特許第5698838号(P5698838)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーニング インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特許5698838-複合アイソパイプ 図000002
  • 特許5698838-複合アイソパイプ 図000003
  • 特許5698838-複合アイソパイプ 図000004
  • 特許5698838-複合アイソパイプ 図000005
  • 特許5698838-複合アイソパイプ 図000006
  • 特許5698838-複合アイソパイプ 図000007
  • 特許5698838-複合アイソパイプ 図000008
  • 特許5698838-複合アイソパイプ 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698838
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】複合アイソパイプ
(51)【国際特許分類】
   C03B 17/06 20060101AFI20150319BHJP
【FI】
   C03B17/06
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-513239(P2013-513239)
(86)(22)【出願日】2011年5月26日
(65)【公表番号】特表2013-527121(P2013-527121A)
(43)【公表日】2013年6月27日
(86)【国際出願番号】US2011038109
(87)【国際公開番号】WO2011150189
(87)【国際公開日】20111201
【審査請求日】2014年5月26日
(31)【優先権主張番号】61/349,362
(32)【優先日】2010年5月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】パニン,ニコライ エー
【審査官】 永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−518275(JP,A)
【文献】 特開平5−139766(JP,A)
【文献】 特開2003−81653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B17/00−17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ュージョンダウンドロー法を用いて板ガラスを製造する装置であって、
第1材料で構成される上側部分(101)と、前記上側部分(101)の下方に位置する第2材料で構成される下側部分(103)と、を有する成形装置本体を備えると共に前記成形装置本体を収納する炉を備え、
前記上側部分(101)は、2つの上部樋壁(112,114)と、溶融ガラスを流入させる樋空間(105)を画定する樋底面と、を含み、
記下側部分(103)は、下方に傾斜して下頂部で結する2つの主外面を有する楔形断面を有し、
記上側部分(101)及び前記下側部分(103)の側壁は、ほぼ連続する2つの成形面を形成し、これらの成形面を、通常作動中に溶融ガラス流が下方に流れて前記下頂部(108)で合流することができ、
前記第1材料は1200℃でCR1のクリープ変形量を有し、前記第2材料は1200℃でCR2のクリープ変形量を有し、ここで、CR1<CR2
前記炉は、前記成形装置本体の前記上側部分(101)を略一定の温度に維持し、かつ前記成形装置本体の前記下側部分(103)の温度を、Ttopを前記下側部分(103)の上面の温度とし、Trootを前記下側部分(103)の前記下頂部(108)の温度とした場合に、deltaT=Ttop−Trootの温度勾配を有するように維持し、ここでdeltaT≧10℃である、
板ガラスを製造する装置。
【請求項2】
CR2/CR1>10ある、請求項1記載の板ガラスを製造する装置。
【請求項3】
前記第1材料α−SiC,窒化珪素、または酸窒化珪素から実質的に成り、前記第2材料ジルコンから実質的に成る、請求項1または2記載の板ガラスを製造する装置。
【請求項4】
A)溶融ガラスを供給する工程、
(B)第1材料で構成される上側部分(101)と、前記上側部分(101)の下方に位置する第2材料で構成される下側部分(103)と、を有する成形装置本体を設ける工程であって、前記上側部分(101)が、2つの上部樋側壁と、溶融ガラスを流入させる樋空間(105)を画定する樋底面と、を含み、前記下側部分(103)が、下方に傾斜して下頂部で結する2つの主外面を持つような楔形断面を有し、前記上側部分(101)及び前記下側部分(103)の側壁外面は、ほぼ連続する2つの成形面を形成し、これらの成形面を、通常作動中に溶融ガラス流が下方に流れて前記下頂部(108)で合流することができ、前記第1材料が、1200℃でCR1のクリープ変形量を有し、前記第2材料が、1200℃でCR2のクリープ変形量を有し、ここでCR1<CR2ある、成形装置本体を設ける工程、
(C)前記溶融ガラスを前記成形装置本体の前記樋空間に供給し、前記溶融ガラスが前記樋側壁の上面から溢れ出し、前記2つの成形面に沿って流れ、そして前記下頂部(108)で合流するようにして、単体のガラスリボンを形成る工程、
(D)前記ガラスリボンを前記下頂部(108)の下方に引き延ばして板ガラスを形成する工程、
(E)前記成形装置本体の前記上側部分(101)をマッフル炉で略一定の温度に維持する工程、
(F)前記成形装置本体の前記下側部分(103)の温度を、Ttopを前記下側部分(103)の上面の温度とし、Trootを前記下側部分(103)の前記下頂部(108)の温度とした場合に、deltaT=Ttop−Trootの温度勾配を有するように維持する工程であって、deltaT≧10℃である、工程、
を含む、板ガラスを製造する方法。
【請求項5】
CR2/CR1>10ある、請求項4記載の板ガラスを製造する方法。
【請求項6】
1200℃の温度で、かつ200psi(約1.38MPa)の荷重を加えた状態で、CR2≦1×10−5/時間ある、請求項4または5記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、2010年5月28日に出願された米国仮特許出願第61/349,362号の優先権の利益を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、板ガラスを製造する方法及び装置に関するものである。具体的には、本発明は、板ガラスを製造するフュージョンダウンドロー法、及びこのようなダウンドロー法において使用される装置に関するものである。本発明は、例えば液晶ディスプレイ(LCD)への使用に適する高精度ガラス基板を製造するために有用である。
【背景技術】
【0003】
TVセットのような現在普及している各LCD装置では、2枚の高精度板ガラスが使用され、一方の板ガラスが薄膜トランジスタ(TFT)のような電子回路素子の基板として、そして他方の板ガラスがカラーフィルタの基板として使用される。種々の技術を、このような高精度光学ガラス基板を製造するために利用することができる。最先端の技術が、米国ニューヨーク州コーニング市にあるCorning Incorporated(コーニング社)が開発したオーバーフローフュージョンダウンドロー法であり、このフュージョンダウンドロー法では、通常、isopipe(アイソパイプ)、forming pipe(フォーミングパイプ)、forming trough(フォーミングトラフ)、またはforming device(フォーミングデバイス)と表記される成形装置本体(forming body)を使用する。成形装置本体は通常、溶融ガラスを流入させる樋空間(trough space)を画定する2つの上部樋壁(upper trough walls)及び樋底面(trough bottom)を含む上側部分と、そして楔形断面を有する下側部分と、を備え、この楔形断面は、下方に向かって傾斜して下頂部で結する2つの主側壁外面を有し、上側部分及び下側部分のこれらの側壁が2つの連続成形面を形成する。作動状態では、溶融ガラスが樋に充填され、溶融ガラスが、樋の頂部上面(堰と表記される)から溢れ出すことができるようにし、2つの主側壁外面に沿って流下し、そして次に、2つの外面が下方に向けて接近して収斂する箇所(下頂部と表記される)で合流して、両方の外側表面が成形装置本体の表面に曝されない状態の単体のガラスリボンを形成することができる。リボンを下方に引き延ばし、そして冷却することにより、所望の厚さ、及び化学修飾を施していない外側表面を有する弾性板ガラスを成形する。
【0004】
サイズが大きくなり続けている状況の中で高い画像品質を有する高品質LCDを製造するためには、尚一層厳しい要件が、成形装置本体の幾何学的かつ寸法的な安定性に対して課される。十分広い幅の連続板ガラスを製造するために、成形装置本体は通常、両端で宙吊りにされる。作動状態では、成形装置本体は、当該成形装置本体自体の重力、及び当該成形装置本体が支持する溶融ガラスの重力、及び1200〜1300℃のような極めて高い作動温度の影響を受ける。このような高い温度、及び大きな外部荷重が加わる状態では、長期の生産活動の安定性の問題を解決することは極めて困難な課題である。コーニング社(Corning Incorporated)は、この問題を解決するために種々の技術を過去数十年に渡って開発するのに成功してきたが、これらの技術では、上向きの曲げモーメントを成形装置本体に、圧縮力を供給側端部及び圧縮側端部の両方に付与することにより加え、そしてサッギングを受け難い高性能材料を使用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、板ガラスの所望サイズが、時間の経過とともにどんどん大きくなってきたので、成形装置本体の水平方向寸法もどんどん大きくなった。寸法(長さ)がより大きく、かつ同じ材料で構成される成形装置本体は、所定期間のうちに所定の作動条件において更に歪み易くなる。更に、1種類の材料で構成され、かつ幾何学的形状安定性に対する全ての要求を満たす単体の成形装置本体は、比較的小さいサイズでも非常に高価である。
【0006】
従って、オーバーフローフュージョンダウンドロー法に用いられ、かつ安価に製造することができ、維持することができ、操作することができ、そして広い幅を有する板ガラスを製造するために適する成形装置本体構造が真に必要となる。
【0007】
本発明は、この必要性、及び他の必要性を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の幾つかの態様が本明細書において開示される。これらの態様は、互いに重複していてもよい、または重複していなくてもよいことを理解されたい。従って、1つの態様の一部は、別の態様の範囲に含めることができ、逆に、別の態様の一部は、1つの態様の範囲に含めることができる。
【0009】
各態様は、多数の実施形態によって例示され、これらの実施形態が今度は、1つ以上の特定の実施形態を含むことができる。これらの実施形態は、互いに重複していてもよい、または重複していなくてもよいことを理解されたい。従って、1つの実施形態の一部は、または1つの実施形態の特定の実施形態は、別の実施形態の範囲、または別の実施形態の特定の実施形態に含めることができ、逆に、別の実施形態の一部、または別の実施形態の特定の実施形態は、1つの実施形態の範囲、または1つの実施形態の特定の実施形態に含めることができる。
【0010】
従って、本発明の第1の態様によれば、提供されるのは、フュージョンダウンドロー法において使用される、板ガラスを製造する装置であり、該装置は、第1材料で構成される上側部分(101)と、そして前記上側部分(101)の下方に位置する第2材料で構成される下側部分(103)と、を有する成形装置本体を備え、前記上側部分(101)は、2つの上部樋壁(112,114)と、そして溶融ガラスを流入させる樋空間(105)を画定する樋底面と、を含み、そして前記下側部分(103)は、下方に傾斜して下頂部で終結する2つの主外面を有する楔形断面を有し、そして前記上側部分(101)及び前記下側部分(103)の側壁は、ほぼ連続する2つの成形面を形成し、これらの成形面を、溶融ガラス流が下方に流れて下頂部(108)で通常作動中に合流することができ、前記第1材料は1200℃でCR1のクリープ変形量を有し、そして前記第2材料は1200℃でCR2のクリープ変形量を有し、そしてCR1<CR2の関係がある。
【0011】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、 CR2/CR1>10、特定の実施形態ではCR2/CR1>10、特定の他の実施形態ではCR2/CR1>10の関係がある。
【0012】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、CR1<1×10−7、特定の実施形態ではCR1<1×10−8、特定の他の実施形態ではCR1<1×10−9、特定の他の実施形態ではCR1<1×10−10、特定の他の実施形態ではCR1<1×10−11、特定の他の実施形態ではCR1<1×10−12の関係がある。
【0013】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、前記装置は更に、前記成形装置本体を収納する炉を備え、前記炉は、前記成形装置本体の前記上側部分(101)を略一定の温度に維持し、かつ成形装置本体の前記下側部分(103)温度を、Ttopを前記下側部分(103)の上面の温度とし、Trootを前記下側部分(103)の前記下頂部(108)の温度とした場合に、deltaT=Ttop−Trootの温度勾配を有するように維持し、そしてdeltaT≧10℃、特定の実施形態ではdeltaT≧20℃、特定の実施形態ではdeltaT≧30℃、特定の実施形態ではdeltaT≧50℃、特定の実施形態ではdeltaT≧80℃、特定の実施形態ではdeltaT≦100℃、特定の実施形態ではdeltaT≦80℃、特定の他の実施形態ではdeltaT≦60℃の関係がある。
【0014】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、前記第2材料は、1200℃の温度で、かつ200psi(約1.38MPa)の荷重を加えた状態で、CR2≦1×10−5/時間の関係を満たすクリープ変形量CR2を有する。
【0015】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、前記第1材料は、1200℃の温度で、かつ200psi(約1.38MPa)の荷重を加えた状態で、CR1≧1×10−13/時間の関係を満たすクリープ変形量CR1を有する。
【0016】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、前記下側部分(103)は、翼部(104,106)を杭状ブロック(105,107)により支持される各端部に有する。特定の実施形態では、杭状ブロック(105,107)の各ブロックから圧縮力F、F’が前記下側部分(103)の端部に加わって、圧縮モーメントが前記下側部分(103)の内部に生じることにより、前記成形装置本体の前記下側部分(103)のサッギングを低減する。
【0017】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、前記第1材料は基本的に、α−SiC(α炭化珪素)、窒化珪素、または酸窒化珪素から成り、そして前記第2材料は基本的に、ジルコンから成る。
【0018】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、前記上側部分(101)は更にキャビティを含む。特定の実施形態では、前記装置は更に、前記キャビティ(115)の内部に、前記成形装置本体を加熱するように適合させた加熱素子を備える。
【0019】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、前記上側部分(101)の下面及び前記下側部分(103)の上面は、これらの面に形成される互いに嵌まり合う凹凸形状を有する。
【0020】
本発明の第2の態様は、板ガラスを製造する方法に関するものであり、該方法は以下の工程:
(A)溶融ガラスを供給する工程、
(B)第1材料で構成される上側部分(101)と、そして前記上側部分(101)の下方に位置する第2材料で構成される下側部分(103)と、を有する成形装置本体を設ける工程であって、前記上側部分(101)が、2つの上部樋側壁と、そして溶融ガラスを流入させる樋空間(105)を画定する樋底面と、を含み、そして前記下側部分(103)が、下方に傾斜して下頂部で結する2つの主外面を持つような楔形断面を有し、そして前記上側部分(101)及び前記下側部分(103)の側壁外面は、ほぼ連続する2つの成形面を形成し、これらの成形面を、溶融ガラス流が下方に流れて前記下頂部(108)で通常作動中に合流することができ、前記第1材料が、1200℃でCR1のクリープ変形量を有し、そして前記第2材料が、1200℃でCR2のクリープ変形量を有し、そしてCR1<CR2の関係がある、前記設ける工程、
(C)前記溶融ガラスを前記成形装置本体の前記樋に供給し、そして前記溶融ガラスが前記樋側壁の上面から溢れ出し、前記2つの成形面に沿って流れ、そして前記下頂部(108)で合流するようにして単体のガラスリボンを形成する工程、
(D)前記ガラスリボンを前記下頂部(108)の下方に引き延ばして前記板ガラスを成形する工程、
を含む。
【0021】
本発明の第2の態様の特定の実施形態では、CR2/CR1>10、特定の実施形態ではCR2/CR1>10、特定の他の実施形態ではCR2/CR1>10の関係がある。
【0022】
本発明の第2の態様の特定の実施形態では、前記方法は更に以下の工程(E)及び(F):
(E)前記成形装置本体の前記上側部分(101)を略一定の温度にマッフル炉で維持する工程、及び
(F)前記成形装置本体の前記下側部分(103)温度を、Ttopを前記下側部分(103)の上面の温度とし、Trootを前記下側部分(103)の前記下頂部(108)の温度とした場合に、deltaT=Ttop−Trootの温度勾配を有するように維持する工程であって、deltaT≧10℃、特定の実施形態ではdeltaT≧20℃、特定の実施形態ではdeltaT≧30℃、特定の実施形態ではdeltaT≧50℃、特定の実施形態ではdeltaT≧80℃、特定の実施形態ではdeltaT≦100℃、特定の実施形態ではdeltaT≦80℃、特定の他の実施形態ではdeltaT≦60℃の関係がある、前記温度勾配を有するようにする工程、
を含む。
【0023】
本発明の第2の態様の特定の実施形態では、前記第2材料は、1200℃の温度で、かつ200psi(約1.38MPa)の荷重を加えた状態で、CR2≦1×10−5/時間の関係を満たすクリープ変形量CR2を有するように選択される。
【0024】
本発明の第2の態様の特定の実施形態では、前記第1材料は、1200℃の温度で、かつ200psi(約1.38MPa)の荷重を加えた状態で、CR1≧1×10−13/時間の関係を満たすクリープ変形量CR1を有するように選択される。
【0025】
本発明の第2の態様の特定の実施形態では、前記下側部分(103)は、翼部(104,106)を杭状ブロック(105,107)により支持される各端部に有する。特定の実施形態では、圧縮力F、F’を前記下側部分(103)の各端部に杭状ブロック(105,107)を介して加えて、圧縮モーメントを前記下側部分(103)の内部に生じさせることにより、前記成形装置本体の前記下側部分(103)のサッギングを低減する。
【0026】
本発明の第2の態様の特定の実施形態では、前記第1材料は基本的に、α−SiC、窒化珪素、または酸窒化珪素から成り、そして前記第2材料は基本的に、ジルコンから成る。
【0027】
本発明の第2の態様の特定の実施形態では、前記上側部分(101)は更にキャビティを含む。特定の実施形態では、加熱素子を前記キャビティ(115)の内部に設けて、前記成形装置本体の前記上側部分(101)を加熱する。
【0028】
本発明の第2の態様の特定の実施形態では、前記上側部分(101)の下面及び前記下側部分(103)の上面は、これらの面に形成される互いに嵌まり合う凹凸形状を有する。
【0029】
本発明の第2の態様の特定の実施形態では、工程(B)は:
(B1)使用済み成形装置本体のうちの前記第1材料で構成される上側部分(101)を入手する工程、
(B2)前記第2材料で構成される新品の下側部分(103)を入手する工程、及び
(B3)前記上側部分(101)を前記下側部分(103)に積み重ねて前記成形装置本体を提供する工程、
を含む。
【0030】
本開示の1つ以上の実施形態、及び/又は態様は、以下の利点のうちの1つ以上の利点を有する。第1に、成形装置本体の上側部分(101)は、生産を多数回行なう過程においてリサイクルし、そして再利用することができるので、下側部分(103)を取り替えるだけで済み、そして下側部分(103)は、小型世代の成形装置本体の場合には修理することもできるので、生産を行なう際の成形装置本体の平均コストを低減することができる。第2に、成形装置本体の稼働寿命は、ジルコンのような1種類のセラミック材料で構成される従来の単体の成形装置本体と比べると、下側部分(103)のサッギングが少なく、かつ上側部分(101)のサッギングが無いので、延ばすことができる。第3に、上側部分(101)は、内部キャビティを有するように形成することができ、これにより、成形装置本体の製造に際する材料消費量を減らすことができ、下側部分(103)に加わる重量荷重を低減することができるので、コストを低減することができると同時に、成形装置本体の稼働寿命を延ばすことができる。
【0031】
本発明の更に別の特徴及び利点は、以下の詳細な説明に記載されており、その一部は、当業者であれば、説明から容易に理解することができる、または本発明を、記載の説明、及び本明細書における請求項に明示されている通りに、更には添付の図面の通りに実施することにより容易に理解することができる。
【0032】
これまでの概要説明及び以下の詳細な説明は、本発明の単なる例示に過ぎず、そして概要または構成概念を提供することにより、本発明の本質及び特徴を、本発明が特許請求される通りに理解することができるようにしていることを理解されたい。
【0033】
添付の図面は、本発明に対する理解を深めるために取り込まれ、そして本明細書の一部に組み込まれ、かつ本明細書の一部を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の1つの実施形態による積み重ねて合体させる前の成形装置本体の上側部分及び下側部分(101,103)を側面から見た模式図である。
図2】本発明の1つの実施形態による積み重ねて合体させる前の成形装置本体の上側部分及び下側部分(101,103)を端部から見た模式図である。
図3】本発明の1つの実施形態による作動時の成形装置本体を側面から見た模式図である。
図4】本発明の別の実施形態による作動時の成形装置本体の上側部分及び下側部分(101,103)を端部から見た模式図である。
図5】板ガラスを製造するフュージョンダウンドロー法で作動する成形装置本体の模式図である。
図6】α−SiC製上側部分及びジルコン製下側部分(103)を備える成形装置本体の比CRA/CRBを温度の関数として示す図であり、CRAは上側部分のクリープ変形量であり、そしてCRBは下側部分(103)のクリープ変形量である。
図7】本発明の1つの実施形態による成形装置本体の上側部分の下面、及び下側部分(103)の上面の歪みを示す図である。
図8】下頂部の最大歪みを、下頂部の両端に加わる圧縮力F、F’の関数として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
他に指定のない限り、本明細書及び請求項において使用される成分の重量パーセント及び分子パーセント、寸法、及び特定の物理特性の値のような全ての数字は、全ての例において「about(約)」という用語で修飾されるものとして理解される必要がある。また、本明細書及び請求項において使用される正確な数値は、本発明の更に別の実施形態を構成することを理解されたい。様々な努力が、これらの例に開示される数値の正確さを確保するために払われている。しかしながら、何れの測定数値も本質的に、当該数値の該当する測定法の標準偏差から生じる特定の誤差を含んでいる。
【0036】
本明細書において使用されるように、本発明を記述し、そして本発明の特許を請求するに当たって、不定冠詞「a」または「an」を用いる場合、これは「at least one」を意味し、そして異なる明示的な指示がなされていない限り、「only one」に限定されてはならない。従って、例えば「a cavity」という表記は、本文において明確にそれとは異なる記載がない限り、1つ、2つ、またはそれ以上のこのようなキャビティ(群)115を有する実施形態を含む。
【0037】
本開示におけるバルク材料は、室温で少なくとも200立方センチメートル(cm)の合計容積を有する中身の詰まった連続質量体である。従って、粉末群からなる積層体、または各ペレットが100cm未満の合計容積を有する構成のペレット群からなる積層体は、本開示では、バルク材料として見なされない。
【0038】
材料のクリープ変形量は、先行技術において利用可能な標準的な方法により、1200℃の温度で、かつ200psi(約1.38MPa)の荷重を加えた状態で測定される。
【0039】
フュージョンダウンドロー法における成形装置本体は、特定のガラス組成物に対して非常に高い温度で、例えば1100℃超の温度で作動し、そして当該成形装置本体自体の重量、及び当該成形装置本体が支持する溶融ガラスの重量に起因して、大きな荷重を受ける。更に、当該ダウンドロー法の性質に起因して、溶融ガラスは、頂部から下頂部に向かうにつれて冷却され、温度勾配が成形装置本体に生じる。ジルコン製の成形装置本体は作用応力及び温度でクリープ変形して、不可逆なサッギングを起こし、このサッギングが経時的に進行する。成形装置本体が変形すると、流動パターンが変化し、そして製造される板の厚さがばらつく。特定の稼働期間後、変形が極めて大きくなって、成形装置本体を取り替える必要があった、または作製し直す必要があった。成形装置本体は、それ自体を製造し、そして設置するために非常に高いコストを要する。生産活動が終了し、そして生産ラインの再編が結果として行なわれると、生産損失が一層大きくなってしまう。
【0040】
成形装置本体のサッギングを低減するためにコーニング社が開発した1つの手法では、圧縮力を成形装置本体の両方の端部に、一対の杭状体(piers)を介して加え、これらの杭状体によって更に、成形装置本体のこれらの端部を支持する。この方法は、小型世代の規模の生産ラインに関してジルコン製の成形装置本体の稼働寿命を数年だけ延ばすために効果を発揮するが、このような効果は限定的であり、特に2000mm超の長さを有する成形装置本体のような大型成形装置本体に関して限定的である。
【0041】
ジルコンよりも大幅に小さいクリープ変形量を有する材料が存在するが、作動状態でクリープ変形しない1種類の材料により全体が形成される単体の成形装置本体は、ダウンドロー法が無事に成功するために必要な温度勾配に起因する過度に大きな内部応力を受けることになる。成形装置本体がクリープ変形すると、温度勾配によって生じる内部応力を緩和することができる。クリープ変形が無くなり、そして大きな応力が継続的に作用すると、成形装置本体の破損が突発的に起こってしまう。
【0042】
本発明は、成形装置本体のクリープ変形、及び成形装置本体に加わる応力という相容れない問題に対する解決策を、正常な作動状態で異なるクリープ変形量を有する少なくとも2種類の材料で構成される複合成形装置本体を実現することにより提供する。
【0043】
次に、本発明について添付の図面1〜6に示す種々の実施形態を参照しながら説明し、そして例示する。本明細書における開示の恩恵を享受する当業者であれば、他の実施形態を想到することができ、これらの実施形態も、特許請求する本発明の範囲に含まれことになることに留意されたい。
【0044】
本発明の第1の態様による成形装置本体の上側部分101は、第1材料で構成され、そして2つの上部樋壁(112,114)と、そして樋底面と、を含み、これらの上部樋壁及び樋底面が一体となって、溶融ガラスを流入させる樋空間(105)を画定する。成形装置本体の下側部分103は、第2材料で構成され、そして2つの主側壁外面を有し、これらの主側壁外面は、下方に向かって傾斜して共通稜線108で結し、この共通稜線108は通常、真っ直ぐであり、そして成形装置本体の下頂部と表記される。上側部分101は、下側部分103の上に積み重ねられる。望ましくは、上側部分101及び下側部分103を含む成形装置本体組立体は、単体のジルコンで構成される従来の成形装置本体と略同様な外観及び機能を有する。従って、上側部分101及び下側部分103の側壁外面は、連続する平滑な2つの主側壁外面を形成することが望ましく、これらの主側壁外面を、溶融ガラスが、速度方向が急激に変化することなく流れることができる。望ましくは、上側部分101の幅は、下側部分103の幅と、上側部分101と下側部分103との境界において、正常な作動温度において略同じである。作動状態では、成形装置本体は、先行技術に開示されている成形樋供給管、エンドキャップ、及び下頂部誘導加熱手段(edge directors)などのような上流側装置及び付属装置に接続されることにより、板ガラスを成形装置本体で、フュージョンダウンドロー法を使用して成形することができる。上側部分101及び下側部分103は共に、高温に曝され、この高温において、重力が作用する結果、溶融ガラスが流れることができる。
【0045】
成形装置本体の上側部分101を構成する第1材料は、成形装置本体の作動温度で、下側部分103を構成する第2材料よりも大幅に小さいクリープ変形量を有する。従って、CR2及びCR1をそれぞれ、1200℃における第1及び第2材料のクリープ変形量とした場合に、CR2/CR1>10、特定の実施形態ではCR2/CR1>10、特定の実施形態ではCR2/CR1>10の関係があることが望ましい。例えば、第1材料は、α−SiC(α炭化珪素)、窒化珪素、または酸窒化珪素から成るセラミックとすることができ、そして第2材料は、ジルコン、ジルコニア、アルミナ、MgO、またはPt及びPt含有合金などのような高融点金属から成るセラミックとすることができる。望ましくは、第2材料の場合でも、CR2<1×10−5/時間、もっと望ましくはCR2<1×10−6/時間、更に望ましくはCR2<1×10−7/時間の関係がある。概括すると、成形装置本体が、少なくとも2000mmの長さを有するジルコンのような単体のセラミック材料で構成される場合、当該材料のクリープ変形量は最大1×10−6/時間であることが極めて望ましい。しかしながら、本発明の場合、複合構造であるために、CR2に関する要件は、もっと緩くすることができ、そして例えば、約1×10−5/時間〜約1×10−6/時間とすることにより、ほぼ同じ大きさのクリープ変形量閾値を設定することができる。
【0046】
図6は、比RA=CRA/CRBが温度の関数として変化する様子を示す図であり、CRAは、異なる温度におけるα−SiCのクリープ変形量であり、そしてCRBは、異なる温度におけるジルコンのクリープ変形量である。この図は、α−SiCのクリープ変形量が、1200℃近傍でジルコンのクリープ変形量の約1×10−6に相当することを示している。
【0047】
作動状態では、本発明の成形装置本体は通常、所望の温度及び温度勾配を維持するためにマッフル炉の内部に収容され、このマッフル炉は、例えば先行技術に開示されている1種類の材料で構成される従来の単体の成形装置本体を収納するために使用されるマッフル炉である。望ましくは、マッフル炉は、各セグメントが調節可能な加熱電力を有する構成の幾つかのセグメントを含むことにより、成形装置本体の上側部分101を略一定の作動温度に維持することができ、かつ成形装置本体の下側部分103が、温度勾配を上面から下部(下頂部)に向かって持つように温度維持される。例えば、上側部分101は、堰から上側部分101と下側部分103との境界に至る温度がTav±10℃、更に望ましくはTav±4℃、更に一層望ましくはTav±2℃、更に一層望ましくはTav±1℃の温度範囲に収まるように温度維持することができ、この場合、Tavは上側部分101の平均温度である。望ましくは、成形装置本体の下側部分103は、下側部分103が温度勾配deltaT=Ttop−Trootを持つように温度維持することができ、この場合、Ttopは、下側部分103の上面の温度(すなわち、上側部分101と下側部分103との境界における温度)であり、Trootは、成形装置本体の下頂部108(すなわち、下側部分103の最下部)の温度であり、そしてdeltaT≧10℃、特定の実施形態ではdeltaT≧20℃、特定の実施形態ではdeltaT≧30℃、特定の実施形態ではdeltaT≧50℃、特定の実施形態ではdeltaT≧80℃、特定の実施形態ではdeltaT≦100℃、特定の実施形態ではdeltaT≦80℃、特定の他の実施形態ではdeltaT≦60℃の関係がある。特定の実施形態では、成形装置本体の下側部分103の温度勾配は、上面から下部に向かって略直線的である。
【0048】
上側部分101のクリープ変形量が極めて小さいので、上側部分101は、ほぼ弾性を保持し、かつ通常作動中にクリープ変形しない。更に、略一定の温度が上側部分101のバルク部全体に渡って維持されるので、上側部分101は、急峻な温度勾配により生じる大きな熱応力を受けることがない。下側部分103が、下頂部で引き延ばされることになるガラスリボンの成形を無事に成功させるために必要な温度勾配に曝されている間、第2材料のクリープ変形量が非常に大きいことによって、deltaTによって生じる熱応力を緩和することができる。
【0049】
従来のフュージョンダウンドロー法における普通の成形装置本体の設置状態と殆ど同様であるが、本発明の成形装置本体は、杭状ブロック105,107によって、下側部分103の各端部で支持されるので有利であり、そして次に、上側部分101が今度は、下側部分103によって支持される。この目的のために、下側部分103は、2つの突出翼形端部104及び106を有し、これらの翼形端部は、杭状支持ブロック105及び107に被さるように配置することができる。成形装置本体の稼働期間中の成形装置本体の下側部分103のサッギングを低減するために、圧縮力F,F’を下側部分103の各端部に、杭状ブロック105及び107を介して加えることにより、上向き曲げモーメントを下側部分103の本体の内部に生じさせ、このモーメントが、上側部分101及び下側部分103、及び溶融ガラスの重い重量によるサッギング傾向を中和する。
【0050】
第1材料のクリープ変形量が、極めて高い作動温度でも著しく小さいので、1つ以上のキャビティ(群)115を上側部分101の内部に、作動中の上側部分101のクリープ変形に殆ど影響を及ぼすことなく形成することができる。望ましくは、1つ以上の直線状溝キャビティ(群)115を上側部分101のバルク部を、一方の端部から他方の端部に貫通するように形成することができる。上側部分101の長さのほんの一部のみを貫通するキャビティ(群)115を形成することもできる。キャビティ(群)115を設ける1つの利点は、キャビティ(群)115によって、上側部分101に必要な材料を減らすことができ、製造コストを下げることができ、そして重量を大幅に低減することができるので、上側部分101の内部の温度勾配によって生じる応力、及び上側部分101の重量を低減し、そして重量負荷に起因する下側部分103のサッギングを低減することができることである。望ましくは、キャビティ(群)115は、上側部分101が占める全ボリューム空間の少なくとも10%を占め、特定の実施形態では少なくとも20%、特定の実施形態では少なくとも30%、特定の他の実施形態では少なくとも40%、特定の更に他の実施形態では少なくとも50%を占める。更に、SiCグローバー(glow bar)のような加熱素子をキャビティ(群)115のうちの1つ以上のキャビティに挿入することができ、これにより、成形装置本体の上側部分101及び下側部分103を、初期始動時及び通常作動中に加熱することができ、そして成形装置本体を所望の温度、及び温度勾配に維持することができる。
【0051】
上側部分101の下面は、下側部分103の上面に直接被せて積み重ねることが望ましい。望ましくは、上側部分101及び下側部分103との接触は、ほとんど隙間なく行なわれる。従って、1つの実施形態では、上側部分101は、略平坦な下面を有し、そして下側部分103は、略平坦な上面を有し、そしてこれらの2つの表面を互いに直接接触させることができる。別の実施形態では、上側部分101の下面、及び下側部分103の上面は、相互に固定できるような面の曲率を有することにより、これらの2つの表面が互いに密に係合することができる。例えば、上側部分101の下面は凸輪郭形状を有することができ、そして下側部分103の上面は、この凸輪郭形状に一致する凹輪郭形状を有することができ、この凹輪郭形状に、上側部分101の凸輪郭形状が収まる。別の例の場合、上側部分101の下面は凹溝113を有することができ、そして下側部分103の上面は、凹溝113に挿入される凸状突起部111を有することができる。一旦、上側部分101を下側部分103に積み重ねると、表面凹凸形状によって、これらの2つの上側部分と下側部分とを相互に嵌め合わせることができる。
【0052】
第1材料及び第2材料が、室温から成形装置本体の通常の作動温度までの温度範囲で略同じ線膨張係数を有することが極めて望ましい。しかしながら、これは、2種類の材料のクリープ変形量が大幅に異なることに起因して、不可能ではないにしても、実現することが困難な場合がある。そうではあるが、上側部分101の下面、及び下側部分103の上面は、通常作動時にほぼぴったり合う、すなわち略同じ幅を有することにより、上側部分101及び下側部分103の側壁外面が結合して、ほぼ平滑な2つの連続する成形面を、隙間、窪み、または隆起を生じることなく形成することが望ましい。当該目的のために、2種類の材料が、異なる膨張挙動、及び異なる線膨張量を、室温から作動温度に渡って持つ場合、当業者であれば、作動温度にまで加熱された後、上側部分101の下面および下側部分103の上面が膨張して略同じ幅となり、そしてほぼぴったり合うように、室温において上側部分101の下面下側部分103の上面が僅か幅寸法を有するように設計することができる。
【0053】
本発明による成形装置本体の製造では、上側部分101及び下側部分103を別々に形成する。下側部分103がジルコン系材料で構成される場合、当該下側部分は、例えば国際公開第02/44102号、同第08/066725号、同第09/054951号、同第09/058345号の各パンフレットなどに開示されている方法によって製造することができ、これらの国際公開公報の全ての開示内容は、本明細書において参照されることにより、これらの国際公開公報の内容全体が本明細書に組み込まれる。第1材料から成る大型高密度セラミックバルク体は、粒から作られる未焼成体(green body)を焼結することにより形成することができ、そこから、樋、及び任意の内部キャビティ(群)115を機械加工することができる。同様に、第2材料から成る大型高密度セラミックバルク体は、粒から作られる未焼成体(green body)を焼結することにより形成することができ、そこから、楔部を備える下側部分103を機械加工することができる。必要に応じて、相互に嵌め合わせることができる表面凹凸形状機械加工により形成することができる。次に、上側部分101及び下側部分103を積み重ねて合体させることにより、成形装置本体組立体を形成し、この成形装置本体組立体をマッフル炉に収容し、そして他の上流側装置及び下流側装置に接続する。
【0054】
ガラス製造プロセス中、成形装置本体500をまず、作動温度に近似する温度に予備加熱する。次に、溶融ガラスを上側部分101の樋505に、供給管501を介して流し込む。一旦、樋505が満杯まで充填されると、溶融ガラスは上側部分101の両側の堰から溢れ出すことができ、上側部分101及び下側部分103の2つの側壁外面507に沿って流下し、下側部分103の側壁外面で徐々に冷却され、次に、下側部分103の下頂部509に達し、この下頂部509では、供給管501におけるよりも高い粘度を有する単体の溶融ガラスリボン503が形成され、そしてガラスリボンの両縁部に直接接触する引っ張りローラー(図示せず)によって下方へ引き延ばされる。成形装置本体組立体は更に、エンドキャップ505、下頂部誘導加熱手段(図示せず)、及び他の付属部品を備えることができる。
【0055】
第1材料のクリープ変形量が極めて小さいとすると、上側部分101は、生産活動全体に亘ってほぼ弾性を保持する。更に、下側部分103は、従来のジルコン製の単体の成形装置本体よりもずっと小さい変形量ではあるが、クリープ変形およびサッギングが許容されることになる。生産活動の最後では、生産を停止させ、そして成形装置本体をマッフル炉から取り出し、そして解体することができ、そして使用済みの歪んだ下側部分103を新しい下側部分に取り替え、新しい下側部分に既存の上側部分101を積み重ね、そして次に、これらの上側及び下側部分を新しいマッフル炉に再度、収納する。このように、本発明の大きな利点は、成形装置本体の上側部分101をリサイクルすることができ、かつ再利用することができることであり、これにより、フュージョンダウンドロー法における成形装置本体のコストを大幅に低減することができる可能性をもたらすことができる。下側部分103に関しても、構造が簡略化されるので、当該下側部分をより小さなサイズに機械加工することができ、そしてより短い長さの成形装置本体をする生産ラインにおいて使用することができる。ジルコンのような1種類のセラミック材料で構成される従来の成形装置本体は、リサイクル及び再利用することがより困難になってしまうが、その理由は:(i)活動の最後において、両側の堰及び下頂部108が歪んでしまうので、堰及び下頂部の両方を機械加工する必要があり;そして(ii)樋、側壁外面、及び楔部を含む単体の本体の複雑な形状は、下側部分103だ新しくする場合よりも新しくするのがずっと難しいからである。
【0056】
以下の種々の例は、本発明を詳細に示している。しかしながら、これらの例は、単なる例示に過ぎず、特許請求する本発明を限定するものとして決して解釈されてはならない。
【0057】

α−SiCで形成された上側部分101と、そしてジルコンで形成された下側部分103と、を備え、79インチ(2000mm)の長さを有し、1164℃の下頂部温度、1221℃の堰温度、及び各端部における6000 lbs(26,689ニュートン)の圧縮力Fで作動する複合アイソパイプを数値シミュレーションにより解析した。図7は、上側部分と下側部分との境界における見積もり形状変化を示している。水平軸のデータは成形装置本体の圧縮側端部(すなわち、溶融ガラス供給管が位置する端部とは反対側で圧縮力Fを受ける側の成形装置本体の端部)からの距離であり、そして垂直軸のデータは、マイクロメートル/年で表わされる撓み量である。曲線703は、上側部分101の下面の形状を示し、そして曲線705は、下側部分103の上面の形状を示している。距離701は、上側部分101の下面と下側部分103の上面との間の最大ギャップを示している。予測の通り、上側部分は、当該上側部分の経時的なクリープ変形が無視できるので殆ど変化せず、そして上側部分は、当該上側部分が、変形している下側部分103にもたれかかるので、僅かに傾斜し、かつずれているに過ぎない。下側部分103は、ジルコンのクリープ変形量が非常に大きいので、経時的にクリープ変形する。境界の複雑な形状は、曲げモーメントが加わることにより生じる。曲線703と705との差は、圧縮側端部から見た種々の場所における上側部分と下側部分との間のギャップ拡大量である。
【0058】
次に、異なる圧縮荷重を受ける同じ作動温度の同じ成形装置本体を、圧縮力Fが最大ギャップ701の拡大量に及ぼす影響に関して、数値シミュレーションにより解析した。図8の水平軸に示されるのは、ポンドという力の単位で表わされる圧縮力Fであり、そして垂直軸に示されるのは、マイクロメートル/年で表わされる最大ギャップ拡大量である。図から分かるように、最小拡大量が、約6000ポンドの力である圧縮力Fで観測された。
【0059】
当業者であれば、種々の変形及び変更を本発明に、本発明の範囲及び思想から逸脱しない範囲で加えることができることを理解できるであろう。従って、本発明は、本発明のこれらの変形及び変更を、これらの変形及び変更が、添付の請求項、及びこれらの請求項の均等物の範囲に収まる限り、包含するものである。
【符号の説明】
【0060】
101 上側部分
103 下側部分
104,106 翼部、突出翼形端部
105 樋空間
105,107 杭状ブロック
108 下頂部、共通稜線
111 突状突起部
112,114 上部樋壁
113 凹溝
115 キャビティ
500 成形装置本体
501 供給管
503 溶融ガラスリボン
505 樋
505 エンドキャップ
507 側壁外面
509 下頂部
701 距離、最大ギャップ
703,705 曲線
CR1,CR2 クリープ変形量
CRA α−SiCのクリープ変形量
CRB ジルコンのクリープ変形量
deltaT 温度勾配
F、F’ 圧縮力
Tav 上側部分の平均温度
Ttop 下側部分の上面の温度
Troot 成形装置本体の下頂部の温度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8