特許第5698899号(P5698899)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5698899二重金属シアン化物(DMC)触媒を用いたエポキシ官能性アルコキシシランのアルコキシル化による、アルコキシシリル基を有する新規なポリエーテルアルコールおよびその調製方法
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  • 特許5698899-二重金属シアン化物(DMC)触媒を用いたエポキシ官能性アルコキシシランのアルコキシル化による、アルコキシシリル基を有する新規なポリエーテルアルコールおよびその調製方法 図000018
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698899
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】二重金属シアン化物(DMC)触媒を用いたエポキシ官能性アルコキシシランのアルコキシル化による、アルコキシシリル基を有する新規なポリエーテルアルコールおよびその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/28 20060101AFI20150319BHJP
   C08G 65/22 20060101ALI20150319BHJP
   C09J 171/00 20060101ALI20150319BHJP
   C09D 171/00 20060101ALI20150319BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20150319BHJP
   C09C 1/00 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   C08G65/28
   C08G65/22
   C09J171/00
   C09D171/00
   C09D5/00 D
   C09C1/00
【請求項の数】27
【外国語出願】
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2009-36623(P2009-36623)
(22)【出願日】2009年2月19日
(65)【公開番号】特開2009-197232(P2009-197232A)
(43)【公開日】2009年9月3日
【審査請求日】2011年12月15日
(31)【優先権主張番号】102008000360.3
(32)【優先日】2008年2月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501073862
【氏名又は名称】エボニック デグサ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(72)【発明者】
【氏名】フランク,シューベルト
(72)【発明者】
【氏名】ウィルフリート ノット
【審査官】 大木 みのり
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−204172(JP,A)
【文献】 特開2000−123632(JP,A)
【文献】 国際公開第98/058983(WO,A1)
【文献】 特開平06−211981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/00 − 67/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のエポキシ官能性アルコキシシランを、個別に、あるいはさらなるエポキシド化合物および任意選択のさらなるコモノマーとの混合物で、ブロックの形態であるいはランダムな分布で、少なくとも1つの反応性ヒドロキシル基を有する式(VII)の連鎖開始剤
−H
(VII)
(式中、Rは、アルコール、ポリエーテロールおよびフェノールからなる群から選択されるアルコールまたはフェノール系化合物のOH基に属するHを除いて得られる基である
に加えることを特徴とする、DMC触媒反応によるアルコキシシリル基を有するポリエーテルアルコールの調製方法。
【請求項2】
使用するエポキシ官能性アルコキシシランが、式(I)の化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の方法
【化1】

(式中、
Rは、1〜20個の炭素原子を有する直鎖および分枝鎖のアルキル基に相当し、
aは、1〜3の整数であり、
bは、0〜2の整数であり、
a+bの合計は、3であり、
cは、0〜24の整数であり、
pは、4−a−bの差である整数である)。
【請求項3】
1つ以上の式(I)のエポキシ官能性アルコキシシラン
【化2】

を個別に、あるいは、式(II)
【化3】

および/また
リルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、シクロヘキシルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、C12/C14−脂肪族アルコールグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、o−クレシルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルネオデカノエート、1,2−エチルジグリシジルエーテル、1,4−ブチルジグリシジルエーテルおよび1,6−ヘキシルジグリシジルエーテルから選択されるさらなるエポキシド化合物、および/または任意選択のさらなるコモノマーとの混合物で、ブロックの形態であるいはランダムな分布で、少なくとも1個の反応性水素を有する式(VII)の連鎖開始剤
−H
(VII)
(式中、
Rは、1〜20個の炭素原子を有する直鎖および分枝鎖のアルキル基に相当し、
aは、1〜3の整数であり、
bは、0〜2の整数であり、
a+bの合計は、3であり
cは、0〜24の整数であり、
pは、4−a−bの差である整数であり、
は、アルコール、ポリエーテロールおよびフェノールからなる群から選択されるアルコールまたはフェノール系化合物のOH基に属するHを除いて得られる基であり
またはRは、同一であるか、あるいはそれぞれ独立して、Hであるか、あるいはさらなる置換基も有する飽和またはモノ不飽和またはポリ不飽和の、任意選択で一価もしくは多価の炭化水素基であり、ここで、RおよびR基は断片Yを介して脂環的に架橋されていてよく、
Yは、存在しないか、あるいは1もしくは2個のメチレン単位を有するメチレン架橋であってよく、但し、Yが存在しない場合、RもしくはR基は、それぞれ独立して、1〜20個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖基であり、
またはRは、同一であるか、あるいはそれぞれ独立して、Hであるか、あるいはさらなる置換基も有する飽和もしくはモノ不飽和もしくはポリ不飽和の、一価の炭化水素基である)
に加えることを特徴とする、既知の二重金属シアン化物触媒によってアルコキシシリル基を有する架橋性ポリエーテルアルコールを調製する方法。
【請求項4】
さらなるコモノマーが、ラクトン(IV)
【化4】

および/または環状無水物(V)、(VI)
【化5】

(式中、
nは、2〜8の整数であり、
およびRは、それぞれ独立して、水素またはアルキル、アルコキシ、アリールもしくはアラルキル基であり、
およびR12は、それぞれ独立して、水素またはアルキル、アルケニル、アルコキシ、アリールもしくはアラルキル基であり、
10およびR11は、それぞれ独立して、水素またはアルキル、アルケニル、アルコキシ、アリールもしくはアラルキル基であり、ここで、該アルキル基またはアルケニル基は、Z断片を介して脂環的もしくは芳香族的に架橋されていてよく、Zは、二価のアルキレン基またはアルケニレン基であってもよい)
および/または二酸化炭素および/またはオキセタンである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
方法が、溶媒または懸濁媒体および/またはその混合物中で行われることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
方法が、1つ以上の不活性溶媒中で行われることを特徴とする、請求項3または4に記載の方法。
【請求項7】
方法が、適切な場合にはさらなる不活性溶媒または懸濁媒体の存在下、溶媒または懸濁媒体として1つ以上の式(VII)の連鎖開始剤を用いて行われることを特徴とする、請求項3または4に記載の方法。
【請求項8】
式(I)の化合物と、存在する場合には、式(II)〜(VI)のそれぞれの化合物が、単独で、あるいは互いの混合物で、任意の順序かつ可変量で、逐次的に、互いに平行して同時に、あるいはそれぞれ順次交互に計り込まれることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
エポキシ官能性アルコキシシラン(I)のアルコキシル化が、任意選択で式(II)または(III)のさらなるエポキシド化合物および/または式(IV)、(V)および/または(VI)のコモノマーの存在下で、二酸化炭素の存在下で行われることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
二酸化炭素を前記ポリエーテルアルコールのポリマー鎖中に挿入することによって、カーボネート基改変ポリエーテルまたはポリエーテルエステルが調製されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
使用する式R−H(VII)の前記連鎖開始剤が、18〜10000g/モルのモル質量を有し、分子中に1〜8個のヒドロキシル基を有する化合物、および/または1〜8個のヒドロキシル基および50〜2000g/モルのモル質量を有する低分子量ポリエーテロールであることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
使用する式R−H(VII)の連鎖開始剤が、アリルアルコール、ブタノール、オクタノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジ−、トリ−およびポリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジ−および/またはプロピレングリコール、ポリ−THF、OH官能性ポリオレフィン、OH官能性ポリブタジエン、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブチンジオール、テトラメチルデシンジオール、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、セルロース糖、リグニンであり、および/または天然物質をベースとしかつヒドロキシル基を有する他の化合物、および/またはフェノール、アルキル−およびアリールフェノール、ビスフェノールAならびにノボラックであることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
用いる出発化合物のエポキシドの合計と、用いる出発化合物のOH基とのモル比が、1〜10:1であることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
方法が、連続式、半連続式または回分式で行われることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項4に記載の調製方法によって調製される化合物であって、
使用する前記式(I)の化合物が、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリプロポキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルエチルジエトキシシランおよび/または3−グリシジルオキシプロピルトリイソプロポキシシランであり、式(II)の化合物、および/または式(III)の化合物、および/または式(IV)の化合物、および/または式(V)または(VI)の化合物と一緒に、単独で、あるいは互いの混合物で使用される化合物。
【請求項16】
式(II)の化合物が、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−もしくは2,3−ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1,2−ドデセンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシドまたは2,3−エポキシ−1−プロパノールであり、
式(III)の化合物が、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、C12/C14−脂肪族アルコールグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、o−クレシルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートまたはグリシジルネオデカノエートであり、
式(IV)の化合物が、ε−カプロラクトンまたはδ−バレロラクトンであり、
式(V)または(VI)の化合物が、無水コハク酸、オクチル(オクテニル)−、デシル(デセニル)−およびドデシル(ドデセニル)無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ−、テトラヒドロ−、ジヒドロ−、メチルヘキサヒドロ−またはメチルテトラヒドロ無水フタル酸であることを特徴とする、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
式(VIII)のアルコキシシランポリエーテル
【化6】

(式中、
aは、1〜3の整数であり、
bは、0〜2の整数であり、
a+bの合計は、3であり、
dは、1〜1000の整数であり、
eは、0〜10000の整数であり、
fは、0〜1000の整数であり、
gは、0〜1000の整数であり、
h、iおよびjは、0〜500の整数であり、
但し、指数d〜jを有する断片は、互いに自由に順序を変えられ、
Rは、1〜20個の炭素原子を有する直鎖および分枝鎖のアルキル基から選択される1つ以上の同じまたは異なる基に相当し、
cは、0〜18の整数であり、
は、アルコール、ポリエーテロールおよびフェノールからなる群から選択されるアルコールまたはフェノール系化合物のOH基に属するHを除いて得られる基であり
またはRは、同一であるか、またはそれぞれ独立して、Hならびに/あるいはさらなる置換基も有する飽和および/またはモノ不飽和および/またはポリ不飽和の、任意選択で一価もしくは多価の炭化水素基であり、ここで、RおよびR基は断片Yを介して脂環的に架橋されていてよく、Yは存在しないか、あるいは1もしくは2個のメチレン単位を有するメチレン架橋であってよく、
Yが存在しない場合、RもしくはRの炭化水素基は、それぞれ独立して、1〜20個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖基であり、
またはRは、同一であるか、またはそれぞれ独立して、Hならびに/あるいはさらなる置換基も有する飽和および/またはモノ不飽和および/またはポリ不飽和の、一価の炭化水素基であり、
2’およびRは、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、シクロヘキシルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、C12/C14−脂肪族アルコールグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、o−クレシルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルネオデカノエート、1,2−エチルジグリシジルエーテル、1,4−ブチルジグリシジルエーテルおよび1,6−ヘキシルジグリシジルエーテルから選択される化合物を下記式(III)
【化7】

で表わした場合のR2’およびRに対応し、
nは、2〜8の整数であり、RおよびRは、それぞれ独立して、水素またはアルキル、アルコキシ、アリールもしくはアラルキル基であり、
およびR12は、それぞれ独立して、水素またはアルキル、アルケニル、アルコキシ、アリールもしくはアラルキル基であり、
10およびR11は、それぞれ独立して、水素またはアルキル、アルケニル、アルコキシ、アリールもしくはアラルキル基であり、ここで、該アルキル基またはアルケニル基はZ断片を介して脂環的もしくは芳香族的に架橋されていてよく、Zは二価のアルキレン基であってもアルケニレン基であってもよく、
但し、次式の化合物
【化8】

は含まない)。
【請求項18】
指数dが、4より大きいことを特徴とする、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
式(VIII)の指数e〜jの少なくとも1つが、0より大きいことを特徴とする、請求項17に記載の化合物。
【請求項20】
式(VIII)中の指数(a)と(b)との統計的な平均の合計が、3より小さいことを特徴とする、請求項17から19のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項21】
請求項4に記載の方法によって調製される化合物であって、Rがポリエーテル断片であり、そのうちの少なくとも1つの断片が式(I)または存在する式(II)〜(VI)の反応成分のいずれかの開環による反応の結果として形成するポリマー鎖中に挿入されており、但し、式(I)の化合物の開環で形成される断片は末端ではないことを特徴とする、化合物。
【請求項22】
モノアルコキシシリル末端種が存在しないことを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法によって調製される化合物。
【請求項23】
請求項3に記載の方法によって調製される化合物であって、式(I)のエポキシ官能性アルコキシシランとともに、同時に、R、R、R、R基がすべて水素であるか、あるいはR、R、Rがそれぞれ水素であり、Rがメチルであるか、またはR、R、Rがそれぞれ水素であり、Rがメチルである式(II)のアルキレンオキシドモノマーを排他的に用いて形成するモノアルコキシシリル末端種を含まないことを特徴とする、化合物。
【請求項24】
式(III)〜(VI)の化合物のいずれか一以上を用いる、請求項4に記載の方法によって調製される化合物であって、存在する式(III)〜(VI)のいずれかの反応成分の開環を用いた反応によって形成される少なくとも1つの断片が、形成されたポリエーテルアルコールのポリマー鎖中に挿入されていることを特徴とする、化合物。
【請求項25】
がポリエーテル断片ではないことを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法によって調製される化合物。
【請求項26】
表面コーティング用の接着剤および封止剤を製造するための、反応性架橋剤としての、接着促進剤および下塗剤としての、あるいはコーティングもしくはプラスチックでの顔料および充填剤の表面処理のための、請求項15から25のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項27】
表面コーティング用の接着剤および封止剤を製造するための、反応性架橋剤としての、接着促進剤および下塗剤としての、あるいはコーティングもしくはプラスチックでの顔料および充填剤の表面処理のための、請求項1から14に記載の方法のいずれか1つによって調製される化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DMC触媒を用いたエポキシ官能性アルコキシシランのアルコキシル化(alkoxylation)による、アルコキシシリル基を有する新規なポリエーテルアルコールおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
しばしば略してポリエーテルとも称される通常のポリエーテルアルコールは、主にプロピレンオキシドおよびエチレンオキシドで形成され、これは、かなり前から知られており、工業的に大量に生産されている。ポリエーテルアルコールは、とりわけ、ポリウレタンまたは界面活性剤を製造するための出発化合物として、ポリイソシアネートの反応に用いられる。
【0003】
アルコキシル化生成物(ポリエーテル)を製造するほとんどの方法は、塩基性触媒、例えばアルカリ金属水酸化物やアルカリ金属メトキシドを使用する。
【0004】
従来から、特に広く知られているのは、KOHを使用することである。典型的には一般に、ブタノール、アリルアルコール、プロピレングリコールまたはグリセロールなどの低分子量ヒドロキシ官能性出発物質を、アルカリ性の触媒の存在下で、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドまたは異なるアルキレンオキシドの混合物などのアルキレンオキシドと反応させてポリオキシアルキレンポリエーテルを生成させる。このいわゆるリビング重合における強アルカリ性の反応条件によって様々な副反応が促進される。
【0005】
それ自体連鎖開始剤として作用するアリルアルコールへのプロピレンオキシドの転換、および連鎖停止反応によって、比較的広いモル質量分布を有するポリエーテルと不飽和の副生物が生成する。特に、出発アルコールとしてアリルアルコールを用いて、アルカリ性の触媒反応下で行うアルコキシル化反応もプロペニルポリエーテルを生成する。これらのプロペニルポリエーテルは、SiC支持シリコーンポリエーテルコポリマーを得るためのヒドロシリル化、さらなるプロセスにおいて反応性のない副生物であることが見出されており、さらに、(存在するビニルエーテル結合の加水分解不安定性とプロピオンアルデヒドの放出の結果として)生成物による嗅覚上の不快の望ましくない供給源となる。これは、例えば欧州特許第1431331号に記載されている。
【0006】
塩基触媒によるアルコキシル化の欠点の1つは、疑いもなく、活性塩基からもたらされる反応生成物を、中和工程を用いて除く必要があるということである。したがって、中和により生成する水を蒸留で除去し、ろ過により生成した塩を除去することが必須である。
【0007】
塩基触媒による反応のほかに、アルコキシル化のための酸触媒も知られている。例えば、ドイツ特許第10 2004 007561号は、アルコキシル化技術におけるHBFならびにルイス酸、例えばBF、AlClおよびSnClの使用を記載している。
【0008】
酸触媒によるポリエーテル合成法の欠点は、いくつかの第二級OH末端およびいくつかの第一級OH末端を有するポリオキシアルキレン鎖を明確な方法で制御することはできない形式でもたらす、非対称オキシラン、例えばプロピレンオキシドの開環における位置選択性が不十分なことであることが見出されている。塩基触媒によるアルコキシル化反応の場合、中和、蒸留およびろ過などの一連の処理工程がここでも不可欠である。酸触媒によるポリエーテル合成にモノマーとしてエチレンオキシドを用いる場合、望ましくない副生物としてのジオキサンの生成が予測される。
【0009】
しかし、酸および/または塩基に対して不安定な系は、詳述されている条件下では首尾よくアルコキシル化することはできない。これは、酸または塩基によって誘導される縮合および架橋反応を非常に起し易いアルコキシシラン誘導体などの有機シリカ誘導体の場合に特にあてはまる。これは、酸および塩基によって誘導されるアルコキシル化反応がどちらも通常、水媒体におけるダウンストリーム処理(中和、塩除去、水を除去するための蒸留)を必要とするという点でより重要である。
【0010】
例えばそれぞれDYNASYLAN(登録商標)GLYMOおよびDYNASYLAN(登録商標)GLYEO(Evonik Degussa GmbHの登録商標)の商品名で入手することができる、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランまたは3−グリクジルオキシプロピルトリエトキシシランなどの有機アルコキシシラン化合物は、硬さ、引っかき抵抗性および耐摩耗性、耐熱性、ならびに溶媒および酸安定性について改善された特性を有するコーティング系を提供するナノコンポジットの製造のための重要なプロセスとして働くゾル−ゲルプロセスでの有機的に改変された(organically modified)ネットワークの作製に用いられる。
【0011】
アルコキシシラン化合物はさらに、封止剤および接着剤において、また一般に、繊維強化複合材料用の金属、ガラスおよびガラス繊維/ガラス織物などの様々な基材のための反応性接着促進剤および下塗剤として、また、例えば顔料およびコーティング中の充填剤の表面処理のためなどの様々な用途が見出されている。
【0012】
この重要な製品類のさらなる使用分野を広げるために、化学的改変によってアルコキシシラン化合物の特性プロファイルを向上させる努力がなされてきている。例えば、アルコキシル化生成物(ポリエーテル)の特性プロファイルと特にアルコキシシリル基を有する架橋性(crosslinkable)化合物の特性とを組み合わせることが文献に開示されている。例えば、ドイツ特許第69831518T2号は、とりわけ、例えばウレタン結合を有するイソシアネート基を有するアルコキシシランによるポリエーテルアルコールの改変に対して出願している。さらに、アルコキシシリルの改変のために、オレフィン不飽和末端基で予め改変されたポリエーテロールへのアルコキシモノヒドリドシランのヒドロシリル化結合も選択されている。
【0013】
日本国特許第11021463号は、特定のグリセロールポリエーテルトリオールをウレタン結合を有するイソシアネート基を含むトリアルコキシシランで改変することによって、三官能性アルコールとしてのグリセロールから誘導されるトリアルコキシシリル末端ポリオキシアルキレンエーテルを調製する方法に関している。
【0014】
日本国特許第08295805号は、イソシアネート基を含むトリアルコキシシランを用いたDMC触媒反応によって調製されるジプロピレングリコールポリエーテルジオールのトリアルコキシシリル改変を含む基本的に類似した方法を特許請求している。
【0015】
日本国特許第09012863号、同第09012861号および同第07062222号は、加水分解性チアルコキシシリル官能基、例えば、グリセロールポリエーテロールにより排他的に末端で改変されたポリエーテロールを調製する方法を特許請求しており、まずDMC触媒反応によって調製し、次いで、アルカリ金属アルコキシドおよび塩化アリルを加えて対応するアリルエーテルに転換させ、次いで、白金触媒によるヒドロシリル化により転換させてアルコキシシリル末端化された目的生成物にする。
【0016】
すなわち、従来技術で記載されているすべての方法は、トリアルコキシシリル基で排他的に末端で改変されたポリオキシアルキレン化合物を調製するのにだけ適したものであり、オキシアルキレン単位の配列内であっても、トリアルコキシ官能基によるポリエーテル鎖の単一および/または複数の改変に適したものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明の目的は、概要の従来技術の欠点を克服するものであり、ポリエーテル鎖のオキシアルキレン単位の配列内にアルコキシシラン官能基を有する新規なポリエーテル構造および新規な複数アルコキシシリル末端ポリエーテル構造の両方を提供し、かつ、これらのポリエーテルの調製のための新規なアルコキシル化反応も提供するものである。
【0018】
本出願の関連では、可能となる反応物の結果として様々な官能基を有する物質が当該方法により生じる場合でも、本発明の生成物をポリエーテルまたはポリエーテロールおよび/またはその誘導体と称する。しかし、すべての生成物に共通するのは、1つの末端OH基が形成されることである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
驚くべきことに、エポキシ官能基を有するアルコキシシランを、DMC触媒としても知られている既知の二重金属シアン化物触媒(double metal cyanide catalysts)の存在下で、この反応条件下で見られるこの物質群の特徴である望ましくない副反応(縮合および架橋反応)の傾向を伴うことなく、有利かつ簡単に、選択的にアルコキシル化することができることを見出した。
【0020】
本発明により特許請求される方法は、非常に簡単でかつ再現性のある形式で、末端だけでなくオキシアルキレン単位の配列内においても、ポリオキシアルキレン化合物の単一および/または複数のアルコキシシリル基の改変を行えることができることを初めて開発したものである。反応性水素を有する出発物質から始めて、エポキシ基を有するアルコキシシランのアルコキシル化ホモ重合も可能である。
【0021】
本発明により特許請求される方法は、末端の形態で、または孤立した形態で、または累積したブロック(cumulative blocks)で、あるいはポリオキシアルキレン鎖中にランダムに散らばった形で架橋を加水分解させるアルコキシシリル官能基を含むアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン基間での選択の合成的な自由度を保証するものである。
【0022】
従来による方法を用いることによっては、シリル基末端プレポリマーのみがアクセス可能である。
【0023】
本発明による化合物は、伝統的なプロセスによって調製されたオリゴマーまたはポリマーに対して顕著な相違を示す。ブロックまたは統計的な分布を有し得る官能基の挿入によるポリマー鎖の体系的かつ可変的な構築によって、シリル官能基も、ランダムにまたはブロックの形態で鎖に分散している。さらに、シリル官能基は、鎖末端に位置していてもよしいし、位置していなくともよい。
【0024】
エポキシ官能性アルコキシシランのアルコキシル化のための本発明方法の密接不可部分は、改変された鎖末端が(第2級)OH官能性も示すという特定の特徴であり、これは成長鎖のOH官能性末端に付加されているそれぞれの最後のエポキシモノマーのエポキシド開環から生じる。この末端OH基の末端キャップは、シリル末端プレポリマーの生成を教示するその他の従来方法既知水準とは異なり、起こらないであろう。
【0025】
したがって、直接アルコキシル化により調製される生成物では、すべての−O−(CH−Si(R)(OR)−基は、アルファ間隔(alpha spacing)オキシプロピレン官能基によりプレポリマー鎖に導入される。
【0026】
オキシプロピレン官能基は、DMC反応によって添加された、開環したエポキシ官能性アルコキシシランの一部である。
【0027】
原則に基づき、本発明の方法による生成物は、任意のスペーサー基なしにポリマー基(plolymer radical)と直接結合している−O−(CH−Si(R)(OR)−基を有する従来方法の技術水準からアクセス可能なそれらのプレポリマーとは異なる。
【0028】
本発明の方法により、非伝統的な、従来の技術水準には包含されないプレポリマーを生成することができる。したがって、それらのプレポリマーから誘導された架橋されかつ重合されたポリマーは、その構造において非伝統的でもある。
【0029】
標準の、したがって従来のポリマー基において知られている、鎖内および/または末端官能基内にアルコキシシリル基が存在しないポリマー断片の単純な挿入は、本発明によるプレポリマー構造では決して生じないであろう。
【0030】
本発明の化合物/プレポリマーの構造的な違いを考慮して、本出願中において「改変された(modified)ポリマー」または「改変されたポリマー鎖」との用語は、「ポリマー」との用語を単に用いる、ブロックまたはランダムな分布のモノマー単位を示す、伝統的ポリマーに反して用いられる。
【0031】
本発明による方法で用いるエポキシ基を含むアルコキシシリル化合物(I)は、次の一般式の化合物である。
【0032】
【化1】

(式中、
Rは、1〜20個、特に1〜6個の炭素原子を有する直鎖および分枝鎖の飽和、モノ不飽和もしくはポリ不飽和のアルキル基、または1〜20個の炭素原子を有するハロアルキル基から選択される同一であるか異なる1つ以上の基を表す。Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチルおよびsec−ブチル基、特にエチルまたはメチル基に相当することが好ましい。
aは、1〜3の整数であり、
bは、であり、好ましくは0〜1、最も好ましくは0の整数であり、
a+bの合計は、3であり、
cは、0〜24、好ましくは0〜12、より好ましくは0〜8、さらに最も好ましくは0〜4の整数であり、
pは、4−a−bの差である整数である)。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】式(III)の化合物を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明により特許請求される方法に用いる二重金属シアン化物触媒(DMC触媒)は1960年代以来、アルコキシル化触媒としてその調製および使用に関して知られており、例えば、米国特許第3,427,256号、同第3,427,334号、同第3,427,335号、同第3,278,457号、同第3,278,458号または同第3,278,459号に記載されている。その後さらに開発されたより効果的なタイプのDMC触媒の中には、例えば米国特許第5,470,813号、同第5,482,908号に記載されているものがあり、特に亜鉛ヘキサシアノコバルト錯体がある。その非常に高い活性のため、ポリエーテロールを調製するのに触媒濃度を少ししか必要とせず、そのため、従来のアルカリ性の触媒に必要な、アルコキシル化プロセスの最後での処理段階(中和、沈澱およびろ過による触媒の除去からなる)を省くことができる。DMC触媒によるアルコキシル化の選択性が高いのは、例えば、プロピレンオキシドをベースとしたポリエーテルが、不飽和副生物を非常にわずかしか含有しないという事実によるものである。
【0035】
従来技術は、二重金属シアン化物触媒を用いた触媒反応による様々なアルコキシル化プロセスに言及している。参考として、例えば、ここでは、欧州特許第1017738号、米国特許第5,777,177号、欧州特許第0981407号、WO2006/002807および欧州特許第1474464号を参照されたい。
【0036】
驚くべきことに、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよび1,2−ブチレンオキシドなどの通常のアルキレンオキシドだけでなく、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランまたは3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランなどの加水分解感受性で知られているエポキシ官能性アルコキシシランも、DMC触媒の存在下、簡単な様式でアルコキシル化することができることが分かった。そのような置換シラン化合物は、DMC触媒反応の条件下で定量的、選択的かつ十分に穏やかに重合される。この本発明による方法は、新規な本発明の生成物の部類のモノ−およびポリ−アルコキシシリル改変ポリオキシアルキレン化合物を調製して、加水分解感受性および架橋性のアルコキシシリル基を得る可能性への道を開くものである。
【0037】
したがって、1つ以上の式(I)のエポキシ官能性アルコキシシランを、個別に、あるいは、式(II)もしくは(III)の他のエポキシド化合物ならびにラクトン(IV)、環状無水物(V)、(VI)、二酸化炭素もしくはオキセタンなどの任意選択の他のコモノマーとの混合物で、ブロックの形態でまたはランダムな形で、少なくとも1個の反応性水素を有する式(VII)の連鎖開始剤
−H
(VII)
(式中、Rは、飽和もしくは不飽和の任意選択で分枝鎖の基であるか、炭素鎖が酸素原子によって介在されていてよいアルコキシ、アリールアルコキシまたはアルキルアリールアルコキシ基型のポリエーテル基であるか、あるいは、ポリエーテルアルコキシ基または単一もしくは複数縮合フェノール基に相当する)
に加える、DMC触媒反応による架橋性アルコキシシリル基を有するポリエーテルアルコールを調製する方法を提供する。少なくとも1つのエポキシ基を有するアルコキシシランモノマーを、改変ポリマー鎖中に所望のように分散させることができ、あるいは改変ポリマー構造中の鎖の末端位置に配置することができる。
【0038】
速い反応速度と触媒不活性化および除去の省略という二重金属シアン化物系に知られた利点を得ることが本発明による方法のさらなる目的である。
【0039】
選択性DMC触媒によるアルコキシル化の反応条件下で加水分解感受性アルコキシシリル基を保護し、それによって、同じく本発明の部類の新規な架橋性ポリエーテルまたは有機的に改変されたアルコキシシラン化合物へのアクセスを提供することが本発明による方法のさらなる目的である。
【0040】
エポキシ官能性アルコキシシランとして本発明で用いるケイ素化合物は、一般式(I)の化合物である。
【0041】
【化2】

(式中、
Rは、1〜20個、特に1〜6個の炭素原子を有する直鎖および分枝鎖の飽和、モノ不飽和もしくはポリ不飽和のアルキル基、または1〜20個の炭素原子を有するハロアルキル基から選択される同一であるか異なる1つ以上の基を表す。Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチルおよびsec−ブチル基に相当することが好ましく、
aは、1〜3の整数であり、好ましくは3であり、
bは、の整数であり、好ましくは0〜1、最も好ましくは0であり、
a+bの合計は、3であり、
cは、0〜24の整数、好ましくは0〜12、より好ましくは0〜8、さらに最も好ましくは0〜4であり、特に、1または3に等しく、
pは、4−a−bの差である整数である)。
【0042】
単独で、互いの混合物で、あるいは式(II)および(III)のエポキシド化合物との組合せで用いることができるそのような式(I)のエポキシ基置換アルコキシシランの非排他的リストには、例えば;3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリプロポキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、ビス(3−グリシジルオキシプロピル)ジメトキシシラン、ビス(3−グリシジルオキシプロピル)ジエトキシシラン、3−グリシジルオキシヘキシルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシヘキシル−トリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルエチルジエトキシシランが含まれる。
【0043】
式(I)のエポキシ官能性アルコキシシランを、必要に応じて任意の添加順序で逐次的にあるいは一般式(II)のアルキレンオキシドとの混合物で、DMC触媒によるアルコキシル化において用いて本発明の方法による架橋性ポリエーテルを調製することができる。
【0044】
【化3】
(式中、
およびR、ならびにRおよびRは、同一であるか、あるいはそれぞれ独立して、Hであるか、あるいは他の置換基も有する飽和または任意選択でモノ不飽和もしくはポリ不飽和の任意選択で一価もしくは多価の炭化水素基であり、ここで、RまたはR基は一価炭化水素基である。炭化水素基は断片Yを介して脂環的に架橋されていてよく、Yは存在しないか、あるいは1もしくは2個のメチレン単位を有するメチレン架橋であってよく、Yが0である場合、RまたはRはそれぞれ独立して、1〜20個、好ましくは1〜10個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖基、より好ましくはメチル、エチル、プロピルもしくはブチル基、ビニル、アリルもしくはフェニル基である。式(II)の2つのRおよびR基のうちの少なくとも1つは、水素であることが好ましい。アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−もしくは2,3−ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1,2−ドデセンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド(ここで、R−Rは−CHCHCHCH−基であり、したがってYは−CHCH−である)またはビニルシクロヘキセンオキシドあるいはその混合物を用いることが好ましい。式(II)の炭化水素基RおよびRは他の置換基を有することができ、ハロゲン、ヒドロキシル基またはグリシジル−オキシプロピル基などの官能基を有することができる。そのようなアルキレンオキシドには、エピクロルヒドリンおよび2,3−エポキシ−1−プロパノールが含まれる。)
【0045】
一般式(III)のグリシジルエーテルおよび/またはグリシジルエステルなどのグリシジル化合物を用いることも同様に可能である。
【0046】
【化4】

(式中、
は、エーテルもしくはエステル官能基を介するか、または芳香族もしくは脂環式基を介して、1〜24個の炭素原子の直鎖もしくは分枝鎖アルキル基と結合しているグリシジルオキシプロピル基であり、
少なくとも1つのグリシジルオキシプロピル基は、任意選択で式(II)のアルキレンオキシドに加えて、式(I)に記載のエポキシ官能性アルコキシシランと組み合わせて、エーテルまたはエステル官能基Rを介して1〜24個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、芳香族または脂環式基と結合され、Rは、式(II)で与えられるものと同じ定義を有する。この部類の化合物には、例えば、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、シクロヘキシルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、C12/C14−脂肪族アルコールグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテルまたはo−クレシルグリシジルエーテルが含まれる。使用するのに好ましいグリシジルエステルは、例えばグリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートまたはグリシジルネオデカノエートである。同様に、多官能性エポキシド化合物、例えば1,2−エチルジグリシジルエーテル、1,4−ブチルジグリシジルエーテルまたは1,6−ヘキシルジグリシジルエーテルも用いることができる。
【0047】
本発明で用いることができる式(I)のエポキシ基保有アルコキシシランは(任意選択で式(II)および(III)のさらなるエポキシドと組み合わせて)、同様に式(IV)のラクトン
【0048】
【化5】

(式中、
nは2〜8の整数であり、RおよびRは、それぞれ独立して、水素またはアルキル、アルコキシ、アリールもしくはアラルキル基であり、これらは開環重合して架橋性アルコキシシラン基含有ポリエーテルエステルをもたらす)との混合物で、DMC触媒によるアルコキシル化の条件下で共重合させることができる。この関連で用いられる適切なラクトンは、例えばε−カプロラクトン、δ−バレロラクトンおよびγ−ブチロラクトン、ならびに異なるラクトンの混合物であってよい。コモノマーとしてε−カプロラクトンを用いることが好ましい。アルコキシル化プロセスの際、式(I)〜(IV)の特定のエポキシおよびラクトンモノマーは、単独で、あるいは互いの混合物で、任意の順序かつ可変量で逐次的にまたは同時並行的に共重合して、ブロックの配列またはランダムに分布した配列の個々のモノマー単位を有するポリエーテルエステルを得ることができる。
【0049】
ラクトンに代えてまたはそれに加えて、DMC触媒によるアルコキシル化の条件下で、本発明で使用できる式(I)のエポキシ基保有アルコキシシランならびに任意選択の式(II)および(III)のさらなるエポキシドに加えて、コモノマーとして、式(V)および(VI)の飽和、不飽和もしくは芳香族の環状ジカルボン酸無水物を用いることもできる。)
【0050】
【化6】

(式中、R、R10、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、またはアルキル、アルケニル、アルコキシ、アリールもしくはアラルキル基である。炭化水素基は、断片Z(Zは二価アルキレン基であってもアルケニル基であってもよい)を介して脂環的または芳香族的に架橋されていてよい。好ましく使用される環状無水物は、無水コハク酸、オクチル(オクテニル)−、デシル(デセニル)−およびドデシル(ドデセニル)無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ−、テトラヒドロ−、ジヒドロ−、メチルヘキサヒドロ−およびメチルテトラヒドロ無水フタル酸である。アルコキシル化プロセスの際、式(V)および(VI)の特定の無水物モノマーは、単独で、あるいは互いの混合物で、任意の順序かつ可変量で逐次的にあるいはエポキシドの供給と同時並行的に、開環を伴って共重合してポリエーテルエステルを得ることができる。式(V)および(VI)の無水物の混合物を用いることもできる。)
【0051】
二酸化炭素の存在下で、エポキシ官能性アルコキシシランのアルコキシル化(任意選択で、(II)もしくは(III)型のさらなるエポキシド化合物、および/または(IV)、(V)および/または(VI)によるコモノマーの存在下で)を行う場合、ポリマー鎖の中に二酸化炭素を挿入することによって、カーボネート基改変ポリエーテルまたはポリエーテルエステルを調製することができる。そのような反応は、オートクレーブ反応器中、高圧下、二酸化炭素雰囲気下で行うことが好ましい。カーボネート含量は変えることができ、例えば、反応の際の温度と圧力条件を選択することによって制御することができる。
【0052】
アルコキシル化反応に用いる出発物質または出発化合物は、式(VII)のすべての化合物であってよい
−H
(VII)
(Hは、アルコールまたはフェノール系化合物のOH基に属するものである)。これらは単独でも、また少なくとも1つの反応性ヒドロキシル基を有する式(VII)による互いの混合物であってもよい。Rは、炭素鎖が酸素原子によって介在されていてよい飽和もしくは不飽和の任意選択で分枝鎖の基に相当するか、またはアルコキシ、アリールアルコキシもしくはアルキルアリールアルコキシ基型のポリエーテル基であるか、あるいはRはそれにフェノール系OH基が直接結合している単一もしくは複数縮合(singularly or multiply fused)芳香族基である。アルコキシ、アリールアルコキシまたはアルキルアリールアルコキシ基を有し、出発化合物として使用できるポリエーテル基の鎖長は、自由に調節することができる。ポリエーテル、アルコキシ、アリールアルコキシまたはアルキル
アリールアルコキシ基は、好ましくは1〜1500個の炭素原子、より好ましくは2〜3
00個の炭素原子、特に2〜100個の炭素原子を含む。
【0053】
本発明の関連では、出発化合物は、式(I)、(II)および(III)のエポキシ官能性モノマーならびに場合によって式(IV)、(V)および(VI)のさらなるコモノマーの本発明による添加によって得られる、調製されるポリエーテル分子の出発点をなす物質を意味するものと理解されたい。本発明による方法で用いる出発化合物は、好ましくは、アルコール、ポリエーテロールまたはフェノールからなる群から選択される。出発化合物としては、一価もしくは多価ポリエーテルアルコールまたはアルコールR−H(Hは、アルコールまたはフェノールのOH基に属するものである)を用いることが好ましい。
【0054】
使用するOH官能性出発化合物R−H(VII)は、18〜10000g/モル、特に50〜2000g/モルのモル質量を有し、1〜8個、好ましくは1〜4個のヒドロキシル基を有する化合物が好ましい。
【0055】
式(VII)の化合物の例には、アリルアルコール、ブタノール、オクタノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジ−、トリ−およびポリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジ−および/またはポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、セルロース糖、リグニンが含まれ、さらに天然物質をベースとしかつヒドロキシル基を有するさらなる化合物も含まれる。
【0056】
あるいは、1〜8個のヒドロキシル基および50〜2000g/モルのモル質量を有する、DMC触媒によるアルコキシル化によって予め調製された低分子量ポリエーテロールを出発化合物として用いることが有利である。
【0057】
脂肪族および脂環式OH基を有する化合物に加えて、1〜20個のフェノール系OH官能基を有する任意の化合物が適している。これらには、例えばフェノール、アルキルおよびアリールフェノール、ビスフェノールAおよびノボラックが含まれる。
【0058】
本発明による方法でのアルコキシル化反応を開始させるために、任意選択で懸濁媒体中に予めスラリー化された、1つ以上の式(VII)のOH官能性出発化合物と二重金属シアン化物触媒とからなる出発混合物を最初に反応器に充填する。使用する懸濁媒体はポリエーテルであっても不活性溶媒であってもよく、また有利には、式(VII)の1つ以上の出発化合物であっても、あるいは2つの成分の混合物であってもよい。式(I)、(II)の(III)のエポキシド化合物のうちの少なくとも1つは、最初に充填される出発混合物中に計り込まれる。アルコキシル化反応を開始し、二重金属シアン化物触媒を活性化させるために、通常最初に、計り込むエポキシドの全量のうちの少なくとも一部だけを加える。初期段階での出発混合物中のエポキシドと出発物質の反応基、特にOH基とのモル比は、好ましくは0.1〜10:1、好ましくは0.2〜5:1、特に0.4〜3:1である。エポキシドを添加する前に、例えば蒸留によって反応混合物から存在する任意の反応阻害物質を除去すると有利であり得る。
【0059】
発熱反応の開始は、例えば圧力および/または温度をモニタリングすることによって検出することができる。ガス状のアルキレンオキシドの場合、反応器中の圧力の急激な低下は、アルキレンオキシドが取り込まれており、したがって反応が開始され、初期段階が終了したことを示している。非ガス状のグリシジルエーテル/エステルまたはエポキシ官能性アルコキシシランの場合、反応の開始は発熱の開始によって示される。
【0060】
初期段階後、すなわち反応の開始後、所望のモル質量に応じて、さらなる出発化合物とさらなるエポキシドとを同時に、またはさらなるエポキシドだけを計り込む。あるいは、式(I)、(II)および(III)の異なるエポキシドの任意の混合物を加えることも可能である。本発明によって使用できる式(I)、(II)および(III)のエポキシドモノマーは、任意の順で逐次加えることもできる。例えば、反応混合物の粘度を低くするために、不活性溶媒中で反応を行うことができる。適切な不活性溶媒は、炭化水素、特にトルエン、キシレンまたはシクロヘキサンである。
【0061】
本発明の生成物では、用いる出発化合物に対する、より具体的には用いる出発化合物のOH基の数に対する、初期段階ですでに添加されたエポキシドを含む計り込まれるエポキシドの合計のモル比は、好ましくは1〜10:1、特に1〜10:1である。
【0062】
エポキシド化合物は、好ましくは60〜250℃の温度、より好ましくは90〜160℃の温度で加える。アルコキシル化を行う圧力は、好ましくは0.02バール〜100バール、より好ましくは0.05〜20バール、特に0.2〜2バール絶対圧である。減圧下でアルコキシル化を行うと、反応を非常に安全に遂行させることができる。任意選択により、アルコキシル化は、不活性ガス(例えば窒素)の存在下で、または(ポリエーテルカーボネートを製造するために)二酸化炭素の存在下で行うことができ、また、減圧下、次いで好ましくは1〜20バール絶対圧で行うこともできる。
【0063】
エステル改変ポリエーテルの調製に使用できるラクトン(IV)または環状無水物(V)および(VI)は、初期段階のできるだけ初期に、出発物質−触媒混合物に加えるか、または後でエポキシドの添加と平行して加えることができる。上記のコモノマーは、エポキシドと交互に連続して反応器中にそれぞれ計り込むこともできる。
【0064】
エポキシドモノマーと環状無水物とのモル比は変えることができる。一般に、無水物に対して少なくとも等モル量のエポキシドモノマーを使用する。無水物の完全な転換を確実にするために、エポキシドを過剰モルで使用することが好ましい。
【0065】
アルコキシル化の際、ラクトンは、エポキシドモノマーに対して化学量論量以下か、または過剰に加えることができる。
【0066】
カーボネート改変ポリエーテルの調製のためには、アルコキシル化を、ガス状の二酸化炭素か、またはドライアイスの形態で供給される固体二酸化炭素の存在下で行う。二酸化炭素ガスを用いることが好ましく、そのガスは、反応開始前、すなわち実際には初期段階の間に出発物質およびDMC触媒からなる系に供給するか、またはエポキシドモノマーと場合によってはさらなるコモノマーを供給する後続の段階の際に供給することができる。最終生成物中のカーボネート含量を増大させるためには、反応の過程においてオートクレーブ中での圧力低下によって確認できる二酸化炭素の燃焼に応じて、さらなる二酸化炭素を連続的にまたは分割して計り込むことが有利である。反応は、100バール未満、より好ましくは20バール未満の圧力で行うことが好ましい。
【0067】
モノマーを添加し、モノマーの転換を完結させるために任意の後反応を行った後、存在する任意の未反応モノマー残渣および任意のさらなる揮発性成分を、通常、真空蒸留、ガスストリッピングまたは他の脱臭方法を用いて除去する。揮発性二次成分は回分操作か、または連続操作により除去することができる。DMC触媒反応に基づく本発明による方法においては、通常、ろ過を行う。
【0068】
方法の工程は、同一温度か、または異なる温度で行うことができる。WO98/52689に教示の技術によれば、反応開始時点で反応器に最初に充填された出発物質、DMC触媒および任意選択の懸濁媒体の混合物を、モノマーを添加する前にストリッピングして前処理することができる。この場合、反応器供給によって不活性ガスを反応混合物中に混ぜ込み、反応器系に連結された真空系の支援を受けて減圧をかけることにより、反応混合物から揮発性成分を除去する。こうした簡単な方法で、反応混合物から、触媒を阻害する可能性のある物質、例えば低級アルコールまたは水を除去することができる。反応物の添加または副反応は、化合物が反応混合物中に入るのを阻止させることもできるので、不活性ガスの添加と揮発性成分の同時除去は、反応の始動において特に有利であり得る。
【0069】
使用するDMC触媒は、既知のすべてのDMC触媒であってよいが、好ましくは亜鉛およびコバルトを含有する触媒、有利には亜鉛ヘキサシアノコバルト酸塩(III)を含む触媒であってよい。米国特許第5,158,922号、米国特許第20030119663号、WO01/80994または上記に参照した文献に記載されているDMC触媒を用いることが好ましい。触媒は、無定形であっても結晶性であってもよい。反応混合物においては、触媒濃度は、好ましくは>0〜1000ppmw(ppm質量)、有利には>0〜500ppmw、より好ましくは0.1〜200ppmw、最も好ましくは1〜50ppmwである。この濃度は、形成されるポリエーテルポリオールの合計質量をベースとするものである。
【0070】
触媒は、反応器中に1度に計り込むことが好ましい。触媒の量は、プロセスに対して十分な触媒活性を付与できるように調節しなければならない。触媒は、固体として、または触媒懸濁液の形態で計り込むことができる。懸濁液を用いる場合、式(VII)の出発物質は、懸濁媒体として特に適している。しかし、懸濁液を用いて分注することが好ましい。
【0071】
本発明の方法によって、構造およびモル質量に関連して、制御された形式および再現性のある形で調製することができる点で注目されるポリエーテルが提供される。モノマー単位の配列は広い範囲で変えることができる。(I)、(II)および(III)型のエポキシドモノマーならびに式(IV)のラクトンは、任意のブロック型配列であってもよいし、または改変ポリマー鎖中にランダムに取り込まれた形であってよい。式(I)〜(VI)の反応成分の開環反応により形成する改変ポリマー鎖中に挿入される断片は、式(V)および(VI)の環状無水物ならびに二酸化炭素がポリエーテル構造中にランダムに挿入されている、すなわち相同なブロックではない形で存在するという制約のもとで、その配列内において自由に互いに順序を変えられる。
【0072】
式(I)のpが1より大きい場合、本発明による方法により、それぞれRによって始まり、その配列内において自由に互いに順序を変えられる断片を含み、かつ、式(I)〜(VI)の反応成分の開環反応により形成する改変ポリマー鎖中に挿入されたポリエーテル鎖が−CH−O−(CH2+c−Si−(CH2+c−O−CH−の架橋を介して互いに結合されている、高度に官能化されたネットワークが形成される。したがって、それらは、非常に複雑で、高度に官能化された構造を形成する。ここでも、制御された形式で、所望の使用分野に応じて、官能性を調節することができる。式(I)のモノ−、ジ−またはトリ−エポキシ官能性アルコキシシラン化合物の混合物のアルコキシル化は、平均して、pが1〜3の間の任意の値と見込むことができる。pの値が増大すると、得られる改変ポリマー構造の架橋度とその複雑さが増大する。指数pにより決定される1から2の間のp平均エポキシ官能度が好ましい。pが1である3−グリシジルオキシアルキルトリアルコキシシランが特に好ましい。
【0073】
式(I)〜(VI)の反応成分の開環反応によって、上記定義の関連で、ブロックの形態またはランダム分布で生成する改変ポリマー鎖中に挿入された断片は、ポリエーテル構造単位の鎖の中だけではなく、また、形成された多くのポリエーテル構造単位にわたってランダムに分布して存在することができ、−CH−O−(CH2+c−Si−(CH2+c−O−CH−架橋を介して互いに結合している。方法による生成物の構造変形体の多様な特徴のため、それを明確な式で説明することはできない。aが1に等しく、bが3に等しい指数を有する式(I)のモノエポキシ官能性アルコキシシランがアルコキシル化された本発明の式(VIII)のポリエーテル構造(図1も参照されたい)を調製することが好ましい。これらは、式(I)〜(VI)の反応成分の開環反応によって改変ポリマー鎖中に挿入された断片による断片d〜jの選択により、トリアルコキシシリル基で置換されている直鎖からなり、制御された形で高度に官能化される。したがって、様々な応用分野に適合させることができる。
【0074】
本発明の対象は、式(III)
【化7】

のアルコキシシランポリエーテルである。

【0075】
置換基R、R〜R12、YおよびZ基ならびに指数a、bおよびcは、式(I)〜(VII)の化合物について上述した定義に対応し、
ここで、
dは1〜1000、好ましくは1〜100、より好ましくは4〜20、より好ましくは5〜10の整数であり、特に4より大きく
eは0〜10000、好ましくは0〜1000、より好ましくは0〜300、特に0〜100の整数であり、
fは0〜1000、好ましくは0〜100、より好ましくは0〜50、特に0〜30の整数であり、
gは0〜1000、好ましくは0〜200、より好ましくは0〜100、特に0〜70の整数であり、
h、iおよびjは0〜500、好ましくは0〜300、より好ましくは0〜200、特に0〜100の整数であり、
但し、指数d〜jを有する断片は互いに自由に順序を変えられる、すなわち、ポリエーテル鎖中の配列において互いに交換可能であり、
nは2〜8の整数であり、
好ましくはさらに、aは1であり、bはである。
【0076】
指数d〜jを有する断片および存在する置換基Rの任意のポリオキシアルキレン鎖の両方の異なるモノマー単位は、交互に並ぶブロック型の構造であっても、ランダムな分布に従ったものであってもよい。
【0077】
したがって、本明細書で言及する式中に度々記載される指数および指定された指数の値の範囲は、実際に存在する構造体および/またはその混合物の可能性のあるランダムな分布の平均値であると理解すべきものである。これは、度々記載される構造式、例えば式(VIII)についても正確にそのままあてはまる。
【0078】
本発明による方法によれば、本発明による方法において使用する式(I)のエポキシ官能性アルコキシシランおよび使用する式(II)、(III)、(IV)、(V)および(VI)に対応するさらなる任意のモノマーに応じて、また場合によっては二酸化炭素にも応じて、本発明のアルコキシシリル基改変ポリエーテルアルコールおよびその任意の混合物を同様に調製することが可能である。
【0079】
排他的に末端にトリアルコキシシリル基を有する式(VIII)の化合物の個々の既知の代表例は、日本国特許出願第2005−215422号および欧州特許出願第A1−0−101027号に記載されており、また、「Polymer(Korea)」、(2003年)、第27巻(3)、265〜270頁(文献名:「ゾル−ゲル法で加工されたポリエチレンオキシド/過塩素酸リチウム(PEO−LiClO)マトリックスをベースとしたポリマー電解質の特性(Properties of polymer electrolytes based on polyethylene oxide/lithium perchlorate(PEO-LiClO4)matrix fabricated by sol-gel process)」)にも記載されているが、これらのすべての文献では異なる方法によるものであり、すなわち、式(I)のエポキシドのアルコキシル化によるものではなく、また、モノマーエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドから形成された単一の末端トリアルコキシシリル官能化を有するポリエーテル鎖に排他的に限定されている。
【0080】
そこに記載されている化合物は、以下のものである。
【0081】
【化8】
【0082】
したがって、本発明は、化合物(IXa)、(IXb)、(IXc)および(IXd)を含まない、本発明による方法によって調製される新規な化合物をさらに提供する。化合物(IXa)、(IXb)、(IXc)および(IXd)を含まない式(VIII)の化合物が好ましい。
【0083】
本発明は、Rがポリエーテル断片であり、式(I)〜(VI)の反応成分の開環反応によって形成されるポリマー鎖中に挿入された少なくとも1つの断片が存在し、但し、式(I)の化合物の開環反応で形成される断片が末端ではない、本発明による方法によって調製される化合物をさらに提供する。
【0084】
式(VIII)の化合物においては指数e〜jの少なくとも1つが1以上である場合に有利であり得る。また、がポリエーテル断片であり、指数e〜jの少なくとも1つが1以上であり、指数dを有する断片が末端ではない式(VIII)の化合物が好ましい。

【0085】
29Si−NMRおよびGPC分析により、本発明の方法によって生じる連鎖停止OH基の存在のため、DMC触媒反応の間および/または任意の後の方法工程の間にケイ素原子においてトランスエステル化反応が起こり得ることが示される。形式的には、ケイ素原子において酸素に結合しているアルキル基の1つが、長鎖改変アルコキシシリルポリマー基と交換されるであろう。二峰性(Bimodal)だけでなく多峰性(multimodal)GPC曲線によっても、2倍、一部には3倍、さらに4倍のモル質量を有する種とともに式(VIII)に示される非トランスエステル化種を形成する本発明によるアルコキシル化生成物の存在が検証される。式(VIII)は、化学実態の複雑さを単に単純な様式で示している。
【0086】
したがって、本発明のさらなる目的は、シリルポリエーテル基によるOR基の一部交換により、式(VIII)中の指数(a)と(b)との統計的な平均の合計が3より小さい化合物の組成物である。
【0087】
該組成物は、R−OHがない下での反応性OH基の縮合反応によって形成される、ケイ素原子に結合している式(III)のさらなる分子を有する種を含有する。反応は、例えば、ケイ素原子におけるRO−基のすべてが、式(VIII)のさらなる分子によって交換されるまで、数回行ってもよい。
【0088】
典型的な29Si−NMRスペクトルでの2つ以上のシグナルの存在により、異なる置換パターンを有するシリル基の存在が確認される。
【0089】
したがって、指数(a)〜(j)の本発明において付与される範囲および好ましい範囲は、異なるが同定可能ではない種にわたる平均値と読むべきである。
【0090】
本発明は、いずれのモノアルコキシシリル末端種をも含まない、本発明による方法によって調製される化合物をさらに提供する。いずれのモノアルコキシシリル末端種も含まない式(VIII)の化合物が好ましい。
【0091】
本発明は、同時に、R、R、R、R基がすべて水素であるか、R、R、Rがそれぞれ水素でありRがメチルであるか、あるいは、R、R、Rがそれぞれ水素であり、Rがメチルである、式(II)のアルキレンオキシドモノマーを排他的に用いて形成するモノアルコキシシリル末端種を除いた、本発明による方法によって調製されるすべての化合物をさらに提供する。指数eが0ではなく、同時に、R、R、R、R基がすべて水素であるか、R、R、Rがそれぞれ水素でありRがメチルであるか、あるいは、R、R、Rがそれぞれ水素であり、Rがメチルである、式(II)のアルキレンオキシドモノマーからだけからなるモノアルコキシシリル末端種のものを除いた、式(VIII)のすべての化合物が好ましい。
【0092】
本発明は、式(III)〜(VI)の反応成分の開環反応によって形成された少なくとも1つの断片が生成する改変ポリマー鎖中に挿入されている、本発明による方法によって調製される化合物をさらに提供する。指数f、g、h、iおよび/またはjのうちの少なくとも1つが0でない式(VIII)の化合物が好ましい。
【0093】
本発明は、出発化合物のRがポリエーテル断片ではない、本発明による方法によって調製される化合物をさらに提供する。Rがポリエーテル断片ではない式(VIII)の化合物が好ましい。
【0094】
これらの新規な本発明の反応性ポリエーテルは、架橋しやすい加水分解感受性アルコキシシリル基を有するため、硬化性改変ポリマーを構成する。固体の熱硬化性最終生成物を得るための架橋反応は、水の存在下、任意選択で反応促進剤として酸または塩基を加えて、簡単な方法で行われる。硬化操作の際に温度を増大させることで、可使時間(pot life)を制御することができる。本発明による方法は出発物質の種類、ならびに使用できるエポキシドモノマーの種類、量および配列に応じて、本発明の架橋性生成物のポリマー構造を様々な形で変えることができ、したがって、用途において重要な製品特性を最終用途の機能に適応させえることができる。例えば、改変ポリマー鎖中のアルコキシシラン単位の割合を変えると架橋密度に影響を及ぼすことができ、したがって、硬化した改変ポリマーの機械的および物理化学的特性プロファイルに広範に影響を及ぼすことができる。ラクトン、環状無水物、二酸化炭素またはオキセタンなどのさらなるコモノマーを混ぜ込むと、改変ポリマー鎖中でのエステルまたはカーボネート基の生成を伴って、さらなる構造および特性変更への可能性を開くことになる。
【0095】
本発明による方法によって得られる改変ポリマーは、例えば、表面コーティング用の接着剤および封止剤の製造のための原料物質として、金属、ガラスおよびガラス繊維/ガラス織物、一般にシリケート材料などの様々な基材のための反応性架橋剤として、接着促進剤および下塗剤として、あるいはコーティングもしくはプラスチックにおける例えば顔料および充填剤の表面処理のために適している。
【0096】
DMC触媒反応によって、エポキシ基を含むアルコキシシランを直接アルコキシル化するための本発明による方法は、ドイツ特許第69831518T2号、日本国特許第11021463号、同第08295805号、同第09012863号、同第09012861号、同第07062222号にこれまでに記載されている手順とは基本的に異なるものである。本発明のアルコキシシリル基を含む架橋性ポリエーテルも、上記特許に記載されている排他的に末端アルコキシシリル単位を有するポリエーテルとは著しく異なる。新規な方法によって提供される、加水分解感受性の架橋性エポキシ官能性アルコキシシラン、例えば3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランおよび3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランを直接アルコキシル化する手段は、DMC技術の利点をさらに利用できるようにし、かつ新規な部類の別の架橋性改変ポリマーを調製できるようにする手段を提供する。反応性水素を有する出発化合物、アルキレンオキシドまたはさらなるグリシジル化合物と組み合わせて用いることができる使用するエポキシ官能性アルコキシシランの種類を選択し、かつ、DMC触媒によるアルコキシル化プロセスの際のこれらのエポキシド化合物の混合物の組成およびその添加順序を変えることによって、ポリマー構造および特性をほぼ望むように調節することができる。
【0097】
本発明により特許請求される反応に用いる反応器は、原則として、反応と、発生することがある任意の発熱を制御できる、適切なすべての種類の反応器であってよい。
【0098】
反応は、プロセス技術の関連で知られている方法、連続式、半連続式、または回分式で行うことができ、入手できる製造装置に柔軟に合わせることができる。
【0099】
通常の攪拌槽型反応器に加えて、WO01/062826に記載されているような気相部および内部の熱交換器用チューブを備えたジェットループ式反応器を用いることも可能である。気相が存在しないループ式反応器も用いることができる。
【0100】
反応物を計り込んで加える際には、化学反応に関わる物質、すなわち、エポキシドモノマー、出発物質、DMC触媒、および適切な場合、懸濁媒体、またはラクトン、無水物もしくは二酸化炭素などのコモノマーをよく分散させることが必要である。
【0101】
本発明のさらなる対象は特許請求の範囲に記載されている。
【0102】
本発明のポリエーテルおよびその調製のための対応プロセスを、実施例によって以下に説明する。本発明は、例示したこれらの実施形態によって限定されるとみなされるべきではない。
【0103】
以下において、範囲、一般式または化合物の部類を指定する場合、それらは、明示された対応する範囲または化合物群だけでなく、個々の値(範囲)または化合物を選択することによって得ることができるすべての下位範囲および下位の化合物群を包含するものとする。
【実施例】
【0104】
以下に挙げる実施例では、本発明を実施例によって説明するが、その出願の範囲が全体の説明および特許請求の範囲から明らかである本発明は、実施例において言及された実施形態に限定されるものと解釈されるものではない。
【0105】
DMC触媒を用いた本発明の方法によるアルコキシシリル基を有するポリエーテルアルコールの調製。OH数(OH number)は、Deutsche Gesellschaft fur Fettwissenschaft (DGF);(German Society for Fat Science)の分析法C−V17A(98)に基づく低温アセチル化法によって測定した。平均モル質量はそのOH数から算出して決定した。最終生成物のエポキシド酸素含量は、濃HClの存在下、水酸化ナトリウム溶液を用いて逆滴定法によって測定した。
(実施例1)
【0106】
3リットルオートクレーブに、窒素雰囲気下で、130.2gのポリプロピレングリコールモノブチルエーテル(平均モル質量520g/モル)および0.10gの亜鉛ヘキサシアノコバルト酸塩DMC触媒を最初に充填し、攪拌しながら130℃に加熱する。反応器を30ミリバールの内圧に減圧して、存在する揮発性成分を蒸留により除去する。DMC触媒を活性化させるために、58.0gのプロピレンオキシドの一部を仕込む。15分経過し反応が開始されたら(反応器内圧の低下)、2つの別の保持容器から同時に、556.0gの3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン(DYNASYLAN(登録商標)GLYEO)と1363.0gのプロピレンオキシドを、冷却し、130℃で最大反応器内圧0.9バール絶対圧に保ちながら30分以内に連続的に計り込む。130〜150℃で90分間、後反応させた後、脱ガス段階に入る。この段階で、残留プロピレンオキシドなどの揮発性画分を減圧留去させる。生成した低粘度で無色のポリエーテルを80℃未満に冷却し、反応器から取り出す。
【0107】
得られたポリエーテロールは、分子当たり平均8つのトリアルコキシシリル単位を含み、7.6mgKOH/gのOH数および7400g/モルの平均モル質量を有する。最終生成物中に遊離のエポキシ基は検出されない。
(実施例2)
【0108】
3リットルオートクレーブに、窒素雰囲気下で、200.0gのポリプロピレングリコールモノブチルエーテル(平均モル質量750g/モル)および0.015gの亜鉛ヘキサシアノコバルト酸塩DMC触媒を最初に充填する。混合物を130℃に加熱し、次いで、30ミリバールで揮発性成分を除去する。DMC触媒を活性化させるために、225.0gの3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン(DYNASYLAN(登録商標)GLYEO)の一部を仕込む。反応が開始され(若干発熱)、かつDYNASYLAN(登録商標)GLYEOが消費された後、まず10分以内で59.1gのエチレンオキシドを、最後に20分以内で225.0gの3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン(DYNASYLAN(登録商標)GLYEO)の追加部分を、冷却し、130℃、最大反応器内圧0.8バール絶対圧に保ちながら計り込む。130〜150℃で90分間、後反応し、次いで脱ガスして揮発性画分を除去する。
【0109】
DYNASYLAN(登録商標)GLYEOおよびエチレンオキシドブロックで形成された、得られたポリエーテロールは低粘度のものであり、分子当たり平均6つのトリアルコキシシリル単位を含み、22.4mgKOH/gのOH数および2500g/モルの平均モル質量を有する。最終生成物中に遊離のエポキシ基は検出されない。
(実施例3)
【0110】
3リットルオートクレーブに、窒素雰囲気下で、65.1gの1−オクタノールおよび0.065gの亜鉛ヘキサシアノコバルト酸塩DMC触媒を最初に充填する。混合物を130℃に加熱し、次いで400ミリバールで揮発性成分を除去する。DMC触媒を活性化させるために、58.0gのプロピレンオキシドの一部を仕込む。反応が開始され(反応器内圧の低下)、かつ逐次的にそれぞれ130℃で、最初に35分以内で236.0gの3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(DYNASYLAN(登録商標)GLYMO)を、次いで30分間の後反応の後、10分以内で220.0gのエチレンオキシドを、冷却し、最大反応器内圧1.5バール絶対圧に保ちながら計り込む。150℃で90分間、後反応し、次いで脱ガスして揮発性画分を除去する。
【0111】
DYNASYLAN(登録商標)GLYMOおよびエチレンオキシドブロックで形成される、得られたポリエーテロールは分子当たり平均2つのトリアルコキシシリル単位を含み、49.4mgKOH/gのOH数および1160g/モルの平均モル質量を有する。最終生成物中に遊離のエポキシ基は検出されない。
(実施例4)
【0112】
3リットルオートクレーブに、窒素雰囲気下で、200.0gのポリプロピレングリコールモノアリルエーテル(平均モル質量520g/モル)および0.017gの亜鉛ヘキサシアノコバルト酸塩DMC触媒を最初に充填する。混合物を130℃に加熱し、30ミリバールで揮発性成分を除去する。DMC触媒を活性化させるために、50.0gのプロピレンオキシドの一部を仕込む。反応が開始された後(反応器内圧の低下)、319.0gの3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(DYNASYLAN(登録商標)GLYMO)を40分以内に125℃で加える。130〜140℃で120分間、後反応し、次いで脱ガスして揮発性画分を除去する。
【0113】
得られた低粘度で無色のポリエーテロールは、末端DYNASYLAN(登録商標)GLYMOブロック(分子当たり平均5つのトリアルコキシシリル単位)を含み、27.5mgKOH/gのOH数および2040g/モルの平均モル質量を有する。最終生成物中に遊離のエポキシ基は検出されない。
(実施例5)
【0114】
3リットルオートクレーブに、窒素雰囲気下で、375.0gのポリプロピレングリコールモノブチルエーテル(平均モル質量750g/モル)および0.250gの亜鉛ヘキサシアノコバルト酸塩DMC触媒を最初に充填する。混合物を130℃に加熱し、次いで、30ミリバールで揮発性成分を除去する。DMC触媒を活性化させるために、58.0gのプロピレンオキシドの一部を仕込む。反応が開始された後(反応器内圧の低下)、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン(DYNASYLAN(登録商標)GLYEO、417.0g)とεカプロラクトン(171.0g)の588.0gの均一混合物を130〜150℃で60分以内で加える。120〜130℃で120分間の後反応の後、725.0gのプロピレンオキシドを15分以内で、130℃、最大反応器内圧1バール絶対圧で連続的に加える。130℃でさらに30分間、後反応させた後、脱ガスして揮発性画分を除去する。
【0115】
得られた淡黄色ポリエーテルエステルは、ランダムに分布したトリアルコキシシリルおよびエステル単位(ポリマー分子当たり、それぞれ平均3モルのDYNASYLAN(登録商標)GLYEOおよびε−カプロラクトン)のブロック、さらに末端25モルのプロピレンオキシドブロックを含み、17.0mgKOH/gのOH数および3300g/モルの平均モル質量を有する。最終生成物中に遊離のエポキシ基は検出されない。
(実施例6)
【0116】
3リットルオートクレーブに、窒素雰囲気下で、375.0gのポリプロピレングリコールモノブチルエーテル(平均モル質量750g/モル)および0.16gの亜鉛ヘキサシアノコバルト酸塩DMC触媒を最初に充填する。混合物を130℃に加熱し、次いで、30ミリバールで揮発性成分を除去する。DMC触媒を活性化させるために、354.3gの3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(DYNASYLAN(登録商標)GLYMO)の一部を仕込む。反応が開始され、かつDYNASYLAN(登録商標)GLYMOが消費された後、混合物を110℃に冷却する。オートクレーブ中にガス状の二酸化炭素を5バール絶対圧の内圧になるまで計り込む。冷却しながら、1740.0gのプロピレンオキシドを110℃で110分以内に連続的に加える。5バール未満に圧力が低下したら、二酸化炭素が消費されたことを示している。プロピレンオキシドの添加の際、反応器内圧を4〜5バールに保持するために、さらなる二酸化炭素を分割して計り込む。110℃で90分間、後反応し、圧力が<2バールに低下したら、混合物を減圧下で脱ガスして揮発性画分を除去する。
【0117】
得られた低粘度ポリエーテルカーボネートは、DYNASYLAN(登録商標)GLYMOブロック(分子当たり平均3つのトリアルコキシシリル単位)と60モルのプロピレンオキシドブロックを含み、そのカーボネート基はランダム分布をしている。生成物は12mgKOH/gのOH数および4675g/モルの平均モル質量を有する。カーボネート含量は約4重量%である。最終生成物中に遊離のエポキシ基は検出されない。
(実施例7)
【0118】
3リットルオートクレーブに、窒素雰囲気下で、375.0gのポリプロピレングリコールモノブチルエーテル(平均モル質量750g/モル)、154.0gのヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPSA)および0.350gの亜鉛ヘキサシアノコバルト酸塩DMC触媒を最初に充填する。混合物を130℃に加熱し、次いで、30ミリバールで揮発性成分を除去する。DMC触媒を活性化させるために、58.0gのプロピレンオキシドの一部を仕込む。反応が開始された後(反応器内圧の低下)、418.0gの3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン(DYNASYLAN(登録商標)GLYEO)を130℃で20分以内で加える。130〜150℃で150分間の後反応の後、反応混合物を130℃に冷却する。130℃で15分以内で435.0gのプロピレンオキシドを加え、続いて脱ガスして揮発性画分を除去する。
【0119】
得られた無色ポリエーテルエステルは、ランダムに混合された配列で、分子当たり平均、2モルのHHPSAおよび3モルのDYNASYLAN(登録商標)GLYEOを含み、さらにプロピレンオキシド単位の30モルの末端ブロックを含む。OH数は23.0mgKOH/gであり、平均モル質量は2440g/モルである。最終生成物中に遊離のエポキシ基は検出されない。
(実施例8)
【0120】
3リットルオートクレーブに、窒素雰囲気下で、214.0gのポリプロピレングリコールモノアリルエーテル(平均モル質量430g/モル)、278.2gの3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン(DYNASYLAN(登録商標)GLYEO)および0.225gの亜鉛ヘキサシアノコバルト酸塩DMC触媒を最初に充填する。混合物を150℃に加熱し、次いで、30ミリバールで揮発性成分を除去する。150℃で30分間保持し、DMC触媒を活性化させた後、反応混合物を130℃に冷却する。続いて、348.0gのプロピレンオキシドを最大内圧1バールで15分以内で仕込む。それぞれ、130℃、最大内圧1バール絶対圧で、25分以内で114.0gのε−カプロラクトン、15分以内で216.1gの1,2−ブチレンオキシド、45分以内で236.2gの3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(DYNASYLAN(登録商標)GLYMO)、15分以内で120.0gのスチレンオキシド、最後に40分以内で290gのプロピレンオキシドを連続的に加える。それぞれを加えた後、130℃で約15分間保持し、次いで次のモノマーを計り込む。プロピレンオキシド末端ブロックを計り込み、続いて130℃で30分間、後反応を行う。最後に、脱ガスして揮発性画分を除去する。
【0121】
得られた淡黄色の芳香族的に改変されたポリエーテルエステルは、分子当たり平均、連続したブロックで、2モルのDYNASYLAN(登録商標)GLYEO、12モルのプロピレンオキシド、2モルのε−カプロラクトン、6モルの1,2−ブチレンオキシド、2モルのDYNASYLAN(登録商標)GLYMO、2モルのスチレンオキシドおよび末端ブロックとしての10モルのプロピレンオキシドを含む。OH数は18.0mgKOH/gであり、平均モル質量は3120g/モルである。最終生成物中に遊離のエポキシ基は検出されない。
図1