(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
<基地局アンテナ1>
図1は、本実施の形態が適用される移動通信用の基地局アンテナ1の全体構成の一例を示す図である。
図1(a)は、基地局アンテナ1の斜視図であり、
図1(b)は、基地局アンテナ1の設置例を説明する図である。
基地局アンテナ1は、例えば、
図1(a)に示すように、鉄塔20に保持された複数のセクタアンテナ10−1〜10−3を備えている。一例として、セクタアンテナ10−1〜10−3の外形は、それぞれが円筒状であって、円筒の中心軸が地面に対して垂直に設けられている。ここで、セクタアンテナ10−1〜10−3をそれぞれ区別しないときは、セクタアンテナ10と表記する。
【0013】
なお、以下では基地局アンテナ1が主に電波を送信するとして説明するが、アンテナの可逆性により、基地局アンテナ1は電波を受信する。電波を受信する場合は、例えば送信信号を受信信号として、信号の流れを逆にすればよい。
【0014】
セクタアンテナ10は、アレイアンテナ100と、移相器200と、制御部の一例としての制御器400と、アレイアンテナ100、移相器200、制御器400を包むように設けられたレドーム500とを備えている。
レドーム500は、例えばFRP(fiber reinforced plastics)などの絶縁性の樹脂で構成されている。なお、セクタアンテナ10は、レドーム500を備えなくともよい。
ここでは、アレイアンテナ100、移相器200、制御器400を備えるものをアンテナと表記することがある。
【0015】
そして、アレイアンテナ100は、複数のアンテナ素子110−1〜110−5と、反射板120とを備えている。アンテナ素子110−1〜110−5をそれぞれ区別しないときは、アンテナ素子110と表記する。
図1(a)では、アンテナ素子110は、一例としてダイポールアンテナであるとし、ダイポールの向きは、放射される電波が地表に対して垂直な方向に振動する偏波(垂直偏波)を送受信できるように設定されている。すなわち、ダイポールを構成する2つの導体が垂直方向に上下に直線状に設けられている。そして、
図1(a)では、5個のアンテナ素子110により、アレイアンテナ100が構成されている。
アンテナ素子110は、例えばエポキシ樹脂などの絶縁体基板(不図示)の表面側に、銅、アルミニウムなどの導体で構成されている。また、反射板120は、導体、例えばアルミニウム、銅などで構成されている。なお、アレイアンテナ100は、反射板120を備えなくてもよい。
【0016】
なお、
図1(a)に示すアンテナ素子110は、垂直偏波を送受信するように構成したが、水平偏波を送受信するように構成してもよい。さらに、垂直偏波を送受信するアンテナ素子110と水平偏波を送受信するアンテナ素子とを交互に又は交差させて配置し、アレイアンテナ100が垂直偏波及び水平偏波の両方を送受信するようにしてもよい。
【0017】
なお、アンテナ素子110は、ダイポールアンテナでなくともよい。また、アレイアンテナ100を構成するアンテナ素子110の数は、5に限定されず、4以下又は6以上であってもよい。
【0018】
移相器200は、例えば入出力端子(後述する
図2に示すIn/Out)に入力された送信信号の位相を少なくとも2つの入出力端子(後述する
図2では5つ(Port1〜Port5))間で異なるようにずらして出力する。
制御器400は、移相器200が設定する移相量を制御する制御データを移相器200に供給する。
【0019】
そして、それぞれのセクタアンテナ10は、移相器200と基地局(不図示)内に設けられた送信信号を送信及び受信信号を受信する送受信部4(後述する
図2参照)とを接続する送受信ケーブル31を備えている。送受信ケーブル31は、例えば同軸ケーブルである。
さらに、それぞれのセクタアンテナ10は、制御器400と基地局内に設けられた位相量などを設定する制御データ生成部5(後述する
図2参照)とを接続する制御データ信号ケーブル32を備えている。なお、基地局内に設けられた制御データ生成部5を親局又は親機、セクタアンテナ10における制御器400を子局又は子機と表記することがある。
【0020】
図1(a)では、セクタアンテナ10−1に、アレイアンテナ100、移相器200、制御器400、送受信ケーブル31、制御データ信号ケーブル32を表記している。他のセクタアンテナ10−2、10−3も、セクタアンテナ10−1と同様に、アレイアンテナ100、移相器200、制御器400、送受信ケーブル31、制御データ信号ケーブル32を備えているが、これらの表記を省略している。
【0021】
図1(b)に示すように、基地局アンテナ1は、セル2内に電波を送信し、セル2内から電波を受信する。
セル2は水平面において角度で分割した複数のセクタ3−1〜3−3を備えている。セクタ3−1〜3−3のそれぞれは、基地局アンテナ1の3個のセクタアンテナ10−1〜10−3に対応して設けられている。つまり、セクタアンテナ10−1〜10−3のそれぞれの出力電波の電界が大きいメインローブ11の方向が、対応するセクタ3−1〜3−3に向いている。ここで、セクタ3−1〜3−3をそれぞれ区別しないときは、セクタ3と表記する。
【0022】
なお、
図1(a)、(b)に例として示した基地局アンテナ1は、3個のセクタアンテナ10−1〜10−3を備え、それぞれがセクタ3−1〜3−3に対応している。セクタアンテナ10及びセクタ3は、3以外の予め定められた数であってもよい。また、
図1(b)では、セクタ3は、セル2を等分に分割して構成されているが、等分でなくともよく、いずれか1つのセクタ3が他のセクタ3に比べ広く又は狭く構成されていてもよい。
【0023】
基地局アンテナ1は、セル2内に電波を送信し、セル2の外側に隣接するセルに電波を送信しないことが好ましい。同様に、セル2内から電波を受信し、セル2の外側に隣接するセルから電波を受信しないことが好ましい。
このため、それぞれのアンテナ素子から送信される電波の位相を移相器200によって変えることで、
図1(a)に示すように、電波(ビーム)の送信方向及び受信方向(指向性)を水平面から地表方向に角度θ傾けて(ビーム・チルト角θとして)いる。
【0024】
<セクタアンテナ10、移相器200、制御器400の接続関係>
図2は、セクタアンテナ10における移相器200、制御器400の接続関係を示す図である。
ここでは、セクタアンテナ10におけるアレイアンテナ100が5個のアンテナ素子110(110−1〜110−5)を備えているとして説明する。
【0025】
移相器200は、送受信部4と接続されて送受信信号を送受する端子であるIn/Outと、アレイアンテナ100の5個のアンテナ素子110−1〜110−5と接続されてそれぞれの間において位相の異なる送受信信号を入出力する端子であるPort1〜Port5とを備えている。
【0026】
アレイアンテナ100が電波を送信する場合、移相器200のPort1〜Port5は、In/Outに入力された送信信号を、それぞれ位相をずらして出力する。例えば、Port3が出力する送信信号を基準として(移相量0)に対して、Port1は移相量−2φ、Port2は移相量−φ、Port4は移相量+φ、Port5は移相量+2φとした送信信号を出力する。
また、アレイアンテナ100が電波を受信する場合、In/Outは、Port1〜Port5にそれぞれ入力され、それぞれで位相がずらされた受信信号を合成して出力する。
【0027】
ここで、φは予め設定されたPort3を基準とする移相量である。
図1に示したビーム・チルト角θは、移相量(φ)、アレイアンテナ100上のアンテナ素子110の間隔(距離)、アレイアンテナ100が放射する自由空間における電波の波長によって設定される。
【0028】
移相器200は、例えば、基板上に設けられた固定導体と、固定導体上を可動できる可動導体とを組み合わせて構成され、固定導体と可動導体とで構成される経路差に基づいて、移相量が設定されるようになっている。そして、固定導体上において可動導体を移動させることで、移相量が可変できるようになっている。
なお、可動導体の移動は、予め定められた方向にスライドさせたり、軸の回りで回転させたりすることで行うことができるようになっている。
【0029】
セクタアンテナ10に必要とされる移相量は、セル2、セクタ3の大きさによって変化する。よって、移相器200に設定される移相量は、セクタアンテナ10毎に異なる。このため、設置時においては、移相量をセクタアンテナ10毎に手作業で設定してもよいが、設置後の移相量の変更に対応しづらい。
そこで、セクタアンテナ10毎に制御器400を設け、制御器400が、地上局などに設けられた制御データ生成部5から制御データ信号を受信して、移相器200の移相量を設定することが好ましい。
【0030】
このとき、制御データ生成部5と制御器400との間で、制御データ信号の送受信が行われる。しかし、制御データ生成部5と制御器400とが、それぞれ基準とする信号(基準信号)の発生源を別に備えている場合、それぞれの基準信号の間で周波数(繰り返しの周期)がずれている(変動している)と、制御データ信号の送受信が正常にできなくなる。
すなわち、制御データ生成部5が予め定められた周波数の基準信号に基づいて制御データ信号を生成して送信しても、制御器400の基準信号の周波数が変動していると、制御データ信号の受信が正常にできない。
逆に、制御データ生成部5の基準信号が予め定められた周波数から変動し、この変動した周波数に基づいて制御データ信号を生成して送信すると、制御器400の基準信号が予め定められた周波数である場合、制御データ信号の受信が正常にできなくなる。
さらに、制御データ生成部5の基準信号と制御器400の基準信号の周波数とがともに予め定められた周波数からずれていても同様である。
【0031】
なお、基準信号の周波数は、温度などの要因によって変動する。特に、基準信号の周波数が大きく変動してもよい場合には、発生源に価格の安い部品を使用することができる。
【0032】
そこで、本実施の形態では、それぞれの基準信号の両方又は一方の周波数が変動しても、制御データ信号の送受信の通信不良の発生が抑制できるように構成されている。
なお、基準信号は、クロック信号(CLK信号)であってもよく、CLK信号を逓減した信号であってもよい。また、CLK信号とは別の信号であってもよい。
【0033】
図3は、本実施の形態が適用される制御データ信号の一例を示す図である。
図3(a)は、制御データ信号の全体を説明する図、
図3(b)は制御データ信号におけるヘッダ及びフッタの構造を説明する図である。
図3(a)に示すように、本実施の形態が適用される制御データ信号は、パケットであって、先頭に設けられたヘッダ、後尾に設けられたフッタ、ヘッダ及びフッタに囲まれた制御データ列を備えている。
なお、制御データ列は、可変長であってもよく、固定長であってもよい。
【0034】
そして、本実施の形態におけるヘッダ及びフッタのそれぞれは、例えば
図3(b)に示す構成であって、ヘッダ及びフッタのそれぞれは、“0”のスタートビット(start)と“1”のストップビット(stop)との間の8ビットのデータからなる。そして、8ビットのデータは、16進数にて“7E”である。
そして、制御データ列におけるそれぞれのデータも、8ビットのデータの前後に“0”のスタートビット(start)と“1”のストップビット(stop)とを備えている。
ここでは、一例として、制御データ信号は9600bpsで送信されるとする。
この場合、スタートビット(start)からストップビット(stop)までの期間(10ビット)の期間は、1.04msとなり、8ビットのデータにおける前後の各1ビットを除く6ビットの“1”の期間が0.625msとなる。
すなわち、ここでは、制御データ生成部5は、予め定められた周波数の基準信号にて動作し、制御データ信号を9600bpsの送信速度で送信する。
【0035】
図4は、本実施の形態における通信制御の概要を説明する図である。ここでは、
図3(b)に示したヘッダで説明する。
図4(a)は、
図3(b)に示したヘッダを示している。そして、
図4(b)は、制御データ信号を生成する制御データ生成部5の基準信号の周波数と、制御器400の基準信号の周波数とが一致している場合(Case A)、
図4(c)は、制御データ生成部5の基準信号の周波数に対して制御器400の基準信号の周波数が高い場合(Case B)、
図4(d)は、制御データ生成部5の基準信号の周波数に対して制御器400の基準信号の周波数が低い場合(Case C)である。
図4では、制御データ生成部5の基準信号の周波数は予め定められた周波数であるとし、制御器400の基準信号の周波数が変動するとする。
ここで、制御器400は、基準とする場合において16MHzのCLK信号を発生するとする。そして、基準信号は、CLK信号を1/4に逓減した信号であるとする。すなわち、基準信号は、基準とする場合において、4MHzであるとする。このとき、基準信号の周期は0.25
μsである。そして、9600bpsでデータを送信するときの1ビットの送信に要する期間teは、0.104msとなる。
また、説明の便宜からスタートビット(start)の“1”から“0”への立下りのタイミングは、Case A、Case B、Case Cのいずれにおいても同じであるとする。
【0036】
まず、
図4(b)のCase Aを説明する。ここでは、制御データ信号を生成する制御データ生成部5の基準信号の周波数と、制御器400の基準信号の周波数とが一致している。すなわち、制御データ生成部5は9600bpsで、制御データ信号を送信する。
よって、制御器400は、自己の基準信号に基づいて、9600bpsに対応して受信するタイミング(受信間隔)を設定して、制御データ信号からデータを受信すればよい。このとき、受信間隔は、制御データ生成部5がデータを送信するときの1ビットの送信に要する期間teである0.104msとなる。
なお、制御器400は、送信されてくる制御データ信号のそれぞれのビットに対して0.5ビット遅れたタイミングで受信している。
【0037】
次に、
図4(c)のCase Bを説明する。ここでは、制御データ生成部5の基準信号の周波数に対して制御器400の基準信号の周波数が高い。例えば、制御器400の基準信号の周波数が
図4(b)の場合より約10%大きいとする。すると、
図4(c)に示すように、制御器400が、周波数が高くなった自己の基準信号に基づいて、9600bpsに対応すると想定する受信するタイミング(受信間隔tf)を設定すると、受信間隔tfは、制御データ生成部5がデータを送信するときの1ビットの送信に要する期間te(0.104ms)に比べて、短くなってしまう(0.094ms)。
すると、
図4(c)に示すように、本来“0”である#8のビットが“1”となり、本来“1”であるストップビット(stop)が“0”となってしまう。
すなわち、通信不良が発生する。
【0038】
さらに、
図4(d)のCase Cを説明する。ここでは、制御データ生成部5の基準信号の周波数に対して制御器400の基準信号の周波数が低い。例えば、制御器400の基準信号の周波数が
図4(b)の場合より約10%小さいとする。すると、
図4(d)に示すように、制御器400が、周波数が低くなった自己の基準信号に基づいて、9600bpsに対応すると想定する受信するタイミング(受信間隔ts)を設定すると、受信間隔tsは、制御データ生成部5がデータを送信するときの1ビットの送信に要する期間te(0.104ms)に比べて、長くなってしまう(0.114ms)。
すると、
図4(d)に示すように、本来“1”である#7のビットが“0”となり、本来“0”である#8のビットが“1”となってしまう。
すなわち、通信不良が発生する。
【0039】
上記では、ヘッダにより説明したが、フッタ及び制御データ列のデータでも同様である。
【0040】
このような通信不良の発生は、制御器400の基準信号が基準として予め定められた周波数から変動しても、その基準信号に基づいて送信されてくる制御データ信号を受信するタイミングが設定されることによる。
逆に、制御データ生成部5の基準信号が予め定められた周波数から変動し、この変動した周波数に基づいて制御データ信号が送信されてきた場合でも同様である。
【0041】
そこで、本実施の形態では、制御器400の基準信号に基づいて制御データ信号を受信するタイミングを設定するのではなく、制御データ信号のヘッダを受信して、制御データ信号の送信速度を計測し、それに基づいて制御データ信号を受信するタイミングを設定している。
【0042】
図4により、本実施の形態における通信制御の概要を説明する。
制御器400は、受信する制御データ信号が途切れた後、予め定められた期間を経過した後に制御データ信号を受信したと認識した場合、ヘッダであると仮定する。
そして、“0”のスタートビット(start)を検出すると、データ“7E”における “1”が続く6ビットの期間を、自己の基準信号の周期を計数することにより計測する。そして、1ビットに対応する期間te(受信するタイミング)を自己の基準信号の周期の計数値によって設定する。
【0043】
図4(b)の場合、制御器400の基準信号の周波数は、4MHzである。すると、制御データ生成部5は制御データ信号を正確に9600bpsで送信しているので、ビット#2〜ビット#7の“1”の期間は、2500周期と計数される。よって、制御器400は自己の基準信号の周波数に基づいて、417周期毎に制御データ信号を受信するタイミングを設定すればよい。
【0044】
図4(c)の場合、制御器400の基準信号の周波数は基準とする4MHzより、約10%高い4.4MHzである。すると、制御データ生成部5は制御データ信号を正確に9600bpsで送信しているので、ビット#2〜ビット#7の“1”の期間は、2750周期と計数される。よって、制御器400は自己の基準信号の周波数に基づいて、458周期毎に制御データ信号を受信するタイミングを設定すればよい。
【0045】
図4(d)の場合、制御器400の基準信号の周波数は基準とする4MHzより、約10%低い3.6MHzである。すると、制御データ生成部5は制御データ信号を正確に9600bpsで送信しているので、ビット#2〜ビット#7の“1”の期間は、2250周期と計数される。よって、制御器400は自己の基準信号の周波数に基づいて、375周期毎に制御データ信号を受信するタイミングを設定すればよい。
【0046】
すなわち、本実施の形態では、制御器400は、制御データ信号の送信速度と、自己の基準信号との差を検出(計数)して、制御データ信号からデータを受信するタイミングを設定し直している。
このようにすることで、たとえ制御データ信号の送信速度と制御器400の基準信号とに差が生じても、制御データ信号の送信速度(通信速度)で通信が行える。
なお、上記においては、例として6ビットの期間を計数してタイミングを設定したが、ヘッダのうちの任意の特色のある期間を計数してもよい。
【0047】
図5は、制御器400を構成する機能ブロックの一例を示す図である。
制御器400は、基準信号を発生する基準信号発生手段の一例としての基準信号発生部410、制御データ生成部5から送信される制御データ信号を受信し、ヘッダを検出する受信検出手段の一例としての受信検出部420、ヘッダの予め定められたビット列に対応する基準信号の周期(パルス)の数を計数(カウント)する計数手段の一例としての基準信号計数部430、制御データ列からデータを受信するタイミングを設定するタイミング設定手段の一例としてのタイミング設定部440、制御データ列から制御データを受信する受信手段の一例としての受信部450、受信した制御データを処理するデータ処理手段の一例としてのデータ処理部460、処理された制御データを移相器200に出力するデータ出力手段の一例としてのデータ出力部470を備えている。
なお、制御器400は、制御データ生成部5に対して応答信号を送信する送信部480をさらに備えてもよい。
【0048】
受信検出部420は、制御データ生成部5に接続され、制御データ生成部5からの制御データ信号を受信する。そして、制御データ信号からヘッダを検出する。
基準信号計数部430は、受信検出部420に接続され、受信検出部420がヘッダを検出した場合に起動されて、ヘッダの予め定められたビット列を受信する期間に対応する基準信号の周期(パルス)の数を計数する。
【0049】
タイミング設定部440は、基準信号計数部430に接続され、計数された基準信号の周期(パルス)の数に基づいて、制御データ列からデータを受信するタイミングを設定する。すなわち、制御データ列のデータを受信するタイミングを基準信号の周期(パルス)の数で設定し、受信部450及び送信部480に送信する。
これ以降、受信部450は、この設定されたタイミングにて、制御データ列からデータを受信する。
【0050】
データ処理部460は、受信部450に接続され、受信部450が受信したデータがフッタであると、これまで受信したデータが正しいかを巡回冗長検査(CRC)などにより正当性を確認する。そして、移相器200を制御する制御データに変換(処理)する。
データ出力部470は、データ処理部460に接続され、データ処理部460が処理した制御データを移相器200に出力する。
【0051】
なお、データ処理部460は、予め定められた時間間隔又はデータ処理部460による処理が完了するタイミングで応答情報を送信部480に送信する。
送信部480は、応答情報を受信するとタイミング設定部440が設定したタイミングで応答信号を制御データ生成部5に送信する。応答情報及び応答信号は、処理終了又は処理中などを示すものである。
ここで、データ処理部460は、受信部450が受信したデータが正しくないと判定した場合や、他の制御器へのデータ(命令)であった場合などには、受信したデータを破棄し、応答情報を送信部480に送信しない。
【0052】
このようにして、制御器400は、制御データ生成部5が生成した制御データ信号(
図3参照)を受信し、移相器200を制御する制御データを移相器200に出力する。
【0053】
図6は、制御器400の行う通信制御を説明するフローチャートである。
制御器400は、外部から受信する制御データ信号におけるデータが、ヘッダであるか否かを判断する(ステップS101。
図6では、S101と表記する。以下同じ。)(受信検出手順の一例である。)。
制御データ信号におけるデータがヘッダでない場合(Nの場合)は、ステップS101に戻って、次に受信する制御データ信号がヘッダであるか否かを判断する。
【0054】
制御データ信号におけるデータがヘッダである場合(Yの場合)は、ヘッダの予め定められたビット列を受信する期間に対応する基準信号の周期(パルス)の数を計数(カウント)する(ステップS102)(計数手順の一例である。)。
計数された基準信号の周期(パルス)の数により、制御データ信号を受信するタイミングを設定する(ステップS103)(タイミング設定手順の一例である。)。
【0055】
そして、設定されたタイミングにより制御データ信号からデータを受信する(ステップS104)(受信手順の一例である。)。
【0056】
設定されたタイミングにて受信したデータがフッタであるか否かを判断する(ステップS105)。
制御データ信号から受信したデータがフッタでない場合(Nの場合)、ステップS104に戻りデータの受信を続ける。
【0057】
一方、制御データ信号から受信したデータがフッタである場合(Yの場合)、例えば、データを処理して、移相器200を制御する制御データとなるように処理する(ステップS106)。
処理した制御データを移相器200に出力する(ステップS107)。
処理完了又は予め定められた時間の経過後、応答信号(処理終了又は処理中など)を制御データ生成部5に通知する(ステップS108)。
これにより、再びステップS101に戻る。
このように、制御器400は通信制御を行う。
【0058】
本実施の形態では、応答信号は設定されたタイミングにて送信されるので、制御データ生成部5は、制御データ信号の送信速度と同じ速度で、応答信号を受信できる。すなわち、たとえ制御器400の基準信号発生部410の周波数が変動していても、通信不良の発生が抑制される。
そして、本実施の形態の制御器400は、ハードウエアで構成されてもよく、CPUなどを含んで構成されてソフトウエアにて制御されてもよい。なお、CPUなどで構成された場合であっても、高速の処理を必要とする部分などをハードウエアで構成してもよい。
【0059】
実施例を説明する。
図7は、制御器400の基準信号の周波数に対する通信速度を示した図である。横軸は制御器400のCLK信号の周波数(MHz)、縦軸は通信速度(bps)である。前述したように、制御データ生成部5から制御器400に制御データ信号が送信される送信速度は9600bpsであるとする。そして、制御器400の基準信号発生部410の基準とする周波数を16MHzとする。
【0060】
図7に示す実施例は、本実施の形態が適用される場合であって、制御器400が、制御データ信号のヘッダの予め定められたビット列に対応する基準信号の周期(パルス)の数を計数し、それにより制御データ信号におけるデータを受信するタイミングを設定する場合を示したものである。この場合、基準信号発生部410の発生する基準信号の周波数が±5%変動した場合、すなわち15.2MHz又は16.8MHzになっても、通信速度の9600bpsに対する誤差は十分小さい範囲に維持される。
【0061】
一方、
図7に示す比較例は、本実施の形態が適用されない場合であって、制御器400が、予め定められたタイミングを設定し、基準信号発生部410の発生する基準信号の周期(パルス)により制御データ信号からデータを受信した場合を示したものである。この場合、基準信号発生部410の発生する基準信号の周波数が±5%変動した場合、すなわち15.2MHz又は16.8MHzになると、通信速度がおおよそ±5%変動する。基準信号の周波数が16MHzから−5%低下した15.2MHzになると通信速度は約9112bpsになり、基準信号の周波数が16MHzから5%増加した16.8MHzになると通信速度は約10072bpsになる。
【0062】
以上説明したように、本実施の形態が適用される場合には、本実施の形態が適用されない場合に比べ、制御データ信号の送信速度と制御器400の基準信号発生部410の基準信号の周波数(周期)とに差が生じても、通信速度の変動が抑制される。
【0063】
上記においては、制御器400は、予め定められた送信速度で制御データ信号を受信するが、制御器400の基準信号発生部410の基準信号の周波数が変動する場合を説明した。
本実施の形態では、ヘッダにおける予め定められたビット列に対応する基準信号の周期(パルス)の数を計数し、制御データ信号からデータを受信するタイミングを設定している。よって、データを受信するタイミングがずれて、異なるデータを受信するという通信不良の発生が抑制される。
【0064】
また、制御データ生成部5からの制御データ信号の送信速度と制御器400における基準信号発生部410が発生する基準信号の周波数とは、相対的な関係である。
よって、制御器400における基準信号発生部410が発生する基準信号の周波数が変動せず、基準とする周波数であって、制御データ生成部5からの制御データ信号の送信速度が変動する場合にも適用できる。さらに、制御データ生成部5からの制御データ信号の送信速度及び制御器400における基準信号発生部410が生成する基準信号の周波数の両方が変動した場合においても適用できる。
すなわち、制御データ生成部生成部5からの制御データ信号の送信速度と、制御器400における基準信号発生部410が発生する基準信号の周波数とは、予め定められた関係を有することを要しない。
よって、制御データ生成部5からの制御データ信号の送信速度が不明である場合又は不定である場合にも、適用できる。
【0065】
上記においては、制御器400を、セクタアンテナ10の移相器200の移相量を設定する制御データを供給するとして説明した。しかし、制御器400を、アンテナを載置した回転台を回転させて指向性を変える場合などにおいて、回転台の回転速度の設定などに使用することができる。
さらに、制御器400を、データ信号を送受信するデータ通信におけるデータ通信装置とすることもできる。