【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の幾つかの態様が本明細書において開示される。これらの態様は、互いに重複していてもよい、または重複していなくてもよいことを理解されたい。従って、1つの態様の一部は、別の態様の範囲に含めることができ、逆に、別の態様の一部は、1つの態様の範囲に含めることができる。
【0009】
各態様は、多数の実施形態によって例示され、これらの実施形態が今度は、1つ以上の特定の実施形態を含むことができる。これらの実施形態は、互いに重複していてもよい、または重複していなくてもよいことを理解されたい。従って、1つの実施形態の一部は、または1つの実施形態の特定の実施形態は、別の実施形態の範囲、または別の実施形態の特定の実施形態に含めることができ、逆に、別の実施形態の一部、または別の実施形態の特定の実施形態は、1つの実施形態の範囲、または1つの実施形態の特定の実施形態に含めることができる。
【0010】
従って、本発明の第1の態様によれば、提供されるのは、フュージョンダウンドロー法において使用される、板ガラスを製造する装置であり、該装置は、第1材料で構成される上側部分(101)と、そして前記上側部分(101)の下方に位置する第2材料で構成される下側部分(103)と、を有する成形装置本体を備え、前記上側部分(101)は、2つの上部樋壁(112,114)と、そして溶融ガラスを流入させる樋空間(105)を画定する樋底面と、を含み、そして前記下側部分(103)は、下方に傾斜して下頂部で終結する2つの主外面を有する楔形断面を有し、そして前記上側部分(101)及び前記下側部分(103)の側壁は、ほぼ連続する2つの成形面を形成し、これらの成形面を、溶融ガラス流が下方に流れ
て下頂部(108)で通常作動中に合流することができ、前記第1材料は1200℃でCR1のクリープ変形量を有し、そして前記第2材料は1200℃でCR2のクリープ変形量を有し、そしてCR1<CR2の関係がある。
【0011】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、 CR2/CR1>10
3、特定の実施形態ではCR2/CR1>10
4、特定の他の実施形態ではCR2/CR1>10
5の関係がある。
【0012】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、CR1<1×10
−7、特定の実施形態ではCR1<1×10
−8、特定の他の実施形態ではCR1<1×10
−9、特定の他の実施形態ではCR1<1×10
−10、特定の他の実施形態ではCR1<1×10
−11、特定の他の実施形態ではCR1<1×10
−12の関係がある。
【0013】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、前記装置は更に、前記成形装置本体を収納する炉を備え、前記炉は、前記成形装置本体の前記上側部分(101)を略一定の温度に維持し、かつ成形装置本体の前記下側部分(103)
の温度
を、Ttopを前記下側部分(103)の上面の温度とし、Trootを前記下側部分(103)の前記下頂部(108)の温度とした場合に、deltaT=Ttop−Trootの温度勾配を有するように
維持し、そしてdeltaT≧10℃、特定の実施形態ではdeltaT≧20℃、特定の実施形態ではdeltaT≧30℃、特定の実施形態ではdeltaT≧50℃、特定の実施形態ではdeltaT≧80℃、特定の実施形態ではdeltaT≦100℃、特定の実施形態ではdeltaT≦80℃、特定の他の実施形態ではdeltaT≦60℃の関係がある。
【0014】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、前記第2材料は、1200℃の温度で、かつ200psi(約1.38MPa)の荷重を加えた状態で、CR2≦1×10
−5/時間の関係を満たすクリープ変形量CR2を有する。
【0015】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、前記第1材料は、1200℃の温度で、かつ200psi(約1.38MPa)の荷重を加えた状態で、CR1≧1×10
−13/時間の関係を満たすクリープ変形量CR1を有する。
【0016】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、前記下側部分(103)は、翼部(104,106)を杭状ブロック(105,107)により支持される各端部に有する。特定の実施形態では、杭状ブロック(105,107)の各ブロックから圧縮力F、F’が前記下側部分(103)の端部に加わって、圧縮モーメントが前記下側部分(103)の内部に生じることにより、前記成形装置本体の前記下側部分(103)の
サッギングを低減する。
【0017】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、前記第1材料は基本的に、α−SiC(α炭化珪素)、窒化珪素、または酸窒化珪素から成り、そして前記第2材料は基本的に、ジルコンから成る。
【0018】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、前記上側部分(101)は更にキャビティを含む。特定の実施形態では、前記装置は更に、前記キャビティ(115)の内部に、前記成形装置本体を加熱するように適合させた加熱素子を備える。
【0019】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、前記上側部分(101)の下面及び前記下側部分(103)の上面は、これらの面に形成される互いに嵌まり合う凹凸形状を有する。
【0020】
本発明の第2の態様は、板ガラスを製造する方法に関するものであり、該方法は以下の工程:
(A)溶融ガラスを供給する工程、
(B)第1材料で構成される上側部分(101)と、そして前記上側部分(101)の下方に位置する第2材料で構成される下側部分(103)と、を有する成形装置本体を設ける工程であって、前記上側部分(101)が、2つの上部樋側壁と、そして溶融ガラスを流入させる樋空間(105)を画定する樋底面と、を含み、そして前記下側部分(103)が、下方に傾斜して下頂部で
集結する2つの主外面を持つような楔形断面を有し、そして前記上側部分(101)及び前記下側部分(103)の側壁外面は、ほぼ連続する2つの成形面を形成し、これらの成形面を、溶融ガラス流が下方に流れて前記下頂部(108)で通常作動中に合流することができ、前記第1材料が、1200℃でCR1のクリープ変形量を有し、そして前記第2材料が、1200℃でCR2のクリープ変形量を有し、そしてCR1<CR2の関係がある、前記設ける工程、
(C)前記溶融ガラスを前記成形装置本体の前記樋に供給し、そして前記溶融ガラスが前記樋側壁の上面から溢れ出し、前記2つの成形面に沿って流れ、そして前記下頂部(108)で
合流するようにして
、単体のガラスリボンを形成す
る工程、
(D)前記ガラスリボンを前記下頂部(108)の下方に引き延ばして前記板ガラスを成形する工程、
を含む。
【0021】
本発明の第2の態様の特定の実施形態では、CR2/CR1>10
3、特定の実施形態ではCR2/CR1>10
4、特定の他の実施形態ではCR2/CR1>10
5の関係がある。
【0022】
本発明の第2の態様の特定の実施形態では、前記方法は更に以下の工程(E)及び(F):
(E)前記成形装置本体の前記上側部分(101)を略一定の温度にマッフル炉で維持する工程、及び
(F)前記成形装置本体の前記下側部分(103)
の温度
を、Ttopを前記下側部分(103)の上面の温度とし、Trootを前記下側部分(103)の前記下頂部(108)の温度とした場合に、deltaT=Ttop−Trootの温度勾配を有するように
維持する工程であって、deltaT≧10℃、特定の実施形態ではdeltaT≧20℃、特定の実施形態ではdeltaT≧30℃、特定の実施形態ではdeltaT≧50℃、特定の実施形態ではdeltaT≧80℃、特定の実施形態ではdeltaT≦100℃、特定の実施形態ではdeltaT≦80℃、特定の他の実施形態ではdeltaT≦60℃の関係がある、前記温度勾配を有するようにする工程、
を含む。
【0023】
本発明の第2の態様の特定の実施形態では、前記第2材料は、1200℃の温度で、かつ200psi(約1.38MPa)の荷重を加えた状態で、CR2≦1×10
−5/時間の関係を満たすクリープ変形量CR2を有するように選択される。
【0024】
本発明の第2の態様の特定の実施形態では、前記第1材料は、1200℃の温度で、かつ200psi(約1.38MPa)の荷重を加えた状態で、CR1≧1×10
−13/時間の関係を満たすクリープ変形量CR1を有するように選択される。
【0025】
本発明の第2の態様の特定の実施形態では、前記下側部分(103)は、翼部(104,106)を杭状ブロック(105,107)により支持される各端部に有する。特定の実施形態では、圧縮力F、F’を前記下側部分(103)の各端部に杭状ブロック(105,107)を介して加えて、圧縮モーメントを前記下側部分(103)の内部に生じさせることにより、前記成形装置本体の前記下側部分(103)の
サッギングを低減する。
【0026】
本発明の第2の態様の特定の実施形態では、前記第1材料は基本的に、α−SiC、窒化珪素、または酸窒化珪素から成り、そして前記第2材料は基本的に、ジルコンから成る。
【0027】
本発明の第2の態様の特定の実施形態では、前記上側部分(101)は更にキャビティを含む。特定の実施形態では、加熱素子を前記キャビティ(115)の内部に設けて、前記成形装置本体の前記上側部分(101)を加熱する。
【0028】
本発明の第2の態様の特定の実施形態では、前記上側部分(101)の下面及び前記下側部分(103)の上面は、これらの面に形成される互いに嵌まり合う凹凸形状を有する。
【0029】
本発明の第2の態様の特定の実施形態では、工程(B)は:
(B1)使用済み成形装置本体のうちの前記第1材料で構成される上側部分(101)を入手する工程、
(B2)前記第2材料で構成される新品の下側部分(103)を入手する工程、及び
(B3)前記上側部分(101)を前記下側部分(103)に積み重ねて前記成形装置本体を提供する工程、
を含む。
【0030】
本開示の1つ以上の実施形態、及び/又は態様は、以下の利点のうちの1つ以上の利点を有する。第1に、成形装置本体の上側部分(101)は、生産を多数回行なう過程においてリサイクルし、そして再利用することができるので、下側部分(103)を取り替えるだけで済み、そして下側部分(103)は、小型世代の成形装置本体の場合には修理することもできるので、生産を行なう際の成形装置本体の平均コストを低減することができる。第2に、成形装置本体の稼働寿命は、ジルコンのような1種類のセラミック材料で構成される従来の単体の成形装置本体と比べると、下側部分(103)の
サッギングが少なく、かつ上側部分(101)の
サッギングが無いので、延ばすことができる。第3に、上側部分(101)は、内部キャビティを有するように形成することができ、これにより、成形装置本体の製造に際する材料消費量を減らすことができ、下側部分(103)に加わる重量荷重を低減することができるので、コストを低減することができると同時に、成形装置本体の稼働寿命を延ばすことができる。
【0031】
本発明の更に別の特徴及び利点は、以下の詳細な説明に記載されており、その一部は、当業者であれば、説明から容易に理解することができる、または本発明を、記載の説明、及び本明細書における請求項に明示されている通りに、更には添付の図面の通りに実施することにより容易に理解することができる。
【0032】
これまでの概要説明及び以下の詳細な説明は、本発明の単なる例示に過ぎず、そして概要または構成概念を提供することにより、本発明の本質及び特徴を、本発明が特許請求される通りに理解することができるようにしていることを理解されたい。
【0033】
添付の図面は、本発明に対する理解を深めるために取り込まれ、そして本明細書の一部に組み込まれ、かつ本明細書の一部を構成する。