特許第5698819号(P5698819)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698819
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】同期検定方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/18 20060101AFI20150319BHJP
   H02J 3/08 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   G01R29/18 N
   H02J3/08
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-216214(P2013-216214)
(22)【出願日】2013年10月17日
(62)【分割の表示】特願2010-13527(P2010-13527)の分割
【原出願日】2010年1月25日
(65)【公開番号】特開2014-16368(P2014-16368A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2013年10月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000103976
【氏名又は名称】オリジン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】大島 正明
(72)【発明者】
【氏名】宇敷 修一
(72)【発明者】
【氏名】趙 晋斌
【審査官】 續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5394945(JP,B2)
【文献】 特開昭52−040174(JP,A)
【文献】 特開昭53−088940(JP,A)
【文献】 特開昭52−012445(JP,A)
【文献】 特開平01−291666(JP,A)
【文献】 特開平04−185232(JP,A)
【文献】 特開平04−190633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 29/18
H02J 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律平行運転を行うインバータを電力系統に同期させるときに、前記インバータを検定元単相交流電圧源、前記電力系統を検定対象単相交流電圧源として、
前記検定対象単相交流電圧源の検定対象電圧波形を検出するサンプリング手順と、
前記サンプリング手順で検出した前記検定対象電圧波形から(m−1)π/ωcoより大きくmπ/ωcoより小さい(mは自然数、ωcoは規準角周波数)時間を遅らせた遅延電圧波形を作成する遅延手順と、
前記サンプリング手順で検出した前記検定対象電圧波形、前記遅延手順で作成した前記遅延電圧波形、及び与えられた前記検定元単相交流電圧源の検定元角周波数、から前記検定対象電圧波形の検定対象角周波数と前記検定元角周波数との差分を角周波数とする周波数差余弦信号及び周波数差正弦信号を計算する演算手順と、
を行う同期検定方法。
【請求項2】
検定対象単相交流電圧源の検定対象電圧波形を検出するサンプリング手順と、
前記サンプリング手順で検出した前記検定対象電圧波形から(m−1)π/ωcoより大きくmπ/ωcoより小さい(mは自然数、ωcoは規準角周波数)時間を遅らせた遅延電圧波形を作成する遅延手順と、
前記サンプリング手順で検出した前記検定対象電圧波形、前記遅延手順で作成した前記遅延電圧波形、及び与えられた検定元単相交流電圧源の検定元角周波数、から前記検定対象電圧波形の検定対象角周波数と前記検定元角周波数との差分を角周波数とする周波数差余弦信号及び周波数差正弦信号を計算する演算手順と、
を行う同期検定方法であって、
前記与えられた前記検定元単相交流電圧源の検定元角周波数が、無負荷独立運転を行っている前記検定元単相交流電圧源の出力端子電圧の角周波数であることを特徴とする同期検定方法。
【請求項3】
検定元単相交流電圧源の検定元角周波数を検出して規準角周波数ωcoとする規準角周波数取得手順と、
検定対象単相交流電圧源の検定対象電圧波形を検出するサンプリング手順と、
前記サンプリング手順で検出した前記検定対象電圧波形から(m−1)π/ωcoより大きくmπ/ωcoより小さい(mは自然数)時間を遅らせた遅延電圧波形を作成する遅延手順と、
前記サンプリング手順で検出した前記検定対象電圧波形、前記遅延手順で作成した前記遅延電圧波形、及び前記規準角周波数取得手順で検出した前記検定元単相交流電圧源の検定元角周波数、から前記検定対象電圧波形の検定対象角周波数と前記検定元角周波数との差分を角周波数とする周波数差余弦信号及び周波数差正弦信号を計算する演算手順と、
を行う同期検定方法。
【請求項4】
前記遅延手順で、前記遅延電圧波形を前記検定対象電圧波形から(m−1/2)π/ωco時間遅らせることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の同期検定方法。
【請求項5】
前記演算手順で、数1の演算を行うことを特徴とする請求項に記載の同期検定方法。
【数1】
また、ωは規準角周波数ωcoの75%から125%の範囲にある。
【請求項6】
前記演算手順で演算する前記周波数差余弦信号及び前記周波数差正弦信号の高周波成分を除去する高周波成分除去手順をさらに行うことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の同期検定方法。
【請求項7】
前記演算手順で演算する前記周波数差余弦信号及び前記周波数差正弦信号から、前記検定対象電圧波形の電圧実効値、前記検定対象角周波数と前記検定元角周波数との周波数差、及び前記検定対象電圧波形と前記検定元単相交流電圧波形との位相差を検出する検出手順をさらに行うことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の同期検定方法。
【請求項8】
前記検出手順で検出した前記電圧実効値、前記周波数差、及び位相差の情報を前記検定元単相交流電圧源へ通知する通知手順をさらに行うことを特徴とする請求項7に記載の同期検定方法。
【請求項9】
前記検出手順で、前記電圧実効値V、前記周波数差ω−ω、及び前記位相差φをそれぞれ数2、数3、及び数4で検出することを特徴とする請求項7又は8に記載の同期検定方法。
【数2】
ここで、Vsは前記電圧実効値である。
【数3】
ここで、ωは前記検定対象角周波数である。
【数4】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同期相手の単相交流電圧源の電圧振幅、自電源との周波数差及び自電源との位相差を検出する同期検定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの単相交流電圧源を同期させるためには、同期相手の単相交流電圧源の電圧振幅、自電源との周波数差及び自電源との位相差を検出する必要がある。これらを検出する図4の技術が知られている。
【0003】
この技術は、それぞれの単相交流電圧源に対して、電圧を一定周期ごとにサンプリングし、その1サンプル当たりの変化分(微分値に相当)とその変化分の1サンプル当たりの変化分(2次微分に相当)を計算する。そして導かれた値から、電圧振幅、周波数、及び位相を求めた後、差分を計算している(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭52−40174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載される技術は、サンプル電圧値を微分するので、電圧波形に含まれる高調波成分による影響を受け易いという課題があった。さらに周波数の検出に交流値を分母とする割り算を用いているため、ゼロで割る場合に不安定になるという課題があった。
【0006】
そこで、前記課題を解決するために、本発明は、高調波成分による影響を受け難く、不安定になり難い同期検定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る同期検定方法は、検定対象とする単相交流電圧源の電圧波形と同期検定装置の規準角周波数ωcoを利用して検定対象電圧波形を所定時間を遅らせた遅延電圧波形を作成し、サンプラーが検出した検定対象電圧波形と遅延電圧波形とから、周波数差余弦信号及び周波数差正弦信号を計算することとした。以下の説明において、検定対象単相交流電圧源の単相交流電圧波形を「検定対象電圧波形」、検定元となる単相交流電圧源の単相交流電圧波形を「検定元電圧波形」と記載する。
【0008】
具体的には、本発明に係る第1の同期検定方法は、自律平行運転を行うインバータを電力系統に同期させるときに、前記インバータを検定元単相交流電圧源、前記電力系統を検定対象単相交流電圧源として、前記検定対象単相交流電圧源の検定対象電圧波形を検出するサンプリング手順と、前記サンプリング手順で検出した前記検定対象電圧波形から(m−1)π/ωcoより大きくmπ/ωcoより小さい(mは自然数、ωcoは規準角周波数)時間を遅らせた遅延電圧波形を作成する遅延手順と、前記サンプリング手順で検出した前記検定対象電圧波形、前記遅延手順で作成した前記遅延電圧波形、及び与えられた前記検定元単相交流電圧源の検定元角周波数、から前記検定対象電圧波形の検定対象角周波数と前記検定元角周波数との差分を角周波数とする周波数差余弦信号及び周波数差正弦信号を計算する演算手順と、を行う。
また、本発明に係る第2の同期検定方法は、検定対象単相交流電圧源の検定対象電圧波形を検出するサンプリング手順と、前記サンプリング手順で検出した前記検定対象電圧波形から(m−1)π/ωcoより大きくmπ/ωcoより小さい(mは自然数、ωcoは規準角周波数)時間を遅らせた遅延電圧波形を作成する遅延手順と、前記サンプリング手順で検出した前記検定対象電圧波形、前記遅延手順で作成した前記遅延電圧波形、及び与えられた検定元単相交流電圧源の検定元角周波数、から前記検定対象電圧波形の検定対象角周波数と前記検定元角周波数との差分を角周波数とする周波数差余弦信号及び周波数差正弦信号を計算する演算手順と、を行う同期検定方法であって、前記与えられた前記検定元単相交流電圧源の検定元角周波数が、無負荷独立運転を行っている前記検定元単相交流電圧源の出力端子電圧の角周波数であることを特徴とする。
さらに、本発明に係る第3の同期検定方法は、検定元単相交流電圧源の検定元角周波数を検出して規準角周波数ωcoとする規準角周波数取得手順と、検定対象単相交流電圧源の検定対象電圧波形を検出するサンプリング手順と、前記サンプリング手順で検出した前記検定対象電圧波形から(m−1)π/ωcoより大きくmπ/ωcoより小さい(mは自然数)時間を遅らせた遅延電圧波形を作成する遅延手順と、前記サンプリング手順で検出した前記検定対象電圧波形、前記遅延手順で作成した前記遅延電圧波形、及び前記規準角周波数取得手順で検出した前記検定元単相交流電圧源の検定元角周波数、から前記検定対象電圧波形の検定対象角周波数と前記検定元角周波数との差分を角周波数とする周波数差余弦信号及び周波数差正弦信号を計算する演算手順と、を行う。
【0009】
周波数差余弦信号は、位相差の余弦と検定対象電圧振幅との積であり、周波数差正弦信号は、位相差の正弦と検定対象電圧振幅との積である。この2値を利用して検定対象電圧波形の電圧振幅、検定元電圧波形との周波数差、及び検定元電圧波形との位相差を算出することができる。本発明に係る同期検定方法は、単相交流電圧を直接微分せず、かつ、検定対象電圧波形の実効値がゼロでない限り、ゼロで割ることがない。このため、本発明は、高調波成分による影響を受け難く、不安定になり難い同期検定方法を提供することができる。
【0010】
本発明に係る同期検定方法は、前記遅延手順で、前記遅延電圧波形を前記検定対象電圧波形から(m−1/2)π/ωco時間遅らせることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る同期検定方法は、前記演算手順で数1の演算を行うことを特徴とする。
【数1】
また、ωは規準角周波数ωcoの75%から125%の範囲にある。
【0012】
本発明に係る同期検定方法は、前記演算手順で演算する前記周波数差余弦信号及び前記周波数差正弦信号の高周波成分を除去する高周波成分除去手順をさらに行うことが好ましい。前記周波数差余弦信号及び前記周波数差正弦信号の高周波成分を除去することで、より安定して検定対象電圧波形の電圧振幅、検定元電圧波形との周波数差、及び検定元電圧波形との位相差を算出することができる。
【0013】
本発明に係る同期検定方法は、前記演算手順で演算する前記周波数差余弦信号及び前記周波数差正弦信号から、前記検定対象電圧波形の電圧実効値、前記検定対象角周波数と前記検定元角周波数との周波数差、及び前記検定対象電圧波形と前記検定元単相交流電圧波形との位相差を検出する検出手順をさらに行うことを特徴とする。検出手順により検定対象電圧波形の電圧振幅、検定元電圧波形との周波数差、及び検定元電圧波形との位相差を出力することができる。
本発明に係る同期検定方法は、前記検出手順で検出した前記電圧実効値、前記周波数差、及び位相差の情報を前記検定元単相交流電圧源へ通知する通知手順をさらに行ってもよい。
【0014】
本発明に係る同期検定方法は、前記検出手順で、前記電圧実効値V、前記周波数差ω−ω、及び前記位相差φをそれぞれ数2、数3、及び数4で検出する。
【数2】
ここで、Vsは前記電圧実効値である。
【数3】
ここで、ωは前記検定対象角周波数である。
【数4】
【発明の効果】
【0015】
本発明は、高調波成分による影響を受け難く、不安定になり難い同期検定方法を提供することができる。また、本発明に係る同期検定方法は、検定対象電圧波形をサンプリングしているので、検定元単相交流電圧源がデジタル制御電源である場合には特に、適用が容易である。さらに、本発明に係る同期検定方法は、図4のように検定元電圧波形と検定対象電圧波形の双方に電圧実効値、周波数及び位相を検出する検出部を設ける必要が無く、実装が容易である。また、本発明に係る同期検定方法は、高周波成分除去手順で高周波成分の影響を除去でき、動作を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】検定元単相交流電圧源と検定対象交流電圧源との間で行う同期検定について説明する図である。
図2】本発明に係る同期検定方法を実現する同期検定装置を説明する図である。
図3】本発明に係る同期検定方法での同期検定動作をシミュレートした結果である。
図4】従来の同期検定装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0018】
まず、同期検定の原理について説明する。図1は、検定元単相交流電圧源11と検定対象交流電圧源12との間で行う同期検定について説明する図である。検定元単相交流電圧源11は、例えば、自律平行運転(APRun)を行うインバータなど、同期検定装置を内蔵する単相交流電源である。検定対象単相交流電圧源12は、例えば、並列相手の電力系統や外部交流電源である。検定元単相交流電圧源11が無負荷独立運転を行っているとき、その出力端子電圧Vfil(t)は、次式で表せる。
【数5】
ここで、Vは検定元単相交流電圧源11の電圧の実効値である。
【0019】
一方、検定対象の単相交流電圧源12の電圧Vsys(t)は、次式で表すことができる。
【数6】
ここで、Vは実効値[V]、ωは角周波数[rad/s]、φはインバータから見た外部交流電源のt=0での位相角[rad]である。
【0020】
このVsys(t)に対してπ/(2ωco)[s]だけ遅れた波形Vsys(t)を考える。ここで、ωcoは同期検定装置の規準角周波数[rad/s]である。ωcoはωに一致するとは限らないため、Vsys(t)はVsys(t)に対して正確にπ/2だけ遅れるとは限らない。
【数7】
sys(t)は次のように変形される。
【数8】
【0021】
ここで、Vsys(t)及びVsys(t)を検定元単相交流電圧源の位相角θ(=ωt)を用いて、次のように回転座標変換する。この回転座標変換は、Vsys(t)をθの逆向きに回転させている。

【数9】
数9で得られるV(t)及びV(t)をそれぞれ周波数差余弦信号及び周波数差正弦信号と呼ぶ。
【0022】
まず、周波数差余弦信号V(t)を検討する。
【数10】
【0023】
数10の第2項は、次のように変形できる。
【数11】
数11には、検定元単相交流電圧源の周波数と検定対象単相交流電圧源の周波数との和と差の周波数成分があり、その振幅は共に、
【数12】
である。この振幅は、検定対象単相交流電圧源の周波数が同期検定装置の規準周波数に近ければ小さい。例えば、前者が51Hz、後者が50Hzならば数12の値は0.0157Vs[V]である。
【0024】
数11の波形をローパスフィルタで、ほぼ2倍周波数である和の周波数成分を除去すると、
【数13】
となる。従って、V(t)の和周波数成分を除去した波形をVU3(t)とすると、
【数14】
となる。
【0025】
数14からVU3(t)は、振幅がV・cos(π(ωco−ω)/(4ωco))、周波数が検定対象単相交流電圧源と同期検定装置規準周波数との差の周波数、初期位相(t=0での位相)がφ+(π(ωco−ω)/(4ωco))である余弦波となる。一例として、ωco=100π[rad/s](50Hz)、ω=102π[rad/s](51Hz)の場合、振幅は、0・99988Vs[V]、周波数は1Hz、初期位相はφ+0.9[deg]である。
【0026】
ωがωcoに近いならば、VU3(t)は次の値に略等しくなる。
【数15】
【0027】
次に、周波数差正弦信号V(t)を検討する。
【数16】
【0028】
数16の第2項は、次のように変形できる。
【数17】
数17には、検定元単相交流電圧源の周波数と検定対象単相交流電圧源の周波数との和と差の周波数成分があり、その振幅は共に、
【数18】
である。この振幅は数12の周波数差余弦信号V(t)の振幅と等しくなる。
【0029】
数17の波形をローパスフィルタで、ほぼ2倍周波数である和の周波数成分を除去すると、
【数19】
となる。従って、V(t)の和周波数成分を除去した波形をVU4(t)とすると、
【数20】
となる。
【0030】
数20からVU4(t)はVU3(t)と同様に、振幅がV・cos(π(ωco−ω)/(4ωco))、周波数が検定対象単相交流電圧源と検定元単相交流電圧源との差の周波数、初期位相(t=0での位相)がφ+(π(ωco−ω)/(4ωco))である正弦波となる。
【0031】
ωがωcoに近いならば、VU4(t)は次の値に略等しくなる。
【数21】
【0032】
続いて、周波数差余弦信号VU3(t)及び周波数差正弦信号VU4(t)を用いて、検定対象単相交流電圧源と検定元単相交流電圧源との同期を検定する方法を説明する。{VU3(t)}+{VU3(t)}を計算すると数14及び数20から
【数22】
となる。例えば、同期検定装置規準周波数が50Hz、検定対象単相交流電源の周波数が49Hzとすると、
【数23】
である。通常、商用電源の周波数変動範囲は±0.2Hz程度であるので、検定対象単相交流電源の電圧の大きさを充分正確に検出できる。
【0033】
次に、周波数差の検出について説明する。数24を計算する。
【数24】
数24を数22で割ることで周波数差を求めることができる。
【数25】
【0034】
さらに具体的に説明する。図2は、本実施形態の同期検定方法を実現する同期検定装置130を説明する図である。同期検定装置130は、規準角周波数ωcoと、検定対象単相交流電圧源12の検定対象電圧波形を検出するサンプラー133と、サンプラー133が検出した前記検定対象電圧波形から(m−1/2)π/ωco(mは自然数)時間を遅らせた遅延電圧波形を作成する遅延回路134と、サンプラー133が検出した前記検定対象電圧波形、遅延回路134が作成した前記遅延電圧波形、及び与えられた検定元単相交流電圧源11の検定元角周波数ω、から前記検定対象電圧波形の検定対象角周波数ωと検定元角周波数ωとの差分を角周波数とする周波数差余弦信号及び周波数差正弦信号を計算する演算部135と、を備える。
【0035】
本実施形態では、同期検定装置130が規準角周波数ωcoを備えているが、検定元の単相交流電圧源11から受けてもよい。この場合には、単相交流電圧源11の検定元電圧波形V(t)は、次式で表すことができる。
【数26】
【0036】
また、検定対象となる単相交流電圧源12の検定対象電圧波形V(t)は次式で表すことができる。
【数27】
サンプラー133は、この検定対象電圧波形V(t)をサンプリングする。ここで、検定対象電圧波形V(t)をサンプリングしたサンプル波形をV(nTs)と表す。Tsはサンプル周期であり、nはサンプル番号である。
【0037】
遅延回路134は、規準角周波数ωcoが入力され、サンプル波形V(nTs)から(m−1/2)π/ωco(mは自然数)周期で遅らせた遅延電圧波形V(nTs)を作成する。
【0038】
遅延電圧波形V(nTs)の遅れ量を、(m−1/2)π/ωcoと表すことができる。本実施形態では、m=1の場合(1/4周期遅らせた場合)を説明する。この場合、遅延電圧波形V(nTs)は次式となる。
【数28】
【0039】
演算部135は、単相交流電圧源11から検定元角周波数ωが入力される。演算部135は、サンプル波形V(nTs)、遅延電圧波形V(nTs)が入力され、検定元角周波数ωと単相交流電圧源12の検定対象角周波数ωとの差を角周波数とする周波数差余弦信号V(nTs)及び周波数差正弦信号V(nTs)を演算する。
【0040】
具体的には、演算部135は、数1のようにサンプル波形V(nTs)及び遅延電圧波形V(nTs)を回転座標変換を行い周波数差余弦信号V(nTs)及び周波数差正弦信号V(nTs)を演算する。
【0041】
演算部135が演算すると、周波数差余弦信号V(nTs)及び周波数差正弦信号V(nTs)に(ω+ω)の周波数の高周波成分が含まれる。そこで、演算部135は、高周波成分を除去するローパスフィルタ(152A、152B)をさらに備える。ローパスフィルタ(152A、152B)で高周波成分を除去した周波数差余弦信号及び周波数差正弦信号をそれぞれVU3(nTs)及びVU4(nTs)と記す。
【数29】
【0042】
同期検定装置130は、検出部136をさらに備える。検出部136は、演算部135が出力する周波数差余弦信号VU3(nTs)及び周波数差正弦信号VU4(nTs)を利用して、検定対象電圧波形V(t)の電圧実効値、検定対象電圧波形V(t)の検定対象角周波数ωと検定元角周波数ωとの周波数差、及び検定対象電圧波形V(t)と検定元電圧波形V(t)との位相差を検出することができる。
【0043】
具体的には、検出部136は、電圧実効値、周波数差、及び位相差をそれぞれ数2を計算する回路161、数3を計算する回路162、及び数4を計算する回路163で検出する。同期検定装置130は、検出した電圧実効値、周波数差、及び位相差の情報を単相交流電圧源11に入力してもよい。単相交流電圧源11は、これらの情報に基づいて検定元電圧波形V1(t)の電圧振幅値V、検定元角周波数ω、及び位相を単相交流電圧源12の電圧振幅値V、検定対象角周波数ω、及び位相φに一致させることができる。従って、同期検定装置130を用いることで単相交流電圧源11を単相交流電圧源12に同期させ、単相交流電圧源12に接続することができる。
【0044】
本実施形態の説明では、同期検定装置130が単相交流電圧源11の外部にあるとして説明したが、単相交流電圧源11が同期検定装置130を内蔵していてもよい。
【0045】
また、本実施形態の説明では、遅延回路134の遅れ時間を(m−1/2)π/ωcoとしたが、m周期と(m−1/2)周期とを除く任意の周期で遅らせた場合でも同様の効果を得ることができる。具体的には、遅延回路134は(2m−1)/2周期とm周期を除く周期でサンプル波形V(nTs)を遅らせて遅延電圧波形V(nTs)を生成する。例えば、遅延電圧波形V(nTs)を1/6周期、2/6周期、4/6周期、5/6周期、・・・、p/6周期(pは3の倍数ではない自然数)で遅らせることができる。また、遅延電圧波形V(nTs)を1/4周期、3/4周期、・・・、q/4周期(ただし、qは奇数)で遅らせることができる。
【0046】
さらに、数1の行列の係数を1/√2としたが、ゼロ以外の任意の値としても構わない。
【0047】
(実施例)
図3は、同期検定装置130が、単相交流電圧源12の電圧振幅V、単相交流電圧源11と単相交流電圧源12との周波数差及び位相差を検出する様子をシミュレートした結果である。同期検定装置の規準周波数を50Hz(ωco=100πrad/s)とした。単相交流電圧源11は、220V、52Hzで運転しているものとする。単相交流電圧源12は、180V(Vs)、48Hz(ωco=96πrad/s)で運転しているものとする。
【0048】
単相交流電圧源12の検定対象電圧波形V(t)およびその0.25サイクル遅れの遅延電圧波形V(t)から作成される周波数差余弦信号VU3(nTs)およびVU4(nTs)は、振幅が180V(単相交流電圧源12の電圧実効値)で、周波数は4Hz(検定元電圧波形の周波数と検定対象電圧波形の周波数との差の周波数)である。
【0049】
検出部136は電圧実効値を180Vと検出しており、単相交流電圧源12の電圧実効値と等しい。検出部136は周波数差を−4Hzと検出しており、設定された単相交流電圧源11と単相交流電圧源12との周波数差(単相交流電圧源11に対する単相交流電圧源12の周波数差)に等しい。また、検出部136は周波数差で生ずる位相差も検出できている。
【0050】
本実施例で説明したように、同期検定装置130は、単相交流電圧源12の電圧実効値、単相交流電圧源11と単相交流電圧源12との周波数差、及び単相交流電圧源11と単相交流電圧源12との位相差を正確に検出することができる。
【符号の説明】
【0051】
11、12:単相交流電圧源
130:同期検定装置
133:サンプラー
134:遅延回路
135:演算部
136:検出部
151:回転座標変換回路
152A、152B:ローパスフィルタ
153:周波数差余弦信号出力端
154:周波数差正弦信号出力端
161、162、163:回路
図1
図2
図3
図4