【実施例1】
【0037】
本発明の実施例1に係るフィラメントワインディング装置100(以降「FW装置100」)について説明する。
図1に示すように、FW装置100は、フープ巻き装置30によるフープ巻きと、ヘリカル巻き装置40によるヘリカル巻きとをライナー1に対して交互に繰り返し行うことにより、ライナー1の周囲に樹脂を含浸させた複数本の繊維束Fを巻き付けていく装置である。
図1は、フープ巻き装置30が巻き付け位置にある状態を示している。
【0038】
図1に示す矢印A、Bは、FW装置100の前後方向と、ヘリカル巻きにおけるライナー1の移送方向を示している。ヘリカル巻きではライナー1をFW装置100の前後方向に往復動させるため、ライナー1は矢印Aの方向に移送される場合と、矢印Bの方向に移送される場合とがある。ライナー1が移送される方向を前側、前側の反対側を後側と定義する。FW装置100は、ライナー1を前後方向に往復動させるため、ライナー1の移送方向に応じて前側及び後側が定まるものとする。
【0039】
ライナー1は、例えば高強度アルミニウム材やポリアミド系樹脂等によって形成された略円筒形状の中空容器である。ライナー1は、外周面1Sに複数本の繊維束Fが巻き付けられ、複数の繊維層が形成されることによって耐圧性能の向上が図られる。つまり、ライナー1は、耐圧容器を構成する基材とされる。尚、以下の説明では、ライナー1は、繊維束Fを巻き付ける前の状態と、繊維束Fを巻き付けている途中の状態の両方を意味するものとする。例えば、ライナー1の外周面1Sとは、巻き付けられた繊維束Fの表面であることも意味する。
【0040】
図1、
図2に示すように、FW装置100は、主に主基台10と、ライナー移送装置20と、フープ巻き装置30と、ヘリカル巻き装置40と、クリールスタンド50と、制御部90と、で構成される。
【0041】
主基台10は、FW装置100の基礎を構成する。主基台10の上部には、ライナー移送装置用レール11が設けられている。ライナー移送装置用レール11には、ライナー移送装置20が載置されている。主基台10の上部には、ライナー移送装置用レール11に対して平行にフープ巻き装置用レール12が設けられている。フープ巻き装置用レール12には、フープ巻き装置30が載置されている。
【0042】
このような構成により、主基台10に対してライナー移送装置20ならびにフープ巻き装置30を移動させることが可能である。ヘリカル巻き装置40は主基台10に固定される。
【0043】
ライナー移送装置20は、ライナー1を回転させながら移送する装置である。ライナー移送装置20は、FW装置100の前後方向を中心軸としてライナー1を回転させるとともに、FW装置100の前後方向にライナー1を移送する。ライナー移送装置20は、主に基台21と、ライナー支持部22とで構成される。ライナー移送装置20の駆動は制御部90により制御される。
【0044】
基台21の上部には、一対のライナー支持部22が設けられている。ライナー支持部22は、ライナー支持フレーム23と回転軸24で構成される。ライナー支持フレーム23は、基台21から上方に向けて延設される。回転軸24は、ライナー支持フレーム23から前後方向に向けて延設される。ライナー1は、回転軸24に取り付けられ、図示しない動力機構によって一方向に回転される。
【0045】
このような構成により、ライナー移送装置20は、FW装置100の前後方向を中心軸としてライナー1を回転させるとともに、FW装置100の前後方向にライナー1を移送することを可能としている。
【0046】
フープ巻き装置30は、ライナー1の外周面1Sに複数本の繊維束Fを同時に巻き付けて繊維層を形成する装置である。フープ巻き装置30は、繊維束Fの巻き付け角度がFW装置100の前後方向に対して略垂直となる、いわゆるフープ巻きを行なう。フープ巻き装置30は、主に基台31と、動力機構32と、フープ巻き掛け装置33と、で構成される。フープ巻き装置30の駆動は制御部90により制御される。
【0047】
基台31には、動力機構32によって回転されるフープ巻き掛け装置33が設けられている。フープ巻き掛け装置33は、繊維束ヘッドとしての巻き掛けテーブル34を有している。
【0048】
巻き掛けテーブル34は、中央にライナー1を挿通する空間が設けられ、その空間の周囲に複数(本実施形態では4本)のボビンBA、BB、BC、及びBDが配置される(
図4参照)。ボビンBA、BB、BC、及びBDからは、それぞれ繊維束Fがライナー1の外周面1Sに供給される。動力機構32はフープ巻き掛け装置33をライナー1の中心軸回りに回転させる。
【0049】
フープ巻きでは、ライナー1の位置は固定し、フープ巻き装置30をライナー1の中心軸方向に沿って往復動させつつ、フープ巻き掛け装置33をライナー1の中心軸回りに回転させる。これによりフープ巻きが行われる。つまり、フープ巻き装置30は、複数のボビンBA、BB、BC、及びBDから供給された複数本の繊維束Fをライナー1の外周面1Sに臨ませる繊維束ヘッドとしての巻き掛けテーブル34を有しており、ライナー1の軸を中心として巻き掛けテーブル34とライナー1とを相対回転させることで、ライナー1上に複数本の繊維束Fを同時に巻き付ける構成である。
【0050】
このような構成により、フープ巻き装置30は、繊維束Fの巻き付け角度がFW装置100の前後方向に対して略垂直となるフープ巻きをライナー1の外周面1Sに対して行なう。尚、フープ巻き装置30の移動速度や巻き掛けテーブル34の回転速度を調節することによって、繊維束Fの巻き付け態様を自在に変更可能である。
【0051】
ヘリカル巻き装置40は、ライナー1の外周面1Sに複数本の繊維束Fを同時に巻き付けて繊維層を形成する装置である。ヘリカル巻き装置40は、繊維束Fの巻き付け角度がFW装置100の前後方向に対して所定の値(例えば、0〜60度)となる、いわゆるヘリカル巻きを行なう。ヘリカル巻き装置40は、主に基台41と、ヘリカル巻き掛け装置42とで構成される。ヘリカル巻き装置40の駆動は制御部90により制御される。
【0052】
基台41には、ヘリカル巻き掛け装置42が設けられている。ヘリカル巻き掛け装置42は、第1ヘリカルヘッド43と、第2ヘリカルヘッド44を備えている。第1ヘリカルヘッド43、及び第2ヘリカルヘッド44には、クリールスタンド50に支持される複数(本実施形態では180本)のボビンB1、B2・・・B180から複数本の繊維束Fが供給され、ライナー1の外周面1Sに複数本の繊維束Fが導かれる。第1ヘリカルヘッド43、及び第2ヘリカルヘッド44には、それぞれ複数(本実施形態では各々90本)のノズル(図示せず)がライナー1の外周面1Sに向けて放射状に設けられている。複数のノズルによって、ライナー1の外周面1Sに複数本の繊維束Fが導かれ、ライナー1が回転しながら通過することでヘリカル巻きが行なわれる。ヘリカル巻きでは、ヘリカル巻き装置40は固定されており、ライナー移送装置20によりライナー1が回転しながら回転軸方向に移送される。これにより、ヘリカル巻きが行われる。つまり、ヘリカル巻き装置40は、複数のボビンB1、B2・・・B180から供給された複数本の繊維束Fをライナー1の外周面1Sに臨ませる繊維束ヘッドとしての第1ヘリカルヘッド43、及び第2ヘリカルヘッド44を有しており、ライナー1の軸を中心として第1ヘリカルヘッド43、及び第2ヘリカルヘッド44とライナー1とを相対回転させることで、ライナー1上に複数本の繊維束Fを同時に巻き付ける構成である。
【0053】
このような構成により、ヘリカル巻き装置40は、繊維束Fの巻き付け角度がFW装置100の前後方向に対して所定の値となるヘリカル巻きをライナー1の外周面1Sに対して行なう。尚、ライナー1の移送速度や回転速度を調節することによって、繊維束Fの巻き付け態様を自在に変更可能である。
【0054】
図2に示すように、クリールスタンド50は、ヘリカル巻き装置40の第1ヘリカルヘッド43、及び第2ヘリカルヘッド44に設けられる複数(本実施形態では各々90本)のノズルに対して複数本(本実施形態では180本)の繊維束Fを供給する。クリールスタンド50は、主にラック51と、ボビンホルダ軸52と、ガイド53と、で構成される。
【0055】
ラック51には、複数のボビンホルダ軸52が互いに平行に取り付けられている。ボビンホルダ軸52にはそれぞれボビンB1、B2・・・B180が回転自在に支持される。ボビンB1、B2・・・B180は、繊維束Fが引き出されることによって回転し、繊維束Fを解舒する。各ボビンB1、B2・・・B180からライナー1に向かう繊維束Fの経路上には、繊維束Fを案内するガイド53が複数設けられている。各ボビンB1、B2・・・B180から解舒された複数本の繊維束Fは、複数のガイド53を介して対応するヘリカル巻き装置40の各ノズルに供給される。
【0056】
このような構成により、クリールスタンド50は、ヘリカル巻き装置40を構成する複数のノズルに対して複数本の繊維束Fを供給することを可能としている。尚、本実施形態のFW装置100は、
図2に示すクリールスタンド50と同様のクリールスタンド50を複数備えており、各クリールスタンド50からヘリカル巻き装置40に向けて複数本の繊維束Fを供給するように構成されている。
【0057】
次に、本実施例の特徴部分である、フープ巻き装置30に対して設けられる第1張力調整部110、第1解舒不良検知部130、及び第1張力検知部150について説明する。まず、
図3を用いてこれらの概略構成について説明する。
図3に示すように、第1張力調整部110、第1解舒不良検知部130、及び第1張力検知部150は、巻き掛けテーブル34上において、複数のボビンBA、BB、BC、及びBDからライナー1に至る糸道上に配置されている。
【0058】
第1張力調整部110は、複数のボビンBA、BB、BC、及びBDから解舒された複数本の繊維束Fに対して一台設けられている。第1張力調整部110は、複数本の繊維束Fの張力を一括して調整する。第1張力調整部110は、制御部90に電気的に接続されており、制御部90により駆動が制御される。
【0059】
第1張力検知部150は、ライナー1と第1張力調整部110との間に設けられている。第1張力検知部150は、複数本の繊維束Fに対して個別に配置されている。第1張力検知部150は、複数本の繊維束Fの張力を個別に検知する。第1張力検知部150は、各繊維束Fの張力を検知し、制御部90に検知信号を送信する。制御部90は、第1張力検知部150からの検知信号に基づいて、第1張力調整部110の駆動を制御する。第1張力調整部110は、第1張力検知部150の検知結果に応じて複数本の繊維束Fの張力を一括して調整する。
【0060】
第1解舒不良検知部130は、複数のボビンBA、BB、BC、及びBDでの繊維束Fの解舒不良をボビンBA、BB、BC、及びBD毎に個別に検知する。第1解舒不良検知部130は、複数のボビンBA、BB、BC、及びBDと第1張力調整部110との間の糸道上に設けられている。
【0061】
次に、第1張力調整部110、第1解舒不良検知部130、及び第1張力検知部150の具体的な構成について説明する。
図4、
図5に示すように、フープ巻き装置30の巻き掛けテーブル34には、ボビンBA、BB、BC、及びBDに対応して、ボビン支持部50が4箇所に配置されている。各ボビン支持部50の近傍には、フレーム80A、・・・80Dが設けられている。ボビンBA、BB、BC、及びBDに対応して設けられているボビン支持部50、フレーム80A、・・・80Dは、略同様の構成である。以下では主としてフレーム80Aについて説明する。
【0062】
巻き掛けテーブル34は動力機構32により、
図4において矢印R方向に回転する。動力機構32は、制御部90に接続されており、制御部90からの信号に基づいて、回転及び停止が制御される。繊維供給ガイド75からライナー1へ導かれる繊維束Fは、矢印R方向に回転されながら、ライナー1の外周面1Sに巻き付けられる。繊維束Fは巻き掛けテーブル34の回転によって矢印FA方向に供給される。
【0063】
ボビンBAを支持するボビン支持部50は、巻き掛けテーブル34に対して回転自在に支持されており、制動部としてのヒステリシスブレーキ51に連結されている。ヒステリシスブレーキ51は、ボビン支持部50に支持されるボビンBAの回転を制動するものである。ボビンBAがボビン支持部50に支持された状態で繊維束Fが引かれることにより、ボビンBAが回転し、繊維束Fが引き出される。
【0064】
図4に示すように、フレーム80A、・・・80Dは、それぞれガイドローラ71(71A、71B、71C)、・・・74(74A、74B、74C)を支持している。ボビン支持部50に支持されたボビンBA、BB、BC、及びBDからの4本の繊維束Fは、ガイドローラ71(71B、71C)・・・74(74A、74B、74C)に案内されながら、ガイドローラ74Cでまとめられ、ガイドローラ71Aを経由して繊維供給ガイド75に案内される。繊維供給ガイド75は、まとめられた4本の繊維束Fをライナー1の外周面1Sに供給する。
【0065】
図4に示すように、第1張力調整部110は、ガイドローラ71Aから繊維供給ガイド75に至る繊維束Fの経路の途中に設けられている。また、第1張力検知部150は、第1張力調整部110から繊維供給ガイド75に至る繊維束Fの経路の途中に設けられている。
【0066】
図6に示すように、第1張力調整部110は、まとめられた4本の繊維束Fの張力を一括して調整するものである。第1張力調整部110は、基体となるフレーム111を有している。フレーム111には、第1軸112、第2軸113、第3軸114が設けられている。繊維束Fは、第1軸112、第2軸113、第3軸114の順に掛け回される。第1軸112は、ガイドローラ71A側から案内される繊維束Fを受け入れるローラである。第3軸114は、繊維束Fを繊維供給ガイド75側に送り出すローラである。第1軸112、及び第3軸114は、フレーム111に支持されている。
【0067】
第2軸113は、アーム115の一方の端部に支持されている。アーム115の他方の端部は、支軸116を中心にD11方向とD12方向に揺動自在となるようにフレーム111に設けられている。D11方向は、第2軸113が第1軸112、及び第3軸114に対して離隔する方向である。D12方向は、第2軸113が第1軸112、及び第3軸114に対して接近する方向である。アーム115が揺動することにより、第1軸112から第3軸114に至る繊維束Fの経路を変化させ、繊維束Fに作用する摩擦力を変化させることにより、繊維束Fの張力を調整することができる。第2軸113がD11方向に移動すると、繊維束Fに加わる張力が増大する。第2軸113がD12方向に移動すると、繊維束Fに加わる張力が減少する。
【0068】
支軸116には、ウォームギヤ117を構成するウォームホイール118が固定されている。ウォームホイール118は、支軸116に固定されており、アーム115と一体となって回動自在である。
【0069】
フレーム111には、軸123を回転自在に支持する第1支持部121、及び第2支持部122が設けられている。軸123の一方の端部には、ウォームギヤ117を構成するウォーム124が固定されている。ウォーム124とウォームホイール118が噛み合うことによりウォームギヤ117を構成する。
【0070】
フレーム111には、第1モータM1が設けられている。第1モータM1としてサーボモータを用いている。第1モータM1の駆動軸には、第1ベベルギヤ125が固定されている。軸123の他方の端部には、第1ベベルギヤ125と噛み合う第2ベベルギヤ126が固定されている。第1モータM1は制御部90に電気的に接続されており、第1モータM1の駆動は制御部90により制御される。制御部90によって第1モータM1の回動角度を制御することにより、アーム115のD11方向、又はD12方向の揺動角度を変化させ、繊維束Fの張力を調整することができる。
【0071】
尚、繊維束Fの張力が第2軸113に作用することにより、アーム115は、D12方向に回動する力を受けることになる。この力は、ウォームホイール118からウォーム124へ伝達される。しかしながら、一般にウォームギアは、ウォームホイール側に回動力が作用した場合に、ウォームはウォームホイールの回り止めの効果を発揮する。このため、本実施形態においては、第1モータM1とアーム115との間にウォームギア117を設けたことにより、アーム115の回り止め機構を別途設ける必要がない。また、アーム115からの回動力が第1モータM1の駆動軸を逆転させる力として伝達されることがないため、第1モータM1として比較的小型のモータを用いることができる。
【0072】
図3に示すように、第1張力検知部150は、複数本の繊維束Fに対して個別に配置されており、各繊維束Fの張力を個別に検知するものである。第1張力検知部150は、各繊維束Fの張力を検知し、制御部90に検知信号を送信する。制御部90は、第1張力検知部150からの検知信号に基づいて、第1張力調整部110の駆動を制御する。
【0073】
具体的には、第1張力検知部150は、繊維束Fの張力が所定値より低い場合は、制御部90にその旨の検知信号を送信する。この場合、制御部90は、第1張力検知部150からの検知信号に基づいて、アーム115に設けた第2軸113がD11方向に移動して繊維束Fの張力が増大するように第1モータM1の回動角度を制御する。また、第1張力検知部150は、繊維束Fの張力が所定値より高い場合は、制御部90にその旨の検知信号を送信する。この場合、制御部90は、第1張力検知部150からの検知信号に基づいて、アーム115に設けた第2軸113がD12方向に移動して繊維束Fの張力が減少するように第1モータM1の回動角度を制御する。以上の構成により、第1張力調整部110は、第1張力検知部150の検知結果に応じて複数本の繊維束Fの張力を一括して調整することができる。
【0074】
図4、
図5、
図7に示すように、第1解舒不良検知部130は、フレーム80A、80B、80C、及び80Dにそれぞれ設けられている。フレーム80A・・・80Dに設けられている第1解舒不良検知部130は、それぞれボビンBA、BB、BC、及びBDから最初のガイドローラ71B、72B、73B、及び74Bに至る繊維束Fの経路の途中に設けられている。ボビンBA・・・BDに対応する各第1解舒不良検知部130は、略同一の構成であるため、以下では主としてボビンBAに対応する第1解舒不良検知部130について説明する。
【0075】
図7に示すように、第1解舒不良検知部130は、第2ローラ62を有している。フレーム80Aには、第2ローラ62の他に、第1ローラ61、第3ローラ63、及び第4ローラ64が設けられている。繊維束Fは、第1ローラ61、第2ローラ62、第3ローラ63、及び第4ローラ64の順に掛け回される。第1ローラ61は、ボビンBAから解舒される繊維束Fの支点となるローラである。第4ローラ64は、繊維束Fをガイドローラ71Bに案内するローラである。第3ローラ63は、アーム69に支持されており、繊維束Fの緩み取り部60を構成する。第1ローラ61、及び第4ローラ64は、フレーム80Aに支持されている。
【0076】
尚、緩み取り部60を構成するアーム69は、D3方向とD4方向に揺動自在に支持されており、図示しないトーションバネによりD4方向に付勢されている。繊維束Fの張力が設定値以上の場合は、アーム69は、第1ローラ61の支持部に当接する位置まで回動して待機する。繊維束Fの張力が設定値未満になって緩みが生じた場合は、アーム69は、トーションバネの付勢力によりD4方向に回動し、繊維束Fに生じた緩みを吸収する。
【0077】
第1解舒不良検知部130を構成する第2ローラ62は、アーム65の一方の端部に支持されている。アーム65の他方の端部は、支軸66を中心にD21方向とD22方向に揺動自在となるようにフレーム80Aに設けられている。D21方向は、第2ローラ62が第4ローラ64に対して離隔する方向である。D22方向は、第2ローラ62が第4ローラ64に対して接近する方向である。すなわち、アーム65が揺動することにより、第2ローラ62と第4ローラ64との間で繊維束Fの経路長が増減する。
【0078】
支軸66はフレーム80Aの裏面側(紙面奥側)に貫通しており、支軸66に設けられるトーションバネ(図示せず)によって、第2ローラ62が第4ローラ64に対して離隔する方向(D21方向)に付勢されている。尚、アーム65が揺動する仮想平面は、巻き掛けテーブル34の回転軸に平行になるようにしている。これにより、アーム65に及ぼす巻き掛けテーブル34の回転による遠心力の影響を小さくしている。
【0079】
アーム65を支持する支軸66には、フレーム80Aの裏面側(紙面奥側)において第1検知片67が固定されている。第1検知片67は、アーム65の揺動に伴って揺動する。フレーム80Aの裏面側(紙面奥側)には、第1検知部68が設けられている。
【0080】
繊維束Fに所定の張力が加わっている場合、つまり、ボビンBAにおける繊維束Fの解舒が正常である場合には、第2ローラ62は、アーム65の支軸66に設けられたトーションバネの付勢力により、アーム65がD21方向に回動し、第4ローラ64に対して離隔する方向に回動する(待機位置)。繊維束Fに加わっている張力が所定の張力より増大している場合、つまり、ボビンBAにおける繊維束Fの解舒に異常が生じた場合には、第2ローラ62は、アーム65の支軸66に設けられたトーションバネの付勢力に抗して、アーム65がD22方向に回動し、第4ローラ64に対して接近する方向に回動する(検知位置)。
【0081】
第1検知部68は、アーム65が検知位置まで回動した状態で、第1検知片67を検知することで、アーム65が所定の位置まで回動していることを検知する。また、第1検知部68は、アーム65が検知位置まで回動していない状態では、第1検知片67を検知しないことで、アーム65が所定の位置まで回動していないことを検知するものである。つまり、第1検知部68は、ボビンBAにおける繊維束Fの解舒が正常であって、繊維束Fに所定の張力が加わっていること、及び、ボビンBAにおける繊維束Fの解舒に不良が生じ、繊維束Fに加わる張力が増大していること、を検知する。
【0082】
第1検知部68は、ボビンBAにおける繊維束Fの解舒に不良が生じたことを検知した場合、制御部90にその旨の検知信号を送信する。また、第1検知部68は、ボビンBAにおける繊維束Fの解舒が正常であることを検知した場合、制御部90にその旨の検知信号を送信する。第1検知部68としては、光電センサー等の公知のセンサーを用いることができる。第1検知部68に必要な電力は、巻き掛けテーブル34の外部から供給してもよく、巻き掛けテーブル34にバッテリーを搭載し、このバッテリーから供給してもよい。
【0083】
制御部90は、第1検知部68がボビンBAにおける繊維束Fの解舒に不良が生じたことを検知した場合、第1検知部68からの検知信号に基づいて、図示しない報知部により警報音等を発生させる。尚、フープ巻き装置30による繊維束Fの巻き付けが開始した直後等、繊維束Fの巻き付け速度V1が増大することにより、ボビンBAにおける繊維束Fの解舒に不良が生じていなくても一時的に繊維束Fに加わる張力が増大する場合がある。このような場合には、警報音等を発生させる必要がない。このため、制御部90は、第1検知部68による異常検知信号の継続時間が設定時間以下の場合は、警報音等は発生させない。また、第1検知部68による異常検知信号の継続時間が設定時間以下の場合であっても、所定の頻度以上で異常検知信号が受信された場合は、なんらかの異常が発生したとして警報音等を発生させる。
【0084】
以上説明した本実施例に係るFW装置100によれば、次のような効果を有する。
【0085】
FW装置100は、複数のボビンBA、BB、BC、及びBDから解舒された複数本の繊維束Fの張力を一括して調整する第1張力調整部110と、ボビンBA、BB、BC、及びBDでの解舒不良をボビン毎に個別に検知する第1解舒不良検知部130と、を備える。このため、第1張力調整部110、及び第1解舒不良検知部130がコンパクトとなり、第1張力調整部110、及び第1解舒不良検知部130のコストを低減するとともに、第1張力調整部110、及び第1解舒不良検知部130を容易に配置できる。また、第1張力調整部110は、複数本の繊維束Fの張力を一括して調整できるため、複数本の繊維束Fの張力の制御を容易に行うことができる。
【0086】
FW装置100の第1解舒不良検知部130は、第1張力調整部110と複数のボビンBA、BB、BC、及びBDとの間の糸道上に設けられる。この第1解舒不良検知部130で検知される繊維束Fの張力の変動は、ボビンBA、BB、BC、及びBDでの解舒不良によるものであり、第1張力調整部110の動作不良等による張力の変動は含まれない。このため、ボビンBA、BB、BC、及びBDでの解舒不良による小さい張力の変動を検知することができ、ボビンBA、BB、BC、及びBDでの解舒不良を精度よく検知することができる。
【0087】
FW装置100は、ライナー1と第1張力調整部110との間に、複数本の繊維束Fの張力を検知する第1張力検知部150を設け、第1張力調整部110は、第1張力検知部150の検知結果に応じて複数本の繊維束Fの張力を一括して調整する。このため、複数本の繊維束Fの張力の制御を容易に行うことができる。
【0088】
FW装置100のフープ巻き装置30における繊維束ヘッドは、ライナー1の外周に回転可能に設置される巻き掛けテーブル34であり、巻き掛けテーブル34がライナー1の軸中心に回転しつつ軸方向に移動することにより、ライナー1上にボビンBA、BB、BC、及びBDから供給された複数本の繊維束Fを同時に巻き付ける。このため、フープ巻き装置30の巻き掛けテーブル34に、第1張力調整部110、及び第1解舒不良検知部130を容易に配置できる。
【0089】
FW装置100の第1解舒不良検知部130は、複数のボビンBA、BB、BC、及びBDに個別に対応して設けられ、解舒された繊維束Fの張力を受けて待機位置から検知位置に変位する第1検知片67と、第1検知片67が検知位置に位置したことを検知する第1検知部68と、を備える。このため、簡単な構成で第1解舒不良検知部130を構成し、ボビンBA、BB、BC、及びBDでの解舒不良を精度よく検知することができる。
【0090】
FW装置100の第1解舒不良検知部130の第1検知片67は、トーションバネによりバネ付勢されて待機位置に位置する。このため、簡単な構成で、ボビンBA、BB、BC、及びBDでの解舒不良を精度よく検知することができる。
【0091】
FW装置100の第1解舒不良検知部130の第1検知部68は、それぞれの第1検知片67に対応して個別に設けられた光電センサである。このため、どのボビンBA、BB、BC、及びBDに解舒不良が発生したか、あるいは解舒不良かどうかを確実に判別することができる。
【実施例2】
【0092】
次に、本発明の実施例2について説明する。本実施例では、ヘリカル巻き装置40に対して、第2張力調整部210、第2解舒不良検知部230、及び第2張力検知部250が設けられている。まず、これらの概略構成について説明する。
【0093】
図8に示すように、第2張力調整部210、第2解舒不良検知部230、及び第2張力検知部250は、複数のボビンB1、B2・・・から第1ヘリカルヘッド43、及び第2ヘリカルヘッド44に至る糸道上に配置されている。本実施形態では、180本のボビンB1、B2・・・B180を15のボビン群G1、G2・・・G15に分け、各ボビン群G1、G2・・・G15の12本毎のボビンB1、B2・・・に対して第2張力調整部210、第2解舒不良検知部230、及び第2張力検知部250を設けている。以下では、12本のボビンB1、B2・・・B12からなるボビン群G1を例に挙げて説明する。
【0094】
図8に示すように、本実施形態では、第2張力調整部210、及び第2解舒不良検知部230は、1台の張力装置200として構成されている。第2張力調整部210は、複数のボビンB1、B2・・・B12から解舒された複数本の繊維束Fに対して共通して設けられている。第2張力調整部210は、複数本の繊維束Fの張力を一括して調整する。第2張力調整部210は、制御部90に電気的に接続されており、制御部90により駆動が制御される。
【0095】
第2張力検知部250は、第1ヘリカルヘッド43、及び第2ヘリカルヘッド44と第2張力調整部210との間に設けられている。第2張力検知部250は、複数本の繊維束Fに対して個別に配置されている。第2張力検知部250は、複数本の繊維束Fの張力を個別に検知する。第2張力検知部250は、各繊維束Fの張力を検知し、制御部90に検知信号を送信する。制御部90は、第2張力検知部250からの検知信号に基づいて、第2張力調整部210の駆動を制御する。第2張力調整部210は、第2張力検知部250の検知結果に応じて複数本の繊維束Fの張力を一括して調整する。
【0096】
第2解舒不良検知部230は、複数のボビンB1、B2・・・B12での繊維束Fの解舒不良をボビンB1、B2・・・B12毎に個別に検知する。第2解舒不良検知部230は、複数のボビンB1、B2・・・B12と第2張力調整部210との間の糸道上に設けられている。
【0097】
次に、第2張力調整部210、第2解舒不良検知部230、及び第2張力検知部250の具体的な構成について説明する。
図9から
図11に示すように、第2張力調整部210、及び第2解舒不良検知部230は、1台の張力装置200として構成されている。張力装置200を配置する位置は、例えば、
図8に示すようにクリールスタンド50上としてもよいが、これに限定されない。本実施形態では、15のボビン群G1、G2・・・G15に対応して15台の張力装置200が設けられている。15台の張力装置200は、それぞれ同一の構成である。
【0098】
図8に示すように、張力装置200は、複数のボビンB1、B2・・・B12から第1ヘリカルヘッド43、及び第2ヘリカルヘッド44に至る繊維束Fの経路の途中に設けられている。
図9、
図10に示すように、張力装置200は、基体となる第1フレーム211を有している。第1フレーム211には、12本のボビンB1、B2・・・B12からの繊維束Fに対応して、12本の第2フレーム212、及び第3フレーム213が並設されている。第2フレーム212には、それぞれ第1支持部214が設けられている。
【0099】
各第2フレーム212には、一端部に第1ローラ261が設けられ、略中央位置に第3ローラ263が設けられている。第1ローラ261は、第2解舒不良検知部230を構成するローラとなる。第3ローラ263は、第2張力調整部210、及び第2解舒不良検知部230の共通のローラとなる。第1ローラ261と第3ローラ263との間には、第1切欠部221が形成される。第1切欠部221は、第2解舒不良検知部230を構成する第2ローラ262が揺動する空間を確保するための切欠部である。第3ローラ263に対して第1切欠部221の反対側には、第2切欠部222が形成される。第2切欠部222は、第2張力調整部210を構成する第4軸264が揺動する空間を確保するための切欠部である。12枚の第2フレーム212が第1フレーム211に設けられた状態では、各第2フレーム212の第1切欠部221、及び第2切欠部222は、12枚の第2フレーム212を横断する方向に連続する空間となる。
【0100】
第2張力調整部210は、複数のボビンB1、B2・・・B12から解舒された12本の繊維束Fの張力を一括して調整するものである。第2張力調整部210は、第3ローラ263、第4軸264、第5軸265、第6ローラ266を有する。繊維束Fは、第2張力調整部210には、第3ローラ263、第4軸264、第5軸265、第6ローラ266の順に掛け回される。第3ローラ263は、複数のボビンB1、B2・・・B12側から第2解舒不良検知部230を経て第2張力調整部210に案内される繊維束Fを受け入れるローラである。第6ローラ266は、繊維束Fを第1ヘリカルヘッド43側、又は第2ヘリカルヘッド44側に送り出すローラである。第6ローラ266は、第3フレーム213に支持されている。
【0101】
第5軸265は、第1支持部214に支持されている。
図9に示すように、第2フレーム212に対する第1支持部214の固定は、第2フレーム212に形成された長穴215とボルト216によって行われる。ボルト216での固定位置を変更することにより第2フレーム212に対する第1支持部214の位置を変更することができる。これにより、第5軸265の位置を調整して繊維束Fの張力を調整することができる。
【0102】
第4軸264は、12本の繊維束Fに対応する1本の部材であり、12枚の第2フレーム212の第2切欠部222で形成される空間を貫通するように配置される。
図9に示すように、第4軸264の両端部は、2本のアーム217の一方の端部で支持される。2本のアーム217の他方の端部は、支軸218に接続されている。支軸218の両端部は、第1フレーム211の両側に立設する第2支持部219で揺動自在に支持される。これにより、第4軸264は、支軸218を中心にD31方向とD32方向に揺動自在となるように設けられる(
図10参照)。D31方向は、第4軸264が第3ローラ263、及び第5軸265に対して離隔する方向である。D32方向は、第4軸264が第3ローラ263、及び第5軸265に対して接近する方向である。第4軸264が揺動することにより、第3ローラ263から第5軸265に至る繊維束Fの経路を変化させ、繊維束Fに作用する摩擦力を変化させることにより、繊維束Fの張力を調整することができる。第4軸264がD31方向に移動すると、繊維束Fに加わる張力が増大する。第4軸264がD32方向に移動すると、繊維束Fに加わる張力が減少する。
【0103】
図10、
図11に示すように、支軸218の一方の端部付近には、ウォームギヤ227を構成するウォームホイール228が固定されている。ウォームホイール228は、アーム217、支軸218、及び第4軸264と一体となって回動自在である。
【0104】
ウォームホイール228の上方には、第2モータM2が設けられている。第2モータM2としてサーボモータを用いている。第2モータM2の駆動軸には、ウォームギヤ227を構成するウォーム229が固定されている。ウォーム229とウォームホイール228が噛み合うことによりウォームギヤ227を構成する。第2モータM2は制御部90に電気的に接続されており、第2モータM2の駆動は制御部90により制御される。制御部90によって第2モータM2の回動角度を制御することにより、アーム217及び第4軸264のD31方向、又はD32方向の揺動角度を変化させ、繊維束Fの張力を調整することができる。
【0105】
尚、繊維束Fの張力が第4軸264に作用することにより、アーム217及び第4軸264は、D32方向に回動する力を受けることになる(
図10参照)。この力は、ウォームホイール228からウォーム229へ伝達される。しかしながら、一般にウォームギアは、ウォームホイール側に回動力が作用した場合に、ウォームはウォームホイールの回り止めの効果を発揮する。このため、本実施形態においては、第2モータM2と第4軸264との間にウォームギヤ227を設けたことにより、アーム217及び第4軸264の回り止め機構を別途設ける必要がない。また、アーム217からの回動力が第2モータM2の駆動軸を逆転させる力として伝達されることがないため、第2モータM2として比較的小型のモータを用いることができる。
【0106】
第2張力検知部250は、複数本の繊維束Fに対して個別に配置されており、各繊維束Fの張力を個別に検知するものである。第2張力検知部250は、張力装置200の第2張力調整部210から第1ヘリカルヘッド43、又は第2ヘリカルヘッド44に至る繊維束Fの経路の途中に設けられている。第2張力検知部250は、各繊維束Fの張力を検知し、制御部90に検知信号を送信する。制御部90は、第2張力検知部250からの検知信号に基づいて、第2張力調整部210の駆動を制御する。
【0107】
具体的には、第2張力検知部250は、繊維束Fの張力が所定値より低い場合は、制御部90にその旨の検知信号を送信する。この場合、制御部90は、第2張力検知部250からの検知信号に基づいて、アーム217に設けた第4軸264をD31方向に移動させて繊維束Fの張力が増大するように第2モータM2の回動角度を制御する。また、第2張力検知部250は、繊維束Fの張力が所定値より高い場合は、制御部90にその旨の検知信号を送信する。この場合、制御部90は、第2張力検知部250からの検知信号に基づいて、アーム217に設けた第4軸264をD32方向に移動させて繊維束Fの張力が減少するように第2モータM2の回動角度を制御する。以上の構成により、第2張力調整部210は、第2張力検知部250の検知結果に応じて複数本の繊維束Fの張力を一括して調整することができる。
【0108】
図9、
図10に示すように、張力装置200を構成する第2解舒不良検知部230は、12枚の第2フレーム212にそれぞれ設けられている。第2解舒不良検知部230は、それぞれボビンB1、B2・・・B12から第2張力調整部210に至る繊維束Fの経路の途中となる位置に設けられている。ボビンB1、B2・・・B12に対応する各第2解舒不良検知部230は、略同一の構成である。以下では主としてボビンB1に対応する第2解舒不良検知部230について説明する。
【0109】
図9、
図10に示すように、第2解舒不良検知部230は、第1ローラ261、第2ローラ262、及び第3ローラ263を有している。繊維束Fは、第1ローラ261、第2ローラ262、及び第3ローラ263の順に掛け回される。第1ローラ261は、ボビンB1から解舒される繊維束Fを受け入れるローラである。第3ローラ263は、第2張力調整部210と共通のローラである。
【0110】
第2ローラ262は、アーム231に支持されている。アーム231は略U字状に屈曲しており、第2ローラ262はその屈曲部近傍に支持されている。アーム231の一方の端部は、支軸232を中心にD41方向とD42方向に揺動自在となるように第2フレーム212に設けられている。D41方向は、第2ローラ262が第1ローラ261、及び第3ローラ263に対して離隔する方向である。D42方向は、第2ローラ262が第1ローラ261、及び第3ローラ263に対して接近する方向である。すなわち、アーム231が揺動することにより、第1ローラ261、及び第3ローラ263との間で繊維束Fの経路長が増減する。
【0111】
アーム231は、支軸232に設けられるトーションバネ233によって、第2ローラ262が第1ローラ261、及び第3ローラ263に対して離隔する方向(D41方向)に付勢されている。尚、トーションバネ233の端部を固定するための穴234が第2フレーム212に複数設けられている。トーションバネ233の端部を固定する穴234の位置を変更することによりアーム231の付勢力を調整することができる。
【0112】
アーム231の他端部は第2検知片235となる。第2検知片235は、アーム231の揺動に伴って揺動する。アーム231の近傍には、第2検知部238が設けられている。
【0113】
繊維束Fに所定の張力が加わっている場合、つまり、ボビンB1における繊維束Fの解舒が正常である場合には、第2ローラ262は、アーム231の支軸232に設けられたトーションバネ233の付勢力により、アーム231がD41方向に回動し、第1ローラ261、及び第3ローラ263に対して離隔する方向に回動している。繊維束Fに加わっている張力が所定の張力より増大している場合、つまり、ボビンB1における繊維束Fの解舒に異常が生じた場合には、第2ローラ262は、アーム231の支軸232に設けられたトーションバネ233の付勢力に抗して、アーム231がD42方向に回動し、第1ローラ261、及び第3ローラ263に対して接近する方向に回動する。
【0114】
第2検知部238は、第2検知片235を検知することで、アーム231が所定の位置まで回動していることを検知する。また、第2検知部238は、第2検知片235を検知しないことで、アーム231が所定の位置まで回動していないことを検知するものである。つまり、第2検知部238は、ボビンB1における繊維束Fの解舒が正常であって、繊維束Fに所定の張力が加わっていること、及び、ボビンB1における繊維束Fの解舒に不良が生じ、繊維束Fに加わる張力が増大していること、を検知する。
【0115】
第2検知部238は、ボビンB1における繊維束Fの解舒に不良が生じたことを検知した場合、制御部90にその旨の検知信号を送信する。また、第2検知部238は、ボビンB1における繊維束Fの解舒が正常であることを検知した場合、制御部90にその旨の検知信号を送信する。第2検知部238としては、光電センサ等の公知のセンサを用いることができる。
【0116】
制御部90は、第2検知部238がボビンB1における繊維束Fの解舒に不良が生じたことを検知した場合、第2検知部238からの検知信号に基づいて、図示しない報知部により警報音等を発生させる。尚、ヘリカル巻き装置40による繊維束Fの巻き付けが開始した直後等、繊維束Fの巻き付け速度が増大することにより、ボビンB1における繊維束Fの解舒に不良が生じていなくても一時的に繊維束Fに加わる張力が増大する場合がある。このような場合には、警報音等を発生させる必要がない。このため、制御部90は、第2検知部238による異常検知信号の継続時間が設定時間以下の場合は、警報音等は発生させない。また、第2検知部238による異常検知信号の継続時間が設定時間以下の場合であっても、所定の頻度以上で異常検知信号が受信された場合は、なんらかの異常が発生したとして警報音等を発生させる。
【0117】
尚、上述の第2検知部238は、12組の第2解舒不良検知部230に対してそれぞれ設けたが、これに限定されない。例えば、1つの第2検知部238を12枚の第2フレーム212に対して横断する方向に設置してもよい。この場合、12組の第2解舒不良検知部230のうち、いずれかの第2解舒不良検知部230の第2検知片235が検知されれば、ボビンB1、B2・・・B12のうちのいずれかにおいて解舒不良が発生したことが検知できる。また、第2検知部238として光電センサを用いた場合には、どの第2解舒不良検知部230の第2検知片235が検知されたのか判断できず、解舒不良が発生したボビンを特定することはできない。そこで、第2検知部238として光電センサに代えて、遮光位置までの距離を計測できるレーザ測距センサを用いることもできる。この場合、検知された第2検知片235の位置情報を得ることができ、検知された第2検知片235を特定することができるため、解舒不良が発生したボビンを特定することができる。
【0118】
以上説明した本実施例に係るFW装置100によれば、次のような効果を有する。
【0119】
FW装置100によれば、複数のボビンB1、B2・・・から解舒された複数本の繊維束Fの張力を一括して調整する第2張力調整部210と、ボビンB1、B2・・・での解舒不良をボビン毎に個別に検知する第2解舒不良検知部230と、を備える。このため、第2張力調整部210、及び第2解舒不良検知部230がコンパクトとなり、第2張力調整部210、及び第2解舒不良検知部230のコストを低減するとともに、第2張力調整部210、及び第2解舒不良検知部230を容易に配置できる。また、第2張力調整部210は、複数本の繊維束Fの張力を一括して調整できるため、複数本の繊維束Fの張力の制御を容易に行うことができる。
【0120】
FW装置100によれば、第2解舒不良検知部230は、第2張力調整部210と複数のボビンB1、B2・・・との間の糸道上に設けられる。この第2解舒不良検知部230で検知される繊維束Fの張力の変動は、ボビンB1、B2・・・での解舒不良によるものであり、第2張力調整部210の動作不良等による張力の変動は含まれない。このため、ボビンB1、B2・・・での解舒不良による小さい張力の変動を検知することができ、ボビンB1、B2・・・での解舒不良を精度よく検知することができる。
【0121】
FW装置100によれば、ライナー1と第2張力調整部210との間に、複数本の繊維束Fの張力を検知する第2張力検知部250を設け、第2張力調整部210は、第2張力検知部250の検知結果に応じて複数本の繊維束Fの張力を一括して調整する。このため、複数本の繊維束Fの張力の制御を容易に行うことができる。
【0122】
FW装置100によれば、繊維束ヘッドは、ライナー1の外周に設置される第1ヘリカルヘッド43、及び第2ヘリカルヘッド44であり、ライナー1が軸中心に回転しつつ軸方向に移動することにより、ライナー1上にボビンB1、B2・・・から供給された複数本の繊維束Fを同時に巻き付ける。このため、ヘリカル巻き装置40の第1ヘリカルヘッド43、及び第2ヘリカルヘッド44を有するFW装置100において、第2張力調整部210及び第2解舒不良検知部230を容易に配置できる。
【0123】
FW装置100によれば、第2解舒不良検知部230は、複数のボビンB1、B2・・・に個別に対応して設けられ、解舒された繊維束Fの張力を受けて待機位置から検知位置に変位する第2検知片235と、第2検知片235が検知位置に位置したことを検知する第2検知部238と、を備える。このため、簡単な構成で第2解舒不良検知部230を構成し、ボビンB1、B2・・・での解舒不良を精度よく検知することができる。
【0124】
FW装置100によれば、第2解舒不良検知部230の第2検知片235は、トーションバネ233でバネ付勢されて待機位置に位置する。このため、簡単な構成で、ボビンB1、B2・・・での解舒不良を精度よく検知することができる。
【0125】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。