(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記撮像光学系は、前記第2の観察像の視野範囲が前記撮像部の受光面の天地の隅に達する大きさになる倍率で、前記合成画像を拡大して前記撮像部に撮像させることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
前記撮像光学系における前記光軸から前記オフセットした前記受光面上の中心までの距離をK、前記撮像部の受光面の高さをα、前記先端構造部位により遮光される部分的環形状の前記角度領域の中心と端部との広がり角度をθとした場合に、オフセット距離Kは、
K=α/2×(1−cosθ)/(1+cosθ)
となることを特徴とする請求項3に記載の内視鏡装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、第1の実施形態に係る直視観察窓及び側視観察窓を有する撮像ユニットが搭載された内視鏡装置の外観構成を示す図である。
本実施形態の内視鏡装置は、大別して、内視鏡本体1と、移動可能なトロリー2に搭載された内視鏡用機器7とで構成される。本実施形態は、生体の体腔内や管腔内を観察する生体内視鏡や、エンジン等の機器内や管路内を観察する工業内視鏡に適用可能である。また、本実施形態では、軟性鏡を例として説明するが、硬性鏡においても同様に搭載することができる。
【0012】
内視鏡本体1は、観察対象となる管腔内に挿入される挿入部(可撓管)4と、その先端に設けられた湾曲部5と、湾曲部5を湾曲動作させる操作部3と、で構成される。挿入部4の先端側に先端部9が設けられ、この先端部9に後述する撮像ユニットが設けられている。以下の説明において、挿入部4を中央として、湾曲部5に向かう方を先端側とし、操作部3に向かう方を基端側と称する。
【0013】
内視鏡用機器7は、観察対象部位に照射する照明光を生成する光源装置と、撮像された映像信号に所定の画像処理を施すビデオプロセッサと、映像信号を観察画像として表示するモニタと、入力部であるキーボード等を有している。
【0014】
さらに、トロリー2の支柱には、洗浄等に用いられる液体(洗浄液:例えば、生理食塩水等の水を主とする液体)を貯留するボトル8が着脱可能に取り付けられている。また、内視鏡用機器7の内部には、送気ポンプユニットが配置されている。さらに、トロリー2の棚には、管腔内で後述する洗浄ノズルから管腔内に噴出された洗浄のための液体や気体を吸引する吸引ユニット10が設けられている。
【0015】
内視鏡本体1と光源ユニットは、ユニバーサルケーブル6でコネクタ接続されている。ユニバーサルケーブル6は、光ファイバーからなるライトガイドの他に、映像信号等を伝送する複数の信号線、チューブからなる気体及び液体の供給路(送気送液チャンネル)と排出路を含んでいる。ユニバーサルケーブル6の内視鏡用機器7側に接続するコネクタは、信号線とチューブとライトガイドに分岐して、それぞれの構成部に接続している。
【0016】
図2Aは、挿入部先端の外観構成を示す図、
図2Bは、挿入部先端を正面から見た構成を示す図である。
図3は、撮像ユニットの断面構成を示す図である。
図4Aは、第1の実施形態のモニタ表示される前方観察像と側方観察像の合成画像の例を示し、
図4Bは、比較のためのモニタ表示される従来の前方観察像と側方観察像の合成画像の例を示す図である。モニタ表示画面においては、画面の垂直方向を天地方向とし、水平方向を左右方向としている。以下の説明で、挿入部の管腔内の進行方向を挿入方向又は軸方向とし、軸方向から見た面を正面(先端面)とし、その軸方向と直交する面を側面又は側周面と称している。
【0017】
挿入部4の先端部9は、先端面から挿入方向(軸方向)に突出して直視観察窓14と側視観察窓15が設けられる撮像ユニット11と、撮像ユニット11と同じ高さ(前方への張り出し高さ)に突出する先端構造物(先端構造部位)である台座13と、台座13の正面上で直視観察窓14の近傍に配置された洗浄ノズル16と、台座13の両側面に配置された側視観察窓15の洗浄ノズル17と、先端面上に開口される図示しない鉗子等を挿通するための鉗子孔の開口部19と、台座13の正面に配置され、直視観察窓14用の照明光を照射する照明窓18と、が設けられている。
【0018】
撮像ユニット11は、管孔内の正面に存在する観察対象を所定の視野領域で取り込む直視観察窓14と、直視観察窓14の後方に配置され、管孔内の周囲面に存在する観察対象を周囲に渡る視野領域で取り込む側視観察窓15と、が設けられている。また、照明窓は、台座13上の照明窓18以外にも、挿入部4の先端面に配置してもよいし、側視観察窓15の近傍で管孔内の周囲面を照明する照明窓を設けてもよい。
【0019】
台座13は、その内部に、洗浄ノズル16,17に繋がる送液路と送気路が配管され、さらに、正面に配置された照明窓18に照明光を導くように、光ファイバーケーブルが配設されている。台座13は、略三角形状を想定し、仮想的に底辺となる部分が先端部9の円周面と同じ円弧面となり、斜辺となる部分が底辺の両端から直視観察窓14の中央側に向かう2つの側面となっている。実質的には、撮像ユニット11に一体化する略扇形形状となっている。
【0020】
台座13の2つの側面には、それぞれに洗浄ノズル17が設けられている。洗浄ノズル17から噴出された洗浄液は、側視観察窓15の側面に沿って接するように流れ、さらに側視観察窓15の頂部を回り込むように流れる。このような液流により、側視観察窓15が洗浄される。洗浄する際には、スイッチ操作により送気・送液の供給管路から送出された洗浄液又は気体が観察窓14,15に向かって開口するノズル口から噴出されて、各観察窓に吹き付けられる。
【0021】
撮像ユニット11は、光学素子の一種であるレンズを複数用いたレンズ群24により構成される撮像光学系21と、例えば、CCDやCOMSセンサ等の撮像素子からなる撮像部28とで構成されている。尚、撮像光学系21は、他の光学素子として、ミラー等の反射部材、光像を絞る絞り部材等も含むものとする。レンズにおいてもガラス製に限定されるものではなく、樹脂材料を含む他の透明材料により形成されていてもよい。
【0022】
撮像光学系21は、
図3に示すように、複数のレンズ(光学素子)を組み合わせて構成され、これらのレンズは、全てのレンズの光軸が一致する、即ち同一の光軸となるように、鏡枠23内に配列されて支持されている。
【0023】
具体的には、入射側先端に配置される直視観察窓14を形成する基端側に凹面20aを有する凹面レンズ20(第1光学素子)と、その光軸方向後方に配置される側視観察窓15を形成する基端側に凹面22aを有する円筒形状(本実施形態では、円錐台形状)の円筒レンズ(第2光学素子)22とを有している。
【0024】
円筒レンズ22は、台座13の内部に形成された溝部13aに嵌装されて固定されている。また、円筒レンズ22の基端側の凹面22aは、側視観察窓15から入射した光像を反射する環状のミラーコート部材が形成されている、又は、側視観察窓15から入射した光像を全反射するように形成されている。円筒レンズ22の先端の平面上には、光像を再度反射する環状のミラーコート部材22bが形成される。ミラーコート部材22bの内孔は、凹面レンズ20を通過する光像の絞りの機能を有している。凹面レンズ20は、ミラーコート部材22bを介在させて円筒レンズ22に密着し、鏡枠部材(第1の支持部材)により固定されている。この時、凹面レンズ20と円筒レンズ22のそれぞれの光軸は一致するように固定される。
【0025】
台座13と接する以外の露呈する鏡枠23には、外装部材12(12a,12b)が水密に設けられている。凹面レンズ20による直視観察窓14の視野角は、従来の内視鏡装置の挿入部に設けられる直視観察窓の視野角と同等である。また、側視観察窓15の内側の視野角は、直視観察窓の視野角との重なりを持たずに、なるべく近接することが好ましい。これらの視野角は設計事項であり、観察対象により適宜設定される。
【0026】
尚、
図4Aに示す前方観察像と側方観察像との境界に区分線を表示させたい場合には、ミラーコート部材22bの環状内部の縁に線状の反射しない縁取りを形成すれば、その縁取り部分のみ観察光像が通過及び反射しないため、区分線として境界を表示させることも可能である。
【0027】
さらに、円筒レンズ22の基端側は、鏡枠23の先端部(第1の支持部材)に接着され、鏡枠23内には、複数の凹レンズ及び凸レンズが光軸方向に配置される。鏡枠23の基端側には、撮像部28を保持する撮像保持枠25が嵌め込まれて接着剤26等で固定されている。撮像保持枠25は、撮像部28の周囲を保持し、撮像部28の受光面28aには、撮像範囲を規定するアパーチャの機能を有するマスク部材27が設けられている。
【0028】
図3を参照して、撮像光学系21における直視観察窓14及び側視観察窓15による前方観察像と側方観察像の結像について説明する。尚、結像するまでの観察像を光像と称している。
直視観察窓14の凹面レンズ20に入射した光像は、ミラーコート部材22bにより絞られて、円筒レンズ22に入射して収束され、空間を経て鏡枠23に支持されるレンズ群24に入射する。この時、光像はレンズ群24の先端に位置するレンズ付近で合焦して光軸で交差し、光像の向きが反転(天地左右)し、反転光像となる。その後、反転光像は、レンズ群24を通過して、撮像部28の受光面28aの中央の円形領域に前方観察像として結像する。
【0029】
一方、側視観察窓15の円筒レンズ22の側面から入射した光像は、凹面22aで内面反射して、ミラーコート部材22bの反射面に進行する。この反射面で反射した光像は、凹面22aを通過し、空間を経て鏡枠23に支持されるレンズ群24に収束するように入射する。この時、光像は、前方観察像と同じ位置で合焦して光軸で交差し、光像の向きが反転(天地左右)し、反転光像となる。その後、反転光像は、レンズ群24を通過して、撮像部28の受光面28aに前方観察像の中央領域を環状に囲むように側方観察像として結像する。
【0030】
また、撮像光学系21と撮像部28の配置関係は、一般的には、撮像光学系21の光軸G上に、撮像部28の受光面の中心位置Lが重なるように配置されている。この配置において、撮像部により撮像された受光面41上の前方観察像42と側方観察像43の合成画像は、
図4Bに示すように、受光面内に前方観察像42と側方観察像43の全体が表示される。また、側方観察像43においては、台座13が撮像ユニット11に接して設けられている。このため、台座13の一部が遮光部分51となり、側視観察窓15において、非結像領域44を生じさせている。非結像領域44は、非観察視野となっている。
【0031】
本実施形態においては、
図3に示すように、撮像光学系21の光像通路の中心となる光軸Gと、撮像部28の受光面の中心位置Lとの間にシフト距離Kの位置ずれが生じるように、撮像部28が台座13側にシフトして配置されている。撮像部28のシフト距離Kは、撮像光学系の倍率と撮像素子の受光面積によって異なるが、例えば、1mm以下程度の距離である。
【0032】
従って、
図3においては、受光面28a上に結像される観察対象像32は、受光面28aの中心位置Lに対して、上方にシフトする。即ち、表示される観察対象像32は、
図4(a)に示すように、下方にシフトして非結像領域44が受光面41上から欠如している。この非結像領域44は、観察像が取り込まれていないため、操作者に対してモニタ表示しなければならない必要はなく、意図的に欠如させたとしても全く支障はない。
【0033】
そこで、本実施形態では、前述したように、撮像部28を移動させて、光軸Gに対して、受光面の中心位置Lをシフトし、さらに撮像光学系の倍率を調整して、前方観察像42と側方観察像43の合成画像を拡大表示して、非結像領域44を表示画面外へはみ出させて、
図4Aに示すように、側方観察像の視野範囲(表示範囲)が受光面41の天地の隅に達するまで撮像光学系を拡大調整する。この拡大調整は、撮像光学系21のレンズ倍率の変更・調整により行い、側方観察像43の非結像領域44との境部分43aが欠如しない範囲に設定している。尚、
図4Bに示す従来の前方観察像と側方観察像の合成画像を単に拡大表示させると、前方観察像は拡大されるが、側方観察像が表示画面からはみ出してしまい、側方観察像の一部(特に、天地側の画像)が表示されずに、欠如することとなり、観察に支障を生じる。
【0034】
尚、本実施形態では、光軸に対して撮像部の受光面を移動する構成として説明したが、勿論、反対に、撮像素子の中心に対して、撮像光学系を移動させて、光軸の方をシフトさせてもよい。
【0035】
この時の側方観察像43の視野が全く欠如しない位置のシフト距離Kは、
シフトする方向と平行な方向の撮像素子の受光面
41の高さをα、シフト距離をK、非結像領域44の天地方向(垂線)に対する
光軸から見た広がり角度をθ、とした場合には、
K=α/2×(1−cosθ)/(1+cosθ)…(1)
となる。また、前記条件で
光軸Gと視野範囲である受光面41の天地の隅との距離のうち長い方をRとした場合には、
R=α/(1+cosθ) …(2)
となる。
【0036】
以上のように、前方観察像42と側方観察像43の合成画像を撮像する撮像ユニット11は、シフトにより撮像光学系21の光軸と撮像部(撮像素子)の受光面中心とを、非結像領域44側にオフセットする。このオフセットにより、撮像部の受光面に結像される非結像領域44の光像がモニタ画面上から排除されて最小表示となり、観察画像の実質的な表示領域が増加される。従って、側方観察像43の表示領域に影響を与えずに、前方観察像42の表示領域を大きくすることができる。
【0037】
また、非結像領域44を排除するトリミング処理及び合成画像の拡大表示処理により実現する場合、これらの処理においては、撮像素子の実質的に使用する画素(CCD画素)を減少させることであり、見落としが無いように微細な箇所まで観察が必要とされ、高品質が求められる画像の質を落とすこととなる。従って、ソフトウエアの動画像処理により実現することは可能であるが、撮像素子及び画像処理回路(CPU等)の高性能化が必須となり、コストアップが生じる。
【0038】
これに対して、本実施形態における光軸と受光面中心位置のシフト工程と撮像光学系の調整工程によるハードウエアを採用することで、設計時に撮像光学系の特性を従来から変更する必要はあるが、撮像素子や実質的な画像処理の高性能化は最小限のコストで実用化が可能である。
【0039】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
図5は、変形例に係る撮像ユニットを含む挿入部の先端部の断面構成を示す図である。本変形例の挿入部先端の構成は、撮像ユニット11の取り付け構造を除き、第1の実施形態の構成とは同等であり、同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
【0040】
撮像ユニット11の円筒レンズ22は、台座13に設けられる溝部13aに嵌合支持されている。本変形例では、円筒レンズ22と溝部(遮光部分51)13aとの間で、円筒レンズ22の側視観察窓15と鏡枠23とに掛かるように、緩衝部材52が挿入された構成である。この緩衝部材52は、弾性接着剤例えば、シリコーン系弾性接着剤又は、ゴムシート等が介在するように設けられている。
【0041】
本変形例によれば、緩衝部材52を円筒レンズ22と溝部(遮光部)13aとの間に介在させることにより、外部から円筒レンズ22に衝撃が与えられた際に、その衝撃を緩和して、損傷を防止することができる。この外部からの衝撃は、観察使用中よりは、運搬時や洗浄機等への着脱時に発生する場合が多い。
また、緩衝部材52を液体が浸透されない材料により形成し、円筒レンズ22と溝部(遮光部)13aとを密着させるように設けることにより、挿入部内への水等の侵入を防止する水密機能を持たせることも可能である。
【0042】
以上説明した実施形態及び変形例は、以下の発明の要旨を含む。
(1)管腔内の前方を観察する前方観察光学系と、該管腔内の側方を観察し円環形状を含む側方観察光学系とを備える内視鏡であって、前記前方観察光学系を支持する第1の支持部材と、前記第1の支持部材と光軸が同一になるように前記側方観察光学系を支持する第2の支持部材と、前記側方観察光学系における前記円環形状の一部の角度領域を遮光する遮光部と、前記遮光部が設けられている方向と同じ方向に、光学的にシフト(オフセット)して設けられる、前記前方観察光学系及び前記側方観察光学系によって得た前記管腔内の像を撮像する撮像部と、を備える内視鏡装置。
【0043】
(2)前記遮光部は、前記第1の支持部材と前記第2の支持部材とを接続する接続部を含む(1)に記載の内視鏡装置。
(3)前記遮光部は、前記前方観察光学系又は、前記側方観察光学系に対して噴射する洗浄液を通過させる管路を含む(1)に記載の内視鏡装置。
(4)前記前方観察光学系および前記側方観察光学系の光軸と、前記シフトした位置との間の距離をKとし、前記撮像部が撮像したとき視野となる、前記シフトする方向と平行な方向の高さをαとし、前記遮光部が遮光する領域の、前記光軸中心から見た角度をθとすると、K=(α/2)×(1−cosθ)/(1+cosθ)となる(1)に記載の内視鏡装置。
【0044】
(5)前記撮像部が撮像したとき視野となる、前記オフセットする方向と平行な方向の高さをαとし、前記前方観察光学系及び前記側方観察光学系の光軸と、前記視野の境界との、前記オフセットする方向と平行な方向の距離のうち長い方をRとし、前記遮光部が遮光する領域の、前記光軸中心から見た角度をθとすると、R=α/(1+cosθ)となる(1)に記載の内視鏡装置。