特許第5698949号(P5698949)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5698949優れたデータ保持特性を有する可変抵抗材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698949
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】優れたデータ保持特性を有する可変抵抗材料
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/105 20060101AFI20150319BHJP
   H01L 45/00 20060101ALI20150319BHJP
   H01L 49/00 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   H01L27/10 448
   H01L45/00 A
   H01L45/00 Z
   H01L49/00 Z
【請求項の数】41
【外国語出願】
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2010-229499(P2010-229499)
(22)【出願日】2010年10月12日
(65)【公開番号】特開2011-124545(P2011-124545A)
(43)【公開日】2011年6月23日
【審査請求日】2013年9月10日
(31)【優先権主張番号】61/251,245
(32)【優先日】2009年10月13日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/775,078
(32)【優先日】2010年5月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505052836
【氏名又は名称】オヴォニクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】カール シェル
(72)【発明者】
【氏名】ウォロディミール ツバティ
【審査官】 鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−502848(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/063950(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/105
H01L 45/00
H01L 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料であって、
相変化成分と、
前記相変化成分中に分散された不活性成分と
を含み、
前記相変化成分は、前記複合材料において23%から45%の原子濃度を有するGeと、前記複合材料において3%から16%の原子濃度を有するSbと、Teとを含み、
前記複合材料における前記Sbの原子濃度の前記Geの原子濃度に対する比は0.07から0.68であり、
前記複合材料における前記Geの原子濃度の前記Teの原子濃度に対する比は0.6から1.1であり、
前記不活性成分は誘電材料を含み、
前記複合材料における前記誘電材料に係る構成元素の原子濃度の合計が5%から50%である複合材料。
【請求項2】
前記複合材料における前記Sbの原子濃度は5%から15%である、請求項に記載の複合材料。
【請求項3】
前記複合材料における前記Geの原子濃度は30%から40%である、請求項に記載の複合材料。
【請求項4】
前記複合材料における前記Sbの原子濃度は6.5%から12%である、請求項に記載の複合材料。
【請求項5】
前記複合材料における前記Sbの原子濃度の前記Geの原子濃度に対する比は0.14から0.58である、請求項に記載の複合材料。
【請求項6】
前記不活性成分の融点が前記相変化成分の融点よりも高い、請求項1に記載の複合材料。
【請求項7】
前記複合材料における前記誘電材料に係る構成元素の原子濃度の合計が9%から35%である、請求項に記載の複合材料。
【請求項8】
前記複合材料における前記Sbの原子濃度は5%から15%である、請求項に記載の複合材料。
【請求項9】
前記複合材料における前記Geの原子濃度は30%から40%である、請求項に記載の複合材料。
【請求項10】
前記複合材料における前記Sbの原子濃度の前記Geの原子濃度に対する比は0.14から0.58である、請求項に記載の複合材料。
【請求項11】
前記複合材料における前記Geの原子濃度の前記Teの原子濃度に対する比は0.75から1.0である、請求項10に記載の複合材料。
【請求項12】
前記複合材料における前記誘電材料に係る構成元素の原子濃度の合計は13%から30%である、請求項11に記載の複合材料。
【請求項13】
前記複合材料における前記Sbの原子濃度は6.5%から12%である、請求項12に記載の複合材料。
【請求項14】
前記複合材料における前記Sbの原子濃度の前記Geの原子濃度に対する比は0.16から0.48である、請求項13に記載の複合材料。
【請求項15】
前記複合材料における前記Geの原子濃度の前記Teの原子濃度の比は0.8から0.95である、請求項14に記載の複合材料。
【請求項16】
前記複合材料における前記誘電材料に係る構成元素の原子濃度の合計が18%から25%である、請求項15に記載の複合材料。
【請求項17】
前記複合材料における前記Sbの原子濃度の前記Geの原子濃度に対する比が0.22から0.48である、請求項16に記載の複合材料。
【請求項18】
前記複合材料における前記Sbの原子濃度は5%から9%である、請求項に記載の複合材料。
【請求項19】
前記複合材料における前記Sbの原子濃度の前記Geの原子濃度に対する比は0.16から0.28である、請求項18に記載の複合材料。
【請求項20】
前記複合材料における前記Geの原子濃度は30%から40%である、請求項19に記載の複合材料。
【請求項21】
前記複合材料における前記Geの原子濃度の前記Teの原子濃度に対する比は0.75から1.0である、請求項20に記載の複合材料。
【請求項22】
前記複合材料における前記誘電材料に係る構成元素の原子濃度の合計は13%から30%である、請求項21に記載の複合材料。
【請求項23】
前記複合材料における前記Geの原子濃度の前記Teの原子濃度に対する比は0.8から0.95である、請求項22に記載の複合材料。
【請求項24】
前記複合材料における前記誘電材料に係る構成元素の原子濃度の合計が18%から25%である、請求項23に記載の複合材料。
【請求項25】
前記複合材料における前記Sbの原子濃度は13%から16%である、請求項に記載の複合材料。
【請求項26】
前記複合材料における前記Sbの原子濃度の前記Geの原子濃度に対する比は0.43から0.53である、請求項25に記載の複合材料。
【請求項27】
前記複合材料における前記Geの原子濃度は30%から40%である、請求項26に記載の複合材料。
【請求項28】
前記複合材料における前記Geの原子濃度の前記Teの原子濃度に対する比は0.75から1.0である、請求項27に記載の複合材料。
【請求項29】
前記複合材料における前記誘電材料に係る構成元素の原子濃度の合計は13%から30%である、請求項28に記載の複合材料。
【請求項30】
前記複合材料における前記Geの原子濃度の前記Teの原子濃度に対する比は0.8から0.95である、請求項29に記載の複合材料。
【請求項31】
前記複合材料における前記誘電材料に係る構成元素の原子濃度の合計が18%から25%である、請求項30に記載の複合材料。
【請求項32】
前記誘電材料は、前記複合材料において2%から15%の原子濃度を有するSiを含む、請求項に記載の複合材料。
【請求項33】
前記複合材料における前記Sbの原子濃度は5%から15%である、請求項32に記載の複合材料。
【請求項34】
前記複合材料における前記Siの原子濃度は3%から10%である、請求項33に記載の複合材料。
【請求項35】
記複合材料における前記Geの原子濃度は30%から40%であり
前記複合材料における前記Geの原子濃度の前記Teの原子濃度に対する比は0.75から1.0である、請求項34に記載の複合材料。
【請求項36】
前記複合材料における前記Sbの原子濃度は5%から9%である、請求項32に記載の複合材料。
【請求項37】
前記複合材料における前記Siの原子濃度は5%から8%である、請求項36に記載の複合材料。
【請求項38】
記複合材料における前記Geの原子濃度は30%から40%であり
前記複合材料における前記Geの原子濃度の前記Teの原子濃度に対する比は0.75から1.0である、請求項37に記載の複合材料。
【請求項39】
前記複合材料における前記Sbの原子濃度は13%から16%である、請求項32に記載の複合材料。
【請求項40】
前記複合材料における前記Siの原子濃度は5%から8%である、請求項39に記載の複合材料。
【請求項41】
記複合材料における前記Geの原子濃度は30%から40%であり
前記複合材料における前記Geの原子濃度の前記Teの原子濃度に対する比は0.75から1.0である、請求項40に記載の複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、向上したデータ保持特性を示す可変抵抗材料及びデバイスに関する。詳しくは、本願発明は、高い熱安定性を有する相変化材料及びデバイスに関する。最も詳しくは、本願発明は、熱的誘導結晶化に対して高い安定性を示す相変化材料及びデバイスに関する。本願発明はまた、高温において向上したデータ保持が可能なプログラミング方法も与える。
【0002】
(関連出願の情報)
本願は、2009年10月13日出願の「優れたデータ保持特性を有する可変抵抗材料」という名称の米国特許仮出願第61/251,245号に基づく優先権を主張する。これは、本明細書に参照として組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
可変抵抗材料は、次世代電子ストレージコンピューティングデバイスのための有望な活性材料である。可変抵抗材料とは、電気抵抗が異なる2以上の状態を有する材料である。当該材料は、当該材料の抵抗変化が現れる、当該材料内部の化学的、電子的、又は物理的な変態を誘発するエネルギーを与えることによって当該状態間を行ったり来たりするプログラミングができる。当該異なる抵抗状態は区別可能であり、データを格納又は処理するメモリ状態として使用することができる。可変抵抗材料は、不揮発性能という利益を与える。
【0004】
相変化材料は、有望なクラスの可変抵抗材料である。相変化材料は、2以上の別個の構造状態間で、好ましくは可逆的な変態を生じさせることができる材料である。当該別個の構造状態は、例えば、結晶構造、原子配置、秩序若しくは無秩序、分別結晶化度、2以上の異なる構造状態の相対比、又は物理的(例えば電気的、光学的、磁気的、機械的)若しくは化学的特性に基づいて区別される。通常の実施形態では、当該2以上の別個の構造状態は、相変化材料の結晶相領域とアモルファス相領域との比を異ならせることを含む。ここで、当該相変化材料は、当該異なる状態間で可逆的に変態可能である。相変化材料は結晶状態にて低い抵抗率を有する一方、アモルファス状態では高い抵抗率を有する。広範囲にわたり抵抗率を連続的に変化させることは、相変化材料体積内で結晶相領域とアモルファス相領域との相対比を制御することにより達成することができる。構造状態間の変態の可逆性によって、複数の動作サイクルにわたり当該材料を再使用することができる。
【0005】
典型的には、相変化材料のような活性可変抵抗材料を2つの電極間に配置することにより、プログラミング可能抵抗デバイスが作成される。当該デバイスの動作は、当該2つの電極間及び当該活性材料にわたり電気信号を与えることにより有効にされる。通常のアプリケーションにおいて相変化材料は、メモリデバイスの活性材料として使用することができる。ここで、別個のデータ値が異なる構造状態に関連付けられ、各データ値は相変化材料の別個の抵抗に対応する。本明細書において、メモリ動作において用いられる異なる構造状態は、相変化材料のメモリ状態又は抵抗状態と称する。本明細書においてプログラミング動作とも称する相変化メモリデバイスのライト動作は、当該相変化材料に電気パルスを印加してその構造状態を、意図されたデータ値に関連付けられた抵抗を有する状態に変化させる。リード動作は、当該2つの電極間に電流又は電圧信号を与えて当該抵抗を測定することによって行われる。当該リード信号のエネルギーは、相変化材料の構造状態の擾乱が回避できる程度十分に低い。
【0006】
相変化メモリデバイスは通常、バイナリモードで動作する。バイナリモードでは、メモリは2つの構造状態間で動作する。リードマージンを向上させてリードエラーを最小限にするべく、バイナリ動作のための当該2つの構造状態は、大きな抵抗コントラストが得られるように選択される。相変化材料の抵抗値範囲は、セット抵抗を有するセット状態とリセット抵抗を有するリセット状態とにより制限される。セット状態は、電気的特性が主に相変化材料の結晶部分によって制御される低抵抗構造状態である。また、リセット状態は、電気的特性が主に相変化材料のアモルファス部分によって制限される高抵抗構造状態である。相変化材料自体の抵抗に加えて、当該デバイスのセット及びリセット状態の被測定抵抗は、周囲の電極及び要素に関連付けられた直列抵抗も含む。セット状態及びリセット状態は通常バイナリ動作で用いられ、従来のバイナリ「0」及び「1」の状態に関連付けられる。
【0007】
相変化メモリの商用機会を拡大するには、新規な相変化組成物、デバイス構造、及び向上した性能をもたらすプログラミング方法を特定することが望ましい。多くのアプリケーションは、高い温度で安定なメモリを必要とする。例えば自動車分野では、エンジン又はエンジン近傍における高温環境下で動作できるメモリが必要とされている。現行の自動車設計基準(AEC−Q100−005)は、温度150℃にて1000時間の安定したメモリ性能を要求する。
【0008】
高い熱安定性は、メモリ又はメモリを含むコンポーネントの製造に使用されるプロセスでも望ましい。かかるプロセスでは、メモリ材料は、特定の状態で形成及び/又はプログラミングされる。このため、高温の工程を要求し得るバックエンドプロセシング又は製品集積化の間中、再プログラミングの不便を生じることなく当該状態を保持しておくことが望ましい。一例では、メモリを含むウェハが最初に作成、プローブ、及びパッケージされ、当該パッケージ部品はその後プリント回路基板上に取り付けられる必要がある。典型的なプロセスにおいて取り付けは、高温のはんだリフロープロセスによって完了する。現行のはんだリフロープロセスは、環境に優しい鉛フリーはんだを特に重用する。このためには、パッケージ部品を〜250℃の温度に約15秒間さらす必要がある。
【0009】
熱安定性は、アーカイブメモリアプリケーションにおいても重要である。かかるアプリケーションにおいて情報は、メモリに格納されて長期間利用可能とされることが見込まれる。相変化材料は、その不揮発性ゆえに、アーカイブストレージアプリケーションにとって特に望ましい。電力を消費することなくメモリ状態がプログラミングされたままとなるからである。アーカイブアプリケーションにおいて有効に機能するべく、メモリ材料は気候温度の極限において数年間又はそれ以上の期間、その情報を保持することが望ましい。例えば、50℃(又は安全マージンを与えるべくこれ以上)の温度において10年間、メモリ材料が安定にデータを格納かつ保持することができる場合、空調の必要性なしでアーカイブストレージを与えることができる。
【0010】
相変化材料の熱安定性は究極的には、熱的変態を生じさせるメモリ状態として使用される結晶、アモルファス、及び結晶・アモルファス混合構造状態の傾向によって制御される。高温においてメモリ状態が熱的誘導構造変態に抵抗する程度は、相変化メモリの高温アプリケーションへの適合性を支配する。特定のメモリ状態に関連付けられたアモルファス相と結晶相との相対比の熱的誘導変態は、当該メモリ状態を消去し又は変化させる作用を有する。その結果、初期に相変化メモリデバイスにプログラミングされた情報が消失してメモリは故障する。
【0011】
従来の相変化メモリ材料のデータ保持特性は、多くの高温アプリケーションの要求に応えるには不十分である。周知の相変化組成物は、150℃を越える温度にさらされると急速な熱的誘導構造変態を受ける。従来技術には、大きな熱安定性を示す相変化組成物の必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,166,758号明細書
【特許文献2】米国特許第5,296,716号明細書
【特許文献3】米国特許第5,534,711号明細書
【特許文献4】米国特許第5,536,947号明細書
【特許文献5】米国特許第5,596,522号明細書
【特許文献6】米国特許第6,087,674号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】“Amorphous Semiconductors for Switching, Memory, and Imaging Applications”, IEEE Transactions on Electron Devices, vol. ED-20, p. 91 - 105 (1973) by S.R. Ovshinsky and H. Fritzsche
【発明の概要】
【0014】
本願発明は、高温アプリケーションに適した複合不揮発メモリ材料及びデバイスを与える。当該複合材料は、可変抵抗材料を含む第1成分と、不活性材料を含む第2成分とを含む。可変抵抗成分は、メモリ機能を与えるべく抵抗が変化する複数状態間でプログラミング可能である一方、不活性成分はそうではない。不活性成分の構造は、可変抵抗成分のプログラミング状態において一般的に安定のままである。一実施例では、当該複合組成物は、別個領域の可変抵抗材料と、別個領域の不活性成分とを含む。一実施例では、別個領域の不活性成分は、別個領域の可変抵抗材料と混合されるか又はこれの間に分散される。
【0015】
一実施例では、当該複合材料中の不活性成分の濃度(その構成元素の原子濃度の合計として表される)は、5%から50%である。他実施例では、当該複合材料中の不活性成分の濃度(その構成元素の原子濃度の合計として表される)は9%から35%である。さらなる他実施例では、当該複合材料中の不活性成分の濃度(その構成元素の原子濃度の合計として表される)は13%から30%である。よりさらなる実施例では、当該複合材料中の不活性成分の濃度(その構成元素の原子濃度の合計として表される)は18%から25%である。
【0016】
一実施例では、可変抵抗成分は相変化材料を含む。相変化材料は、Ge、Sb、及びTeの1以上を含む。一実施例では、Sbの原子濃度は3%から16%である。他実施例では、Sbの原子濃度は5%から15%である。さらなる他実施例では、Sbの原子濃度は6.5%から12%である。よりさらなる実施例では、Sbの原子濃度は5%から9%である。付加的な実施例では、Sbの原子濃度は13%から16%である。
【0017】
一実施例では、Sb/Ge比は0.07から0.68である。他実施例では、Sb/Ge比は0.14から0.58である。さらなる他実施例では、Sb/Ge比は0.16から0.48である。よりさらなる実施例では、Sb/Ge比は0.22から0.48である。さらなる他実施例では、Sb/Ge比は0.16から0.28である。付加的な実施例では、Sb/Ge比は0.43から0.53である。一実施例では、Ge/Te比は0.6から1.1である。他実施例では、Ge/Te比は0.75から1.0である。さらなる他実施例では、Ge/Te比は0.8から0.95である。
【0018】
一実施例では、複合材料は、Sbを含む相変化成分と、Siを含む誘電成分とを含む。一実施例では、Sbの原子濃度は3%から16%であり、Siの原子濃度は2%から15%である。他実施例では、Sbの原子濃度は5%から15%であり、Siの原子濃度は3%から10%である。他実施例では、Sbの原子濃度は5%から9%であり、Siの原子濃度は5%から8%である。他実施例では、Sbの原子濃度は13%から16%であり、Siの原子濃度は5%から8%である。相変化成分は、Sbに加えてGeをさらに含んでよい。一実施例では、Geの原子濃度は23%から45%である。他実施例では、Geの原子濃度は30%から40%である。誘電成分は、Siに加えてO又はNを含んでよい。一実施例では、O/Si比は1.0から3.0である。他実施例では、O/Si比は1.5から2.5である。さらなる他実施例では、N/Si比は1.0から2.0である。さらなる実施例では、N/Si比は1.1から1.5である。
【0019】
不活性成分は、当該相変化成分にプログラミングするべく使用される条件において電気的に不活性の材料を含む。また、当該相変化成分に対して化学的に非反応性であることが好ましい。当該不活性成分は典型的に、金属又は半導体元素の酸化物又は窒化物である。一実施例では、不活性成分は誘電材料を含む。不活性成分のための代表的材料は、シリコン又はゲルマニウムの酸化物(例えばSiO、SiO、GeO、又はGeO)、シリコン又はゲルマニウムの窒化物(例えばSi、SiN、又はGeN)、シリコンのオキシ窒化物、Al、AlN、TaO、TeO、遷移金属の酸化物、又は遷移金属の窒化物を含む。一実施例では、不活性材料は、可変抵抗材料よりも高い融解温度を有する。
【0020】
複合材料は、優先的に成長支配プロセスにより結晶化する材料を含む相変化成分と、誘電成分とを含んでよい。当該複合物は、主にアモルファス相から六方最密構造を有する結晶相まで結晶化する材料を含む相変化成分と、誘電成分とを含んでよい。一実施例では、相変化成分の結晶化は、準安定結晶相の中を進むことなく生じる。他実施例では、相変化成分の結晶化は、面心立方相の中を進むことなく生じる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A】初期リセット状態にあるカルコゲナイド材料のI−V特性を示す。
図1B】初期セット状態にあるカルコゲナイド材料のI−V特性を示す。
図2】カルコゲナイド相変化材料に対する抵抗対エネルギー/電流のプロットを示す。
図3】電子デバイスの2電極間に配置された可変抵抗成分及び不活性成分を含む複合材料を示す。
図4】本願発明の範囲内のデータ保持又は他の組成特性を試験するべく使用される相変化デバイス構造を示す。
図5】本願発明に係る代表的な複合活性材料(サンプル7)を含むいくつかのデバイスに対する260℃における抵抗の経時的進展を示す。
図6】本願発明に係る代表的な複合材料(サンプル7)を含むデバイスに対する240℃から270℃までの様々な温度における抵抗の経時的進展を示す。
図7】本願発明に係る代表的な複合材料(サンプル7)を含むデバイスに対する温度の関数としたデータ保持時間のアレニウスプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本願発明は所定の好ましい実施例に関して記載される。ただし、本明細書に記載の利点及び特徴のすべてを与えるわけではない実施例を含む、当業者にとって明らかな他実施例もまた本願発明の範囲に属する。したがって、本願発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照することによってのみ規定される。本明細書に開示される組成範囲は、当該範囲に関連付けられた双方の端点を含む。
【0023】
本願発明は、高い熱安定性を示す不揮発性メモリ材料及びデバイスを与える。当該高い熱安定性は、本願発明に係るメモリ材料及びデバイスが高温において格納された情報を保持する性能を含む。当該増大した熱安定性により、当該メモリ材料及びデバイスのデータ保持特性及び動作特性の熱劣化が抑制される。本願発明はさらに、高温において安定なプログラミング状態を確立する不揮発性メモリデバイスをプログラミングする方法を与える。当該安定したプログラミング状態は熱劣化に耐性があり、高温に対するデータ完全性を維持する。
【0024】
本願発明に係る不揮発性メモリ材料は一般に、可変抵抗成分と不活性成分とを含む複合材料である。当該可変抵抗成分は活性不揮発メモリ材料として機能し、一実施例では相変化材料を含む。当該不活性成分自体は情報を格納しないが、当該可変抵抗成分のデータストレージ特性及び動作特性に影響を与えるべく使用される。一実施例では、不活性成分は誘電材料を含む。
【0025】
本願発明の利点を評価するには、代表的な可変抵抗材料及びデバイスの基本動作特性を調べて性能に対する温度の潜在的影響を評価することが有用である。以下の説明では、例示的可変抵抗材料としてカルコゲナイド相変化材料に焦点を置く。基本原理は、他の形態の相変化、状態変化、又は可変抵抗材料にも同等に当てはまる。これは例えば、ピニクチド、メモリスタ(memristor)材料、抵抗性ランダムアクセスメモリ(RRAM又はReRAM)材料、プログラミング可能メタライゼーション材料、ポリマーメモリ材料、金属ナノ粒子メモリ材料、又は、構造、物理特性、若しくは化学特性に基づいて区別可能な2以上の状態間で変態可能な他のクラスの材料である。
【0026】
カルコゲナイド系相変化メモリデバイス及びアレイの動作上の、カルコゲナイド材料の重要な特徴は、2以上の構造状態間の相変態を生じさせる能力にある。カルコゲナイド材料は、結晶状態、1以上の部分的結晶状態、及びアモルファス状態を含み得る構造状態を有する。結晶状態は、単結晶状態又は多結晶状態である。部分的結晶状態は、所定体積のカルコゲナイド又は相変化材料がアモルファス部分及び結晶部分を含む構造状態を称する。部分的結晶状態は本明細書において、結晶・アモルファス混合状態とも称する。一般に、複数の部分的結晶状態は、アモルファス部分と結晶部分との相対比に基づいて区別され得るカルコゲナイド又は相変化材料に対して存在する。分別結晶化度は、カルコゲナイド相変化材料の構造状態を特徴付ける一方法である。結晶状態の分別結晶化度は100%であり、アモルファス状態の分別結晶化度は0%であり、部分的結晶状態の分別結晶化度は、0%(アモルファス限界)から100%(結晶限界)の間で連続的に変化し得る。したがって、相変化カルコゲナイド材料は、0%から100%の分別結晶化度の間で包括的に変化する複数の構造状態間で変態することができる。
【0027】
構造状態間の変態は、当該カルコゲナイド材料に与えられるエネルギーによって誘発される。様々な形態のエネルギーが、結晶及びアモルファス部分の構造変態を誘発することができる。したがって、カルコゲナイド材料の分別結晶化度にも影響を与えることができる。適切な形態のエネルギーは、カルコゲナイド材料に電気、熱、又は光の影響を誘発する電気エネルギー、熱エネルギー、光エネルギー、又は他の形態のエネルギー(例えば粒子ビームエネルギー)の1以上を含む。分別結晶化度の連続的かつ可逆的な可変性は、カルコゲナイド材料のエネルギー環境を制御することによって達成することができる。カルコゲナイド材料のエネルギー環境を適切に制御することにより、結晶状態は部分結晶又はアモルファス状態へ変態され、部分結晶状態は、結晶、アモルファス、又は異なる部分的結晶状態へ変態され、アモルファス状態は、部分的結晶又は結晶状態へ変態され得る。構造変態を誘発する熱、電気、及び光エネルギーの使用に関する考慮を以下で説明する。
【0028】
構造変態を誘発する熱エネルギーの使用は、結晶からアモルファスへの又はアモルファスから結晶への相転移に関連する熱力学及び運動力学を利用する。アモルファス相は例えば、カルコゲナイド材料をその融解温度を超えて加熱し、かつ、結晶相形成の抑制に十分な速度で冷却することによって、部分的結晶又は結晶状態から形成することができる。結晶又は高分別結晶化度相は例えば、カルコゲナイド材料を、結晶ドメインの核生成及び/又は成長の有効化に十分な時間、結晶化温度を超えて加熱することによって、アモルファス又は部分的結晶状態から形成することができる。結晶化温度は融解温度よりも低く、結晶化が生じる最低温度に対応する。結晶化の駆動力は典型的に熱力学的である。これは、多くのカルコゲナイド材料における結晶又は部分的結晶状態の自由エネルギーがアモルファス状態の自由エネルギーよりも低い結果、分別結晶化度の増加に伴いカルコゲナイド材料の総エネルギーが減少するからである。結晶状態又は部分的結晶若しくはアモルファス状態内での結晶ドメインの形成(核生成及び成長)は、融解温度までは運動力学的に可能となる。その結果、加熱は、結晶相又はドメイン形成に必要な原子再配置を容易にするエネルギー付与による結晶化を促進する。
【0029】
部分的結晶状態の分別結晶化度は、当該部分的結晶状態の加熱温度若しくは時間を制御することによって又はアモルファス若しくは部分的結晶状態の冷却温度若しくは速度を制御することによって制御することができる。ピーク温度、加熱時間、及び冷却速度の適切な制御によって、分別結晶化度の全範囲にわたる構造状態をカルコゲナイド相変化材料に対して達成することができる。
【0030】
構造変態を誘発する電気エネルギーの使用は、カルコゲナイド材料への電気(電流又は電圧)パルスの印加に依存する。電気的に誘発される構造変態のメカニズムは、電流に対する抵抗によって生じるジュール加熱を含む。ジュール加熱は、電気エネルギーから熱エネルギーへの変換に対応し、カルコゲナイド材料の温度上昇を導く。電流密度を制御することによって当該温度が制御される。
【0031】
カルコゲナイド材料の結晶相部分は、有効なジュール加熱を与える電流密度を可能にするのに十分な導通性を有する。しかしながら、アモルファス相部分は、あまり導通性ではない。このため通常は、当該材料を結晶化温度まで加熱するのに十分な電流密度をサポートしない。しかしながら、以下で詳しく述べるが、多くのカルコゲナイド材料のアモルファス相は、しきい電圧よりも高い電圧を印加すると、高電導性の中間(動的)状態に電気的に切り替えることができる。当該中間状態において、当該材料は、ジュール加熱による結晶化温度まで当該材料を加熱するのに十分高い電流密度をサポートすることができる。カルコゲナイド相変化材料に印加される電気パルスの振幅及び/又は継続時間を制御することにより、結晶相とアモルファス相との制御された相互変換を介して分別結晶化度を連続的に変化させることができる。
【0032】
カルコゲナイド材料への電気エネルギーの影響は一般に、当該材料のI−V(電流−電圧)及びR−I(抵抗−電流)関係の面から描写される。I−V関係は、カルコゲナイド材料の電流応答を印加電圧の関数として示す。R−I関係は、カルコゲナイド材料の電気抵抗の変化を、印加電気エネルギーの結果として又はカルコゲナイド材料に印加された電流又は電圧パルスの振幅の関数として示す。R−I図上にプロットされた抵抗は、電流パルス(I)印加後の固定時間(t0)において測定された抵抗である。これは、当該メモリ状態に擾乱を与えない程度に十分低い電圧において測定される。カルコゲナイド材料のI−V及びR−I特性を、以下に簡単に説明する。
【0033】
多くのカルコゲナイド材料のI−V応答は、当該カルコゲナイド材料がより抵抗性の状態からより導通性の状態への変態を生じさせる電気スイッチング事象を示す。電気スイッチング事象は、存在するとしても、アモルファス相カルコゲナイド材料又は混合結晶アモルファス相カルコゲナイド材料にのみ観測されるのが一般的であり、結晶相カルコゲナイド材料では通常観測されない。以下でさらに詳細に説明するが、カルコゲナイド相変化材料の極限的な結晶相支配構造状態及びアモルファス相支配構造状態はそれぞれ通常、「セット」状態及び「リセット」状態と称する。図1A及び以下の電気スイッチングの説明は、カルコゲナイド材料が最初にリセット状態にあることを前提とする例示である。
【0034】
リセット状態にある代表的カルコゲナイド材料の電気スイッチング事象の概略図を図1Aに示す。図1Aの描写は、2つの離間配置された電極がカルコゲナイド材料に接触した2端子デバイス構成に対応する。また、電流Iは、当該2電極間を流れる電流に対応する。図1AのI−V曲線は、カルコゲナイド材料を流れる電流を、当該電極によって当該材料の両端に印加された電圧の関数として示す。当該材料のI−V特性は、図1Aに示される印加電圧の極性に関して対称的又はほぼ対称的であることが多い。便宜上、以下のカルコゲナイドスイッチング挙動の説明では、図1AのI−Vプロットの第1象限(電流及び電圧の双方が正である部分)を考える。極性を評価する類似の説明は、I−Vプロットの第3象限にも当てはまる。
【0035】
I−V曲線は、抵抗ブランチ及び導通ブランチを含む。当該ブランチは図1Aに示されている。抵抗ブランチは、当該材料を流れる電流が当該材料両端の印加電圧の弱関数(weak function)であって一般に比例するレジームである。かかるブランチは、I−Vプロットにおいて導通ブランチよりも緩やかな傾きを示すのが一般的であり、図1Aの第1及び第3象限においてほぼ水平線に見えることが多い。当該材料又はデバイスの「動的」又は「動的オン」状態とも称する導通ブランチは、当該材料を流れる電流が妨げられずに当該材料の両端の印加電圧においてより容易に流れるレジームに対応する。かかるブランチは、I−Vプロットにおいて急な傾きを示し、図1Aの第1及び第3象限においてほぼ垂直線に見えることが多い。
【0036】
図1Aに示される抵抗ブランチ及び導通ブランチの傾きは例示であって、限定を意図したものではない。実際の傾きは、カルコゲナイド材料の化学的組成又は物理的状態、デバイスの幾何学的配列、回路構成、直列抵抗、及び電気コンタクトに依存し得る。例えば、抵抗ブランチの傾きは、図1Aに示される傾きよりも急か又は緩やかであり得る。また、当該カルコゲナイド材料に存在する結晶及びアモルファス相含有量の相対比により変化し得る。しきい値と保持電圧との差異もまた、図1Aに示されるよりも大きいか又は小さくなり得る。しきい電圧は保持電圧よりも大きいのが通常であるが、しきい電圧と保持電圧とが同程度なデバイスもある。しきい電流と保持電流とが同程度なデバイスもある。導通ブランチにおけるカルコゲナイド材料の導通性は、まわりのコンタクト又は回路の導通性よりも高いのが典型的なので、導通ブランチの傾きは、カルコゲナイド材料と直列の抵抗によって制御されることが多い。カルコゲナイド材料がI−V曲線の抵抗ブランチ上の点によって表されるデバイス状態では、当該カルコゲナイド材料又はデバイスは「抵抗」状態にあるといってよい。カルコゲナイド材料がI−V曲線の導通ブランチ上の点によって表されるデバイス状態では、当該カルコゲナイド材料又はデバイスは「導通」状態にあるといってよい。
【0037】
カルコゲナイド材料のスイッチング特性を図1Aに示す。両端に電圧が印加されていないデバイスから始める。カルコゲナイド材料の両端に電圧が印加されていない場合、当該材料は抵抗状態にあり電流は流れない。かかる状態は、図1Aに示されるI−Vプロットの原点に対応する。カルコゲナイド材料は、印加電圧が増加しても、しきい電圧(図1Aの第1象限においてVで示す)までは抵抗状態のままである。印加電圧0からVまでのI−V曲線の傾きは振幅が小さい。これは、カルコゲナイド材料が比較的高い電気抵抗を有することを示す。当該高抵抗は低導電率を示し、その結果、当該材料を流れる電流は印加電圧が増加してもわずかに増加するのみである。当該材料を流れる電流が非常に低いので、当該カルコゲナイドの抵抗状態は、当該材料(又はデバイス)のオフ状態と称してよい。当該カルコゲナイドの導通状態は、当該材料(又はデバイス)のオン状態と称してよい。当該導通状態でデバイスを流れる電流は高く、印加電圧の増加に伴い著しく増加するからである。
【0038】
印加電圧がしきい電圧以上の場合、カルコゲナイド材料は、I−V曲線の抵抗ブランチから導通ブランチに変態(スイッチ)する。当該スイッチング事象は基本的に瞬間的に生じる。これは、図1Aに破線で描写されている。スイッチングに際し、デバイス電圧は著しく減少し、デバイス電流はデバイス電圧の変化に対してはるかに敏感となる。カルコゲナイド材料は、図1AにIで示される最小電流が維持される限り導通ブランチのままである。保持電流をIと称し、当該デバイスの保持電圧を関連電圧Vと称する。スイッチング後のデバイス条件が、電流がI未満となるように変化すると、当該材料はI−Vプロットの抵抗ブランチに戻るのが通常であり、導通ブランチでの動作を再開させるにはしきい電圧を引き続き印加する必要がある。電流が瞬時(カルコゲナイド材料の回復時間未満の時間)にI未満に低下する場合、カルコゲナイド材料の導通状態は電流をI以上に復帰させることで回復し得る。カルコゲナイド材料の回復時間は非特許文献1において説明されている。当該開示は本明細書に組み込まれる。
【0039】
本願発明デバイスのスイッチング効果は、しきい電圧Vthの印加による抵抗状態から導通状態へのカルコゲナイド材料の変態に起因する。スイッチング変態の一モデルによれば、しきい電圧の印加は、カルコゲナイド材料内の導通チャネル又はフィラメントの形成を生じさせる。しきい電圧では、当該材料が受ける電界は十分に高いので、電子が原子から取り除かれて高電導性のプラズマのような電荷キャリアフィラメントを形成するブレークダウン又はなだれ効果が誘発される。いくつかの電子は、原子に拘束されるのではなく、非拘束かつ高移動性となる。その結果、導通チャネル又はフィラメントが形成される。導通フィラメントは、そうでなければ抵抗性であったカルコゲナイド材料内に導通体積を構成する。導通フィラメントは、デバイス端子間のカルコゲナイド材料を通って延びて電流に対する低抵抗経路を与える。当該フィラメントの外部にあるカルコゲナイド材料部分は抵抗性のままである。電流は最小抵抗経路を横切るので、導通フィラメントの存在により、当該カルコゲナイド材料は導通性となり導通状態が確立される。導通フィラメントの生成は、抵抗状態から導通状態へのカルコゲナイド材料のスイッチングの基礎となる。
【0040】
導通フィラメントは、デバイス電流が保持電流以上のままである限りデバイス端子間で維持される。導通ブランチ沿いのすべての点に導通フィラメントが存在するが、当該フィラメントの断面積は導通ブランチ沿いの点ごとに異なる。導通ブランチ内の動作状態により、フィラメントは狭くも広くもなる。導通ブランチに沿って印加電圧が増加すると、フィラメントの断面積は印加電圧の増加とともに拡大する。拡大したフィラメントは、カルコゲナイド材料のより大きな体積が高導通性であることを示す。フィラメントが空孔の寸法に到達すると、フィラメントはもはや拡大することができず、デバイス抵抗が増加する(図1Aの点Sから開始する)。相変化材料が、フィラメント拡大を介して高電導動的状態への増加した部分的変換をすることにより、カルコゲナイド材料は、導通状態において印加電圧の増加に伴い益々高い電流をサポートできるようになる。導通ブランチにおいて動作するカルコゲナイド材料に印加される電圧の変化により、電流が流れる方向の側方においてフィラメントの幅又は厚さが変わる。導通ブランチで動作するカルコゲナイド材料の印加電圧が変化することの実質的な作用は、導通部分及び抵抗部分の体積分率を変えることである。かかる変化は究極的に、カルコゲナイド材料の構造状態における結晶領域とアモルファス領域との相対比の変化を介して、相変化材料の抵抗の制御を可能とする。
【0041】
カルコゲナイド材料が最初にセット状態にある場合、図1Aに示されるスイッチング事象は観測されない。その代わりに、I−V応答は、電圧増加に伴う電流の単調増加を示す(図1B)。セット状態にある材料のI−V応答は、最初にリセット状態にあるデバイスの図1Aに示される導通ブランチ(動的オン状態)に併合される。結晶・アモルファス混合状態は一般にスイッチング事象を示すが、リセット状態ではしきい電圧未満の電圧において観測される。スイッチングが生じる電圧の段階的減少は、結晶相体積分率がリセット状態からセット状態まで増加するのに伴い観測される。結晶・アモルファス混合状態のI−V特性は一般に、図1A及び1Bにそれぞれ描写されるリセット及びセット状態の中間にある。しかしながら、すべての状態は一般に共通の動的オン状態を有する。
【0042】
多くの化学的組成のカルコゲナイド材料は、上述のスイッチング効果を受ける。代表的なカルコゲナイド材料は、周期表第VI列からの1以上の元素(カルコゲン元素)、及び、オプションとして第III、IV、又はV列からの化学的改質子を含む材料である。S、Se、及びTeの1以上が最も一般的なカルコゲン元素であり、本願発明デバイスの活性材料に含まれる。カルコゲン元素は、二価結合及び孤立電子対の存在を特徴とする。二価結合により、カルコゲン元素の結合してカルコゲナイド材料が形成される際に鎖構造及び環構造の形成が生じる。また、孤立電子対は導通フィラメントを形成する電子の供給源を与える。Al、Ga、In、Ge、Sn、Si、P、As、及びSbのような三価及び四価の改質子は、カルコゲン元素の鎖及び環構造に入り、分岐及び架橋の点を与える。カルコゲナイド材料の構造的な剛性は架橋の程度に依存し、結晶化又は他の構造再配置を受ける能力に応じて、しきいスイッチング材料及び相変化(又はメモリ)材料という2タイプの1つへのカルコゲナイド材料の広い分類をもたらす。
【0043】
双方のタイプのカルコゲナイド材料は、図1Aに示されるスイッチング挙動を示すが、フィラメント形成への構造的な応答は異なる。しきいスイッチング材料は一般に、相変化材料と比べて、高濃度の改質子を有して高架橋性である。したがって、これらは構造的に剛性である。しきいスイッチング材料はアモルファスであり、結晶化をほとんど又は全く示さない。これは、結晶相の核生成及び成長に必要な原子再配置が当該構造的剛性により抑制されるからである。しきいスイッチング材料は、スイッチング中は結晶化変態を受けず、スイッチング後に印加電圧が取り除かれるまでアモルファスのままである。
【0044】
これとは対照的に、相変化カルコゲナイド材料は、架橋性が軽度であり、完全又は部分的な結晶化を受けやすい。アモルファス相変化材料は、上述の図1Aに記載したしきい電圧の存在下でフィラメント形成を受ける。しかしながら、ひとたび導通ブランチになると、相変化材料はジュール加熱により結晶相の核生成及び成長を受ける。結晶相の体積分率は、当該相変化材料を流れる電流の振幅及び時間に依存する。結晶相は、形成されれば、スイッチング後に印加電圧を取り除くことで維持される。デバイス動作条件の適切な選択により、カルコゲナイド相変化メモリ材料のアモルファス結晶変態は多サイクルにわたり可逆的となる。カルコゲナイドメモリ材料は、特許文献1−6に記載されている。これらは本明細書に参照として組み込まれる。
【0045】
R−I応答は、カルコゲナイド相変化メモリデバイスの特性の有意な説明となる。また、結晶アモルファス相変化プロセスに関連する構造変態が電気的特性に与える影響の表現を与える。カルコゲナイドメモリデバイスの電気抵抗(R)の代表的表現を、電気エネルギー又は電流パルス振幅(エネルギー/電流)の関数として図2に示す。これは、カルコゲナイド材料がリセット状態から始まる(以下で説明)デバイスに対応する。図2は一般に抵抗プロットと称する。
【0046】
抵抗プロットは、当該デバイスの電気エネルギーに対する2つの特徴的な応答レジームを含む。当該レジームは、図2に示される垂直破線10でおよそ区切られる。線10の左側のレジームは、カルコゲナイド材料のアキュムレーションレジームと称してよい。アキュムレーションレジームは、高電導状態に到達するまで電気エネルギーの増加に伴いほぼ一定の又は徐々に変換する電気抵抗によって区別される。ほとんどの場合、デバイス温度が結晶成長に有利に働く領域が存在する。パーコレーション経路が形成されると、当該デバイスには顕著な抵抗降下が観測される。アキュムレーションレジームは、エネルギーが増加する方向において、抵抗プロットの最も左にある点20から、電気抵抗の急激な減少の前のセットポイント又は状態40まで抵抗変化が小さく又は緩やかな複数の点の範囲に対応するプラトー領域を通って(一般に30で描写される)延びる。プラトー30は水平又は傾斜となる。
【0047】
カルコゲナイド材料の構造状態が、エネルギーが印加されるにつれて累積的に発達するので、抵抗プロットの左側はアキュムレーションレジームと称される。当該構造状態の分別結晶化度は、印加エネルギーの総累積と相関する。最も左にある点20は、最小分別結晶化度を有するアキュムレーションレジームにある構造状態に対応し、リセット状態と称してよい。かかる状態は完全なアモルファス性であり得る。または、結晶含有量をある程度含む主なアモルファス性であり得る。エネルギーが付加されると、カルコゲナイド材料は、プラトー30に沿って分別結晶化度を増しながら複数の部分的結晶状態中を進行する。選択されたアキュムレーション状態(アキュムレーション領域の構造状態)は図2において四角で示される。
【0048】
十分な量の印加エネルギーの累積により、カルコゲナイド材料の分別結晶化度は十分に増加してセット変態を有効にする。当該セット変態は、セット状態40の電気的抵抗及び安定性の劇的増大を特徴とする。アキュムレーションレジームにおける構造状態は、カルコゲナイド材料のアキュムレーション状態と称してよい。アキュムレーションレジームにおける構造変態は一方向性である。これは、当該構造変態が、プラトー領域30内で印加エネルギーが増加する方向へ進行し、まずカルコゲナイド材料を駆動してセットポイント40を通してからリセット(融解して当該デバイスをクエンチング)することによってのみ可逆的となるという意味においてである。ひとたびリセット状態が得られれば、低振幅電流パルスが印加されることができて、カルコゲナイド材料のアキュムレーション応答が後戻り可能となる。複数の動作サイクルにわたり、セット状態とリセット状態との可逆的変態が可能となる。
【0049】
理論で拘束するわけではないが、アキュムレーションレジームにおけるカルコゲナイド材料へのエネルギーの付加は、新たな結晶ドメインの核生成若しくは既存の結晶ドメインの成長又はこれらの組み合わせを介して分別結晶化度の増加を引き起こすと考えられる。さらに、分別結晶化度の増加にもかかわらずプラトー30に沿って電気抵抗が徐々にのみ変化するのは、結晶ドメイン同士が互いに相対的に隔離されて形成又は成長することにより、当該2つのデバイス電極間のカルコゲナイド材料にわたる隣接結晶ネットワークの形成が妨げられるからと考えられる。かかるタイプの結晶化は、サブパーコレーション結晶化と称してよい。
【0050】
セット変態は、パーコレーションスレショルドと一致する。パーコレーションスレショルドにおいては、隣接した相互接続結晶ネットワークがカルコゲナイド材料内に形成されて当該デバイスの2電極間のスペースを橋渡しする。かかるネットワークは例えば、結晶ドメインが隣接ドメインに突き当たるのに十分な程度サイズが増加する場合に形成される。カルコゲナイド材料の結晶相はアモルファス相よりも導通性かつ非抵抗性なので、パーコレーションスレショルドは、当該カルコゲナイド材料を通る隣接する低抵抗性導通経路の形成に対応する。その結果、パーコレーションスレショルドは、カルコゲナイド材料の抵抗の劇的増大を特徴とする。アキュムレーションレジームの最も左にある点20は、隣接する結晶ネットワークを欠くアモルファス状態又は部分的結晶状態であり得る。サブパーコレーション結晶化は、初期のアモルファス又は部分的結晶状態から開始し、分別結晶化度が益々高くなる複数の部分的結晶状態を通って進行し、その後パーコレーションスレショルドに到達してセット変態が生じる。
【0051】
図2の線10の右側のレジームは、ダイレクトオーバーライトレジームと称してよい。ダイレクトオーバーライトレジームはセット状態40から延びて、複数の中間状態(一般に50で描写される)を経て、リセットポイント又は状態60に達する。ダイレクトオーバーライトレジームの様々な点は、カルコゲナイド材料のダイレクトオーバーライト状態と称してよい。選択されたダイレクトオーバーライト状態は図2において丸で示される。ダイレクトオーバーライトレジームにおける構造変態は、カルコゲナイド材料に電流又は電圧パルスを印加することにより誘発できる。図2では、電流パルスが示されている。ダイレクトオーバーライトレジームにおいては、カルコゲナイド材料の抵抗は、印加電気パルスの振幅に応じて変化する。特定のダイレクトオーバーライト状態の抵抗は、カルコゲナイド材料の構造状態の特性であり、カルコゲナイド材料の当該構造状態は、印加電流パルスの振幅からの指示を受ける。カルコゲナイド材料の分別結晶化度は、当該電流パルスの振幅増加に伴い低下する。当該分別結晶化度は、ダイレクトオーバーライト状態に対してはセットポイント40又はその付近において最も高く、リセット状態60が近づくに従って徐々に低下する。カルコゲナイド材料は、セット状態40における隣接結晶ネットワークを有する構造状態から、リセット状態60における隣接結晶ネットワークが存在しないアモルファス若しくは実質的にアモルファス又は部分的に結晶である構造状態へと変態する。振幅が増加する電流パルスの印加は、当該結晶ネットワークの一部をアモルファス相に変換する作用を有し、究極的には、カルコゲナイド材料内の隣接する高電導結晶経路の破壊又は中断を引き起こす。その結果、ダイレクトオーバーライト領域において印加電流パルスの振幅が増加するに従ってカルコゲナイド材料の抵抗が増加する。
【0052】
アキュムレーション領域とは対照的に、ダイレクトオーバーライト領域において生じる構造変態は可逆的かつ二方向性である。上述のように、ダイレクトオーバーライト領域における各状態は、その抵抗及び関連する電流パルス振幅によって特定される。ここで、関連する電流パルス振幅の印加は、当該特定の抵抗状態を生成する分別結晶化度の変化を誘発する。その後の電流パルスの印加により、カルコゲナイド材料の既存抵抗状態の分別結晶化度は増加又は減少する。当該その後の電流パルスが、既存状態を確立するべく使用されたパルスよりも高い振幅を有する場合、カルコゲナイド材料の分別結晶化度は減少し、当該構造状態は、既存状態から、ダイレクトオーバーライト抵抗曲線沿いのリセット状態に向かって変態する。同様に、当該その後の電流パルスが既存状態を確立するべく使用されたパルスよりも低い振幅を有する場合、カルコゲナイド材料の分別結晶化度は増加し、当該構造状態は、既存状態から、ダイレクトオーバーライト抵抗曲線沿いのセット状態に向かって変態する。
【0053】
カルコゲナイド材料のダイレクトオーバーライト状態は、メモリデバイスのメモリ状態を画定するべく使用される。最も一般的には、当該メモリデバイスは、メモリ状態として2つのダイレクトオーバーライト状態を利用するバイナリメモリデバイスである。ここで、別個のデータ値(すなわち「0」又は「1」)が各状態に関連付けられる。したがって、各メモリ状態はカルコゲナイド材料の別個の構造状態に対応し、当該状態のリードアウト又は特定を、当該材料(デバイス)の抵抗を測定することによって行うことができる。これは、各構造状態が別個の抵抗値を特徴とするからである。カルコゲナイド材料を特定のメモリ状態に関連付けられた構造状態に変態させる動作は本明細書において、カルコゲナイド材料のプログラミング、カルコゲナイド材料への書き込み、又はカルコゲナイド材料への情報格納と称してよい。
【0054】
本願発明は、データ保持特性が熱劣化に耐性のある相変化組成物を与える。上述のように、相変化組成物のプログラミングはエネルギーを与えて、複数の結晶状態、アモルファス状態、又は結晶・アモルファス混合状態間の制御された変態を誘発することを含む。構造状態間のプログラミングの典型は、熱エネルギーの制御された操作に究極的に基づく。例えば電気プログラミングでは、電流に伴うジュール加熱を介して構造変態が有効となる。電気プログラミングパルスの振幅、形状、継続時間、立ち上がり時間、及び立ち下がり時間のような様々な特性が、意図された状態のプログラミングに必要な熱環境への制御を与える。
【0055】
しかしながら、温度に対する相変化材料の固有感度により当該材料は、高温環境にさらされた場合に意図されない構造変態を受けやすくなる。相変化材料の結晶化温度及び融解温度は、構造(又はメモリ)状態安定性の2つのインジケータである。上述のように、相変化材料が十分な時間にわたり少なくとも結晶化温度である温度にさらされた場合、当該相変化材料の分別結晶化度は、一部のアモルファス相体積分率が結晶相に変態するのに従って増加する。同様に、相変化材料が融解温度まで加熱されかつ十分急速に冷却された場合、相変化材料のアモルファス相体積分率は、結晶相体積分率を犠牲にして増加し得る。
【0056】
結晶化温度は融解温度よりも低いので、結晶化温度は相変化材料の熱安定性を制限するのが典型的である。データ完全性は、相変化材料の意図されない熱的誘導結晶化により高温において損なわれる可能性が非常に高い。上述のように、相変化材料の抵抗は、結晶相領域とアモルファス相領域との相対比に応じて変化する。その結果、意図されない熱的誘導結晶化が、初期メモリ状態を意図されないメモリ状態に変態させることによりデータ完全性を損なうこととなる。当該メモリのその後のリードはエラーとなる。
【0057】
本願発明は、相変化メモリ材料及びデバイスの構造状態の熱安定性を向上させるプログラミングの材料組成物及び方法を与える。相変化組成物は一般に、カルコゲン元素を1以上の改質元素とともに含むカルコゲナイド材料である。カルコゲン元素は最も一般的にはTeであり、改質子は第IV列元素及び/又は第V列元素を含む。一実施例では、カルコゲナイド材料はTeをGe及びSbとともに含む。GeSbTeのようなGe−Sb−Te材料が業界において周知であるが、本願発明者は、高温において予想外に優れたデータ保持特性を導く新規な組成物を発見した。特に、本願発明に係る組成物は従来技術の組成物と比べて、高温における結晶化に対して予想外に安定したままである。
【0058】
本願発明の他実施例において不揮発性メモリ材料は、一成分として可変抵抗材料を含み多成分として不活性材料を含む複合材料である。当該複合材料では、可変抵抗成分がメモリ機能を与えるべく構造状態間でプログラミング可能である一方、不活性成分はそうではない。不活性成分の構造は、当該可変抵抗成分をプログラミングするべく使用される条件において一般に安定したままである。不活性成分は一般に当該複合材料の少数成分であるが、可変抵抗材料は一般に多数成分である。
【0059】
一実施例では複合材料は、可変抵抗材料の別個領域と不活性成分の別個領域とを含む。不活性成分の別個領域は、可変抵抗材料の別個領域と混合されるか又は当該別個領域間に分散される。図3は、本願発明に係る複合材料を含む活性領域を有するデバイスの概略図を示す。電子デバイス65は、上部電極70、下部電極75、及び活性領域80を含む。活性領域80は、可変抵抗成分84及び不活性成分82を含む複合材料で占められる。可変抵抗成分84が上部電極70と下部電極75との間の電圧又は電流の印加に応答する一方、不活性成分82はそうではない。不活性成分82は、可変抵抗成分84内に均一又は不均一に分散されてよい。不活性成分82の別個領域は、サイズ、形状、構造、及び/又は組成が均一又は不均一であってよい。
【0060】
可変抵抗成分は、本願発明に係る相変化材料又はカルコゲナイド材料を含む。これは、本明細書に記載する元素を本願発明の原子濃度又は比率で含む。一実施例では、不活性成分は誘電材料を含む。一実施例では、誘電材料は可変抵抗材料よりも高い融解温度を有する。不活性成分は一般に、金属又は半導体元素の酸化物又は窒化物である。不活性成分の代表的材料は、シリコン又はゲルマニウムの酸化物(例えばSiO、SiO、GeO、又はGeO)、シリコン又はゲルマニウムの窒化物(例えばSi、SiN、又はGeN)、シリコンのオキシ窒化物、Al、AlN、TaO、TeO、遷移金属の酸化物、又は遷移金属の窒化物を含む。不活性成分は、当該相変化成分にプログラミングするべく使用される条件において電気的に不活性であること、及び当該相変化成分に対して化学的に非反応性であることが好ましい。
【0061】
本願発明に係る具体的な実施例及び利益が以下の例示に記載される。
【実施例1】
【0062】
本実施例では、デバイス構造及び代表的相変化組成物が記載される。本デバイス構造は、図4に描写される細孔構造であった。デバイス100は、表面SiO酸化物層110を備えるシリコン基板105を含んだ。厚さ500ÅのTiAlN製下部電極115が当該表面酸化物全体に形成された。厚さ500Åの絶縁層120(SiO)が下部電極115全体に形成された。細孔開口125が絶縁層120に形成され、厚さ〜750Åの活性材料130が細孔125の全体かつその内部に形成された。活性材料130は、以下に記載の組成の1つを有する相変化又は複合材料であった。各組成ごとに複数のデバイスが作成された。当該様々なデバイスの細孔開口125の直径は、典型的には〜70nmから〜150nmの範囲であった。頂部電極135が活性材料130全体に形成された。頂部電極135は、活性材料130に接触する20Å厚のTi層と、当該Ti層全体に形成された600Å厚のTiN層とを含んだ。最終工程において、5000Å厚のアルミニウム層140が頂部電極135全体に形成された。層140は、本デバイスの頂部におけるプローブ金属パッドとして機能した。
【0063】
活性材料130は、様々な組成の1以上のスパタリングターゲットを利用するスパタリングプロセスにより形成された。以下の組成のターゲットが利用可能であった:Ge、GeTe、Ge40Sb10Te50、Ge35SbTe56、Ge22Sb22Te56、Ge18Sb32Te50、Ge15Sb43Te42、Ge10Sb65Te25、Sb、及びSiO。1以上のターゲットが選択された。また、各ターゲットの堆積に係る相対スパタリングパワー及び/又は時間が制御されて被スパタリング材料の所望の組成が達成された。具体的な組成は典型的に、各ターゲットの堆積に係る相対スパタリングパワー及び/又は時間を適切に制御することによって、1以上のターゲットの複数の組み合わせから達成することができる。例えば、組成Ge40Sb10Te50は、Ge40Sb10Te50ターゲットを直接スパタリングすることにより形成できる。組成Ge40Sb10Te50は代替的に、GeTe及びGe18Sb32Te50のターゲットの同時スパタリングと、堆積表面に到達する当該材料の70%(モル基準)がGeTeターゲット由来かつ堆積表面に到達する当該材料の30%(モル基準)がGe18Sb32Te50ターゲット由来となるように各ターゲットのスパタリングパワーを調節することとによって形成できる。一実験では例えば、スパタリングパワー比約45:24(GeTeターゲット:Ge18Sb32Te50ターゲット)が、堆積表面にて組成Ge40Sb10Te50を生成するべく必要なモル比70:30を生成することが観測された。他のターゲット及び堆積表面上の他の所望組成に対して、同様の相関が開発された。Ge40Sb10Te50のSb富化を、Sbターゲットと、Ge40Sb10Te50ターゲット又はGeTeターゲットとGe18Sb32Te50ターゲットとの組み合わせ若しくはGeTeターゲットとGe10Sb65Te25ターゲットとの組み合わせとの同時スパタリングにより達成することができる(ここで、上述の相対モル比70:30が維持又はほぼ維持される)。
【0064】
活性相変化成分及び不活性成分(例えば誘電材料)を含む複合材料の形成を、当該不活性成分のターゲットをGe、Sb、及び/又はTeを含む1以上のターゲットと同時スパタリングすることにより達成することができる。代替的には、当該不活性成分材料(又はその元素)と相変化材料(又はその元素)との組み合わせにより形成された単一組成ターゲットを利用することができる。ターゲット組成及びスパタリング条件を選択することにより、単一組成の相変化材料、又は複数組成の相変化材料・不活性材料複合組成を、Ge、Sb、Teと不活性材料元素との比の全範囲にわたって堆積することができる。複合材料の相変化成分と不活性材料成分との相対比は、当該堆積に使用される1以上のターゲットの相対スパタリングパワーを制御することによって連続的に変化させてもよい。
【0065】
下記実施例に記載される好ましいデータ保持特性を説明する目的で形成された組成は以下を含んだ。
【表1】
【表2】
【0066】
サンプル番号は上記表に挙げられた各活性材料に関連付けられ、以下の説明での各活性材料を含むデバイスを言及するべく使用される。「公称」として示される組成は、当該堆積に使用されたターゲットの組成から決定された。1以上のターゲットが使用された場合、個々のターゲットの組成のパワー重みつき平均として公称組成が決定された。「WDS」として示される組成は、波長分散X線分光法により決定された。また、「EDX」として示される組成は、エネルギー分散X線分光法により決定された。WDS測定及びEDX測定は、アルミニウム又はステンレス鋼基板に形成された薄膜サンプルに対して行われた。また、FIB/SEM分析機器により遂行された。不活性成分としてSiOを含んだサンプルのEDX測定の場合、当該機器の検出限界は酸素の決定を妨げた。かかるサンプルでは、残存元素がEDXによって決定された。酸素濃度は、シリコン濃度の2倍と仮定された。また、すべての元素の総濃度は上記表において100%に正規化された。
【0067】
個々の元素の原子濃度を使用することに加え、各サンプルの濃度は、当該組成中の一元素の他元素に対する1以上の原子濃度比として表現することもできる。例えばサンプル16の組成は、Ge39.2Sb7.3Te44.1Si3.26.2である。サンプル16のSbに対するGeの比は、39.2/7.3=5.4となり、サンプル16の組成インジケータとして使用できる。同様に、サンプル16のSiに対するGeの比は、39.2/3.2=12.3となる。任意サンプルの相変化成分又は誘電成分いずれかにおける元素の任意の組み合わせの比を、組成インジケータとして使用してよい。同様に、任意のサンプルの誘電成分からの元素に対する相変化成分からの元素の比を、組成インジケータとして使用してよい。
【0068】
サンプルの組成を表現する他の方法は、相変化成分及び誘電成分を含む元素の原子パーセントの合計を別個に特定することである。サンプル16の相変化成分はGe39.2Sb7.3Te44.1であり、サンプル16の誘電成分はSi3.26.2である。サンプル16の相変化成分濃度は90.6%といってよい。これは、当該組成中のGe、Sb、及びTeの原子濃度(パーセント表現)の合計である。同様に、サンプル16の誘電成分の濃度は9.4%と表現できる。これは、当該組成中のSi及びOの原子濃度(パーセント表現)の合計である。かかる濃度測定は、当該組成中の相変化成分と誘電成分との相対モル比又はモル分率に対応する。例えばサンプル16は、90.6%の相変化成分モル分率及び9.6%の誘電成分モル分率を含むといってよい。任意のサンプルの組成も同様に表現できる。
【0069】
当該複合材料中の不活性成分濃度が増加すると、相変化成分濃度は必然的に減少する。異なる濃度の不活性成分を含む組成間の対比を容易にするには、相変化成分の元素の濃度を正規化することが役立つ。例えばサンプル22は、高濃度の誘電成分を含み、組成Ge23.9Sb7.9Te37.2Si10.820.2を有する。誘電成分の原子濃度は31.0%と表現できる。また、相変化成分の原子濃度は、各成分の元素の原子濃度合計に基づいて69.0%と表現できる。相変化成分の元素の濃度は、かかる合計を100%に再スケーリングすることにより正規化することができる一方で、相互に対する当該比率(比)を維持し、かつ0.69による重みを付けることができる。かかる手順を適用して、サンプル22の組成を表記すると(Ge34.6Sb11.4Te53.90.690Si10.820.2となる。正規化手順により、サンプル22の相変化成分の元素の相対比が何かが明確になる。サンプル22はおよそ、組成Ge35Sb11Te54を有する非複合材料のSiO富化変形例としてみなすことができる。必要であれば、不活性成分の元素の同様の正規化も行うことができる。任意のサンプルの組成を、同様に表現することができる。
【0070】
組成分析のための薄膜を形成するべく使用されたスパタリング条件は、図4に示されるデバイス構造での活性材料を形成するべく使用された条件と同じであった。当該活性材料は以下で説明する測定に使用された。図4に示されるタイプのデバイスのいくつかを含むウェハ又はクーポンは、上記表に挙げられた活性材料組成の各々に対して作成された。また、以下で説明する実験は、当該活性材料組成の各々を有する複数のデバイスに対して行われた。
【実施例2】
【0071】
本実施例では、実施例1で挙げられた活性材料のいくつかを組み入れたデバイスのデータ保持特性が記載される。データ保持実験の目的は、本デバイスに係る活性材料の構造状態の熱安定性を評価することにある。上述のように、結晶化温度は融解温度よりも低いので、結晶化温度は典型的に、相変化材料の熱安定性を制限する。また、データ完全性が、相変化材料の意図されない熱的誘導結晶化により高温において損なわれる可能性が非常に高い。したがって、データ保持実験は、本デバイスに係る活性材料の高温における結晶化傾向を精査するべく設計された。
【0072】
データ保持実験において、本デバイスが所定温度まで加熱されて1以上の電流パルスによりリセット状態に変態させられた。各リセットパルスは典型的に、飽和リセット電流の〜125%の電流振幅を有する矩形パルスであった。試験測定によれば、ほとんどの活性材料は、データ保持結果がパルス継続時間に対してわずかにのみ敏感であった。本明細書に報告されたデータでは所定デバイスに対し、50nsから10μsの範囲内からの単一パルス継続時間が使用された。本デバイスはリセット後、所定高温に維持され、抵抗が時間の関数として測定された。初期リセット状態では、本デバイスの抵抗は高かった。本デバイスを所定高温に維持することは、結晶化の誘発を意図したものであった。また、当該実験の目的は、結晶化の誘発に必要な時間を決定することにあった。熱的に不安定なデバイスでは、比較的低い温度において短時間にて結晶化が生じる。温度が高くなればなるほど及び/又は結晶化に必要な時間が長くなればなるほど、本メモリ材料又はメモリデバイスの熱安定性は大きくなる。
【0073】
データ保持実験において、結晶化はデバイス抵抗の増加として検出された。結晶化時間は、抵抗が本デバイスのセット抵抗の小倍数(〜2から3まで)未満のレベルまで減少するのに必要な時間として選択された。データ保持実験によりシミュレーションされたシナリオはバイナリデバイス動作である。バイナリ動作では、2つのメモリ状態が使用され、リセット抵抗とセット抵抗との中間の参照抵抗が、リード中の当該2状態を特定する境界として選択される。バイナリ動作において、セット抵抗の小倍数である境界レベルを選択することは典型的である。本デバイスのリード時に決定された抵抗が当該境界よりも高い場合、本デバイスはリセット状態にあるとみなされる。また、本デバイスのリード時に決定された抵抗が当該境界よりも低い場合、本デバイスはセット状態にあるとみなされる。
【0074】
データ保持実験がいくつかの所定高温に対して繰り返され、温度に伴い結晶化に必要な時間の変化が決定された。本データはアレニウスプロットで記録された。これは、結晶化に必要な時間を(対数スケールで)(kT)−1の関数として示される。ここで、kはボルツマン定数であり、Tは絶対単位での温度である。アレニウスプロットにより、各デバイスに対する結晶化時間の活性化エネルギーが決定され得る。また、本実験の現実的な制限を超えた時間(例えば10年)にわたってデータ保持が見込まれ得る温度を予想するべく、さらに長い時間までの外挿を行い得る。
【0075】
図5は、サンプル7(Ge39.1Sb5.6Te42.0Si4.58.9)を活性材料として使用するウェハ又はデバイスに対する260℃でのデータ保持曲線を描写する。ウェハは16のデバイスを含んだ。図5は、各デバイスの抵抗の変化を示す。これは、本デバイスを通るデバイスの飽和電流の〜120%の電流を送るのに十分な電圧を有する10μ秒のリセットパルスを適用後の3.5時間(12,600秒)までの時間の関数である。260℃において、各デバイスのリセット抵抗は〜20−30kΩであり、セット抵抗は〜7kΩであった。図5は、16のデバイスのそれぞれに対する別個のデータ保持曲線を示す。本データ保持曲線は、各デバイスの抵抗がリセットパルスの印加後、最初から〜10秒までほぼ一定であることを示す。また、各デバイスの抵抗がその後中間時間(〜10秒から数千秒まで)において増加し、さらに長い時間(数千秒超過かつ10秒付近)において急激に減少することを示す。中間時間において観測された抵抗の増加は、抵抗ドリフト効果による。これは、相変化デバイスにおいて通常観測される。また、長い時間において観測された抵抗の急激な減少は結晶化により生じたものである。結晶化は、本デバイスの初期高抵抗リセット状態から低抵抗セット状態への変態に対応し、本デバイスのデータ保持能力の喪失を示す。
【0076】
データ保持時間は、本デバイスがリセットパルス印加後に結晶化するのに要する時間である。図5において、結晶化の境界点が、15kΩ(セット抵抗の約2倍)の抵抗となるように選択された。これは、水平破線で示される。したがってデータ保持時間は、本デバイスの抵抗が15kΩまで減少するのに要する時間となる。図5の結果は、データ保持時間がウェハ上の様々なデバイスで変化することを示すが、6341秒(〜1.8時間)までに結晶化したデバイスはない。(ウェハ上の一連の名目上同等なデバイスの第1デバイスが結晶化する温度は、本明細書において第1不良時間と称する。最初に結晶化するデバイスは、本明細書において最弱ビットと称する。本データが示すのは、3.5時間の後でもウェハ上の16のデバイス中13が依然不良とはなっていなかったということ、すなわち、かかる初期データ状態が(境界点と比較して)依然保持されていたということである。
【0077】
本実験は一連の固定温度にわたって繰り返された。各温度において、図5に示されるタイプのデータ保持曲線が得られ、データ保持時間が決定された。図6は、温度240℃、250℃、260℃、及び270℃における最弱ビットに対して得られた結果を比較する。本結果は、温度上昇に伴いデバイス抵抗が一般に減少するが、データ保持曲線の全体的形状は各温度において類似するということを示す。図6は15kΩ境界線も示す。また、各温度における不良(結晶化)時間も示す。不良時間は、240℃における47時間から270℃における36分までの範囲にあった。
【0078】
図7は、サンプル7を使用するデバイスの第1不良時間の温度依存性を示す。本データはアレニウス形式で表されている。これは、第1不良時間(対数スケール上)を1/kTの関数として示す。ここで、kはボルツマン定数、Tは絶対単位での温度、傾きは保持時間と温度との関係に係る活性化エネルギーである。240℃、250℃、260℃、及び270℃における図6に図示のデータ保持時間が図7に示されている。図7はさらに、温度195℃及び175℃における外挿データ点を示す。195℃におけるデータ点は10年の時間に対応し、サンプル7を使用するデバイスが195℃において10年間データを保持すると見込まれることを示す。175℃においては、本デバイスは〜475年間データを保持すると見込まれる。本関係に係る活性化エネルギーは〜3.5eVである。
【0079】
実施例1に記載した活性材料のいくつかを使用するデバイスに対して、同様のデータ保持実験が遂行された。実験条件(リセットパルスの継続時間及び振幅、温度範囲、境界抵抗等)は、各デバイスの活性材料の特性に応じて調整された。選択された温度において測定されたデータ保持時間(秒(sec)、時間(hr)、又は年(yr))、選択された温度における外挿データ保持時間(アスタリスクで示す)、外挿10年保持温度(℃)、及び活性化エネルギー(EAct(eV))の概要は、以下の表に与えられる。当該測定されたデータ保持時間は、4から24の名目上同等のデバイスのセット中において結晶化する第1デバイスの結晶化時間に対応する。
【表3】
【表4】
【表5】
【0080】
本データ保持結果は、不活性誘電成分を相変化材料に付加することにより、多くのデバイスに対するデータ保持特性が向上することを明らかにする。しかしながら、本影響は普遍ではなかった。本影響が明らかとなる程度は、本複合材料に含まれる相変化成分の組成及び誘電成分の量に応じて変化した。本保持データから認められる代表的な結論を以下に説明する。
【0081】
データ保持時間の1つの尺度は高温での安定性である。サンプル6、7、及び8は、複合相変化材料内に増加する比率の誘電成分(SiO)を含む一連のデバイスを表す。サンプル6、7、及び8において、当該組成の相変化成分元素の正規化原子濃度はほぼ一定であった。サンプル8は、組成Ge45.9Sb6.0Te48.2を有していた。これは、誘電成分を含まず、220℃において519秒のデータ保持時間を有していた。サンプル7(Ge39.1Sb5.6Te42.0Si4.58.9又は(Ge45.1Sb6.5Te48.40.867Si4.58.9(正規化))及びサンプル6(Ge36.4Sb5.8Te38.7Si6.412.7又は(Ge45.0Sb7.2Te47.80.809Si6.412.7(正規化))における誘電成分の含有では、データ保持の向上が観測された。サンプル7の、例えば260℃におけるデータ保持時間(6341秒)は、サンプル8の205℃におけるデータ保持時間(6347秒)と同等であった。サンプル6は、誘電成分の量がサンプル7よりも多く、高温でのデータ保持にさらなる向上が示された。これは、300℃において30分超過のデータ保持能力を含む。サンプル6、7、及び8の結果は、高温における活性材料のデータ保持能力が誘電含有量の増加に伴い向上することを示す。
【0082】
サンプル14(Ge41.5Sb9.1Te49.4)、サンプル16(Ge39.2Sb7.3Te44.1Si3.26.2又は(Ge43.3Sb8.1Te48.70.906Si3.26.2(正規化))、サンプル18(Ge32.1Sb6.9Te37.2Si7.416.4又は(Ge42.1Sb9.1Te48.80.762Si7.416.4(正規化))、及びサンプル22(Ge23.9Sb7.9Te37.2Si10.820.2又は(Ge34.6Sb11.4Te53.90.690Si10.820.2(正規化))の一連にわたり、同様の傾向が観測された。例えば260℃におけるデータ保持時間は、誘電成分含有量の増加に伴い173秒(サンプル14)から48.2時間(サンプル16)、70.4時間(サンプル18)に増加した。しかしながら、サンプル18からサンプル22における誘電成分含有量のさらなる増加によっては、260℃においてデータ保持時間が70.4時間から24.5時間に減少した。かかる一連のデバイスが示すのは、特定濃度限界までは誘電成分の付加が高温でのデータ保持時間を向上させるが、誘電成分の濃度が当該限界を超過すると当該影響は逆転するということである。
【0083】
上記サンプルにおける誘電成分の濃度は、ゼロ(サンプル8、14)から31.0%(サンプル22)まで延びていた。本結果は、サンプル8及び14と比べての向上したデータ保持特性は、誘電成分を含むサンプルのそれぞれに対して観測された。誘電成分を含むサンプルの中では、サンプル16が最低の濃度(9.4%)であり、サンプル8及び14と比べて高温における十分に良好なデータ安定性を示した。サンプル22は最高の誘電成分濃度(31.0%)であり、サンプル8及び14と比べて同様に、高温における相当に良好なデータ安定性を示した。かかるサンプル群中で最高のデータ保持特性は、誘電濃度23.8%のサンプル18にて観測された。
【0084】
誘電濃度が23.8%(サンプル18)から減少したときに観測された傾向に基づくと、サンプル8及び14と比べての向上したデータ保持特性は、9.4%の下限(サンプル16)を超過しても誘電濃度約5%までは観測されると見込まれる。誘電濃度が23.8%(サンプル18)を超過して31.0%(サンプル22)まで増加するのに伴い、データ保持特性には緩やかな変化のみが観測された。当該緩やかな傾向に基づくと、誘電成分を組み入れる有利な影響は、濃度約50%まで延びると見込まれる。
【0085】
一実施例では、本願発明に係る複合材料における誘電成分の濃度(その構成元素の原子濃度の合計で表される)は5%から50%である。他実施例では、本願発明に係る複合材料における誘電成分の濃度(その構成元素の原子濃度の合計)は9%から35%である。さらなる他実施例では、本願発明に係る複合材料における誘電成分の濃度(その構成元素の原子濃度の合計)は13%から30%である。またさらなる実施例では、本願発明に係る複合材料における誘電成分の濃度(その構成元素の原子濃度の合計)は18%から25%である。
【0086】
本結果はまた、誘電成分の組み入れが、温度に伴うデータ保持時間の変化に影響を与えることを示す。かかる影響は、当該様々なサンプルに対して観測されたアレニウスプロットから得られた活性化エネルギーの差異に反映される。高い活性化エネルギーは、温度に伴うデータ保持時間の強変化を意味する一方、低い活性化エネルギーは弱変化を意味する。当該組成に誘電成分を組み入れることが活性化エネルギーに与える影響には一貫性がない。誘電成分濃度の増加に伴う活性化エネルギーの増加は、サンプル8(3.8eV)からサンプル7(3.3eV)までサンプル6(2.2eV)までの一連のデバイスにわたり観測された。しかしながら、誘電成分濃度がサンプル14(2.1eV)からサンプル16(4.3eV)までサンプル18(7.0eV)まで増加するのに伴い、逆の傾向が観測された。かかる傾向は、サンプル18からサンプル22(5.1eV)までの誘電成分濃度のさらなる増加において逆転した。かかる結果は、誘電成分濃度が複合材料の活性化エネルギーに与える影響に予測性がないことを示す。
【0087】
誘電成分が活性化エネルギーに与える可変的な影響の1つの結果は、どの複合組成が最高のデータ保持特性を有するかを予測することの困難性を生じさせるということである。これは、異なる複合組成が異なる温度において最長のデータ保持時間を与えるかもしれないことを理由とする。上述のように、例えばサンプル18は、260℃においてサンプル16(70.4時間対48.2時間)よりも長いデータ保持時間を示した。しかしながら、本データは、275℃においてサンプル16のデータ保持時間(4.0時間)が、サンプル18のデータ保持時間(1132秒(0.31時間))よりも長かったことを示している。したがって、特定の動作条件に最適の複合材料は、誘電成分の組成又は濃度単独からは予測不可能である。
【0088】
誘電成分が活性化エネルギーに与える可変的な影響の他の結果は、高温において観測された10年保持温度のデータ保持時間に対する関係が不確かであるということにある。上述のように、10年保持温度とは、デバイスがデータ完全性を10年間保持すると見込まれ得る温度である。例えばサンプル6とサンプル7との対比から、260℃においてサンプル6がサンプル7よりも相当に長いデータ保持時間を有していた(15.3時間対6341秒(1.8時間))。しかしながら、サンプル6に対する10年保持温度(178℃)は、サンプル7の10年保持温度(190℃)よりも低い。サンプル8とサンプル14との対比により、予測不可能性の他の例が得られる。サンプル8のデータ保持時間は220℃において519秒であった。サンプル14に対して本結果は、250℃におけるデータ保持時間が1366秒であったことと、250℃から260℃までの所定の温度においては519秒まで減少したこととを示す。サンプル14に対して観測された、サンプル8と比べて相当に長いデータ保持時間にもかかわらず、サンプル14(137℃)の10年保持温度はサンプル8の10年保持温度(155℃)よりも著しく低かった。同様の結果はサンプル24(Ge50.9Te39.6Si2.835.66)及びサンプル26(Ge40.3Te29.8Si9.719.4)に対しても観測された。200℃において観測されたデータ保持時間は、サンプル24に対しては11秒であり、サンプル26に対しては395秒であった。サンプル26に対する260℃におけるデータ保持時間(34秒)は、サンプル24に対する200℃(11秒)におけるデータ保持時間よりも長かった。しかしながら、より高温でのより長いデータ保持時間にもかかわらず、サンプル26の10年データ保持温度(79℃)はサンプル24の10年データ保持温度(108℃)よりも低かった。
【0089】
保持結果は、複合材料を形成するための誘電成分の組み入れが必ずしもデータ保持特性を向上させるわけではないということも示す。サンプル1デバイスは、相変化材料Ge22Sb22Te56を含み、誘電成分を活性材料として含まなかった。サンプル37デバイスの活性材料は、組成Ge19.0Sb17.0Te40.4Si7.416.3(又は、正規化された場合(Ge24.9Sb22.3Te52.90.764Si7.416.3)を有する複合材料であった。サンプル37は、誘電成分を含むサンプル1の変形例を得る目的で、Ge22Sb22Te56とSiOとの組み合わせを含む複合ターゲットから調製された。正規化組成からわかるように、サンプル37の相変化成分の組成は、サンプル1の組成に類似していた。保持結果は、サンプル37における誘電成分の存在が、サンプル1と比べてデータ保持特性を劣化させたことを示した。例えば200℃において、サンプル1のデータ保持時間は492秒であったが、サンプル37のデータ保持時間はわずか6秒であった。180℃におけるサンプル1のデータ保持時間(6731秒)は、155℃におけるサンプル37のデータ保持時間(3329秒)の2倍超過であった。誘電成分の含有により、10年データ保持温度の減少も生じた(サンプル1に対しては110℃のところ、サンプル37に対してはわずか93℃)。したがって、本結果は、誘電成分の組み入れが必ずしもデータ保持特性の向上につながるわけではないことを示す。また、相変化成分の組成が誘電成分のデータ保持に影響を与えることを示す。
【0090】
本願発明に係る複合材料のデータ保持特性に影響を与える組成上の因子は、上述の結果から得ることができる。1つの注目すべき観測は、Sbを欠いたサンプルが、Sbを含むサンプルよりも著しく貧弱なデータ保持特性を示したことである。例えばサンプル24はSbを欠き、組成Ge50.9Te39.6Si2.835.66(又は、正規化された場合(Ge56.1Te43.60.908Si2.835.66)を有する一方、サンプル16はSbを含み、組成Ge39.2Sb7.3Te44.1Si3.26.2(又は、正規化された場合(Ge43.4Sb8.1Te48.70.906Si3.26.2)を有した。サンプル24及びサンプル16に対する誘電濃度は類似したが、データ保持特性は大きく異なった。サンプル24デバイスは、108℃の10年データ保持温度を示し、200℃ではわずか11秒のデータ保持時間を示した。他方サンプル16デバイスは、218℃の10年データ保持温度を示し、280℃で1.3時間のデータ保持時間を示した。サンプル22及び26は、相当に高い誘電成分濃度において同様の効果を示した。サンプル26は組成Ge40.3Te29.8Si9.719.4(又は、正規化された場合(Ge57.5Te42.50.701Si9.719.4)を有し、わずか79℃の10年保持温度及び260℃でわずか34秒のデータ保持時間を示した。対照的にサンプル22は相当な濃度のSbを含み、組成Ge23.9Sb7.9Te37.2Si10.820.2(又は、正規化された場合(Ge34.6Sb11.4Te53.90.690Si10.820.2)を有した。サンプル22デバイスは、224℃の10年データ保持温度及び260℃で24.5時間のデータ保持時間を示した。
【0091】
本結果は、相変化成分中へのSbの含有及び/又は相変化成分のGe:Sb若しくはTe:Sb濃度比の変更が、同様の誘電成分濃度を含む合金のデータ保持特性に著しい影響を与えたことを示す。相変化成分の組成がデータ保持特性に与える影響をより理解するには、Sb濃度並びに/又は相変化成分中のGe、Sb、及びTeの相対比が異なる一連のサンプルを対比することが有用である。以下の表に、上述で考慮されたいくつかのサンプルに係る選択された元素の正規化組成及び濃度比を、選択された温度及び10年データ保持温度におけるデータ保持時間とともに挙げる。濃度比は、当該示された元素の原子濃度比(又はパーセント)に対応する。
【表6】
【表7】
【0092】
本結果は、誘電成分を含むサンプルのデータ保持特性が相変化成分の組成に著しく依存することを示す。具体的には、当該組成中のSb(アンチモン)の存在がデータ保持特性に対する誘電成分の影響を大きく与えているようである。Sbを含まない2つのサンプル(サンプル24及び26)に対しては貧弱なデータ保持が観測された。サンプル24及び26の双方は10年保持温度が低く、高温における保持時間が短かった。相変化成分中のSb含有により、一連のサンプル7、6、16、18、22、42、32にわたってデータ保持特性に著しい向上があった。かかるサンプルのそれぞれが示したのは、高い10年データ保持温度と、高温における低い保持時間であった。しかしながら、サンプル37においてSb濃度がさらに増加すると、データ保持特性の顕著な劣化が観測された。サンプル37に対して観測された10年保持温度及び200℃におけるデータ保持時間も、サンプル24に対するものと同様であった。
【0093】
本保持データが示すのは、相変化成分中のSbの存在が、所定の濃度範囲のみにわたりデータ保持特性に対して有利な影響を与えるということと、当該有利な影響の開始は当該範囲の上端及び下端の双方における狭い範囲のSb濃度にわたり予想外に生じるということである。本データはまた、特に好ましいデータ保持特性が、サンプル18及び32に存在するSb濃度の近傍のSb濃度に対して観測されることも示唆する。サンプル42は、サンプル18にて観測されたSb濃度とサンプル32にて観測されたSb濃度との中間のSb濃度を有し、そのデータ保持特性は好ましいといえるほど良好ではない。
【0094】
好ましいSb濃度を表現する1つの方法は、当該複合材料の組成全体における原子濃度(又はパーセント)によるものである。本測定による結果は、Sb排除又は17%以上のSb濃度がデータ保持にとって有害である一方、わずかなSb原子パーセント又は17%にわずかに満たないSb濃度がデータ保持にとって有利であることを示す。一実施例では、Sb原子濃度は3%から16%である。他実施例では、Sbの原子濃度は5%から15%である。さらなる他実施例では、Sbの原子濃度は6.5%から12%である。サンプル18の近傍の結果は、Sb原子濃度が5%から9%であることを示唆する。サンプル32の近傍の結果は、Sb原子濃度が13%から16%であることを示唆する。
【0095】
好ましいSb濃度を表現する代替的な方法は、当該複合組成中の他元素に対するSbの存在によるものである。上記表は、Ge及びTeの双方に対するSbの比を挙げている。サンプル32と37との比較が示すのは、当該2つの材料は、同様の誘電成分濃度及び同様のSb/Te比を含みながらも、大きく異なるSb/Ge及び大きく異なるデータ保持特性を含むということである。したがってSb/Ge比は、サンプル7、6、16、18、22、42、及び32において観測された好ましいデータ保持特性を生じさせる一因子として提案される。一実施例では、Sb/Ge比は0.07から0.68である。他実施例では、Sb/Ge比は0.14から0.58である。さらなる他実施例では、Sb/Ge比は0.16から0.48である。よりさらなる実施例では、Sb/Ge比は0.22から0.48である。サンプル18の近傍の結果は、Sb/Ge比が0.16から0.28であることを示唆する。サンプル32の近傍の結果は、Sb/Ge比が0.43から0.53であることを示唆する。
【0096】
相変化成分におけるGeとTeとの相対比も組成表現に使用できる。本データは、Ge/Te比が高い(サンプル24及び26)又は低い(サンプル37)場合に保持特性が貧弱であることを示す。本データは、最高の保持特性が、Ge/Te比が0.6から1.1である実施例において見込まれることを示唆する。他実施例では、Ge/Te比は0.75から1.0である。さらなる他実施例では、Ge/Te比は0.8から0.95である。
【0097】
上述のようにSb濃度、元素比(Sb/Ge、Sb/Te、Ge/Te)、及び/又は誘電成分濃度により表現された組成は、他実施例において組み合わせることができる。例えば、Sb濃度3%及び16%並びにSb/Ge比0.07から0.68を有する複合材料は、本願発明の一実施例である。当該組成尺度の2以上の他の組み合わせに対応する実施例も同様に本願発明の範囲内にある。
【0098】
本願発明に係る複合材料の組成は、相変化成分の1以上の元素及び誘電成分の1以上の元素の原子濃度により直接表現してもよい。一実施例では、本複合材料は、Sbを含む相変化成分及びSiを含む誘電成分を含む。一実施例では、Sbの原子濃度は3%から16%であり、Siの原子濃度は2%から15%である。他実施例では、Sbの原子濃度は5%から15%であり、Siの原子濃度は3%から10%である。他実施例では、Sbの原子濃度は5%から9%であり、Siの原子濃度は5%から8%である。実施例では、Sbの原子濃度は13%から16%であり、Siの原子濃度は5%から8%である。
【0099】
相変化成分は、Sbに加えてGeもさらに含んでよい。一実施例では、Geの原子濃度は23%から45%である。他実施例では、Geの原子濃度は30%から40%である。誘電成分は、Siに加えてO又はNも含んでよい。一実施例では、O/Si比は1.0から3.0である。他実施例では、O/Si比は1.5から2.5である。さらなる他実施例では、N/Si比は1.0から2.0である。さらなる実施例では、N/Si比は1.1から1.5である。
【0100】
本結果は、所定の相変化組成と誘電成分との選択的な相乗作用が、データ保持特性の向上に関与し得ることを示唆する。例えばサンプル37は、サンプル18及び32のいずれかと同じ誘電成分濃度を有しているが、データ保持特性は著しく劣る。同様の対比は、サンプル24と16及びサンプル26と22にも当てはまる。電気的不活性又は誘電成分がデータ保持に与える影響は、普遍性に欠けており、相変化成分の組成に依存すると観測された。本依存性が示唆するのは、いくつかの相変化組成のデータ保持特性を実質的に向上させても他の相変化組成についてはそうではないという誘電成分の傾向は、結晶化に必須となる相変化成分の所定の基本特性に当該誘電成分が与える影響に関連するということである。
【0101】
上述のように、データ保持は、高温において結晶化に抵抗する相変化材料の能力によって支配される。結晶化プロセスは、2つの重要な現象学的ステップすなわち核生成及び成長を含む。核生成が、アモルファス相からの結晶相核のアブイニシオ(ab initio)形成に対応する一方、成長は、当該核境界上でのアモルファス相材料の変換を介しての結晶相材料の発生によって当該核が拡大することに対応する。核生成及び成長は、同時に発生してそれぞれが結晶相を安定化することができる競合プロセスである。核生成支配の結晶化においては既存結晶核の成長が遅いので、結晶化は、主に新たな結晶核の形成により生じる。逆に、成長支配の結晶化においては既存結晶核の拡大が速いので、新たに形成された核の結晶化への寄与は副次的となる。
【0102】
核生成プロセス及び成長プロセスの相対的な重要性は、相変化材料の組成で変化する。例えば、GeSbTeの結晶化が核生成支配であること、及びGe15Sb47Te38を形成するべくGeSbTeをSbで富化すると成長支配相変化材料が得られることが周知である。組み入れられた誘電成分が相変化材料の結晶化プロセスのメカニズムに与える影響は、業界では解明されていない。しかしながら、誘電成分の存在が、核生成支配結晶化プロセスに対して成長支配結晶化プロセスとは異なった態様で影響を与えるだろうとの見込みを与えることは合理的である。誘電成分を相変化材料に組み入れることの最も基本的な作用は、当該誘電成分が、当該相変化材料の体積全体に分散されて、当該相変化材料を、当該誘電成分により少なくとも部分的に制限されたドメイン又は領域に区画化する作用を有するというものである。誘電成分が物理的に存在することは必然的に、相変化材料を、少なくとも部分的に分離された複数の領域に分割する。相変化材料の空間的拡張が、デバイスの活性領域の全体積に及ぶ代わりに誘電成分の存在によって妨げられて、相変化材料は小さな領域に分割される。
【0103】
理論で拘束するわけではないが、誘電成分の存在は、核生成支配の結晶化よりも成長支配の結晶化に影響を与えるだろうと見込まれる。かかる仮定は、成長支配の結晶化が既存結晶領域の拡大によって生じることを理由とする。誘電成分の存在が、所定の結晶領域が拡大する程度を制限する内部境界を生成するので、成長支配メカニズムによる結晶化は、拡張する結晶化領域が当該誘電成分にぶつかるときに抑制される。相変化材料内の誘電成分分散により許容される最大サイズまで結晶領域が拡大すれば、その領域の成長は終了する。すべての結晶ドメインの成長が同様の影響を受けるので、成長支配メカニズムによる結晶化の全体的な速度は、分散された誘電成分の存在下で低下すると見込まれる。成長支配メカニズムによる結晶化が飽和すると、さらなる結晶化には新たな結晶核の核生成が必要となる。核生成は成長支配の相変化材料において好まれないので、核生成を誘発させるには(成長を誘発させるべく必要な温度と比べて)高い温度が必要となる。その結果、誘電成分の存在が、成長支配の相変化材料の結晶化を抑制し、結晶化を達成するべくさらに高い温度の必要性を余儀なくさせると見込まれる。
【0104】
核生成支配の相変化材料では、誘電成分の存在が結晶化プロセスに及ぼす影響は少ないと見込まれる。これは、核生成支配の結晶化が、結晶領域が空間的に拡大する能力に依存しないことを理由とする。成長支配メカニズムが比較的少数の結晶領域の拡大によって結晶化を達成する一方、核生成支配メカニズムは、多数の比較的小さな領域の発達によって結晶化を達成する。その結果、核生成支配の結晶化は、誘電成分の存在により課された空間的境界に対してそれほど敏感ではないと見込まれる。
【0105】
本願発明に係る複合材料に対する上述のデータ保持特性の傾向を説明する1つの可能な説明は、成長支配の結晶化プロセスが、好ましいデータ保持特性(上述の組成及び/又は元素比の範囲で表現されている)を示す材料においての方が、貧弱なデータ保持特性を示す材料においてよりも相対的に重要であるというものである。例えば、サンプル37の相変化成分は、組成Ge24.9Sb22.3Te52.9を有する。このため、核生成支配材料として業界周知の組成Ge22Sb22Te55(サンプル1)に近い。上述で提示されたモデルに基づくと、誘電成分の存在は、当該データ保持特性に与える影響が比較的小さいと見込まれる。サンプル1と37とのデータ保持特性の対比が、かかる見込みを裏付ける。サンプル7、6、16、18、22、32、及び42の相変化成分の結晶化メカニズムが未確証のままでも、当該保持結果は、成長支配の結晶化がサンプル7よりもこれらのサンプルにおいて重要であることを示唆する。本願発明の一実施例では、活性複合材料は、相変化成分と誘電成分とを含み、当該相変化成分は、好ましくは成長支配プロセスにより結晶化する材料を含む。
【0106】
誘電成分と相変化成分との代替的相乗効果が、結晶化の際に形成される結晶状態の構造に関連し得る。相変化材料の周知の結晶構造は、六方最密相及び面心立方相を含む。六方最密相は熱力学的に安定した相であると考えられているが、面心立方相の存在は結晶化のメカニズム及び/又は動力学に影響を与え得る。例えば、Ge22Sb22Te56の結晶化は、最初に準安定面心立方相により進行し、その後六方最密相の究極的な安定性となることが知られている。面心立方相は、アモルファス相の原子配列に構造的に類似すると考えられている。その結果、面心立方相は、結晶化に対して小さな運動エネルギー障壁を与えて、アモルファス相から六方最密相へ直接結晶化するよりも低い温度での結晶化の進行を示す。
【0107】
観測されたデータ保持結果を説明する他の可能な説明は、選択された相変化組成に対しては、誘電成分の存在が、相変化成分からの準安定面心立方相の形成を抑制することによって結晶化プロセスに影響を与えているというものである。かかるモデルでは、低い温度の準安定経路によって誘電成分の存在が結晶化を抑制し、高い温度の六方最密相によって結晶化プロセスを駆動する。準安定面心立方相によって進行する低い温度の結晶化メカニズムを排除又は抑制することにより、誘電成分が、アモルファス相から六方最密結晶相への直接の結晶化を相変化成分に強制する。その結果、結晶化を誘発するべく必要な温度は上昇し、本複合材料のデータ保持特性が全体的に向上する。
【0108】
当業者であれば、上述の方法及び設計がさらなるアプリケーションを有すること、関連するアプリケーションが具体的に上述されたアプリケーションに限られないことがわかるだろう。また、本願発明は、本明細書に記載した基本的な特性から逸脱することなく他の具体的な態様で実施することができる。上述の実施例はすべての面において説明として考慮すべきであり、いかなる態様においても限定的に考慮すべきではない。
図1A
図1B
図2
図3
図5
図6
図7
図4