(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シリカ及びジルコニア化合物が含まれる担体前駆体を温度250℃以上450℃以下で焼成して得られる担体と、該担体に担持されたコバルト酸化物及び/又はルテニウム酸化物と、を含有し、
前記担体前駆体における前記ジルコニア化合物の含有量が、触媒の全質量を基準として酸化ジルコニウム換算で0.01〜7質量%であり、
メソ細孔容積が0.35cm3/g以上且つ比表面積が130m2/g以上である、フィッシャー・トロプシュ合成用触媒。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本実施形態に係る第1のFT合成用触媒の製造方法は、温度T
1で焼成されたシリカと、ジルコニウム化合物と、が含まれる担体前駆体、を温度T
2で焼成して担体を得る工程と、上記担体と、コバルト化合物及び/又はルテニウム化合物と、が含まれる触媒前駆体、を温度T
3で焼成する工程と、を備えるフィッシャー・トロプシュ合成用触媒の製造方法であって、上記担体前駆体におけるジルコニウム化合物の含有量が、触媒の全質量を基準として酸化ジルコニウム換算で0.01〜7質量%であり、T
1、T
2及びT
3が下記式(1)〜(3)の条件を満たすことを特徴とする。
T
1≧T
3 …(1)
250℃≦T
2≦450℃ …(2)
250℃≦T
3≦450℃ …(3)
【0024】
本実施形態で用いるシリカとしては、コロイダルシリカ、水ガラス、アエロジル、エアロゲル、シリカゾル、シリカゲル、粉末シリカ、及びケイ酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を好ましく用いることができる。
【0025】
シリカの比表面積は、50〜500m
2/gであることが好ましく、150〜400m
2/gであることがより好ましい。比表面積が50m
2/gより小さいとコバルトなどの活性金属が凝集しやすくなる傾向がある。一方、比表面積が500m
2/gより大きいと、細孔径が小さくなりすぎて、コバルトなどの活性金属の担持により細孔が閉塞されやすくなる傾向がある。
【0026】
なお、本明細書において比表面積とは窒素吸着法による測定で求められる値を意味する。
【0027】
シリカの比表面積は以下の方法で算出される。まず、シリカに吸着した水分を除去するため、例えば、300℃、5時間の真空排気する前処理を行う。この前処理後のシリカについて、日本ベル(株)社製 BELSORP−maxを使用し、液体窒素温度(−196℃)で窒素を用いた定容量法ガス吸着法により吸脱着等温線を自動測定する。データの解析には、装置附属の解析ソフトウェア(BEL Master
TM)を用いることができ、測定された窒素の吸脱着等温線はBETの式にて自動解析され、シリカの単位質量当りの表面積(m
2/g)が算出される。
【0028】
シリカの平均細孔径は、8〜25nmであることが好ましく、10〜20nmであることがより好ましく、10〜15nmであることが更により好ましい。平均細孔径が8nmより小さいと、拡散律速により反応活性が低くなる傾向がある。一方、平均細孔径が25nmより大きいと、担体の表面積が低くなるため担持金属が凝集しやすくなり、反応活性の低下を招く傾向がある。
【0029】
また、反応中の触媒摩耗を抑制する観点から、シリカの平均細孔径が10〜15nmであることが好ましい。
【0030】
なお、本明細書において平均細孔径とは窒素吸着法による測定で求められる値を意味する。
【0031】
シリカの平均細孔径は以下の方法で算出される。まず、シリカに吸着した水分を除去するため、例えば、300℃、5時間の真空排気する前処理を行う。この前処理後のシリカについて、日本ベル(株)社製 BELSORP−maxを使用し、液体窒素温度(−196℃)で窒素を用いた定容量法ガス吸着法により吸脱着等温線を自動測定する。データの解析には、装置附属の解析ソフトウェア(BEL Master
TM)を用いることができ、測定された窒素の吸脱着等温線はBJH法にて自動解析され、シリカの平均細孔径が算出される。
【0032】
また、シリカの形状は特に限定されないが、球状品、破砕品、円往状成形品等の各種形状品の中から使用することができ、プロセスに適合した形状を選択することができる。シリカの平均粒子径についても制限はなく、例えば、5μm〜10mm、好ましくは5μm〜5mm、より好ましくは5〜150μm、さらに好ましくは10〜100μmのものを、プロセスに応じて適宜選択して使用することができる。シリカの平均粒子径は、粒度分布測定装置を用いて測定でき、例えば、ベックマン・コールター株式会社製コールターカウンター Multisizer 3を使用し、電気的検知帯法(コールター原理)により、自動測定・算出される。
【0033】
シリカの焼成温度T
1は上記式(1)を満たすことが好ましく、高い温度で焼成すると焼結を引き起こし、所望の細孔径が得られにくくなる傾向にあることから250〜700℃であることが好ましく、400〜650℃であることがより好ましい。焼成時間は、例えば、0.5〜10時間とすることができる。焼成は、例えば、空気中などの分子状酸素の存在下で行うことができる。
【0034】
担体前駆体には、シリカ以外の担体材料として、アルミナ、チタニア、マグネシア、セリア及びジルコニア並びにこれらの複合酸化物からなる群より選択される1種以上を含有させることができる。複合酸化物としては、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア、アルミナ−チタニア、シリカ−ジルコニア、アルミナ−ジルコニア、チタニア−ジルコニアなどが挙げられる。
【0035】
本実施形態で用いるジルコニウム化合物としては、硝酸ジルコニール(ZrO(NO
3)
2)、酸塩化ジルコニウム(ZrOCl
2)、水酸化オキソ塩化ジルコニウム(ZrO(OH)Cl)、硫酸ジルコニール(ZrOSO
4)、酢酸ジルコニール(ZrO(C
2H
3O
2)
2)、炭酸ジルコニールアンモニウム((NH
4)
2ZrO(CO
3)
2)などが挙げられる。これらのなかでも、硝酸ジルコニール、酢酸ジルコニール、炭酸ジルコニールアンモニウムが好ましい。ジルコニウム化合物は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
担体前駆体の調製方法としては、Incipient Wetness法に代表される含浸法を用いることができる。このとき、担体前駆体におけるジルコニウム化合物の含有量が、触媒の全質量を基準として酸化ジルコニウム換算で0.01〜7質量%となるように設定される。多量のジルコニアはコバルト及び/又はルテニウムの還元性を低下させ、初期活性の低下を招く恐れがあることから、担体前駆体におけるジルコニウム化合物の含有量は、触媒の全質量を基準として酸化ジルコニウム換算で0.1〜6質量%となることが好ましく、0.5〜5.5質量%となることがより好ましい。
【0037】
担体前駆体は、含浸後、例えば、好ましくは50〜150℃、より好ましくは70〜120℃の乾燥温度で、好ましくは0.5〜48時間、より好ましくは1〜24時間乾燥することができる。
【0038】
担体前駆体の焼成温度T
2は250℃以上450℃以下であるが、無定形の無水状態のジルコニアを得やすくするため、300〜400℃が好ましく、350〜400℃がより好ましい。T
2が450℃を超えると、ジルコニアの形態が無定形から結晶へと変化するため好ましくない。T
2が250℃より低いと、ジルコニア化合物の分解開始温度以下となり、十分な触媒活性が得られにくくなる。そのため、焼成温度は用いるジルコニア化合物の分解開始温度以上であることが好ましい。
【0039】
また、担体前駆体の焼成温度T
2は250℃以上450℃以下であるが、高いメソ細孔容積を維持するという観点から、250〜300℃がより好ましい。
【0040】
本実施形態においては、シリカにジルコニウム化合物を酸化物として薄膜担持した担体が得られるように、以下のような方法により担体前駆体を調製し、焼成することが好ましい。
【0041】
先ず、シリカ粒子をpHが7以下の水溶液で前処理する。このとき使用するpHが7以下の水溶液(前処理液)としては、硝酸水溶液、酢酸水溶液、硫酸水溶液、塩酸水溶液、イオン交換水、蒸留水などを挙げることができる。処理液のpHは5〜7が好ましく、6〜7がより好ましい。pHが5未満の場合には、前処理後に行うジルコニウム化合物の担持において、必要な量のジルコニウム化合物を担持するために、使用するジルコニウム化合物溶液の濃度を高くする必要があるため経済的に好ましくない。前処理は、例えば、シリカ粒子を入れた容器に前処理液を加えることにより行うことができる。シリカ粒子を前処理液に浸漬する時間は、静置する場合は10〜72時間程度、振動を与える場合は1〜12時間程度、超音波を照射する場合は1〜30分程度が好ましい。
【0042】
上記前処理を行った後、前処理を施したシリカ粒子を含む容器に上記のジルコニウム化合物を含む溶液を過剰量加え、シリカ粒子に該溶液を含浸させることにより、ジルコニウム化合物をシリカ粒子に担持することができる。このとき、前処理後の前処理液の上澄み部分を予め除去することが好ましい。なお、ここでいう過剰量とは、シリカ粒子の占める体積に対して2倍以上の体積量を意味する。
【0043】
ジルコニウム化合物の使用量は、上記と同様に、触媒の全質量を基準として酸化ジルコニウム換算で0.01〜7質量%となるように設定される。多量のジルコニアはコバルト及び/又はルテニウムの還元性を低下させ、初期活性の低下を招く恐れがあることから、ジルコニウム化合物の使用量は、触媒の全質量を基準として酸化ジルコニウム換算で0.1〜6質量%となることが好ましく、0.5〜5.5質量%となることがより好ましい。
【0044】
ジルコニウム化合物を含む溶液をシリカ粒子に含浸して担持する時間は、目的とする担持量に依存し特に限定されるものではないが、通常3〜72時間である。
【0045】
ジルコニウム化合物の担持終了後、残留した溶液と担体前駆体(ジルコニウム化合物が担持されたシリカ粒子)とを分離し、その後、担体前駆体を乾燥する。乾燥方法は特に限定されるものではなく、例えば、空気中での加熱乾燥や減圧下での脱気乾燥を挙げることができる。通常、温度100〜200℃、好ましくは110〜130℃にて、2〜24時間、好ましくは5〜12時間乾燥を行う。
【0046】
乾燥後、担体前駆体(ジルコニウム化合物が担持されたシリカ粒子)を、ジルコニウム化合物を酸化物へと変換するために上記の温度T
2で焼成する。
【0047】
こうして、シリカにジルコニウム化合物を酸化物として薄膜担持した担体を得ることができる。
【0048】
一般的に、担持工程において担持溶液中の担持化合物は担体の表面水酸基に吸着し、その後の焼成及び/または乾燥工程を経て固定化されて、担持が完了する。なお、細孔を有する担体では担持溶液は毛細管現象により細孔内に拡散し、担持化合物が細孔内の表面水酸基に吸着することで、担持化合物は細孔内に担持される。この際、細孔内の担持化合物の偏在や凝集が起こると細孔閉塞を引き起こし、比表面積の低下につながる。したがって、担持化合物の担持前後の比表面積と細孔径を比較することで、薄膜状態で担持されているかの指標を得ることができる。ただし、細孔閉塞は担持化合物の担持量にも影響する。具体的には、細孔内への担持量が多くなると細孔閉塞を引き起こす傾向にある。そのため、薄膜状態で担持されているかの指標を得る際には、担持化合物の担持量に由来する細孔閉塞分を補正する必要がある。
【0049】
本実施形態においては、以上の観点から導き出された下記式で表される薄膜指数Zが0.1以上であることが好ましく、0.12以上であることがより好ましく、0.15以上であることがさらにより好ましい。なお、薄膜指数Zが0.15以上であれば、細孔内に担持化合物の偏在や凝集による細孔閉塞がほぼ起こっていないことを意味する。
Z=[(B1/A1)×(B2/A2)
2]
R×(Y/X)
(式中のRは、Y/(X−Y)≦1のときR=1、Y/(X−Y)>1のときR=Y/(X−Y)を示す)
A1:シリカの比表面積(m
2/g)、A2:シリカの平均細孔径(nm)、B1:ジルコニウムを酸化物として担持したシリカの比表面積(m
2/g)、B2:ジルコニウムを酸化物として担持したシリカの平均細孔径(nm)、X:A1×4.74×10
−2、Y:担持したジルコニウムの質量%(担体の全質量を基準としたジルコニア酸化物の換算値)。
【0050】
上記の条件を満たす方法としては、シリカの細孔中にある気泡を除去した後、シリカをジルコニウム化合物の水溶液中に含浸する際に、シリカの比表面積の低下を5%以下、好ましくは4%以下、より好ましくは3%以下に抑え、かつ平均細孔径の低下を25%以下、好ましくは23%以下、より好ましくは20%以下に抑えるように、浸漬時間、水溶液濃度、浸漬温度およびpHを調整し、加水分解速度をコントロールする方法を挙げることができる。シリカの細孔中にある気泡を除去する方法としては、シリカを蒸留水に浸した後、超音波を照射する方法や減圧下でシリカを蒸留水や水溶液に浸す方法が好ましく採用される。
【0051】
次に、上記で得られる担体と、コバルト化合物及び/又はルテニウム化合物と、が含まれる触媒前駆体、を温度T
3で焼成する工程について説明する。
【0052】
本実施形態で用いるコバルト化合物としては、コバルトを塩又は錯体の形で分子内に有する化合物を用いることができる。例えば、硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩、アセチルアセトナート等が挙げられる。具体的には、硝酸コバルト、塩化コバルト、蟻酸コバルト、プロピオン酸コバルト、酢酸コバルト、コバルトアセチルアセトナートなどを挙げることができる。コバルト化合物は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
本実施形態で用いるルテニウム化合物としては、塩化ルテニウム、臭化ルテニウムなどのハロゲン化ルテニウム、酸化ルテニウム(IV)、水酸化ルテニウム(III)、アセチルアセトナトルテニウム、ヘキサアンミンルテニウム(II)塩化物、ドデカカルボニル三ルテニウム等が挙げられる。
【0054】
触媒前駆体の調製方法としては、Incipient Wetness法に代表される含浸法を用いることができる。このとき、触媒前駆体におけるコバルト化合物の含有量が、触媒の全質量を基準として酸化コバルト(四酸化三コバルト)換算で10〜35質量%となるように設定されることが好ましく、15〜35質量%となるように設定されることが好ましい。高い反応性を得る観点から、触媒前駆体におけるコバルト化合物の含有量が、触媒の全質量を基準として酸化コバルト(四酸化三コバルト)換算で15〜30質量%となることがより好ましく、20〜30質量%となることがさらにより好ましい。
【0055】
また、ルテニウム化合物を用いる場合、触媒前駆体におけるルテニウム化合物の含有量が、触媒の全質量を基準として酸化ルテニウム(RuO
2)換算で5〜35質量%となるように設定されることが好ましい。高い反応性を得る観点から、触媒前駆体におけるルテニウム化合物の含有量が、触媒の全質量を基準として酸化ルテニウム(RuO
2)換算で10〜20質量%となることがより好ましい。
【0056】
触媒前駆体は、含浸後、例えば、好ましくは50〜150℃、より好ましくは70〜120℃の乾燥温度で、好ましくは0.5〜48時間、より好ましくは1〜24時間乾燥することができる。
【0057】
触媒前駆体の焼成温度T
3は250℃以上450℃以下が好ましく、コバルト粒子及び/又はルテニウム粒子が高分散となるように、300〜450℃が好ましく、350〜450℃がより好ましい。T
3が450℃を超えると、ジルコニアの形態が無定形から結晶へと変化するため好ましくない。焼成温度は用いるコバルト化合物及び/又はルテニウム化合物の分解開始温度以上であることが好ましい。
【0058】
また、コバルト化合物及び/又はルテニウム化合物の高い分散性を得る観点から、400〜450℃がより好ましい。
【0059】
本実施形態に係る第2のフィッシャー・トロプシュ合成用触媒の製造方法は、温度T
4で焼成されたシリカと、ジルコニウム化合物と、コバルト化合物及び/又はルテニウム化合物と、が含まれる触媒前駆体、を温度T
5で焼成する工程、を備えるフィッシャー・トロプシュ合成用触媒の製造方法であって、上記触媒前駆体におけるジルコニウム化合物の含有量が、触媒の全質量を基準として酸化ジルコニウム換算で0.01〜7質量%であり、T
4及びT
5が下記式(4)及び(5)の条件を満たすことを特徴とする。
T
4≧T
5 …(4)
250℃≦T
5≦450℃ …(5)
【0060】
本実施形態で用いるシリカ、ジルコニウム化合物、コバルト化合物及びルテニウム化合物については上述の第1の方法で挙げられたものを用いることができる。また、触媒前駆体には、上述したシリカ以外の担体材料を含有させてもよい。
【0061】
触媒前駆体の調製方法としては、Incipient Wetness法に代表される含浸法を用いることができる。
【0062】
本実施形態においては、触媒前駆体におけるジルコニウム化合物の含有量が、触媒の全質量を基準として酸化ジルコニウム換算で0.01〜7質量%となるように設定される。多量のジルコニアはコバルトの還元性を低下させ、初期活性の低下を招く恐れがあることから、触媒前駆体におけるジルコニウム化合物の含有量は、触媒の全質量を基準として酸化ジルコニウム換算で0.1〜6質量%となることが好ましく、0.5〜5.5質量%となることがより好ましい。
【0063】
また、触媒前駆体におけるコバルト化合物の含有量は、触媒の全質量を基準として酸化コバルト(四酸化三コバルト)換算で10〜35質量%となるように設定されることが好ましく、15〜35質量%となるように設定されることが好ましい。高い反応性を得る観点から、触媒前駆体におけるコバルト化合物の含有量が、触媒の全質量を基準として酸化コバルト(四酸化三コバルト)換算で15〜30質量%となることがより好ましく、20〜30質量%となることがさらにより好ましい。
【0064】
また、ルテニウム化合物を用いる場合、触媒前駆体におけるルテニウム化合物の含有量が、触媒の全質量を基準として酸化ルテニウム(RuO
2)換算で5〜35質量%となるように設定されることが好ましい。高い反応性を得る観点から、触媒前駆体におけるルテニウム化合物の含有量が、触媒の全質量を基準として酸化ルテニウム(RuO
2)換算で10〜20質量%となることがより好ましい。
【0065】
触媒前駆体は、含浸後、例えば、好ましくは50〜150℃、より好ましくは70〜120℃の乾燥温度で、好ましくは0.5〜48時間、より好ましくは1〜24時間乾燥することができる。
【0066】
触媒前駆体の焼成温度T
5は250℃以上450℃以下であるが、コバルト粒子及び/又はルテニウム粒子が高分散となるように、300〜450℃が好ましく、350〜450℃がより好ましい。T
5が450℃を超えると、ジルコニアの形態が無定形から結晶へと変化するため好ましくない。また、焼成温度は用いるジルコニア化合物の分解開始温度以上かつコバルト化合物及び/又はルテニウム化合物の分解開始温度以上であることが好ましい。
【0067】
また、コバルト化合物及び/又はルテニウム化合物の高い分散性を得る観点から、400〜450℃がより好ましい。
【0068】
本実施形態に係る第1及び第2のフィッシャー・トロプシュ合成用触媒は、貴金属を更に含有することができる。貴金属としては、Pt、Ru、Pd、Au及びReのうちの一種以上が好ましく、Ptがより好ましい。貴金属を含有させることにより、コバルトの還元を促進することができる。これにより、触媒の劣化要因と推察される、フィッシャー・トロプシュ合成反応中に生成した水によるコバルト金属の酸化を抑制することができる。
【0069】
貴金属の担持量は、上記の効果と経済性とのバランスの点で、触媒の全質量を基準として0.001〜1質量%であることが好ましく、0.001〜0.5質量%であることがより好ましい。
【0070】
次に、本発明に係るフィッシャー・トロプシュ合成用触媒について説明する。
【0071】
本実施形態に係る第1のFT合成用触媒は、シリカ及び無定形ジルコニアを含む担体と、該担体に担持されたコバルト酸化物及び/又はルテニウム酸化物と、を含み、無定形ジルコニアの含有量が、触媒の全質量を基準として0.01〜7質量%であることを特徴とする。
【0072】
上記の触媒は、例えば、上記本実施形態に係る第1の製造方法によって得ることができる。
【0073】
高い連鎖成長確率αを得る観点から、上記担体は、シリカに無定形ジルコニアが薄膜担持した担体であることが好ましい。
【0074】
第1のFT合成用触媒において、無定形ジルコニアの含有量は、0.1〜6質量%であることが好ましく、0.5〜5.5質量%であることがより好ましい。
【0075】
第1のFT合成用触媒において、コバルト酸化物の含有量は、10〜35質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましく、15〜30質量%であることがさらにより好ましい。
【0076】
第1のFT合成用触媒において、ルテニウム酸化物の含有量は、5〜35質量%であることが好ましく、10〜20質量%であることがより好ましい。
【0077】
第1のFT合成用触媒がコバルト酸化物及びルテニウム酸化物を含有する場合、これらの合計含有量は、触媒の全質量を基準として5〜35質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。
【0078】
本実施形態に係る第2のFT合成用触媒は、シリカを含む担体と、該担体に担持された、無定形ジルコニア並びにコバルト酸化物及び/又はルテニウム酸化物と、を含み、無定形ジルコニアの含有量が、触媒の全質量を基準として0.01〜7質量%であることを特徴とする。
【0079】
上記の触媒は、例えば、上記本実施形態に係る第2の製造方法によって得ることができる。
【0080】
第2のFT合成用触媒において、無定形ジルコニアの含有量は、0.1〜6質量%であることが好ましく、0.5〜5.5質量%であることがより好ましい。
【0081】
第2のFT合成用触媒において、コバルト酸化物の含有量は、10〜35質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましく、20〜30質量%であることがさらにより好ましい。
【0082】
第2のFT合成用触媒において、ルテニウム酸化物の含有量は、5〜35質量%であることが好ましく、10〜20質量%であることがより好ましい。
【0083】
第2のFT合成用触媒がコバルト酸化物及びルテニウム酸化物を含有する場合、これらの合計含有量は、触媒の全質量を基準として5〜35質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。
【0084】
本実施形態に係る第3のFT合成用触媒は、シリカ及びジルコニア化合物が含まれる担体前駆体を温度250℃以上450℃以下で焼成して得られる担体と、該担体に担持されたコバルト酸化物及び/又はルテニウム酸化物と、を含有し、担体前駆体におけるジルコニア化合物の含有量が、触媒の全質量を基準として酸化ジルコニウム換算で0.01〜7質量%であり、メソ細孔容積が0.35cm
3/g以上且つ比表面積が130m
2/g以上であることを特徴とする。
【0085】
触媒のメソ細孔容積は以下の方法で算出される。まず、FT合成触媒に吸着した水分を除去するため、例えば、300℃、5時間の真空排気する前処理を行う。この前処理後の触媒について、日本ベル(株)社製 BELSORP−maxを使用し、液体窒素温度(−196℃)で窒素を用いた定容量法ガス吸着法により吸脱着等温線を自動測定する。データの解析には、装置附属の解析ソフトウェア(BEL Master
TM)を用いることができ、測定された窒素の吸脱着等温線はBJH法にて自動解析され、FT合成触媒の単位質量当りのメソ細孔容積(cm
3/g)が算出される。なお、BJH法とは、吸着質が脱離するときの相対圧と吸着量の関係である脱着等温線から平均細孔径を求める手法である。(E.P.Barrett, L.G.Joyner, P.H.Halenda:J.Am.Chem. Soc., 73, 373(1951).)
【0086】
触媒のメソ細孔容積は、0.35〜0.8cm
3/gであることが好ましく、0.4〜0.7cm
3/gであることがより好ましい。触媒のメソ細孔容積が0.35cm
3/gより小さいと、反応初期に触媒劣化が起こりやすくなる傾向がある。一方、触媒のメソ細孔容積が0.8cm
3/gより大きいと、細孔が大きくなり過ぎて、触媒摩耗が起こりやすくなる。そのため、反応中に摩耗損失による触媒劣化を起こしやすくなる傾向がある。
【0087】
触媒の比表面積は以下の方法で算出される。まず、FT合成触媒に吸着した水分を除去するため、例えば、300℃、5時間の真空排気する前処理を行う。この前処理後の触媒について、日本ベル(株)社製 BELSORP−maxを使用し、液体窒素温度(−196℃)で窒素を用いた定容量法ガス吸着法により吸脱着等温線を自動測定する。データの解析には、装置附属の解析ソフトウェア(BEL Master
TM)を用いることができ、測定された窒素の吸脱着等温線はBETの式にて自動解析され、FT合成触媒の単位質量当りの表面積(m
2/g)が算出される。
【0088】
触媒の比表面積は、130〜400m
2/gであることが好ましく、140〜200m
2/gであることがより好ましい。比表面積が130m
2/gより小さいと、反応初期に触媒劣化が起こりやすくなる傾向がある。一方、比表面積が400m
2/gより大きいと、反応中に触媒摩耗が起こりやすく、摩耗損失による触媒劣化を起こしやすくなる傾向がある。
【0089】
本実施形態で用いるシリカとしては、上述したものが挙げられる。シリカは、上述した所定の焼成温度T
1で焼成されていることが好ましい。
【0090】
第3のFT合成用触媒において、反応中の触媒摩耗を抑制する観点から、シリカの平均細孔径が10〜15nmであることが好ましい。
【0091】
第3のFT合成用触媒において、担体前駆体におけるジルコニア化合物の含有量は、触媒の全質量を基準として酸化ジルコニウム換算で0.01〜7質量%であるが、多量のジルコニアはコバルト或いはルテニウムの還元性を低下させ、初期活性の低下を招く恐れがあることから、0.1〜6質量%であることが好ましく、0.5〜5.5質量%であることがより好ましい。
【0092】
第3のFT合成用触媒において、高いワックス選択率及び高い反応性を得る観点から、コバルト酸化物の含有量は、触媒の全質量を基準として10〜35質量%であることが好ましく、20〜30質量%であることがより好ましい。
【0093】
第3のFT合成用触媒において、ルテニウム酸化物の含有量は、触媒の全質量を基準として5〜35質量%であることが好ましく、10〜20質量%であることがより好ましい。ルテニウムを活性点とするFT合成用触媒は、コバルトよりも高活性で、ワックス選択率が高いことが特長であり、触媒の使用量を大幅に削減できる可能性がある。
【0094】
第3のFT合成用触媒がコバルト酸化物及びルテニウム酸化物を含有する場合、これらの合計含有量は、触媒の全質量を基準として5〜35質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。
【0095】
第3のFT合成用触媒は、ASTM D5757の規定に基づき測定したアトリッション(触媒摩耗率)が3%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましい。アトリッションが3%を超えると、FT合成反応プロセスにおいて反応中に触媒摩耗が起こりやすく、摩耗損失の点で工業使用が難しくなる。
【0096】
アトリッション(触媒摩耗率)の測定は、ASTM Internationalが策定した規格ASTM D5757“Standard Test Method for Determination of Attrition of FCC Catalysts by Air Jets”に準拠して行われる。
【0097】
第3のFT合成用触媒の平均粒子径は、10μm〜10mmが好ましく、10μm〜5mmがより好ましく、10〜150μmがさらに好ましく、30〜100μmがさらにより好ましい。触媒の平均粒子径は、粒度分布測定装置を用いて測定でき、例えば、ベックマン・コールター株式会社製コールターカウンター Multisizer 3を使用し、電気的検知帯法(コールター原理)により、自動測定・算出される。
【0098】
第3のFT合成用触媒は、例えば、上記本実施形態に係る第1の製造方法によって得ることができる。
【0099】
本実施形態に係るFT合成用触媒は、貴金属を更に含有することができる。貴金属としては、Pt、Pd、Au及びReのうちの一種以上が好ましく、Ptがより好ましい。貴金属を含有させることにより、コバルト及び/又はルテニウムの還元を促進することができる。これにより、触媒の劣化要因と推察される、フィッシャー・トロプシュ合成反応中に生成した水によるコバルト金属の酸化を抑制することができる。
【0100】
貴金属の担持量は、上記の効果と経済性とのバランスの点で、触媒の全質量を基準として0.001〜1質量%であることが好ましく、0.001〜0.5質量%であることがより好ましい。
【0101】
本実施形態に係るFT合成用触媒は、FT合成反応に供するに際して、予め水素等で還元処理されることが好ましい。
【0102】
還元は、例えば、分子状水素を含む雰囲気下で行うことができる。還元に使用する気体としては、分子状水素(水素ガス)を含んでいれば特に限定されるものではないが、分子状水素を70体積%以上含有するものであることが好ましく、95体積%以上含有するものであることがより好ましい。分子状水素の含有量が70体積%未満の場合には、還元の効率が不十分となる傾向となり好ましくない。還元に使用する具体的な気体としては、水素ガス、水素ガスと窒素ガス等の不活性ガスとの混合ガス等が挙げられるが、水素ガスが特に好ましい。なお、還元に使用する気体が更に一酸化炭素を含む場合には、絶対圧として1.1MPa以上の高圧還元条件において還元中にFT合成反応が生起され、発熱等の問題を生じる懸念があることから好ましくないが、微量の混入であれば許容される。
【0103】
還元温度は、250〜500℃であることが好ましく、350〜450℃であることがより好ましい。還元温度が250℃よりも低い場合には、コバルト原子の還元度(還元工程前のコバルト酸化物のモル数に対する還元工程後の金属コバルトのモル数)が十分に高められない傾向にある。一方、還元温度が500℃を超える場合には、金属コバルトの凝集が過剰に進行するため活性が低下する傾向にある。
【0104】
還元の圧力は特に限定されないが、常圧〜5MPa程度が選択される。還元時間は、温度、雰囲気、使用する装置等に大きく依存することから、一概に規定することは困難であるが、一般的には0.5〜60時間程度である。
【0105】
触媒の還元は、触媒製造設備内において実施されてもよく、また、FT合成法による炭化水素の製造を実施する設備あるいはこれに付属する設備において実施されてもよい。
【0106】
本実施形態に係るFT合成用触媒を用いて、一酸化炭素と水素ガスとをFT合成反応させて炭化水素を製造することができる。
【0107】
FT合成反応を実施する際の原料としては、水素と一酸化炭素を主成分とする合成ガスであれば特に制限はないが、水素/一酸化炭素のモル比が1.5〜2.5であることが好ましく、1.8〜2.2であることがより好ましい。
【0108】
本実施形態に係るFT合成用触媒は、FT合成の反応プロセスとして知られているプロセス、例えば、固定床、超臨界固定床、スラリー床、流動床等に適用することができる。好ましいプロセスとして固定床、超臨界固定床、スラリー床を挙げることができる。
【0109】
FT合成反応の反応条件については特に制限はなく、公知の条件にて行うことができる。例えば、反応温度としては200〜280℃、ガス空間速度としては1000〜3000h
−1、W(触媒質量)/F(合成ガス流量)が1〜10g・h/mol、圧力としては絶対圧1.1〜5.1MPaの範囲で反応を行うことができる。
【実施例】
【0110】
(実施例A−1)
<FT合成用触媒の調製>
球状のシリカ粒子(平均細孔径10nm、平均粒子径70μm)を、空気中、450℃で3時間焼成した。次いで、焼成したシリカ粒子に、形成するFT合成用触媒の全質量を基準とした含有量が酸化ジルコニウム換算で3質量%となる量の硝酸ジルコニールをIncipient Wetness法により含浸させた。硝酸ジルコニール含浸後のシリカ粒子を120℃で12時間乾燥し、その後空気中、350℃で3時間焼成することで担体を得た。
【0111】
得られた担体に、形成するFT合成触媒の全質量を基準とした含有量が四酸化三コバルト換算で30質量%となる量の硝酸コバルト水溶液を、Incipient Wetness法により含浸させた。硝酸コバルト水溶液含浸後の担体を、120℃で12時間乾燥し、その後空気中、450℃で3時間焼成し、FT合成用触媒を得た。
【0112】
ここで得られたFT合成用触媒の質量が、上記の硝酸ジルコニール及び硝酸コバルト水溶液の含浸量を決める際の基準となる。すなわち、担持されたジルコニア原子及びコバルト原子の全量がそれぞれ酸化ジルコニウム(ジルコニア)及び四酸化三コバルト(コバルト酸化物)に転換された状態での質量が基準となる。
【0113】
<FT合成用触媒の還元>
上記FT合成用触媒を水素気流下、350℃にて7時間還元を行い、活性化されたFT合成用触媒E−A1を得た。
【0114】
(実施例A−2)
球状のシリカ粒子(平均細孔径10nm、平均粒子径70μm)を、空気中、450℃で3時間焼成した。次いで、焼成後のシリカ30gを250mlのガラス瓶に秤量し、そこへpH6.6の硝酸水溶液100mlを加え、超音波を40℃で10分間照射した。次いで、約50mlの上澄み液をパスツールピペットで吸出し、炭酸ジルコニールアンモニウムの濃度が0.3mol/Lの炭酸ジルコニールアンモニウム水溶液100mlを加え、24時間室温で静置した。次いで、ろ紙を用いたろ過を行い、シリカ粒子を採取(分離)した。得られたシリカ粒子を、ろ液のpHが7になるまでイオン交換水により洗浄し、120℃で6時間真空乾燥を行った後、空気雰囲気下、350℃で3時間焼成することで担体を得た。形成するFT合成用触媒の全質量を基準とするジルコニア(酸化ジルコニウム)の含有量は3質量%であった。
【0115】
その後の処理は実施例A−1と同様にして、活性化されたFT合成用触媒E−A2を得た。
【0116】
なお、FT合成用触媒E−A2の上記式で表される薄膜指数Zは、0.18であった。
A1:シリカの比表面積 203m
2/g
A2:シリカの平均細孔径 15.1nm
B1:ジルコニウムを酸化物として担持したシリカの比表面積 142m
2/g
B2:ジルコニウムを酸化物として担持したシリカの平均細孔径 13.5nm
Y:4.5
【0117】
(実施例A−3)
シリカの焼成温度を650℃としたこと以外は実施例A−2と同様にして、活性化されたFT合成用触媒E−A3を得た。
【0118】
なお、FT合成用触媒E−A3の上記式で表される薄膜指数Zは、0.23であった。
A1:シリカの比表面積 183m
2/g
A2:シリカの平均細孔径 14.8nm
B1:ジルコニウムを酸化物として担持したシリカの比表面積 137m
2/g
B2:ジルコニウムを酸化物として担持したシリカの平均細孔径 13.2nm
Y:4.5
【0119】
(実施例A−4)
シリカの焼成温度を650℃とし、担体を得るときの焼成温度を400℃としたこと以外は実施例A−2と同様にして、活性化されたFT合成用触媒E−A4を得た。
【0120】
(実施例A−5)
シリカの焼成温度を400℃とし、担体を得るときの焼成温度を350℃とし、硝酸コバルト水溶液含浸後の担体の焼成温度を400℃としたこと以外は実施例A−2と同様にして、活性化されたFT合成用触媒E−A5を得た。
【0121】
(実施例A−6)
シリカの焼成温度を400℃とし、ジルコニアの担持量を7質量%とし、担体を得るときの焼成温度を350℃とし、硝酸コバルト水溶液含浸後の担体の焼成温度を400℃としたこと以外は実施例A−2と同様にして、活性化されたFT合成用触媒E−A6を得た。
【0122】
(実施例A−7)
シリカの焼成温度を400℃とし、ジルコニアの担持量を7質量%とし、担体を得るときの焼成温度を350℃とし、コバルト酸化物の担持量を15質量%とし、硝酸コバルト水溶液含浸後の担体の焼成温度を400℃としたこと以外は実施例A−2と同様にして、活性化されたFT合成用触媒E−A7を得た。
【0123】
(実施例A−8)
シリカの焼成温度を400℃とし、ジルコニアの担持量を7質量%とし、担体を得るときの焼成温度を350℃とし、コバルト酸化物の担持量を35質量%とし、硝酸コバルト水溶液含浸後の担体の焼成温度を400℃としたこと以外は実施例A−2と同様にして、活性化されたFT合成用触媒E−A8を得た。
【0124】
(実施例A−9)
球状のシリカ粒子(平均細孔径10nm、平均粒子径70μm)を、空気中、400℃で3時間焼成した。次いで、焼成したシリカ粒子に、形成するFT合成用触媒の全質量を基準とした含有量が酸化ジルコニウム換算で3質量%となる量の硝酸ジルコニールと、形成するFT合成用触媒の全質量を基準とした含有量が四酸化三コバルト換算で30質量%となる量の硝酸コバルト水溶液との混合溶液を、Incipient Wetness法により含浸させた。これを、120℃で12時間乾燥し、その後空気中、400℃で3時間焼成することでFT合成用触媒を得た。
【0125】
その後の処理は実施例A−1と同様にして、活性化されたFT合成用触媒E−A9を得た。
【0126】
(比較例A−1)
シリカの焼成温度を650℃とし、担体を得るときの焼成温度を500℃としたこと以外は実施例A−2と同様にして、活性化されたFT合成用触媒CE−A1を得た。
【0127】
(比較例A−2)
シリカの焼成温度を650℃とし、担体を得るときの焼成温度を650℃としたこと以外は実施例A−2と同様にして、活性化されたFT合成用触媒CE−A2を得た。
【0128】
(比較例A−3)
ジルコニアの担持量を10質量%としたこと以外は実施例A−2と同様にして、活性化されたFT合成用触媒CE−A3を得た。
【0129】
[FT合成反応]
上記で得られたFT合成用触媒について、以下のFT合成反応を行うことによって触媒性能を評価した。
【0130】
還元処理して得られた活性化FT合成用触媒5gを、酸化されないように不活性雰囲気下、ドライボックス中で取り出し、セタン30mlと共に内容積100mlのステンレス鋼製オートクレーブ型反応器に移した。そして、水素ガス/一酸化炭素ガスが2/1(モル比)の混合ガスを原料とし、W(触媒質量)/F(合成ガス流量)=3g・h/mol、温度220℃、圧力2.3MPa、攪拌速度1000rpmの条件でフィッシャー・トロプシュ合成反応を開始した。反応器の出口のガス組成をガスクロマトグラフィーで経時的に分析し、この分析データから一酸化炭素の転化率(CO転化率)を算出した。反応開始から5時間後のCO転化率TCO
5と、反応開始から5時間後のCO転化率TCO
5に対する反応開始から50時間後のCO転化率TCO
50の割合[TCO
50/TCO
5]とを表に示す。
【0131】
【表1】
【0132】
【表2】
【0133】
表1に示されるように、ジルコニアの担持量と、T
1、T
2及びT
3、又はT
4及びT
5とが本願発明に係る条件を満たして製造された触媒E−A1〜E−A9は、フィッシャー・トロプシュ合成反応におけるCO転化率TCO
5が十分高く、反応開始から5時間後のCO転化率TCO
5に対する反応開始から50時間後のCO転化率TCO
50の割合[TCO
50/TCO
5]も高い値を示すことが確認された。T
2が式(2)を満たさない条件で製造された触媒CE−A1及びCE−A2は、CO転化率TCO
5及び[TCO
50/TCO
5]が触媒E−A3及びE−A4に比べて低い値を示し、ジルコニアの担持量を10質量%とした触媒CE−A
3は、CO転化率TCO
5及び[TCO
50/TCO
5]が触媒E−A2に比べて低い値を示した。
【0134】
(実施例B−1)
<FT合成用触媒の調製>
球状のシリカ粒子(平均細孔径15nm、平均粒子径70μm、比表面積255m
2/g)を、空気中、650℃で3時間焼成した。次いで、焼成したシリカ粒子に、形成するFT合成用触媒の全質量を基準とした含有量が酸化ジルコニウム換算で3質量%となる量の硝酸ジルコニールをIncipient Wetness法により含浸させた。硝酸ジルコニール含浸後のシリカ粒子を120℃で12時間乾燥し、その後空気中、300℃で3時間焼成することで担体を得た。
【0135】
得られた担体に、形成するFT合成触媒の全質量を基準とした含有量が四酸化三コバルト換算で30質量%となる量の硝酸コバルト水溶液を、Incipient Wetness法により含浸させた。硝酸コバルト水溶液含浸後の担体を、120℃で12時間乾燥し、その後空気中、450℃で3時間焼成し、FT合成用触媒を得た。
【0136】
ここで得られたFT合成用触媒の質量が、上記の硝酸ジルコニール及び硝酸コバルト水溶液の含浸量を決める際の基準となる。すなわち、担持されたジルコニア原子及びコバルト原子の全量がそれぞれ酸化ジルコニウム(ジルコニア)及び四酸化三コバルト(コバルト酸化物)に転換された状態での質量が基準となる。
【0137】
<FT合成用触媒の還元>
上記FT合成用触媒を水素気流下、350℃にて7時間還元を行い、活性化されたFT合成用触媒E−B1を得た。
【0138】
(実施例B−2)
硝酸コバルト水溶液含浸後の担体の焼成温度を450℃から400℃に変更したこと以外は実施例B−1と同様にして、活性化されたFT合成用触媒E−B2を得た。
【0139】
(実施例B−3)
担体を得るときの焼成温度を300℃から350℃に変更したこと以外は実施例B−1と同様にして、活性化されたFT合成用触媒E−B3を得た。
【0140】
(実施例B−4)
担体を得るときの焼成温度を300℃から250℃に変更したこと以外は実施例B−1と同様にして、活性化されたFT合成用触媒E−B4を得た。
【0141】
(実施例B−5)
球状のシリカ粒子(平均細孔径10nm、平均粒子径70μm)を、空気中、650℃で3時間焼成した。次いで、焼成したシリカ粒子に、形成するFT合成用触媒の全質量を基準とした含有量が酸化ジルコニウム換算で3質量%となる量の硝酸ジルコニールをIncipient Wetness法により含浸させた。硝酸ジルコニール含浸後のシリカ粒子を120℃で12時間乾燥し、その後空気中、350℃で3時間焼成することで担体を得た。
【0142】
得られた担体に、形成するFT合成触媒の全質量を基準とした含有量が四酸化三コバルト換算で30質量%となる量の硝酸コバルト水溶液を、Incipient Wetness法により含浸させた。硝酸コバルト水溶液含浸後の担体を、120℃で12時間乾燥し、その後空気中、450℃で3時間焼成し、FT合成用触媒を得た。
【0143】
<FT合成用触媒の還元>
上記FT合成用触媒を水素気流下、350℃にて7時間還元を行い、活性化されたFT合成用触媒E−B5を得た。
【0144】
(実施例B−6)
シリカの焼成温度を400℃とし、硝酸コバルト水溶液含浸後の担体の焼成温度を400℃としたこと以外は実施例B−5と同様にして、活性化されたFT合成用触媒E−B6を得た。
【0145】
(実施例B−7)
シリカの焼成温度を400℃とし、ジルコニアの担持量を7質量%とし、硝酸コバルト水溶液含浸後の担体の焼成温度を400℃としたこと以外は実施例B−5と同様にして、活性化されたFT合成用触媒E−B7を得た。
【0146】
(実施例B−8)
シリカの焼成温度を400℃とし、ジルコニアの担持量を7質量%とし、コバルト酸化物の担持量を15質量%とし、硝酸コバルト水溶液含浸後の担体の焼成温度を400℃としたこと以外は実施例B−5と同様にして、活性化されたFT合成用触媒E−B8を得た。
【0147】
(実施例B−9)
球状のシリカ粒子(平均細孔径17.5nm、平均粒子径100μm)を用い、硝酸コバルト水溶液含浸後の担体の焼成温度を400℃としたこと以外は実施例B−1と同様にして、活性化されたFT合成用触媒E−B9を得た。
【0148】
(実施例B−10)
球状のシリカ粒子(平均細孔径20nm、平均粒子径100μm)を用い、硝酸コバルト水溶液含浸後の担体の焼成温度を400℃としたこと以外は実施例B−1と同様にして、活性化されたFT合成用触媒E−B10を得た。
【0149】
(実施例B−11)
球状のシリカ粒子(平均細孔径25nm、平均粒子径100μm)を用い、硝酸コバルト水溶液含浸後の担体の焼成温度を400℃としたこと以外は実施例B−1と同様にして、活性化されたFT合成用触媒E−B11を得た。
【0150】
(実施例B−12)
球状のシリカ粒子(平均細孔径15nm、平均粒子径70μm)を、空気中、650℃で3時間焼成した。次いで、焼成したシリカ粒子に、形成するFT合成用触媒の全質量を基準とした含有量が酸化ジルコニウム換算で3質量%となる量の硝酸ジルコニールをIncipient Wetness法により含浸させた。硝酸ジルコニール含浸後のシリカ粒子を120℃で12時間乾燥し、その後空気中、300℃で3時間焼成することで担体を得た。
【0151】
得られた担体に、形成するFT合成触媒の全質量を基準とした含有量が酸化ルテニウム(RuO
2)換算で15質量%となる量の塩化ルテニウム水溶液を、Incipient Wetness法により含浸させた。塩化ルテニウム水溶液含浸後の担体を、120℃で12時間乾燥し、その後空気中、400℃で3時間焼成し、FT合成用触媒を得た。
【0152】
<FT合成用触媒の還元>
上記FT合成用触媒を水素気流下、350℃にて7時間還元を行い、活性化されたFT合成用触媒E−B12を得た。
【0153】
(比較例B−1)
担体を得るときの焼成温度を500℃としたこと以外は実施例B−1と同様にして、活性化されたFT合成用触媒CE−B1を得た。
【0154】
(比較例B−2)
担体を得るときの焼成温度を650℃としたこと以外は実施例B−1と同様にして、活性化されたFT合成用触媒CE−B2を得た。
【0155】
(比較例B−3)
シリカの焼成温度を450℃とし、ジルコニアの担持量を10質量%とし、担体を得るときの焼成温度を350℃としたこと以外は実施例B−1と同様にして、活性化されたFT合成用触媒CE−B3を得た。
【0156】
(比較例B−4)
球状のシリカ粒子(平均細孔径7.5nm、平均粒子径100μm)を用い、担体を得るときの焼成温度を350℃としたこと以外は実施例B−1と同様にして、活性化されたFT合成用触媒CE−B4を得た。
【0157】
(比較例B−5)
球状のシリカ粒子(平均細孔径5nm、平均粒子径100μm)を用い、担体を得るときの焼成温度を350℃としたこと以外は実施例B−1と同様にして、活性化されたFT合成用触媒CE−B5を得た。
【0158】
(比較例B−6)
球状のシリカ粒子(平均細孔径30nm、平均粒子径100μm)を用い、担体を得るときの焼成温度を500℃としたこと以外は実施例B−1と同様にして、活性化されたFT合成用触媒CE−B6を得た。
【0159】
(比較例B−7)
担体を得るときの焼成温度を200℃としたこと以外は実施例B−1と同様にして、活性化されたFT合成用触媒CE−B7を得た。
【0160】
(比較例B−8)
硝酸コバルト水溶液含浸後の担体の焼成温度を350℃としたこと以外は実施例B−1と同様にして、活性化されたFT合成用触媒CE−B8を得た。
【0161】
[触媒のメソ細孔容積の測定]
上記で得られたFT合成用触媒について、触媒のメソ細孔容積を以下の方法で算出した。まず、FT合成触媒に吸着した水分を除去するため、例えば、300℃、5時間の真空排気する前処理を行った。この前処理後の触媒について、日本ベル(株)社製 BELSORP−maxを使用し、液体窒素温度(−196℃)で窒素を用いた定容量法ガス吸着法により吸脱着等温線を自動測定した。データの解析には、装置附属の解析ソフトウェア(BEL Master
TM)を用いた。測定された窒素の吸脱着等温線は、BJH法にて自動解析され、FT合成触媒の単位質量当りのメソ細孔容積(cm
3/g)が算出された。
【0162】
[触媒の比表面積の測定]
上記で得られたFT合成用触媒について、触媒の比表面積を以下の方法で算出した。まず、FT合成触媒に吸着した水分を除去するため、例えば、300℃、5時間の真空排気する前処理を行った。この前処理後の触媒について、日本ベル(株)社製 BELSORP−maxを使用し、液体窒素温度(−196℃)で窒素を用いた定容量法ガス吸着法により吸脱着等温線を自動測定した。データの解析には、装置附属の解析ソフトウェア(BEL Master
TM)を用いた。測定された窒素の吸脱着等温線は、BETの式にて自動解析され、FT合成触媒の単位質量当りの表面積(m
2/g)が算出された。
【0163】
[触媒のアトリッションの測定]
上記で得られたFT合成用触媒について、ASTM D5757に準拠してアトリッション(触媒摩耗率)を測定した。
【0164】
[FT合成反応]
上記で得られたFT合成用触媒について、以下のFT合成反応を行うことによって触媒性能を評価した。
【0165】
還元処理して得られた活性化FT合成用触媒5gを、酸化されないように不活性雰囲気下、ドライボックス中で取り出し、ノルマルヘキサデカン30mlと共に内容積100mlのステンレス鋼製オートクレーブ型反応器に移した。そして、水素ガス/一酸化炭素ガスが2/1(モル比)の混合ガスを原料とし、W(触媒質量)/F(合成ガス流量)=3g・h/mol、温度220℃、圧力2.3MPa、攪拌速度1000rpmの条件でフィッシャー・トロプシュ合成反応を開始した。反応器の出口のガス組成をガスクロマトグラフィーで経時的に分析し、この分析データから一酸化炭素の転化率(CO転化率)を算出した。反応開始から5時間後のCO転化率TCO
5と、反応開始から5時間後のCO転化率TCO
5に対する反応開始から50時間後のCO転化率TCO
50の割合[TCO
50/TCO
5]とを表に示す。
【0166】
【表3】
【0167】
【表4】
【0168】
表3に示されるように、ジルコニア化合物が含まれる担体前駆体の焼成温度、ジルコニアの担持量、メソ細孔容積及び比表面積が本願発明に係る条件を満たす触媒E−B1〜E−B12は、十分に低いアトリッションを示すとともに、フィッシャー・トロプシュ合成反応におけるCO転化率TCO
5が十分高く、反応開始から5時間後のCO転化率TCO
5に対する反応開始から50時間後のCO転化率TCO
50の割合[TCO
50/TCO
5]も高い値を示すことが確認された。