特許第5698913号(P5698913)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5698913医薬品の粉体圧縮成形物、及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698913
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】医薬品の粉体圧縮成形物、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/20 20060101AFI20150319BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20150319BHJP
   A61K 36/00 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   A61K9/20
   A61K47/02
   A61K35/78
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-49294(P2010-49294)
(22)【出願日】2010年3月5日
(65)【公開番号】特開2011-184328(P2011-184328A)
(43)【公開日】2011年9月22日
【審査請求日】2013年2月8日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 平成21年10月21日 粉体工学会発行の「2009年度 秋期研究発表会講演論文集」に発表
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000237112
【氏名又は名称】富士シリシア化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】竹内 洋文
【審査官】 吉田 佳代子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−248922(JP,A)
【文献】 特表2005−526677(JP,A)
【文献】 国際公開第99/055373(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/157214(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生薬粉体を主成分とする原料組成物が型内で打錠されてなる医薬品用の粉体圧縮成形物であって、
球状シリカ粒子からなり、打錠後の前記粉体圧縮成形物を型から放出する際に必要となる放出力が、配合されていない場合と比較して1割以上低減可能な離型促進用添加剤が、前記原料組成物中に配合されている
ことを特徴とする医薬品用の粉体圧縮成形物。
【請求項2】
前記離型促進用添加剤は、平均粒子径30−230μmの球状シリカ粒子からなる
ことを特徴とする請求項1に記載の医薬品用の粉体圧縮成形物。
【請求項3】
前記離型促進用添加剤は、平均粒子径30−90μmの球状シリカ粒子からなる
ことを特徴とする請求項2に記載の医薬品用の粉体圧縮成形物。
【請求項4】
前記離型促進用添加剤は、前記原料組成物全体に対する重量比で0.1−5%配合されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の医薬品用の粉体圧縮成形物。
【請求項5】
生薬粉体を主成分とする原料組成物を調製する調製工程と、
前記原料組成物を型内で打錠する打錠工程とを含み、
球状シリカ粒子からなり、打錠後の前記粉体圧縮成形物を型から放出する際に必要となる放出力が、配合されていない場合と比較して1割以上低減可能な離型促進用添加剤が、前記調製工程において前記原料組成物中に配合される
ことを特徴とする医薬品用の粉体圧縮成形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品用の粉体圧縮成形物、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、主要な漢方薬はエキス顆粒や丸剤、散剤、湯剤といった形状で使用されている。しかし、これらの剤形は苦みや臭いが強い場合もあり、こうした苦みや臭いが原因で、処方された薬剤が指示通りに服用されなくなることなども懸念される。
【0003】
一方、錠剤は服用や形態が容易な代表的な剤形であり、製剤工程が比較的簡便で、大量生産をしやすく、また品質の安定性が高いなどの利点を多く有している。そのため、上述のような漢方・生薬製剤の剤形としても望ましい。
【0004】
しかし、原料となる生薬粉末は一般的に粒子間結合力が極端に弱い、流動性・充填性が悪い、吸湿性が高いなどといった、錠剤化する際の問題点が多いことが知られている。特に生薬粉末自身の結合力の弱さは錠剤硬度に直接影響し、生薬粉末単独処方では包装・充填工程や輸送過程で求められる至適な錠剤硬度が得られない。
【0005】
これらの問題点を有する医薬品粉体の場合、通常は結合剤や賦形剤、流動化剤といった添加剤を多量に添加して錠剤特性の改善を図る。しかし、生薬製剤は1日投与量が非常に多く、また、患者の服用性を考慮すると必然的に小型の剤形が要求されるため、錠剤中の主薬の占める割合をできるだけ多くし、添加剤の量を最小限に抑えなければならない。
【0006】
このような背景のもと、錠剤硬度を改善するための技術としては、打錠される原料組成物中にシリカを配合することで、錠剤硬度を上昇させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、本件発明者らは、これまでの検討により、漢方・生薬製剤においても生薬粉末に無機物微粒子を少量添加することで、錠剤硬度が上昇する傾向があることを確認している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−248922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、無機物微粒子を原料組成物中に添加して打錠を行うと、上述の通り、錠剤硬度が改善される傾向はあるものの、同時に、打錠機の臼から錠剤を抜くときに必要な放出力(Ejection Force)も大きくなる傾向がある。そのため、このような放出力が過大になってしまうと、打錠機の臼から錠剤を抜く際に、成形された錠剤が欠けてしまったり割れてしまったりするおそれがあった。
【0009】
また、このような欠けや割れを防ぐことを重視して、無機物微粒子の配合量を低減することはできるが、このような対処では錠剤硬度を十分に高めることができなくなる、という問題があった。すなわち、無機物微粒子の配合量を増減するだけでは、錠剤の硬度を高めることと、放出力を低下させること、これら双方を両立させて実現することが困難であった。
【0011】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、硬度が十分に高い上に打錠機の臼から抜くときに必要な放出力が小さい医薬品用の粉体圧縮成形物と、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、本発明において採用した構成について説明する。
本発明の医薬品用の粉体圧縮成形物は、生薬粉体を主成分とする原料組成物が型内で打錠されてなる医薬品用の粉体圧縮成形物であって、球状シリカ粒子からなり、打錠後の前記粉体圧縮成形物を型から放出する際に必要となる放出力が、配合されていない場合と比較して1割以上低減可能な離型促進用添加剤が、前記原料組成物中に配合されていることを特徴とする。
【0013】
このように構成された医薬品用の粉体圧縮成形物によれば、離型促進用添加剤として球状シリカ粒子を添加したことにより、比較的少量の添加でも粉体圧縮成形物の硬度を十分に上昇させることができる。
【0014】
そのため、例えば、錠剤化したときの硬度が低くなりやすい薬物(例えば、生薬粉末など)を主薬とする錠剤であっても、硬度を改善することができ、包装・充填工程や輸送過程で必要となる程度の十分な硬度を得ることができる
【0015】
しかも、この球状シリカ粒子の形状が、球状粒子とされているので、不定形の無機材料粒子(例えば、破砕状粒子)を利用した場合に比べると、同程度の量の無機材料粒子を添加した場合であっても、打錠後の粉体圧縮成形物を型から放出する際に必要となる放出力を低減することができる。
【0016】
この事実は、本件発明者らが数多くの実験を繰り返す中で確認したことであり、粉体を主成分とする原料組成物中に無機材料粒子を添加して打錠を行う技術そのものは過去に類例があるものの、その無機材料粒子の形状については、これまで何ら検討されていない。特に、球状粒子を選択することで放出力を低減できるという点に関しては、過去にそのような報告例は存在しない。
【0017】
この点、本発明においては、球状シリカ粒子からなる離型促進用添加剤を配合したので、打錠後の粉体圧縮成形物を型から放出する際に必要となる放出力を低減することができ、しかも、この離型促進用添加剤が、粉体圧縮成形物の硬度を上昇させる作用も併せ持つ。したがって、本発明によれば、硬度が十分に高い上に打錠機の臼から抜くときに必要な放出力が小さい粉体圧縮成形物を提供することができる。
【0018】
このような粉体圧縮成形物は、医薬品用途においては特に有益なものとなる。すなわち、医薬品用途においては、服用時に適切な量を服用する必要がある都合上、一般的な食品用途以上に品質レベルを高くする必要があり、最終製品の欠けや割れが問題となる。
【0019】
そのため、一方では、打錠後の包装状態での欠けや割れを防ぐ必要があり、それには錠剤の硬度をある程度高くする必要がある。しかし、錠剤の硬度を高くした結果、錠剤を型から抜くときに必要な放出力が上昇すると、錠剤を型から抜く際に過大な力が必要となり、これが原因で製造時に欠けや割れが発生するようでは、これも問題になる。
【0020】
この点、本発明においては、粉体圧縮成形物を型から放出する際に必要となる放出力を低減させつつ、粉体圧縮成形物の硬度を高めることができるので、製造時の欠けや割れを抑制ないし防止しつつ、その後の包装状態における欠けや割れも抑制ないし防止でき、これにより、医薬品用としての錠剤に要求される品質を確保することができる。
【0021】
なお、本発明の医薬品用の粉体圧縮成形物において、離型促進用添加剤としては、球状シリカ粒子を配合することが好ましい。また、球状シリカ粒子としては、多孔質構造のシリカ粒子、非多孔質構造のシリカ粒子、いずれを利用してもよく、さらには、中空構造のシリカ粒子などであってもよい。
【0023】
加えて、シリカの粉末をバインダーとともに液体に分散した後、スプレードライヤーなどで噴霧乾燥して成型した凝集状態の球状粒子なども利用可能である。あるいは、シリカ粉末を押し出し成形した後、マルメライザー等の造粒装置を利用して球状に成形したものを利用してもよい。
【0024】
また、本発明の医薬品用の粉体圧縮成形物において、打錠対象となる原料組成物は、生薬粉体を主成分とするものであれば、主成分以外の成分として、打錠による圧縮成形を妨げない範囲内で、粉体以外の成分(例えば、油類のような液状成分等)をいくらか含んでいてもよい。
【0025】
ところで、この粉体圧縮成形物において、離型促進用添加剤は、球状粒子であることが重要であり、粒子径などについては適宜最適化することで、必要な硬度を確保でき、且つ放出力を十分に低減させることができれば、特に限定されないが、好ましくは、離型促進用添加剤が、平均粒子径30−230μmの球状シリカ粒子、さらに好ましくは、平均粒子径30−90μmの球状シリカ粒子からなるとよい。
【0026】
上記のような平均粒子径の球状シリカ粒子を添加することにより、粉体圧縮成形物表面には適度な寸法の凹凸が形成され、これにより、型からの放出力の増大を抑制することができる。なお、球状シリカ粒子の平均粒子径が0.1μmを下回ると、粉体圧縮成形物表面には期待するほど十分な凹凸が形成されず、放出力の増大を抑制効果が弱まる傾向がある。また、球状シリカ粒子の平均粒子径が0.1μmを下回ると、粉体圧縮成形物内部で偏析が起こりやすくなり、硬度を改善する効果も弱まる傾向がある。
【0027】
また、離型促進用添加剤の配合量については、離型促進用添加剤以外の成分によって型からの放出力や硬度が変わるので、一概には特定できないが、多くの場合、離型促進用添加剤は、原料組成物全体に対する重量比で0.1−5%配合されていると、型からの放出力を低減でき、粉体圧縮成形物の硬度も良好なものとなる。
【0028】
また、以上のような離型促進用添加剤は、どのような手順で原料組成物中に配合されたものであってもよいが、一例を挙げれば、原料組成物の一部又は全部からなる顆粒が調製されてから、一部又は全部が顆粒からなる原料組成物の全部が、型内で打錠される場合であれば、顆粒が調製される際に離型促進用添加剤を顆粒中に配合するとよい。あるいは、顆粒の調製後にその顆粒と離型促進用添加剤と混合してから、それらを型内で打錠してもよい。
【0029】
なお、本発明の粉体圧縮成形物の製造方法は、生薬粉体を主成分とする原料組成物を調製する調製工程と、前記原料組成物を型内で打錠する打錠工程とを含み、球状シリカ粒子からなり、打錠後の前記粉体圧縮成形物を型から放出する際に必要となる放出力が、配合されていない場合と比較して1割以上低減可能な離型促進用添加剤が、前記調製工程において前記原料組成物中に配合されることを特徴とする。
【0030】
このような粉体圧縮成形物の製造方法によれば、すでに説明した通りの本発明の粉体圧縮成形物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】(a)は離型促進用添加剤の配合比と粉体圧縮成形物の引張強度との関係を示すグラフ、(b)は離型促進用添加剤の配合比と粉体圧縮成形物の型からの放出力との関係を示すグラフ。
図2】(a)は離型促進用添加剤の粒子径と粉体圧縮成形物の引張強度との関係を示すグラフ、(b)は離型促進用添加剤の粒子径と粉体圧縮成形物の型からの放出力との関係を示すグラフ。
図3】(a)は不定形シリカの粒子径と粉体圧縮成形物の引張強度との関係を示すグラフ、(b)は不定形シリカの粒子径と粉体圧縮成形物の型からの放出力との関係を示すグラフ。
図4】(a)は離型促進用添加剤の粒子径と粉体圧縮成形物の引張強度との関係を示すグラフ、(b)は離型促進用添加剤の粒子径と粉体圧縮成形物の型からの放出力との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、本発明の実施形態について、いくつかの具体的な例を挙げて説明する。
[第1実施形態]
(1)試料の調製
モデル生薬粉末としてオウバクエキス製剤の一種である百草(日野製薬株式会社製)を粉砕した百草末を用いた。また、離型促進用添加剤として、市販の各種粒度の球状シリカ、不定形シリカ(富士シリシア化学株式会社製)を用いた。なお、滑沢剤としてショ糖ステアリン酸エステル(リョートー(登録商標)シュガーエステル、S−370F、三菱化学フーズ株式会社製)を用いた。
【0033】
(2)打錠用顆粒の調製
百草末及び種々の添加剤を、V型混合機(VM−5、不二パウダル株式会社製)にて40rpmで5分間混合した後、ローラーコンパクター(TF−Mini、フロイント産業株式会社製)を用いて、ローラー圧力6MPa、ローラー速度3rpm、試料の供給速度10rpmの条件にてリボンを調製し、コーミル(197S、株式会社パウレック製)にて解砕を行い、打錠用顆粒とした。
【0034】
(3)粒子径の測定
球状シリカ及び不定形シリカの平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2200、株式会社島津製作所製)を用いて測定した。
【0035】
(4)打錠成形及び放出力測定
各試料を処方に従い量りとり、サンプル瓶中で3分間混合したものを打錠用試料とした。錠剤(粉体圧縮成形物)の調製は、圧縮プロセス解析装置(TabAll、岡田精工株式会社製)を用いて行った。試料200mgを直径8mmの臼に充填し、圧縮圧力100MPa、圧縮速度10spmの条件で圧縮した。型からの放出力(kN)(E.F.=EjectionForce)は、圧縮プロセス解析装置の表示される値を採用した。
【0036】
(5)錠剤の評価(引張強度)
得られた錠剤をシリカゲルを入れたアルミ製の袋に入れ、24時間以上保存したものを用いて評価した。PORTABLECHECKER(PC−30、岡田精工株式会社製)を用いて30mm/minの速度で直径方向に圧縮破断し、その破断に要した荷重を錠剤の硬度とした。求めた錠剤の硬度と錠剤の厚み(mm)、直径(mm)を用いて、以下の式により錠剤の引張強度を算出した。
【0037】
【数1】
(6)結果
まず、離型促進用添加剤として、平均粒子径60μmの球状シリカ(富士シリシア化学株式会社製)と、平均粒子径4μmの不定形シリカ(富士シリシア化学株式会社製)を用い、その配合量を重量比で0%、0.5%、1%、3%、5%と変更した打錠用試料を用意し、それらを打錠後、型からの放出力及び引張強度を測定した。
【0038】
なお、各打錠用試料とも、滑沢剤(ショ糖ステアリン酸エステル)については重量比で1%配合し、離型促進用添加剤の配合比に応じて百草末の配合比を増減調節することで、試料全体を200mgとした。測定結果を図1に示す。
【0039】
図1(a)から明らかなように、離型促進用添加剤として球状シリカ又は不定形シリカを配合すると、いずれの試料とも引張強度が向上し、特に1%程度の配合を行うことにより、優れた引張強度が得られることがわかる。
【0040】
ただし、離型促進用添加剤として不定形シリカを配合した場合は、図1(b)に示した通り、いずれの試料とも放出力が増大する傾向があり、その配合比が増大するほど放出力も増大する傾向がある。これに対し、離型促進用添加剤として球状シリカを配合した場合は、いずれの試料とも放出力は減少し、その配合比が増大しても放出力には大きな差異が現れなかった。
【0041】
この結果から、離型促進用添加剤として球状シリカを配合すれば、不定形シリカを配合した場合に比べ、型からの放出力を増大させることなく引張強度を向上させることができる、と言える。
【0042】
次に、上記結果を考慮して、離型促進用添加剤の配合比を1%に固定して、離型促進用添加剤の粒子径を変更した試料を用意し、それらを打錠後、型からの放出力及び引張強度を測定した。その測定結果及び算出結果を表1及び図2に示す。
【0043】
【表1】
表1及び図2に示した結果から明らかなように、球状シリカ又は不定形シリカを配合した場合、シリカを配合していない場合に比べ、錠剤の引張強度を高くすることができる。また、球状シリカを配合した場合、不定形シリカを配合した場合に比べ、錠剤の型からの放出力を低減することができる。
【0044】
特に、錠剤の引張強度については、球状シリカの粒子径を変えても大きく変動しないものの、放出力については、球状シリカの粒子径を15μm以上とすることで、大きく低減することができる。上記実験例の場合であれば、球状シリカを使用することで、不定形シリカを使用した錠剤と同程度の引張強度は維持しながら、放出力を1/2から1/4に低下させることができた。
【0045】
このような効果が得られる理由は、球状シリカ粒子が配合されていると、成形後の錠剤表面付近に存在する球状シリカ粒子が、錠剤表面における摩擦抵抗を低減し、これにより、型からの放出力が低下しているものと推察される。
【0046】
したがって、このような球状シリカ粒子を、離型促進用添加剤として錠剤の原料組成物中に配合することにより、型からの放出力を低減することができるので、打錠機の臼から錠剤を抜く際に、成形された錠剤が欠けてしまったり割れてしまったりするのを防止することができる。
【0047】
ちなみに、不定形シリカの場合でも、図3に示すように、型からの放出力については、粒子径を大きくすることによって低減することができる。しかし、不定形シリカの場合、粒子径を大きくすると、引張強度が低下してしまう傾向があり、この点で球状シリカとは相違する。
【0048】
[第2実施形態]
上記第1実施形態では、百草末、離型促進用添加剤、滑沢剤を含有する組成物から打錠用顆粒を調製し、この打錠用顆粒を打錠することで錠剤化を行っていたが、以下に説明する第2実施形態では、離型促進用添加剤を含まない組成物からなる顆粒に対し、離型促進用添加剤を混合し、これを打錠することで錠剤化を行った。
【0049】
具体的には、打錠用顆粒としては、直打用コーンスターチ顆粒(粒子径:約100μm、製品名:パーフィーラー102、発売元:フロイント株式会社、製造元:日澱化學株式会社)、直打用乳糖顆粒(粒子径:約100μm、製品名:DCL21、DMV INTERNATIONAL社製)を利用した。また、離型促進用添加剤として、平均粒子径4μmの不定形シリカ粒子、平均粒子径4μmの球状シリカ粒子、及び平均粒子径60μmの球状シリカ粒子(いずれも富士シリシア化学株式会社製)を利用した。
【0050】
これらのうち、1種の顆粒と1種の離型促進用添加剤とを混合し、離型促進用添加剤を顆粒内に配合しない点以外は、上述の第1実施形態と同様の手順にて打錠を行い、引張強度と放出力を測定した。結果を図4に示す。
【0051】
図4に示した結果から明らかなように、コーンスターチ顆粒の場合は、そのまま打錠してもある程度の硬度を得ることができる。しかし、シリカ粒子を配合しない場合は、流動性に劣るという問題がある。この点、不定形シリカ粒子又は球状シリカ粒子をコーンスターチ顆粒に対して後添加することで流動性の改善を図ることができる。
【0052】
ただし、不定形シリカを添加した場合、流動性の改善ができるものの、放出力の増大を招いてしまう点で問題がある。この点、球状シリカを使用すると、放出力の増大を抑えたまま、流動性を改善することができる。
【0053】
また、乳糖顆粒は、元々引張強度が低くて放出力が増大しやすい傾向があるが、この場合も、球状シリカの使用により、放出力の低減を図ることが可能である。この点、不定形シリカを使用した場合は、放出力が増大してしまう。
【0054】
[第3実施形態]
シリカ以外の無機材料として、炭酸カルシウム、アルミナ、シリカアルミナ、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウム、カオリン、及び二酸化チタン、以上の各無機材料を利用し、これら各無機材料の球状粒子を球状シリカ粒子に代えて配合したこと以外は、上記第1実施形態と同様の条件で原料粉体を調製して打錠を行った。
【0055】
その結果、いずれの原料粉体ともに、球状無機材料粒子を配合していない場合に比べ、型からの放出力を増大させることなく引張強度を向上させることができた。
[変形例等]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な一実施形態に限定されず、この他にも種々の形態で実施することができる。
【0056】
例えば、上記実施形態においては、モデル生薬粉末として特定の主薬を利用していたが、他の薬剤を主薬として使用できることはもちろんである。
また、上記実施形態のような医薬品としての錠剤の他、例えば、健康食品や一般食品(例えば菓子類等)においても、原料粉体を打錠機で圧縮成形して各種粉体圧縮成形物が製造されているので、このような粉体圧縮成形物を製造する際に、本発明の構成を採用しても所期の効果を期待することができる。
図2
図4
図1
図3