特許第5698854号(P5698854)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698854
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】通信方法及びスイッチングハブ装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/46 20060101AFI20150319BHJP
【FI】
   H04L12/46 Z
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-26734(P2014-26734)
(22)【出願日】2014年2月14日
(62)【分割の表示】特願2010-37281(P2010-37281)の分割
【原出願日】2010年2月23日
(65)【公開番号】特開2014-82803(P2014-82803A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2014年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233491
【氏名又は名称】株式会社日立システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】脇所 眞志
【審査官】 羽岡 さやか
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−147579(JP,A)
【文献】 特開2005−223375(JP,A)
【文献】 特開平03−262350(JP,A)
【文献】 特開2000−261478(JP,A)
【文献】 特開2004−080323(JP,A)
【文献】 特開2007−180815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/00−12/955
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理的または論理的に分割された複数のイーサネット網及び端末装置に接続される、複数の複数経路同報送信用のスイッチングハブを用いて、端末装置又はいずれかのイーサネット網から受信したフレームをいずれかのイーサネット網又は他の端末装置へ送信する通信方法であって、
該スイッチングハブは、複数の該端末装置のMACアドレスとポートの対応関係登録されたMACアドレステーブルを有し、
前記スイッチングハブは、直接接続された端末装置から送信されて受信したフレームがARPパケットまたはユニキャストパケットであるか判定し、
ARPパケットまたはユニキャストパケットであると判定した場合、該フレームを受信済か否かを示すフラグが登録された重複判定フラグテーブルと前記MACアドレステーブルとに基づいて、他の前記複数経路同報送信用のスイッチングハブと当該複数経路同報送信用のスイッチングハブに接続された前記イーサネット網とに前記受信したフレームを同報し、または他の前記複数経路同報送信用のスイッチングハブと当該複数経路同報送信用のスイッチングハブに接続された前記イーサネット網と当該複数経路同報送信用のスイッチングハブに接続された前記端末装置に前記受信したフレームを同報し、
他の前記複数経路同報送信用のスイッチングハブから前記ARPパケットまたはユニキャストパケットを一定時間受信しない場合、当該他の前記複数経路同報送信用のスイッチングハブに接続された端末装置のMACアドレス前記MACアドレステーブルから削除し、
前記複数経路同報送信用のスイッチングハブは定期的に直接接続されている端末装置のMACアドレスを送信元としたフレームを、他の前記複数経路同報送信用のスイッチングハブに送信することを特徴とする通信方法。
【請求項2】
前記スイッチングハブは、前記他の前記複数経路同報送信用のスイッチングハブから、前記重複判定フラグテーブルに受信済みとして登録されているパケットを受信した場合、前記受信済みのフレームのみ前記直接接続された端末装置へ送信し、その後に受信した前記受信済みのフレームと同一のフレームは廃棄することで、同一のパケットを重複して端末装置へ送信しないように制御することを特徴とする請求項1の通信方法。
【請求項3】
前記スイッチングハブは、パケットを受信したポートごとに、送信元及び送信先のIPアドレスに関連付けて、該パケットを受信済か否かを示すフラグを登録する前記重複判定フラグテーブルを有し、
あるポートからパケットを受信した時に、該重複判定フラグテーブルの該フラグを参照して、該パケットと同一のパケットが受信済かを判定し、
該フラグが受信済みとなっているポートでパケットを受信した場合、送信元の端末装置が同一のパケットを再送したものと判定して、該フレームを端末装置へ送信することを特徴とする請求項2の通信方法。
【請求項4】
前記重複判定フラグテーブルは、パケットの受信済状態を示す各レコードの生存状態を管理するためのレコード生存タイマを有し、
該レコード生存タイマがタイムアウトすることにより、該レコードを該重複判定フラグテーブルから削除することを特徴とする請求項2又は3の通信方法。
【請求項5】
物理的または論理的に分割された複数のイーサネット網及び端末装置に接続され、端末装置又はいずれかのイーサネット網から受信したフレームをいずれかのイーサネット網又は他の端末装置へ送信する複数の複数経路同報送信用のスイッチングハブであって、
複数の該端末装置のMACアドレスとポートの対応関係登録されたMACアドレステーブルと、
直接接続された端末装置から送信されて受信したフレームがARPパケットまたはユニキャストパケットであるか判定し、ARPパケットまたはユニキャストパケットであると判定した場合該フレームを受信済か否かを示すフラグが登録された重複判定フラグテーブルと前記MACアドレステーブルと基づいて、他の前記複数経路同報送信用のスイッチングハブと当該複数経路同報送信用のスイッチングハブに接続された前記イーサネット網とに前記受信したフレームを同報し、または他の前記複数経路同報送信用のスイッチングハブと当該複数経路同報送信用のスイッチングハブに接続された前記イーサネット網と当該複数経路同報送信用のスイッチングハブに接続された前記端末装置に前記受信したフレームを同報する手段と、
他の前記複数経路同報送信用のスイッチングハブから前記ARPパケットまたはユニキャストパケットを一定時間受信しない場合、当該他の前記複数経路同報送信用のスイッチングハブに接続された端末装置のMACアドレス前記MACアドレステーブルから削除する手段と、
前記複数経路同報送信用のスイッチングハブは定期的に直接接続されている端末装置のMACアドレスを送信元としたフレームを、他の前記複数経路同報送信用のスイッチングハブに送信する手段と、を有することを特徴とするスイッチングハブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチングハブ装置及び通信方法に係り、特に、複数のイーサネット網に接続される、複数の拠点間の通信を司るスイッチングハブ装置、及びこのスイッチングハブ装置を通してIPパケット(以下単にパケットという)を送信する通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高帯域の広域イーサネット網は信頼性はあまり高くないが安価であるため、近年広く普及している。また、TCP/IPを利用したインターネット通信も広く普及している。(「イーサネット」はゼロックス社の登録商標)。この広域イーサネット網を用いた通信では、網内でフレームの廃棄が発生したり、網内遅延が大きいため、スループットが上がらない。また網全体が停止するという大規模な障害も発生している。
【0003】
これらの問題に対処するため、拠点間を複数の伝送路で接続し、1つのパケットを各伝送路に対し同報することによって信頼性を向上する通信方法が提唱されている。例えば、特許文献1には、メッセージ識別子を付加した同一のメッセージを、各々のLAN(ローカルエリアネットワーク)伝送路にほぼ同時に送信し、受信側ではメッセージ識別子により受信した同一のメッセージのうち最初に受信したメッセージ以外のメッセージを廃棄し、最初に受信したメッセージにより通信を完了する通信制御方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、インターネットを介して接続された第1のLANの端末から第2のLANの端末へパケットを送信する際に、これを中継するために同じパケットを異なる中継先に複数送信する第1のLANに接続されたゲートウェイ送信装置及び送信方法等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平03−262350公報
【特許文献2】特開2000−261478公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数の独立したイーサネット網で接続された複数の拠点間通信において、メッセージ識別子や通信パスの管理等の処理を、パケットを冗長化する機器で行う場合、処理負担が大きく、高性能なCPUや多くのメモリが必要となり、そのため通信機器が高価になる。また、通信パケットにメッセージ識別子を付与したり、カプセリングを行うと、ファイアウォールやIPSecなどパケットを解析する機器や機能が使えなくなる場合が生じる。また、パケット長が長くなると送信元機器のMTU(Maximum Transmission Unit)長を調整する必要も生じ、メッセージ識別子がイーサネット網の帯域を使用することで、本来の通信のために使用可能な帯域が減少する。さらに、従来のパケット冗長化を行う機器の接続構成は、各々の機器が全ての伝送路と接続するため、複数の機器で構成する場合、一本の伝送路を各機器へ分岐するためのハブなどの分岐装置が必要となる。接続機器が増えると、システムの信頼性も低下する。
【0007】
そこで、本発明は、複数の拠点を複数の広域イーサネット網で接続したネットワークに複数経路同報スイッチングハブを適用し、一方のイーサネット網に障害が発生しても通信を途絶せず、ネットワークの信頼性を向上することにある。
本発明は、またパケットのヘッダやデータの変更を行わず、IPパケットを扱う機器への影響を出来るだけ無くし、既存のネットワークへ容易に適用可能な、通信方法及びスイッチングハブ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る通信方法は、好ましくは、物理的または論理的に分割された複数のイーサネット網及び端末装置に接続される、複数の複数経路同報送信用のスイッチングハブを用いて、端末装置又はいずれかのイーサネット網から受信したフレームをいずれかのイーサネット網又は他の端末装置へ送信する通信方法であって、該スイッチングハブは、複数の該端末装置のMACアドレスとポートの対応関係を登録するMACアドレステーブルを有し、前記スイッチングハブは、直接接続された端末装置から送信されて受信したフレームのうち、重複判定テーブルによって同報されたフレームであるかを判定可能なフレームを他のスイッチングハブへ送信し、同報されたフレームであるかの判定が可能なフレームを送信しない端末装置のMACアドレスは、他のスイッチングハブのMACアドレステーブルから削除し、各スイッチングハブは定期的に直接接続されている端末装置のMACアドレスを送信元としたフレームを他のスイッチングハブへ送信して他のスイッチングハブのMACアドレステーブルから接続中の端末装置の情報が削除されるのを防止することを特徴とする通信方法として構成される。
【0009】
また、好ましい例では、前記スイッチングハブは同一のパケットを受信した場合、最も早く受信したフレームを端末装置へ送信し、その後に受信した同一のフレームは廃棄することで、同一のパケットを重複して端末装置へ送信しないように制御する。また、好ましい例では、前記スイッチングハブは、パケットを受信したポートごとに、送信元及び送信先のIPアドレスに関連付けて、該パケットを受信済か否かを示すフラグを登録する重複パケット判定フラグテーブルを有し、あるポートからパケットを受信した時に、該重複パケット判定フラグテーブルの該フラグを参照して、該パケットと同一のパケットが受信済かを判定し、該フラグが受信済みとなっているポートでパケットを受信した場合、送信元の端末装置が同一のパケットを再送したものと判定して、該フレームを端末装置へ送信する。
【0010】
好ましい例では、前記重複パケット判定フラグテーブルは、パケットの受信済状態を示す各レコードの生存状態を管理するためのレコード生存タイマを有し、該レコード生存タイマがタイムアウトすることにより、該レコードを該重複パケット判定フラグテーブルから削除する。
本発明は、また上記通信方法を実施するスイッチングハブしても把握される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数経路同報スイッチングハブは複数の拠点を複数の広域イーサネット網で接続したネットワークに適用することで、一方のイーサネット網に障害が発生しても通信が途絶することなく使用可能となるため、ネットワークの信頼性を向上する。また、最も早く到着したフレームを端末装置へ送信するため、フレームの到着までの遅延時間を最小にすることができる。
さらに、パケットのヘッダやデータを変更しないため、パケット解析を行うファイアウォールなどの装置も使用可能であり、既存のネットワークへ容易に適用可能である。フレームの制御方式も単純であるため装置内での遅延時間を少なくし、製造コストを低く抑えることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施例による通信システム及びそれに使用されるスイッチングハブ装置の構成を示す図。
図2】一実施例における重複パケット判定フラグテーブル122の構成を示す図。
図3】一実施例におけるスイッチングハブ1がポート111からフレームを受信した場合のフレーム処理動作を示すフローチャート。
図4】一実施例におけるスイッチングハブ1がポート41からフレームを受信した場合のフレーム処理動作を示すフローチャート。
図5】一実施例におけるスイッチングハブ1がポート42からフレームを受信した場合のフレーム処理動作を示すフローチャート。
図6】一実施例におけるスイッチングハブ1がポート43からフレームを受信した場合のフレーム処理動作を示すフローチャート。
図7】一実施例におけるスイッチングハブが受信したパケットの同一パケット既受信状態を判定する処理動作を示すフローチャート。
図8】一実施例におけるスイッチングハブが初めて受信したパケットの重複パケット判定フラグテーブル処理動作を示すフローチャート。
図9】一実施例における複数経路同報スイッチングハブが受信済のパケットの重複パケット判定フラグテーブル処理フローチャート。
図10】一実施例における複数経路同報スイッチングハブが再送されてきたパケットの重複パケット判定フラグテーブルの処理を示すフローチャート。
図11】一実施例におけるスイッチングハブ1がフレームを受信した場合にMACアドレステーブルを更新する条件を示す一覧表を示す図。
図12】一実施例におけるレコード生存タイマの処理を示すフローチャート。
図13】複数経路同報スイッチングハブが定期的に実行する端末装置MACアドレス更新処理を示す図。
図14】一実施例における同報可能なフレームとフレームフォーマットを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
図1は、通信システム及びスイッチングハブ装置の構成を示す。
2つのスイッチングハブ装置(以下単にスイッチングハブという)1,2は、同じ構成を有する複数経路同報スイッチングハブであり、同じ設置場所に設置されて、物理的または論理的に分割された異なるイーサネット網81,82に接続される。なお、両者のスイッチングハブの構成は同じであるので、内部構成の説明については、一方のスイッチングハブ1を参照する。
【0014】
スイッチングハブ1は、それぞれイーサネット網81と接続される、インタフェース部15及びポート43を持ち、また、複数の端末装置(以下単に端末という)101と接続される、インタフェース部13及び複数のポート111,112(総称して11ということがある)を持つ。また、スイッチングハブ1は、インタフェース部16,17を介して、物理的又は論理的に分割された2本のイーサネットでポート41,42に接続され、スイッチングハブ2と接続される。(スイッチングハブ2も同じ構成である。なお、スイッチングハブ2の複数のポート211,212を総称して21ということがある)。
【0015】
ここで、ポート41は、スイッチングハブ1からスイッチングハブ2への通信接続用として、例えばスイッチングハブ1における端末101に対するポート11と、イーサネット網82に対するスイッチングハブ2のポート44との間の通信接続用として使用される。また、ポート42は、スイッチングハブ2からスイッチングハブ1への通信接続用として使用される。
【0016】
スイッチングハブ1はその内部構成として、制御部14、及びMACアドレステーブル121、及び重複パケット判定フラグテーブル122を有する。ハードウェア的には、制御部14はプロセッサを有し、そこでプログラムを実行して所定の機能を実現する。また、上記各テーブルはメモリ内に形成される。
【0017】
MACアドレステーブル121(スイッチングハブ2では221)は、図13に例示するように、一般的なスイッチングハブと同様に、全てのポートについて、各端末のMACアドレスとの対応関係を登録する。他のスイッチングハブへMACアドレス更新用のフレームを送信するのは、このMACテーブルに示す通り、自分自身が直接収容している端末のみである。
【0018】
同報スイッチングハブは重複判定が可能なパケットのみを他の同報スイッチングハブへ送信する。このため、他の複数経路同報スイッチングハブに接続された端末が送信するパケットがこの条件に当てはまらない場合はこの端末を送信元としたパケットを受信しないため、端末が接続されている場合でも一定時間後にMACアドレステーブルから削除されることになる。これを防止するため、各複数経路同報スイッチングハブは定期的に他の複数経路同報スイッチングハブへ直接接続されている端末の情報を送信し、他の複数経路同報スイッチングハブのMACアドレステーブルを更新する。
【0019】
重複パケット判定フラグテーブル122(スイッチングハブ2では222)は、図2に示すように、パケットが重複パケットか否かを判定するために参照されるテーブルであり、IPパケットユニキャスト用のIPユニキャストパケット重複判定フラグテーブル1221と、ARPリクエストパケット重複判定フラグテーブル1222、及びARPリプライパケット重複判定フラグテーブル1223から構成される。ARPは、MACアドレスをあて先のIPアドレスから求めるためのプロトコルである。なお、重複パケットの取扱について、コピー可能な全てのパケットを同報するのではなく、重要度の高いパケットのみをコピーし同報すればよい。具体的には、送信先IPアドレス、送信元IPアドレス、ポート番号などをキーにし、コピーするパケットの選択を行う。
【0020】
IPユニキャストパケット重複判定フラグテーブル1221は、レコード毎に、キーとしての送信元IPアドレスと送信先のIPアドレスの対、IPパケットの識別子及びフラグメントオフセット、ポート43のパケット受信フラグ及びポート41のパケット受信フラグ、及びタイムアウト監視と行うためのレコード生存タイマの各情報を登録する。パケット受信フラグは、ポートがパケットを受信するときは「1」、受信していないときには「0」で表す。
【0021】
重複パケット判定フラグテーブル122の各レコードは、キーとなっている条件のパケットが何れのポートで受信済かをフラグによって登録している。各レコードはレコードの生存時間を決めるタイマを持っており、図12に示すように、このタイマ(レコード生存タイマ)はリセットされたときから一定時間ごとに更新され、タイムアウトした時点でタイマと対になったレコードを削除する。
【0022】
このタイマは図8、10に示すように、キーで示す条件のパケットを初めて受信した場合と再送パケットを受信した場合にリセットを行う。このように他の複数経路同報スイッチングハブを経由してパケットを受信した場合も含め、端末へフレームを送信する場合にタイマをリセットし、このタイマがタイムアウトする前に受信したパケットは再送の場合を除き重複して受信したパケットとして端末装置へは送信せずに廃棄する。
【0023】
ARPリクエストパケット重複判定フラグテーブル1222とARPリプライパケット重複判定フラグテーブル1223は、上記と同様に、レコード毎にキーとしての送信元IPアドレスと送信先のIPアドレスの対、ポート43のパケット受信フラグ及びポート41のパケット受信フラグ、及びタイムアウト監視を行うためのレコード生存タイマの各情報を登録する。
【0024】
次に、図14を参照して、同報可能なフレームとフレームフォーマットについて説明する。
イーサネットフレーム(レイヤ2層)とIPパケット(レイヤ3層)における関係を、ARPフレーム及びIPフレームについて示す。ここで、ユニキャストは一対一の通信、ブロードキャストは一対多の通信である。IPフレームやその他(apple_talk)のフレームは、ユニキャスト、マルチキャスト、ブロードキャストへの通信が可能である。複数経路同報スイッチングハブがコピーを行い、異なる広域イーサネット網へ同報を行うフレーム(パケット)の対象は、ARPフレームとユニキャスト間の通信(図の太字)である。
【0025】
IPパケットは、その送信先IPアドレスによってユニキャスト、ブロードキャスト、マルチキャスト、リザーブを判定することができる。これは次の通り定められている。
・マルチキャスト:224.0.0.0〜239.255.255.255
・リザーブ(ブロードキャストを含む):240.0.0.0〜255.255.255.255
・ユニキャスト:その他
なお、ARPフレームのタイプは、例えば「IP=0x806」のように示され、IPのパケットのタイプは、例えば「IP=0x800」のように示される。
【0026】
次に、図3以降の図面を参照して、パケットの送受信の処理動作について説明する。
図3は、スイッチングハブ1がポート11からフレームを受信した場合のフレーム処理動作を示す。
例えば、スイッチングハブ1がポート111からフレームを受信すると、その受信したフレームが持つ、その送信元及び送信先のMACアドレス及びタイプ(IP、ARPまたはその他かを示すフラグ)を取得する(S301)。
【0027】
次に、受信したフレームの送信元MACアドレスを参照し、図11に示す条件を満たしている場合は端末のMACアドレスとその接続ポートを管理するMACアドレステーブル(図13)を更新する(S303)。そして、MACアドレステーブルの情報を取得して(S303)、受信したフレームはIPパケットであるかを判定する(S304)。判定の結果、IPパケットであれば、MACアドレステーブルを参照してその送信先がポート112に登録されているかを判定する(S305)。判定の結果、ポート112に当該送信先が登録されていれば、受信したパケットをポート112へ送信する(S306)。即ち、送信先が同一の同報ハブに接続された端末宛のため、フレームの種別によらずコピーは行わない。端末のMACアドレスは登録されているため、適切なポートのみへ送信することになる。
【0028】
一方、MACアドレステーブルを参照した結果、受信したフレームがポート112には登録されていない場合(S305:No)、受信したフレームの送信先IPアドレスを取得して(S312)、受信したフレームの送信先IPアドレスがユニキャストアドレスかを判定する(S313)。送信先IPアドレスがユニキャストの判定は、図14に示した通り、送信先IPアドレスがマルチキャストとリザーブ(ブロードキャスト含む)以外の場合かを判定することで行う。ユニキャストは送信先IPアドレスが該当する場合のみである。この判定の結果、ユニキャストアドレスであれば、その送信先がポート41又は43に登録されているか判定し(S314)、その判定の結果、ポート41又は43に登録されていれば、受信したパケットをポート41と43へ送信する。ここで、送信されるパケットはコピー可能なIPユニキャストパケット又はARPリプライパケットである。端末のMACアドレスは広域イーサの先に登録されているため、広域イーサの接続ポ−トヘ送信する。さらにコピーしたフレームを他の広域イーサから送信するので、このフレームを隣接する他の同報ハブへも送信する。
【0029】
上記判定の結果、送信先がポート41又は43に登録されていない場合(S314:No)、受信したパケットをポート112、41、43へ送信する(S335)。ここで、送信されるパケットはコピー可能なIPユニキャスト又はARPリクエストのパケットである。送信先MACアドレスがブロードキャスト又は不明(MACアドレステーブルに登録がない)なため、広域イーサの先にある端末を含む全ての端末へ送信する。さらにコピーしたフレームを他の広域イーサから送信するので、このフレームを隣接する他の同報ハブへも送信する。
【0030】
送信先IPアドレスがユニキャストでない場合(S313:No)も、その送信先がポート41又は43に登録されているか判定し(S322)、その判定の結果、送信先がポート41又は43に登録されていれば、受信したパケットをポート43へ送信する(S323)。ここで、コピー不可能なIPユニキャスト以外かARP(リクエスト、リプライ共)以外のパケットである。端末のMACアドレスは広域イーサの先に登録されているため、広域イーサの接続ポートへ送信する。フレームはコピーしないため、このフレームは隣接する他の同報ハブへは送信しない。
【0031】
一方、上記判定の結果(S322)、送信先がポート41又は43に登録されていない場合には(S322:No)、受信したパケットをポート43と112へ送信する(S342)。ここで、コピー不可能なIPユニキャスト以外又はARP(リクエスト、リプライ共)以外のパケットである。送信先MACアドレスがブロードキャスト又は不明(MACアドレステーブルに登録がない)なため、広域イーサの先にある端末を含む全ての端末へ送信する。フレームはコピーしないため、このフレームは隣接する他の同報ハブへは送信しない。
【0032】
説明を戻して、上記の受信フレームはIPパケットかの判定の結果(S304)、IPパケットのフレームでない場合(S304:No)、当該受信フレームはARPリクエストかを判定する(S332)。判定の結果、ARPリクエストである場合、その受信フレームを他の端末101に対するポート112,イーサネット網82に対するポート41、及びイーサネット網81に対するポート43へ送信する(S335)。
【0033】
一方、上記ARPリクエストかの判定の結果、ARPリクエストでなければ、MACアドレステーブルを参照して、その送信先がポート112に登録されているかを判定する(S333)。この判定の結果、送信先がポート112に登録されていれば、受信したパケットをポート112へ送信する(S306)。一方、受信したフレームがポート112に登録されていない場合、更に、当該受信フレームはARPリプライか否かの判定を行う(S334)。この判定の結果、ARPリプライの場合は、MACアドレステーブルを参照して(S303)、その送信先がポート41又は43に登録されているか判定する(S314)。こ判定の結果、ポート41又は43に送信先が登録されていれば、受信したパケットをポート41と43へ送信する(S315)。この判定の結果(S314)、送信先がポート41又は43に登録されていない場合、受信したパケットをポート41、43と112へ送信する(S335)。
【0034】
上記のARPリプライかの判定の結果(S334)、受信フレームがARPリプライでない場合、上記説明と同様に、その送信先がポート41又は43に登録されているか判定し(S322)、この判定の結果、送信先がポート41又は43に登録されていれば、受信したパケットをポート43へ送信する(S323)。一方、ポート41又は43に登録されていない場合、受信したパケットをポート43と112へ送信する(S335)。
【0035】
図4は、スイッチングハブ1がポート41からフレームを受信した場合のフレーム処理動作を示す。
ステップS401〜S404、S432,S442の処理動作は、上記の図3の場合と同様である。
スイッチングハブ1がポート41からフレームを受信した場合、MACアドレステーブルの情報を取得して、受信したフレームはIPパケットかの判定の結果、IPパケットである場合(S404:Yes)、次に、受信したフレームの送信先IPアドレスはユニキャストアドレスかを判定する(S405)。その判定の結果、ユニキャストであれば、当該パケットを廃棄する(S406)。即ち、コピー不可能であるIPユニキャスト以外とARP(リクエスト、リプライ共)以外のパケットは、隣接のハブからは送られてこないはずなのでエラーパケットとして廃棄する。
【0036】
ユニキャストアドレスかの判定の結果、ユニキャストでなければ(S405:No)、IPユニキャストパケット重複判定フラグテーブル1221の情報を取得して(S412)、受信パケットは初めての受信か、及び再送パケットかを判定する(S413,S414)。これらの判定の結果、否であれば、当該パケットを廃棄する(S415)。即ち、コピー可能なパケットであるが、既に端末へ送信済みのため廃棄する。
なお、この受信パケットが初めてのパケットか、又は受信済みのパケットか、又は再送パケットかの処理は、図7に示すような処理手順で判定される。図7の手順に従って判定されたパケットは、図8図10に示すように、その判定に従って、重複パケット判定フラグテーブルの更新処理が行なわれる。
【0037】
一方、受信したパケットが初めての受信である場合、又は再送パケットである場合には(S413,S414:Yes)、送信先がポート111、112の何れかに登録されているかを判定し(S422)、その結果、登録されていれば、当該パケットを登録されているポートへ送信する(S423)。即ち、コピー可能なパケットであり、初めての受信または再送パケットであるため、端末へ送信する。端末のMACアドレスは登録されているため、適切なポートへのみ送信する。
【0038】
一方、送信先がポート111,112に登録されていなければ(S422:No)、さらに送信先がポート42に登録されているかを判定して(S436)、登録されていれば、当該パケットを廃棄する(S437)。即ち、コピー可能なパケットであるが、他の同報ハブに接続された端末宛であるため廃棄する。なお、この判定(S436)は、隣接する同報ハブから受信したフレームには、他の同報ハブに接続された端末宛のフレームも含まれるので、これを判定するための処理である。
【0039】
送信先にポート42が登録されていなければ、当該パケットをポート111,112へ送信する(S446)。即ち、コピー可能なパケットであり、初めての受信または再送パケットであるため、端末へ送信する。送信先がブロードキャスト又は不明なため(MACアドレステーブルに登録されていない)、直接接続されている全ての端末へ送信する。
【0040】
説明を戻して、上記の受信フレームがIPパケットかの判定の結果、IPパケットでない場合(S404)、受信フレームはARPリクエストかの判定(S432)、及び受信フレームはARPリプライかの判定(ARPリクエストでない場合に)を行う(S442)。この判定の結果、ARPリクエストである場合、ARPリクエストパケット重複判定フラグテーブル1222の情報を取得して、受信パケットは初めての受信か、及び再送パケットかを判定する(S434,S435)。これらの判定の結果、否であれば、当該パケットを廃棄する(S415)。一方、受信したパケットが初めての受信である場合、又は再送パケットである場合には、当該パケットをポート111、112へ送信する(S446)。
【0041】
また、受信フレームがARPリプライの場合(S442:Yes)、ARPリプライパケット重複判定フラグテーブル1223の情報を取得して、受信パケットは初めての受信か、及び再送パケットかを判定する(S444,S445)。これらの判定の結果、否であれば、当該パケットを廃棄する(S415)。一方、受信したパケットが初めての受信である場合、又は再送パケットである場合には、ステップS422の上記処理に従う。
【0042】
図5は、スイッチングハブ1がポート42からフレームを受信した場合のフレーム処理動作を示す。ステップS501〜S504、S522,S523の処理動作は、上記の図3の場合と同様である。
受信したフレームの送信先IPアドレスを取得して(S504)、受信したフレームの送信先IPアドレスがユニキャストアドレスかを判定する(S505)。この判定の結果、ユニキャストアドレスであれば、受信したフレームをポート43へ送信する(S506)。即ち、受信したパケットはコピーされたパケットであり、コピー可能である条件も満たしているので広域イーサへ送信する。
一方、上記判定の結果、ユニキャストアドレスでなければ、当該フレームを廃棄する(S512)。即ち、受信したパケットはコピーされたパケットであるが、コピー不可能なパケットであるためエラーパケットとして廃棄する。
【0043】
また、受信したフレームがIPパケットでない場合(S503:No)、当該フレームはARPリクエストかを判定し、その結果、ARPリクエストであれば(S522:Yes)、同様にして、受信フレームをポート43へ送信する(S506)。一方、ARPリクエストでなければ(S522:No)、当該受信フレームはARPリプライか判定し、ARPリプライであれば、受信フレームをポート43へ送信する(S506)。ARPリプライでなければ、当該フレームのパケットを廃棄する(S512)。
【0044】
次に、図6を参照して、イッチングハブ1が、イーサネット網81からポート43を介してフレームを受信した場合のフレーム処理動作について説明する。
この処理S601〜S624,〜S645,〜S655,S632は、図4に示した処理フローの処理と同様であるので、重複説明は省く。これらの後の処理が、図4とは異なる。
受信したフレームの送信先IPアドレスがユニキャストアドレスの場合、送信先はポート111,112の何れかに登録されているかを判定する(S606)。その判定の結果、登録されていれば、その登録されているポートへ受信フレームを送信する(S607)。即ち、コピー不可能なパケットであるため、重複判定を行う必要はなく、端末へ送信する。送信先端末のMACアドレスは登録されているため、適切なポートへのみ送信する。
一方、登録されていなければ、当該フレームをポート111,112へ送信する(S612)。即ち、コピー不可能なパケットであるため、重複判定を行う必要はなく、端末へ送信する。送信先がブロードキャスト又は不明な(MACアドレステーブルに登録されていない)ため、直接接続されている全ての端末へ送信する。
【0045】
受信フレームの送信先IPアドレスがユニキャストアドレスであって(S605:Yes)、IPユニキャストパケット重複判定フラグテーブル1221の情報を取得して判定の結果、受信パケットが
初めての受信又は再送パケットである場合(S623,624)、さらに、送信先がポート111,112に登録されているかを判定し(S632)、登録されていれば、その登録されているポート42へ受信パケットを送信する(S633)。即ち、コピー可能なパケットであり、初めての受信または再送パケットであるため、端末へ送信する。端末のMACアドレスは登録されているため、適切なポートへのみ送信する。さらに他の同報ハブへも送信する。
【0046】
一方、ポート111,112に登録されていなければ、当該パケットをポート111,112,42へ送信する(S646)。即ち、コピー可能なパケットであり、初めての受信または再送パケットであるため、端末へ送信する。送信先がブロードキャスト又は不明な(MACアドレステーブルに登録されていない)ため、直接接続されている全ての端末へ送信する。さらに他の同報ハブへも送信する。
【0047】
また、受信パケットが初めての受信又は再送パケットでない場合(S623,624:No)、当該パケットをポート42へ送信する(S625)。即ち、コピー可能なパケットであるが、既に端末へ送信済みのため端末へは送信しない(但し他の同報ハブへは送信する)。
【0048】
なお、この場合でも、図4の動作と同様に、この受信パケットが初めてのパケットか、又は再送パケットかの判定処理(S623,S624)は、図7に示すような処理手順で判定される。図7の手順に従って判定されたパケットは、図8図10に示すように、その判定に従って、重複パケット判定フラグテーブルの更新処理を行う。このようにイーサネット網81から受信したフレームは必要に応じて端末111,112へ送信される。
【0049】
また、受信フレームがARPリクエストかの判定(S642)、及びARPリプライかの判定(ARPリクエストでない場合)(S652)の結果、それぞれ、ARPリクエストパケット重複判定フラグテーブル1222やARPリプライパケット重複判定フラグテーブル1223の情報を取得して、受信パケットは初めての受信か、及び再送パケットかを判定する(S644−S645、S654−S655)。これらの判定の結果、それぞれ、図6の処理フローに従い、上記と同様に、該当するポートへ受信パケットを送信する(S625,S633,S646)。
【0050】
以上のように、本発明の実施例に係る複数経路同報スイッチングハブによれば、メッセージ識別子及び通信パスの管理を行わないため処理が大幅に軽減され、低価格化が可能となる。また、ファイアウォールやIPSecなどパケットの解析を行う機器や機能の使用が可能となる。また、パケット長が変わらないため、MTU長に影響を与えない。更に、メッセージ識別子を付与しないためイーサネット網の帯域を使用しない。また、回線を分岐する装置が不要のため、システムの信頼性を高く出来る。
【符号の説明】
【0051】
1、2:スイッチングハブ装置 101:201:端末装置
121:MACアドレステーブル 122:重複パケット判定フラグテーブル
1221:IPユニキャストパケット重複判定フラグテーブル
1222:ARPリクエストパケット重複判定フラグテーブル
1223:ARPリプライパケット重複判定フラグテーブル
111、112、211,212:端末接続ポート
13,23:インタフェース部 14,24:インタフェース部
15,25:インタフェース部 16,26、17,27:インタフェース部
41,42:ハブ間接続ポート
43,44:イーサネット網接続ポート。
図1
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