(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0011】
発明を実施するための方法は、同様な番号が同様の要素を示す以下の図面に言及する。
【0012】
【
図1A】本発明に準拠した装置の1つの実施形態を例示する。
図1Aはそのような装置の部分破断図である。
【
図1B】
図1Bは嚢が相当収縮した状態にあるそのような装置の内部の上面破断図である。
【
図1C】
図1Cは嚢が反応容器に熱的接触を提供するために相当拡張した状態にある、そのような装置の内部の上面破断図である。
【
図2】複数の嚢の組を含む本発明に準拠した装置の他の実施形態の部分破断図である。
【
図3】嚢アセンブリの細長い設計を示す模式図である。
【
図4A】嚢アセンブリの折りたたみ設計を示す模式図である。
【
図4B】嚢アセンブリの折りたたみ設計を示す模式図である。
【
図5A】モジュラー嚢アセンブリの実施形態を示す模式図である。
図5Aはモジュラー嚢アセンブリの個々の構成要素を示す。
【
図5B】
図5Bは組み立てられたモジュラー嚢アセンブリを示す。
【
図5D】
図5Dは2つの拡張した枕型嚢を有する嚢アセンブリを示す。
【
図6】デュアルループ循環を有する嚢熱循環器の1つの実施形態を示す模式図である。
【
図7】熱交換器のためのアルミニウムブロックを示す図である。
【
図8】シングルループ循環を有する嚢熱循環器の1つの実施形態を示す模式図である。
【
図9】シングルループ循環を有する嚢熱循環器の第2の実施形態を示す模式図である。
【
図10】
図9に例示された実施形態について加熱および冷却を時間の関数として示すグラフである。
【
図11】デュアルループ循環嚢熱循環器の主な構成要素を示す模式図である。
【
図12】
図11のデュアルループ循環嚢熱循環器の熱循環運転からの温度測定値を示す図である。
【
図13】
図11のデュアルループ循環嚢熱循環器における熱循環後のPCR/マイクロアレイスライド上の蛍光シグナルを示す写真である。Ba:バチルス・アンスラシス(Bacillus anthracis)DNA用プローブ。Cy3:マイクロアレイの向きを示すマーカー。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この説明は、本発明の全説明文の一部と見なされる付属の図面と関連付けて読まれることを意図している。図面は縮尺を変更する必要がなく、且つ本発明のいくつかの特性は、明確性および簡便性を図るために、縮尺上誇張して、または幾分模式的な形態で示されることがある。記載において、「前部」、「後部」、「上に」、「下に」、「上部」および「底部」などの相対的な用語、さらにその派生形は、そのとき記載されているか、または議論されている図面に示されている向きを指していると解釈すべきである。これらの相対的な用語は記載の簡便性を目的としており、通常は具体的な向きを必要とすることを意図していない。「接続された」および「着接された」などの着接、連結などに関する用語は、特に説明的に記載されていない限り、構造体が互いに直接的または介在構造物を介して間接的に固定または着接されている関係、さらには可動性または剛性着接または関係を指す。
【0014】
本明細書に記載する実施形態で用いるところの用語「温度制御嚢」は熱伝導性表面を有する中空、柔軟性容器を指す。温度制御嚢はあらゆる形状およびサイズとすることができる。温度制御嚢は、温度制御流体によって充填されるかまたは膨張するとき、温度制御嚢内部の温度制御流体と、温度制御嚢の熱伝導性表面と接触する物体の間の熱伝達を促進することができる。
【0015】
本明細書に記載された実施形態で用いるところの用語「流体」は、加えられた剪断応力がどれだけ小さいかに関わらず、加えられた剪断応力の元で連続的に変形(流動)する物質を指す。流体は物質の相の部分集合であり、且つ液状物、気体、エアロゾル(気流中の粒子)、ゲル、プラズマ、さらにある程度までは、固形物を含む。
【0016】
本発明の実施形態の記載においては、明確性を目的として具体的な用語を用いる。しかし、本発明はそのように選択された具体的な用語によって制限されることを意図していない。各具体的な要素は、同様の目的を達成するために同様の様式で作動する全ての技術的同等物を含むことを理解すべきである。
【0017】
第1の態様においては、本発明は画定された容積の温度を制御するための装置を提供する。1つの実施形態においては、画定された容積は、化学反応物を保持し且つその中で制御された温度で化学反応を実施するために構成された反応チャンバーである。
図1Aに示す1つの実施形態においては、温度制御装置1000は内部空間1012を画定するハウジング1004を含む。ハウジング1004は当業者に周知の材料および設計により構築することができる。そのような材料の例はプラスチック、金属、セラミック、複合材などを含むが、制限はない。ハウジングの実施形態の例は、ハウジングが軽量構造である(例:薄型プラスチック)、密封される(例:有害化学物質および生物学的物質などの有害物質の収容のためなど)、または内部空間の真空を維持することができるものを含む。したがって、一部の実施形態においては、ハウジング1004はハウジング1004の内部空間1012の内部の中に減圧する(すなわち真空を誘導する)ための手段を含む。他の実施形態においては、ハウジング1004は試薬を添加するための1つまたはそれ以上の入口またはポートを含む。ハウジング1004はセンサー、反応物サプライおよび当業者に周知の他の構成要素も含んでもよい。さらに多くの設計および規格が当業者に周知となるであろう。材料および設計の具体的な選択は、当業者に理解されると思われるように、予測される装置の機能および操作条件に依存するであろう。
【0018】
再び
図1Aを参照すると、温度制御装置1000は、さらにハウジング1004の内部空間1012に留置された反応チャンバー1008を含む。反応チャンバー1008は、反応チャンバー1008内で内部容積1020を画定する熱伝導性チャンバー壁1016を含む。反応チャンバー1008は当業者に周知の材料および設計によって構築することができる。そのような材料の例はプラスチック、金属、セラミック、複合材などが含むが、制限はない。例示的実施形態は、反応チャンバーが軽量構造である(例:薄型プラスチック)、密封される(例:有害化学物質および生物学的物質などの有害物質を収容するためなど)、または真空を保つことができるものを含む。一部の実施形態においては、反応チャンバー1008は単一の材料混合物を保持するよう設計され、且つより具体的な実施形態においては、閉じられたチャンバーを形成するためのキャップあるいは他の封を含む。さらに多くの設計および規格が当業者に周知となるであろう。たとえば、反応チャンバーは試薬を添加するか、または反応生成物を取出するための1つまたはそれ以上の入口またはポート、内部センサー、および外部センサーのための窓を含んでもよい。材料および設計の具体的な選択は、当業者に理解されると思われるように、予測される装置の機能および操作条件に依存するであろう。
【0019】
再度
図1Aを参照すると、ハウジング1004の内部1012には、反応チャンバー1008に近接して配置され、且つ反応チャンバー1008の内部容積1020の温度を制御、調節または異なる温度に変化させるために構成された1つあるいはそれ以上の温度制御嚢1024も
配置されている。温度制御嚢1024は、当業者に理解されるように、適切な機械的および熱的性質を有する材料より構成される。適切な材料の例には、シリコン、ホイル、ラテックス、マイラー、ポリウレタン、ポリプロピレン、およびポリエチレンが含まれるが、これに限定されない。各温度制御嚢1024は、入口1028を経て温度制御嚢1024の内部空間1040に導入され、出口1032より取出される、液状物または気体などの温度制御流体を受容するよう構成される。1つの実施形態においては、温度制御流体は、その中で温度制御流体が所望の温度に維持されるレザバーまたは他の貯蔵場所に貯蔵される。他の実施形態においては、レザバーは温度制御機能をまったく有さない。温度制御流体の温度は、レザバーと温度制御嚢1024の間に位置する温度コントローラによって操作される。温度コントローラは、温度制御流体が温度コントローラを通過するにつれて流体の温度を迅速に変化させることのできるヒーターまたはヒーター/クーラーの組合せである。
【0020】
今度は
図1Bおよび1Cを参照すると、温度制御嚢1024は分離した位置において反応チャンバー1008とほとんど接触しない(
図1B)。温度制御嚢1024への温度制御流体の導入が温度制御嚢1024の膨張を誘発し、かつ温度制御嚢1024を、相当非隣接的な分離位置(
図1B)から温度制御嚢1024がチャンバー壁1026(
図1C)の少なくとも一部と隣接する係合位置に転換する。温度制御嚢1024とチャンバー壁1016の直接的接触により、温度制御流体と反応チャンバー1008の内部容積1020の間の熱交換が可能となる。1つの実施形態においては、温度制御嚢1024は高熱伝導性の表面を含み、且つ温度制御嚢1024が温度制御流体で満たされたとき高熱伝導性の表面がチャンバー壁1016に隣接するように構成される。
【0021】
したがって、反応チャンバー1008の内部容積1020の温度は、温度制御流体を温度制御嚢1024に導入して温度制御嚢1024と反応チャンバー1008の間に熱的接触を確立し、さらに温度制御嚢1024より温度制御流体を抜出して温度制御嚢1024を反応チャンバーより分離することにより、制御された様式で調節することができる。代替的に、反応チャンバー1008の内部容積1020の温度は、温度制御嚢1024を反応チャンバー1008より分離することなく、温度制御嚢1024の内部1040の温度制御流体を異なる温度の温度制御流体と置換することによって調節することができる。
【0022】
温度制御流体の例は水、塩水、不凍液、油およびシリコンを含むが、これに限定されない。他の適切な温度制御流体、そのような流体の温度を調節するための手段、およびそのような流体を嚢に導入、およびそこから抜出するための手段も当業者に周知である。1つの実施形態においては、温度制御流体はゲル材料であり、温度制御流体を嚢に導入し且つ温度制御材料をそこから抜出するための手段はポンプであり、且つ温度制御流体の温度を調節するための手段は抵抗またはペルティエヒーターである。
【0023】
図2はハウジング2004の他の実施形態を示す。この実施形態においては、反応チャンバー2008は、反応混合物2009、2010および2011が一般に「スラグ」と呼ばれる規定され分離された容積の状態で、反応チャンバー2008の内部空間2014を経てその中を移動するほぼ管状の設計を有する。反応チャンバー2008の近傍に隣接するのは、反応チャンバー2008の対向する両側に対にして配列された2組の温度制御嚢(2016および2020)である。嚢2016および2020は、入口2017および出口2018を経てそれぞれ温度制御流体のレザバーに接続される。嚢2016および2020は上述のように、すなわち温度制御流体で充填された後反応チャンバー2008と掛合して作動する。1つの実施形態においては、スラグは反応チャンバー2008の
内部空間2014を経て輸送され、さらに上述のような熱交換によってスラグの温度を調節するために、1つまたはそれ以上の嚢の対がその上で反応チャンバー2008の外壁2015と係合する規定された位置で停止する。1つの実施形態においては、全ての嚢によってほぼ同等の熱交換をもたらすために、嚢2016および2020は単一の温度の温度調節流体で充填される。他の実施形態においては、各嚢が異なる温度の温度制御流体を保持する。他の実施形態においては、各嚢が異なる熱交換特性を提供するために、異なる温度制御流体を保持する。
【0024】
他の実施形態においては、ハウジングは1つまたはそれ以上の温度制御嚢を含むが、固定された形状または容積の反応チャンバーは含まない。ハウジング上の開口部は、PCR管またはマイクロアレイスライドなどの反応チャンバーの温度制御嚢近傍への挿入を可能とする。温度制御嚢は、温度制御流体によって膨張するとき、ハウジングの内部で拡張し且つ挿入された反応チャンバーの外部と直接的接触を形成する。この設計は、温度制御嚢の柔軟性表面が反応チャンバーの外面の輪郭に密着し、これにより温度制御嚢と反応チャンバーの間の効率的な熱伝達をもたらすことを可能とする。
【0025】
当業者は、温度制御嚢の形状が球状から細長い管状設計まで相当変化することが可能であることを理解するであろう。
図3は、一対の温度制御嚢3010を用いたマイクロアレイスライド(3008)のための加熱配列を示す。この実施形態においては、温度制御嚢3010は、反応チャンバーの長方形の幾何学配置を収容するために細長い形状を有する。嚢の対3010の間に複数のマイクロアレイスライドまたは反応管を留置してもよい。入口3012および出口3014は温度制御嚢3010の対向する両末端に配置される。入口3012および出口3014は、熱循環のための加熱された流動配管または回路に接続される。1つの実施形態においては、温度制御嚢3010は、切断して付形し、外周にそって互いに接着または融着される2枚の柔軟性材料のシートより作成される袋である。
【0026】
他の実施形態においては、単一の温度制御嚢4012(
図4A)をハウジング4004の内側でU字状に折りたたみ、温度制御嚢4012が温度制御流体で満たされる時に反応チャンバー4008に隣接する1対の温度制御嚢アーム4010(
図4B)を形成する。
【0027】
さらに他の実施形態では、1つまたはそれ以上の温度制御嚢4012が、ハウジング4004を伴わずに反応チャンバー4008を受容するよう構成される。
【0028】
図5A〜5Dは温度制御嚢アセンブリの他の配置を示す。この実施形態においては、嚢および反応チャンバーを保持するハウジングはモジュラーアセンブリ5000により形成される。
図5Aに示すように、モジュラーアセンブリ5000は温度制御嚢5012を封入する上部ブラケット5010、第1のクッション5020、中間ブラケット5030、第2のクッション5040、および温度制御嚢5052を封入する下部ブラケット5050を含む。温度制御嚢5012および5052は、柔軟性且つ熱伝導性の材料より製造され、且つ上部および下部ブラケット5010および5050上の入口ポート(5014、5054)および出口ポート(5016、5056)を経て、循環温度制御流体に接触する。入口ポートおよび出口ポートは温度制御嚢の基部にあるブラケットに配置されてフルイディクス(流体の流路)と接続し、温度制御流体が温度制御嚢5012および5052に流入および流出することを可能とする。温度制御嚢5012または5052の基部は、Oリング5018または5048によりブラケット5010または5050とそれぞれ封着される。中間ブラケット5030はU字型ブラケットであり、モジュラーアセンブリ5000の他のモジュールと共に組み立てられるとき、開口部5034を経てアクセス可能な内部空間5032を画定する。開口部5034および内部空間5032は、特定の用途のためにその用途に用いられる反応チャンバーを受容するためのサイズ及び形状を有するよう設計される。
【0029】
ブラケット5010および5050は、それぞれ内部空間5032に対して開いた開口部5017または5057を含む。操作中、温度制御流体は温度制御嚢5012および5052を充填および加圧し、これが開口部5017および5057を経て拡張し且つ反応チャンバーの上側および下側に対して強固に圧迫する1対の枕状温度制御表面を形成する。
【0030】
図5Bは、反応チャンバーを受容するための開口部5034を有する組み立てられたモジュラーアセンブリ5000を示す。
図5Cは、ブラケットとクッションの間に封着された後、温度制御流体によって膨張することが可能な枕状嚢の拡大図である。
図5Dは、1対の拡張した枕型嚢を有する嚢アセンブリを示す。スライド、管、またはカートリッジの形態の反応チャンバーを2つの膨張した嚢の間に保持することができる。
【0031】
他の実施形態においては、反応チャンバーの内部容積に収容される物質(1つあるいはそれ以上のスラグの形態であってもよい)は、PCR反応を実施するための試薬混合物である。より具体的な実施形態においては、反応チャンバーは、市販されているような、PCR試薬を保持するディスポーザブル分析カートリッジである。1つの具体的な実施形態は、1つのオリゴマーのPCR増幅のための反応物を収容する単一の静的反応チャンバーを含む。それぞれの嚢が同じ循環温度制御物質を収容する、1つあるいはそれ以上の温度制御嚢を反応チャンバーと接触させる。
【0032】
他の実施形態においては、温度が異なる2つあるいはそれ以上の温度制御流体レザバーからの温度制御流体の進路をバルブによって変更し、温度制御嚢内の温度制御流体を交換することによって反応チャンバー内のPCR混合物を異なる温度とすることができる。熱循環中、たとえば95℃などの温度制御流体が温度制御嚢内に循環して加熱し、それによってオリゴマーを変性し、その後抜出する。次に、60℃の温度制御流体が温度嚢内に循環し、プライマーが加水分解および延長してPCRアンプリケーション生成物を生成することを可能とする。この連鎖を約30から50サイクルまで実施する。
【0033】
他の実施形態においては、2つの温度制御嚢が単一の反応チャンバーと接触させられ、そこで各嚢が収容する循環温度制御物質の温度は異なる(例:一方が95℃、もう一方が60℃など)。上述のような温度嚢の拡張および収縮は、どちらの嚢が反応チャンバーまたは流路と接触するかを決定する。
【0034】
さらに他の実施形態においては、単一の反応チャンバーが単一の流路に2つあるいはそれ以上の反応領域を有する。各領域は異なる温度調節嚢と接触し;さらに各嚢は、たとえばそれぞれ95℃と60℃などのように異なる温度にある。反応スラグは温度領域間を前後に動き、所望の熱循環を作り出す。(上述の
図2を参照。)
【0035】
他の実施形態においては、1つあるいはそれ以上の温度制御嚢を単一の抵抗ヒーター、ペルティエ、または温度制御空気またはその組み合わせのいずれかと置き換える。
【0036】
他の実施形態においては、上述の反応チャンバーは各マイクロアレイスポットにプライマーが固定されたマイクロアレイに置き換えられる。
【0037】
他の実施形態においては、嚢熱循環器は反応チャンバーを受容するよう構成された少なくとも1つの温度制御嚢、および温度制御流体を所望の温度で温度制御嚢に送達する少なくとも1つの流体制御装置を含む。各温度制御嚢は、温度制御嚢が温度制御流体によって膨張するとき反応チャンバーと接触する柔軟性、熱伝導性表面を含む。
【0038】
1つの実施形態においては、嚢熱循環器は、代替的に2つあるいはそれ以上の温度にある嚢アセンブリを経た温度制御流体サイクリングによって構築される。
図6は2つの温度領域6010および6020を有する嚢熱循環器6000およびデュアルループ循環システムを示す流体フローダイアグラムである。この装置は、温度制御のソースとして第1温度領域熱交換器6012および第2温度領域熱交換器6022を利用する。熱交換器6012および6022は、ユーザーの規定する設定ポイントで各温度領域において定常状態温度を維持する1つまたはそれ以上のヒーターまたはヒーター/クーラー装置をそれぞれ含む。共調するバルブ6030、6032および6034は温度領域6010(たとえば80〜105℃の温度に維持)または温度領域6020(たとえば50〜70℃に維持)のいずれかより温度制御流体を誘導して、嚢6040内を流動させ、その間にポンプ6050および6052は1方向を持続し且つT字型接合6060、6062および6064を経て各領域に流体を再循環させる。温度制御嚢6040は、熱損失を最小化するために温度領域より下流に接して配置される。1つの実施形態においては、装置6000は温度制御流体より気泡を除去するバブルトラップ6070をさらに含む。ポンプ6050および6052は固定または可変スピードを有してもよい。可変スピードは、嚢拡張および収縮に対してより優れた流体圧制御の利点を提供する。たとえば、温度センサーとポンプスピード制御の間のフィードバックループを利用することなどによって、温度制御の精密な調整も可能とする。
【0039】
1つの実施形態においては、装置6000のバルブ、ポンプ、および熱交換器は熱循環プロトコルを含むソフトウェアを用いたシステムコントローラによって制御される。システムコントローラは、嚢熱循環器6000の構成要素の共調および伝達を提供する。システムコントローラは:(a)システム全体に対する単一のユーザーインターフェースを提供し;(b)ユーザーがシステムに付随する全ての構成要素の状態を迅速に決定することを可能とし;且つ(c)構成の変更を可能とするパラメーターの変更のための入力を受信するよう設計される。1つの実施形態においては、システムコントローラはメモリ、コントローラおよび外部ポートを有する。メモリは熱循環プロトコルを保存するために用いてもよい。1つの実施形態においては、メモリはフラッシュメモリである。コントローラは嚢熱循環器の作動を監視および制御し、且つユーザーにシステム全体の状態についてのインターフェースを提供する。たとえば、コントローラは嚢状熱循環器6000におけるサイクリングのタイミングおよび温度制御流体の温度を段階付けしてもよい。
【0040】
1つの実施形態においては、コントローラは小さく、軽量且つ標準的な市販汎用(COTS)製品として入手可能である。他の実施形態においては、コントローラはCOTS商品であり、且つパッシブPCIバスバックプレーンを有するマイクロボックスPCとしてパッケージ化される。この構成によって、コンピュータハードウェア技術が向上するにつれて構成要素のモジュラリティを容易にアップグレードすることが可能となる。他の実施形態においては、コントローラはPCIバス、イーサネット(登録商標)およびRS−232シリアルなどその周辺インターフェースがすでに組み込まれているシングルボードコンピュータ(SBC)上にある。フラッシュメモリおよびDRAMは、SBC上で着脱式メモリソケットを有する制御システム要件に合わせて寸法を決めることができる。コントローラから嚢熱循環器6000の他の構成要素への伝達は、PCIバス互換性のCOTSデータ取得、デジタル入力/出力、およびアナログ入力/出力回路カードによって処理される。
【0041】
外部ポートは、メモリにソフトウェアアップグレードをダウンロードし且つ外部トラブルシューティング/診断を実施するために用いられる。1つの実施形態においては、嚢熱循環器6000は再充電および再使用することのできる1個または複数の長時間バッテリーによって電源を供給される。
【0042】
1つの実施形態においては、各温度領域6010または6020における定常状態温度は、比例積分微分コントローラ(PIDコントローラ)によって維持される。PID制御は、産業用制御システムに幅広く用いられる汎用制御ループフィードバック機構であり、且つ当業者に周知である。他の実施形態においては、PID制御はファジー制御などの他の制御の種類に置き換えられる。ファジー制御システムは、ファジー論理(0または1(真または偽)のいずれかの計数値により操作する古典的またはデジタル論理と異なり、アナログ入力値を0から1の間の連続変数である論理変数に換算して分析する数学的システム)に基づく制御システムである。ファジー制御システムも当業者に既知である。
【0043】
加熱された流体の大型レザバーまたはドラムを用いて熱循環を駆動するローレンスバークリー・ナショナルラボ(Lawrence Berkeley National Lab)による液状物ベース熱循環器などの一部の先行技術装置と異なり、嚢熱循環器6000は加熱された流体のレザバーなしで操作することができる。1つの実施形態においては、温度制御流体が温度領域6010または6020を通過するにつれて、温度制御流体はそれぞれ熱交換器6012または6022内で特注のインラインヒーターにより加熱される。加熱された温度制御流体は再循環され、温度制御嚢6040を加熱するのに必要な流体の量を減少させる。流体の量がより小さいことにより、今度は熱交換器6012または6022においてより一層小さなヒーター/クーラーを用いることが可能となる。
【0044】
1つの実施形態においては、加熱装置は各加熱ブロックに包埋された1つまたはそれ以上のカートリッジヒーターおよび熱電対を有する2つの加熱ブロックによりそれぞれ構成される。今度は
図7を参照すると、1つの実施形態においては、加熱ブロック7000はカバー7010および基盤7020を含む。基盤7020は、循環する温度制御流体が加熱ブロック7000を通って流れる際に、これを迅速、効率的に加熱するための平行蛇行流路またはフィン
7022を含む。加熱ブロック7000内の熱電対(示さず)は、加熱ブロック7000の温度を監視し、且つブロックの温度のPID制御を可能とする。加熱ブロック7000は、典型的には金属または合金などの熱伝導性材料より製造される。1つの実施形態においては、加熱ブロック7000はアルミニウムより製造される。
【実施例1】
【0045】
(シングルループ循環を有する嚢熱循環器)
図8は、シングルループ循環嚢熱循環器8000の1つの実施形態の模式図を提供する。当業者が理解するような標準的構成のポンプ8002を、当業者に既知の材料を用いて製造される熱交換器8006を通って水を運搬する出口ライン8004に接続する。熱交換器からの出口ライン8008は、水を約95℃に加熱するよう構成された第1のヒーター8010に水を運搬する。次に水は、第2の嚢8022に連結された第2の嚢支持体8020とほぼ対向する配置にある、第1の嚢8018に連結された第1の嚢支持体8016を含む嚢ユニット8014に流路を分割する枝管8012を通過する。嚢ユニット8014より流出する水は、第2の枝管8024により再合流して単一の流路となった後、さらに水を約65℃に加熱するよう構成された第2のヒーター8026に流入する。復流路8028は水をポンプに戻す。各嚢は5ミリリットル(mL)の容量を有し、各ヒーターは22mLを保持することが可能であり、また熱交換器は5mLから22mLを保持することが可能である。水を各ヒーターと熱交換器の間で可逆的に循環させることにより、嚢は嚢ユニット内に保持されたサンプルの温度を基準開始温度である65℃と、95℃の間で循環させることができる。
【0046】
図9は、シングルループ循環嚢熱循環器9000の他の実施形態の模式図を提供する。当業者が理解するような標準的構成のポンプ9002を、二方向バルブ9006を通って水を約95℃に加熱するよう構成された第1のヒーター9010に水を運搬する出口ライン9004に接続する。次に水は、第2の二方向バルブ9008、および第2の嚢9022に連結された第2の嚢支持体9020とほぼ対向する配置にある、第1の嚢9018に連結された第1の嚢支持体9016を含む嚢ユニット9014に流路を分割する枝管9012を通過する。嚢ユニット9014より流出する水は、第2の枝管9024により再合流して単一の流路となる。復流路9028は水をポンプに戻す。水は二方向バルブ9006に戻り、水を約65℃に加熱するよう構成された第2のヒーター9026に進路を変更する。次に水はバブルトラップ9030および第2の二方向バルブ9008を通過し、枝管9012を経て嚢ユニット9014に流入する。1つの実施形態においては、嚢9018および9022はそれぞれ5ミリリットル(mL)の容量を有し、且つヒーターはそれぞれ22mLを保持することができる。水を各ヒーター間で循環させることにより、嚢は嚢ユニット内に保持されたサンプルの温度を基準開始温度である65℃と、95℃の間で循環させることができる。
【0047】
図10は、
図9を参照して記載された装置を用いた熱循環実験を示す。この実験においては、反応チャンバーの水は95℃から65℃に冷却され、65℃で約25秒間保持され、約95℃に加熱され、約1秒間その温度で保持され、その後再び65℃に冷却された。温度曲線は急速な加熱および冷却速度を示した(加熱時約15℃/秒および冷却時60℃/秒)。
【実施例2】
【0048】
(デュアルループ循環を有する嚢熱循環器)
嚢熱循環器のプロトタイプは、
図6に示すデュアルループ循環設計に基づいて構築される。
図11は、嚢熱循環器の主な構成要素を示す模式図である。デュアル循環嚢熱循環器1100は、熱交換ブロック1110および1112、ポンプ1120および1122、三方向バルブ1130、1132および1134、および
図5に示すモジュラー設計を有する温度制御嚢アセンブリ1140を含む。反応チャンバー(示さず)は、温度制御嚢アセンブリ1140内の2つの温度制御嚢に隣接する内部空間内に留置される。第1の温度の温度制御流体は、熱交換ブロック1110、ポンプ1120、三方向バルブ1134および1130を含む第1の循環ループを経て、温度制御嚢アセンブリ1140内を循環する。第2の温度の温度制御流体は、熱交換ブロック1112、ポンプ1122、三方向バルブ1132および1130を含む第2の循環ループを経て、温度制御嚢アセンブリ1140内を循環する。
【0049】
実際のプロトタイプ嚢熱循環器は3つの階層を有する。機器の底部層は2つの熱交換器および2つのポンプを収容する。装置の中間層は3つの三方向バルブ、および1対の温度制御嚢の間に反応管を保持するモジュラー嚢アセンブリを収容する。第3の層は電源および、その2つが2つの熱交換ブロックをそれぞれ制御し、1つがバルブを制御し、4つ目が反応容器または嚢の温度を監視する、4つのPID温度コントローラを収容する。約100mLの鉱物油を循環温度制御流体として用いた。プロトタイプ嚢熱循環器内には真の冷却装置は存在しない。
【実施例3】
【0050】
(デュアルループ循環嚢熱循環器は良好な熱循環プロフィールを提供する)
図12は、実施例2に記載したデュアルループ循環嚢熱循環器により実施された熱循環運転の温度プロフィールを示す。運転中に第1の熱交換ブロック1110(すなわち高温領域)、第2の熱交換ブロック1112(すなわち低温領域)および反応チャンバーの内部の温度を測定した。
図12に示すように、高温領域および低温領域は定常状態を保つ。領域は、温度領域から嚢アセンブリまでの流体経路における熱損失を補償する温度オフセットを生成するために、熱循環プロトコル(PROTOCOL)の目標温度よりもわずかに高い温度に維持される。この温度オフセットは、循環する温度制御流体が移動しなければならない経路の長さを短縮すること、および流体経路の周囲に断熱材料を用いることにより最小化することができる。嚢アセンブリを通過する温度制御流体を切り替える原理が反応チャンバー内に意図した温度調節をもたらすことができることが、良好な熱循環温度プロフィールにより証明された。
【0051】
従来の熱循環器と異なり、反応チャンバーの温度変化にある熱交換器と比較した遅れによる嚢熱循環器のためのヒーター温度の計画的なオーバーシュートおよびアンダーシュートは、プログラムする必要はない。オーバーシュートおよびアンダーシュートは、典型的にはそれぞれ加熱および冷却勾配率を高めるために用いられる。これらのオーバーシュートおよびアンダーシュートに対する制御は複雑となり、ヒーター(例:抵抗、圧電など)および冷却(例:熱電、圧電、冷媒、ファンなど)構成要素を厳密に制御するアルゴリズムを必要とすることがある。
【0052】
デュアルループ循環嚢熱循環器は、反応チャンバーを収容するマイクロアレイスライド上で迅速な熱循環を実施することができる。MJリサーチ・グリドル・アンド・タワー(MJ Research griddle and tower:Global Medical Instrumentation, Inc.,ミネソタ州ラムジー)などの従来の装置は、緩徐な勾配時間により典型的には40サイクルのPCRに数時間を要する。さらに、アレイ位置の間およびアレイ位置の中で温度が相当異なることがある。デュアルループ循環嚢熱循環器は、非常に均一な熱分布および熱移動を提供しながら、PCR反応チャンバーを収容するスライドまたは流動セルの熱循環を40分またはそれ以下で達成する。さらに、嚢熱循環器は連関した熱循環およびマイクロアレイハイブリダイゼーションを実施することができる。
【0053】
今度は
図13を参照すると、PCR反応チャンバー内のマイクロアレイよりなるスライドを、バチルス・アンスラシス(Bacillus anthracis)ゲノムDNAの共役PCR増幅およびマイクロアレイハイブリダイゼーションに付した。蛍光標識プライマーを用いて、10コピーのバチルス・アンスラシスゲノムDNAを増幅した。
図13に示すように、PCR生成物に対して相補的なプローブで陽性蛍光シグナル(positive
fluorescence signal)が検出され、増幅されたバチルス・アンスラシスDNA生成物はチャンバー内で表面上に固定された相補的オリゴヌクレオチドプローブに対し、それぞれ特異的にハイブリダイゼーションされることが示された。
【0054】
本明細書には多様な具体的実施形態および実施例が記載されているものの、当業者は本発明の多くの異なる実践が、本開示の趣旨および範囲を逸脱することなく達成可能であることを理解するであろう。