(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補正データ収集手段は、前記イメージングデータを収集するために印加される周波数エンコード用傾斜磁場の周波数よりも高い周波数の周波数エンコード用傾斜磁場を印加して前記補正用のデータを収集するように構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
前記イメージングデータを収集するための繰り返し時間を一定としつつ、前記呼吸性の体動を表す信号に応じて前記補正用のデータを収集する時間を調整する調整手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
前記イメージングデータを収集するイメージングデータシーケンスでは、呼吸周期により位相エンコード順序を並べ替えることで、k空間上で呼吸周期を最大周波数に擬似的に割り当ててアーチファクトを低減するHIGH SORT技術を用いる、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
前記イメージングデータを収集するイメージングデータシーケンスでは、呼吸周期により位相エンコード順序を並べ替えることで、k空間上で呼吸周期を最小周波数に擬似的に割り当ててアーチファクトを低減するLOW SORT技術を用いる、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0013】
図1は本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の実施の形態を示す構成図である。
【0014】
磁気共鳴イメージング装置20は、静磁場を形成する筒状の静磁場用磁石21と、この静磁場用磁石21の内部に設けられたシムコイル22、傾斜磁場コイル23およびRFコイル24とを図示しないガントリに内蔵した構成である。
【0015】
また、磁気共鳴イメージング装置20には、制御系25が備えられる。制御系25は、静磁場電源26、傾斜磁場電源27、シムコイル電源28、送信器29、受信器30、シーケンスコントローラ31およびコンピュータ32を具備している。制御系25の傾斜磁場電源27は、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27yおよびZ軸傾斜磁場電源27zで構成される。また、コンピュータ32には、入力装置33、表示装置34、演算装置35および記憶装置36が備えられる。
【0016】
静磁場用磁石21は静磁場電源26と接続され、静磁場電源26から供給された電流により撮像領域に静磁場を形成させる機能を有する。尚、静磁場用磁石21は超伝導コイルで構成される場合が多く、励磁の際に静磁場電源26と接続されて電流が供給されるが、一旦励磁された後は非接続状態とされるのが一般的である。また、静磁場用磁石21を永久磁石で構成し、静磁場電源26が設けられない場合もある。
【0017】
また、静磁場用磁石21の内側には、同軸上に筒状のシムコイル22が設けられる。シムコイル22はシムコイル電源28と接続され、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて静磁場が均一化されるように構成される。
【0018】
傾斜磁場コイル23は、X軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23yおよびZ軸傾斜磁場コイル23zで構成され、静磁場用磁石21の内部において筒状に形成される。傾斜磁場コイル23の内側には寝台37が設けられて撮像領域とされ、寝台37には被検体Pがセットされる。RFコイル24はガントリに内蔵されず、寝台37や被検体P近傍に設けられる場合もある。
【0019】
また、傾斜磁場コイル23は、傾斜磁場電源27と接続される。傾斜磁場コイル23のX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23yおよびZ軸傾斜磁場コイル23zはそれぞれ、傾斜磁場電源27のX軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27yおよびZ軸傾斜磁場電源27zと接続される。
【0020】
そして、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27yおよびZ軸傾斜磁場電源27zからそれぞれX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23yおよびZ軸傾斜磁場コイル23zに供給された電流により、撮像領域にそれぞれX軸方向の傾斜磁場Gx、Y軸方向の傾斜磁場Gy、Z軸方向の傾斜磁場Gzを形成することができるように構成される。
【0021】
RFコイル24は、送信器29および受信器30と接続される。RFコイル24は、送信器29からRF信号を受けて被検体Pに送信する機能と、被検体P内部の原子核スピンのRF信号による励起に伴って発生したNMR信号を受信して受信器30に与える機能を有する。
【0022】
一方、制御系25のシーケンスコントローラ31は、傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30と接続される。シーケンスコントローラ31は傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30を駆動させるために必要な制御情報、例えば傾斜磁場電源27に印加すべきパルス電流の強度や印加時間、印加タイミング等の動作制御情報を記述したシーケンス情報を記憶する機能と、記憶した所定のシーケンスに従って傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30を駆動させることによりX軸傾斜磁場Gx、Y軸傾斜磁場Gy,Z軸傾斜磁場GzおよびRF信号を発生させる機能を有する。
【0023】
また、シーケンスコントローラ31は、受信器30におけるNMR信号の検波およびA/D変換により得られた複素データである生データ(raw data)を受けてコンピュータ32に与えるように構成される。
【0024】
このため、送信器29には、シーケンスコントローラ31から受けた制御情報に基づいてRF信号をRFコイル24に与える機能が備えられる一方、受信器30には、RFコイル24から受けたNMR信号を検波して所要の信号処理を実行するとともにA/D変換することにより、デジタル化された複素データである生データを生成する機能と生成した生データをシーケンスコントローラ31に与える機能とが備えられる。
【0025】
さらに、磁気共鳴イメージング装置20には、被検体Pから呼吸信号を検出する呼吸検出ユニット38が備えられる。呼吸検出ユニット38により取得された呼吸検出信号はシーケンスコントローラ31を介してコンピュータ32に出力されるように構成される。
【0026】
また、コンピュータ32の記憶装置36に保存されたプログラムを演算装置35で実行することにより、コンピュータ32には各種機能が備えられる。ただし、プログラムによらず、各種機能を有する特定の回路を磁気共鳴イメージング装置20に設けてもよい。
【0027】
図2は、
図1に示すコンピュータ32の機能ブロック図である。
【0028】
コンピュータ32は、プログラムにより撮影条件設定部40、シーケンスコントローラ制御部41、k空間データベース42、画像再構成部43、画像データベース44、画像処理部45およびデータ補正部46として機能する。撮影条件設定部40は、音響制御シーケンス設定部40A、補正用シーケンス設定部40B、EPI (Echo planar imaging)シーケンス設定部40Cおよび空うち時間設定部40Dを備えている。
【0029】
撮影条件設定部40は、入力装置33からの指示情報に基づいてパルスシーケンスを含む撮影条件を設定し、設定した撮影条件をシーケンスコントローラ制御部41に与える機能を有する。撮影条件設定部40では、特に、イメージング用のデータを収集するためのイメージングシーケンス、イメージングシーケンスに先立つ空うちシーケンスの他、傾斜磁場の発生に伴って生じる音響を制御するための音響制御シーケンス、被検体Pの呼吸性の体動によるデータのずれを補正するためのデータを収集するための補正用シーケンスを設定することができる。また、呼吸検出ユニット38により取得された呼吸検出信号に同期して呼吸同期下でデータ収集を行うように撮影条件を設定することもできる。
【0030】
音響制御シーケンス設定部40Aは、音響制御シーケンスを設定する機能を有する。補正用シーケンス設定部40Bは補正用シーケンスを設定する機能を有する。EPIシーケンス設定部40Cは、音響制御シーケンス、イメージングシーケンスおよび/または補正用シーケンスとしてEPIシーケンスを設定する機能を有する。
【0031】
空うち時間設定部40Dは、空うちシーケンスの実行時間を設定する機能を備えている。具体的には、空うち時間設定部40Dは、呼吸検出ユニット38により取得された呼吸性の体動による呼吸レベルを示す呼吸検出信号に同期してイメージング用のデータを断続的に収集する複数のイメージングシーケンス間においてイメージング用のデータを収集しない空うちシーケンスを設定する機能と、空うちシーケンスの実行時間を伸縮させる機能とを備えている。
【0032】
空うちシーケンスでは、少なくともスライス選択用の傾斜磁場を印加し、TRを乱さずにイメージングシーケンスと同一のRFパルスを送信するダミーショットが実行される。空うちシーケンスでは、リードアウト用傾斜磁場をかけずにデータ収集を行わないようにしても良いし、リードアウト用傾斜磁場をかけてデータ収集するがイメージング用に収集データを使用しないようにしても良い。
【0033】
音響制御シーケンスは、空うちシーケンスの間に設定することができる。空うちシーケンスでは、スライス選択用の傾斜磁場パルスの印加によって適切なスライスさえ選択されていれば、他の周波数軸、位相エンコード軸については自由に傾斜磁場パルスを印加することができる。この場合、正極側および負極側に傾斜磁場を設定し、打ち消し合いによりTRあたりの傾斜磁場の時間積分がゼロとなるようにすることができる。このため、様々なパルス波形の傾斜磁場パルスを様々な方向に印加して傾斜磁場を発生させることによって所望の音響を発生させることができる。すなわち空うちシーケンスに傾斜磁場パルスを付加することによって音響制御シーケンスを作成することができる。尚、イメージングシーケンスではデータ収集のために決定される傾斜磁場に応じた音響が発生する。
【0034】
図3は、
図2に示す撮影条件設定部40において設定される呼吸同期下における音響制御シーケンスの実行タイミングを示す図である。
【0035】
図3において横軸は時間を示す。
図3に示すように、呼吸検出ユニット38からは、周期的に変化する呼吸信号が取得される。取得された呼吸信号は、コンピュータ32に与えられる。そして、音響制御シーケンス設定部40Aでは、呼吸信号のレベルが所定の基準に繰り返し達するタイミングで周期的にトリガ信号(TRIGGER1, TRIGGER2, TRIGGER3, …)を生成することができる。さらに、イメージングシーケンスの開始までに呼吸が安定するための時間を確保するために、直前のイメージングシーケンスの終了後からトリガ信号から所定の遅延時間(DELAY TIME 1, DELAY TIME 2, DELAY TIME 3, …)が経過するまでの期間をイメージング用のデータを収集しない空うちシーケンス(DUMMY SHOT)とすることができる。
【0036】
空うちシーケンス後には、イメージング用のデータを収集するイメージングシーケンスが開始されるが、呼吸の変動を考慮してトリガ信号間の間隔である呼吸周期よりも短めに終了するようにイメージングシーケンスが設定される。つまり、空うち時間設定部40Dは、トリガ信号の周期を検知して呼吸の荒さの程度を認識し、遅延時間のみならずイメージングシーケンスの終了時間も調整できるように構成されている。これによりイメージングシーケンスのTRを一定とすることができる。また、空うち時間設定部40Dは、イメージングシーケンスの実行中においてトリガ信号を受信したときに、そのトリガ信号から始まる呼吸の1周期分の収集データを破棄する制御を行うこともできる。
【0037】
このように、イメージング用のデータを収集しない空うちシーケンスとイメージング用のデータを収集するイメージングシーケンスとが周期的に繰り返し設定される。そして、空うちシーケンスに傾斜磁場パルスを付加することによって音響制御シーケンスを作成することができる。このため、呼吸性の体動によって生じた呼吸信号に同期して音響制御シーケンスとイメージングシーケンスとが繰り返し実行されることとなる。
【0038】
音響制御シーケンスは、音響を発生するための傾斜磁場パルスを設定することによって作成することができる。すなわち傾斜磁場パルスの強度や周波数を変化させると、傾斜磁場パルスの印加に伴って発生する音響の強度や周波数が変化する。そこで、傾斜磁場パルスの強度や周波数を調整することによって音響を制御することができる。
【0039】
図4は、
図3に示す音響制御シーケンスの一例を示す図である。
【0040】
図4において横軸は時間を示す。
図4(a)に示すように、EPIシーケンスのような高い周波数で変化する傾斜磁場パルスGhと、
図4(b)に示すように低い周波数で変化する傾斜磁場パルスGlとでは音響が異なる。このため、例えば読み出し傾斜磁場パルス波形の周波数を変化させることにより音響を変えることができる。
【0041】
図5は、
図3に示す音響制御シーケンスの別の一例を示す図である。
【0042】
図5において横軸は時間を示す。
図5に示すように、傾斜磁場パルスの強度Gを徐々に変化させて包絡線の形状を調整することにより低い周波数の音響を発生させるようにすることもできる。
【0043】
このような音響制御は、呼吸信号に応じて行うことができる。例えば、少なくとも1つの、実用的には直近3つか4つのトリガ信号間隔の履歴を観測し、トリガ間隔が長くなったと判定される場合には、呼吸が間延びして長くなっているものと考えられる。そこで、音の周波数および音圧の一方または双方を上げるなどして変えることによって呼吸を急ぐように促すことができる。つまり、呼吸信号から得られる過去のトリガ間隔の時間変化に応じて音響または音圧を決定することができる。
【0044】
尚、傾斜磁場パルスの印加そのものをゼロとして発生する音響を抑制することも音響制御に含まれる。また、x方向、y方向、z方向それぞれについて傾斜磁場コイルの固定強度が異なるため傾斜磁場パルスの印加方向を調整することによっても音響の音色を制御することができる。
【0045】
ところで、被検体Pから取得される呼吸信号のレベルも呼吸の状態(深さ)によって変化する。そこで、トリガ信号を十分な精度で得るために呼吸信号は自動的にゲイン調整され、一定のレベルの呼吸信号とされる。このため、呼吸信号の周期のみならず、呼吸信号の調整に用いたゲインの変化履歴に応じて音響制御することで、呼吸の間隔だけでなく呼吸の深さに応じたフィードバックも可能である。この場合、音響制御シーケンス設定部40Aが呼吸検出ユニット38からゲインを取得し、取得したゲインに応じて音響制御シーケンスを設定するように構成される。
【0046】
そして、このような音響制御シーケンスを実行させて音響を制御することによって、被検体Pの呼吸レベルおよび呼吸周期をより安定化させ、呼吸性の体動に起因する画像アーチファクトを低減させることができる。また、呼吸の安定化により収集データにおける位相や振幅の乱れが低減されるため、後述する体動補正を行う場合に、より理想的で良好な補正を行うことができる。
【0047】
尚、音響制御シーケンスおよびイメージングシーケンスとしては任意のシーケンスを用いることができる。例えば、TR変化の影響を強く受ける、つまり縦緩和(T1)強調画像データを収集するためのTRが1000以下のSE (Spin Echo)法によるマルチスライスシーケンスや、TRが20以下で1枚づつ画像データを収集するFFE (fast field echo)法によるシーケンシャルマルチスライスシーケンスについては特に効果が大きい。
【0048】
一方、音響制御シーケンスとともに、或いは音響制御シーケンスに代えて、補正用シーケンスを呼吸信号同期下におけるイメージングシーケンス間に設定することができる。補正用シーケンスは、上述したように被検体Pの呼吸性の体動によるデータのずれを補正するためのデータを収集するためのシーケンスである。補正用シーケンスとしては、例えばFFEシーケンスやEPIシーケンスを用いることができる。イメージングシーケンスのTRが長ければFFEシーケンスに比べてEPIシーケンスの方が有効性が高い。
【0049】
図6は、
図2に示す撮影条件設定部40において設定される呼吸同期下における補正用シーケンスの実行タイミングを示す図である。
【0050】
図6において横軸は時間を示す。
図3に示す音響制御シーケンスと同様に、
図6に示すように補正用シーケンスを呼吸信号同期下におけるイメージングシーケンス間に設定することができる。そして、あるイメージングシーケンスにより収集されるデータをそのイメージングシーケンスの直前または直後における補正用シーケンスにより収集される補正用のデータに基づいて動き補正することができる。
【0051】
図7は、
図6に示す補正用シーケンスにより収集される補正用データと被検体Pの呼吸性の動き量との関係を説明する図である。
【0052】
図7は、被検体Pの腹部の断面を示している。また、
図7の横軸はX軸、Y軸に設定されている。腹部60は、呼吸周期に応じて吸気時の腹部61と呼気時の腹部62との間においてY軸方向に変化する。このため呼吸性の体動によるY軸方向の動き量を捉え、動き量に応じてデータの動き補正を行うことが必要となる。そこで、呼吸性の体動に関する情報を補正用のデータとして取得することが必要となる。
【0053】
例えば、被検体Pの前後方向に相当するY軸方向に読み出し用の傾斜磁場を印加して1次元(1D)の補正用のデータを収集する補正用シーケンスを作成することができる。
【0054】
図8は、
図6に示す補正用シーケンスを1次元のシーケンスとした場合の例を示す図である。
【0055】
図8において横軸は時間、Gz, Gx, GyはそれぞれZ軸、X軸、Y軸方向における傾斜磁場、ADCは、エコー信号として収集される補正用データを示す。
【0056】
図8に示すように、Z軸方向にスライス選択用傾斜磁場パルスGssを、Y軸方向にリードアウト用傾斜磁場パルスGroを印加する補正用シーケンスを設定し、位相エンコード用傾斜磁場パルスを印加せずに補正用データADCを取得することができる。この位相エンコード量をゼロとしてリードアウト方向に傾斜磁場パルスを印加することによって得られるエコー信号はナビゲータエコーと呼ばれる場合もある。このk空間(フーリエ空間)データとして収集される1次元の補正用データは、被検体Pの呼吸によるY軸方向の動き量に応じた分だけ位相がシフトしていることになる。そこで、補正用データの位相シフト量を位相補正データとして、Y軸方向の動き量がキャンセルされるようにイメージングシーケンスの実行によって収集されたk空間データの位相を補正することによって動き補正を行うことができる。
【0057】
しかしながら、被検体Pの体軸方向に相当するZ軸方向の動き量は、1次元の補正用データの収集によって実用的な精度で求めることができる場合が多いが、被検体Pの前後方向に相当するY軸方向の動き量は、1次元の補正用データの収集によって実用的な精度で求められない恐れがある。そこで、X軸方向およびY軸方向の2次元の低解像度の画像データを補正用データとして収集する補正用シーケンスを作成することができる。2次元収集を行い、画像データとすればそれぞれ(特にY方向)の位置シフト量に応じて補正量を算出し補正できる。
【0058】
図9は、
図6に示す補正用シーケンスを2次元のシーケンスとした場合の例を示す図である。
【0059】
図9において横軸は時間、Gz, Gx, GyはそれぞれZ軸、X軸、Y軸方向における傾斜磁場、ADCは、エコー信号として収集される補正用データを示す。
【0060】
図9に示すように例えばイメージングシーケンスにおける周波数エンコード用傾斜磁場パルスの周波数よりも高い周波数の周波数エンコード用傾斜磁場パルスを印加するEPIシーケンスにより低解像度のXY方向の2次元の画像データを取得するための補正用シーケンスを作成することができる。この場合、2次元の画像データから被検体PのY軸方向の動き量を位置シフト量として求め、求めた位置シフト量を用いてイメージングにより収集された画像データの位置補正を行うことができる。また、補正用の画像データを一旦k空間データに変換してk空間上において位置シフトに対応する位相シフト分だけk空間データの位相補正を行うこともできる。
【0061】
尚、被検体Pの動きを平行移動と回転移動のみの並進移動を伴う剛体による線形の動きとして扱うのみならず拡大縮小(伸縮移動)やせん断を含めた非剛体による非線形の動きとして扱うことも可能である。動きを非線形とする場合には、実空間における補正用データに基づいて計測または予測した非線形な動きの大きさに応じてk空間を分割し、分割されたk空間ごとに異なる位相補正を行って補正されたデータを相互に重み付け加算する補正法などを用いることができる。
【0062】
尚、上述したようにイメージングシーケンス間に補正用シーケンスのみならず、音響制御シーケンスも設定することができる。この場合、補正用のデータを収集するために傾斜磁場パルスの形状が制限されるため、補正用のデータを収集することが可能な範囲内で音響制御用の傾斜磁場パルスを設定することとなる。例えばEPIシーケンスで補正用のデータを収集する場合に、EPIシーケンスに補正用のデータの収集には必要のないエンドスポイラー等の傾斜磁場パルスを設定することで補正用のデータを収集しつつ音響制御も行うことが可能となる。
【0063】
次に、コンピュータ32の他の機能について説明する。
【0064】
シーケンスコントローラ制御部41は、入力装置33からのスキャン開始指示情報を受けた場合に、撮影条件設定部40からパルスシーケンスを含む撮影条件をシーケンスコントローラ31に与えることにより駆動制御させる機能を有する。また、シーケンスコントローラ制御部41は、シーケンスコントローラ31から生データを受けてk空間データベース42に形成されたk空間に配置する機能を有する。このため、k空間データベース42には、受信器30において生成された各生データがk空間データとして保存され、k空間データベース42に形成されたk空間にk空間データが配置される。
【0065】
画像再構成部43は、k空間データベース42からk空間データを取り込んでフーリエ変換(FT: Fourier transform)を含む画像再構成処理を施すことにより実空間データである被検体Pの画像データを再構成する機能と、再構成して得られた画像データを画像データベース44に書き込む機能を有する。このため、画像データベース44には、画像再構成部43において再構成された画像データが保存される。
【0066】
画像処理部45は、画像データベース44から画像データを取り込んで必要な画像処理を行って表示用の2次元の画像データを生成する機能と、生成した表示用の画像データを表示装置34に表示させる機能を有する。
【0067】
データ補正部46は、k空間データベース42または画像データベース44から補正用データとして収集されたk空間データまたは画像データを読み込んで、補正用データを用いてイメージング用のk空間データまたは画像データの動き補正を任意の手法で行う機能と、動き補正後のk空間データまたは画像データをk空間データベース42または画像データベース44に書き込む機能を有する。実空間における平均(0次)位相にシフトはk空間では1次の位相シフトになる。また、実空間における位置シフトはk空間では1次の位相シフトとなる。
【0068】
従って、例えば、補正用シーケンスの実行により1次元または2次元の補正用のk空間データが取得された場合には、データ補正部46において、k空間データベース42から読み込んだ補正用のk空間データを用いて、イメージングシーケンスの実行により収集されたk空間データの位相を補正することができる。より具体的には、基準となるあるショットn0によって収集された補正用のk空間データと他のショットnによって収集された補正用のk空間データとから式(1)に示すように各ショットにおける位相誤差ΔΦを求めることができる。
[数1]
Φ=2πYKy
Φ0=2πY0Ky
ΔΦ=Φ-Φ0 (1)
ただし、Yはショットnにおける動きによるシフト量を、Y0は、基準となるショットn0における動きによるシフト量を、それぞれ示す。
【0069】
そして、各ショットにおける位相誤差ΔΦが求められると、exp(-iΔΦ)を各ショットに対応するイメージング用のデータにそれぞれ乗じることにより位相補正を行うことができる。
【0070】
一方、補正用シーケンスの実行により2次元の補正用の画像データが取得された場合には、データ補正部46において、画像データベース44から読み込んだ補正用の画像データを用いて、イメージングシーケンスの実行により収集された画像データの位置を補正することもできる。すなわち、基準となるショットにより得られた補正用の画像データと他のショットにより得られた補正用の画像データとから各ショットにおける位置シフト距離ΔYを求めることができる。そして、各ショットにおける位置シフト距離ΔYを各ショットに対応するイメージング用の画像データからそれぞれ減じることにより位置補正を行うことができる。ただし、イメージング用のk空間データに対してexp(-2πKyΔY)を乗じることによって位相補正することもできる。
【0071】
また、上述したようにk空間を分割し、分割したk空間ごとに対応する位相誤差を求めて異なる位相補正を行うことにより非線形の動き補正を行うようにしてもよい。
【0072】
次に磁気共鳴イメージング装置20の動作および作用について説明する。
【0073】
図10は、
図1に示す磁気共鳴イメージング装置20により呼吸同期下において音響制御および呼吸性の体動による動き補正を伴って被検体Pの画像を生成する際のフローチャートである。
【0074】
まずステップS1において、撮影条件設定部40により呼吸同期下において繰り返し実行されるイメージングシーケンスの間に音響制御シーケンスおよび補正用シーケンスを実行する撮影条件が設定される。すなわち、空うち時間設定部40Dがイメージングシーケンスの間に空うちシーケンス用の期間を設定し、補正用シーケンス設定部40Bは、空うちシーケンス用の期間に
図8または
図9に示すような補正用のデータを収集するための補正用シーケンスを設定する。また、音響制御シーケンス設定部40Aは、補正用シーケンスに音響制御用の傾斜磁場パルスを付加することにより補正用シーケンスを音響制御シーケンスとする。ここで、補正用シーケンス、音響制御シーケンスおよびイメージングシーケンスがEPIシーケンスとされる場合には、EPIシーケンス設定部40CによりEPIシーケンスが作成される。
【0075】
次に、ステップS2において、呼吸信号同期下におけるイメージングスキャンが実行される。すなわち、入力装置33からシーケンスコントローラ制御部41に動作指令が与えられて、被検体PにRF信号を送信するとともに、被検体P内からの生データが収集される。
【0076】
そのために、予め寝台37に被検体Pがセットされ、静磁場電源26により励磁された静磁場用磁石21(超伝導磁石)の撮像領域に静磁場が形成される。また、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて撮像領域に形成された静磁場が均一化される。
【0077】
そして、入力装置33からシーケンスコントローラ制御部41にスキャンの開始指示が与えられると、シーケンスコントローラ制御部40は撮影条件設定部40から音響制御シーケンス、補正用シーケンスおよびイメージングシーケンスを含む撮影条件を取得してシーケンスコントローラ31に与える。シーケンスコントローラ31は、シーケンスコントローラ制御部41から受けた撮影条件に従って傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30を駆動させることにより被検体Pがセットされた撮像領域に傾斜磁場を形成させるとともに、RFコイル24からRF信号を発生させる。
【0078】
このため、被検体Pの内部における核磁気共鳴により生じたNMR信号が、RFコイル24により受信されて受信器30に与えられる。受信器30は、RFコイル24からNMR信号を受けて、所要の信号処理を実行した後、A/D変換することにより、デジタルデータのNMR信号である生データを生成する。受信器30は、生成した生データをシーケンスコントローラ31に与える。シーケンスコントローラ31は、生データをシーケンスコントローラ制御部41に与え、シーケンスコントローラ制御部41はk空間データベース42に形成されたk空間に生データをk空間データとして配置する。
【0079】
このようなスキャンにおいて、音響制御シーケンスの実行により音響が制御される。例えば、呼吸間隔にほぼ同期して音響が変化する。このため、呼吸が安定し、被検体Pの呼吸周期および呼吸レベルの変位が低減される。これにより、収集されるk空間データにおける位相や振幅の乱れが低減される。
【0080】
次に、ステップS3において、補正用データに基づくデータの動き補正および画像再構成が行われる。
【0081】
補正用データとしてk空間データを用いる場合には、データ補正部46がk空間データベース42に保存されている補正用データから被検体Pの前後方向における動き量に対応する位相差を補正係数として求め、求めた位相差がキャンセルされるようにイメージングシーケンスの実行によって収集されたイメージング用のk空間データの位相が補正係数によって補正される。位相補正されたk空間データは、再びk空間データベース42に書き込まれる。次に、画像再構成部43は、k空間データベース42から補正後のk空間データを取り込んで画像再構成処理を施すことにより画像データを再構成する。再構成して得られた画像データは、画像データベース44に書き込まれる。
【0082】
一方、補正用データとして低解像度の2次元の画像データを用いる場合には、画像再構成部43が、k空間データベース42から補正前のk空間データおよび補正用データとして収集されたk空間データを取り込んで画像再構成処理を施すことにより表示用および補正用の画像データを再構成する。再構成して得られた表示用および補正用の画像データは、画像データベース44に書き込まれる。次に、データ補正部46は、画像データベース44に保存されている補正用の画像データから被検体Pの前後方向における動き量に相当する位置ずれ量を補正係数として求め、求めた位置ずれ量がキャンセルされるように表示用の画像データの位置を補正係数を用いて補正する。補正後の画像データは、画像データベース44に書き込まれる。
【0083】
尚、例えば呼吸性の体動による変化が激しく画像データの生成に用いることが不適切なk空間データが存在する場合には、データ補正部46におけるエラーデータ除去処理によってk空間データを画像再構成に用いないようにすることもできる。
【0084】
次に、ステップS4において、動き補正後における画像データから2次元の表示用の画像データが作成され、表示装置34に表示される。すなわち、画像処理部45は、画像データベース44から動き補正後における画像データを取り込んで必要な画像処理を行って表示用の2次元の画像データを生成する。そして、生成された表示用の画像データが表示装置34に表示される。
【0085】
ここで、表示装置34に表示される画像データは、音響制御によって安定した呼吸下において収集されたデータから呼吸性の動き補正を伴って生成されたものであるため、呼吸性の体動に起因するアーチファクトが低減された画像データとなる。このため、ユーザは、アーチファクトが低減された診断画像に基づいて診断することが可能となる。
【0086】
つまり以上のような磁気共鳴イメージング装置20は、音響制御シーケンスや補正用シーケンスをイメージングシーケンスに先立って実行することによって、被検体Pの呼吸の安定化や収集データの動き補正を実行できるようにしたものである。尚、呼吸同期を伴わないイメージングにおいても音響制御シーケンスや補正用シーケンスを実行することができる。ただし、呼吸信号に応じて音響制御を行うことにより呼吸の安定化を向上させることが期待できる。また、呼吸同期下において補正データを収集することにより適切なタイミングで適切な呼吸信号レベルのときに補正用データおよびイメージング用のデータの収集を行うことができる。
【0087】
このため、磁気共鳴イメージング装置20では、息止め撮影に比べ長い時間の撮影が可能である。また、被検体Pの呼吸の安定化により、呼吸レベルや呼吸周期が一定となるため、動き補正を行うことによって、特にT1強調画像を撮影する場合において、より高分解能で高SNRの画像を得ることができる。
【0088】
尚、他のアーチファクトの低減技術を併用することも可能である。併用可能なアーチファクトの低減技術の例としてHIGH SORTと呼ばれる技術やLOW SORTと呼ばれる技術が挙げられる。これらの技術を併用することによって、呼吸性の体動に起因するアーチファクトの低減効果を一層向上させて高分解能で高SNRの画像を得ることが可能となる。
【0089】
図11は、
図1に示す磁気共鳴イメージング装置20において適用可能なHIGH SORTと呼ばれるアーチファクトの低減技術を説明する図である。
【0090】
図11に示すようにHIGH SORTは、呼吸周期により位相エンコード順序を並び変えることで、k空間上で呼吸周期を最大周波数に擬似的に割り当ててアーチファクトを低減する補正技術である。HIGH SORTを行う場合には、撮影条件設定部40においてデータ収集順序に応じたシーケンスが作成される。そして、k空間上においてデータの並べ替えが行われる。
【0091】
図12は、
図1に示す磁気共鳴イメージング装置20において適用可能なLOW SORTと呼ばれるアーチファクトの低減技術を説明する図である。
【0092】
図12に示すようにLOW SORTは、呼吸周期により位相エンコード順序を並び変えることで、k空間上で呼吸周期を最小周波数に擬似的に割り当ててアーチファクトを低減する補正技術である。LOW SORTを行う場合にも、撮影条件設定部40においてデータ収集順序に応じたシーケンスが作成される。そして、k空間上においてデータの並べ替えが行われる。