(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明の熱伝導性シートの一実施形態を示す概略斜視図である。
【0027】
図1において、熱伝導性シート1は、熱伝導性材料2と、保形材(充填材)3とを備えている。
【0028】
熱伝導性材料2は、葛折り状に成形された1枚のシートとして形成されており、熱伝導性シート1の面方向と交差する方向に沿って延びる複数(14つ)のパス4と、そのパス4を接続する接続部5とを備えている。
【0029】
より具体的には、各パス4は、熱伝導性シート1の厚み方向(面方向と直交する方向)に沿って延びるように設けられており、熱伝導性シート1の面方向に互いに間隔を隔てて、熱伝導性シート1を厚み方向に貫通するように、配置されている。
【0030】
また、互いに隣接するパス4は、熱伝導性シート1の表面または裏面において、接続部5により交互に接続されており、これにより、複数(14つ)のパス4が、すべて連続している。
【0031】
各接続部5は、熱伝導性シート1の表面または裏面において、互いに隣接する2つのパス4を、それぞれ接続している。
【0032】
また、各接続部5は、熱伝導性シート1の面方向に沿って延びるように形成されており、その表面が熱伝導性シート1の表面から露出するように、または、その裏面が熱伝導性シート1の裏面から露出するように、配置されている。
【0033】
このような熱伝導性材料2は、例えば、無機材料から形成される無機粒子と、樹脂成分とを含有している。
【0034】
無機材料としては、例えば、炭化物、窒化物、酸化物、金属、炭素系材料などが挙げられる。
【0035】
炭化物としては、例えば、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化アルミニウム、炭化チタン、炭化タングステンなどが挙げられる。
【0036】
窒化物としては、例えば、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化クロム、窒化タングステン、窒化マグネシウム、窒化モリブデン、窒化リチウムなどが挙げられる。
【0037】
酸化物としては、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化チタン、酸化セリウムなどが挙げられる。さらに、酸化物として、金属イオンがドーピングされている、例えば、酸化インジウムスズ、酸化アンチモンスズなどが挙げられる。
【0038】
金属としては、例えば、銅、金、ニッケル、錫、鉄、または、それらの合金が挙げられる。さらに、金属としては、上記金属の炭化物、窒化物、酸化物なども挙げられる。
【0039】
炭素系材料としては、例えば、カーボンブラック、黒鉛、ダイヤモンド、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、ナノホーン、カーボンマイクロコイル、ナノコイルなどが挙げられる。
【0040】
無機材料は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0041】
これら無機材料のうち、好ましくは、窒化物、金属(金属の炭化物、窒化物、酸化物を含む)、炭素系材料が挙げられ、より好ましくは、窒化ホウ素、金属の炭化物、金属の窒化物、金属の酸化物、ダイヤモンドが挙げられる。
【0042】
無機粒子は、上記した無機材料からなる粒子としてそのまま得ることができ、あるいは、上記した無機材料を、粉砕法などの公知の方法で、粒子に成形することにより、得ることもできる。無機粒子の形状としては、例えば、板状、鱗片状、球状などが挙げられ、好ましくは、板状、鱗片状が挙げられる。
【0043】
また、無機粒子の熱伝導率は、例えば、10W/m・K以上、好ましくは、20W/m・K以上、より好ましくは、30W/m・K以上、さらに好ましくは、40W/m・K以上、とりわけ好ましくは、50W/m・K以上であり、通常、3000W/m・K以下である。
【0044】
このような無機粒子として、実用的には、例えば、窒化ホウ素(BN)粒子などが挙げられる。
【0045】
窒化ホウ素粒子は、板状(あるいは鱗片状)に形成されており、熱伝導性材料2において、好ましくは、所定方向(後述)に配向された形態で分散されている。
【0046】
窒化ホウ素粒子は、長手方向長さ(板の厚み方向に対する直交方向における最大長さ)の平均が、例えば、1〜100μm、好ましくは、3〜90μmである。また、窒化ホウ素粒子の長手方向長さの平均は、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上、さらに好ましくは、20μm以上、とりわけ好ましくは、30μm以上、最も好ましくは、40μmであり、通常、例えば、100μm以下、好ましくは、90μm以下である。
【0047】
また、窒化ホウ素粒子の厚み(板の厚み方向長さ、つまり、粒子の短手方向長さ)の平均は、例えば、0.01〜20μm、好ましくは、0.1〜15μmである。
【0048】
また、窒化ホウ素粒子のアスペクト比(長手方向長さ/厚み)は、例えば、2〜10000、好ましくは、10〜5000である。
【0049】
そして、窒化ホウ素粒子の光散乱法によって測定される平均粒子径は、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上、さらに好ましくは、20μm以上、とりわけ好ましくは、30μm以上、最も好ましくは、40μm以上であり、通常、100μm以下である。
【0050】
なお、光散乱法によって測定される平均粒子径は、動的光散乱式粒度分布測定装置にて測定される体積平均粒子径である。
【0051】
窒化ホウ素粒子の光散乱法によって測定される平均粒子径が上記範囲に満たないと、熱伝導性材料2が脆くなり、取扱性が低下する場合がある。
【0052】
また、窒化ホウ素粒子の嵩密度(JIS K 5101、見かけ密度)は、例えば、0.3〜1.5g/cm
3、好ましくは、0.5〜1.0g/cm
3である。
【0053】
また、窒化ホウ素粒子は、市販品またはそれを加工した加工品を用いることができる。窒化ホウ素粒子の市販品としては、例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製の「PT」シリーズ(例えば、「PT−110」など)、昭和電工社製の「ショービーエヌUHP」シリーズ(例えば、「ショービーエヌUHP−1」など)などが挙げられる。
【0054】
樹脂成分は、上記した無機粒子(好ましくは、窒化ホウ素粒子)を分散できるもの、つまり、無機粒子が分散される分散媒体(マトリックス)であって、例えば、熱硬化性樹脂成分、熱可塑性樹脂成分などの樹脂成分が挙げられる。
【0055】
熱硬化性樹脂成分としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド(熱硬化性ポリイミド)、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂(熱硬化性ウレタン樹脂)などが挙げられる。
【0056】
熱可塑性樹脂成分としては、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体など)、アクリル(例えば、ポリメタクリル酸メチルなど)、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド(PA;ナイロン)、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリルスルホン、熱可塑性ポリイミド、熱可塑性ウレタン樹脂、ポリアミノビスマレイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリメチルペンテン、フッ化樹脂、液晶ポリマー、オレフィン−ビニルアルコール共重合体、アイオノマー、ポリアリレート、アクリロニトリル−エチレン−スチレン共重合体(AES)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)などが挙げられる。
【0057】
これら樹脂成分は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0058】
樹脂成分のうち、熱硬化性樹脂成分として、好ましくは、エポキシ樹脂が挙げられ、熱可塑性樹脂成分として、好ましくは、ポリオレフィンが挙げられる。
【0059】
エポキシ樹脂は、常温において、液状、半固形状および固形状のいずれかの形態であり、好ましくは、半固形状である。
【0060】
具体的には、エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ダイマー酸変性ビスフェノール型エポキシ樹脂など)、ノボラック型エポキシ樹脂(例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂など)、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂(例えば、ビスアリールフルオレン型エポキシ樹脂など)、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂(例えば、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂など)などの芳香族系エポキシ樹脂、例えば、トリエポキシプロピルイソシアヌレート(トリグリシジルイソシアヌレート)、ヒダントインエポキシ樹脂などの含窒素環エポキシ樹脂、例えば、脂肪族系エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂(例えば、ジシクロ環型エポキシ樹脂など)、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0061】
これらエポキシ樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0062】
また、エポキシ樹脂は、軟化温度(環球法)が、例えば、80℃以下(具体的には、20〜80℃)、好ましくは、70℃以下(具体的には、35〜70℃)である。
【0063】
また、エポキシ樹脂の80℃における溶融粘度は、例えば、10〜20000mPa・s、好ましくは、50〜10000mPa・sでもある。エポキシ樹脂を2種以上併用する場合には、それらの混合物としての溶融粘度が、上記した範囲内に設定される。
【0064】
また、エポキシ樹脂を2種以上併用する場合には、例えば、常温で固形状のエポキシ樹脂と、常温で液状のエポキシ樹脂とが併有される。また、エポキシ樹脂を2種以上併用する場合には、軟化温度が、例えば、45℃未満、好ましくは、35℃以下の第1エポキシ樹脂と、軟化温度が、例えば、45℃以上、好ましくは、55℃以上の第2エポキシ樹脂とを併有される。これにより、樹脂成分(混合物)の動粘度を所望の範囲に設定することができる。
【0065】
また、エポキシ樹脂には、例えば、硬化剤、硬化促進剤などを含有させて、エポキシ樹脂組成物として調製することができる。
【0066】
硬化剤は、加熱によりエポキシ樹脂を硬化させることができる潜在性硬化剤(エポキシ樹脂硬化剤)であって、例えば、イミダゾール化合物、アミン化合物、酸無水物化合物、アミド化合物、ヒドラジド化合物、イミダゾリン化合物などが挙げられる。また、上記の他に、フェノール化合物、ユリア化合物、ポリスルフィド化合物なども挙げられる。
【0067】
イミダゾール化合物としては、例えば、2−フェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどが挙げられる。
【0068】
アミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのポリアミン、または、これらのアミンアダクトなど、例えば、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンなどが挙げられる。
【0069】
酸無水物化合物としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、4−メチル−ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ピロメリット酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、ジクロロコハク酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、クロレンディック酸無水物などが挙げられる。
【0070】
アミド化合物としては、例えば、ジシアンジアミド、ポリアミドなどが挙げられる。
【0071】
ヒドラジド化合物としては、例えば、アジピン酸ジヒドラジドなどが挙げられる。
【0072】
イミダゾリン化合物としては、例えば、メチルイミダゾリン、2−エチル−4−メチルイミダゾリン、エチルイミダゾリン、イソプロピルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、フェニルイミダゾリン、ウンデシルイミダゾリン、ヘプタデシルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリンなどが挙げられる。
【0073】
これら硬化剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0074】
硬化剤として、好ましくは、イミダゾール化合物が挙げられる。
【0075】
硬化促進剤としては、例えば、トリエチレンジアミン、トリ−2,4,6−ジメチルアミノメチルフェノールなどの3級アミン化合物、例えば、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエートなどのリン化合物、4級アンモニウム塩化合物、有機金属塩化合物、およびこれらの誘導体などが挙げられる。これら硬化促進剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0076】
エポキシ樹脂組成物における硬化剤の配合割合は、エポキシ樹脂100質量部に対して、例えば、0.5〜50質量部、好ましくは、1〜10質量部であり、硬化促進剤の配合割合は、例えば、0.1〜10質量部、好ましくは、0.2〜5質量部である。
【0077】
上記した硬化剤および/または硬化促進剤は、必要により、溶媒により溶解および/または分散された溶媒溶液および/または溶媒分散液として調製して用いることができる。
【0078】
溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどケトン、例えば、酢酸エチルなどのエステルなどの有機溶媒、例えば、水、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコールなど水系溶媒が挙げられる。好ましくは、有機溶媒、さらに好ましくは、ケトンが挙げられる。
【0079】
ポリオレフィンとして、好ましくは、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体が挙げられる。
【0080】
ポリエチレンとしては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどが挙げられる。
【0081】
エチレン−プロピレン共重合体としては、例えば、エチレンおよびプロピレンの、ランダム共重合体、ブロック共重合体またはグラフト共重合体などが挙げられる。
【0082】
これらポリオレフィンは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0083】
また、ポリオレフィンの重量平均分子量および数平均分子量は、例えば、1000〜10000である。
【0084】
そして、熱伝導性材料2において、無機粒子(好ましくは、窒化ホウ素粒子)の体積基準の含有割合(固形分、つまり、無機粒子および樹脂成分の総体積に対する無機粒子の体積百分率)は、例えば、35体積%以上、好ましくは、40体積%以上、より好ましくは、75体積%以上、通常、95体積%以下、好ましくは、90体積%以下である。
【0085】
無機粒子の体積基準の含有割合が上記した範囲に満たない場合には、無機粒子を熱伝導性材料2において所定方向に配向させることができない場合がある。一方、無機粒子の体積基準の含有割合が上記した範囲を超える場合には、熱伝導性材料2が脆くなり、取扱性が低下する場合がある。
【0086】
また、熱伝導性材料2を形成する各成分(無機粒子および樹脂成分)総量(固形分総量)100質量部に対する無機粒子の質量基準の配合割合は、例えば、40〜95質量部、好ましくは、65〜90質量部であり、熱伝導性材料2を形成する各成分総量100質量部に対する樹脂成分の質量基準の配合割合は、例えば、5〜60質量部、好ましくは、10〜35質量部である。なお、無機粒子の、樹脂成分100質量部に対する質量基準の配合割合は、例えば、60〜1900質量部、好ましくは、185〜900質量部でもある。
【0087】
なお、樹脂成分には、上記した各成分(重合物)の他に、例えば、ポリマー前駆体(例えば、オリゴマーを含む低分子量ポリマーなど)、および/または、モノマーが含まれる。
【0088】
このような熱伝導性材料2は、例えば、上記各成分を配合および混合した後、後述する方法によってシート状に形成し、葛折り状に成形することなどにより、得ることができる。
【0089】
保形材3は、葛折り状に成形された上記の熱伝導性材料2を保形するために、設けられている。
【0090】
より具体的には、保形材3は、断面視略長方形の略四角柱状に形成されており、熱伝導性材料2の互いに隣接する各パス4の間を充填するように、複数(13つ)設けられている。
【0091】
また、各保形材3は、互いに隣接する接続部5の間において、その上面が熱伝導性シート1の表面から露出するとともに、接続部5の表面と面一となるように、または、その底面が熱伝導性シート1の裏面から露出するとともに、接続部5の裏面と面一となるように、それぞれ配置されている。
【0092】
このような保形材3は、熱伝導性材料2を保形できれば、特に制限されないが、例えば、樹脂などから形成される。
【0093】
樹脂としては、特に制限されず、例えば、上記した熱硬化性樹脂成分と同様の熱硬化性樹脂、例えば、上記した熱可塑性樹脂成分と同様の熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0094】
樹脂として、好ましくは、熱硬化性樹脂成分が挙げられ、より好ましくは、半硬化(Bステージ状態)の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0095】
半硬化(Bステージ状態)の熱硬化性樹脂を用いることにより、保形材3に粘着性および接着性を付与することができるため、熱伝導性シート1の表面および裏面における、粘着性および接着性を向上させることができ、その結果、熱伝導性シート1を、任意の箇所に、作業性よく設置することができる。
【0096】
また、エポキシ樹脂には、例えば、上記した硬化剤、上記した硬化促進剤などを、上記した配合割合で含有させて、エポキシ樹脂組成物として調製することができる。
【0097】
さらに、保形材3としては、上記の樹脂に限定されず、その他の充填材料、例えば、セラミックスなどを用いることもできる。
【0098】
図2は、
図1に示す熱伝導性シートの製造方法を説明するための工程図、
図3は、
図2に続いて、
図1に示す熱伝導性シートの製造方法を説明するための工程図を示す。
【0099】
次に、
図1に示す熱伝導性シートを製造する方法について、
図2および
図3を参照して説明する。
【0100】
この方法では、まず、
図2(a)に示すように、シート状の熱伝導性材料2(葛折り加工前シート)を用意する。
【0101】
図4は、熱伝導性材料(葛折り加工前シート)の一実施形態を示す概略斜視図、
図5は、
図4に示す熱伝導性材料(葛折り加工前シート)の製造方法を説明するための工程図を示す。
【0102】
以下において、本発明の熱伝導性シートの一実施形態に含まれる、熱伝導性材料2(葛折り加工前シート)の一実施形態を製造する方法について、
図4および
図5を参照して説明する。
【0103】
この方法では、まず、上記した熱伝導性材料2を形成する各成分を、上記した配合割合で配合して、攪拌混合することにより、混合物を調製する。
【0104】
攪拌混合では、各成分を効率よく混合すべく、例えば、溶媒を上記した各成分とともに配合するか、または、例えば、加熱により樹脂成分(好ましくは、熱可塑性樹脂成分)を溶融させる。
【0105】
溶媒としては、上記と同様の有機溶媒が挙げられる。また、上記した硬化剤および/または硬化促進剤が溶媒溶液および/または溶媒分散液として調製されている場合には、攪拌混合において溶媒を追加することなく、溶媒溶液および/または溶媒分散液の溶媒をそのまま攪拌混合のための混合溶媒として供することができる。あるいは、攪拌混合において溶媒を混合溶媒としてさらに追加することもできる。
【0106】
溶媒を用いて攪拌混合する場合には、攪拌混合の後、溶媒を除去する。
【0107】
溶媒を除去するには、例えば、室温にて、1〜48時間放置するか、例えば、40〜100℃で、0.5〜3時間加熱するか、または、例えば、0.001〜50kPaの減圧雰囲気下で、20〜60℃で、0.5〜3時間加熱する。
【0108】
加熱により樹脂成分(好ましくは、熱可塑性樹脂成分)を溶融させる場合には、加熱温度が、例えば、樹脂成分の軟化温度付近またはそれを超過する温度であって、具体的には、40〜150℃、好ましくは、70〜140℃である。
【0109】
次いで、この方法では、得られた混合物を、熱プレスする。
【0110】
具体的には、
図5(a)に示すように、混合物を、例えば、必要により、2枚の離型フィルム10を介して熱プレスすることにより、プレスシート2Aを得る。熱プレスの条件は、温度が、例えば、50〜150℃、好ましくは、80〜140℃であり、圧力が、例えば、1〜100MPa、好ましくは、5〜50MPaである。
【0111】
さらに好ましくは、混合物を真空熱プレスする。真空熱プレスにおける真空度は、例えば、1〜100Pa、好ましくは、5〜50Paであり、温度および圧力は、上記した熱プレスのそれらと同様である。
【0112】
熱プレスにより得られるプレスシート2Aの厚みは、例えば、50〜1000μm、好ましくは、100〜800μmである。
【0113】
次いで、この方法では、
図5(b)に示すように、プレスシート2Aを、複数個(例えば、4個)に分割して、分割シート2Bを得る(分割工程)。プレスシート2Aの分割では、厚み方向に投影したときに複数個に分断されるように、プレスシート2Aをその厚み方向に沿って切断する。なお、プレスシート2Aは、各分割シート2Bが厚み方向に投影されたときに同一形状となるように、切断する。
【0114】
次いで、この方法では、
図5(c)に示すように、各分割シート2Bを、厚み方向に積層して、積層シート2Cを得る(積層工程)。
【0115】
その後、この方法では、
図5(a)に示すように、積層シート2Cを、熱プレス(好ましくは、真空熱プレス)する(熱プレス工程)。熱プレスの条件は、上記した混合物の熱プレスの条件と同様である。
【0116】
熱プレス後の積層シート2Cの厚みは、例えば、1mm以下、好ましくは、0.8mm以下、通常、例えば、0.05mm以上、好ましくは、0.1mm以上である。
【0117】
その後、熱伝導性シート1において無機粒子(好ましくは、窒化ホウ素粒子)6を樹脂成分7中に所定方向に効率的に配向させるべく、上記により得られる積層シート2Cについて、上記した分割工程(
図5(b))、積層工程(
図5(c))および熱プレス工程(
図5(a))の一連の工程を、繰り返し実施する。繰返回数は、特に限定されず、窒化ホウ素粒子の充填状態に応じて適宜設定することができ、例えば、1〜10回、好ましくは、2〜7回である。
【0118】
これにより、未硬化(あるいは半硬化(Bステージ状態))熱伝導性材料2(葛折り加工前シート)を得ることができる。
【0119】
なお、上記した熱プレス工程では、例えば、複数のカレンダーロールなどによって、混合物または積層シート2Cを圧延することもできる。
【0120】
得られた熱伝導性材料2(葛折り加工前シート)の厚みは、例えば、1mm以下、好ましくは、0.8mm以下、通常、例えば、0.05mm以上、好ましくは、0.1mm以上である。
【0121】
また、熱伝導性材料2(葛折り加工前シート)における無機粒子(好ましくは、窒化ホウ素粒子)6の体積基準の含有割合(固形分、つまり、樹脂成分7および無機粒子6の総体積に対する無機粒子6の体積百分率)は、上記したように、例えば、35体積%以上(好ましくは、40体積%以上、さらに好ましくは、75体積%以上)、通常、95体積%以下(好ましくは、90体積%以下)である。
【0122】
無機粒子(好ましくは、窒化ホウ素粒子)の含有割合が上記した範囲に満たない場合には、無機粒子(好ましくは、窒化ホウ素粒子)を熱伝導性材料において所定方向に配合することができない場合がある。
【0123】
そして、このようにして得られた熱伝導性材料2(葛折り加工前シート)において、
図4およびその部分拡大模式図に示すように、無機粒子6の長手方向LDが、熱伝導性材料2(葛折り加工前シート)の面方向SDに沿って配向している。
【0124】
また、無機粒子6の長手方向LDが熱伝導性シート1の面方向SDに成す角度の算術平均(無機粒子6の熱伝導性材料2(葛折り加工前シート)に対する配向角度α)は、例えば、25度以下、好ましくは、20度以下であり、通常、0度以上である。
【0125】
なお、無機粒子6の熱伝導性材料2(葛折り加工前シート)に対する配向角度αは、熱伝導性材料2(葛折り加工前シート)を厚み方向に沿ってクロスセクションポリッシャー(CP)により切断加工して、それにより現れる断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で、200個以上の無機粒子6を観察できる視野の倍率で写真撮影し、得られたSEM写真より、無機粒子6の長手方向LDの、熱伝導性材料2(葛折り加工前シート)の長手方向SD(厚み方向TDに直交する方向)に対する傾斜角αを取得し、その平均値として算出される。
【0126】
これにより、熱伝導性材料2(葛折り加工前シート)の面方向SDの熱伝導率は、例えば、4W/m・K以上、好ましくは、5W/m・K以上、より好ましくは、10W/m・K以上、さらに好ましくは、15W/m・K以上、とりわけ好ましくは、25W/m・K以上であり、通常、200W/m・K以下である。
【0127】
熱伝導性材料2(葛折り加工前シート)の面方向SDの熱伝導率が上記範囲に満たないと、面方向SDの熱伝導性が十分でないため、そのような面方向SDの熱伝導性が要求される放熱用途に用いることができない場合がある。
【0128】
なお、熱伝導性材料2(葛折り加工前シート)の面方向SDの熱伝導率は、パルス加熱法により測定する。パルス加熱法では、キセノンフラッシュアナライザー「LFA−447型」(NETZSCH社製)が用いられる。
【0129】
また、熱伝導性材料2(葛折り加工前シート)の厚み方向TDの熱伝導率は、例えば、0.5〜15W/m・K、好ましくは、1〜10W/m・Kである。
【0130】
なお、熱伝導性材料2(葛折り加工前シート)の厚み方向TDの熱伝導率は、パルス加熱法、レーザーフラッシュ法またはTWA法により測定する。パルス加熱法では、上記と同様のものが用いられ、レーザーフラッシュ法では、「TC−9000」(アルバック理工社製)が用いられ、TWA法では、「ai−Phase mobile」(アイフェイズ社製)が用いられる。
【0131】
これにより、熱伝導性材料2(葛折り加工前シート)の面方向SDの熱伝導率の、熱伝導性シート1の厚み方向TDの熱伝導率に対する比(面方向SDの熱伝導率/厚み方向TDの熱伝導率)は、例えば、1.5以上、好ましくは、3以上、さらに好ましくは、4以上であり、通常、20以下である。
【0132】
また、熱伝導性材料2(葛折り加工前シート)は、JIS K 5600−5−1の円筒形マンドレル法に準拠する耐屈曲性試験において、下記の試験条件で評価したときに、破断が観察されないことが好適である。
【0133】
試験条件
試験装置:タイプI
マンドレル:直径10mm
屈曲角度:90度以上
熱伝導性材料2の厚み:0.3mm
好ましくは、熱伝導性材料2(葛折り加工前シート)は、上記した試験条件において、屈曲角度を180度に設定したときでも、破断が観察されないことが好適である。
【0134】
上記した屈曲角度での耐屈曲性試験において熱伝導性材料2(葛折り加工前シート)に破断が観察される場合には、熱伝導性材料2(葛折り加工前シート)に優れた柔軟性を付与することができない場合がある。
【0135】
次いで、この方法では、熱伝導性材料2(葛折り加工前シート)を、葛折り状に成形する。
【0136】
具体的には、まず、
図2(b)に示すように、所定形状の2つの金型11を用意する。
【0137】
金型11は、葛折り形状に形成されており、熱伝導性材料2(葛折り加工前シート)の厚み方向一方側(上側)および他方側(下側)において、熱伝導性材料2(葛折り加工前シート)から所定間隔を隔てて対向配置されている。
【0138】
次いで、この方法では、
図2(c)に示すように、熱伝導性材料2(葛折り加工前シート)を、それら2つの金型11の間で挟み込み、葛折り状に成形(プレス成形など)する。圧縮条件は、温度が、例えば、20〜150℃、好ましくは、20〜100℃である。なお、成形時には、必要により、加圧することができ、そのような場合において、圧力条件は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0139】
これにより、パス4および接続部5を形成でき、また、葛折り状の熱伝導性材料2(葛折り加工後シート)を得ることができる。
【0140】
このとき、上記したように、熱伝導性材料2(葛折り加工前シート)の面方向SDに沿って配向する無機粒子(好ましくは、窒化ホウ素粒子)は、葛折り成形後のパス4では、パス4の延びる方向に沿って配向し、また、接続部5では、接続部5の延びる方向に沿って配向する。
【0141】
そのため、熱伝導性材料2(葛折り加工後シート)において、パス4の延びる方向の熱伝導率、および、接続部5の延びる方向の熱伝導率は、上記した熱伝導性材料2(葛折り加工前シート)の面方向SDの熱伝導率と同様であり、より具体的には、例えば、4W/m・K以上、好ましくは、5W/m・K以上、より好ましくは、10W/m・K以上、さらに好ましくは、15W/m・K以上、とりわけ好ましくは、25W/m・K以上であり、通常、200W/m・K以下である。
【0142】
熱伝導性材料2において、パス4の延びる方向の熱伝導率が上記範囲であれば、熱伝導性シート1の厚み方向TDの熱伝導性を良好に確保できるため、厚み方向の熱伝導性が要求される放熱用途に用いることができる。
【0143】
次いで、この方法では、
図3(d)〜(g)に示すように、熱伝導性材料2(葛折り加工後シート)の凹部に、保形材3を充填する。
【0144】
具体的には、上記圧縮(プレス成形)後、まず、
図3(d)に示すように、2つの金型11のうちの上側を脱型する。これにより、互いに隣接する各パス4の間に、上方が開放される凹部8が形成される。
【0145】
次いで、この方法では、
図3(e)に示すように、その凹部8に、保形材3を充填する。
【0146】
保形材3の充填では、例えば、まず、樹脂を溶解させた後、凹部8に流入させ、次いで、樹脂の上面と、接続部5の表面とを、公知の方法により面合わせする。これにより、凹部8に、樹脂を充填する。
【0147】
その後、例えば、樹脂が熱硬化性樹脂である場合などには、好ましくは、その樹脂を、例えば、乾燥機などにより加熱し、半硬化(熱硬化)させる。
【0148】
なお、熱硬化性樹脂成分の加熱条件は、目的及び用途に応じて、適宜設定される。
【0149】
これにより、粘着性および接着性を備える保形材3が形成され、凹部8に充填される。
【0150】
次いで、この方法では、
図3(f)に示すように、下側の金型11を脱型し、下方が開放される凹部9を形成する。
【0151】
その後、この方法では、上記と同様にして、
図3(g)に示すように、凹部9に樹脂を充填し、半硬化させることにより、粘着性および接着性を備える保形材3を形成し、凹部9に充填する。
【0152】
これにより、熱伝導性シート1を得ることができる。
【0153】
得られた熱伝導性シート1の厚みは、例えば、10mm以下、好ましくは、5mm以下、通常、例えば、0.05mm以上、好ましくは、0.1mm以上である。
【0154】
熱伝導性シート1の面方向SDの熱伝導率が上記範囲に満たないと、面方向SDの熱伝導性が十分でないため、そのような面方向SDの熱伝導性が要求される放熱用途に用いることができない場合がある。
【0155】
なお、熱伝導性シート1の面方向SDの熱伝導率は、熱伝導性材料2(葛折り加工前シート)の面方向SDの熱伝導率と同様にして、測定できる。
【0156】
また、熱伝導性シート1の厚み方向TDの熱伝導率は、例えば、0.5W/m・K以上、好ましくは、1W/m・K以上、より好ましくは、2W/m・K以上、さらに好ましくは、3W/m・K以上、とりわけ好ましくは、5W/m・K以上であり、通常、100W/m・K以下である。
【0157】
熱伝導性シート1の厚み方向TDの熱伝導率が上記範囲であれば、厚み方向の熱伝導性が要求される放熱用途に用いることができる。
【0158】
なお、熱伝導性シート1の厚み方向TDの熱伝導率は、熱伝導性材料2(葛折り加工前シート)の厚み方向TDの熱伝導率と同様にして、測定できる。
【0159】
なお、このような熱伝導性シート1において、熱伝導性材料2の樹脂成分7が熱硬化性樹脂成分である場合には、熱伝導性材料2としては、上記したように、未硬化(あるいは半硬化(Bステージ状態))の熱伝導性材料2をそのまま用いることができ、さらに、例えば、その熱伝導性材料2を熱硬化させることによって、硬化後の熱伝導性材料2を作製することもできる。
【0160】
つまり、熱伝導性材料2においては、樹脂成分が熱硬化性樹脂成分である場合に、熱硬化の有無は特に限定されず、また、熱硬化させる場合には、そのタイミングは、必要および用途に応じて、適宜選択することができる。
【0161】
なお、熱伝導性材料2を熱硬化させるには、例えば、上記した熱プレスまたは乾燥機が用いられる。好ましくは、乾燥機が用いられる。かかる熱硬化の条件は、温度が、例えば、60〜250℃、好ましくは、80〜200℃であり、圧力が、例えば、100MPa以下、好ましくは、50MPa以下である。
【0162】
熱伝導性材料2として、好ましくは、半硬化(Bステージ状態)の熱伝導性材料2が挙げられる。
【0163】
熱伝導性材料2(とりわけ、面方向に沿って延びる接続部5が)が半硬化状態であれば、熱伝導性シート1の表面および裏面における、粘着性および接着性を向上させることができ、熱伝導性シート1を、任意の箇所に、作業性よく設置することができる。
【0164】
そして、このような熱伝導性シート1では、熱伝導性材料2における複数のパス4が、熱伝導性シート1の表面および/または裏面において連続しているため、パス4が互いに間隔を隔ててそれぞれ独立して配置されている場合に比べ、効率的に熱伝導でき、熱伝導性シート1の厚み方向TDにおける熱伝導率の向上を、図ることができる。
【0165】
また、このような熱伝導性シート1によれば、パス4が、熱伝導性シート1の面方向SDに沿って延びる接続部5により接続されるため、熱伝導性シート1の表面および/または裏面に与えられる熱を、より効率的に、熱伝導性シート1の厚み方向TDに沿って伝導させることができる。
【0166】
また、このような熱伝導性シート1では、熱伝導性材料2が、面方向に沿って延びる接続部5を備えているため、その面方向における熱伝導率の向上を図ることができる。
【0167】
さらに、このような熱伝導性シート1によれば、複数のパス4がすべて連続しているため、熱伝導性シート1の厚み方向における熱伝導率の、より一層の向上を図ることができる。
【0168】
そして、この熱伝導性シート1では、厚み方向TDの熱伝導性に優れている。
【0169】
そのため、取扱性に優れながら、厚み方向TDの熱伝導性に優れる熱伝導性シートとして、種々の放熱用途、具体的には、パワーエレクトロニクス技術に採用される熱伝導性シートとして、より詳しくは、例えば、LED放熱基板、電池用放熱材に適用される熱伝導性シートとして用いることができる。
【0170】
なお、上記した説明では、まず、上側の金型11を脱型し、上方が開放される凹部8に保形材3を充填した後、下側の金型11を脱型し、下方が開放される凹部9に保形材3を充填したが、保形材3の充填方法としては、これに限定されず、例えば、まず、下側の金型11を脱型し、下方が開放される凹部9に保形材3を充填した後、上側の金型11を脱型し、上方が開放される凹部8に保形材3を充填することもできる。さらには、例えば、上側の金型11と、下側の金型11とを一度に脱型し、上方が開放される凹部8と、下方が開放される凹部9との両方に、保形材3を一度に充填することもできる。
【0171】
図6は、本発明の熱伝導性シートの他の実施形態(熱伝導性材料が丸みを帯びるように葛折りされる形態)の概略斜視図を示す。なお、上記した各部に対応する部材については、以降の各図において同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0172】
上記した説明では、シート状の熱伝導性材料2を、折り曲げ部において角張った葛折状に成形したが、熱伝導性材料2の形状としては、これに限定されず、例えば、
図6に示すように、シート状の熱伝導性材料2を、折り曲げ部において丸みを帯びるように、葛折りすることもできる。
【0173】
具体的には、
図6において、熱伝導性材料2は、例えば、上記と同様にしてシート状に形成された後、丸みを帯びた所定形状の金型(図示せず)により圧縮(プレス成形)され、折り曲げ部において丸みを帯びるように、葛折りされている。
【0174】
また、保形材3は、その上面または底面が、熱伝導性シート1の表面または裏面から露出するとともに、接続部5の表面または裏面と面一となるように、配置されている。
【0175】
このような熱伝導性シート1によれば、熱伝導性材料2を葛折り状に成形するときに、その折り曲げ部における応力を分散させることができるため、熱伝導性材料2の破損を抑制し、製造効率の向上を図ることができる。
【0176】
図7は、本発明の熱伝導性シートの他の実施形態(パスが熱伝導性シートの表面のみで連続している形態)の概略斜視図を示す。
【0177】
また、上記した説明では、互いに隣接するパス4を、熱伝導性シート1の表面または裏面において、接続部5により交互に接続したが、例えば、
図7に示すように、互いに隣接するパス4を、熱伝導性シート1の表面のみにおいて、接続部5により接続することができる。
【0178】
具体的には、
図7において、複数(14つ)のパス4は、熱伝導性シート1の厚み方向(面方向と直交する方向)に沿って延びるように形成され、また、接続部5が、熱伝導性シート1の表面において、熱伝導性シート1の面方向に沿って延びるように形成されている。そして、この接続部5によって、各パス4が、すべて熱伝導性シート1の表面(厚み方向一方側)のみにおいて接続されている。これにより、すべてのパス4が、熱伝導性シート1の表面(厚み方向一方側)において、連続している。
【0179】
また、保形材3は、上記と同様にして、その底面が、熱伝導性シート1の裏面から露出するとともに、各パス4の下端部(裏面側の端部)と面一となるように、配置されている。
【0180】
このような熱伝導性シート1によれば、すべてのパス4が、熱伝導性シート1の表面において連続しているため、熱伝導性シート1の厚み方向一方側(表面)から他方側(裏面)への熱伝導性を、とりわけ向上させることができる。
【0181】
さらに、このような熱伝導性シート1では、接続部5が、熱伝導性シート1の表面において、その面方向に沿って延びる平板形状に形成されているため、熱伝導性シート1の熱伝導性シート1の表面における、面方向の熱伝導率の向上を、図ることができる。
【0182】
なお、図示しないが、上記と同様にして、接続部5を熱伝導性シート1の裏面において面方向に沿って延びるように形成し、その接続部5によって、すべてのパス4を、熱伝導性シート1の裏面のみにおいて連続させ、また、保形材3を、その上面が熱伝導性シート1の表面から露出するとともに、各パス4の上端部(表面側の端部)と面一となるように配置することもできる。
【0183】
このような熱伝導性シート1によれば、すべてのパス4が、熱伝導性シート1の裏面において連続しているため、熱伝導性シート1の厚み方向他方側(裏面)から一方側(表面)への熱伝導性を、とりわけ向上させることができる。
【0184】
さらに、このような熱伝導性シート1では、接続部5が、熱伝導性シート1の裏面において、その面方向に沿って延びる平板形状に形成されているため、熱伝導性シート1の熱伝導性シート1の裏面における、面方向の熱伝導率の向上を、図ることができる。
【0185】
図8は、本発明の熱伝導性シートの他の実施形態(パスが熱伝導性シートの表面および裏面の両面において連続している形態)の概略斜視図を示す。
【0186】
また、上記した説明では、互いに隣接するパス4を、熱伝導性シート1の表面または裏面において、接続部5により交互に接続したが、例えば、
図8に示すように、互いに隣接するパス4を、熱伝導性シート1の表面および裏面の両面において、接続部5により接続することができる。
【0187】
具体的には、
図8において、複数(14つ)のパス4は、熱伝導性シート1の厚み方向(面方向と直交する方向)に沿って延びるように形成され、また、接続部5が、熱伝導性シート1の表面および裏面の両側において、熱伝導性シート1の面方向に沿って延びるように形成されている。そして、これら接続部5によって、各パス4が、すべて、熱伝導性シート1の表面および裏面の両面において接続されている。これにより、すべてのパス4が、熱伝導性シート1の表面および裏面の両面において、連続している。
【0188】
また、保形材3は、互いに隣接するパス4の間を充填するとともに、互いに隣接するパス4、および、それらパス4を接続する表面および裏面の接続部5に囲まれるように、配置されている。
【0189】
このような熱伝導性シート1によれば、すべてのパス4が、熱伝導性シート1の表面および裏面の両面において連続しているため、熱伝導性シート1の厚み方向の熱伝導率を、より一層向上させることができる。
【0190】
さらに、このような熱伝導性シート1では、接続部5が、熱伝導性シート1の表面および裏面において、その面方向に沿って延びる平板形状に形成されているため、熱伝導性シート1の熱伝導性シート1の表面および裏面における、面方向の熱伝導率の向上を、図ることができる。
【0191】
図9は、本発明の熱伝導性シートの他の実施形態(断面視略コの字状に形成された熱伝導性材料が複数設けられる形態)の概略斜視図を示す。
【0192】
また、上記した説明では、熱伝導性材料2を1枚のシートとして形成し、すべてのパス4を連続させたが、少なくとも2つのパス4が連続していればよく、例えば、
図9に示すように、熱伝導性材料2を断面視略コの字状の熱伝導ユニット12に形成するとともに、その熱伝導ユニット12を、間隔を隔てて複数(7つ)設けることもできる。
【0193】
具体的には、
図9において、熱伝導ユニット12は、1対(2つ)のパス4と、そのパス4を熱伝導性シート1の表面において接続する接続部5とを備え、断面視略コの字状に形成されている。
【0194】
そして、このような熱伝導ユニット12は、熱伝導性シート1の面方向に所定間隔を隔てて複数(7つ)配置されている。
【0195】
また、保形材3は、各熱伝導ユニット12の1対のパス4の間に充填され、その底面が、熱伝導性シート1の裏面から露出するとともに、各パス4の下端部(裏面側の端部)と面一となるように、配置されている。
【0196】
また、保形材3は、各熱伝導ユニット12の間にも充填され、その上面および底面が、熱伝導性シート1の表面および裏面から露出するとともに、上面が各接続部5の表面と面一となり、底面が各パス4の下端部(裏面側の端部)と面一となるように、配置されている。
【0197】
このような熱伝導性シート1によれば、接続部5の数、すなわち、熱伝導性材料2の量を低減できるため、コスト性を向上することができる。
【0198】
図10は、本発明の熱伝導性シートの他の実施形態(熱伝導性材料が断面視略V字波状に形成される形態)の概略斜視図を示す。
【0199】
また、上記した説明では、熱伝導性材料2を葛折り状に成形し、各パス4を、面方向に沿って延びる接続部5により接続したが、例えば、
図10に示すように、熱伝導性材料2を波形形状、より具体的には、断面視略V字波状(鋸刃状)に成形し、各パス4を、接続部5を用いることなく連続させることもできる。
【0200】
具体的には、
図10において、複数(14つ)のパス4は、熱伝導性シート1の面方向と交差する方向に沿って延びるように形成され、それら各パス4が、熱伝導性シート1の表面または裏面において連続している。
【0201】
また、保形材3は、略三角柱状に形成されており、互いに隣接するパス4の間を充填するとともに、その底面が、熱伝導性シート1の表面または裏面から露出するように、配置されている。
【0202】
このような熱伝導性シート1によれば、パス4が断面視において傾斜するように形成されるため、パス4を熱伝導性シート1の厚み方向に沿って(断面視において傾斜しないように)形成する場合に比べ、熱伝導性シート1の面方向の熱伝導率の向上を図ることができる。
【0203】
図11は、本発明の熱伝導性シートの他の実施形態(熱伝導性材料が断面視略S字波状に形成される形態)の概略斜視図を示す。
【0204】
また、上記した説明では、熱伝導性材料2を葛折り状に成形し、各パス4を、面方向に沿って延びる接続部5により接続したが、例えば、
図11に示すように、熱伝導性材料2を波形形状、より具体的には、断面視略S字波状に成形し、各パス4を、接続部5を用いることなく連続させることができる。
【0205】
具体的には、
図11において、複数(14つ)のパス4は、熱伝導性シート1の面方向と交差する方向に沿って延びるように形成され、それら各パス4が、熱伝導性シート1の表面または裏面において連続している。
【0206】
また、保形材3は、互いに隣接するパス4の間を充填するとともに、その表面または底面が、熱伝導性シート1の表面または裏面から露出するように、配置されている。
【0207】
このような熱伝導性シート1によれば、パス4が断面視において傾斜するように形成されるため、パス4を熱伝導性シート1の厚み方向に沿って(断面視において傾斜しないように)形成する場合に比べ、熱伝導性シート1の面方向の熱伝導率の向上を図ることができる。
【0208】
さらに、このような熱伝導性シート1によれば、熱伝導性材料2を断面視略S字状に成形するときに、例えば、葛折り状に成形する場合などに比べ、成形時(折り曲げ時)における応力を分散させることができるため、熱伝導性材料2の破損を抑制し、製造効率の向上を図ることができる。
【0209】
図12は、本発明の熱伝導性シートの他の実施形態(熱伝導性材料が断面視略ギア歯型状に形成される形態)の概略斜視図を示す。
【0210】
また、上記した説明では、所定形状の金型11を用いることにより、熱伝導性材料2を葛折り状に成形したが、熱伝導性材料2の成形方法としては、これに限定されず、例えば、歯車ロール(図示せず)を用いることもできる。
【0211】
具体的には、この方法では、例えば、2つの歯車ロールの間に、上記と同様にしてシート状に形成された熱伝導性材料2を通過させることにより、熱伝導性材料2を、断面視において歯車ロールの歯型(ギア歯型)状となるように成形できる。
【0212】
これにより、複数(14つ)のパス4は、
図12に示すように、熱伝導性シート1の面方向と交差する方向に沿って延びるように形成され、それら各パス4が、すべて、熱伝導性シート1の表面または裏面において、接続部5により接続されている。
【0213】
また、保形材3は、断面視略台形の略四角柱状に形成され、互いに隣接するパス4の間を充填するとともに、その上底面または下底面が、熱伝導性シート1の表面または裏面から露出するように、配置されている。
【0214】
このような熱伝導性シート1では、熱伝導性材料2が歯車ロールの間を通過することにより成形されるため、その熱伝導性材料2を連続的に成形することができ、金型11を用いる場合などに比べ、製造効率の向上を図ることができる。
【0215】
また、このような熱伝導性シート1によれば、パス4が断面視において傾斜するように形成されるため、パス4を熱伝導性シート1の厚み方向に沿って(断面視において傾斜しないように)形成する場合に比べ、熱伝導性シート1の面方向の熱伝導率の向上を図ることができる。
【実施例】
【0216】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。
【0217】
実施例1
(熱伝導性材料の製造)
エポキシモノマーであるオンコートEX−1020(ナガセケムテックス社製)3g、イミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤であるキュアゾール2PZ(四国化成社製)の5質量%メチルエチルケトン溶液3g、および、窒化ホウ素粒子であるPT−110(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)12gを混合した後、50℃雰囲気下で30分間撹拌して、メチルエチルケトンを揮発させた混合物を調製した。
【0218】
次いで、得られた混合物をシリコーン処理した2枚の離型フィルムで挟み込み、それらを真空加熱プレス機によって、80℃、10Paの雰囲気(真空雰囲気)下、5トンの荷重(20MPa)で、2分間、熱プレスすることにより、厚み0.2mmのプレスシートを得た(
図5(a)参照)。
【0219】
その後、得られたプレスシートを、プレスシートの面方向に投影したときに、複数個に分割されるように切断することにより分割シートを得(
図5(b)参照)、続いて、分割シートを厚み方向に積層して積層シートを得た(
図5(c)参照)。
【0220】
続いて、得られた積層シートを、上記と同様の真空加熱プレス機によって、上記と同様の条件で熱プレスした(
図5(a)参照)。
【0221】
次いで、上記した切断、積層および熱プレスの一連の操作(
図5参照)を、2回繰り返して(合計プレス回数:3回)、厚み0.2mmの熱伝導性材料(シート状1次成形物)を得た(
図2(a)および
図4参照)。
(熱伝導性シートの製造)
上記熱伝導性材料(シート状1次成形物)を、葛折り状に形成された一組の刃状金型にはさみ、金型間距離が200μmとなるようにシート状1次成形物(熱伝導性材料)を圧縮成形した(
図2(b)〜(c)参照)後、片側の金型を脱型した(
図3(d)参照)。
【0222】
次いで、エポキシモノマーであるJER828(ジャパンエポキシレジン社製)10g、および、イミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤であるキュアゾール2PZ(四国化成社製)0.5gを混合および溶解させたものを、脱型した側にポッティングした。その後、シリコーン処理した離型フィルムを被せて、ゴムローラーで展開することにより、金型加工により凹部となった部分をエポキシ樹脂で充填し、次いで、80℃で30分間加熱することにより、エポキシ樹脂を半硬化状態とした成形物(保形材)を得た(
図3(e)参照)。
【0223】
その後、さらに、もう片側の金型を脱型し(
図3(f)参照)、上記と同様にエポキシ樹脂を充填および展開し、半硬化状態とすることにより、厚み1mmの熱伝導性シートを得た(
図3(g)参照)。
【0224】
比較例1
(熱伝導性材料の製造)
実施例1の(熱伝導性材料の製造)と同様にして、熱伝導性材料(シート状1次成形物)を得た。
(熱伝導性シートの製造)
エポキシモノマーであるJER828(ジャパンエポキシレジン社製)10g、および、イミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤であるキュアゾール2PZ(四国化成社製)0.5gを混合および溶解させたものを、シリコーン処理した離型フィルム上に展開し、80℃で30分間加熱することにより、エポキシ樹脂を半硬化状態とし、これにより、シート状エポキシ成形物を得た。
【0225】
次いで、得られたシート状エポキシ成形物と、上記(熱伝導性材料の製造)において得られた熱伝導性材料(シート状1次成形物)とを交互に積層し、ブロック状に成形したものを、130℃で30分間加熱することにより、エポキシ樹脂を完全硬化させた。
【0226】
その後、得られた成形物の積層面に対して、垂直な方向にスライスすることにより、厚み1mmの熱伝導性シートを得た。
【0227】
(評価)
(1)熱伝導率
実施例1および比較例1により得られた熱伝導性シートについて、熱伝導率を測定した。
【0228】
すなわち、厚み方向(TD)における熱伝導率を、「TC−9000」(アルバック理工社製)を用いるレーザーフラッシュ法により測定した。
【0229】
その結果を表1に示す。
(2)初期接着力試験
2−1.ノートパソコン用実装基板に対する初期接着力試験
実施例1および比較例1により得られた熱伝導性シートについて、複数の電子部品が実装されたノートパソコン用実装基板に対する初期接着力試験(1)および(2)を実施した。
【0230】
すなわち、熱伝導性シートを水平方向に沿うノートパソコン用実装基板の表面(電子部品が実装される側)に、シリコーン樹脂からなるスポンジロールを用いて、80℃で加熱圧着して仮固定して、10分間放置した後、ノートパソコン用実装基板を上下方向に沿うように設置した(初期接着力試験(2))。
【0231】
その結果、実施例1の熱伝導性シートはノートパソコン用実装基板から脱落しなかった。一方、比較例1の熱伝導性シートは、ノートパソコン用実装基板から脱落した。
【0232】
続いて、ノートパソコン用実装基板を、実施例1の熱伝導性シートが下側を指向するように(つまり、仮固定直後の状態から上下反転するように)設置した(初期接着力試験(1))。
【0233】
その結果、実施例1の熱伝導性シートはノートパソコン用実装基板から脱落しなかった。
【0234】
2−2.ステンレス基板に対する初期接着力試験
実施例1および比較例1により得られた熱伝導性シートについて、ステンレス基板(SUS304製)に対する初期接着力試験(1)および(2)を、上記と同様にして実施した。
【0235】
その結果、初期接着力試験(1)および(2)の両方において、実施例1の熱伝導性シートはステンレス基板から脱落しなかった。一方、比較例1の熱伝導性シートは、初期接着力試験(2)においてステンレス基板から脱落し、初期接着力試験(1)に供することができなかった。
【0236】
【表1】