特許第5698907号(P5698907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5698907性能の改善された膜電極接合体および燃料電池
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  • 特許5698907-性能の改善された膜電極接合体および燃料電池 図000019
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698907
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】性能の改善された膜電極接合体および燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/02 20060101AFI20150319BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20150319BHJP
   H01M 8/10 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   H01M8/02 P
   H01M8/02 E
   C08J5/04CEZ
   H01M8/10
【請求項の数】8
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2009-522159(P2009-522159)
(86)(22)【出願日】2007年7月31日
(65)【公表番号】特表2009-545841(P2009-545841A)
(43)【公表日】2009年12月24日
(86)【国際出願番号】EP2007006741
(87)【国際公開番号】WO2008014964
(87)【国際公開日】20080207
【審査請求日】2009年4月10日
【審判番号】不服2013-4246(P2013-4246/J1)
【審判請求日】2013年3月5日
(31)【優先権主張番号】102006036019.2
(32)【優先日】2006年8月2日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507414328
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ、フューエル、セル、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ウエンザル,エマー
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーバー,マティアス
【合議体】
【審判長】 池渕 立
【審判官】 小川 進
【審判官】 木村 孔一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−108662(JP,A)
【文献】 特表平11−503262(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/008158(WO,A2)
【文献】 特表2006−502266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
H01M 8/10
C08J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子電解質膜で分離されたアノードとカソードを有する膜電極接合体であって、
前記高分子電解質膜が、前記高分子電解質膜中に埋め込まれた強化材を有して、繊維強化されており、
強化材が、ポリエーテルエーテルケトン繊維でなる不織布からなり、そして
前記高分子電解質膜がポリベンズイミダゾールでなり、且つリン酸でドープされており、さらに
当該膜電極接合体を有する燃料電池は、120℃を超える温度で、乾燥反応ガスを用いて5000時間を越える時間の連続運転が可能であり、且つ5000時間を越える連続運転後でも、160℃において少なくとも900mVの開放電圧を示すことを特徴とする膜電極接合体。
【請求項2】
強化材の最大径が10μm〜500μmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の膜電極接合体。
【請求項3】
強化材のヤング率が少なくとも5GPaであることを特徴とする請求項1又は2に記載の膜電極接合体。
【請求項4】
強化材の破断伸度が0.5〜100%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の膜電極接合体。
【請求項5】
高分子電解質膜の全体積に対する強化材の体積率が5体積%〜95体積%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の膜電極接合体。
【請求項6】
酸の含有量が、ポリマーの繰返単位に対して3〜50モルの範囲であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の膜電極接合体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の膜電極接合体の製造方法であって、
I)ポリベンズイミダゾールをリン酸に溶解する工程、
II)工程I)で得られる溶液を不活性ガス下で400℃までの温度に加熱する工程、
III)強化材を支持体上に設置する工程、
IV)工程II)で得たポリマー溶液を用いて、前記強化材がそのポリマー溶液中に浸入するようにして、工程III)の支持体上に膜を形成する工程、及び
V)工程IV)で得た膜が自立するまで処理する工程、を有する方法により高分子電解質膜を形成し、
VI)前記高分子電解質膜とアノードとカソードとを所望の順で組み立てる、
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の膜電極接合体を有することを特徴とする燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、性能の改善された、高分子電解質膜により分離されている少なくとも二種の電気化学的活性電極を含む膜電極接合体および燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子電解質膜(PEM)燃料電池は既知である。現在、スルホン酸変性ポリマーが、ほぼ独占的にこれらの燃料電池中のプロトン伝導膜として使用されている。主として完全フッ素化ポリマーが用いられている。デュポン社(米国)のナフィオン(登録商標)が、有名な例である。プロトンの伝導のためには膜が比較的に高水分率である必要があり、その量は通常スルホン酸基当たりの水分子として4〜20個に相当する。必要な水分率と、酸性水と反応ガスである水素と酸素に対するポリマーの安定性のため、PEM燃料電池スタックの動作温度は80〜100℃に限定される。圧力をかけると作動温度を120℃以上に上げることもできる。一方、高い動作温度には必ず燃料電池の電力の損失が伴う。
【0003】
しかし、システムに特異的な理由のため100℃を超える燃料電池の作動温度が望ましい。膜電極接合体(MEA)に含まれる貴金属系の触媒の活性は、高い作動温度で大きな改善を見せる。いわゆる炭化水素改質燃料を使用する場合、改質ガスは、特にかなりの量の一酸化炭素を含むため、これを、通常、精巧なガスコンディショニングまたはガス精製工程により取り除く必要がある。触媒のCO不純物に対する許容度は、高作動温度で増加する。
【0004】
また、燃料電池を作動させると熱が発生する。しかしながら、これらのシステムを80℃未満に冷却するのは非常に複雑である。出力電気量によっては冷却装置をかなり簡単に設計することができる。このことは、100℃を超える温度で作動する燃料電池システム中の廃熱を効率よく利用可能であり、電熱併産により燃料電池システムの効率を上昇させることができることを意味する。
【0005】
このような温度を達成するには、一般に新たな伝導機構をもつ膜が用いられる。このための一方法が、水を使用しなくても電気伝導性を示す膜を使用することである。この方向での最初の有望な開発が、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO96/13872
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
個々の燃料電池から得られる電圧は比較的低いため、一般に平面状のセパレーター板(バイポーラ板)により数個の膜電極接合体が相互に直列に連結されている。これにあたり、システムの気密性をできる限り良くし、性能をできる限り高くし、体積をできる限り小さくするため、膜電極接合体とセパレーター板とを、比較的高圧で相互に圧縮する必要がある。
【0008】
しかし実際には、膜電極接合体とセパレーター板の圧縮は、用いる高分子電解質膜の機械的強度や安定性が比較的に低く、したがって膜が圧縮中に容易に破損するため、しばしば問題を引き起こす。
【0009】
一つは高分子電解質膜を高圧縮する必要があること、もう一つは機械的安定性が低いことから、再現性のある結果を得ることは難しい。多くの場合、個々の膜中のいろいろな程度の亀裂及び/又は膜にかけられるいろいろな圧縮力のため、得られる燃料電池スタックの性能は大きく変動する。
【0010】
したがって、本発明の目的は、できる限り性能が高く、できる限り簡単に大量生産できる、できる限り安価で、再現性のよい膜電極接合体や燃料電池を提供することである。
【0011】
なお、燃料電池は、好ましくは次の特性をもつ。
【0012】
燃料電池の使用寿命ができる限り長い。
【0013】
できる限り高い動作温度で、特に100℃を超える温度で燃料電池を使用できる。
【0014】
作動中、個々のセルは一定期間、一定または徐々に改善する性能を示し、その期間ができる限り長いこと。
【0015】
長期作動後に、燃料電池の開放電圧ができる限り高く、クロスオーバーができる限り小さいこと。また、できる限り小さな化学量で運転が可能であること。
【0016】
燃料電池が、できれば燃料ガスの加湿なしに作動すること。
【0017】
燃料電池が、アノードとカソード間に恒久的にあるいは交互にかかる差圧にできる限りよく耐えること。
【0018】
特に、一般的な信頼性をできる限り上げるために、燃料電池が作動条件(T、p、形状等)の変動に強いこと。
【0019】
また、燃料電池の耐熱性や耐食性が改善され、ガス透過性が比較的に低い、特に高温下で低いこと。機械的な安定性と構造的な強度の低下、特に高温下での低下を、できる限り避ける必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
これらの目的は、請求項1の特徴を持つ個々の燃料電池により解決される。
【0021】
したがって、本発明の目的は、少なくとも一種の高分子電解質膜で分離された少なくとも二種の電気化学的活性電極を有し、
高分子電解質膜が、少なくとも部分的に高分子電解質膜に侵入する強化材を有している膜電極接合体である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の目的において、好適な高分子電解質膜は公知であり、なんら制限を受けるものではない。事実、いずれのプロトン伝導材料であってもよい。しかしながら酸を含む膜の使用が好ましく、この酸はポリマーに共有結合していてもよい。また、平らな材料を酸でドープ処理して適当な膜としてもよい。また、ゲル、特に高分子ゲルを膜としてもよく、本発明の目的に特に適したポリマー膜は、例えばDE10246461に記載されているものである。
【0023】
これらの膜は、とりわけ、平坦な材料、例えば高分子膜を、酸性化合物を含む流体で膨潤させたり、ポリマーと酸性化合物との混合物を作り、次いで平坦な構造として膜を形成し、次いで凝固させて形成することができる。
【0024】
本目的に好適なポリマーとしては、とりわけ、ポリ(クロロプレン)、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリ(p−キシリレン)、ポリアリールメチレン、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルアミン、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリヘキサフルオロプロピレンなどのポリオレフィン;PTFEのヘキサフルオロプロピレンとの、ペルフルオロプロピルビニルエーテルとの、トリフルオロニトロソメタンとのコポリマー;カルボアルコキシペルフルオロアルコキシビニルエーテル、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニルド、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクロレイン、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリシアノアクリレート、ポリメタクロイル、シクロオレフィンのコポリマー(特にノルボルネンのコポリマー);
ポリアセタール、ポリオキシメチレン、ポリエーテル、ポリプロピレンオキシド、ポリエピクロロヒドリン、ポリテトラヒドロフラン、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルケトン、ポリエステル、特にポリヒドロキシ酢酸、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヒドロキシベンゾエート、ポリヒドロキシプロピオン酸、ポリピバロラクトン、ポリカプロラクトン、ポリマロン酸、ポリカーボネートなどの主鎖にC−O結合を有するポリマー;
ポリスルフィドエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなどの主鎖にC−S結合を有するポリマー;
ポリイミン、ポリイソシアニド、ポリエーテルイミン、ポリエーテルイミド、ポリアニリン、ポリアラミド、ポリアミド、ポリヒドラジド、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアゾール、ポリアゾールエーテルケトン、ポリアジンなどの主鎖にC−N結合を有するポリマー;
液体−結晶性のポリマー、特にベクトラ;及び
ポリシラン、ポリカルボシラン、ポリシロキサン、ポリケイ酸、ポリシリケート、シリコーン、ポリフォスファゼン、ポリチアジルなどの無機ポリマーが挙げられる。
【0025】
好ましくはアルカリ性ポリマーであって、特に、酸を含有する膜、または酸でドープされた膜である。プロトン輸送性のポリマー膜のほとんどすべてが、このようなアルカリ性ポリマー膜として考慮されることとなる。なお、水を添加しなくても、例えばいわゆるグロータス機構によりプロトンを輸送することができる酸が好ましい。
【0026】
少なくとも一種の窒素、酸素または硫黄原子を、好ましくは少なくとも一種の窒素原子を繰返単位中に有するアルカリ性のポリマーを、本発明のアルカリ性ポリマーとして使用することが好ましい。また、少なくとも一種のヘテロアリール基を有するアルカリ性のポリマーが好ましい。
【0027】
ある好ましい実施様態においては、アルカリ性ポリマー中の繰返し単位に、少なくとも一種の窒素原子を有する芳香族環が含まれる。この芳香族環は、好ましくは、一個〜三個の窒素原子をもつ5員環または6員環であり、他の環と、特に他の芳香族環と縮合していてもよい。
【0028】
本発明のある特定の側面において、特定の繰返し単位または異なる繰返単位に少なくとも一種の窒素、酸素及び/又は硫黄原子を含む高温安定性のポリマーが使用される。
【0029】
本発明において、「高温で安定」とは、あるポリマーが温度120℃を超える温度で長期間にわたり燃料電池中の高分子電解質として作用することを意味する。「長期間にわたり」とは、本発明の膜が、WO01/18894A2に記載の方法で測定して、初期性能に対して50%を超える性能低下を示すことなく、少なくとも100時間、好ましくは少なくとも500時間にわたり、少なくとも80℃の温度、好ましくは少なくとも120℃、特に好ましくは少なくとも160℃の温度で作用することを意味する。
【0030】
本発明において、上述のポリマーのすべては、単独で用いてもよく、混合物(ブレンド)として用いてもよい。なお、ポリアゾール及び/又はポリスルホンを含むブレンドが特に好ましい。この場合、ドイツ特許出願DE10052242とDE10246461に記載のように、好ましいブレンド成分は、ポリエーテルスルホンやポリエーテルケトン、スルホン酸基で修飾されたポリマーである。
【0031】
また、本発明の目的においては、少なくとも一種のアルカリ性ポリマーと少なくとも一種の酸性ポリマーを含む、好ましくはこれらを重量比で1:99〜99:1で含むポリマーブレンド(いわゆる酸−塩基ポリマーブレンド)が、有利であることが実証されている。なお、特に好適な酸性ポリマーは、スルホン酸及び/又はホスホン酸基を含む一種以上のポリマーを含んでいる。本発明において極めて好ましい酸−塩基ポリマーブレンドが、例えば、EP1073690A1に詳細に記載されている。
【0032】
ポリアゾールが、特に好ましいアルカリ性ポリマーの群に含まれる。ポリアゾール系のアルカリ性ポリマーは、一般式(I)及び/又は(II)及び/又は(III)及び/又は(IV)及び/又は(V)及び/又は(VI)及び/又は(VII)及び/又は(VIII)及び/又は(IX)及び/又は(X)及び/又は(XI)及び/又は(XII)及び/又は(XIII)及び/又は(XIV)及び/又は(XV)及び/又は(XVI)及び/又は(XVII)及び/又は(XVIII)及び/又は(XIX)及び/又は(XX)及び/又は(XXI)及び/又は(XXII)の繰返しアゾール単位を有している。
【0033】
【化1】
【0034】
【化2】
【0035】
【化3】
【0036】
【化4】
【0037】
[式中
Arは、同一であっても異なっていてもよく、単核または多核の四価の芳香族または複素芳香族基であり、
Ar1は、同一であっても異なっていてもよく、単核または多核の二価の芳香族または複素芳香族基であり、
Ar2は、同一であっても異なっていてもよく、単核または多核の二価または三価の芳香族または複素芳香族基であり、
Ar3は、同一であっても異なっていてもよく、単核または多核の三価の芳香族または複素芳香族基であり、
Ar4は、同一であっても異なっていてもよく、単核または多核の三価の芳香族または複素芳香族基であり、
Ar5は、同一であっても異なっていてもよく、単核または多核の四価の芳香族または複素芳香族基であり、
Ar6は、同一であっても異なっていてもよく、単核または多核の二価の芳香族または複素芳香族基であり、
Ar7は、同一であっても異なっていてもよく、単核または多核の二価の芳香族または複素芳香族基であり、
Ar8は、同一であっても異なっていてもよく、単核または多核の三価の芳香族または複素芳香族基であり、
Ar9は、同一であっても異なっていてもよく、単核または多核の二価、三価または四価の芳香族または複素芳香族基であり、
Ar10は、同一であっても異なっていてもよく、単核または多核の二価または三価の芳香族または複素芳香族基であり、
Ar11は、同一であっても異なっていてもよく、単核または多核の二価の芳香族または複素芳香族基であり、
Xは、同一であっても異なっていてもよく、酸素、硫黄、または一個の水素原子と、炭素原子数が1〜20であり、好ましくは技分かれしていてもよいアルキルまたはアルコキシ基、またはアリール基を他の基としてもつアミノ基であり、
Rは、同一であっても異なっていてもよく、水素、アルキル基または芳香族基であり、式(XX)中のRは、アルキレン基または芳香族基(ただし、式(XX)のRは水素ではない)であり、
nとmは、それぞれ10以上の整数であり、好ましくは100以上の整数である。]
好ましい芳香族基または複素芳香族基は、必要に応じて置換されていてもよいベンゼンや、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルメタン、ジフェニルジメチルメタン、ビスフェノン、ジフェニルスルホン、キノリン、ピリジン、ビピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、テトラジン、ピロール、ピラゾール、アントラセン、ベンズピロール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサチアジアゾール、ベンゾオキサジアゾール、ベンゾピリジン、ベンゾピラジン、ベンゾピラジジン、ベンゾピリミジン、ベンゾピラジン、ベンゾトリアジン、インドリジン、キノリジン、ピリドピリジン、イミダゾピリミジン、ピラジノピリミジン、カルバゾール、アジリジン、フェナジン、ベンゾキノリン、フェノキサジン、フェノチアジン、アクリジジン、ベンゾプテリジン、フェナントロリン、フェナントレンに由来する基である。
【0038】
この場合、Ar1と、Ar4、Ar6、Ar7、Ar8、Ar9、Ar10、Ar11はいかなる置換形態であってもよく、フェニレンの場合は、例えば、Ar1や、Ar4、Ar6、Ar7、Ar8、Ar9、Ar10、Ar11が、オルト−フェニレン、メタ−フェニレン、またはパラ−フェニレンであってもよい。特に好ましい基は、置換されていてもよいベンゼンおよびビフェニレンに由来する基である。
【0039】
好ましいアルキル基は、炭素原子数が1〜4の短分子鎖アルキル基であり、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、t−ブチル基である。好ましい芳香族基は、フェニル基またはナフチル基である。これらのアルキル基や芳香族基は置換されていてもよい。
【0040】
好ましい置換基は、フッ素などのハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシ基または、メチル基やエチル基などの短分子鎖アルキル基である。
【0041】
式(I)の繰り返し単位をもち、式中の繰り返し単位内の基Xが同一であるポリアゾールが好ましい。
【0042】
これらのポリアゾールは、原理的には、例えば基Xが異なっている異なる繰り返し単位を持つこともできる。しかしながら、繰り返し単位中には、一種のみの基Xがあることが好ましい。
【0043】
他の好ましいポリアゾールポリマーとしては、ポリイミダゾールや、ポリベンゾチアゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリキノキサリン、ポリチアジアゾール、ポリ(ピリジン)、ポリ(ピリミジン)、ポリ(テトラザピレン)があげられる。
【0044】
本発明のもう一つの実施様態においては、繰返しアゾール単位を有するポリマーが、相互に異なる式(I)〜(XXII)のうち少なくとも二つの単位を有するコポリマーまたはブレンドである。これらのポリマーは、ブロックコポリマー(ジブロック、トリブロック)の形であっても、ランダムコポリマー、周期コポリマー及び/又は交互ポリマーの形であってもよい。
【0045】
本発明の特に好ましい実施様態においては、この繰返しアゾール単位を有するポリマーが、式(I)及び/又は式(II)の単位のみを有するポリアゾールである。
【0046】
ポリマー中の繰返しアゾール単位の数は、好ましくは10以上の整数である。特に好ましいポリマーは、少なくとも100の繰返しアゾール単位を持つ。
【0047】
本発明においては、ベンズイミダゾール単位を有するポリマーが好ましい。最も好適な繰返しベンズイミダゾール単位を有するポリマーのいくつかの例を、次式に示す。
【0048】
【化5】
【0049】
【化6】
【0050】
【化7】
【0051】
[式中、nとmは、10以上の整数であり、好ましくは100以上の整数である。]
しかし、用いるポリアゾールは、特に、ポリベンズイミダゾールは、高分子量であることに特徴がある。分子量は、固有粘度として、好ましくは少なくとも0.2dl/g、好ましくは0.8〜10dl/g、特に1〜10dl/gである。
【0052】
好ましいポリベンズイミダゾールが、セラゾール(登録商標)の商品名で市販されている。
【0053】
好ましいポリマーとしては、ポリスルホンが、特に芳香族及び/又は複素芳香族基を主鎖にもつポリスルホンがあげられる。本発明のある特定の側面においては、好ましいポリスルホンとポリエーテルスルホンのISO1133に準じて求めた溶融体積流量MVR300/21.6は、40cm3/10分以下、特に30cm3/10分以下、特に好ましくは20cm3/10分以下である。なお、ビカー軟化温度VST/A/50が180℃〜230℃であるポリスルホンが好ましい。本発明のさらに他の好ましい実施様態においては、これらのポリスルホンの個数平均分子量が30,000g/molより大きい。
【0054】
ポリスルホン系のポリマーとしては、一般式A、B、C、D、E、F、及び/又はGの結合スルホン基を有する繰り返し単位を持つポリマーがあげられる。
【0055】
【化8】
【0056】
[式中、基Rは、相互に独立して、同一であっても異なっていてもよく、芳香族のまたは複素芳香族基を表す。なお、これらの基については、上に詳述した。これらの例としては、特に1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、4,4’−ビフェニル、ピリジン、キノリン、ナフタレン、フェナントレンがあげられる。]
【0057】
本発明において好ましいポリスルホンには、ホモポリマーとコポリマー、例えばランダムコポリマーが含まれる。特に好ましいポリスルホンは、式H〜Nの繰り返し単位を有する。
【0058】
【化9】
【0059】
[式中、n>0]
【0060】
【化10】
【0061】
[式中、n<0]
【0062】
【化11】
【0063】
上述のポリスルホンは、(登録商標)ビクトレックス200Pや、(登録商標)ビクトレックス720P、(登録商標)ウルトラゾンE、(登録商標)ウルトラゾン、(登録商標)ミンデル、(登録商標)ラーデルA、(登録商標)ラーデルR、(登録商標)ビクトレックスHTA、(登録商標)アストレル、(登録商標)ユーデルなどの商品名で購入可能である。
【0064】
また、ポリエーテルケトンや、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン、ポリアリールケトンが特に好ましい。これらの高性能ポリマーは公知であり、ビクトレックス(登録商標)、PEEKTM、ホスタテック(登録商標)、カーデル(登録商標)などの商品名で市販され、購入可能である。
【0065】
ポリマーフィルムを製造するには、ある工程において、あるポリマーを、好ましくはあるポリアゾールを、ジメチルアセトアミド(DMAc)などの極性非プロトン性溶媒に溶解し、従来法によりフィルムを製造する。この場合、フィルムの生産中に強化材を添加することが好ましい。ドイツ特許出願DE10109829に記載のように、残留溶媒を除くためにこのようにして得られたフィルムを洗浄液で洗浄する。ドイツ特許出願に記載の方法でポリアゾールフィルム中の残留溶媒を洗浄・除去することで、フィルムの機械的性質が驚くほど改善される。このような性質としては、特にフィルムの弾性率、引裂強度、及び切断強度があげられる。
【0066】
また、ドイツ特許出願DE1010752又はWO00/44816に記載のように、このポリマーフィルムをさらに、例えば架橋反応により加工してもよい。ドイツ特許出願DE10140147に記載のように、ある好ましい実施様態においては、使用するアルカリ性ポリマーと少なくとも一種のブレンド成分からなるポリマーフィルムが、さらに架橋剤を含有している。
【0067】
ポリアゾールフィルムの厚さは広い範囲で変更可能である。酸でドーピング前のポリアゾールフィルムの厚さは、一般に、好ましくは5〜2000μm、特に好ましくは10〜1000μm、特に好ましくは20〜1000μmの範囲であるが、特にこの範囲に限定されるわけではない。
【0068】
プロトン伝導性を得るためにこれらのフィルムを酸でドーピングする。なお、酸としては、あらゆるルイス酸及びブレンステッド酸が、好ましくは無機ルイス酸及びブレンステッド酸が含まれる。
【0069】
さらに、ポリ酸、特にイソポリ酸やヘテロポリ酸の添加も可能であり、また異なる酸の混合物を添加してもよい。本発明のヘテロポリ酸は、一種の金属(好ましくはCr、Mo、V、W)と一種の非金属(好ましくはAs、I、P、Se、Si、Te)からなる弱い多塩基性の酸素酸で形成された少なくとも二種の異なる中心元素をもつ無機ポリ酸である。特に、12−リンモリブデン酸及び12−リンタングステン酸が含まれている。
【0070】
ドーピングの程度がポリアゾールフィルムの伝導性に影響を与えることがある。ドーピング物質の濃度を上げていくと伝導性が増加し、最終的に最大値に達する。本発明においては、ドーピング度とは、ポリマーの繰返し単位のモル数当たりの酸のモル数である。本発明の目的においては、ドーピング度は、好ましくは3〜60、特に好ましくは12〜60である。
【0071】
特に好ましいドーピング物質は、リン酸及び硫酸、又は例えば加水分解によりこれらの酸を放出する化合物である。特に好ましいドーピング物質は、リン酸(H3PO4)である。一般に高濃度の酸が使用される。本発明のある特定の側面においては、リン酸濃度が、ドーピング物質の重量に対して、少なくとも50重量%、特に少なくとも80重量%である。
【0072】
本発明によれば、この高分子電解質膜は、少なくとも部分的に高分子電解質膜を貫通する、即ち少なくとも部分的に高分子電解質膜に入っている強化材を有している。この強化材が、ほとんど膜中に埋め込まれ、もし膜から突き出るとしてもほんの少しであることが特に好ましい。本発明の強化膜は、したがって非破壊的に分離することができない。
【0073】
これらは、層状構造、つまり内部に高分子電解質膜と強化材とがそれぞれ別の層を形成して相互に連結されているものの相互に貫通していない構造とは明らかに異なっている。このような層状構造は、本発明の範囲に含まれず、本発明は、強化材が少なくとも部分的に膜に連結されている強化高分子電解質膜のみを含んでいる。部分複合材とは、強化材と膜からなる複合材であって、その強化材がうまく力を吸収して、強化材を有する高分子電解質膜にかかる、荷重−伸度図で20℃で0〜1%の伸度範囲内における参照荷重が、無強化材の高分子電解質膜と比較して、少なくとも一箇所で少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、非常に特に好ましくは少なくとも30%異なるようになっているものである。
【0074】
本発明の高分子電解質膜は、繊維強化されていることが好ましく、好ましい強化材としては、モノフィラメント、マルチフィラメント、長繊維及び/又は短繊維、ハイブリッド糸及び/又は複合繊維が含まれる。明確な繊維の強化材に加えて、織物でもって強化材を形成することもできる。好適な織物としては、不織布、織布、編布、編物、フェルト、スクリム及び/又はメッシュがあげられ、特に好ましくはスクリム、編布及び/又は不織布があげられる。上述の織物の例としては、特に限定されるわけではないが、ポリ(アクリル)や、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(プロピレン)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(エチレン−コ−テトラフルオロエチレン)(ETFE)、1:1−エチレンとクロロトリフルオロエチレンの交互コポリマー(E−CTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(アクリロニトリル)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)の織物があげられる。
【0075】
なお、織布とは、モノフィラメント及び/又はマルチフィラメント糸を、主に直角に交織した糸からなる製品をいう。織物のメッシュ値は通常20〜2000μmであり、メッシュ値が30〜3000μmの範囲にある織物、特に織布やスクリム、メッシュ織物が、本発明の目的に特に有利である。なお、このメッシュ値は、光学写真やTEM写真などを用いた電子的な画像分析により求めることができる。
【0076】
織物の、特に織布やスクリムやメッシュ織物の開放スクリーン面a0は、通常、0.1〜98%の範囲、好ましくは20〜80%の範囲である。これは、次の式により求められる。
【0077】
【数1】
【0078】
[式中、dは糸の直径を表し、wはメッシュ値を表す。]
この不職布のメッシュ繊度は、通常8〜140n/cmの範囲であるが、好ましくは50〜90n/cmの範囲である。これは、次の式により求められる。
【0079】
【数2】
【0080】
スクリム/メッシュ織物の打込数は、通常、7〜140本/cmである。
【0081】
織物表面、特に織布を形成する糸または繊維の直径は、30〜950μmの範囲であるが、好ましくは30〜500μmの範囲である。これは、光学写真やTEM写真での電子的画像分析により求められる。強化材の最小厚が、ポリマー膜の全体の厚みに相当することが好ましい。
【0082】
本発明の目的に特に好適な織布が、例えば、セファー社より、セファーNITEX(登録商標)、セファーペテックス(登録商標)、セファープロピルテックス(登録商標)、セファーフルオルテックス(登録商標)、セファーピークテックス(登録商標)などの商品名で入手できる。
【0083】
不織布とは、柔軟性で一定の多孔部をもつ材料であって、縦糸と横糸を用いる古典的な織布法やメッシュ形成法により生産されたのとは異なり、繊維の交錯及び/又は結合及び/又は接着剤結合により生産したもの(例えば、スパンポンドやメルトブロー不織布)をいう。不織布は、紡糸可能な繊維またはフィラメントからなるふわっとした材料であり、
その結合は、通常繊維自体の接着または続く機械的固化により行われる。
【0084】
本発明によれば、個々の繊維が、配向していても(配向不職布または交差不織布)よいし、未配向(ランダム配向不織布)であってもよい。この不織布は、ニードルパンチ、メッシュ化、ウォータージェットによる交絡(いわゆるスパンレース不織布)など、水力学的及び/又は機械的に固化させることができる。
【0085】
接着性の固化不織布は、好ましくは、繊維を液体バインダーで、特にアクリレートポリマー、SBR/NBR、ポリビニルエステルまたはポリウレタン分散材で接着させて、あるいは不織布製造時に添加したいわゆるバインダー繊維を溶融または溶解させて製造される。
【0086】
結合固化中に、繊維表面を適当な化学物質を用いて部分的に溶解させ、圧力または高温を用いて結合させてもよい。
【0087】
本発明の特に好ましい実施様態の範囲内では、この不織布が、さらに他の糸、織布または編物で強化される。
【0088】
この不織布の単位面積当り重量は、好ましくは30g/m2〜500g/m2であり、特に30g/m2〜150g/m2である。
【0089】
特に好ましい不織布としては、セファーペテックス(Copyright)、セファーフルオルテックス(Copyright)、セフラピーテックス(Copyright)があげられるが、特にこれらに限定されるわけではない。強化材の組成は、原理的には具体的用途に合わせて自由に選択し用いることができる。しかしながら、これらの強化材は、ガラス繊維、ミネラル繊維、天然繊維、炭素繊維、ホウ素繊維、合成繊維、ポリマー繊維及び/又はセラミック繊維を含むことが好ましく、特に、セファー社のセファーカルボテックス(Copyright)や、セファーペテックス(Copyright)、セファーフルオルテックス(Copyright)、セフラピーテックス(Copyright)、セファーテテックスモノ(Copyright)、セファーテテックスDLW、セファーテテックスマルチ、またデュオフィル(Copyright)やエミテックス糸(Copyright)を含むことが好ましい。他にも、ハステロイまたは類似材料のような耐酸性耐腐食性の材料やGDK社の角型メッシュ状、紐状、ツイルメッシュ状または多重の織物から製造された強化剤が使用可能である。
【0090】
原理的には、燃料電池の通常の作動条件下でほぼ不活性であって補強材としての機械的要件を満たす限り、いかなる種類あるいは材料も使用可能である。
【0091】
必要に応じて織布、編物、または不織布の一部である強化材は、実用的には円形の断面をもつが、ダンベル状や、腎臓形、三角形または多角形の断面を有していてもよい。複合繊維も可能である。
【0092】
これらの強化材の最大径は、10μm〜500μmの範囲であり、好ましくは20μm〜300μmの範囲、特に好ましくは20μm〜200μmの範囲、特に25μm〜100μmの範囲である。なお、最大径とは断面の最大の径をいう。
【0093】
また、これらの強化材のヤング率は、少なくとも5GPaであり、好ましくは少なくとも10GPa、特に好ましくは少なくとも20GPaである。強化材の破断伸度は、好ましくは0.5〜100%の範囲であり、好ましくは1〜60%の範囲である。
【0094】
高分子電解質膜の全体積に対する強化材の体積の比率は、通常5体積%〜95体積%の範囲であり、好ましくは10体積%〜80体積%の範囲で、特に好ましくは10体積%〜50体積%の範囲であり、特に10体積%〜30体積%の範囲である。この量は、好ましくは20℃で測定されたものである。
【0095】
本発明の範囲内において、強化材を有していない高分子電解質膜に対して、強化材を有している高分子電解質膜の参照荷重が、20℃における荷重−伸度図の0〜1%の伸度範囲内において少なくとも1箇所で、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、非常に特に好ましくは少なくとも30%異なるように、強化材が力を吸収するのが好ましい。
【0096】
また、0〜1%の伸度範囲内の少なくとも一箇所で測定され、180℃での支持挿入部材の参照荷重によって割って得られた、室温(20℃)における高分子電解質膜の参照荷重の比が、最大で3、好ましくは最大で2.5、特に好ましくは最大で2となるように強化されるのが好ましい。
【0097】
参照荷重の測定は、幅が5cmで測定長が100mmである試料を用いて、EN29073、第3部に準じて実施する。センチニュートン[cN]で表すプレロード荷重の数値は、グラム/立方メートルで表わす試料の単位面積当りの質量の数値に相当する。
【0098】
この高分子電解質膜は、公知の方法により生産され、強化材とともに製造中に直接製造され、好ましくは強化材の存在下で高分子電解質膜を形成し、この過程で強化材が少なくとも部分的に高分子電解質膜中に侵入するようにして製造される。
【0099】
なお、このプロトン伝導性膜は、好ましくは次の工程;
I)ポリマー、特にポリアゾールをリン酸に溶解する工程、
II)工程I)で得た溶液を不活性ガス中で最大400℃まで加熱する工程、
III)強化材を支持体上に設置する工程、
IV)工程II)で得たポリマーの溶液を用いて、必要に応じて間欠的に冷却しながら、強化材が少なくとも部分的に溶液中に侵入するようにして、工程III)の支持体上に膜を形成する工程、および
V)工程III)で得た膜が自立するまで処理する工程、
を含む方法で製造される。
【0100】
類似の方法が、ただし強化材を挿入しない場合の方法が、例えばDE10246461に記載されており、当業者は、工程I)、III)、IV)、V)に関する貴重な情報をここより得ることができる。該当する強化材を含まない膜は、例えばセルテック(登録商標)という商品名で市販されている。
【0101】
本発明の他の特に好ましい実施様態の範囲においては、ドープ処理したポリアゾールフィルムが、以下の工程、
A)一種以上の芳香族のテトラアミノ化合物を、カルボン酸モノマー当たり少なくとも二種の酸基を有する一種以上の芳香族のカルボン酸またはそのエステルと混合して、あるいは一種以上の芳香族及び/又は複素芳香族ジアミノカルボン酸をポリリン酸中で混合して溶液及び/又は分散液を得る工程、
B)強化材を支持体上に設置する工程、
C)工程A)で得た混合物を用いて、強化材が少なくとも部分的に混合物に侵入するように、層を工程B)からの支持体上に形成する工程、
D)工程C)で得た平らな構造物/層を、不活性ガス下で最大350℃、好ましくは最大280℃間で加熱して、ポリアゾールポリマーを形成する工程、および
E)工程D)で形成した膜を(自立するまで)処理する工程、
を有する方法により製造される。
【0102】
この変例では、工程D)で述べた温度を超える融点を持つ強化材の使用が必要となる。
工程D)で述べた温度未満の融点を持つ強化材を用いる場合、工程D)(工程A)からの混合物の加熱)を、工程A)の直後に行うことができる。工程C)は、続く冷却後に実施してもよい。
【0103】
また、工程B)を省略して工程D)の前または工程D)の間に強化材を供給してもよい。材料の種類のよっては、これらの強化材を必要に応じて加熱されたカレンダー機を通して供給してもよい。なお、この補強材はプレスされているが、その基材は延性を維持している。
【0104】
このような方法、ただし強化材の挿入はない方法が、例えばDE10246459に記載されており、当業者は、工程A)、C)、D)、E)に関する貴重な情報をここより得ることができる。該当する強化材を含まない膜は、例えばセルテック(登録商標)という商品名で市販されている。
【0105】
工程A)で用いる芳香族または複素芳香族カルボン酸化合物としては、好ましくは、ジカルボン酸やトリカルボン酸、テトラカルボン酸、およびこれらのエステル、無水物、または酸塩化物があげられる。上記の「芳香族のカルボン酸」は、複素芳香族カルボン酸をも含んでいる。
【0106】
好ましい芳香族ジカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、2−ヒドロキシテレフタル酸、5−アミノイソフタル酸、5−N,N−ジメチルアミノイソフタル酸、5−N,N−ジエチルアミノイソフタル酸、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、2,6−ジヒドロキシイソフタル酸、4,6−ジヒドロキシイソフタル酸、2,3−ジヒドロキシフタル酸、2,4−ジヒドロキシフタル酸、3,4−ジヒドロキシフタル酸、3−フルオロフタル酸、5−フルオロイソフタル酸、2−フルオロテレフタル酸、テトラフルオロフタル酸、テトラフルオロイソフタル酸、テトラフルオロテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、1,8−ジヒドロキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ベンゾフェノン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、4−トリフルオロメチルフタル酸、2,2−ビス−(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−スチルベンジカルボン酸、4−カルボキシケイ皮酸、およびこれらのC1〜C20アルキルエステルまたはC5〜C12アリールエステル、あるいはこれらの酸無水物や酸塩化物があげられる。
【0107】
芳香族のトリカルボン酸、テトラカルボン酸またはそのC1〜C20アルキルエステルまたはC5〜C12アリールエステルまたはその酸無水物またはその酸塩化物としては、好ましくは、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(トリメシン酸)、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、(2−カルボキシフェニル)イミノジ酢酸、3,5,3’−ビフェニルトリカルボン酸または3,5,4’−ビフェニルトリカルボン酸があげられる。
【0108】
芳香族のテトラカルボン酸またはそのC1〜C20アルキルエステルまたはC5〜C12アリールエステルまたはその酸無水物またはその酸塩化物としては、好ましくは3,5,3’,5’−ビフェニルテトラカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸または1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸が挙げられる。
【0109】
用いる複素芳香族カルボン酸は、好ましくは複素芳香族ジカルボン酸またはトリカルボン酸またはテトラカルボン酸またはそのエステルまたはその無水物である。なお、複素芳香族カルボン酸とは、芳香族基中に少なくとも一個の窒素、酸素、硫黄または燐原子を有する芳香族系を意味するものとする。これらの例としては、好ましくはピリジン−2,5−ジカルボン酸、ピリジン−3,5−ジカルボン酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸、ピリジン−2,4−ジカルボン酸、4−フェニル−2,5−ピリジンジカルボン酸、3,5−ピラゾールジカルボン酸、2,6−ピリミジンジカルボン酸、2,5−ピラジンジカルボン酸、2,4,6−ピリジントリカルボン酸またはベンズイミダゾール−5,6−ジカルボン酸、およびそのC1〜C20アルキルエステルまたはC5〜C12アリールエステル、またはその酸無水物またはその酸塩化物があげられる。
【0110】
トリカルボン酸またはテトラカルボン酸の含量(用いるジカルボン酸当たり)は、0〜30モル%であり、好ましくは0.1〜20モル%、特に0.5〜10モル%である。
【0111】
用いる芳香族及び複素芳香族ジアミノカルボン酸は、好ましくはジアミノ安息香酸、およびその一塩酸塩または二塩酸塩誘導体である。
【0112】
少なくとも二種の異なる芳香族カルボン酸の混合物の使用が好ましい。複素芳香族カルボン酸と芳香族のカルボン酸とを含む混合物の使用が特に好ましい。芳香族のカルボン酸の複素芳香族カルボン酸に対する混合比率は、1:99〜99:1であり、好ましくは1:50〜50:1である。
【0113】
これらの混合物は、特に、N−複素芳香族ジカルボン酸と芳香族のジカルボン酸の混合物である。これらの例としては、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、2,6−ジヒドロキシイソフタル酸、4,6−ジヒドロキシイソフタル酸、2,3−ジヒドロキシフタル酸、2,4−ジヒドロキシフタル酸、3,4−ジヒドロキシフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、1,8−ジヒドロキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ベンゾフェノン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、4−トリフルオロメチルフタル酸、ピリジン−2,5−ジカルボン酸、ピリジン−3,5−ジカルボン酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸、ピリジン−2,4−ジカルボン酸、4−フェニル−2,5−ピリジンジカルボン酸、3,5−ピラゾールジカルボン酸、2,6−ピリミジンジカルボン酸、2,5−ピラジンジカルボン酸があげられるが、特にこれらに制限されるわけではない。
【0114】
工程A)で用いるテトラアミノ化合物の好適な例としては、3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニル、2,3,5,6−テトラアミノピリジン、1,2,4,5−テトラアミノベンゼン、3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルスルホン、3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルエーテル、3,3’,4,4’−テトラアミノベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルメタン、3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルジメチルメタン、およびこれらの塩、特にこれらの一塩酸塩、二塩酸塩、三塩酸塩、四塩酸塩誘導体があげられる。
【0115】
工程A)で用いるポリリン酸は、例えばリーデルデハーン社から供給されている通常のポリリン酸である。ポリリン酸Hn+2n3n+1(n>1)の濃度は、通常P25(酸滴定による)として、少なくとも83%である。モノマーの溶液に代えて分散液/懸濁液を用いることもできる。
【0116】
工程A)で得た混合物中のポリリン酸とモノマーの総量との重量比は、1:10,000〜10,000:1であり、好ましくは1:1000〜1000:1、特に1:100〜100:1である。
【0117】
工程C)での層成形は、高分子膜の製造の公知の方法(流し込み、吹き付け、ドクターブレードでの塗布)により行われる。この条件下で不活性と考えられる支持体はいずれも適当な支持体である。粘度調整のために、必要に応じて溶液にリン酸(濃リン酸、85%)を添加してもよい。このように粘度を目標値にまで調整して膜形成を容易とすることができる。
【0118】
工程C)で得た層の厚みは、20〜4000μmであり、好ましくは30〜3500μm、特に50〜3000μmである。
【0119】
工程A)の混合物がトリカルボン酸またはテトラカルボン酸を含む場合、得られたポリマーの分岐/架橋反応を、それ自体で行うことができる。この結果、機械的性質が改善される。
【0120】
工程D)で得られたポリマー層は、この層が燃料電池中での使用に十分な強度を示すまで、水の存在下で十分な時間、加熱される。膜が自立して、支持体から傷なく取り外すことができるようになるまで、この処理を行うことができる。
【0121】
工程D)では、工程C)で得られた平らな構造物を、最高350℃で、好ましくは最高280℃で、特に好ましくは200℃〜250℃の範囲で加熱する。工程D)で用いる不活性ガスは、専門家には公知のものである。これらのガスとしては、特に窒素、およびネオンやアルゴン、ヘリウムなどの希ガスがあげられる。
【0122】
本方法の変法では、オリゴマーやポリマーの形成を、前もって工程A)の混合物を350℃まで、好ましくは280℃の温度まで加熱して行う。選ぶ温度と時刻によっては、工程D)中の加熱により、分散を部分的にあるいは完全行うことができる。この変法も、本発明の目的の一つである。
【0123】
工程E)の膜の処理は、0℃を超え150℃未満の温度で、好ましくは10℃〜120℃の温度で、特に室温(20℃)〜90℃の温度で、水蒸気または水及び/又は水蒸気及び/又は最高85%の含水リン酸の存在下で行う。この処理は好ましくは常圧で行われるが、加圧下で行ってもよい。この処理を十分な水分の存在下で処理を行い、存在するポリリン酸が低分子量ポリリン酸及び/又はリン酸の生成を伴う部分的な加水分解により膜の固化に貢献するようにさせることが必須である。
【0124】
工程E)のポリリン酸の部分加水分解により、膜の固化と層厚の減少が起こり、厚みが15〜3000μm、好ましくは20〜2000μm、特に20〜1500μmである自己支持性の膜が形成される。
【0125】
工程C)のポリリン酸層中に存在する分子内構造物及び分子間構造物(相互侵入ネットワークIPN)により、工程C)では規則的な膜成形がおこり、形成される膜に特定の性能を与えることとなる。
【0126】
工程E)の処理温度の上限は、通常150℃である。水分、例えば過熱水蒸気で、ごく短時間処理するために、この水蒸気の温度が150℃を超えていてもよい。温度の上限までは、処理時間は十分長い。
【0127】
この部分加水分解(工程E)を気候試験室で行って、明確な水分の作用により加水分解をきっちりとコントロールしてもよい。それに接する周囲領域、例えば空気や、窒素、二酸化炭素または他の適当なガス、または水蒸気などのガスの温度や飽和度により、この水分を明確に設定することができる。この処理時間は、上述のように選ぶパラメーターに依存する。
【0128】
またこの処理時間は膜厚にも依存する。
【0129】
通常、この処理時間は、例えば過熱水蒸気での処理では数秒〜数分であり、または、例えば室温で低相対湿度の開放空気中では長くても一日である。この処理時間は、10秒〜300時間、特に1分〜200時間であることが好ましい。
【0130】
この部分加水分解を室温で(20℃)行い、周囲の空気の相対湿度が40〜80%である場合、その処理時間は1〜20時間である。
【0131】
工程E)で得られた膜は、自立し、即ち傷なく支持体から分離でき、さらに直接加工可能なように形成できる。
リン酸の濃度、またしたがってポリマー膜の伝導度は、加水分解の程度、即ち処理時間や温度、周囲の湿度により設定できる。リン酸濃度は、ポリマーの繰返単位のモル数に対する酸のモル数で与えられる。特に高濃度のリン酸での膜は、工程A)〜E)からなる方法により得ることができる。10〜50、特に12〜40の濃度(式(I)の繰返単位一つ当たりのリン酸のモル数、例えばポリベンズイミダゾール)が好ましい。市販の正リン酸を用いるポリアゾールのドーピングでは、このような高度のドーピング度(濃度)を得ることは、極めて難しいか全く不可能である。
【0132】
ドープ処理されたポリアゾールフィルムがポリリン酸を用いて製造される上述の方法のある好ましい変例は、次の工程を有している;
1)一種以上の芳香族テトラアミノ化合物を、カルボン酸モノマー当たり少なくとも二種の酸基を持つ一種以上の芳香族のカルボン酸またはそのエステルまたは一種以上の芳香族及び/又は複素芳香族ジアミノカルボン酸と、最高350℃の、好ましくは最高300℃の温度で溶融状態で反応させる工程、
2)工程1)で得られた固体プレポリマーをポリリン酸に溶解する工程、
3)工程2)で得られた溶液を、不活性ガス下で、300℃まで、好ましくは280℃まで加熱して、溶解したポリアゾールポリマーを形成する工程、
4)強化材を支持体上に設置する工程、
5)工程3)のポリアゾールポリマーの溶液を用いて、強化材が少なくとも部分的に溶液に侵入するように、工程4)の支持体上に膜を形成する工程、および
6)工程5)の膜が自立するまで処理する工程。
【0133】
1)〜6)の本方法の工程は、上に工程A)〜E)として詳細に述べた。詳細については、特に好ましい実施様態については、上記を参照されたい。
【0134】
このような方法は、ただし強化材の挿入なしの場合の方法は、例えばDE10246459に記載されており、当業者は、工程1)〜3)、5)、6)についての貴重な情報がそこより得ることができる。該当する強化材を含まない膜は、例えばセルテック(登録商標)という商品名で市販されている。
【0135】
本発明の他の好ましい実施様態においては、ホスホン酸基を有するモノマー及び/又はスルホン酸基を有するモノマーが、高分子電解質膜の製造に用いられる。特に好ましいこの変例は、以下の工程を有している;
A)ホスホン酸基を有するモノマーと少なくとも一種のポリマーを含む混合物を生産する工程、
B)強化材を支持体上に設置する工程、
C)工程A)の混合物を用いて、強化材が少なくとも部分的に混合物に侵入するようにして、層を工程B)からの支持体上に形成する工程、および
D)工程C)で得られた平らな構造物中のホスホン酸基を有するモノマーを重合させる工程。
【0136】
本発明の特に好ましいもう一つの変例の範囲内において、ドープ処理したポリアゾールフィルムが、以下の工程からなる方法によって得られる;
A)ポリアゾールポリマーを有機ホスホン酸無水物中に溶解し、溶液及び/又は分散液を生産する工程、
B)工程A)からの溶液を不活性ガス下で、400℃まで、好ましくは350℃まで、特に300℃までの温度に加熱する工程、
C)強化材を支持体上に設置する工程、
D)工程B)からのポリアゾールポリマーの溶液を用いて、膜を工程C)からの支持体上に形成する工程、および
E)工程D)からの膜を自立するまで処理する工程。
【0137】
このような方法は、ただし強化材の挿入なしの場合の方法は、例えばWO2005/063851に記載されており、当業者は、工程A)、B)、D、E)についての貴重な情報がそこより得ることができる。該当する強化材を含まない膜は、例えばセルテック(登録商標)という商品名で市販されている。
【0138】
工程A)で用いる有機ホスホン酸無水物は、次式の環状化合物である。
【0139】
【化12】
あるいは、次式の線状化合物である。
【0140】
【化13】
n≧0
または複数の有機ホスホン酸の無水物、例えば、次式の
ジホスホン酸の無水物である。
【0141】
【化14】
n≧1
【0142】
[式中、RとR1は、同一であっても異なっていてもよく、C1〜C20炭素含有基を表す。]
【0143】
本発明の範囲内において、C1〜C20炭素含有基とは、好ましくはC1〜C20アルキル基、特に好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、s−ペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−オクチルまたはシクロオクチル;C1〜C20アルケニル基、特に好ましくはエテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、オクテニルまたはシクロオクテニル;C1〜C20アルキニル基、特に好ましくはエチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニルまたはオクチニル;C6〜C20アリール基、特に好ましくはフェニル、ビフェニル、ナフチルまたはアントラセニル;C1〜C20フルオロアルキル基、特に好ましくはトリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルまたは2,2,2−トリフルオロエチル;C6〜C20アリール基、特に好ましくはフェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、トリフェニレニル、[1,1’,3’,1’’]−ターフェニル−2’−イル、ビナフチルまたはフェナンスレニル;C6〜C20フルオロアリール基、特に好ましくはテトラフルオロフェニルまたはヘプタフルオロナフチル;C1〜C20アルコキシ基、特に好ましくはメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、−ブトキシまたはt−ブトキシ;C6〜C20アリーロキシ基、特に好ましくはフェノキシ、ナフトキシ、ビフェニルオキシ、アントラセニルオキシ、フェナンスレニルオキシ;C7〜C20アリールアルキル基、特に好ましくはフェノキシ、ナフトキシ、ビフェニルオキシ、アントラセニルオキシ、フェナンスレニルオキシ;C7〜C20アリールアルキル基、特に好ましくはo−トリル、m−トリル、p−トリル、2,6−ジメチルフェニル、2,6−ジエチルフェニル、2,6−ジ−i−プロピルフェニル、2,6−ジ−t−ブチルフェニル、o−t−ブチルフェニル、m−t−ブチルフェニル、p−tブチルフェニル;C7〜C20アルキルアリール基、特に好ましくはベンジル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチルまたはナフタレニルメチル;C7〜C20アリールオキシアルキル基、特に好ましくはo−メトキシフェニル、m−フェノキシメチル、pフェノキシメチル;C12〜C20アリールオキシアリール基、特に好ましくはp−フェノキシフェニル;C5〜C20ヘテロアリール基、特に好ましくは2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、アクリジニル、ベンゾキノリニルまたはベンゾイソキノリニル;C4〜C20ヘテロシクロアルキル基、特に好ましくはフリル、ベンゾフリル、2−ピロリジニル、2−インドリル、3−インドリル、2,3−ジヒドロインドリル;C8〜C20アリールアルケニル基、特に好ましくはo−ビニルフェニル、m−ビニルフェニル、p−ビニルフェニル;C8〜C20アリールアルキニル基、特に好ましくはo−エチニルフェニル、m−エチニルフェニルまたはp−エチニルフェニル;C2〜C20ヘテロ原子含有基、特に好ましくはカルボニル、ベンゾイル、オキシベンゾイル、ベンゾイルオキシ、アセチル、アセトキシまたはニトリルで、一個以上のC1〜C20炭素含有基が環状システムを形成していてもよいものがあげられる。
【0144】
上述のC1〜C20炭素含有基において、相互に隣接していない一個以上のCH2基が、−O−、−S−、−NR1−または−CONR2−で置換されていてもよく、また一個以上のH原子がFで置換されていてもよい。
【0145】
上述の芳香族システムを有していてもよいC1〜C20炭素含有基において、一個以上の相互に隣接していないCH基が、−O−、−S−、−NR1−または−CONR2−で置換されていてもよく、一個以上のH原子がFで置換されていてもよい。
【0146】
基R1とR2は、それぞれのHにおいて同一であっても異なっていてもよく、C原子数が1〜20の脂肪族または芳香族炭化水素基である。
【0147】
部分的にまたは完全にフッ素化された有機ホスホン酸無水物が特に好ましい。
【0148】
工程A)で用いる有機ホスホン酸無水物を、ポリリン酸及び/又はP25と組合わせて使用してもよい。このポリリン酸は、例えば、リーデルデハーン社から供給されている通常のポリリン酸である。ポリリン酸Hn+2n3n+1(n>1)の濃度は、通常P25(酸滴定による)として、少なくとも83%である。モノマーの溶液に代えて分散液/懸濁液を用いることもできる。
【0149】
工程A)で用いる有機ホスホン酸無水物を、単一または複数の有機ホスホン酸と組合わせて使用することもできる。
【0150】
この単一及び/又は複数の有機ホスホン酸とは、次式の化合物である。
【0151】
【化15】
【0152】
式中、基Rは、同一であっても異なっていてもよく、C1〜C20炭素含有基を表し、n>2である。特に好ましい基Rは、上述のとおりである。
【0153】
工程A)で用いる有機ホスホン酸は、例えばクラリアント社またはアルドリッチ社から製品として販売されている。
【0154】
ドイツ特許出願DE10213540.1に記載のように、工程A)で用いる有機ホスホン酸にはビニル含有ホスホン酸が含まれない。
【0155】
工程A)で生産される混合物中の有機ホスホン酸無水物とポリマーの総量との重量比は、1:10,000〜10,000:1であり、好ましくは1:1000〜1000:1、特に1:100〜100:1である。これらのホスホン酸無水物を、ポリリン酸または単一及び/又は複数の有機ホスホン酸の混合物中で使用する場合、これらは、これらのホスホン酸無水物として考える必要がある。
【0156】
また、他の有機ホスホン酸、好ましくは完全フッ素化有機ホスホン酸を、工程A)で生産された混合物に添加してもよい。工程B)の前または工程B)中で、工程C)の前に、添加してもよい。これにより粘度を調整することができる。
【0157】
本方法の工程B)〜E)を、上に詳細に述べた。詳細については、特に好ましい実施様態については、これを参照されたい。
【0158】
さらに、大気酸素の存在下で加熱して膜の、特にポリアゾール系の膜の表面を架橋させてもよい。膜表面の硬化により膜の特性をさらに向上させることができる。このために、この膜を、少なくとも150℃、好ましくは少なくとも200℃、特に好ましくは少なくとも250℃の温度に加熱してもよい。この本方法の工程において、酸素濃度は通常5〜50体積%の範囲であり、好ましくは10〜40体積%である。しかし、この濃度範囲に限られるわけではない。
【0159】
この架橋反応を、IRまたはNIR(IR=赤外、すなわち波長が700nmより大きい光;NIR=近赤外、すなわち波長範囲が約700〜2000nmでエネルギー範囲が約0.6〜1.75eVである光)の照射により行ってもよい。他の方法は、β線照射である。なお、照射線量は5〜200kGyである。
【0160】
架橋反応の時間は所望の架橋程度により大きく変動するが、一般に、この反応時間は、1秒〜10時間、好ましくは1分〜1時間である。しかし、これは反応時間を限定するものではない。
【0161】
強化高分子電解質膜の生産は、公知のように行われる。自由に流動するあるいは少なくとも延性を保持するポリマー及び/又はモノマーまたはオリゴマー組成物に、好ましくはポリマー溶融物、ポリマー溶液、ポリマー分散またはポリマー懸濁液に、強化材を入れ、続いて、例えば冷却したり、揮発性成分(溶媒)を除去したり、及び/又は化学反応(例えば架橋反応または重合)を行ってポリマー組成物を固化させることが特に好ましい。
【0162】
本発明の膜電極接合体は、上記の高分子電解質膜で分離されている少なくとも二種の電気化学的に活性な電極(アノードとカソード)を有している。「電気化学的に活性」とは、その電極が、水素及び/又は少なくとも一種の還元剤の酸化及び酸素の還元を触媒する能力を持っていることを示す。電極を白金及び/又はルテニウムで覆うことにより、この性質が得られる。「電極」は、導電性材料を意味する。この電極は、必要に応じて貴金属の層を有していてもよい。このような電極は公知であり、例えばUS4,191,618やUS4,212,714、US4,333,805に記載されている。
【0163】
これらの電極は、触媒層に接触してガス拡散層を有していることが好ましい。
【0164】
通常、平坦な導電性耐酸性の構造物がガス拡散層として使用される。これらの例としては、グラファイト繊維紙や、炭素繊維紙、カーボンブラックを添加して伝導性としたグラファイト織物及び/又は紙があげられる。これらの層を通してガス及び/又は液体の細かな分配が可能となる。
【0165】
また、少なくとも一種の導電性材料、例えばカーボン(例えばカーボンブラック)を含有している機械的に安定な安定化材を有するガス拡散層を用いることもできる。これらの目的のために特に好適な安定化材としては、例えば不織布、紙または編物状の繊維で、特に炭素繊維、ガラス繊維、または有機ポリマー、例えばポリプロピレン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)、ポリフェニレンスルフィドまたはポリエーテルケトンを含有する繊維があげられる。このような拡散層のさらなる詳細は、例えばWO9720358に記載されている。
【0166】
ガス拡散層の厚みは、好ましくは80μm〜2000μmの範囲、特に100μm〜1000μm、特に好ましくは150μm〜500μmの範囲である。
【0167】
また、これらのガス拡散層は空隙率が高いことが好ましい。好ましくは20〜80%の範囲である。
【0168】
これらのガス拡散層は、通常の添加物を含んでいてもよい。これらの例としては、特に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフルオロポリマーや表面活性物質があげられる。
【0169】
ある特定の実施様態においては、少なくとも一つのガス拡散層が、圧縮性の材料からなっていてもよい。本発明の圧縮性の材料は、ガス拡散層がその特性の劣化なしに、元の厚みの半分にまで、特に1/3まで圧縮可能であるという性質に特徴がある。
【0170】
この性質は、一般的にはカーボンブラックの添加で伝導性を付与したグラファイト織物及び/又は紙からなるガス拡散層により発揮される。
【0171】
触媒活性層は触媒活性な物質を含んでいる。このような物質としては、特に、貴金属、特に白金やパラジウム、ロジウム、イリジウム及び/又はルテニウムがあげられる。これらの物質はこれらの混合合金として用いることもできる。また、これらの物質は、非貴金属、例えばCrや、Zr、Ni、Co、及び/またはTiとの合金として用いることもできる。また、上述の貴金属及び/又は非貴金属の酸化物を用いることもできる。上述の金属は、通常、支持体材料、多くの場合高比表面積のカーボン上に形成されたナノ粒子として、既知の方法により使用される。
【0172】
本発明のある特定の側面においては、この触媒活性化合物、即ち触媒が、粒子の形で、好ましくは大きさが1〜1000nmの範囲、特に5〜200nm、好ましくは10〜100nmの範囲の粒子の形で使用される。
【0173】
本発明のある特定の実施様態においては、フルオロポリマーと、少なくとも一種の貴金属と必要に応じて一種以上の支持体材料を含む触媒材料との重量比は、0.05より大きく、この比率は好ましくは0.1〜0.6の範囲にある。
【0174】
本発明のある特定の実施様態においては、この触媒層の厚みが1〜1000μmの範囲、特に5〜500μm、好ましくは10〜300μmの範囲にある。この値は、走査型電子顕微鏡(SEM)写真より求めた層厚を平均して得た平均値である。
【0175】
本発明のある特定の実施様態においては、触媒層の貴金属含量が、0.1〜10.0mg/cm2であり、好ましくは0.2〜6.0mg/cm2であり、特に好ましくは0.2〜3.0mg/cm2である。これらの値は平らな試料の元素分析で求められる。
【0176】
この触媒層は一般に自己支持性ではなく、ガス拡散層及び/又は膜に塗布されている。なお、触媒層の一部が、例えばガス拡散層及び/又は膜に拡散して遷移層を形成する。この結果、ガス拡散層の一部と理解される触媒層が形成される。
【0177】
本発明においては、高分子電解質膜の表面に電極が接触しており、第一の電極が高分子電解質膜の前面を、第二の電極が高分子電解質膜の裏面を、部分的にまたは完全に、好ましくは部分的に覆うようになっている。なお、高分子電解質膜の前面と裏面とは、高分子電解質膜の観察者側の面と高分子電解質膜の観察者から反対側の面であり、なお、それぞれ観察の方向は、第一の電極(前面)側から、好ましくはカソードから第二の電極(裏面)、好ましくはアノード向きである。
【0178】
本発明に係る高分子電解質膜や好適な電極についての他の情報は、技術文献、特に出願特許のWO01/18894A2、DE19509748、DE19509749、WO00/26982、WO92/15121、及びDE19757492を参照されたい。上記の文献に開示さている膜電極接合体の構造と生産、及び選択すべき電極やガス拡散層や触媒も、本明細書の一部である。
【0179】
本発明の膜電極接合体の製造は、当業者には公知である。一般的には、膜電極接合体のいろいろな部品を、圧力や温度によって相互に重ねあわせ連結する。なお、この積層は、通常10〜300℃、特に20℃〜200℃の温度範囲で、1〜1000bar、特に3〜300barの圧力範囲で行われる。
【0180】
個々の燃料電池の性能は多くの用途には低すぎるため、本発明の範囲内では、好ましくはセパレーター板を用いて数個の個々の燃料電池を連結して、燃料電池(燃料電池スタック)を形成する。このようにして、このセパレーター板が、必要に応じて他のシール材とともに、カソードとアノードのガス空間を外部から、またカソードとアノードのガス空間の間を密閉する。このために、このセパレーター板は、密閉するように膜電極接合体に取り付けることが好ましい。なお、セパレーター板と膜電極接合体とのを複合体を共に圧縮することで、密封効果をさらに上げることができる。
【0181】
これらのセパレーター板はそれぞれ、好ましくは電極に面する側に取り付けた少なくとも一種の反応ガス用ガスダクトを持つことが好ましい。これらのガスダクトは反応性流体の分配のためのものである。
【0182】
特に驚くべきことに、本発明の膜電極接合体が極めて高い機械的安定性や強度を持ち、特に高性能の燃料電池スタックの生産に使用できることが明らかとなった。得られる燃料電池スタックの性能には、これまでには通常見られた変動がもはや観測されず、今までにない信頼性や再現性が得られる。
【0183】
周囲温度や湿度が変動しても寸法安定性に優れるため、本発明の膜電極接合体は、特に問題なく保存、輸送ができる。長期間保管後や気候条件が大きく異なる場所への出荷後でも、膜電極接合体の寸法は正確であり、燃料電池スタックに容易に挿入できる。この場合、現場で外部アセンブリに合うように膜電極接合体を調整する必要がなく、燃料電池の生産が簡単となり、時間とコストを削減できる。
【0184】
好ましい膜電極接合体の利点は、その燃料電池が120℃を超える温度で運転できることである。これは、ガス状燃料や液体燃料、例えば上流のリホーム工程の炭化水素から生産された水素含有ガスにも当てはまる。なお、例えば酸素または空気を酸化剤として用いることができる。
【0185】
好ましい膜電極接合体のもう一つの利点は、純粋な白金触媒を使用しても、即ち他の合金成分を使用しなくても、120℃超の温度での作動時に、一酸化炭素に対する許容度が高いことである。160℃の温度であっても、例えば1%を超えるCOが燃料ガスに含まれていても、
燃料電池の性能に大きな低下をもたらさない。
【0186】
好ましい膜電極接合体は、高い動作温度が可能であるに関わらず、燃料や酸化剤を加湿する必要なく燃料電池中で作動する。それでもこの燃料電池は安定に作動し、またその膜がその伝導度を失わない。このため、水循環系が単純となって全体の燃料電池システムが簡単になり、さらにコスト削減が可能となる。また、0℃未満の温度での燃料電池システムの性能もこれにより改善される。
【0187】
驚くべきことに、好ましい膜電極接合体は、燃料電池を室温以下にまで容易に冷却可能とし、次いで性能の低下なしに再作動させることができる。これ対して、従来のリン酸系の燃料電池では、不可逆な損傷を避けるために燃料電池システムを停止する場合でも、温度を40℃超に維持する必要がある場合もある。
【0188】
また、本発明の好ましい膜電極接合体は、非常に優れた長期間安定性を示す。本発明の燃料電池は、目に見える性能劣化なくして、長期間、例えば5000時間を超える期間、120℃を超える温度で、乾燥反応ガスを用いて連続運転可能であった。このような長時間後でも得られる電力密度は非常に高い。
【0189】
なお、本発明の燃料電池は、長時間後でも、例えば5000時間を越える時間後でも、高い開放電圧を示す。この時間後でも、好ましくは少なくとも900mVを示す。開放電圧の測定は、アノードに水素を流しカソードに空気を流して、燃料電池を無電流で作動させて行う。この測定は、燃料電池を0.2A/cm2の電流値から無電流状態に切り替え、次いでこの時点から5分間、開放電圧を測定して行う。5分後の数値がそれぞれの開放回路電圧である。開放電圧の測定値を、160℃の温度に適用する。また、この燃料電池は、この期間後に、好ましくは低いガスクロスオーバーを示す。クロスオーバーの測定には、燃料電池のアノードを水素で運転し(5l/h)、カソードを窒素で運転する(5l/h)。このアノードが参照電極及び対抗電極として作用し、カソードが作用電極として作用する。このカソードの電圧は0.5Vに設定され、物質移動が制限され、膜を拡散する水素がカソードで酸化される。得られる電流は、水素の透過速度により異なる。50cm2のセルでは、電流は、<3mA/cm2であり、好ましくは<2mA/cm2、特に好ましくは<1mA/cm2である。H2交差の測定値は、160℃の温度に適応するものである。
【0190】
また、本発明の膜電極接合体は、その改善された耐熱性及び耐食性と、比較的に低いガス透過性、特に高温下での低ガス透過性に特徴がある。本発明によれば、機械的安定性や構造強度の低下、特に高温下での低下を、極力避けることができる。
【0191】
また、この膜電極接合体は安価に容易に製造できる。
【0192】
膜電極接合体についての他の情報については、技術文献、特に特許US−A−4,191,618やUS−A−4,212,714、US−A−4,333,805を参照されたい。膜電極接合体の構造と製造、また選択すべき電極やガス拡散層、触媒に関する上記の文献[US−A−4,191,618、US−A−4,212,714、US−A−4,333,805]中の開示もまた、明細書の一部である。
【実施例】
【0193】
膜電極接合体A(参照)
アノード:アノード触媒は、炭素支持体上のPtである。
【0194】
カソード:カソード触媒は、炭素支持体上のPt合金である。
【0195】
膜A:リン酸でドープしたポリマー膜を膜として用いる。
【0196】
膜のポリマーはパラ−ポリベンズイミダゾールを含む。
【0197】
膜電極接合体B:
アノード:アノード触媒は、炭素支持体上のPtである。
【0198】
カソード:カソード触媒は、炭素支持体上のPt合金である。
【0199】
膜A:リン酸でドープしたポリマー膜を膜として用いる。膜のポリマーはパラ−ポリベンズイミダゾールを含む。この膜を、厚みが50μmのポリエーテルエーテルケトン製不織布(セファーピーテックス(登録商標))の両側に貼り付けた。
【0200】
試験:
両方の膜電極接合体を、活性表面積が50cm2の燃料電池中で、200℃で350時間(アノードガス:水素、化学量:1.2;カソードガス:空気、化学量:2)、連続的に作動させ、この間の電流電圧特性を記録した。この電圧−電流特性は燃料電池の性能の尺度である。作動期間中、セル抵抗(インピーダンスが1kHzでの測定)を測定した。セル抵抗の変化は、用いた膜電極接合体と流路板間の電気接触の変化の指標である。作動中膜の厚みが減少するとセル抵抗は増加する。
【0201】
図1に、200℃で350時間後の電流電圧特性を示す。
【0202】
表1に、膜電極接合体Aの作動時のセル抵抗変化を示す。
【0203】
表2に、膜電極接合体Bの作動時のセル抵抗変化を示す。
【0204】
350時間後の膜電極接合体Aの電流−電圧性能は、膜電極接合体Bの性能より大きく劣る。
【0205】
例えば、電流が0.5A/cm2での膜電極接合体Aのセル電圧のみが、膜電極接合体Bのセル電圧より26mV低い。表1より、膜Aの厚みが圧力と温度の作用で減少すると、膜電極接合体Aの抵抗が作動時に2.40〜3.30mOhm増加することがわかる。一方、膜電極接合体Bの抵抗は、強化膜Bがその厚みを保持するため、その期間は一定である。
【0206】
表1:
膜電極接合体A:
作動時間[時間] セル抵抗
60時間 2.30 mOhm
200時間 2.90 mOhm
350時間 3.30 mOhm
【0207】
表2:
膜電極接合体B:
作動時間[時間] セル抵抗
60時間 2.05 mOhm
200時間 2.05 mOhm
350時間 2.10 mOhm
図1