(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら実施形態に基づくインクジェットヘッドについて詳細に説明する。
【0010】
図1は、一実施形態に係るインクジェットヘッド11の外観斜視図である。
図1では、インクジェットヘッド11の内部構造を説明するため、構成の一部を部分的に破断して図示する。
図2は、
図1のインクジェットヘッド11をII-II線に沿って切断した断面図である。本実施形態のインクジェットヘッド11は、インク循環式のサイドシュータ型のインクジェットヘッドである。
【0011】
図1及び
図2に示すように、インクジェットヘッド11は、略矩形板状のアルミナ製の基板12と、この基板12の表面上に接着された枠部材13と、この枠部材13の基板12から離間する端部に接着された略矩形板状のカバー部材14と、枠部材13の内側で基板12の表面上に接着された一対の圧電部材15と、一対の圧電部材15を駆動するためのヘッド駆動用の複数個のIC16(
図2参照)と、を有している。
【0012】
基板12は、例えば、絶縁体であるアルミナ材料からなる。アルミナ(Alumina、Al
2O
3)とは酸化アルミニウムの通称である。アルミナはアルミナセラミックとも呼ばれる白色の粉末である。アルミナの式量は102.00g/molである。アルミナの融点は約2020℃である。アルミナの沸点は約3000℃である。
【0013】
アルミナは化学的に安定した材料で、耐摩耗性に優れる。アルミナは殆どの酸及びアルカリに侵されない。
【0014】
アルミナは、ファインセラミックスの材料に用いられ、ファインセラミックスの材料のなかで、特に優れた特性を有する。ファインセラミックスは、別名ニューセラミックス、アドバンストセラミックスとも呼ばれる。ファインセラミックスは、精製または合成された原料粉末を用いて精密に調製された化学組成である。ファインセラミックスは、高精密なセラミックスであり、制御された成形と焼結加工法で作られる。基板12の材料として、アルミナを用いることが好ましい。一般に、ファインセラミックスの用途は、半導体、自動車、産業用機械等がある。
【0015】
複数の供給口31は、
図2に示すごとく、基板12を貫通している。複数の供給口31は、
図1に矢印Aで示す基板12の長手方向に沿って、ほぼ中心線上に並ぶ。複数の排出口32は、基板12を貫通している。複数の排出口32は、基板12の長手方向Aに沿って、エッジ寄りに並ぶ。エッジは、矢印Bで示す基板12の長手方向と直交する方向(幅方向)の両端である。
【0016】
枠部材13の材料は、セラミックである。枠部材13の表面は、絶縁材料で被覆する。枠部材13の材料は、上記に限定されず、金属でもよい。
【0017】
基板12の上には、枠部材13を挟んで、カバー部材14がある。カバー部材14はポリイミド製である。カバー部材14に、一対のノズル列21がある。各ノズル列21は、インク滴の吐出孔である複数のノズル22を含んでいる。複数のノズル22は、ほぼ等間隔に、かつライン状に並ぶ。カバー部材14のインク滴吐出側の表面(外側表面)に、撥水膜43がある。撥水膜43は、例えばフッ素樹脂が好ましい。
【0018】
図2に示すように、一対の圧電部材15は、2枚の圧電板23を張り合わせたものである。2枚の圧電板23は、互いの分極方向が対向するように、張り合わせてある。圧電板23は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)製である。各圧電部材15は、長手方向Aに延びた棒状である。各圧電部材15の、幅方向B断面は、台形状である。
【0019】
図1に示すように、上述の複数の供給口31は、2本の圧電部材15の間に長手方向Aに沿って並ぶ。同様に、複数の排出口32も長手方向Aに沿って並ぶ。複数の供給口31及び排出口32は、各圧電部材15を挟む位置にある。
【0020】
各圧電部材15に、複数本の微細な細長い圧力室24の溝部が形成されている。複数の圧力室24の溝部は長手方向Aに等間隔に並ぶ。このようにして、各圧電部材15に、圧力室24の溝部を区画する複数の壁25が形成される。複数の壁25は、駆動素子として働く。即ち、この駆動素子は各圧力室24の両側部を構成する。
【0021】
各圧力室24の内面に、電極26がある。詳細には、隣接する2つの壁25、圧力室24に対面する側面及びその間の圧力室24の底部に、電極26がある。
【0022】
圧力室24の溝部を区画する各壁25の端部25a(
図6参照)には、カバー部材14が接着されており、カバー部材14には、各圧力室24の溝部に対応するよう各ノズル22が設けられている。つまり、ノズル22は、圧力室24の溝部と同じピッチで形成されている。
【0023】
カバー部材14は、上述の壁25の端部25aの他、枠部材13の基板12から離間した端部に接着されている。これにより、基板12、枠部材13、及びカバー部材14によって囲まれたインク室(チャンバ)40を形成する。
【0024】
基板12上に、圧電部材15を駆動するための複数の電気配線27を設ける。各電気配線27の一端を、上述の電極26に接続する。各電気配線27の他端を、基板12上に設けられたヘッド駆動用のIC16に接続する。基板12及び圧電部材15の表面に設ける電気配線27の下地として、樹脂等からなる、後述する絶縁膜60(
図5A、
図5B、
図5C参照)を形成する。
【0025】
次に本実施形態のインクジェットヘッドの動作を説明する。例えば、上記構造のインクジェットヘッド11を搭載する従来周知のプリンタ(図示せず)で印刷処理を実行する場合である。はじめに、プリンタの図示しないインクタンクからインクジェットヘッド11にインクを供給する。
図2の矢印はインクの流れを示す。
【0026】
基板12に形成された複数の供給口31を介して、インクが、インクジェットヘッド11へ供給される。インクは、基板12、枠部材13、及びカバー部材14によって、概ね密閉されるチャンバ40内に流入する。インクは、更に、圧力室24を通って基板12の外方に向けて流れる。インクは、複数の排出口32を介してインクジェットヘッド11から排出される。
【0027】
このとき、インクジェットヘッド11に供給されるインクの供給圧力及び排出量は、チャンバ40の内壁に付着する気泡を押し流すことができる値に設定する。また、この設定値は、カバー部材14の複数のノズル22からインクが押し出されることのないようにすることも必要である。つまり、インクジェットヘッド11に供給されるインクは、チャンバ40を概ね満たすように流通する。また、インクジェットヘッド11に供給されるインクは、滞留することのないよう流通する。
【0028】
なお、インクジェットヘッド11で使用されないインクは、排出口32を介して排出する。排出したインクは、図示しないインクタンクで回収する。
【0029】
ユーザがプリンタに対して印刷を指示すると、プリンタの図示しない制御部は、インクジェットヘッド11のヘッド駆動用のIC16に対して印刷信号を出力する。印刷信号を受けたヘッド駆動用のIC16は、電気配線27を介して、駆動パルス電圧を壁25(駆動素子)に印加する。インク滴を吐出させることが選択された圧力室24の両側にある左右一対の壁25は、シェアモード変形を行う。
【0030】
シェアモード変形を行うと、一対の壁25は、湾曲するように互いに離反し圧力室24の容積を増加させる。この容積の増加分だけ圧力室24内のインクの量が増加する。そして、一対の壁25を初期位置に復帰させて、当該圧力室24内の圧力を高くする。圧力室24内の圧力を高くすると、対向するノズル22からインク滴が吐出される。この動作が繰り返されて、画像が用紙に印刷される。
【0031】
上述のインクジェットヘッド11の製造方法について、
図3に示すフローチャートと
図4乃至
図7に示す模式図を参照して説明する。
【0032】
まず、上述の複数の供給口31及び排出口32を形成する(アクトA1)。複数の供給口31及び排出口32は、例えば、焼成後のアルミナセラミックスシートで構成する基板12に形成する。供給口31及び排出口32の位置精度は低くて良い。なお、基板12は、焼成前のアルミナセラミックスシートでも良い。上記の他に、複数の供給口31及び排出口32は、プレス成形で形成しても良い。更には、複数の供給口31及び排出口32は、矩形板状の基板12を機械加工して形成しても良い。
【0033】
続いて、基板12の表面に、一対の圧電部材15を接着する(アクトA2)。各圧電部材15は、供給口31の両側に位置する。また、各圧電部材15は、供給口31と排出口32との間にある。このとき、図示しない冶具が、一対の圧電部材15を保持し、一対の圧電部材15は、高精度に位置決めされる。
【0034】
図4は、一対の圧電部材15を基板12に接着した状態を示す図である。圧電部材15は、2枚の圧電板23が、接着剤51を挟んで、分極方向が逆向きになるように、貼り合せてある。2枚の圧電板23を貼り合せる接着剤51は、加熱により硬化する。
【0035】
本実施形態では、接着剤51は例えば、120℃で2時間加熱すると硬化する。接着剤51は、エポキシ系の接着剤が好ましい。また、圧電部材15を基板12に貼り合せる接着剤51も、エポキシ系の接着剤が好ましい。
【0036】
なお、接着剤51の塗布は、接着の対象となる部材との間に気泡が残らないように行うことが望ましい。後述する電極形成工程で気泡中にめっきが進入してしまうことを防ぐためである。しかし気泡が残り、この気泡にめっきが進入する場合が考えられる。多少の気泡であれば、この実施形態における絶膜60が、めっきの気泡への進入を、防ぐことができる。
【0037】
圧電部材15を基板12に接着後、アクトA3において、研削加工を行い、圧電部材15の斜面15a、15bと、基板12にチャンバ溝部30を設ける。チャンバ溝部30は、チャンバ40の一部を構成する。各圧電部材15の長手方向Aに沿って、チャンバ溝部30を形成する。チャンバ溝部30の形成は、円周が細くなっているブレード等を用いて行う。ブレードの刃を、圧電部材15の側から基板12の側へ向かって移動させる。これにより、基板12に、圧電部材の斜面15a、15bと連続する斜面を有するチャンバ溝部30が設けられる(
図5A参照)。
【0038】
この研削によって、基板12と圧電部材15とを接着する接着剤51の余剰部分を削り取ることができる。または、基板12と圧電部材15との間に接着剤51が不足している場合、この不足により生じる空洞部分を削り取ることができる。
【0039】
この後、アクトA4の圧力室24の溝部形成により、圧電部材15に、
図2に示す複数の圧力室24の溝部を形成する。この圧力室溝部24の加工は、例えば、ICウエハの切断等に用いられているダイシングソーのダイヤモンドホイールを用いる。
【0040】
図1に示すように、複数の圧力室24は、圧電部材15の長手方向Aに沿って等間隔で並べて形成する。この結果、隣接する圧力室24の溝部の間には、それぞれ、
図6に示すように壁25が形成される。
【0041】
続いて、アクトA5で、
図5Aに示すように、チャンバ溝部30を覆うように絶縁膜60となる絶縁性樹脂を塗布する。
図5Aに示すとおり、チャンバ溝部30は、圧電部材15の斜面15a、15bと近接する位置にそれぞれ1箇所ずつあり、少なくとも後述の電気配線27を形成するチャンバ溝部30に絶縁性樹脂を塗布する。絶縁性樹脂は、
図5Bで示すようにチャンバ溝部30のみに選択的に形成してもよい。
【0042】
また
図5Cで示すように、チャンバ溝部30から圧電部材15の斜面にかけて形成することにより、基板12と圧電部材15間の接着剤51中に気泡があり、かつ気泡による接着剤51の未充填部が表面に露出した場合でも、接着剤51の未充填部へのめっきの進入を防止できる。絶縁性樹脂を塗布した後、硬化して絶縁膜60を形成する。絶縁性樹脂の塗布方法は、スクリーン印刷法、カーテンコート法、スプレーコート法、ロールコート法等、圧電部材の傾斜度合い等に応じて選定できる。
【0043】
この基板12に塗布する絶縁性樹脂としては、熱硬化性のポリイミド樹脂やエポキシ樹脂、感光性のポリイミド樹脂やエポキシ樹脂等を用いる。
【0044】
熱硬化性のポリイミド樹脂としては、例えば京セラケミカル製CT4112が挙げられる。樹脂の塗布はスプレーコータ等の器具を用いて、基板12表面の研削部を覆いながら行う。樹脂を塗布した後、200℃のオーブンで約1時間の加熱処理を行う。加熱処理によりポリイミド樹脂が硬化したものが絶縁膜60となる。
【0045】
エポキシ、ポリイミド等の感光性樹脂を用いても良い。スプレーコータ等の器具を用いて、基板12に感光性樹脂を塗布する。その後、基板12に紫外線を照射する。紫外線照射は露光マスク越しに行い、基板12表面の研削部エリアに樹脂を残す。その後、基板12を現像液に浸漬し、不要な箇所の樹脂を除去する。尚、基板12を露光する前に、加熱処理が必要な場合は、加熱処理を行う。
【0046】
絶縁膜60の形成は、前述のアクトA2とアクトA3の間で行っても良い。この場合、基板12及び圧電部材15の全面に絶縁膜60を形成しても良い。
【0047】
各圧電部材15の長手方向Aに沿った両側面15a,15bを斜めに研削加工した後、京セラケミカル製CT4112等の熱硬化性のポリイミド樹脂をスプレーコータで基板12表面の研削部を覆うよう塗布する。このとき圧電部材15全体を覆うように樹脂を塗布しても良い。その後200℃のオーブンで約1時間加熱処理を行い、絶縁膜60を形成した後、圧力室24の溝部を形成する。
【0048】
絶縁膜60は、材料の使用量を抑制するため、最大厚が数μmから数十μmの膜状に形成するとよい。この後エッチングを行い、圧電部材15及び絶縁膜60の表面を粗化する。まず、例えば酸性エッチング液に浸漬させ、圧電部材15の表面を粗化する。
【0049】
次に例えばアルカリ性、あるいは過マンガン酸系のエッチング液に浸漬させ、絶縁膜60の表面を粗化する。平均表面粗さはRa0.2〜0.5μm程度が良い。
【0050】
続いてアクトA6で行う電極形成工程について説明する。ここでは複数の圧力室24の溝部の内面に電極26を形成するとともに、基板12に電気配線27を形成する。電極26及び電気配線27は、無電解めっきによって形成された例えばニッケル薄膜で構成する。
【0051】
絶縁膜60にめっき触媒を吸着させるために、コンディショニング処理、触媒付与、触媒活性化処理を順次施す。コンディショニング処理は、界面活性剤に浸漬させることにより、後に付加するパラジウム錯体等の触媒の密着力を向上させるために行う。
【0052】
基板12及び圧電部材15の全面にニッケル薄膜を形成後、レーザ加工を施し、電極26及び電気配線27以外の部位のニッケル薄膜を除去する。
【0053】
電気配線27以外の部位のニッケル薄膜を除去する手段は、レーザ加工に限らず、配線となる部位のニッケル薄膜上にレジスト材料を形成し、配線以外の部位のニッケル薄膜をエッチング液で溶解除去する手段を用いてもよい。
【0054】
この後、アクトA7において、
図6に示すように、一対の圧電部材15を囲むように、基板12の表面に枠部材13を接着する。次にアクトA8で、
図7に示すように、枠部材13及び圧電部材15を覆うようにカバー部材14を接着する。上述したように、カバー部材14を、枠部材13の端部13a(
図6参照)及び圧電部材15の複数の壁25の端部25a(
図6参照)に接着する。
【0055】
さらにこの後、アクトA9でカバー部材14にレーザを照射して複数のノズル22を形成する。各ノズル22は、カバー部材14の表面に円形の吐出口(オリフィス)を形成し、複数の圧力室24の溝部に対向する位置にそれぞれ連通するよう形成する。
【0056】
そして、アクトA10で、基板12上の電気配線27に接続するように駆動回路(ヘッド駆動用のIC16)を取り付ける。さらに、アクトA11において、基板12に図示しないインクケースを接着して、インクジェットヘッド11の製造工程が終了する。
【0057】
以上説明の実施形態によれば、基板12としてアルミナ製基板を用いても、基板12の一部または基板12の一部から圧電部材15の傾斜部にかけてひとつづきに絶縁膜60を形成することにより、圧電部材15を過剰に粗化することなく、高い密着力を有する電気配線27を形成することができる。また絶縁膜60の形成によって、接着剤51内の気泡にめっきが進入してしまうことを防止することができる。
【0058】
また、本実施形態では基板12としてアルミナ材料を用いたが、ムライト材料を用いても良い。ムライト(Mullite、3Al
2O
3・2SiO
2)は白または薄黄色の光沢あるセラミックスであり、原料が滑石(タルク)であり加工し易い。特に高温環境下での電気絶縁性に優れており、ターミナル碍子・絶縁用キャップ等に利用する。高周波特性も良好であり、高周波損失が小さいため、通信機器用の絶縁体端子等に利用する。また化学的に安定しており、耐酸性、耐アルカリ性であるため、アルミナと同様に基板等の理化学部品として用いることができる。また熱衝撃にも強い等の特性がある。このようなムライトを基板に用いてもよい。
【0059】
上記実施形態では、絶縁部材として絶縁膜を用いる場合について説明した。絶縁部材としては、絶縁性の樹脂膜が好ましい。なお、膜の中が導電性であっても外側が絶縁材料により覆われていてもよい。このような膜は絶縁材料により形成された膜ではないが本発明における絶縁膜に含まれる。
【0060】
次に上記インクジェットヘッドを用いるカラーのインクジェット記録装置の一実施形態について説明する。このインクジェット記録装置の機構を
図8に示す。この装置において、シアン、マゼンダ、イエロー、ブラックの4色の上述の構造のインクジェットヘッド99C、99M、99Y、99Kが設けられている。
【0061】
図8に示すインクジェット記録装置70は、例えば記録媒体である用紙Pを搬送しながら画像形成等の各種処理を行う装置である。インクジェット記録装置70は、外郭を構成する筐体80と、筐体80内部に設けられた用紙供給部としての給紙カセット71と、筐体80上部に設けられた排出部としての排紙トレイ72と、用紙Pを外面上に保持して回転する保持ローラ(ドラム)73と、給紙カセット71から保持ローラ73の外周を通って排紙トレイ72に至って形成される所定の搬送路A1に沿って用紙Pを搬送する搬送装置74と、保持ローラ73から剥離された用紙Pの表裏面を反転させて再び保持ローラ73の表面上に供給する反転装置78と、を備える。
【0062】
保持ローラ73の外周部分において上流側から下流側に向かって順番に、用紙Pを保持ローラ73の外面に押圧し用紙Pを保持ローラ73の表面(外周面)に吸着させて保持させる保持装置75と、保持ローラ73の外面に保持された用紙Pに画像形成する画像形成装置76と、用紙Pを除電し保持ローラ73から剥離する除電剥離装置77と、保持ローラ73を清浄するクリーニング装置79と、が設けられている。
【0063】
搬送装置74は、搬送路A1に沿って設けられた複数のガイド部材81〜83や複数の搬送用ローラ84〜89を備えている。搬送用ローラとして、ピックアップローラ84や、給紙ローラ対85、レジストローラ対86、分離ローラ対87、搬送ローラ対88、排出ローラ対89が設けられている。これらの搬送用ローラ84〜89は搬送用モータに駆動されて回転することで、用紙Pを搬送路A1に沿って下流側に送る。
【0064】
搬送路A1におけるレジストローラ対86のニップ近傍には用紙Pの先端位置を検知する用紙位置センサ107が設けられている。さらに、ユーザによって各種の項目が設定可能なオペレーションパネルが設けられている。また、装置70内には装置70内の温度を検出する温度検出部としての温度センサ108が設けられている。そのほか、用紙Pの搬送状況を監視するためのセンサなどが各所に配置されている。
【0065】
保持ローラ73は、回転軸71aと、導体であるアルミニウムで円筒状に構成された円筒フレーム91と、円筒フレーム91の表面に形成された薄い絶縁層92と、を備え、軸方向に一定の長さを有する円筒状に構成されている。円筒フレーム91は接地されていて、帯電ローラ97による帯電時には対抗電極として電位が0Vに保持される。保持ローラ73は、その表面上に用紙Pを保持した状態で回転することにより用紙Pを搬送する。ここでは
図8中時計回りに回転することにより用紙Pを外周に沿って時計回りに搬送する。
【0066】
保持装置75は、用紙Pを保持ローラ73に対して押圧する押圧装置93と、用紙が搬送される方向に対して押圧装置93の下流側で帯電による静電気力で用紙Pを保持ローラ73に吸着させる吸着装置94と、を備えている。
【0067】
押圧装置93は、回転軸95cと、保持ローラ73の下方の表面に対向配置される押圧ローラ95(押圧部材)と、押圧ローラ95を駆動する押圧モータと、を備えている。
【0068】
押圧ローラ95は、例えば回転軸から外周面までの距離が複数段階で変化するカムを含む。押圧ローラ95はその回転角度によって、保持ローラ73の表面を第1の押圧力で押し付ける第1状態と、第1の押圧力よりも小さい第2の押圧力で押し付ける第2状態と、保持ローラ73から離間して押圧力が解除される第3状態とで切り替え可能になっている。
【0069】
押圧ローラ95と保持ローラ73間にかかる荷重は、用紙Pが変形せず、また、画質が低下しないような適正値に設定される。用紙Pが保持ローラ73と押圧ローラ95のニップ部を通過する際に、押圧ローラ95により用紙Pが保持ローラ73に押し付けられることにより、用紙Pが皺を伸ばしながら保持ローラ73表面に密着する。
【0070】
押圧ローラ95の外周面は絶縁材からなる絶縁層95bで覆われ、帯電した用紙Pの電荷が押圧ローラ95を通じてリークしないようになっている。
【0071】
吸着装置94は、押圧ローラ95の下流側に隣接配置される帯電ローラ97を備えている。帯電ローラ97は、回転軸71aと平行に延びるとともに帯電可能な金属製の帯電軸97aと帯電軸97aの外周に形成された表層部97bと、を有し、保持ローラ73の表面に対向配置されている。帯電ローラ97への電荷の供給状態の切り替えが可能であるとともに、保持ローラ73の表面に接離する方向に帯電ローラ97の移動が可能になっている。
【0072】
帯電ローラ97が保持ローラ73に近接した状態で帯電ローラ97に電力が供給されると帯電ローラ97と接地された円筒フレーム91との電位差が生じて、用紙Pを保持ローラ73に吸着させる方向の静電気力を発生(帯電)させる。この静電気力により用紙Pを保持ローラ73の表面に吸着させる。
【0073】
画像形成装置76は、帯電ローラ97よりも下流側であって保持ローラ73の表面の上方部分に対向配置された複数のインクジェットヘッド99C、99M、99Y、99Kを備えている。ここではシアン、マゼンダ、イエロー、ブラックの4色のインクジェットヘッド99C、99M、99Y、99Kがそれぞれ設けられている。4色のインクジェットヘッド99C、99M、99Y、99Kは、所定のピッチで設けられたノズルから用紙Pにインクを吐出して画像を形成する。これらの4色のインクジェットヘッドは、
図1〜
図7で述べたような構造を有し、製造される。
【0074】
除電剥離装置77は、用紙Pの除電を行う除電装置101と、除電後に保持ローラ73の表面から用紙Pを剥離させる剥離装置102と、を備えている。
【0075】
除電装置101は、画像形成装置76よりも用紙が搬送される方向に対して下流側に設けられ、帯電可能な除電ローラ103を備えている。除電装置101は、電荷を供給して用紙Pを除電することで、吸着力を解除して用紙Pを保持ローラ13から剥離しやすい状態にする。
【0076】
剥離装置102は、除電装置101の下流側に設けられ、回動動作(移動)可能な分離爪105を備えている。分離爪105は用紙Pと保持ローラ73の間に挿入される剥離位置と、保持ローラ73から退避する退避位置との間で回動可能であり、剥離位置に配置された状態で用紙Pを保持ローラ73の表面から剥離させる。なお、
図8では剥離位置にある状態を破線で、退避位置にある状態を実線で示す。
【0077】
クリーニング装置79は、除電剥離装置77よりも下流側に設けられ、保持ローラ73に当接する当接位置と保持ローラ73から退避する離間位置とで移動動作可能なクリーニング部材と、クリーニング部材を動作させるクリーニングモータとを備えている。クリーニング部材が保持ローラ73の表面に当接した状態で保持ローラ73が回転することにより、クリーニング部材79aにより保持ローラ73表面を清浄にする。
【0078】
反転装置78は、剥離装置102の下流側に設けられ、剥離装置102で剥離された用紙Pを反転させて再び保持ローラ73の表面上に供給する。反転装置78は、例えば用紙Pを前後方向逆にスイッチバックさせる所定の反転経路に沿って用紙Pを案内して搬送することにより用紙Pを反転させる。
【0079】
このように、上述のインクジェットヘッドを記録装置に適用すれば、ヘッド部の配線の密着不良を低減することが可能なインクジェットヘッド記録装置が得られる。
【0080】
本発明の実施形態によれば、配線の密着不良を低減することが可能なインクジェット記録装置、インクジェットヘッド及びその製造方法が得られる。
【0081】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。