(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698839
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】リグニン/ポリアクリロニトリルを含有するドープおよび繊維、ならびにこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
D01F 6/54 20060101AFI20150319BHJP
D01F 6/18 20060101ALI20150319BHJP
D01F 9/22 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
D01F6/54 D
D01F6/18 E
D01F9/22
【請求項の数】17
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-515380(P2013-515380)
(86)(22)【出願日】2011年6月7日
(65)【公表番号】特表2013-532238(P2013-532238A)
(43)【公表日】2013年8月15日
(86)【国際出願番号】US2011039484
(87)【国際公開番号】WO2012003070
(87)【国際公開日】20120105
【審査請求日】2012年12月14日
(31)【優先権主張番号】12/828,054
(32)【優先日】2010年6月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510146193
【氏名又は名称】ウェヤーハウザー・エヌアール・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】ビセット,ポール・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ヘリオット,キャロル・ダブリュー
【審査官】
家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−197358(JP,A)
【文献】
特表2011−504970(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0311943(US,A1)
【文献】
米国特許第03723609(US,A)
【文献】
米国特許第03461082(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F1/00−6/96
D01F9/00−9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグニンとポリアクリロニトリルもしくはポリアクリロニトリルコポリマーを、リグニンとポリアクリロニトリルもしくはポリアクリロニトリルコポリマーの両方を溶解する有機溶剤中に含む繊維ドープ溶液であって、
該溶液が、溶液の総重量の10〜35%の固形分を有し、該リグニンが、溶液中の固形分の総重量の5〜45%であり、該溶液が、20℃〜80℃の温度にて20〜1500ポアズの粘度を有する、上記繊維ドープ溶液。
【請求項2】
20℃〜80℃の温度にて20〜1000ポアズの粘度を有する、請求項1に記載の繊維ドープ溶液。
【請求項3】
20℃〜80℃の温度にて20〜500ポアズの粘度を有する、請求項1に記載の繊維ドープ溶液。
【請求項4】
20℃〜80℃の温度にて20〜100ポアズの粘度を有する、請求項1に記載の繊維ドープ溶液。
【請求項5】
リグニンが、溶液中の固形分の総重量の10〜45%である、請求項1に記載の繊維ドープ溶液。
【請求項6】
リグニンが、溶液中の固形分の総重量の30〜45%である、請求項1に記載の繊維ドープ溶液。
【請求項7】
リグニン、ポリアクリロニトリルもしくはポリアクリロニトリルコポリマー、およびリグニンとポリアクリロニトリルもしくはポリアクリロニトリルコポリマーの両方を溶解する有機溶剤を混合して、20℃〜80℃の温度にて20ポアズ〜1500ポアズの粘度を有する繊維ドープ溶液を得ることを含む繊維ドープ溶液の製造方法であって、
溶液中の全固形分が、溶液の総重量の10%〜35%であり、溶液中のリグニンの重量が、溶液中の固形分の重量の5%〜45%である、上記方法。
【請求項8】
紡糸し、凝固させ、そして溶剤を抽出して繊維を形成させることによってドープから繊維を製造することをさらに含み、該紡糸が、溶液紡糸またはドライジェット湿式紡糸の一方である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
繊維を延伸して繊維の直径を小さくし、さらに分子配向を増大させることをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
繊維を洗浄して繊維から残留溶剤を除去することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
繊維を空気雰囲気中にて200℃〜300℃の範囲の温度で加熱することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
繊維を不活性雰囲気にて600℃〜2000℃の温度で炭化させることをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法による生成物。
【請求項14】
請求項12に記載の方法による生成物。
【請求項15】
全固形分の10重量%〜45重量%のリグニンを含み、そしてポリアクリロニトリルもしくはポリアクリロリトリルコポリマーをさらに含む繊維であって、
該繊維が、(a)7倍〜15倍の全延伸;(b)0.6〜4.5のデニール;(c)8ミクロン〜25ミクロンの直径;(d)30ksi〜100ksiの引張強度;(e)0.60Msi〜20Msiの、ヤング率としても知られている引張弾性率;または(f)8%〜18%の伸び;の特性の1つ以上を示す上記繊維。
【請求項16】
全固形分重量の10重量%〜45重量%のリグニンと、ポリアクリロニトリルもしくはポリアクリロリトリルコポリマーとを、200℃〜300℃で60分〜180分加熱して得られる反応生成物を含む酸化繊維であって、
該酸化繊維が、(a)6ミクロン〜22ミクロンの直径;(b)10ksi〜30ksiの引張強度;または(c)3%〜20%の伸び;の特性の1つ以上を示す上記酸化繊維。
【請求項17】
全固形分重量の10重量%〜45重量%のリグニンと、ポリアクリロニトリルもしくはポリアクリロリトリルコポリマーとを、繊維が炭化されるまで炭化温度に保持して得られる反応生成物を含む炭化繊維であって、
該炭化繊維が、(a)5ミクロン〜20ミクロンの直径;(b)80ksi〜400ksiの引張強度;(c)7Msi〜30Msiのモジュラス;または(d)0.8%〜1.4%の伸び;の特性の1つ以上を示す上記炭化繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアクリロニトリル(PAN)もしくはPANコポリマーと、リグニンをさらに含有する溶剤とを含む、繊維を製造するための、ポリアクリロニトリル(PAN)もしくはPANコポリマーベースのドープの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
ドープを、例えば溶液紡糸や湿式防止によって処理して、繊維を製造することができる。こうして得られる繊維をさらに処理して、例えば酸化繊維や炭化繊維などの生成物を製造することができる。酸化繊維は、耐燃性に関して有用であり、炭化繊維は、高強度繊維を必要とする用途に使用するのに、あるいは複合材料を製造する上で使用するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0003】
上記の態様および本発明の付随する利点の多くは、添付の図面と併せて下記の詳細な説明を参照することでより容易に理解できるようになり、より理解が深まるであろう。
【
図1】
図1は、“未加工”繊維(前駆体)、酸化繊維、および炭化繊維の特性を示している表である。
【
図2】
図2は、PAN1とPAN2に関して、リグニン含量、固形分、および溶液粘度の関係を示すグラフである。
【
図3】
図3は、50℃でのPAN4に対する実測粘度と予測粘度との関係を示すグラフである。
【
図4】
図4は、PAN4に対する固形分とリグニンの関数としての粘度を示す。
【
図5】
図5は、PAN4とPAN4/リグニンの、時間の経過に対して測定した粘度を示す。
【0004】
過去30年にわたって、PANとPANコポリマーは、熱処理繊維と炭素繊維の製造に対して使用される前駆体繊維としての業界標準であった。炭素繊維は、低重量、高強度、剛性、および耐疲労性の点で高く評価されている。
【0005】
本明細書で使用している“PAN”は、約50,000〜500,000の範囲の分子量と1〜4の固有粘度を有するポリアクリロニトリルホモポリマーを表わしている。
本明細書で使用している“PANコポリマー”は、ポリアクリロニトリルと、PAN−ビニルアセタート、PAN−メチルアクリラート、またはPAN−メチルメタクリラート等のコポリマーをもたらすためのビニルアセタート、メチルアクリラート、メチルメタクリラート、またはメチルイタコナート等のコモノマーとのコポリマーを表わしている。PANコポリマーの分子量は、約50,000〜500,000の範囲であってよい。
【0006】
PANもしくはPANコポリマーを溶解して紡糸ドープを造るのに溶剤が使用される。使用される溶剤は、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMAAもしくはDMAc(ジメチルアセトアミド)、およびDMSO(ジメチルスルホキシド)である。幾つかの化学物質に対する溶剤として使用するのにビスコース溶液が考えられるけれども、ビスコース溶液は、PANもしくはPANコポリマーと共には使用されない。
【0007】
PANを製造するための重合プロセスにおいて、さらなる成分を加えることができる。例えば、当業者は、ビニルカルボン酸等のカルボン酸含有化学種を含めて、アクリルアミドの環化を容易にする薬剤を熟知している。本明細書に記載のドープ中に組み込むことができるカルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、メサコン酸、シトラコン酸、p−ビニル安息香酸、m−ビニル安息香酸、およびこれらのアルカリ塩とアンモニウム塩などがあるが、これらに限定されない。カルボン酸含有化学種は、本明細書に記載のドープに最大で1%までの量にて加えることができる。
【0008】
次いで、PANドープまたはPANコポリマードープを繊維に紡糸する。
ドープを繊維に紡糸する幾つかの方法は、当業界において知られている。溶液紡糸もしくは湿式紡糸とドライジェット湿式紡糸は、本明細書に記載の繊維を製造する上で、本発明の方法において使用できる代表的な方法である。紡糸技術に関するさらなる知見が、後述の実施例において説明されている。
【0009】
溶液紡糸もしくは湿式紡糸は、当業界においてよく知られている。溶液紡糸もしくは湿式紡糸においては、繊維に造り上げようとするポリマーを溶剤中に溶解して粘稠な紡糸ドープを造る。一般には、ドープを、フィルターに、そして多孔紡糸口金に通して凝固浴中に送る。紡糸口金を出たドープは、ドープ凝固物(dope coagulates)としての繊維となる。ドープの凝固は、繊維中への水(逆溶剤)の、そして溶剤が繊維から出ていく相互拡散(co-diffusion)の結果として起こる。繊維は通常、溶剤延伸浴に送られ、そこで繊維が延伸され、その結果より小さな直径に引き伸ばされる。残留溶剤は、一連の洗浄工程において除去される。次いで繊維を乾燥する。得られる繊維を、必要に応じて、より小さな直径になるようさらに引き伸ばすことができる。
【0010】
ドライジェット湿式紡糸では、粘稠なポリマードープを、繊維の形態で紡糸口金からエアギャップ中に、そしてエアギャップを通して凝固浴中に押し出し、そこでポリマードープを繊維に凝固させる。エアギャップの通過は、繊維の長さ方向にポリマー分子の幾らかの配向をつくり出す幾らかの張力と重力(引力)のもとでなされる。凝固浴はさらに、ドープから溶剤を抜き取る。繊維が凝固浴を出ていくときに、繊維に張力を加える。これにより繊維が延伸され、したがって繊維の長さ方向におけるポリマー分子の配向度が向上する。繊維を洗浄工程に通して残留溶剤を除去し、次いで繊維を乾燥する。
【0011】
本明細書で使用している“ドープ溶液の固形分”は、溶液中に存在する、溶剤以外の材料である。溶液中の固形分の重量は、溶剤の重量を差し引いた溶液の総重量である。
ドープ中の固形分が繊維製造速度の決定要因である。ドープの固形分を増大させることで、繊維製造速度を増大させることができる。しかしながら、粘度が圧力と圧送性能に対するプロセス設計限界を超えると、粘度が繊維製造に対する律速因子になる。ドープの固形分とドープの粘度も関係している。ドープの固形分を増大させると、ドープの粘度が増大する。ドープ中の固形分を増大させることによって製造速度を増大させることと、ドープの固形分を増大させたことでドープがあまりにも粘稠になるので製造速度が低下することとの間で相反する関係がある。
【0012】
PANドープまたはPANコポリマードープの粘度も、繊維形成の傾向の決定要因である。PANまたはPANコポリマーの粘度があまりにも低すぎて、押し出されると液滴または不連続繊維になる場合は、繊維は形成されない。PANまたはPANコポリマーが繊維を形成する前の、より低い粘度の限界値がある。これは、一般には約20ポアズである。
【0013】
PANドープ又はPANコポリマードープの粘度は、繊維を形成するほどに充分に高くなければならないが、良好な製造速度をもたらすような割合で紡糸口金もしくは押出ヘッドを流れるほどに充分に低くなければならない。PANドープ又はPANコポリマードープの固形分は、良好な製造速度をもたらすような流量を示すほどに充分に高くなければならない。ドープの固形分と粘度は、良好な製造速度をもたらすようバランスをとらなければならない。
【0014】
1つの実施態様では、最大粘度は20〜80℃にて1500ポアズである。他の実施態様では、最大粘度は20〜80℃にて1000ポアズである。
PANドープまたはPANコポリマードープの粘度はさらに、使用される他のポリマー、および使用できる任意の添加剤に依存する。粘度はさらに、ドープの温度に依存する。温度を上げるにつれて、粘度が低下する。
【0015】
温度を高くするほど粘度が低下するので、ドープ溶液の温度を上げることが固形分を増大させる方法である。ここで再びトレードオフが生じる。なぜなら、温度を高くすると、プロセスのエネルギーコストと繊維製品のコストが上がるからである。さらに、ドープ中に他の反応が起こる前にドープを加熱することができる最高温度がある。
【0016】
本発明者らは、ドープの粘度を使用可能範囲に保持するためのより高い温度に対する必要性を軽減したプロセスと製品を開発した(これによりプロセスコストと得られる製品のコストが低下する)。粘度と温度が下がることで、より高い粘度とより高い温度に対して必要とされるより堅牢な装置に対する必要性が軽減する。この新規なプロセスと製品はさらに、製品の原材料コストも低下させる。
【0017】
リグニンをPANドープまたはPANコポリマードープに加えることにより、ドープの粘度を低下させ、ドープの固形分を増大させることができる、ということを本発明者らは見出した。本発明者らはさらに、PANドープまたはPANコポリマードープに加えることができるリグニンの最大量が固形分の重量の45%である、ということを見出した。ドープの固形分は、溶剤の重量を差し引いたドープの総重量である。ドープの固形分は、PANまたはPANコポリマー、任意の添加剤、およびリグニンを含み、ドープの固形分の重量は、これらの成分の総重量である。ドープ中のリグニンの重量は、この総重量の10〜45%である。
【0018】
リグニンは、パルプ工業や製紙工業の一般的な副生物であり、特定のリグニンをむらなく生成する化学パルプ化法において加水分解により樹木から分離される。クラフトリグニン、すなわちサルフェートリグニンは、クラフトパルプ化法により得られ、サルファイトリグニン(リグノサルフェートまたはリグニンスルホネート)は、サルファイトパルプ化法により得られる。高圧蒸気や有機溶剤を使用して、植物物質からリグニンを抽出することもできる。リグニンの物理的特性と化学的特性は、植物源と処理条件によって決まる。リグノサルフェート(親水性である)は水に溶解しうるが、クラフトリグニン(疎水性である)は水に溶解しない。工業的木材パルプ化法は、モノマーユニット間結合(intermonomeric units and linkages)の種類と比率が異なるためにリグニンの分子量と化学的一様性が変わりうるとしても、むらのない特定の組成を有する安価なリグニンベース前駆体物質の潜在的供給源と見なされている。
【0019】
リグニンは、植物中に見出されるバイオポリマーの1種である。
植物の細胞壁は、主として3種のバイオポリマー(セルロース、ヘミセルロース、およびリグニン)で構成されている。セルロースはD−グルコース分子で構成される比較的単純なポリマーであり、D−グルコース分子が主としてグリコシド結合で互いに連結している。ヘミセルロースは、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マンノース、およびグルコースで構成される分岐ポリマーである。ヘミセルロースポリマーは、セルロースフィブリルの束を結びつけてミクロフィブリルを形成し、そしてリグニンと架橋し、これにより細胞壁の構造安定性を高める複雑な結合ウェブがつくり出される。リグニンは、維管束植物中に見出される複雑な三次元バイオポリマーであり、裸子植物や被子植物における木材の乾燥質量の1/4〜1/3を占める。リグニンは、シンナミルアルコールベースの前駆体(式1)の酵素媒介脱水素ラジカル重合(enzyme-mediated dehydrogenative free-radical polymerization)によって形成される。主要なモノマーユニット間結合(intermonomer unit linkage)はアリールグリセロール−β−O−4アリールエーテル結合である。β−O−4アリールエーテル結合は、リグニン中の全ユニット間結合の48〜60%を占める(Braun et al.,Carbon,43:385−394(2005))。
【0021】
[式中、R
1=H, OCH
3またはAr、
R
2=HまたはOCH
3、
X=OHまたはOAr、または、隣接する炭素原子との結合が二重結合である場合はO、
Y= CH
2OH]
リグニンは、大きく3つに分類することができる:すなわち、軟材もしくは針葉樹(裸子植物)、硬材(双子葉被子植物)、および草本植物もしくは一年生植物(単子葉被子植物)。軟材リグニンは、コニフェリルアルコールモノマーまたはグアイアシルプロパン(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルプロパン)モノマー(式2)から誘導されることを特徴とすることが多い。硬材リグニンは、グアイアシルプロパンモノマーからのポリマーのほかに、3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシフェニルプロパンモノマー(式3)からのポリマーも含有する。草本リグニンは、これら両方のモノマーからのポリマーと、4−ヒドロキシフェニルプロパンモノマー(式4)からのポリマーを含有する。同様の方法によって単離した場合、硬材リグニンは、軟材リグニンと比べて、種による構造の不均一性がはるかに高い。
【0023】
使用できる代表的な軟材は、マツ、トウヒ、カラマツ、ダグラスファー、アメリカツガ、シーダー、およびビャクシンである。使用できる代表的な硬材は、アスペン、シナノキ、ブナノキ、カバノキ、ハコヤナギ、ゴムの木、トネリコ、クリの木、ニレ、およびユーカリノキである。
【0024】
木材パルプ化法では、木材中のリグニンとヘミセルロースのほとんどが、蒸解装置中にて、硫酸塩蒸解液または亜硫酸塩蒸解液によって、セルロースから分離される。蒸解液中の化学薬品がヘミセルロースおよびリグニンと反応し、これらを溶解させて溶液にする。パルプ蒸解装置を出ていく物質は、リグニンとヘミセルロースを含有する黒液であり、パルプ繊維は、セルロースと残留リグニンと残留ヘミセルロースを含有する。この残留物質は、あとの漂白段階において除去される。
【0025】
リグニンは、当業界に公知の一連の酸処理を使用してリグニンを優先的に沈殿させるよう設計されたプロセスを使用することによって、黒液から精製することができる。クラフト法リグニンは一般に、フェノール基のpKa未満のpHにて、クラフトパルプ化法の黒液からの酸沈殿によって単離される。リグニンを沈殿させる条件に応じて、沈殿したリグニンは、遊離酸リグニンまたはリグニン塩の形態をとることがある。リグニンを高pH(例えば約9.5〜10)にて沈殿させると、リグニンは塩の形で得られる。次いでこのリグニンを、洗浄および低pH(例えば約2〜5)への酸性化によって処理し、塩と灰形成成分を実質的に含有しないようさらに洗浄すれば、“A”リグニンとして知られている遊離酸リグニンが得られる。リグニンの一価の塩(例えば、アルカリ金属塩やアンモニウム塩)は水溶性であるが、遊離酸リグニンやリグニンの多価金属塩は水に不溶である。本発明に対して適切なリグニンは、水溶性ではない。黒液からリグニンを、そしてリグニンを含有する液/スラリーからリグニンを分離するための代表的な方法は、それぞれ国際公開第2006/031175号と国際公開第2006/038863号に記載されている。ある程度精製されたリグニンは、Westvaco社(SWKL-Indulin AT(商標))やRepap社(Organosolv リグニン-Alcell(商標))等の幾つかの商業的供給業者から購入することができる。さらに、溶媒抽出法を使用して、種々の供給源からリグニンを生成させることもできる。
【0026】
リグニンはさらに、他の種類のバイオマス(草を含む)から、および大規模な醸造もしくはバイオリファイナリープロセスにおける廃棄物から回収されるリグニン高含量物質の安定したバッチから製造することもできる。リグニン供給原料中のリグニンの絶対量と相対量は変わってよい。大規模製造プロセスは通常、リグニンベース前駆体の安価な供給源、あるいは、本発明のプロセスに直接使用できるか、または酵素もしくは化学薬品で前処理してリグニンの精製と粗製のバルク状供給原料からの回収を容易にすることができる供給原料をもたらす。例えば、酵素を使用してリグニンを分解させる(分子量が好ましい範囲に低下する)こともできるし、あるいは分子間架橋の量を減らすこともできる。さらに、化学薬品を使用して、リグニンベース物質上の選定された側鎖もしくは選定された部分を変化させることができるし、あるいはサブユニット間の分子内結合または鎖間の分子間結合の加水分解を容易にすることもできる。酵素処理または薬剤処理は通常、得られる生成物の物理的または化学的特性を改良するように、均質性を高めるように、好ましい溶剤に対する望ましい溶解性を達成するように、好ましい分子量範囲を選択するように、あるいは繊維の紡糸性を容易にするように設計されている。
【0027】
1つの実施態様では、リグニン供給原料は、0.2重量%未満の全灰分を有するものとして特徴づけられる。さらに、本実施態様では、クラフトリグニンは、1,000〜30,000の重量平均分子量(他のリグニン源の場合はより高い場合がある)を有してよい。本発明の1つの実施態様は、プロセスに供給されるリグニンが、精製リグニン、黒液沈殿物、およびバイオリファイナリー廃棄物もしくは醸造廃棄物から調製されるリグニン/セルロース残留物からなる群から選択される、というプロセスを含む。リグニンは、軟材物質からも、硬材物質からも製造することができる。本発明の他の実施態様は、リグニンが黒液からのものであって、軟材繊維供給源から製造される、というプロセスを含む。本発明の他の実施態様は、リグニンが黒液からのものであって、(a)濾過する工程;(b)黒液を酸性化してリグニンを沈殿させる工程;(c)酸性化した黒液を遠心分離または濾過して、リグニン沈殿物を黒液から分離する工程;(d)リグニンを洗浄して灰分等の異物を除去する工程;(e)必要に応じて濾過を行って、リグニンを洗浄水から分離する工程;(f)必要に応じてさらに洗浄と濾過を行う工程;および(g)リグニンを乾燥させる工程;を含むプロセスによって製造される、というプロセスを含む。
【0028】
リグニンとリグニンフラクションをベースとする炭素繊維を製造しようとする試みが幾つかあったが、これらの試みは、これまでのところ、前駆体繊維から熱処理繊維もしくは炭素繊維への転化に必要な後続処理を施しやすい、望ましい化学的・物理的特性を有するフィラメントを製造できないことから限定されている。これらの試みは、小さな直径と良好な生強度を有する柔軟な長繊維をもたらしていない。これらの試みでは、繊維を製造する際の主要な(しばしば単独の)成分としてリグニンが検討され、このようにして得られた繊維は堅くて脆かった。リグニンを加熱して溶融状態にして、これを押し出すという溶融紡糸が検討された。軟材リグニンは炭化することが多く、また硬材リグニンは簡単には安定化せず、したがって繊維は溶融するか又は強度の低下を招くボイドを生じた。
【0029】
溶融紡糸はリグニン含有繊維を製造するための方法とはならない、ということに本発明者らは気付いた。リグニンは繊維中の主成分にすべきではない、ということに本発明らは気付いた。リグニンは、他の物質に対する添加剤とすべきである。
【0030】
リグニンとPANもしくはPANコポリマーをベースとするドープとを組み合わせることで相乗効果が得られる、ということに本発明者らは気付いた。リグニンは、そのままでは繊維特性がかなり劣っている。PANもしくはPANコポリマーをベースとするドープは、良質の繊維をもたらすが、製造上の制限を有する。本発明者らは、優れた特性を有していて、PANドープやPANコポリマードープを使用して前駆体繊維の生産速度を高めることができる繊維を見出した。
【0031】
ドープを製造するとき、リグニンフラクションは、ドープ中の固形分の総重量(すなわち、リグニンと、PANもしくはPANコポリマーと、他の全ての添加剤との総重量)の10〜45%である。溶剤は、PANもしくはPANコポリマーとリグニンとの両方に対して溶剤であるような溶剤でなければならない。これら溶剤の幾つかは、DMF、DMAA(またはDMAc)、およびDMSOである。溶液中の全固形分は10〜35重量%であってよい。実際の全固形分含量は、混合物中のリグニンの量に依存する。混合物中のリグニン対PANもしくはPANコポリマーの比をより高くすれば、溶液中の全固形分含量をより高くすることができる。この目的は、全固形分をできるだけ高く保持しながら、溶液の粘度を、20℃〜80℃の温度にて20〜1500ポアズの範囲に保持することにある。
【0032】
一般には、リグニンとPANもしくはPANコポリマーを溶剤に加え、得られた溶液を混合する。紡糸の前に溶液を脱気して良好な紡糸性を付与し、繊維中にボイドが生成しにくくした。リグニンを含有するPANベースドープとPANコポリマーベースドープは、先述の溶液紡糸もしくは湿式紡糸、またはドライジェット湿式紡糸によって前駆体繊維に紡糸することができる。得られた繊維を、前述のように、凝固させ、延伸し、洗浄し、濾過し、そして乾燥させる。
【0033】
本明細書に記載の前駆体繊維、酸化繊維、および炭化繊維は、種々の分析法によって特徴付けることができる。特徴付けの特性としては、化学物質含有量、重合度、X線回折、繊維径、引張強度、複屈折、結晶化度、TGA、およびDSCなどがある。これらの特性を測定するための手法は当業界によく知られており、種々の方法が後述の実施例において説明されている。
【0034】
代表的な前駆体繊維は、10〜45重量%のリグニンを含み、ポリアクリロニトリルもしくはポリアクリロニトリルコポリマーをさらに含み、7〜15倍の全延伸、0.6〜4.5のデニール、8〜25ミクロンの直径、30〜100ksiの引張強度、0.6〜20Msiの引張モジュラス、および8〜18%の伸びを有する。
【0035】
レーヨン、ピッチ(石油や石炭からの)、およびPANを含めた種々の前駆体物質から製造されている炭素繊維は、その強度、剛性、耐疲労性、および低重量の点から極めて有用である。炭素繊維複合材料は、航空宇宙材料、スポーツ用品、海洋製品、および自動車産業用の製品において使用されており、他にも多くの用途がある。炭素繊維は、繊維構造を保持しつつ、繊維を不活性雰囲気にて最高2000℃までの温度で処理することによって製造することができる。1つの実施態様では、温度は600〜2000℃である。代表的な炭化繊維は、ポリアクリルニトリルもしくはポリアクリルニトリルコポリマーとリグニンとの反応生成物を含み、5〜20ミクロンの直径、80〜400ksiの引張強度、7〜30Msiの引張モジュラス、および0.8〜1.4%の伸びを有する。
【0036】
炭化の前に、分子内架橋と分子間架橋を起こしやすくするよう、最初に前駆体繊維を酸化によって(前駆体繊維を、空気の存在下にて200〜300℃で60〜180分加熱することによって)安定化させて、熱的に安定化された繊維(炭化の際に、収縮、溶融、および融解が起こらない)を生成させる。代表的な酸化繊維は、ポリアクリルニトリルもしくはポリアクリルニトリルコポリマーとリグニンとの反応生成物を含み、6〜22ミクロンの直径、10〜30ksiの引張強度、および3〜20%の伸びを有する。
【0037】
PAN前駆体繊維の製造方法、およびPAN前駆体繊維から酸化繊維と炭化繊維を製造する方法は公知である。米国特許第5,804,108号明細書が代表的な特許文献である。
【0038】
酸化と炭化の加熱プロセスにおいては、酸化温度と炭化温度においてPANもしくはPANコポリマーとリグニンとの反応生成物が存在することがある。
本明細書にて説明した方法はいずれも、本明細書に記載の任意のリグニン/PAN繊維またはリグニン/PANコポリマー繊維を使用することができる。
【実施例】
【0039】
特に明記しない限り、列挙されている実施例では下記の材料を使用した。
ポリアクリロニトリル(PAN) PAN1、PAN2、PAN3、およびPAN4は、Sterling Fiber社(Pace,Florida)から供給された。PAN1とPAN2は炭素繊維前駆体グレードであり、PAN3とPAN4は織物グレードである。
【0040】
【表1】
【0041】
リグニン 主としてトウヒ樹種繊維源のパルプ化からの黒液を酸沈殿することによって得られる軟材クラフトリグニンを使用した。
実施例1:“未加工の”(前駆体)繊維の製造と特性決定
リグニンとPANもしくはPANコポリマーとをブレンドして得られる溶液または“ドープ”を、成分材料と溶剤との重量/重量ブレンドによって調製した。ブレンドの標準的な調製方法は、ある一定量のリグニンを溶剤中に溶解することによって、既知固形分のリグニン溶液を調製するという仕方である。既知のリグニン/溶剤溶液の正確なアリコートを計量し、次いで追加の溶剤を計量してサンプルに加えた。次いで特定量の所望のPANもしくはPANコポリマーを、所望のリグニン/PAN比またはリグニン/PANコポリマー比と全固形分に達するのに必要な量にてサンプルに加えた。調製されたサンプルを、Silverson L5M−Aシリーズの高せん断実験用ミキサーを使用して混合した。PAN溶液、リグニン/PAN溶液、またはリグニン/PANコポリマー溶液を通常は一晩静置し、次いで脱気してから紡糸した。ドープの脱気は、約30インチHgの減圧をもたらす標準的な実験用真空ポンプを使用して行った。
【0042】
紡糸は、実験用の溶液紡糸ラインを使用して行った。当業者には、溶液紡糸プロセスが複雑であることがよく理解されている。溶液紡糸の一般的なプロセスは文献中に詳細に説明されており、この作業と関連した紡糸は、典型的な繊維加工手順に従って行われる。繊維の形成と延伸のための正確な条件は、実際の紡糸条件、繊維性能、およびプロセシング特性に応じて変えた。溶液紡糸によるアクリルベース繊維に関連した技術は、“Acrylic Fiber Technology and Applications,1995,James C.Mason編,New York,Marcel Decker社”等の文献中に記載されている。
【0043】
一般には、調製ドープを、30〜1000ホール(各ホールの径は45〜75ミクロン)の紡糸口金に通して紡糸した。次いで繊維を、40重量%のジメチルアセトアミド(DMAc)と60重量%の水の浴中にて凝固させた。後続の浴は、20重量%のDMAcと80重量%の水の溶剤濃度を有する溶剤延伸浴であった。次に繊維を周囲温度の水中で洗浄した後に、80〜90℃の温水浴中で洗浄し、それからほぼ沸点(約99℃)の高温延伸浴中で洗浄した。繊維を乾燥し、4つの一連の電気加熱ロールを使用して延伸した。
【0044】
修正されたASTM D7269標準(修正は下記参照)を使用して、未加工前駆体繊維(単一トウ)の機械的特性を測定した。Blue Hill2ソフトウェアのバージョン2.19で動作するインストロン4400Rフレームを、100Nのロードセルと連動させて使用した。試験用の寸法はゲージ長が250mmであり、ヤーンの形状は標準的であり、試験速度は125.00mm/分であった。長方形の空気圧式グリップを40psiの圧力で使用した。最初に繊維サンプルを、相対湿度50%および温度22℃にて24時間状態調節した。試験手順を開始する前に、約1〜2メートル長さのヤーン/繊維トウをスプールから取り除いた。各試験片を、上部グリップと下部グリップとの中心部にできるだけ密に巻き付け、ヤーンをねじらないように注意しながら所定の箇所にクランプ止めした。試験の完了後、ヤーンの破断がどちらかのグリップの10mm以内で起こっていなければ、反復実験を“良好(good)”と見なし、そうでない場合は反復を不合格にした。“良好な”反復実験をレポートの算出に使用した。
【0045】
下記は、ASTM D7269手順に対する修正である。
セクション6.1.1−長方形のグリップを使用する(Bollardスタイルではない)。
セクション7.3.3−必要な量のヤーンを取り除いた後、サンプルを個々のセグメント長にカットせずに、連続ストランドで試験した。新たな試験を行う前に、試験した領域(post-tested areas)を試験範囲から外に引っ張った。
【0046】
【表2】
【0047】
これらの“未加工”繊維の特性から、工業的な酸化繊維及び/又は炭化繊維などを製造するための前駆体繊維として考慮する上で魅力的な機械的・物理的特性をもつ繊維が、リグニンを組み込むことによって得られることがわかる。
【0048】
実施例2:酸化繊維と炭化繊維の製造と特性
実施例1で製造した繊維を酸化し、そして炭化して、例えば難燃性繊維もしくは炭素繊維として使用することができる繊維を得た。
【0049】
前駆体繊維(PAN3)を、最高温度300℃で約2時間酸化した。酸化後のフィラメントの特性を
図1に示す。
炭化繊維は、先ず上記の繊維を酸化することによって、次いで繊維を最初に600℃までの低温炭化に通し、引き続き1200℃までの高温炭化に通すことにより連続プロセスにて炭化させることによって得た。炭化は全て窒素雰囲気下で行った。炭化繊維の特性も
図1に示す。
【0050】
酸化・炭化繊維の引張強度(ksi)、ピーク応力時の歪(%)、およびモジュラス(Mpsi)は、ASTM標準法D3379に従ってMTS Alliance RT/5テスターを使用することにより測定した。
【0051】
実施例3:リグニン濃度が溶液粘度に影響を及ぼす
リグニンは低い重合度を有し、相溶性の有機溶媒中に、加熱すると50%過剰の固形分レベルにまで溶解したときに低粘度の溶液をもたらす。リグニンは、合成ポリマーブレンドまたは合成コポリマーブレンド(PAN、PANのコポリマー)とブレンドすると、同等の溶液固形分レベルおよび温度にて比較したときに、得られる溶液または繊維ドープ溶液の粘度をかなり低下させる(表3を参照)。
【0052】
【表3】
【0053】
リグニン含量と得られる溶液粘度との関係は、調製される全固形分に依存する(
図2に示す)。
図2において、50%リグニンでのプロットは、ゲル粘度未満の粘度を有する。
実施例4:実験的に測定される粘度の表面応答モデルの生成
モデルは、リグニン、PAN、もしくはPANコポリマーの量、および所定の温度にて所望の粘度を達成するために必要とされる全固形分の予備的な決定のために使用することができる。モデルは、所定量のリグニン、PAN、もしくはPANコポリマーに対する粘度、および全固形分の実測に基づいている。ターゲットとする粘度の測定値を得るために、数ラウンドの実測が必要とされることがある。
【0054】
リグニンとPANもしくはPANコポリマーとのドープ溶液は、3種の成分(ポリマー、リグニン、および溶媒)の混合物からなる。オーブン乾燥したポリマーもしくはコポリマー(P)の重量、オーブン乾燥したリグニン(L)の重量、および一定の固形分フラクションと一定のリグニンフラクションを達成するのに必要とされる溶媒(S)の重量を算出する。
【0055】
【表4】
【0056】
本実施例では、ターゲットとするドープ条件を得るために、45ポアズの粘度と50℃の温度を使用した。他のターゲット値を選択することもできる。
応答表面を測定するためのデータ・セット(data set)は、n(30以上){S,L,V}データトリプル(data triples)を使用した。次いでデータ・セットを使用して、モデルを粘度データに適合させた。S、L、およびVに対する応答表面を得るために、モデルからの係数を使用して、興味ある関連区域における全(S、L)対での粘度を予測した。
【0057】
粘度(V)は、リグニン(L)と固形分(S)の関数としてモデル化される。1つのモデルは下記の通りである。
【0058】
【表5】
【0059】
このモデルの目的は、(1)実測データをよく適合させ;(2)誤差に対して充分な自由度を有し;そして(3)選定された{S,L}対にて平滑な表面を描くことができる平滑化関数を得ることにある。
【0060】
モデルフィッティングのための方法として、潜在構造(PLS)への投影を選定した。これは通常、データを極めて適切に適合させるからである。
図3は、50℃でのPAN4に対する実測粘度vs.予測粘度を示す。31個のポイントがあり、モデルは15パラメーターを有する。従って誤差に対して16自由度がある。r
2値は0.97であり、従ってモデルとデータは比較的よく一致している。
【0061】
次に適合モデルからの係数を使用して、0.12<S<0.2および0.1<L<0.5の範囲に対する全ての{S,L}対にて粘度を推定した。得られる粘性表面(viscosity surface)を
図4に示す。
図4では、60ポアズを超える粘度値と30ポアズ未満の粘度値を切り捨てており、ターゲット粘度である45ポアズ付近の粘度値だけを残してある。
【0062】
図4は、リグニン含有溶液とPAN含有溶液に対する応答表面がかなり急勾配であること、そして良好な繊維紡糸性を得るための許容しうる粘度範囲を限定することができる、ということを示している。このことは、繊維製造のための適切なドープ特性を達成できる確率を高める上でこのモデル化法が有用であることを示している。
【0063】
実施例5:リグニン/PAN溶液の安定性
図5は、PAN4とリグニン/PAN4の、時間の経過に対して測定した粘度値を示す。リグニンとPANの溶液は、時間の経過に対して良好な粘度安定性を示し、調製したポリマー溶液中のリグニン含量による粘度安定性へのはっきりした影響は見られない。
【0064】
図を挙げて幾つかの実施態様を説明してきたが、本発明の要旨を逸脱することなく種々の変更を行うことができるのはもちろんである。