特許第5698963号(P5698963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698963
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】表面形状測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20150319BHJP
   G01B 9/02 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   G01B11/24 D
   G01B9/02
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-260128(P2010-260128)
(22)【出願日】2010年11月22日
(65)【公開番号】特開2012-112705(P2012-112705A)
(43)【公開日】2012年6月14日
【審査請求日】2013年8月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】501292142
【氏名又は名称】株式会社小坂研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(72)【発明者】
【氏名】本田 裕
【審査官】 梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−127805(JP,A)
【文献】 特開2007−171026(JP,A)
【文献】 特開平10−170243(JP,A)
【文献】 特開2000−088551(JP,A)
【文献】 特開2008−185372(JP,A)
【文献】 特開平04−290905(JP,A)
【文献】 特開2005−055221(JP,A)
【文献】 特開平07−174535(JP,A)
【文献】 特開2002−148025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00 − 11/30
G01B 9/00 − 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数回に分けて測定した表面形状測定データを繋ぎ合せて表面形状を測定する表面形状測定方法であって、
装置ベースに対して固定された真直度が5mm移動時で5nm以下である水平面移動ステージに測定対象物を設置する第一の工程と、
前記測定対象物の第一の測定面領域の三次元表面形状を装置ベースに対して水平面方向で固定されている光学式表面形状測定機で測定して第一の面測定データを取得する第二の工程と、
前記第一の測定面領域の一部と重複するオーバーラップ領域を有する第二の測定面領域と前記光学式表面形状測定機の測定視野が一致するように前記水平面移動ステージを前記光学式表面形状測定機に対して移動させる第三の工程と、
前記第二の測定面領域の三次元表面形状を前記光学式表面形状測定機で測定して第二の面測定データを取得する第四の工程と、
前記第一の面測定データにおける前記一部に対応する面測定データと前記第二の面測定データにおける前記オーバーラップ領域に対応する面測定データが重なり合うように前記第一の面測定データ及び前記第二の面測定データの一方又は両方を高さ方向にのみ平行移動する第五の工程と、
前記平行移動した前記第一の面測定データと前記第二の面測定データを合成して合成面測定データを生成する第六の工程と、
を有する表面形状測定方法。
【請求項2】
前記オーバーラップ領域が、前記光学式表面形状測定機の測定視野の10%以下の面積である請求項1に記載の表面形状測定方法。
【請求項3】
前記オーバーラップ領域が、前記光学式表面形状測定機の測定視野の1%以下の面積である請求項1に記載の表面形状測定方法。
【請求項4】
前記合成面測定データの生成が、前記第一の面測定データと前記第二の面測定データが連続的に繋がるように、前記第一の面測定データと前記第二の面測定データに対する重み付け平均処理によって互いに重なり合う測定面領域の面測定データを合成する合成面測定データの生成である請求項1乃至のいずれか一項に記載の表面形状測定方法。
【請求項5】
前記光学式表面形状測定機が、白色干渉計である請求項1乃至のいずれか一項に記載の表面形状測定方法。
【請求項6】
前記第六の工程の後に、既に測定された測定面領域を第一の測定面領域として前記第三乃至第六の工程を繰り返し行う第七の工程を更に有する請求項1乃至のいずれか一項に記載の表面形状測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つの測定対象部の表面形状を複数回に分けて測定し、その表面形状測定データを繋ぎ合せて1つの表面形状データを得る表面形状測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象物の表面形状を高精度に測定する方法として、レーザー光や白色光等の光干渉を利用した光学式表面形状測定方法が知られている。このような光干渉を利用した光学式表面形状測定機においては、測定の水平分解能を高めるため高倍率の対物レンズが使用され、それに伴い測定視野は小さくなり、一度に測定できる測定面領域はサブミリメートル若しくはそれ以下となることが多い。そのため測定を行おうとする領域を一度の測定で測定できない場合がある。このように測定対象となる領域が表面形状測定装置の測定視野を超える場合には、一般に、測定面領域を走査して複数回の測定を行い、得られた複数の面測定データを繋ぎ合せて表面形状測定装置の測定視野以上の面積の表面形状測定結果を得るというスティッチング法(開口合成法)が利用されている(例えば、特許文献1参照)。従来のスティッチング法は、レンズの歪み、参照面の形状誤差、精密ステージによる移動時の誤差及びその他測定誤差を補正するために、複雑な演算を行い、並進方向のみならず回転方向の補正を行った上で測定データを繋ぎ合せるようにしている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−290905号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「三次元形状測定データ群の接続による機能面全体測定に関する研究」、2004年度精密工学会春季大会学術講演会講演論文集(p.667-668)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のスティッチング法は、特に回転方向の補正を行うために、互いに重複する測定面領域であるオーバーラップ領域が例えば30%から50%程度も必要となり、それに伴い、測定対象とする領域を測定するための測定回数が増加するといった問題点があった。
【0006】
また、ナノメートルオーダーの測定を行うような微細表面形状測定においては、装置温度、周囲温度の僅か1度の温度変化でも測定装置若しくは測定対象物の熱膨張により、測定結果に大きな影響を与えることとなるが、従来の方法では測定回数の増加に伴い測定時間が増大し、その間の温度変化の影響を受けやすくなるといった問題点もあった。
【0007】
光干渉計はレンズの歪みや参照面の歪みに起因する光学的誤差を少なからず持っている。この光学的誤差は精密ステージによる誤差に比べれば小さいことが多いが、データを繋ぎ合せていく毎に誤差が累積し、最終的に無視できない大きな誤差となる場合がある。つまり、オーバーラップ領域に光学的誤差による歪みがあると、その歪みに合わせて並進方向のみならず回転方向も一致させて合成されることとなり、合成された測定データは本来の表面形状に比べて歪み角度の分だけ全体的に傾いた状態となる。この傾いた状態の測定データにさらに次の測定データを繋ぎ合せると、さらに傾き誤差は大きくなる。これを繰り返していくと最初は僅かであった誤差も累積されて大きな誤差となってしまうことが起こり得る。このように、従来の方法は主に精密ステージの移動誤差等を補正するために行われる回転方向補正が、場合によっては別の大きな累積誤差をもたらすという問題があった。図16は、平面測定において累積誤差が生じたときの測定例である。回転補正を行わない場合には、全体で5nmの誤差だが、回転補正を行った場合には100nm以上の誤差が生じている。
【0008】
そこで本発明は、上記従来技術の問題点を解決することを目的とする。具体的には、表面形状測定機の測定視野以上の測定領域の測定をするに際して、複数の測定結果の繋ぎ合せを簡易に行うことを可能とし、オーバーラップ領域を低減して全体の測定時間を削減し、さらに一定の累積誤差の発生を低減することが可能な表面形状測定方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、複数回に分けて測定した表面形状測定データを繋ぎ合せて表面形状を測定する表面形状測定方法であって、測定対象物を水平面移動ステージに設置する第一の工程と、前記測定対象物の第一の測定面領域の三次元表面形状を光学式表面形状測定機で測定して第一の面測定データを取得する第二の工程と、前記第一の測定面領域の一部と重複するオーバーラップ領域を有する第二の測定面領域と前記光学式表面形状測定機の測定視野が一致するように前記水平面移動ステージを移動させる第三の工程と、前記第二の測定面領域の三次元表面形状を前記光学式表面形状測定機で測定して第二の面測定データを取得する第四の工程と、前記第一の面測定データにおける前記一部に対応する面測定データと前記第二の面測定データにおける前記オーバーラップ領域に対応する面測定データが重なり合うように前記第一の面測定データ及び前記第二の面測定データの一方又は両方を平行移動する第五の工程と、前記平行移動した前記第一の面測定データと前記第二の面測定データを合成して合成面測定データを生成する第六の工程と、を有する表面形状測定方法である。
【0010】
この表面形状測定方法では、繋ぎ合せ時に回転方向の補正を行わず平行移動のみを行うようにすることで、特に光学的歪みに起因する累積的誤差の発生を抑止できる。
【0011】
好ましくは、前記オーバーラップ領域が前記光学式表面形状測定機の測定視野の10%以下の面積であるようにすることができる。
【0012】
より好ましくは、前記オーバーラップ領域が前記光学式表面形状測定機の測定視野の1%以下の面積であるようにすることができる。
【0013】
オーバーラップ領域を小さくすることは、本発明における表面形状測定方法に関して繋ぎ合せの精度には本質的な影響を与えないため、このように非常に小さな面積としても実質的に十分な性能を得ることができる。一方、オーバーラップ領域が小さくなることで、測定回数を減らすことができ、測定全体の所要時間を低減することができる。
【0014】
さらに好ましくは、前記平行移動を高さ方向のみの移動とすることができる。
【0015】
表面形状測定装置の水平方向の誤差が要求精度に対して十分に小さい場合には、平行移動を高さ方向のみとすることで、さらに測定を高速化させることができる。
【0016】
また、具体的には、前記合成面測定データの生成を、前記第一の面測定データと前記第二の面測定データが連続的に繋がるように、前記第一の面測定データと前記第二の面測定データに対する重み付け平均処理によって互いに重なり合う測定面領域の面測定データを合成する合成面測定データの生成とすることができる。
【0017】
通常は前記平行移動を行ったとしても、第一の面測定データと第二の面測定データの重複部分が完全に一致することはないため、その重複部分に関しては2つの面測定データから1つの新たな面測定データを生成して合成する必要がある。このとき、重複部分の位置に応じた重み付けを行った上で平均化することで、2つの面測定データから本来の測定対象物の表面形状を表すのに確からしい表面形状であり且つ第一の面測定データと第二の面測定データが連続的に繋がるような合成面測定データの生成が可能となる。
【0018】
さらに具体的には、前記光学式表面形状測定機は白色干渉計とすることができる。
【0019】
また、前記第六の工程の後に、既に測定された測定面領域を第一の測定面領域として前記第三乃至第六の工程を繰り返し行う第七の工程を更に有するようにすることができる。
【0020】
このようにすることで、測定しようとする測定領域の全てが測定できるまで、測定とその測定データの繋ぎ合せを繰り返して行い、任意の面積の測定をすることが可能となる。
【0021】
以下、本発明に係る表面形状測定方法を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の表面形状測定方法に用いる表面形状測定装置の一実施例の概略図である。
図2】水平面移動ステージの移動方向と白色干渉計のCCDカメラのカメラ視野の関係を示す図である。
図3】白色干渉計のカメラ視野のスケール校正を示す。
図4】本発明の表面形状測定方法の測定ステップを示すフローチャートである。
図5】第一の測定面領域と第二の測定面領域がオーバーラップ領域をもって重なり合っている状態を示す。
図6】平行移動前の面測定データを示す。
図7図6における2つの面測定データを合成した合成面測定データを示す。
図8】オーバーラップ領域における面測定データの不一致の状態と、重み付け平均を行った後の合成面測定データを表すグラフである。
図9】本発明の表面形状測定方法による測定例における測定条件を示す表である。
図10】本発明の表面形状測定方法による測定例のうち非球面レンズの測定を行った結果を示すグラフである。
図11】非球面レンズの測定結果について各測定条件間での比較を示すグラフである。
図12】非球面レンズの測定結果について1%オーバーラップ領域の測定結果と触針式表面形状測定機の測定結果の差を示すグラフである。
図13】本発明の表面形状測定方法による測定例のうち非球面レンズの測定結果について測定条件間の比較を示すグラフである。
図14】クロム蒸着平面の測定結果について測定条件間での比較を示すグラフである。
図15】従来の回転補正を伴うスティッチングを示すグラフである。
図16】従来方法による回転補正によって累積誤差が発生したときの測定例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に示す表面形状測定装置10は、白色干渉計11と水平面移動ステージ12と測定データのデータ演算を行うデータ演算部13とから構成される。白色干渉計11と水平面移動ステージ12は装置ベース21に固定されている。白色干渉計11は、参照ミラーを内蔵する干渉用対物レンズ15、測定用アクチュエータ16、光学ヘッド17及びCCDカメラ19を備えている。干渉用対物レンズ15は測定対象に合わせて適当な倍率のものが選択され、特に測定の水平分解能を高くしたい場合には高倍率のレンズを選定することとなる。干渉用対物レンズ15は測定用アクチュエータ16に取り付けられ、測定用アクチュエータ16は、干渉縞測定時に干渉用対物レンズ15を精密に垂直走査させて干渉用対物レンズ15と測定対象物30の距離を変化させるために使用される。測定用アクチュエータ16にはリニアスケールが内蔵されており、アクチュエータによる変化量を正確に測定できるようになっている。測定用アクチュエータ16はさらに光学ヘッド17に取り付けられている。光学ヘッド17には光源18が内蔵されており、光源18からの光を適切に干渉用対物レンズ15に導く光学系と、干渉用対物レンズ15に内蔵された参照ミラーと測定対象物30からの反射光による干渉縞を正確にCCDカメラの撮像面に結像させる光学系が内蔵されている。本装置では、光源として高輝度白色LED光源を採用している。従来のハロゲンランプに比べて熱の発生が抑えられるため、僅かな熱膨張も測定誤差の要因となる微細表面形状測定には特に有効である。白色干渉計11はZ軸駆動部20を介して装置ベース21に固定されている。白色干渉計11の下部に位置し、装置ベース21に固定された水平面移動ステージ12は、XY軸方向に駆動可能な高真直度XY軸ステージである。本実施例で使用した高真直度XY軸ステージは、株式会社小坂研究所製の微細形状測定機ETシリーズにも使用されているステージであり、その真直度は100mm移動時で0.1μm、5mm移動時で5nmを保証する高真直度のステージである。なお、当該表面形状測定装置では、光学式表面形状測定装置として白色干渉計を採用したがこれに限定されるわけではなく、その他の光学式表面形状測定装置、例えば位相シフト法やレーザービーム走査を用いた表面形状測定装置とすることも可能である。
【0024】
白色干渉計11が備えるCCDカメラ19は、図2に示すように高真直度XY軸ステージの移動方向X、Yとカメラ視野40の長辺方向Xa、短辺方向Yaを一致させて設置している。CCDカメラ19の位置調整は、例えば特徴的な微細突起部がある測定対象物を高真直度XY軸ステージ上に設置し、高真直度XY軸ステージでX軸方向に移動させた際に、微細突起部がXa方向に移動して見えるようにCCDカメラ19の回転方向を調整することにより行う。このとき、できるだけ良く一致させることが重要であり、例えば微細突起部がカメラ視野40の端から端まで移動した際に、Ya方向に1ピクセル分のずれが生じないようにCCDカメラ19の位置調整を行う。また、カメラ視野のX方向の長さXcとY方向の長さYcを高精度リニアスケールXs,Ysにより校正しておく。このように、予めCCDカメラのカメラ視野40の角度とスケールを調整しておくことで、面測定データのXY方向への拡大縮小、位置ずれ補正、回転処理を考慮する必要がなくなり、実際上は高さ方向(Z方向)のみの平行移動による測定データの繋ぎ合せで十分な精度の測定結果が得られることとなる。
【0025】
次に、上記の表面形状測定装置10を用いた表面形状測定方法について図4のフローチャートに基づいて説明する。測定開始に際して、まず測定対象物30を水平面移動ステージ12上に設置する(S01)。測定中に測定対象物30が振動などにより位置ずれを起こさないように確実に固定しておく必要がある。
【0026】
次に、第一の測定面領域31の表面形状測定を白色干渉計11で行う(S02)。測定用アクチュエータ16で順次干渉用対物レンズを上下動させて測定された干渉縞はCCDカメラ19で撮像され、測定用アクチュエータ16の測定時の高さ情報と共にデータ演算部13に送られる。データ演算部13においてデータ処理が施され第一の面測定データとして記憶される。
【0027】
次に、第二の測定面領域32と白色干渉計11の測定視野が一致するように、水平面ステージ12を移動させる(S03)。ここで第二の測定面領域32は第一の測定面領域31と重複するオーバーラップ領域33分を含む測定面領域である。オーバーラップ領域の面積の大小は後に示すように互いに重なり合う面測定データの繋ぎ合せの精度にほとんど影響を与えない。面測定データに含まれるノイズを平均化するという意味においては、オーバーラップ領域は大きい方が良いが、実際にはオーバーラップ領域は測定視野の10%でも実用上問題はなく、さらに1%以下若しくは線(CCDカメラにおける1ピクセルの幅)としても、十分な繋ぎ合せ精度を確保できる。よって、本実施例では、通常、オーバーラップ領域を1%として測定を行っている。ただし、オーバーラップ領域にあたる部分の測定対象物の形状や材質によっては、白色干渉計で測定ができないか又は測定はできてもノイズが多くなって十分な精度で繋ぎ合せができなくなる場合がある。このような場合には、十分な精度で繋ぎ合わせができるようにオーバーラップ領域を適宜大きく設定する。
【0028】
次に、第二の測定面領域32の表面形状を第一の測定面領域31の場合と同様に白色干渉計11で行い、データ演算部13において第二の面測定データを生成し記憶する(S04)。
【0029】
次に、第一の面測定データ34と第二の面測定データ35のオーバーラップ領域33に当たる部分を比較して、両データの測定時の位置ずれを求める。ここで、本発明においては、従来技術のようなX軸、Y軸、Z軸回りの回転補正は行わず、X方向、Y方向、Z方向の平行移動のみを行う。X方向もしくはY方向のデータの平行移動を行う場合には、各面測定データ内の特徴点のマッチング処理等の演算が必要となるが、高真直度のステージの採用とCCDカメラの正確な調整及び校正を事前に行っておくことで、実際上はX方向及びY方向の平行移動を行わなくても十分な測定精度を得ることができる。高さ方向(Z方向)については、白色干渉計11の測定アクチュエータ16の精度にもよるが、通常はナノメートルオーダーの精度を保証するには至らないため、正確に繋ぎ合せるためには高さ方向(Z方向)の平行移動は必要となる。本実施例では、高さ方向(Z軸方向)のみのずれ量(Zoffset)を計算して繋ぎ合せを行っている。具体的には、第一の面測定データ34と第二の面測定データ35の高さ方向のずれ量をオーバーラップ領域の高さ方向の差から求めて、その分だけ第二の面測定データ35の高さ方向データを全体に平行移動させてオーバーラップ領域33において両データ間の残差が最小となるようにする。本実施例では第二の面測定データ35を第一の面測定データ34に合わせるように高さ方向の平行移動を行っているが、第一の面測定データ34を平行移動して第二の面測定データ35に合わせても、若しくは両方の面測定データを平行移動して合せても本質的な差はなく得られる結果は同じである。
【0030】
次に、第一の面測定データと高さ方向に平行移動された第二の面測定データを合成して1つの合成面測定データ36を生成する。このとき、普通はオーバーラップ領域33における2つの面測定データは完全には一致せず、図8に示すようにデータにずれが生じる。このようなずれは、主にレンズの歪みや参照面の歪みといった光学的な歪みにより発生するものであり、測定前にこのような光学的歪みを補正しておくことである程度は低減させられる。しかし、それでもなお完全に一致することはないため、繋ぎ合せに際しては何らかの演算が必要となる。本実施例では、その一つの手段として重み付け平均を採用している。重み付け平均処理をした結果、両面測定データは図8に示すように滑らかに繋ぎ合される。なお、本実施例においては、特にこの光学的歪み補正について記載していないが、測定前に当該補正を行っておくことは必要に応じて適宜行われるものである。
【0031】
測定しようとする面積は、状況により様々であり、これまでに説明したような2回の測定で測定しようとする全面積の測定が完了することは、むしろ稀である。このような場合には、既に測定した測定面領域を第一の測定面領域に置き換えて、それに一部重複する測定面領域を第二の測定面領域として表面形状測定を行い、合成するという工程を繰り返すことによって、すべての測定しようとする面積の測定ができる。例えば後述する測定例では、この工程を20回から40回繰り返し行って所定の面積の測定を行っている。
【0032】
図10乃至図14は、上記実施例の方法に従って実際に測定をした際の測定結果を示すものである。以下、測定例について説明する。
まず、幅4.5mmで凸部が30μmの非球面レンズの表面形状を測定した測定例について説明する。図10及び図11に示した結果から、50%オーバーラップ領域と1%オーバーラップ領域を比較したときに10nm程度の差がみられる。さらに、図12に示すように1%オーバーラップ領域で測定したときと触針式表面形状測定機で測定したときの差は約20nmであるが、30μmの凸形状の測定に対して0.1%以下で一致しているため、十分な性能であると言える。ちなみにこれらの測定間の差には、測定方法による差だけでなく、測定場所の違いや感度係数の違いによる影響も含まれているため、単純に測定方法の違いのみに着目した場合には、もっと高い精度で一致していると考えられる。なお、比較に使用した触針式表面形状測定機の高さ方向の最高測定分解能は0.1nm、段差測定の再現性は2nm以内(1σ)である。
【0033】
図14に示した1%オーバーラップ領域時の本発明による測定結果と触針式表面形状測定機での測定結果の差は5nm以下であり、極めてよい一致を示している。非球面レンズの測定例に比べてさらに良い一致を示しているのは、クロム蒸着面が非球面レンズのガラス面に比べて光の反射率が高いことにより光干渉計法による測定時のノイズが小さいこと、及び平面であるため両測定間の測定位置のずれの影響がほとんどないことによるものである。
【0034】
なお、4.5mmの領域の測定を行うのに50%オーバーラップ領域では40回の測定を行い、40の面測定データを繋ぎ合せる必要があるが、1%オーバーラップ領域では半分の20回の測定で足りる。つまり、従来のように30%から50%ものオーバーラップ領域を要していたのに比べて、約半分の時間で測定を完了できることになる。これは、単に測定時間を短縮できるという効果をもたらすのみならず、測定時間を短縮することで、その間の温度などの環境変化も小さくなり、測定結果の精度向上にも貢献することとなる。
【符号の説明】
【0035】
10 表面形状測定装置
11 白色干渉計
12 水平面移動ステージ
13 データ演算部
15 干渉用対物レンズ
16 測定用アクチュエータ
17 光学ヘッド
18 光源
19 CCDカメラ
20 Z軸駆動部
21 装置ベース
30 測定対象物
31 第一の測定面領域
32 第二の測定面領域
33 オーバーラップ領域
34 第一の面測定データ
35 第二の面測定データ
36 合成面測定データ
40 カメラ視野
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16