果、プラスミドpCRB1-ilvB-ilvN/EC約6.4-kbのDNA断片に加え、エシェリヒア コリ株由来ilvC遺伝子(ライゲーションY液)の場合、長さ約1.7-kbの挿入断片が認められた。
エシェリヒア コリ株由来ilvB-ilvN遺伝子及びエシェリヒア コリ株由来ilvC遺伝子を含むプラスミドをpCRB1-ilvB-ilvN/EC-ilvC/ECと命名した。
尚、このプラスミドは、制限酵素部位BamHIが1箇所のみ存在する。
【0249】
さらに、上述のプラスミドpKK223-3-ilvD/ECを制限酵素BamHI及びBglIIで切断し、アガロース電気泳動後、アガロースゲルからQIAquick Gel Extraction Kit(株式会社キアゲン社製)によって回収したtacプロモーターとエシェリヒア コリ株由来ilvD遺伝子を連結した約2.1-kbのDNA断片と、BamHIで切断した上述のプラスミドpCRB1-ilvB-ilvN/EC-ilvC/ECを混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ(タカラバイオ株式会社製) 1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションZ液とした。
得られたライゲーションZ液を用い、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、クロラムフェニコール 50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
【0250】
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素で切断し、挿入断片を確認した。この結果、プラスミドpCRB1-ilvB-ilvN/EC-ilvC/EC約8.1-kbのDNA断片に加え、エシェリヒア コリ株由来ilvD遺伝子(ライゲーションZ液)の場合、長さ約2.1-kbの挿入断片が認められた。
エシェリヒア コリ株由来ilvB-ilvN遺伝子、エシェリヒア コリ株由来ilvC遺伝子及びエシェリヒア コリ株由来ilvD遺伝子を含むプラスミドをpCRB1-ilvB-ilvN/EC-ilvC/EC-ilvD/ECと命名した。
尚、このプラスミドは、制限酵素部位BamHIが1箇所のみ存在する。
【0251】
イソブタノール生産遺伝子のpCRB207へのクローニング
上記項(1)に示したPCRにより増幅したコリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvC遺伝子を含む約1.0-kb DNA断片、エシェリヒア コリ株由来adhP遺伝子を含む約1.0-kb DNA断片、ラクトコッカス ラクティス株由来kivD遺伝子を含む約1.7-kb DNA断片、サッカロマイセス セレビシエ株由来adh2遺伝子を含む約1.1-kb DNA断片10μl及びPgapAプロモーターを含有するクローニングベクターpCRB207 2μlを各々制限酵素NcoIで切断し、70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ (タカラバイオ株式会社製) 1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションAA液、AB液、AC液及びAD液とした。
【0252】
同じく、上記項(1)に示したPCRにより増幅したコリネバクテリウム グルタミカム株由来 ilvD遺伝子を含む約2.0-kb DNA断片及びシュードモナス プチダ株由来adh遺伝子を含む約1.0-kb DNA断片10μlを制限酵素BspHIで、PgapAプロモーターを含有するクローニングベクターpCRB207 2μlを制限酵素NcoIで切断し、70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ(タカラバイオ株式会社製) 1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションAE液及びAF液とした。
【0253】
得られた6種のライゲーションAA液、AB液、AC液、AD液、AE液及びAF液それぞれを、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、カナマイシン50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
【0254】
各々培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素で切断し、挿入断片を確認した。この結果、プラスミドpCRB207約5.1-kbのDNA断片に加え、コリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvC遺伝子(ライゲーションAA液)を含む約1.0-kb DNA断片が、エシェリヒア コリ株由来adhP遺伝子(ライゲーションAB液)の場合、長さ約1.0-kbの挿入断片が、ラクトコッカス ラクティス株由来kivD遺伝子(ライゲーションAC液)の場合、長さ約1.7-kbの挿入断片が、サッカロマイセス セレビシエ株由来adh2遺伝子(ライゲーションAD液)の場合、長さ約1.1-kbの挿入断片が、コリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvD遺伝子(ライゲーションAE液)の場合、長さ約2.0-kbの挿入断片が、シュードモナス プチダ株由来adh遺伝子(ライゲーションAF液)の場合、長さ約1.0-kbの挿入断片が認められた。
【0255】
コリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvC遺伝子を含むプラスミドをpCRB207-ilvC/CG、エシェリヒア コリ株由来adhP遺伝子を含むプラスミドをpCRB207-adhP/EC、ラクトコッカス ラクティス株由来kivD遺伝子を含むプラスミドをpCRB207-kivD/LL、サッカロマイセス セレビシエ株由来adh2遺伝子を含むプラスミドをpCRB207-adh2/SC、コリネバクテリウム グルタミカム株由来 ilvD遺伝子を含むプラスミドをpCRB207-ilvD/CG、シュードモナス プチダ株由来adh遺伝子を含むプラスミドをpCRB207-adh/PPとそれぞれ命名した。
【0256】
イソブタノール生産遺伝子のpCRB205へのクローニング
上記項(1)に示したPCRにより増幅したバチルス サブチリス株由来alsS遺伝子を含む約1.8-kb DNA断片10μl及びtacプロモーターを含有するクローニングベクターpCRB205 2μlを各々制限酵素SmaIで切断し、70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ (タカラバイオ株式会社製) 1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションAG液とした。
得られたライゲーションAG液を、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、クロラムフェニコール50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
【0257】
各々培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素SmaIで切断し、挿入断片を確認した。この結果、プラスミドpCRB205約5.0-kbのDNA断片に加え、バチルス サブチリス株由来alsS遺伝子(ライゲーションAG液)の場合、長さ約1.8-kbの挿入断片が認められた。
バチルス サブチリス株由来alsS遺伝子を含むプラスミドをpCRB205-alsS/BSと命名した。
【0258】
上述のプラスミドpCRB207-ilvC/CGを制限酵素BamHIで切断し、アガロース電気泳動後、アガロースゲルからQIAquick Gel Extraction Kit(株式会社キアゲン社製)によって回収したgapAプロモーターとコリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvC遺伝子及びターミネーター配列を連結した約2.0-kbのDNA断片と、SphIで切断した上述のプラスミドpCRB205-alsS/BSをDNA Blunting Kit(タカラバイオ株式会社製)により末端平滑化反応を行った後、DNA断片を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ(タカラバイオ株式会社製) 1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションAH液とした。
得られたライゲーションAH液を用い、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、クロラムフェニコール 50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
【0259】
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素で切断し、挿入断片を確認した。この結果、プラスミドpCRB205-alsS/BS約6.8-kbのDNA断片に加え、コリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvC遺伝子(ライゲーションAH液)の場合、長さ約2.0-kbの挿入断片が認められた。
バチルス サブチリス株由来alsS遺伝子及びコリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvC遺伝子を含むプラスミドをpCRB205-alsS/BS-ilvC/CGと命名した(
図2)。
【0260】
イソブタノール生産遺伝子のpCRB208へのクローニング
上記項(1)に示したPCRにより増幅したラクトコッカス ラクティスkivD遺伝子を含む約1.7-kb DNA断片10μl及びldhAプロモーターを含有するクローニングベクターpCRB208
2μlを各々制限酵素NcoIで切断し、70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ (タカラバイオ株式会社製) 1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションAI液とした。
得られたライゲーションAI液を、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、カナマイシン50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
【0261】
各々培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素NcoIで切断し、挿入断片を確認した。この結果、プラスミドpCRB208約4.5-kbのDNA断片に加え、ラクトコッカス ラクティスkivD遺伝子(ライゲーションAI液)の場合、長さ約1.7-kbの挿入断片が認められた。
ラクトコッカス ラクティスkivD遺伝子を含むプラスミドをpCRB208-kivD/LLと命名した(
図2)。
【0262】
イソブタノール生産遺伝子のpCRB15へのクローニング
上述のプラスミドpCRB207-adhP/EC、pCRB207-adh/PP及びpCRB207-adh2/SCを制限酵素BamHIで切断し、アガロース電気泳動後、アガロースゲルからQIAquick Gel Extraction Kit(株式会社キアゲン社製)によって回収したgapAプロモーターとエシェリヒア コリ株由来adhP遺伝子及びターミネーター配列を連結した約2.0-kbのDNA断片と、gapAプロモーターとシュードモナス プチダ株由来adh遺伝子及びターミネーター配列を連結した約2.0-kbのDNA断片と、gapAプロモーターとサッカロマイセス セレビシエ株由来adh2遺伝子及びターミネーター配列を連結した約2.1-kbのDNA断片とBamHIで切断した上述のプラスミドpCRB15約3.8-kbを70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させたDNA断片を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ(タカラバイオ株式会社製) 1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションAJ液、AK液及びAL液とした。
【0263】
得られた3種類のライゲーションAJ液、AK液及びAL液を用い、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、ゼオシン 25μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
【0264】
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素BamHIで切断し、挿入断片を確認した。この結果、プラスミドpCRB15約3.8-kbのDNA断片に加え、エシェリヒア コリ株由来adhP遺伝子(ライゲーションAJ液)の場合、長さ約2.0-kbの挿入断片が、シュードモナス プチダ株由来adh遺伝子(ライゲーションAK液)の場合、長さ約2.0-kbの挿入断片が、サッカロマイセス セレビシエ株由来adh2遺伝子(ライゲーションAL液)の場合、長さ約2.1-kbの挿入断片が認められた。
【0265】
エシェリヒア コリ株由来adhP遺伝子を含むプラスミドをpCRB15-adhP/EC、シュードモナス プチダ株由来adh遺伝子を含むプラスミドをpCRB15-adh/PP、サッカロマイセス セレビシエ株由来adh2遺伝子を含むプラスミドをpCRB15-adh2/SCと命名した(
図2)。
【0266】
また、上述のプラスミドpCRB207-ilvD/CGを制限酵素KpnI及びPstIで切断し、アガロース電気泳動後、アガロースゲルからQIAquick Gel Extraction Kit(株式会社キアゲン社製)によって回収したgapAプロモーターとコリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvD遺伝子及びターミネーター配列を連結した約2.9-kbのDNA断片と、KpnIで切断した上述のプラスミドpCRB15-adhP/EC約5.8-kbをDNA Blunting Kit(タカラバイオ株式会社製)により末端平滑化反応を行った後、DNA断片を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ(タカラバイオ株式会社製) 1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションAM液とした。
得られたライゲーションAM液を用い、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、ゼオシン 25μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
【0267】
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素で切断し、挿入断片を確認した。この結果、プラスミドpCRB15-adhP/EC約5.8-kbのDNA断片に加え、コリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvD遺伝子(ライゲーションAM液)の場合、長さ約2.9-kbの挿入断片が認められた。
エシェリヒア コリ株由来adhP遺伝子及びコリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvD遺伝子を含むプラスミドをpCRB15-adhP/EC-ilvD/CGと命名した(
図2)。
【0268】
(3) イソブタノール生産株の作製
上述のプラスミドpCRB1-ilvB-ilvN-ilvC/CG-ilvD/CG、pCRB208-kivD/LL及びpCRB15-adh2/SCを用いて、電気パルス法 [Agric. Biol. Chem.、Vol. 54、443-447(1990) 及びRes. Microbiol.、Vol. 144、181-185(1993)] により、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldhA mutant [J. Mol. Microbiol. Biotechnol.、Vol. 8、243-254(2004)] 株を形質転換し、クロラムフェニコール 5μg/ml、カナマイシン 50μg/ml、ゼオシン25μg/mlを含むA寒天培地に塗布した。尚、これら3種類のプラスミドは、コリネバクテリウム グルタミカム内で共存可能なプラスミドである。
【0269】
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素で切断し、挿入断片を確認した。この結果、上記で作製のプラスミドpCRB1-ilvB-ilvN-ilvC/CG-ilvD/CG、pCRB208-kivD/LL及びpCRB15-adh2/SCの導入が認められた。得られた株をコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)IBU1と命名した。尚、本株の遺伝子組換えの概要は、表6にまとめて示した。コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)IBU1は、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8(郵便番号292-0818)の独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センターに寄託した(寄託日:2009年3月17日、受託番号:BP−718)。
【0270】
同様に、上述のプラスミドpCRB1-ilvB-ilvN-ilvC/CG-ilvD/CG、pCRB208-kivD/LL及びpCRB15-adhP/ECを用いて、電気パルス法 [Agric. Biol. Chem.、Vol. 54、443-447(1990) 及びRes. Microbiol.、Vol. 144、181-185(1993)] により、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldhA mutant [J. Mol. Microbiol. Biotechnol.、Vol. 8、243-254(2004)] 株を形質転換し、クロラムフェニコール 5μg/ml、カナマイシン 50μg/ml、ゼオシン25μg/mlを含むA寒天培地に塗布した。尚、これら3種類のプラスミドは、コリネバクテリウム グルタミカム内で共存可能なプラスミドである。
【0271】
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素で切断し、挿入断片を確認した。この結果、上記で作製のプラスミドpCRB1-ilvB-ilvN-ilvC/CG-ilvD/CG、pCRB208-kivD/LL及びpCRB15-adhP/ECの導入が認められた。得られた株をコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)IBU2と命名した。尚、本株の遺伝子組換えの概要は、表6にまとめて示した。コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)IBU2は、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8(郵便番号292-0818)の独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センターに寄託した(寄託日:2009年3月17日、受託番号:BP−719)。
【0272】
さらに、上述のプラスミドpCRB1-ilvB-ilvN-ilvC/CG-ilvD/CG、pCRB208-kivD/LL及びpCRB15-adh/PPを用いて、電気パルス法 [Agric. Biol. Chem.、Vol. 54、443-447(1990) 及びRes. Microbiol.、Vol. 144、181-185(1993)] により、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldhA mutant [J. Mol. Microbiol. Biotechnol.、Vol. 8、243-254(2004)] 株を形質転換し、クロラムフェニコール 5μg/ml、カナマイシン 50μg/ml、ゼオシン25μg/mlを含むA寒天培地に塗布した。尚、これら3種類のプラスミドは、コリネバクテリウム グルタミカム内で共存可能なプラスミドである。
【0273】
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素で切断し、挿入断片を確認した。この結果、上記で作製のプラスミドpCRB1-ilvB-ilvN-ilvC/CG-ilvD/CG、pCRB208-kivD/LL及びpCRB15-adh/PPの導入が認められた。得られた株をコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)IBU3と命名した。尚、本株の遺伝子組換えの概要は、表6にまとめて示した。コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)IBU3は、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8(郵便番号292-0818)の独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センターに寄託した(寄託日:2009年3月17日、受託番号:BP−720)。
【0274】
また、上述のプラスミドpCRB205-alsS/BS-ilvC/CG、pCRB207-kivD及びpCRB15-adhP/EC-ilvD/CGを用いて、電気パルス法 [Agric. Biol. Chem.、Vol. 54、443-447(1990) 及びRes. Microbiol.、Vol. 144、181-185(1993)] により、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldhA mutant [J. Mol. Microbiol. Biotechnol.、Vol. 8、243-254(2004)] 株を形質転換し、クロラムフェニコール 5μg/ml、カナマイシン 50μg/ml、ゼオシン25μg/mlを含むA寒天培地に塗布した。尚、これら3種類のプラスミドは、コリネバクテリウム グルタミカム内で共存可能なプラスミドである。
【0275】
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素で切断し、挿入断片を確認した。この結果、上記で作製のプラスミドpCRB205-alsS/BS-ilvC/CG、pCRB207-kivD/LL及びpCRB15-adhP/EC-ilvD/CGの導入が認められた。得られた株をコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)IBU4と命名した。尚、本株の遺伝子組換えの概要は、表6にまとめて示した。コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)IBU4は、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8(郵便番号292-0818)の独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センターに寄託した(寄託日:2009年3月17日、受託番号:BP−721)。
【0276】
【表6】
【0277】
*) 表内の表示の略語は以下の通り。
<遺伝子起源略語>
BS; バチルス サブチリス(Bacillus subtilis)
CG; コリネバクテリウム グルタミカム R(Corynebacterium glutamicum)
EC; エシェリヒア コリ(Escherichia coli)
LL; ラクトコッカス ラクティス(Lactococcus lactis)
PP; シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)
SC; サッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)
【0278】
(4) イソブタノール生産比較株の作製
上述のプラスミドpCRB1-ilvB-ilvN/EC-ilvC/EC-ilvD/EC、pCRB208-kivD/LL及びpCRB15-adh2/SCを用いて、電気パルス法 [Agric. Biol. Chem.、Vol. 54、443-447(1990) 及びRes. Microbiol.、Vol. 144、181-185(1993)] により、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldhA mutant [J. Mol. Microbiol. Biotechnol.、Vol. 8、243-254(2004)] 株を形質転換し、クロラムフェニコール 5μg/ml、カナマイシン 50μg/ml、ゼオシン25μg/mlを含むA寒天培地に塗布した。尚、これら3種類のプラスミドは、コリネバクテリウム グルタミカム内で共存可能なプラスミドである。
【0279】
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素で切断し、挿入断片を確認した。この結果、上記で作製のプラスミドpCRB1-ilvB-ilvN/EC-ilvC/EC-ilvD/EC、pCRB208-kivD/LL及びpCRB15-adh2/SCの導入が認められた。得られた株をコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)IBU5と命名した。
【0280】
実施例4 コリネバクテリウム グルタミカム (Corynebacterium glutamicum) IBU1、IBU2及びIBU3を用いた還元条件下におけるイソブタノール生産実験
実施例3で創製したコリネバクテリウム グルタミカムIBU1、IBU2及びIBU3を、クロラムフェニコール 5μg/ml、カナマイシン 50μg/mlおよびゼオシン25μg/mlを含むA寒天培地に塗布し、28℃、20時間暗所に静置した。
上記のプレートで生育したコリネバクテリウム グルタミカム IBU1、IBU2及びIBU3を、クロラムフェニコール 5μg/ml、カナマイシン 50μg/mlおよびゼオシン25μg/mlを含むA液体培地10mlの入った試験管に一白金耳植菌し、28℃にて15時間、好気的に振盪培養を行った。
上記条件で生育したコリネバクテリウム グルタミカムIBU1、IBU2及びIBU3を、クロラムフェニコール 5μg/ml、カナマイシン 50μg/mlおよびゼオシン25μg/mlを含むA液体培地500mlの入った容量2Lの三角フラスコに植菌し、28℃にて15時間、好気的に振盪培養を行った。
【0281】
このようにして培養増殖されたそれぞれの菌体は、遠心分離 (4℃、5,000×g, 15分)により菌体を回収した。得られた菌体を、終濃度OD
610=35となるようにBT(-尿素)液体培地〔0.7% 硫酸アンモニウム、0.05% リン酸二水素カリウム、0.05% リン酸水素二カリウム、0.05% 硫酸マグネシウム・7水和物、0.0006% 硫酸鉄・7水和物、0.00042% 硫酸マンガン水和物、0.00002% ビオチン、0.00002% チアミン塩酸塩〕に懸濁した。このそれぞれの菌体懸濁液60mlを容量100mlメディウム瓶に入れ、還元条件下(反応液の酸化還元電位;-420mV乃至-450 mV、BROADREY JAMES社製、ORP Electrodeで測定)、グルコースを8%となるように添加し、33℃に保った水浴中で攪拌しながらイソブタノールを生成させた。この時、反応液のpHが7.0を下回らないように2.5Nのアンモニア水を用いてpHコントローラー (エイブル株式会社製、型式:DT-1023)でコントロールしながらイソブタノール生成反応を行わせた。尚、本還元条件下では、コリネバクテリウム グルタミカム IBU1、IBU2及びIBU3いずれも増殖は観察されなかった。
【0282】
イソブタノールの定量は、サンプリングした反応液を遠心分離 (4℃、15,000×g、10分) し、得られた上清液をガスクロマトグラフィーで分析することにより行った。ガスクロマトグラフィー分析は、キャピラリーカラム(Stabilwax; 60m × 0.53mmID × 1μmID; RESTEK社製)をセットした島津社製のガスクロマトグラフィー(GC-2014)を用いて行った。分析条件は、キャリアガス流速318ml/min、スプリット比1:20に設定し、GCオーブンの条件は、40℃で5分保持した後、40〜120℃までを20℃ / min、120℃〜220℃までを50℃/minで昇温させ、220℃で4分間保持した。
【0283】
この結果、コリネバクテリウム グルタミカムIBU1は、還元条件下でのイソブタノール生成反応の開始から22時間後に184 mM、36時間後に251 mMのイソブタノールを、コリネバクテリウム グルタミカムIBU2は、還元条件下でのイソブタノール生成反応の開始から22時間後に252 mM、36時間後に365 mMのイソブタノールを、コリネバクテリウム グルタミカムIBU3は、還元条件下でのイソブタノール生成反応の開始から22時間後に255 mM、36時間後に370 mMのイソブタノールを反応液中にそれぞれ生産していた。コリネバクテリウム グルタミカムIBU1、IBU2、IBU3は、AHAS、AHAIR、DHAD、KDCをコードする同じ遺伝子が導入されていることは共通であり、唯一の違いは、ADHをコードする遺伝子として、IBU1はサッカロマイセス セレビシエ由来のadh2(adh2/SC)遺伝子が、IBU2はエシェリヒア コリ由来のadhP(adhP/EC)遺伝子が、IBU3はシュードモナス プチダ由来のadh(adh/PP)遺伝子が導入されており(表6参照)、コリネバクテリウム グルタミカム内でのイソブチルアルデヒドを基質とした場合のADH活性は、adh2/SC < adhP/EC < adh/PP の順に高い値を示した(表4参照)。このADH活性の違いが、イソブタノール生産性の違いに反映していると考えられる。
【0284】
実施例5
コリネバクテリウム グルタミカム (Corynebacterium glutamicum) IBU4を用いた還元条件下におけるイソブタノール生産実験
コリネバクテリウム グルタミカム IBU4を用いた以外は、実施例4と同様の方法でイソブタノール生産を評価した。
この結果、コリネバクテリウム グルタミカムIBU4は、還元条件下でのイソブタノール生成反応の開始から22時間後に97 mM、36時間後に146 mMのイソブタノールを反応液中にそれぞれ生産していた。
【0285】
コリネバクテリウム グルタミカムIBU4は、IBU2と比較して、AHAIR、DHAD、KDC、ADHをコードする同じ遺伝子が導入されていることは共通であり、唯一の違いは、AHASをコードする遺伝子として、IBU4がバチルス サブチリス由来のalsS遺伝子が導入されているのに対して、IBU2はコリネバクテリウム グルタミカム由来のilvBN(ilvB-ilvN)遺伝子を導入させている点である(表6参照)。
本実施例は、AHASをコードする遺伝子に関して、コリネバクテリウム グルタミカム内在性のilvBN遺伝子を導入した場合の方が、外来性(バチルス サブチリス由来)のalsS遺伝子を導入した場合よりも、高い生産性を与えることを示す実験例である。
【0286】
比較例1 コリネバクテリウム グルタミカム (Corynebacterium glutamicum) IBU5を用いた還元条件下におけるイソブタノール生産実験
コリネバクテリウム グルタミカム IBU5を用いた以外は、実施例4と同様の方法でイソブタノール生産を評価した。
この結果、コリネバクテリウム グルタミカムIBU5は、還元条件下でのイソブタノール生成反応の開始から22時間後に72 mM、36時間後に97 mMのイソブタノールを反応液中にそれぞれ生産していた。
コリネバクテリウム グルタミカムIBU5は、IBU2と比較して、KDC、ADHをコードする同じ遺伝子が導入されていることは共通であり、異なる点は、AHAS、AHAIR、DHADをコードする遺伝子として、IBU5がエシェリヒア コリ由来のilvBN、ilvC、ilvD遺伝子が導入されているのに対して、IBU2はコリネバクテリウム グルタミカム由来のilvBN、ilvC、ilvD遺伝子を導入させている点である。すなわち、IBU5はすべて外来性遺伝子が導入されているのに対して、IBU2は、内在性のilvBN、ilvC、ilvD遺伝子が導入されている。従って、コリネバクテリウム グルタミカム内在性のilvBN、ilvC、ilvD遺伝子を導入したIBU2の方が、外来性エシェリヒア コリ由来のilvBN、ilvC、ilvD遺伝子を導入したIBU5に比べて高い生産性を示した。
【0287】
比較例2 コリネバクテリウム グルタミカム (Corynebacterium glutamicum) IBU2を用いた好気増殖条件下におけるイソブタノール生産実験
実施例3で創製したコリネバクテリウム グルタミカムIBU2を、クロラムフェニコール 5μg/ml、カナマイシン 50μg/mlおよびゼオシン25μg/mlを含むA寒天培地に塗布し、28℃、20時間暗所に静置した。
上記のプレートで生育したコリネバクテリウム グルタミカムIBU2を、クロラムフェニコール 5μg/ml、カナマイシン 50μg/mlおよびゼオシン25μg/mlを含むA液体培地10mlの入った試験管に一白金耳植菌し、28℃にて15時間、好気的に振盪培養を行った。
【0288】
上記の条件で生育したコリネバクテリウム グルタミカムIBU2を、クロラムフェニコール 5μg/ml、カナマイシン 50μg/mlおよびゼオシン25μg/mlを含むA(-尿素)液体培地〔350mM(5.22%)グルコース、0.7% 硫酸アンモニウム、0.05% リン酸二水素カリウム、0.05% リン酸水素二カリウム、0.05% 硫酸マグネシウム・7水和物、0.2% 酵母エキス、0.7%カザミノ酸、0.0006% 硫酸鉄・7水和物、0.00042% 硫酸マンガン水和物、0.00002% ビオチン、0.00002% チアミン塩酸塩〕500mlが入っている容量1Lのジャーファーメンターに移し、28℃、1000rpm、滅菌空気を0.5L/minで通気して、16hr好気培養増殖を行なった。この間、5Nアンモニア水溶液を使用してジャーファーメンター槽内のpHを7.0に維持した。
【0289】
好気培養増殖時の反応液をサンプリングし、実施例4と同様の方法によりイソブタノールの定量を行った。また、菌体濃度の測定をOD
610の吸光度測定により行った。
この結果、コリネバクテリウム グルタミカムIBU2は、
図3に示すように増殖した。この時、好気培養開始から4時間後に0 mM、10時間後に0 mM、16時間後に0.3 mMのイソブタノールを生産した。そして、16時間以降では、イソブタノールの生成濃度の増大は殆ど認められなっかた。コリネバクテリウム グルタミカムIBU2は、増殖を伴う好気条件下ではほとんどイソブタノールを生産しなかったのに対して、増殖を伴わない還元条件下(実施例4参照)では、著量のイソブタノールを生産することが分かった。
【0290】
比較例3 コリネバクテリウム グルタミカム以外のコリネバクテリウム属細菌を宿主として用いた場合の還元条件下におけるイソブタノール生産実験
イソブタノールを生産する宿主としてコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)に代わりに、コリネバクテリウム キャピトビス(Corynebacterium capitovis)、コリネバクテリウム カゼイ(Corynebacterium casei)、コリネバクテリウム ハロトレランス(Corynebacterium halotolerans)及びコリネバクテリウム テルペノタビディウム(Corynebacterium terpenotabidum)を用いる以外は、実施例4と同様の方法でイソブタノール生産を評価した。尚、導入プラスミドは、コリネバクテリウム グルタミカム IBU2と同様のpCRB1-ilvB-ilvN-ilvC/CG-ilvD/CG、pCRB208-kivD/LL及びpCRB15-adhP/ECを用いた。
【0291】
この結果、コリネバクテリウム カゼイを宿主として用いた場合に、元条件下でのイソブタノール生成反応の開始から22時間後に5 mM、36時間後に7 mMのイソブタノールを反応液中に生産していた。しかしながら、コリネバクテリウム キャピトビス、コリネバクテリウム ハロトレランス、コリネバクテリウム テルペノタビディウムを宿主として用いた場合には、有意なイソブタノールを反応液中に観察できなかった。
このイソブタノールを生産する場合の宿主として、コリネバクテリウム属の中で、コリネバクテリウム グルタミカムがもっとも優れていることが明らかになった。