特許第5698898号(P5698898)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698898
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】スライド式サンバイザ
(51)【国際特許分類】
   B60J 3/02 20060101AFI20150319BHJP
【FI】
   B60J3/02 D
   B60J3/02 B
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2009-25639(P2009-25639)
(22)【出願日】2009年2月6日
(65)【公開番号】特開2010-179794(P2010-179794A)
(43)【公開日】2010年8月19日
【審査請求日】2012年1月19日
【審判番号】不服2014-3943(P2014-3943/J1)
【審判請求日】2014年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000124454
【氏名又は名称】河西工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 豊
(72)【発明者】
【氏名】風間 成晃
(72)【発明者】
【氏名】金敷 昭
【合議体】
【審判長】 丸山 英行
【審判官】 氏原 康宏
【審判官】 平田 信勝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−9883(JP,A)
【文献】 特開2008−284973(JP,A)
【文献】 特開2004−130929(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/83623(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部が車体パネルに枢着されるシャフトに沿ってサンバイザ本体がスライドするスライド式サンバイザであって、
一方の樹脂芯材と他方の樹脂芯材とをヒンジ部を軸に折り重ねることにより構成される前記サンバイザ本体と、
一方の前記樹脂芯材の外縁部及び内面に設けられたスライドガイドとして機能するリブと他方の前記樹脂芯材の外縁部及び内面に設けられたスライドガイドとして機能するリブとで前記サンバイザ本体の内部に形成され空間である中空部と、
前記シャフトの他方の端部に取り付けられ、前記中空部にスライド自在に内包されるスライドサポートと、
前記サンバイザ本体が前記シャフトを収納する方向にスライドして止まる位置において前記スライドサポートが当接する、一方の前記樹脂芯材の前記外縁部及び前記リブの前記他方の端部側の第1及び第2の内壁と他方の前記樹脂芯材の前記外縁部及び前記リブの前記他方の端部側の第1及び第2の内壁とで形成され第1のロック部と、
前記サンバイザ本体が前記シャフトを拡張する方向にスライドして止まる位置において前記スライドサポートが当接する、一方の前記樹脂芯材の前記リブの前記一方の端部側の第3の内壁と他方の前記樹脂芯材の前記リブの前記一方の端部側の第3の内壁とで形成され第2のロック部と、を備え、
一方の前記樹脂芯材の前記第1及び第2の内壁がその壁面に設けられた係合孔を有するとともに一方の前記樹脂芯材の前記第3の内壁がその壁面に設けられた係合孔を有し、
前記スライドサポートは、前記係合孔に係合する突起部を有することを特徴とするスライド式サンバイザ。
【請求項2】
前記第1及び第2の内壁が、一体の壁とされたことを特徴とする請求項1に記載のスライド式サンバイザ。
【請求項3】
前記スライドサポートに設けられた前記突起部は、
テーパー状に加工された先端部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のスライド式サンバイザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の装着されるサンバイザに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の運転席、あるいは補助席の上方には、直射日光や夜間対向車のライトからの眩惑を防止するためにサンバイザが設けられておいる。最近では、運転姿勢や乗員の体型等に合わせて使用位置を好適に選択し、また、サイドウインドウからの直射日光を遮ることが可能なスライド式サンバイザが使用されている。
【0003】
図1(a)に示すように、スライド式サンバイザは、所望の遮光面積を有するサンバイザ本体1がシャフト2により回動可能に支持されており、このシャフト2は、ブラケット3により車体パネルの天井部分に枢着される。そして、シャフト2を軸としてサンバイザ本体1を上下方向に回動させ、また、ブラケット3を軸としてシャフト2を回動させることにより、フロントウインドウとサイドウインドウの双方に展開させることが可能となっている。
【0004】
サンバイザ本体1は、射出成形された樹脂からなる芯材を折り重ねたコアの外表面をクロス、不織布等のサンバイザ表皮により被包された中空構造を有している。シャフト2およびシャフト2の端部に取り付けられたスライドサポート4は、サンバイザ本体1の内部に形成された空間の中に、スライド自在に収容されている。これにより、シャフト2に沿ってサンバイザ本体1を図1(b)中の矢印方向にスライドさせることが可能である。さらに、スライドサポート4は、シャフト2を回動自在に軸受して、前述の通りサンバイザ本体1を上下方向に回動させる機能も有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−9883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、スライド式サンバイザは、サンバイザ本体をスライドサポートで支持してスライドさせる構造となっているため、サンバイザ本体と、スライドサポートとの間の隙間が大きくなると、サンバイザ本体の保持状態が不安定となり、車両の振動で位置ずれを起こし、天井への格納状態から垂れ下がる等の問題が生じることがあった。また、サンバイザ本体を回動させて所望の位置に保持する際に、遊びが大きくなりガタツキが生じる不具合もあった。
【0007】
図2は、サンバイザ本体1のA−A断面(図1(a)参照)を示す模式図である。前述したように、スライド式サンバイザの本体1は、折り重ねられた樹脂芯材6及び7の内部空間に、シャフト2とスライドサポート4を収容している。樹脂芯材6および7の内面には、スライドガイド9となるリブが設けられている。樹脂芯材6、7が折り重ねられた場合に、それぞれのリブの先端が当接してスライドガイド9となる。この際、スライドサポート4は、スライドガイド9と樹脂芯材6および7に囲まれたスライド空間に封じ込まれた状態で収容される。
【0008】
サンバイザ本体1がシャフト2に安定して保持されるためには、スライドガイド9および樹脂芯材6、7との間の隙間が適切な状態に維持される必要がある。しかし、直射日光を長時間受けて乗員室が高温となる環境下においてサンバイザ本体の温度が上昇し、樹脂芯材6、7が図2中に破線で示す6b、7bの状態に膨張すると、スライドサポート4との間の隙間が大きくなり、サンバイザ本体1を安定して保持できなくなる場合がある。
【0009】
そこで、本発明は、上記の問題を鑑みて、乗員室内部が高温となる環境下においても、サンバイザ本体を安定して保持することができるスライド式サンバイザを実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係るスライド式サンバイザは、一方の端部が車体パネルに枢着されるシャフトに沿ってサンバイザ本体がスライドするスライド式サンバイザであって、サンバイザ本体の内部に設けられた空間である中空部と、シャフトの他方の端部に取り付けられ、中空部にスライド自在に内包されるスライドサポートと、サンバイザ本体がシャフトを収納する方向にスライドして止まる位置において、スライドサポートが当接する第1のロック部と、サンバイザ本体がシャフトを拡張する方向にスライドして止まる位置において、前記スライドサポートが当接する第2のロック部と、を備え、第1または第2のロック部の少なくとも一方は、中空部を画する壁面に設けられた係合孔を有し、スライドサポートは、係合孔に係合する突起部を有することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、シャフトの先端に取り付けられたスライドサポートに設けられた突起部が、サンバイザ本体に設けられたロック部の係合孔と係合して、サンバイザ本体がシャフトに保持される構造となる。このため、サンバイザ本体を構成する樹脂芯材が膨張しても、サンバイザ本体はスライドサポートによって安定して保持される。これにより、サンバイザ本体の垂れ下がりや、回動時のガタツキを確実に防ぐことができるようになる。
【0012】
さらに、本発明に係るスライド式サンバイザにおいて、スライドサポートに設けられた突起部は、テーパー状に加工された先端部を有することを特徴とする。これにより、ロック部に設けられた係合孔に突起部を係合させることが容易となり、スライド式サンバイザの機能性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るスライド式サンバイザによれば、乗員室内部が高温となる環境下において、サンバイザ本体の垂れ下がり等を防止して安定した状態を維持することが可能となり、また、回動操作においてもガタツキが生じず、所望の位置に安定して保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】スライド式サンバイザを示す模式図である。
図2】サンバイザ本体1のA−A断面を示す模式図である。
図3】本発明に係るスライド式サンバイザを示した模式図である。
図4】本発明に係るスライド式サンバイザのロック部を示した模式図である。
図5】本発明に係るスライド式サンバイザのロック部を示した模式図である。
図6】本発明に係るスライド式サンバイザのスライドサポートを示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図3は、樹脂芯材6および7を開いた状態において、樹脂芯材7側に配置されるサンバイザ本体1の内部構成を示した模式図である。樹脂芯材6および7は、内面が窪んだ貝状の形状となっており、ヒンジ部17を軸に折り重ねることにより中空のサンバイザ本体を構成する。樹脂芯材6、7のそれぞれには、スライドガイドとして機能するリブ9が設けられている。リブ9の両端には、シャフト2を拡張した時のスライドサポート4の位置を規制する内壁15と、収納時のスライドサポート4の位置を規制するために設けた内壁12bと、が一体に形成されている。内壁15は第2のロック部として機能し、外縁部の開口22からシャフト2を連通するための開口21が設けられている。一方、内壁12bは、外縁部23に設けられた内壁12aと、対となって第1のロック部として機能する。内壁12bと内壁12aは、その間の空間に図示しないミラーユニットへの電気配線を通すために分離して設けられているが、一体の壁としてもスライドサポート4の位置を規制する機能を果たすことは明らかである。
【0017】
リブ9と外縁部23は、サンバイザ本体1の内部に設けられた中空部を画する内壁を形成する。また、シャフト2の端部に取り付けられたスライドサポート4は、中空部にスライド自在に配置され、樹脂芯材6、7がヒンジ17を軸に折り重ねられることにより、サンバイザ本体1に内包される。シャフト2は、もう一方の端部において車体パネルに回動自在に取り付けられ、シャフト2に沿ってサンバイザ本体1がスライドする(図1参照)。この際、スライドサポート4は、スライドガイドとして機能するリブ9に沿って、中空部の内部を移動する。
【0018】
サンバイザ本体1が、シャフト2に沿って拡張する方向にスライドする場合、シャフト2の端部に取り付けられたスライドサポート4が、第2のロック部である内壁15に当接する位置までスライドすることができる。一方、サンバイザ本体1の内部にシャフト2を収納する方向にスライドする場合においては、スライドサポート4が、第1のロック部である内壁12aおよび12bに当接する位置までスライドすることができる。
【0019】
スライドサポート4には、シャフト2が貫通する側面において突起部16aが設けられ、その反対の側面に突起部13aおよび14aが設けられている。突起部16aは、サンバイザ本体1が拡張方向にスライドし、スライドサポート4が内壁15に当接する際に、内壁15に設けられた係合孔16bに係合する。一方、突起部13aおよび14aは、サンバイザ本体1が収納方向にスライドし、スライドサポート4が内壁12a、12bに当接する際に、内壁12aおよび12bに設けられた係合孔13b、14bに係合する。
【0020】
スライドサポート4は、U字形状の本体11と、バネ部材10とが組み合わされて、シャフト2の端部に装着された構成を有している。また、スライドサポート本体11は、シャフト2を軸として回動自在に装着されている。これにより、スライドサポート4に支持されるサンバイザ本体も、シャフト2を軸として回動することができる。また、バネ部材10は、弾性力によりシャフト2を付勢し、サンバイザ本体1を任意の回動位置に保持する機能を有する。
【0021】
上記の通り、スライドサポート4は、サンバイザ本体1を支持してシャフト2に沿ってスライドさせ、また、シャフト2を軸としてサンバイザ本体1を回動させる機能を有し、スライド式サンバイザの機能を発揮させるための要の部材といえる。
【0022】
図4は、拡張方向にサンバイザ本体1がスライドした際に、スライドサポート4が、内壁15に当接する状態を示す模式図である。サンバイザ本体1のスライドに応じてシャフト2が外部に引き出され、シャフト2が貫通するスライドサポート4の側面が内壁15に当接する。この時、スライドサポート4の側面に設けられた突起部16aが、内壁15に設けられた係合孔16bに係合する。この係合により、サンバイザ本体1がスライドサポート4に保持され、シャフト2に対する姿勢が安定する。
【0023】
また、図4は、樹脂芯材7側に設けられた内壁15を示しているが、樹脂芯材6側にも対応する内壁が設けられており、樹脂芯材6および7が折り重ねられた場合に、双方の内壁が当接して1つの壁となり第2のロック部を形成する。図中に示す突起部は1つであるが、複数の突起部を設けて、それに対応する複数の係合孔を内壁15に設けても良い。この場合に、複数の係合孔は、いずれか一方の樹脂芯材側に設けることが好ましい。樹脂芯材6,7の重ね合わせの際の位置ずれにより、スライドサポート4に設けられる複数の突起部との間で、係合できない場合が生じるからである。
【0024】
図5は、シャフト2をサンバイザ本体1内部に収納する方向にスライドした際に、スライドサポート4が、内壁12a、12bに当接する状態を示す模式図である。スライドサポート4の側面に設けられた2つの突起部13a、14aが、内壁12aに設けられた係合孔13bおよび内壁12bに設けられた係合孔14bと係合し、サンバイザ本体1がスライドサポート4に保持される。この場合においても、前述したように、係合孔13bおよび14bは、同一の樹脂芯材側に設けられることが好ましい。
【0025】
上述したように、スライドサポートに設けられた突起部と、内壁に設けられた係合孔の組合せによってロック機構が構成されるが、設けられるロック機構の数は、上記の実施例に示す数に限定される訳ではなく、サンバイザ本体の形状等により適宜設定されることは言うまでもない。
【0026】
図6は、スライドサポート本体11を模式的に示す斜視図である。スライドサポート本体11は、バネ部材10の装着部分を間に設けたU字形状をしている。また、シャフト2を挿入する開口2bが、側面を貫通して設けられている。さらに、両側の側面には、突起部13aおよび14a、16aが設けられている。各突起部の先端は、第1および第2のロック部に設けられた係合孔13bおよび14b、16bとの係合が容易となるように、テーパー状の形状Tに加工されている。
【0027】
図中の突起部の形状は方形であるが、これに限定される訳ではなく、円形または多角形等の任意の形状とすることができる。また、突起部と係合孔は、抜き差しが自在の係合であっても良いが、着脱可能な嵌合とすることもできる。すなわち、突起部および係合孔のサイズを、好適な挿入抵抗を有する範囲に設計することにより、サンバイザ本体をスライドサポート4にロックできる構成とすることができる。これにより、スライド可能な範囲の両端、すなわち、拡張方向に最大限のスライドをした位置、および、シャフト2を本体内部に完全に収納した位置においてサンバイザ本体を固定できるので、利便性を向上することができる。
【0028】
さらに、サンバイザ本体1がシャフト2に沿って滑らかにスライドするためには、スライドサポート4が、樹脂芯材6および7、さらにスライドガイドであるリブ9に囲まれた中空部内に、スライド自在の状態で、且つ、スライド方向に対して垂直な方向に動かない程度の隙間を持って保持されることが好ましい(図2参照)。さらに、サンバイザ本体1をシャフト2に沿った好みの位置に設定して使用するケースを想定すると、スライドサポート4は、車両の振動により位置ずれを起こさない程度の摺動抵抗を持つように装着される。
【0029】
しかし、スライドサポート4が、樹脂芯材6および7、リブ9に囲まれた中空部内に、上記の特性を有するように調整されて配置されたサンバイザであっても、乗員室が高温となってサンバイザ本体の温度が上昇し、樹脂芯材6、7が膨張するような場合には、スライドサポート4の摺動抵抗が小さくなり、少しの振動によりサンバイザ本体1がスライドするようになる。
【0030】
本発明に係るスライド式サンバイザにおいては、前述したように、少なくとも、拡張方向に最も長くスライドした位置、または、最も短く収納された位置において、スライドサポート4に設けられた突起部16aまたは突起部13a、14aが、係合孔16b、または係合孔13b、14bと係合し、サンバイザ本体を安定に保持するので、高温の環境下においても、スライド式サンバイザが、その機能を失うことがない。
【0031】
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明に係るスライド式サンバイザは上述した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 サンバイザ本体
2 シャフト
4 スライドサポート
6、7 樹脂芯材
9 リブ(スライドガイド)
11 スライドサポート本体
12a 内壁(第1ロック部)
12b 内壁(第1ロック部)
13a、14a、16a 突起部
13b、14b、16b 係合孔
15 内壁(第2ロック部)
T 突起部先端
図1
図2
図3
図4
図5
図6