(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698814
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】射出成形機の制御方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20150319BHJP
B29C 45/46 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/46
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-192390(P2013-192390)
(22)【出願日】2013年9月17日
(65)【公開番号】特開2015-58593(P2015-58593A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2014年10月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】内山 辰宏
【審査官】
宮本 靖史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−059891(JP,A)
【文献】
特開平05−245893(JP,A)
【文献】
特開平04−065212(JP,A)
【文献】
特開昭63−288726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00 − 45/24
B29C 45/46 − 45/63
B29C 45/70 − 45/72
B29C 45/74 − 45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出開始位置からスクリュ又はプランジャを前進させ停止させると同時に射出圧力の印加を中止させたとき樹脂の流動先端がゲート部に到達していない位置であって、かつ、該位置まで射出開始位置よりスクリュ又はプランジャを前進させて停止させ、所定時間保持したあと射出圧力の印加を中止したとき樹脂の流動先端がゲート部に到達する位置をスクリュ又はプランジャの停止位置として求めておき、
スクリュ又はプランジャを前進させて金型内に溶融樹脂を射出する射出工程においては、スクリュ又はプランジャを射出開始位置から前進移動させ前記スクリュ又はプランジャの停止位置で停止させて保持し、所定時間経過したあと、スクリュ又はプランジャの前進移動を再開し射出動作を行うことを特徴とする射出成形機の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の射出成形機の制御方法において、樹脂の流動先端がゲート部に到達する位置を求める際に、スクリュ又はプランジャの前進を停止させ保持する前記所定時間を調整し、該所定時間内に樹脂の流動先端がゲート部に到達する時間で、かつ該所定時間内に樹脂が固化していない時間として求められたものである請求項1に記載の射出成形機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂を加熱シリンダ内に供給し、該加熱シリンダ内で供給された樹脂を溶融、計量し、該計量した溶融樹脂を型締装置に取り付けられた金型内に射出することで成形品を生産する射出成形機の制御方法に関し、特に射出工程において、加熱シリンダ内の溶融樹脂を金型内に射出するためのスクリュまたはプランジャの前進動作の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
射出工程において、ノズルから金型内に射出された溶融樹脂はスプルやランナといった樹脂通路を流れ最終的に製品部(成形品を直接形づくる部分のキャビティ)に到達する。そして、樹脂通路と製品部との間には、樹脂通路と製品部を分離するためのゲートが存在している。すなわち、ノズルから射出された溶融樹脂は、
図1に示されるようにスプル10、ランナ12、ゲート14を経てキャビティ(製品部)16に流れこむことになる。なお、スプル部とランナ部を総称して、以下ランナと呼ぶ。
【0003】
金型内の樹脂の通路には形状が異なる様々な部位が存在し、溶融樹脂は粘弾性体であるために、一定速度で樹脂を射出した場合でも、溶融樹脂圧力は金型内への樹脂の充填にしたがって一定に上昇するわけではなく、樹脂が通過する部位の形状によって、急に上昇したり、緩やかに上昇したりする。また、このような圧力の変化は、各部位を樹脂が通過する際の通過速度を変化させ、これが原因で成形不良を発生させる場合がある。
【0004】
溶融樹脂の流れた跡がゲートを中心として縞模様となって現れるフローマークという現象の成形不良や、ゲートからキャビティ内に射出された溶融樹脂が紐状のまま固化して、成形品の表面に蛇行状の模様を発生させるジェッティング等の成形不良は、溶融樹脂がゲートを通過してキャビティ(製品部)に流入する際に、流入速度が速すぎることが主な原因と考えられている。
【0005】
ジェッティングの成形不良を防止する方法として、ランナ内部での充填が完了した時点、すなわち、溶融樹脂の流動先端(射出され、金型内に流入する溶融樹脂の流れの先端)がゲート部に到達した時点でのプランジャの前進位置(設定位置)で、設定時間(0.1秒程度)だけプランジャの前進を停止させ、ランナ部でのピーク圧力の形成を阻止することによって、ジェッティングの発生を防止する方法が知られている(特許文献1参照)。
【0006】
また、この特許文献1に記載された方法では、成形サイクル毎にスクリュ位置や、射出シリンダ内の圧力にばらつきが生じやすいことから、精度の良い成形品を安定して成形することが困難であるとして、キャビティ内で樹脂が満杯になる手前より、スクリュの位置を維持し、キャビティ内を充満させた後、保圧工程に移行するようにした制御方法も提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−299850号公報
【特許文献2】特許第4537441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された方法は、ランナ内部が溶融樹脂で充填され、溶融樹脂の流動先端がゲート部に達した位置でプランジャを設定時間停止させることによって、ランナ内の溶融樹脂圧力を低下させるというものである。なお、射出動作で加熱シリンダ内の溶融樹脂を押し出す手段を、プランジャを含めて以下スクリュと称する。
図2は、この特許文献1に記載された従来技術の射出動作のスクリュ位置と溶融樹脂の流動先端位置の関係を説明する説明図である。横軸は時間、縦軸はスクリュ位置及びランナ内の樹脂の流通経路に沿った溶融樹脂の流動先端位置を表す。符号Pはスクリュの位置、RPはランナ内部の樹脂の流通経路に沿った溶融樹脂の流動先端の位置、P1は射出開始時のスクリュ位置で、RP1は射出開始位置での流動先端の位置を表す。P2はスクリュ前進停止位置、T1はスクリュ前進停止時点、T2はスクリュ前進再開時点、STはスクリュ前進停止時間、RP2はランナ内が溶融樹脂で充填され溶融樹脂の流動先端位置RPがゲート部への到達を示す位置、符号Aは、溶融樹脂がランナ部に流入している区間を示し、符号Bは、溶融樹脂がキャビティ(製品部)に流入している区間を示している。
【0009】
射出開始で、スクリュは射出開始位置P1から前進を開始する(スクリュストロークの原点は過熱シリンダ先端側に設定されている)。一方、ランナ内の樹脂は弾性等に起因して、スクリュの動作に対して遅れて動作を開始する。したがって、溶融樹脂の流動先端RPは少し遅れで移動を開始し、樹脂流通経路であるランナ内部に流入していく(区間A参照)、溶融樹脂がランナ内部での充填を完了し、溶融樹脂の先端がゲート部に到達した位置RP2の時点T1でスクリュ前進を停止させる。この時点T1でのスクリュ位置をP2で表す。すなわち、スクリュの前進を開始してから、時点T1でスクリュ前進を停止させたとき、スクリュの位置はP2であり、このとき、ランナ内は溶融樹脂で充填され、その流動先端位置RPはゲート部の位置RP2まで達している。時点T1でスクリュの前進動作を停止したとき、その時点では、ランナ内部を充填するのに必要な体積以上の樹脂が圧縮された状態でランナ内部が充填されている。
【0010】
スクリュの前進が停止することにより、ランナ内部の溶融樹脂に加わる圧力(加熱シリンダ内の樹脂を介してスクリュから加わる圧力)は減少し、ランナ内部の溶融樹脂への圧縮力が開放され低圧となるが、スクリュの前進が停止した直後はランナ内部の溶融樹脂の圧力は高圧な状態である。そして、ランナ内部空間はゲートを介してキャビティ(製品部)に連通していることから、圧縮力が開放されて溶融樹脂の体積は、ゲート部を通過しキャビティ(製品部)へと増加する。この体積が増加してゲートを通過する溶融樹脂は、高速でキャビティ(製品部)に流入することになる。
図2において符号Bで示す区間は、圧縮された溶融樹脂が膨張しキャビティ(製品部)内に流入している状態を示している。このようにスクリュの前進移動が停止している間に、溶融樹脂がキャビティ(製品部)内に高速で流入することになる。その後、設定されたスクリュ前進停止時間STが経過した時点T2よりスクリュ前進が開始され、射出動作が再開されることになる。
【0011】
ゲート部を通過してキャビティ(製品部)に流入する樹脂の速度は、この特許文献1に記載された従来技術の方法と、この従来技術を用いずに、設定位置でスクリュの前進を設定時間停止して射出を行わずランナ部からキャビティへ連続的に樹脂を射出する場合と比較すれば、特許文献1に記載された従来技術の方法の方が、キャビティ(製品部)への樹脂の流入速度を低く抑えることができるが、高速で樹脂をキャビティ(製品部)に流入することを防止するという課題を完全に解決してはいなかった。
【0012】
そこで、本願発明は、ランナからキャビティ(製品部)内に溶融樹脂が流入する際、溶融樹脂が必要以上に高速で流入しないように制御することによって、フローマークやジェッティング等の成形不良の発生を防止できる射出成形機の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願の請求項1に係る発明は、
射出開始位置からスクリュ又はプランジャを前進させ停止させると同時に射出圧力の印加を中止させたとき樹脂の流動先端がゲート部に到達していない位置であって、かつ、該位置まで射出開始位置よりスクリュ又はプランジャを前進させて停止させ、所定時間保持したあと射出圧力の印加を中止したとき樹脂の流動先端がゲート部に到達する位置をスクリュ又はプランジャの停止位置として求めておき、スクリュ又はプランジャを前進させて金型内に溶融樹脂を射出する射出工程において
は、スクリュ又はプランジャを射出開始位置から前進移動させ前記スクリュ又はプランジャの停止位置で停止させて保持し、所定時間経過したあと、スクリュ又はプランジャの前進移動を再開し射出動作を行うことを特徴とする射出成形機の制御方法である。
【0014】
請求項2に係る発明
は、スクリュ又はプランジャの前進を停止させ保持する前記所定時間を調整して求めるようにしたもので、請求項
1に記載の射出成形機の制御方法において、樹脂の流動先端がゲート部に到達する位置を求める際に、スクリュ又はプランジャの前進を停止させ保持する前記所定時間を調整し、該所定時間内に樹脂の流動先端がゲート部に到達する時間で、かつ該所定時間内に樹脂が固化していない時間として求めるものとした。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、射出中の溶融樹脂の流動先端がゲート部に到達する直前の位置でスクリュ又はプランジャの前進移動を停止し、この停止期間中にランナ内の圧縮された樹脂が膨張し、その流動先端がゲート部に到達した状態でスクリュ又はプランジャの前進移動を再開し射出工程を実行するようにしたから、樹脂の内部圧力を低減した状態で、スクリュ又はプランジャの移動を再開するので、樹脂がキャビティ(製品部)に高速で流入することを防止できる。これによって、フローマークやジェッティング等の成形不良の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】金型におけるスプル、ランナ、ゲート及びキャビティ(製品部)の関係を説明する説明図である。
【
図2】従来技術の射出動作でのスクリュ(プランジャ)位置と溶融樹脂の流動先端位置の関係を説明する説明図である。
【
図3】本発明の一実施形態の射出動作でのスクリュ(プランジャ)位置と溶融樹脂の流動先端位置の関係を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
図3は、本実施形態での射出動作におけるスクリュ位置と溶融樹脂の流動先端位置の関係を説明する説明図である。横軸は時間、縦軸はスクリュ位置及びランナ内の樹脂の流通経路に沿った溶融樹脂の流動先端位置を表す。符号Pはスクリュの位置、RPはランナ内部の樹脂の流通経路に沿った溶融樹脂の流動先端の位置、P1は射出開始時のスクリュ位置で、RP1は射出開始位置での樹脂の流動先端の位置を表す。P3はスクリュ前進停止位置、T1はスクリュ前進停止時点、T2はスクリュ前進再開時点、STはスクリュ前進停止時間、RP2はランナ内が溶融樹脂で充填され溶融樹脂の流動先端位置RPがゲート部への到達を示す位置、RP3は溶融樹脂の流動先端位置RPがゲート部の手前まで到達した位置を表す。符号Aは、溶融樹脂がランナ部に流入している区間を示している。
【0018】
この
図3の説明図を参照しながら、本実施形態での射出工程での射出成形機の制御方法を以下に説明する。
射出開始で、スクリュは射出開始位置P1から前進を開始する(ストロークの原点は過熱シリンダ先端側に設定されている)。一方、ランナ内の樹脂は弾性等に起因して、スクリュの動作に対して遅れて動作を開始する。したがって、溶融樹脂の流動先端(位置RP)は少し遅れで移動を開始し、樹脂流通経路であるランナ内部に流入していく(区間A参照)。溶融樹脂の流動先端位置RPがゲート部まで到達しない少し手前の位置RP3に到達した時点T1でスクリュ前進を停止させ保持する。この時点T1でのスクリュ位置をP3で表す。スクリュの前進を開始してから、時点T1でスクリュ前進を停止させたとき、スクリュの位置はP3であり、このとき、ランナ内は溶融樹脂の流動先端位置RPはゲート部に到達する手前の位置RP3である。スクリュ前進中、溶融樹脂には射出圧力が印加され、圧縮された状態であるが、スクリュの前進移動が停止して射出圧力の印加が停止されると溶融樹脂の体積は膨張し、
図3で符号Cで示すように、スクリュが停止しているにもかかわらず、溶融樹脂の流動先端位置RPは移動しゲート部に到達することになる。その後、設定されたスクリュ前進停止時間ST経過後、スクリュの前進移動を再開して射出動作を行う。
【0019】
このように、本実施形態では、スクリュの前進移動を開始しても溶融樹脂の流動先端がゲート部の手前RP3に到達した時点T1(スクリュ前進停止位置P3)で、スクリュの前進を設定されたスクリュ前進停止時間STだけ停止し保持し、このスクリュ移動停止中に、溶融樹脂は膨張して体積を増加して流動先端がゲート部の位置RP2に達するようにしている。そのため、溶融樹脂が高速でキャビティ(製品部)内に流入することはないことから、フローマークやジェッティングなどの成形不良の発生を防止することができる。
【0020】
次に、溶融樹脂の流動先端位置RPがゲート部の手前の位置RP3に到達するスクリュの前進停止位置P3を求める方法を説明する。
スクリュの前進を射出の途中で停止させ、その後スクリュ前進を再開しないようにして成形品を金型内から取り出す成形方法、いわゆるショートカット法を利用することによりスクリュの前進停止位置P3を求める。この方法は、以下のような工程を実施して溶融樹脂がゲート部の手前の位置RP3に到達するスクリュの前進停止位置P3を求める。
1.射出開始位置よりスクリュを前進移動させ射出動作を開始する。
2.スクリュの前進移動を停止させると同時に射出圧力の印加を中止する(たとえば、所定量スクリュを後退させる等によって印加を中止する)。
3.冷却し型開きを行う。
4.成形品を金型から取り出し、目視して樹脂の流動先端がゲート部の直前の位置(RP3)に到達しているか検査する。
5.工程2のスクリュ前進停止位置を調整変更しながら、上記1〜4の工程を繰り返し行い、樹脂の流動先端がゲート部の直前の位置(RP3)に到達している成形品を求める。
該成形品を成形したときの工程2でのスクリュの前進停止位置を、仮のスクリュ前進停止位置P3(
図3における位置P3)とする。
6.射出開始位置よりスクリュを前進移動させ射出動作を開始し、上記求める仮のスクリュ前進停止位置P3までスクリュを前進させて停止する。
7.所定時間スクリュの移動を停止し保持する。
8.射出圧力の印加を中止する(たとえば、所定量スクリュを後退させる等によって印加を中止する)。
9.冷却し型開きを行う。
10.成形品を金型から取り出し、目視して樹脂の流動先端がゲート部(
図3におけるRP2)に到達しているか検査する。
11.工程7の所定時間を調整変更しながら上記6〜10の工程を繰り返し行い、樹脂の流動先端がゲート部位置(RP2)に到達している成形品を求め、該成形品を成形したときの工程
7で設定した所定時間をスクリュ前進停止時間STとする。ただし、工程6〜11を実施し、樹脂の流動先端がゲート部位置(RP2)に到達せず、さらにスクリュ前進停止時間STを長くしても樹脂の流動先端位置の変化がないような場合は、工程1〜5で求めた仮のスクリュ前進停止位置P3が適正でなかったことを意味するので、スクリュ前進停止位置P3を少し前進させた位置とする。この場合、再度上記1〜11の工程を実施して、工程1〜5の実施で、スクリュ停止位置を少し前進させて樹脂の流動先端がゲート部の直前の位置(RP3)に到達しているスクリュの前進停止位置を求め、かつ、工程6〜11の実施で、このスクリュ前進停止位置で、樹脂の流動先端がゲート部位置(RP2)に到達するようになるスクリュ前進停止位置P3及びスクリュ前進停止時間STを求める。
また、工程6〜11を実施し、樹脂がキャビティまで流入しているような場合には、工程1〜5で求めた仮のスクリュ前進停止位置P3がゲート部に近すぎることを意味するので、スクリュ前進停止位置P3を少し後退させて工程1〜11を実施して、スクリュの前進停止位置P3、スクリュ前進停止時間STを求める。
【0021】
工程1〜5では、スクリュ前進停止位置P3までスクリュを前進させ、移動を停止させると同時に射出圧力の印加を停止(スクリュを後退)させて、樹脂の流動先端がゲート部の直前の位置(RP3)に到達する状態とした。一方、工程6〜11では、スクリュ前進停止位置P3までスクリュを前進させて停止させたあと、射出圧力の印加を中止する(スクリュを後退させる)ことなく、所定時間スクリュを停止保持した。スクリュ前進停止位置P3が同じでも、射出圧力の印加を中止させるか否か(スクリュを後退させるか否か)によって、樹脂の流動先端の位置は変化し、射出圧力の印加が中止された状態では樹脂の流動先端はゲート部まで到達しないものが、射出圧力が印加されている状態では、樹脂の流動先端はゲート部に到達するようなスクリュ前進停止位置P3を求める。スクリュの前進移動を停止しているが射出圧力が印加されている状態で、樹脂の膨張で樹脂の流動先端がゲート部直前からゲート部に達するまで移動させることによって、溶融樹脂の圧縮を解除し、樹脂がキャビティ(製品部)に高速で流入することを防止するものである。
【0022】
こうして求められたスクリュ前進停止位置P3、スクリュ前進停止時間STを設定して射出工程の射出動作を制御する。まずスクリュを前進させて射出工程の動作を開始し、設定されたスクリュ前進停止位置P3でスクリュの前進動作を停止し、その位置を保持し、設定されたスクリュ前進停止時間STが経過したあとスクリュの前進動作を再開し、以後通常の射出動作を実行する。この際、スクリュの前進動作を再開するとき、スクリュの前進動作が困難なときは、樹脂の流動先端がゲート部まで到達しているが固化が生じているものと判断され、このときは、スクリュ前進停止時間STを短くする等の調整を行う。このスクリュ前進停止時間STを短く設定していき、射出動作を行ったとき、スクリュの前進移動を設定時間だけ停止したあとスクリュの前進動作が困難なく再開できるスクリュ前進停止時間STを求める。
【0023】
本実施形態では、工程6〜11を実施することでスクリュ前進停止時間STを求めたが、スクリュ停止時間は樹脂の特性からある程度見当がつくことから、このスクリュ停止時間は、所定の時間を設定し、工程11は省略し、工程10で、樹脂の流動先端がゲート部に到達しているか検査し、到達していないような場合には、スクリュ前進停止位置を変えて(少し前進させた位置)工程1〜10を実行し、スクリュの前進を停止したときは、樹脂の流動先端がゲート部の直前にあり、スクリュ前進停止中に樹脂の流動先端がゲート部に到達しているスクリュ前進停止位置を求める。
【0024】
通常の成形品を成形するときには、こうして求められたスクリュ前進停止位置P3、スクリュ前進停止時間STを用いて射出工程の射出動作を制御する。すなわち、射出工程時には、スクリュの前進移動を開始した後、設定されたスクリュ前進停止位置P3でスクリュの移動を停止しその位置を保持し、設定されたスクリュ前進停止時間STだけ経過したあと、スクリュの前進移動を開始させ、通常の射出動作制御を行うものである。
【符号の説明】
【0025】
10 スプル
12 ランナ
14 ゲート
16 キャビティ(製品部)
P スクリュの位置
P1 射出開始時のスクリュ位置
P2 スクリュ前進停止位置
P3 スクリュ前進停止位置
RP ランナ内部の樹脂の流通経路に沿った溶融樹脂の流動先端位置
RP1 射出開始位置での樹脂の流動先端位置
RP2 ゲート部へ到達した樹脂の流動先端位置、
RP3 ゲート部の手前まで到達している樹脂の流動先端位置
T1 スクリュ前進停止時点
T2 スクリュ前進再開時点
ST スクリュ前進停止時間
A 溶融樹脂がランナ部に流入している区間
B 溶融樹脂がキャビティ(製品部)に流入している区間