(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698972
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】感染性病原体の病原性状態を決定するための改良された方法および組成物
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/68 20060101AFI20150319BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20150319BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
C12Q1/68 Z
C12Q1/04
C12N15/00 A
【請求項の数】18
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2010-502156(P2010-502156)
(86)(22)【出願日】2008年4月7日
(65)【公表番号】特表2010-531636(P2010-531636A)
(43)【公表日】2010年9月30日
(86)【国際出願番号】US2008004491
(87)【国際公開番号】WO2008124119
(87)【国際公開日】20081016
【審査請求日】2011年3月3日
(31)【優先権主張番号】60/922,213
(32)【優先日】2007年4月5日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/927,287
(32)【優先日】2007年5月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/927,217
(32)【優先日】2007年5月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504423181
【氏名又は名称】セケラ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】マルベイ、 マシュー シー.
(72)【発明者】
【氏名】サックステーダー、 キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】アインク、 レオ
【審査官】
木原 啓一郎
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第94/025572(WO,A1)
【文献】
国際公開第2006/087559(WO,A1)
【文献】
国際公開第2005/001475(WO,A1)
【文献】
国際公開第93/016172(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
C12N 15/00
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料をベクターとインキュベートするステップであって、前記ベクターは代理マーカー位置の生成を仲介するレコンビナーゼ機能をコードし、前記代理マーカー位置は新たな核酸種であるステップと、
前記代理マーカー位置の存在を核酸に基づく検出方法を使用して検出するステップであって、前記代理マーカー位置の検出は病原菌が生存能力を有することを示すステップ
とを含む、試料における病原菌の病原性状態を決定するための方法。
【請求項2】
試料をベクターとインキュベートするステップであって、前記ベクターは代理マーカー位置の生成を仲介する異種ポリペプチド機能をコードするバクテリオファージであり、前記代理マーカー位置は新たな核酸種であるステップと、
前記代理マーカー位置の存在を核酸に基づく検出方法を使用して検出するステップであって、前記代理マーカー位置の検出は病原菌が生存能力を有することを示すステップ
とを含む、試料における病原菌の病原性状態を決定するための方法。
【請求項3】
前記試料をインキュベートするステップは、薬剤の存在下で試料とベクターとをインキュベートすること、および、薬剤の不存在下で試料とベクターとをインキュベートすることを含み、ここで、前記薬剤の存在下でインキュベートされた試料における前記代理マーカー位置の検出は、前記病原菌が前記薬剤に耐性であることを示す、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記試料をインキュベートするステップは、試料を複数のベクターとインキュベートすることを含み、各ベクターは異なる代理マーカー位置を生じる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記試料を前記ベクターとインキュベートするステップは、電気パルス、エレクトロポレーション、または浸透圧ショックの適用をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ベクターがバクテリオファージである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記バクテリオファージは、病原菌特異的なバクテリオファージである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記試料は、体液、痰、涙、唾液、汗、粘液、血清、精液、尿、血液、環境試料、飲料水、自然界の水、池の水、共同貯水池の水、親水施設の水、水泳プールの水、渦流プールの水、温水浴槽の水、温泉の水、親水公園の水、天然に存在する新鮮な水、海面の水、産業試料、化学試薬、培地、または洗浄溶液を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記病原菌が、ブドウ球菌属、連鎖球菌科、ナイセリア科、球菌、腸内細菌科、シュードモナス科、ビブリオ科、カンピロバクター、パスツレラ科、ボルデテラ属、フランシセラ属、ブルセラ菌、レジオネラ科、バクテロイデス科、グラム陰性菌、クロストリジウム属、コリネバクテリウム属、プロピオニバクテリウム属、グラム陽性菌、炭疽菌、アクチノミセス属、ノカルジア菌、マイコバクテリウム、Helicobacterpylori、Streptococcus pneumoniae、Candida albicans、トレポネーマ属、ボレリア属、レプトスピラ属、マイコプラズマ属、ウレアプラズマ属、リケッチア属、クラミジア属、全身性真菌症、日和見真菌症、原虫、線虫、吸虫、および条虫のうちの1つ以上から選択される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記病原菌がマイコバクテリウムである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記マイコバクテリウムが、M.tuberculosis、M.avium−intracellulare、M.kansarii、M.fortuitum、M.chelonae、M.leprae、M.africanum、M.microti、M.aviumparatuberculosis、M.intracellulare、M.scrofulaceum、M.xenopi、M.marinum、またはM.ulceransである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記マイコバクテリウムがM.tuberculosisである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記バクテリオファージベクターは、異種RNAポリメラーゼをコードする核酸配列、および、前記異種RNAポリメラーゼに特異的なプロモーターを含み、前記プロモーターは前記ベクターの転写されていない部位内に挿入されており、前記代理マーカー位置は前記プロモーターの転写制御下にある核酸配列を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記異種RNAポリメラーゼがSp6RNAポリメラーゼであり、前記プロモーターがSp6プロモーターである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ベクターは、DNAレコンビナーゼをコードする核酸配列、および、介在するベクター配列を挟んで挿入された2つのレコンビナーゼ認識部位の核酸配列を有し、前記代理マーカー位置は、前記レコンビナーゼにより反転された後の前記介在ベクター配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記DNAレコンビナーゼがCreレコンビナーゼであり、前記レコンビナーゼ認識部位がloxP部位である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記DNAレコンビナーゼがFlpレコンビナーゼであり、前記レコンビナーゼ認識部位がFRT部位である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記薬剤が、抗生物質、イソニアジド、リファンピシン、エタンブトール、ピラジナミド、ストレプトマイシン、クロファジミン、リファブチン、オフロキサシン、スパルフロキサシン、フルオロキノロン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ダプソン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、エリスロマイシン、シプロフロキサシン、ドキシサイクリン、エリスロマイシン、アンピシリン、アンフォテリシンB、ケトコナゾール、フルコナゾール、ピリメタミン、スルファジアジン、クリンダマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、アトバコン、ペンタミジン、パロモマイシン、ジクラザリル、アシクロビル、トリフルオロウリジン、2型抗ウイルスヌクレオシド誘導体、フォスコルナット、アンチセンスオリゴヌクレオチド、三重鎖特異的DNA、フォスカルネット、ガンシクロビル、AZT、DDI、DDC、フォスカルナット、ウイルスプロテアーゼ阻害剤、ペプチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、三重鎖核酸、およびリバビリンのうちの1つ以上を含む、請求項3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連特許出願に対する相互参照)
本願は、2007年4月5日に出願された米国仮特許出願第60/922213号、2007年5月1日に出願された米国仮特許出願第60/927287号、および2007年5月2日に出願された米国仮特許出願第60/927217号に対する優先権を主張するものである。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、感染性疾患の改良された診断のための方法および組成物に関する。特に本発明は、感染性病原体を検出し、このような感染性病原体の生存状態についての情報を提供し、かつ薬剤感受性を決定するための新規な方法を提供する。特定の実施形態において、本発明は、ファージに基づく薬剤耐性の生物学的検出と共に、核酸増幅に基づく微生物同定に関連する技術を用いる。本発明の方法は、マイコバクテリアなどの細菌性病原体を含む全ての感染性病原体および病原菌に適している。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
第二次世界大戦の最中にペニシリンが広く利用可能になった際、戦時中の最大の死亡原因である感染創が迅速に克服されたことは、医療上の奇跡であった。土中のカビであるペニシリウム属の生成物により、疾患の原因となる多くのタイプの細菌が活動不能となることは、1896年にフランスの医学生であったErnest Duchesneにより最初に発見され、その後1928年にスコットランドの医師であったAlexander Flemingにより再発見された。しかし、製薬会社がペニシリンの大量生産を始めた1943年のたった4年後に、病原菌はペニシリンに耐性を示し得るようになってきた。
【0004】
ペニシリンに打ち勝った最初の細菌は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)であった。この細菌は人体においては無害の存在物であることが多いが、過剰に増殖するかまたは毒素を産生すると、肺炎または毒素性ショック症候群などの疾病の原因となり得る。1967年に、肺炎球菌と呼ばれるStreptococcus pneumoniaeによって生じる、別のタイプのペニシリン耐性肺炎が、パプアニューギニアの僻村で現れた。ほぼ同時期に、東南アジアの米軍兵士が、売春婦からペニシリン耐性の淋病に感染した。兵士が帰宅した1976年には、兵士は淋病の新たな株をもたらしたため、医者はそれを治療するための新たな薬剤を見出さなければならなかった。1983年に、細菌Enterococcus faeciumが原因の院内感染性の腸内感染が、ペニシリンが効かない細菌のリストに加えられた。
【0005】
抗生物質耐性は迅速に広がる。例えば、1979年から1987年の間では、National Centers for Disease Control and Prevention(CDC)の調査では、数多くの患者に感染している肺炎球菌株のわずか0.02パーセントがペニシリン耐性であった。CDCの調査は12の州における13の病院を含むものであった。CDCのRobert F.Breiman医学博士のチームによる、1994年6月15日付の、Journal of the American Medical Associationにおける報告によると、1994年には6.6%の肺炎球菌株が耐性であった。CDCはまた、1992年に、13,300人の入院患者が、抗生物質治療に対して耐性であった細菌感染により死亡したとも報告している(R.Lewis「The Rise of Antibiotic−Resistant Infections」www.fda.gov)。
【0006】
Michael Blum医学博士(米国食品医薬品局(Food and Drug Administration)の抗感染薬製品部門の医務官)等の、当該分野における専門家によると、「1980年代には慢心があった。細菌感染の問題は克服されたと認識されていた。製薬会社は新たな薬剤についての研究を行っていなかった。彼らは、ウイルス感染などの他の分野に専念していた。その間、一般に用いられる抗生物質の多くにまで耐性は増大し、これは抗生物質の過剰な使用に関連する可能性があるものであった。1990年代には、我々は、利用可能な作用物質が存在しない特定の感染の段階まで来ている。」とあるように、抗生物質耐性の感染の憂慮すべき増加の主な原因の1つは、慢心の結果であった。1994年4月28日付のNew England Journal of Medicineの報告によると、研究者は、患者の試料中から、現在利用可能な抗生物質薬の全てに耐性を有する細菌を同定している。
【0007】
抗生物質耐性の患者数の増大は、進化の結果である。細菌を含むあらゆる生物集団は、必然的に、通常とは異なる特徴を有する変異体を含む(この場合、病原菌に対する抗生物質の攻撃に抵抗する能力である)。人が抗生物質を服用した場合、薬剤は、無防備な細菌を死滅させ、抗生物質に抵抗し得る細菌を残す(か、または生物学的な用語では「選択」する)。これらの「反乱(renegade)」した細菌はその後増幅し、1日あたり100万倍も数を増やし、主要な微生物となる。
【0008】
抗生物質は、技術的には耐性をもたらさないが、既存の変異体が繁茂する状況を生じさせることにより、耐性が生じることを可能にする。シカゴのAmerican Medical AssociationのDepartment of Drug Policy and Standardsの部長であるJoe Cranston博士は、「抗生物質を用いる場合はいつも、耐性が発生するという選択的なプレッシャーが存在する。耐性は、耐性自体の上に積み重なったものである。ますます多くの薬剤に対し、ますます多くの生物が耐性を発現する。」と述べている。
【0009】
患者は、耐性細菌に接触することより薬剤耐性感染が発現するか、または、抗生物質治療の開始時に体内に出現した耐性病原菌を有することにより、薬剤耐性感染を発現し得る。薬剤耐性感染は死亡のリスクを増大させ、入院期間の延長に関連することが多く、合併症に関連することもある。これらにより、破壊された肺の部分の除去、または損害を受けた心臓弁の交換が必要となる場合がある。
【0010】
疾患の原因となる病原菌は、抗生物質の活性メカニズムに干渉することにより、抗生物質を阻止する。例えば、ペニシリンは、細菌の細胞壁に付着することにより細菌を死滅させた後、細胞壁の重要な部分を破壊する。細胞壁が剥がれ落ちると細菌は死ぬ。しかしながら耐性病原菌は、ペニシリンが結合できないように自身の細胞壁を変化させるか、または抗生物質を分解する酵素を産生する。
【0011】
別の状況では、エリスロマイシンは、細胞によるタンパク質の合成を可能にする細胞内の構造であるリボソームを攻撃する。耐性細菌は、薬剤が結合できない、わずかに変化したリボソームを有する。リボソーム経路はまた、細菌が抗生物質であるテトラサイクリン、ストレプトマイシン、およびゲンタマイシンに対して耐性となるかを決める。
【0012】
結核は、流行が著しく変動した感染である。結核を治療する薬剤が開発されたが、結核が撲滅されたという慢心が生じた結果、患者が時期尚早に投薬を中止し、他者を感染させたため、この疾患は再流行した。今日、新たな結核症例の7件のうち1件は、結核の治療に最も一般に用いられている2つの薬剤(イソニアジドおよびリファンピシン)に耐性であり、これらの患者の5パーセントが死亡している。20億人がMycobacterium tuberculosis(Mtb)に感染しており、その結果毎年800万件の新たな結核症例が生じ、ほぼ300万人近くが死亡している。結核の制御に対する大きな障害は、薬剤耐性疾患の出現である。前治療の経験がない患者から単離されたMtb株の平均9.9%が、少なくとも1つの最前線の抗結核(抗結核菌)薬に耐性である。少なくともイソニアジド(INH)およびリファンピシン(RIF)に耐性であると定義される、結核菌の多剤耐性株(MDR結核菌)は、世界各地の約5000万人において存続し、その結果、毎年50万件近くのMDR−TBの新たな症例が生じている。MDR−TBは、第一選択治療よりも効能が低く、かつ毒性が高い第二選択薬を含む薬剤の組合せを用いた最大2年間の治療を必要とするため、薬剤感受性結核よりも治療がいっそう困難であり高価である。最近の研究は、あらゆるフルオロキノロンおよび3つの注射可能な第二選択抗生物質の少なくとも1つにさらに耐性であるMDR−TB株であると規定される広範囲薬剤耐性結核(XDR結核)の、憂慮すべき発生および世界的な分布の阻害について記載している。MDR、とりわけXDR−TBの出現は、結核の治療および制御を抗生物質以前の時代に戻す恐れがある。
【0013】
薬剤耐性結核の広がりを食い止めるための手掛かりは、M/XDR−TBの感染を同定するための迅速で正確な診断法を開発することである。最も信頼できる抗生物質感受性試験(AST)は、増殖が遅いことで有名なこの細菌の増殖を測定するため、実施するのに数週間または数カ月を要する。AST試験の実施に必要な時間に関わらず、これらの技術は、結核菌の分離株に対して抗病原菌剤が有する効果を生物学的に測定するため、非常に正確であり、依然として重要かつ有益なものである。
【0014】
Mtbの薬剤耐性株を同定するための伝統的な方法は、液体培養物中での、またはマイコバクテリアの増殖に適した栄養培地を補充したLJスラントもしくは寒天プレートなどの固体担体上での、臨床標本から単離したMtbの培養に関する。液体培養物の濁度の増大、またはLJスラントもしくは寒天プレート上でのコロニー形成による、細菌の増殖の視覚的な同定を可能にする、十分な集団密度に培養物が達した後、分離株を、異なる抗生物質を含むかまたは何も含まない2つ以上の個々の容器に継代培養する。Mtb分離株に対する抗生物質の効果は、抗生物質を含む二次培養物の増殖を、薬剤を加えなかった二次培養物の増殖と比較することにより決定する。Mtb分離株が抗生物質に感受性である場合、対照と比較して十分に増殖しない。しかし、菌株が抗結核薬に対して耐性である場合、抗生物質の抗病原菌特性を回避する能力を有しているため、増殖し続ける。この生物学的な、増殖に基づくアッセイの第二世代のバージョンは、細菌集団が裸眼によって確認される程度に十分な密度に達するのを待つよりも、微生物の同定と、増殖しているMtbにより産生される代謝産物を測定するための放射分析装置(例えば、Becton DickinsonのBACTEC(商標))または比色分析装置(例えば、Becton DickinsonのMGIT(商標)およびBiomerieuxのBACT ALERT(登録商標))を用いた耐性試験との、両方の検出時間を速めるものである。
【0015】
Mtbにおける薬剤耐性の生物学的検出を速めるための、より最近の研究方法は、Mtb分離株に対して抗病原菌剤が有する効果を調べるの、マイコバクテリオファージの使用に集中している。マイコバクテリオファージは、マイコバクテリアに感染し、複製および拡散のために、細胞の生合成メカニズムを乗っ取るウイルスである。大まかに言えば、ウイルスは偏性の細胞内寄生物であり、再生および拡散のために、宿主細胞の生合成機構に依存して子孫を作る。感染性ウイルスが新たなウイルス構成部分の合成および産生に方向付け得る程度は、宿主細胞の代謝能力(すなわち生存状態)によってほぼ決定される。極端な場合では、代謝的に活性な生細胞はウイルスに感染し得、新たなウイルスの産生に利用され得るが、代謝的に不活性な死んだ細胞は利用され得ない。したがって、ウイルスが宿主細胞において感染および複製し得る程度は、宿主細胞の代謝能力を示す。抗生物質は、最終的には感受性を有する細菌細胞の代謝能力に作用し、およびファージは宿主の生合成機構を乗っ取るため、抗生物質はまたバクテリオファージの複製および拡散に対する影響を有する。さらに、ファージは少数の細菌を見つけ、感染することができ、そしてとりわけMtbの場合において、ファージは宿主細胞よりも格段に速く複製および拡散するため、Mtbの検出およびASTを劇的に速めるためにファージを用いることができる。
【0016】
Biotec,Inc.(Suffolk、United Kingdom)の製品であるFASTPLAQUE−RESPONSE(商標)は、抗生物質に曝露後の、マイコバクテリオファージD29のMtbの内部での複製能力を測定するものである。臨床標本から単離されたMtbを、一方は抗病原菌剤であるリファンピシンを含み、もう一方は抗生物質を含まず陽性対照として用いられる、2つの容器に分割する。リファンピシンがMtbに対する効果を発揮するのに十分な時間をかけた後、D29を両方の試験管に加え、そのDNAがMtb内に注入されて細胞を乗っ取り、子孫ウイルスを作るのに十分な時間をかける。ファージにコードされた溶解機能によるMtbの溶解の前に、Mtbの内部に浸透しないため全ての細胞外ファージを死滅させる殺ウイルス剤化合物を添加して、Mtbに感染しなかった細胞外ファージを死滅させる。次に、殺ウイルス剤および抗生物質を除去し、増殖の速いマイコバクテリアであるM.smegmatis(Msmeg)を、ファージに感染したMtbに加える。次に、混合物を寒天皿上に播種する。Msmegは迅速に複製するため、37℃で一晩インキュベーションした後、寒天プレート上に細菌叢が形成される。さらに、MsmegはD29に効率的に感染し、D29は、Msmegの細菌叢上に明確で視認可能なプラークを形成する。それぞれのプラークは、D29に最初に感染したMtb細胞、および産生された子孫ファージに相当する。このアッセイは、少数のMtbにおけるD29の複製を定量的に測定する。さらに、ファージの複製は完全に宿主細胞の代謝能力に依存しているため、未処理の対照と比較した、抗病原菌剤にさらしたMtbにおけるD29の複製の定量的な測定は、抗生物質がMtbの代謝を阻害し得る程度と、最終的な細菌の増殖とを正確に測定する。低度のウイルス複製は、抗生物質介在性の細胞代謝の阻害を反映する一方で、高度のウイルス複製は、Mtbの薬剤耐性を生物学的に実証するものである。最終的に、このファージに基づく薬剤耐性の検出アッセイは、薬剤が結核に対して有する生物学的な効果を直接的に測定する生物学的試験である。これまでの生物学的試験は増殖に基づくものであり、薬剤処理した試料と未処理の試料との間での細菌の増殖の違いを同定するために数週間を要していたが、FASTPLAQUE−RESPONSE(商標)は、細胞の増殖を測定しない、迅速な生物学的試験である。その代わりに、FASTPLAQUE−RESPONSE(商標)は、宿主細胞の代謝に対する抗病原菌剤の効果を測定するのにマイコバクテリオファージD29を用いる。FASTPLAQUE−RESPONSE(商標)は、正確で迅速な試験ではあるが、非常に複雑であり、また、寒天プレート上でのプラーク形成によるウイルスの増殖の分析が熟練技術者により実験室で行われなくてはならないため、資金不足の状況では広く用いられない。
【0017】
Mtbの薬剤耐性を検出するための、ファージに基づく別の系は、FASTPLAQUE−RESPONSE(商標)のように、マイコバクテリオファージ全体の複製および拡散能力を測定するのではなく、ファージによりコードされた単一のポリペプチドの酵素活性を測定するものである。この系は、Albert Einstein College of Medicineの研究者によって最初に開発されたものであり、ルシフェラーゼレポーターアッセイ(LRA)として知られている。LRAは、ホタル(Photinius pyralis)から得られたルシフェラーゼ遺伝子を高度に発現するように操作された、マイコバクテリオファージTM4の組み換え型を用いる。ルシフェラーゼは、ATPおよび酸素分子の存在下で、その基質であるルシフェリンが切断される際に光子(photon of light)を放出する、単一のサブユニットからなる酵素である。したがって、ルシフェラーゼの存在は、その産生された光を検出することによって測定することができる。未処理Mtbへのルシフェラーゼレポーターファージ(LRP)の感染の間、ルシフェラーゼポリペプチドは蓄積し、その酵素活性は、Mtb細胞内に容易に進入するルシフェリンを加えた後、光子の産生を測定することにより検出することができる。薬剤感受性のMtbを適切な抗結核抗体と共にインキュベートすると、細胞が完全に死滅するか、または細胞の代謝能力が低下する。アデノシン三リン酸(ATP)は、必須の細胞内ポテンシャルエネルギー源であり、かつルシフェラーゼ活性は、酵素活性だけでなくルシフェラーゼ酵素の合成にもATPを必要とするため、ルシフェラーゼは、細胞の代謝能力の優れた指標であり、したがって所与の抗病原菌剤が細胞の生存能力に対して有する効果の優れた指標である。抗結核抗生物質で処理した薬剤感受性MtbへのLRPの感染の間、ルシフェラーゼ酵素の合成およびその後の光産生は、抗結核抗生物質を加えていない、LRPに感染した対照と比較して、著しく減少する。ルシフェラーゼ活性におけるこの差異は、Mtbに対する抗病原菌剤の有効性を実証するものである。しかし、薬剤処理した、LRPに感染したMtbにおける光産生が、未処理の対照と類似している場合、Mtb分離株は薬剤耐性であると同定される。LRAは、第一選択抗病原菌剤に対するMtbの耐性を試験する臨床試験において評価されており、90%を超える感度および100%の特異性を有することが示されている。薬剤耐性Mtbの検出を速めるための優れたツールではあるが、非常に高機能の照度計のみが、臨床標本内に存在する少数の細菌からのルシフェラーゼの光産生を検出することができる。したがって、LRAは、照度計を購入および稼動することができない、資金不足の状況においては用いることができない。
【0018】
臨床標本から直接的に薬剤耐性を迅速に同定するための最近の取組みでは、一般に用いられる抗結核薬に対する耐性をもたらす特定のMtbゲノム位置検出するために、核酸増幅(NAA)が用いられる。1つの例は、Hain Lifescience(Nehren、Germany)のGENOTYPE(登録商標)MtbDRであり、これは、妊娠検査のようなラテラルフローストリップを用いて、臨床試料に由来するMtbのDNAから増幅した特定の薬剤耐性対立遺伝子を検出するものである。15を超えるRIFおよびINHに対する耐性をもたらす、共通して観察される既知の突然変異が存在するため、GENOTYPE(登録商標)MtbDRは、非常に複雑で高価となっている。Cepheid(Sunnyvale、CA)による開発中の別の分子診断技術は、MtbにおけるRIF耐性の診断のみを対象としたものである。Cepheidの市場での優位性は、試料の処理およびNAAを完全に自動化した、GENEXPERT(登録商標)システムに依るところが大きい。しかし、増幅反応における個別の耐性位置の検出には、合成するのが高価であり、高機能の検出用ハードウェアを必要とする、蛍光プローブが必要である。この制限のため、Cepheidの製品は、リファンピシン耐性に関与する5つの主要な突然変異の検出に限られている。CepheidがRIFおよびINHの両方の耐性位置を同時に検出することは、非常に困難であり高価である。
【0019】
全ての現在利用可能な分子診断技術は、RIFまたはINHに耐性であるが特徴付けされていない突然変異を有しているMtb株を検出することが不可能であるため、効果的な診断に対する今日の需要を満たすことができない。これらはまた、全ての抗Tb薬に対する耐性をもたらす臨床的に関連する突然変異の全領域が知られていないため、他の第一選択抗生物質に耐性の分離株(XDR−TB株はなおさら)を同定することができない。突発的なXDR−TBを含む全ての薬剤耐性Mtb株を同定することが可能な、迅速な分子診断試験が、薬剤耐性結核の効果的な治療および制御のために重要かつ必要なツールである。このような迅速な分子試験技術の開発はまた、コレラ、クリプトスポリジウム症、リーシュマニア症、髄膜炎、および肺炎を含む他の疾患にも関連し、かつ重要であるが、これらに限定されない。さらに、病原菌の検出を可能にする正確な分子試験の開発はまた、飲料水から実験試薬までの試料タイプの、汚染物における汚染物質の検出に有用である。
【0020】
マイコバクテリアによる疾患
マイコバクテリアの感染は、結核などの疾患として現れることが多い。マイコバクテリアが原因のヒトの感染は、古代から広まっており、今日、結核は、依然として主な死亡原因である。19世紀の中ごろから、生活水準の進歩に伴って疾患の発生が減少したが、マイコバクテリアによる疾患は依然として、医療資源が限られている国においては罹患および死亡の主な原因を構成している。さらに、マイコバクテリアによる疾患は、免疫不全の患者における重篤な播種性の疾患の原因となり得る。世界各地の多くの保健機関の取組みにもかかわらず、マイコバクテリアによる疾患の撲滅はいまだ達成されておらず、撲滅が近いわけでもない。世界の人口の3分の1近くが、一般に結核菌と呼ばれるMycobacterium tuberculosis群に感染しており、その約800万件が新たな症例であり、毎年200〜300万人が、結核が原因で死亡している。結核は、単一の病原因子に起因する、最も多くのヒトの死亡原因である(Dyeら、J.Am.Med.Association、282、677〜686、(1999)、および2000 WHO/OMS Press Releaseを参照されたい)。
【0021】
数十年減少した後、結核は現在増加している。アメリカ合衆国では、最大1000万人が感染していると考えられている。約28000件の新たな症例が1990年に報告されており、1989年に対して9.4パーセント増加している。1985年から1990までの間に、結核の症例において16パーセントの増加が見られた。過剰に密集した住環境および共有空間はとりわけ、結核の広がりにつながっており、アメリカ合衆国の多くの都市において囚人間およびホームレス間で見られた事例の増大の原因となっている。「後天性免疫不全症候群」(AIDS)を有する全患者の約半分がマイコバクテリアの感染に罹患すると考えられ、結核はとりわけ深刻な合併症である。AIDS患者は、臨床的結核を発現するリスクが高く、抗結核治療は、AIDS患者でない人よりも効果が低いと思われる。したがって、感染は、命に関わる播種性疾患に進行することが多い。
【0022】
M.tuberculosis以外のマイコバクテリアが、AIDS患者を苦しめる日和見感染において見られることが増えている。M.avium−intracellulare群(MAC)から得られた生物、とりわけ血清型4および8は、AIDS患者から得られたマイコバクテリア分離株の68%を占める。膨大な数のMAC(組織1グラム当たり最大10
10個の抗酸菌)が見られるため、感染したAIDS患者の予後は不良である。
【0023】
世界保健機関(WHO)は、結核に対する闘いを奨励し続けており、「予防接種拡大計画」(EPI)などの予防戦略および「短期直接監視下治療」(DOTS)などの治療順守戦略を推奨している。結核の撲滅のためには、診断、治療、および予防が等しく重要である。結核罹患患者(active tuberculosis patients)の迅速な検出は、約90%の治癒をもたらすことが期待される早期治療につながる。したがって、早期の診断は結核との闘いに重要なものである。さらに、治療順守により、感染の廃絶だけではなく、薬剤耐性株の出現の減少も確実となる。
【0024】
薬剤耐性のM.tuberculosisの出現は、極めて憂慮すべき現象である。少なくとも1つの標準的な薬剤に耐性であると明らかにされた新たな結核症例の割合は、1980年代の初めには10パーセントであったのが、1991年には23パーセントまで増加した。したがって、治療計画の順守もまた、結核を廃絶し、薬剤耐性株の出現を予防するための取組みにおいて極めて重要な構成要素である。同様に重要であるのが、マイコバクテリアの薬剤耐性株により生じる疾患に対するワクチンおよび治療法として効果的な、新たな治療用作用物質の開発である。
【0025】
多剤耐性結核(MDR−TB)は、結核の治療に用いられる初回薬の2つ以上に耐性である結核の形態である。1つまたは複数の形態の治療に対する耐性は、細菌が抗生物質の攻撃に抵抗する能力を発現し、細菌の子孫にその能力が受け継がれると生じる。細菌株の全体が、様々な治療の効果に抵抗するこの能力を遺伝的に受け継ぐため、耐性は1人から他者へと広がり得る。
【0026】
世界保健機関(WHO)は、世界各地において最大5000万人が結核菌の薬剤耐性株に感染し得ると推定している。また、30万件の新たなMDR−TBの症例が毎年世界中で診断されており、現在、MDR−TBの症例の79パーセントが、結核の治療に通常用いられている3つ以上の薬剤に耐性を示している。WHOによると、さらに効果的な予防手段が採用されなければ、10億人近くが次の10年間に結核に感染するとされている。
【0027】
2003年に、CDCは、アメリカ合衆国における結核症例の7.7パーセントが、結核の治療に用いられる第一選択薬であるイソニアジドに耐性であると報告した。CDCはまた、アメリカ合衆国における結核症例の1.3パーセントがイソニアジドおよびリファンピシンの両方に耐性であると報告した。リファンピシンは、イソニアジドと共に、最も一般に用いられている薬剤である。
【0028】
明らかに、治療の最中または前に結核菌の薬剤耐性株が発現する可能性は、保健機関および医療従事者にとって主要な懸案事項である。結核の治療に用いられる薬剤には、エタンブトール、ピラジナミド、ストレプトマイシン、イソニアジド、モキシフロキサシン、およびリファンピシンが含まれるが、これらに限定されない。治療の的確な方針および期間は特定の個人に合わせるが、いくつかの戦略が当業者に周知である。
【0029】
37種を超えるマイコバクテリアが同定されているが、全てのヒト感染の95%超が、6種のマイコバクテリア、すなわちM.tuberculosis、M.avium intracellulare、M.kansasii、M.fortuitum、M.chelonae、およびM.lepraeにより生じている。ヒトにおける最も流行しているマイコバクテリア疾患は、M.tuberculosis、M.bovis、またはM.africanumを含むマイコバクテリア種により主に生じる結核である(Merck Manual 1992)。感染は、典型的には、肺中の末端経路に到達し得る感染性粒子の吸入により開始する。肺胞マクロファージによる貪食の後、桿菌は自由に複製し得、食細胞を最終的に破壊する。その結果、食細胞の破壊によりさらなるマクロファージおよびリンパ球が感染部位に移動し、そこでそれらがまた最終的に排除される、カスケード効果が生じる。疾患は、局所的なリンパ節、ならびに、血流、骨髄、脾臓、腎臓、骨、および中枢神経系などの他の組織内に移動する、感染したマクロファージによる初期段階の間にさらに広がる(Murrayら、Medical Microbiology、The C.V.Mosby Company 219〜230(1990)を参照されたい)。
【0030】
マイコバクテリアの毒性の原因となる因子は依然として明らかに理解されていない。多くの研究者により、細胞壁および細菌表面の脂質が、コロニーの形態および毒性の一因として関係しているとされている。特定のマイコバクテリア細胞表面上のC−ミコシドが、マクロファージ内での生物の生存を促進するために重要であることが、証拠により示唆されている。コード因子であるトレハロース6,6’ジマイコレートが、他のマイコバクテリアに関係があるとされている。
【0031】
コロニーの形態と毒性との相互関係は、M.aviumにおいてとりわけ明白である。M.aviuim菌は、いくつかの異なるコロニー形態で生じる。従来の実験用培地上で透明またはラフなコロニーとして増殖する桿菌は、組織培養においてマクロファージ内で倍増可能であり、感受性マウスに注射すると毒性であり、かつ抗生物質に耐性である。実験用培地上で維持される粗面桿菌または透明桿菌は、不透明なRコロニー形態を自然に取ることが多く、その時、それらはマクロファージ内で倍増不可能であり、マウスにおいて無毒であり、かつ抗生物質に高度に感受性である。M.aviumの透明株、粗面株と不透明株の間のコロニー形態における差異は、保護的な被膜として作用する、透明かつ粗面な生物の表面上の、糖脂質被覆の存在に依ることがほぼ確実である。この被膜または被覆は、リソソーム酵素および抗生物質から毒性のM.avium生物を保護すると思われるC−ミコシドで主に構成される。一方で、非毒性の不透明な形態のM.aviumは、非常にわずかなC−ミコシドを表面上に有する。抗生物質に対する耐性およびマクロファージによる殺菌に対する耐性の両方が、M.aviumの表面上の糖脂質の障壁に起因している。
【0032】
マイコバクテリア感染の伝統的な診断は、病原体の単離および同定によって確認されるが、従来の診断は、喀痰塗抹標本、胸部X線試験(CXR)、および臨床上の兆候に基づくものである。培地上でのマイコバクテリアの単離は、4〜8週間もの期間を要する。種の同定はさらに2週間かかる。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、micobacterium tuberculosisの直接的な試験、または増幅されたmycobacterium tuberculosisの直接的な試験(MTD)などのマイコバクテリアを検出するためのいくつかの他の技術、および放射性標識を用いる検出アッセイが存在する。これらの試験のほとんどは、煩雑であり、高レベルの技術的専門知識が必要であり、かつ有用な結果が得られるまでに長い時間を要することが多い。
【0033】
M.tuberculosisにより生じる感染を検出するために広く用いられる1つの診断試験は、ツベルクリン皮膚試験である。多くの種類の皮膚試験が利用可能であるが、典型的には、ツベルクリン抗原の2つの調製物、すなわち旧ツベルクリン(OT)または精製タンパク質誘導体(PPD)のうち1つを用いる。抗原調製物は、皮内投与により皮膚内に注射するか、または、局所的に塗布してその後、多突起の接種器を用いて皮膚内に侵襲的に移動させる(Tine試験)。皮膚試験による診断方法にはいくつかの問題が存在する。例えば、Tine試験は、皮内層に注射される抗原の量を正確に制御することができないため、一般的には推奨されない(Murrayら、Medical Microbiology、The C.V.Mosby Company 219〜230(1990)を参照されたい)。
【0034】
ツベルクリン皮膚試験は広く用いられているが、典型的には結果が出るまでに2〜3日を要し、多くの場合、マイコバクテリアに曝露したことがあるが健康な患者において偽陽性が時々見られるため、その結果は不正確である。さらに、活性な結核患者だけではなく、カルメット・ゲラン菌(BCG)をワクチン接種された人、およびマイコバクテリアに感染したことがあるが疾患を発現していない人においても陽性の結果が見られるため、誤診の事例が頻繁にある。したがって、ツベルクリン皮膚試験によって、結核罹患患者を家族内結核菌接触者などの他者から区別することは困難である。さらにツベルクリン試験は、M.tuberculosis以外のマイコバクテリア(MOTT)に感染した個体において交差反応を生じることが多い。したがって、現在利用可能な、皮膚試験を用いる診断は、間違いおよび不正確となることが多い。
【0035】
薬剤感受性生物により生じる結核の標準的な治療は、4種の薬剤を2カ月にわたり投与し、その後2種の薬剤を4カ月にわたって投与することからなる、6カ月の投与計画である。6カ月間の治療にわたり投与される2つの最も重要な薬剤は、イソニアジドおよびリファンピシンである。投与計画は比較的単純であるが、その投与は非常に複雑である。8種または9種の錠剤を毎日摂取することが、治療の第一段階の間に必要であることが多く、これは困難かつ分かりにくいものであると予想される。重病の患者でさえも、数週間以内に兆候がなくなることが多く、数カ月以内にほぼ全員が治癒すると思われる。しかし、治療が最後まで続けられなければ患者は再発し、最後まで治療を続けなかった患者での再発率は高い。様々な形態の患者中心のケアが、治療の順守を促進するために用いられる。患者が自らの投薬を行うことを確実にする最も効果的な方法は、患者がそれぞれの薬剤のそれぞれの用量を摂取することを医療チームのメンバーに監視させることを伴う、直接監視下治療を用いることである。直接監視下治療は、病院、患者の家、または互いに合意したあらゆる場所において行うことができる。薬剤感受性生物によって生じる結核を有し、治療を完了する患者のほぼ全員が治癒し、再発のリスクは非常に低い(「Ending Neglect:The Elimination of Tuberculosis in the United States」L.Geiter編、Committee on the Elimination of Tuberculosis in the United States、Division of Health Promotion and Disease Prevention、Institute of Medicine、未刊行)。
【0036】
FDAは、結核の治療に用いられる3つの主要な薬剤(イソニアジド、リファンピシン、およびピラジナミド)を1つの錠剤に組み合わせる投薬を承認した。これにより、毎日患者が摂取しなくてはならない錠剤の数が減り、MDR−TBの発現への一般的な経路である、患者が3つの薬物のうち1つのみを摂取することが不可能となる。これにもかかわらず、当技術分野において、とりわけ結核菌株が薬剤耐性であるケースにおいて、結核を治療する必要性が依然として存在する。
【0037】
必要とされているのは、感染性疾患、とりわけマイコバクテリアによる疾患により引き起こされる、これまでに存続している、およびこれまでに展開している課題に対処するための、効果的な診断および治療用のツールである。さらに、抗生物質の使用は次第に広まっているため、そして、抗生物質の使用が規定の推奨される投与計画に従っていないいくつかのケースにおいて、本発明者らは、標準的な治療法にはもはや応答しない、感染性病原体および新たな病原菌株に直面していることに気づいた。したがって、必要とされているのは、感染性病原体を同定するための効果的なツールであり、このようなツールはまた好ましくは薬剤感受性を決定することができるものである。重要なことは、必要とされているのは、使用が容易であり、必要な試験時間が最小限であり、かつ安価である、疾患が蔓延かつ資金が限られている世界の地域において容易に利用可能な、診断ツールである。
【0038】
同様に必要とされているのは、感染性病原体の生存能力に関する情報を提供し、かつ薬剤感受性を決定する、感染性病原体の検出を可能にする、効率的、単純、かつ正確な分子試験技術である。このような技術の使用は、感染性疾患のみに限定されるものではないが、それらの有用性は、生物学的なものから産業的なものまでの様々な試料における病原菌および汚染物の検出および評価にまで拡張することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0039】
本発明は、感染性病原体および病原菌の検出用、分子の抗生物質耐性/感受性試験用および微生物の生存能力の評価用の、新規な生物学的システムを含む方法および組成物を含む。特に本発明は、核酸増幅(NAA)に基づく微生物同定の速度および感度を有する、ファージに基づく薬剤耐性の生物学的検出の技術を用いるシステムを提供する。本明細書中に記載される発明の新規な特徴は、この技術により、NAAに基づく微生物同定が微生物感染の生存能力および生理機能の決定にまで拡張されることである。本発明特有の方法論は、既知の進化している病原菌を検出して、このような病原菌の生存状態を提供し、かつ薬物感受性を評価するための、効果的な診断および治療用のツールを提供する。本明細書中に記載の方法は、使用が容易であり、必要な試験時間が最小限であり、かつ安価である。
【0040】
核酸増幅に基づく微生物検出技術は非常に感度が高く、生物試料における細菌などの、非常に少数の感染性病原体および病原菌の存在を正確に同定することができる。しかし、このような技術は核酸の検出のみに依存しているため、細胞の代謝活性を区別することができず、細胞の核酸が細胞の死もしくは溶解の後にも存在し、かつ検出可能であるため、細胞の構造完全性さえも区別することさえできない。したがって、現在利用可能な技術は、核酸の由来源である病原菌または生物の生存能力に関するいかなる有用な情報を提供することもなく、特定の核酸の存在を単に検出することにおいて効果的であるにすぎない。このことは、試験試料の試料自体が汚染されている可能性があり、その結果過った同定が行われるという状況下では、特に面倒なことである。さらに、現在利用可能な技術は、核酸の由来源である生物の生存能力を評価することなく核酸を検出するだけであるため、このような試験は、死んだ細菌のDNAが依然として陽性として読まれることから、抗生物質治療が成功した後でも陽性であることが多い。本明細書に記載される技術には生存細胞内への代理マーカー位置(SML)の組込みが必要であり、SMLは次に増幅され、NAAに基づく技術によって検出されるため、本明細書において記載される方法は、現在利用可能な装置の課題を克服するものである。細胞の生存能力に干渉する抗生物質はSMLの生成を阻害し、増幅産物は検出されないため、抗生物質が感染性生物に対して効果的であることが実証される。
【0041】
現在利用可能な技術の別の欠点は、抗生物質(または薬剤)の感受性を評価するほとんどの試験が、特定の、同定前の遺伝子突然変異の検出に依存することである。当業者によってよく認められるように、このような依存は非常に問題がある。抗生物質または薬剤に対する耐性をコードし得る微生物のゲノムにおいて、個別の、異なる突然変異が多く存在することがしばしばあるため、耐性の突然変異を検出するための核酸に基づく方法は複雑であり、かつ以前の臨床的に関連する耐性付与突然変異の同定、特徴付け、および検証に依存する。このような特徴で設計された試験は、耐性が既知の突然変異に正確に制限される場合に限り有用であり得るにすぎず、実施に移行した場合に、これが安全なまたは完全な仮定であることは、めったにない。本明細書に記載される方法は、この制限を克服するための固有の解決法を提供するものである。すなわち、特定の抗生物質/薬剤に対する耐性をもたらす、特定の、既知の、および確認された細胞にコードされた突然変異を検出する代わりに、本願の技術は、本願の技術が、細胞の生存能力または薬剤耐性の表現型の読み出しとして役立つ、細胞内の単一の新たな核酸種(SML)を生成するため、細胞ゲノム内にコードされた、耐性を付与する特定の突然変異のこれまでの知識を必要とせず、したがって、生存能力のあるおよび/または薬剤耐性の細胞を検出するための核酸に基づく方法を非常に単純化し、かつその感度を非常に増大させる。
【0042】
これまでの研究により、生物学的試料にバクテリオファージを加えた後、ファージの代謝および/または再生を測定して、生存能力があるかまたは薬剤耐性の宿主細菌を生物学的試料が含むかどうかを決定する方法の実現可能性が実証されている。多くの細菌が容易に培養可能であり、迅速に複製する一方で、他の多くは、培養不可能であるか、または、増殖に基づくアッセイにより直接検出するには非常に遅い速度で複製する。生存能力の有無または薬剤耐性の宿主細胞の存在の有無を決定するために、生物学的試料の調査用のファージを用いると、増殖の遅い細菌を検出する速度が、非常に速まることが示されている。さらにファージはまた、溶菌ファージの複製が1回または2回の細胞倍加以内で生じるため、増殖の速い細菌の検出も速め得るが、細胞の増殖に基づく検出法には、多くのさらなる集団の倍加が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0043】
ここに記載される方法により、生物学的な抗生物質感受性試験(AST)の正確性ならびにNAAに基づく検出の感度および速度を有する、一般的なASTが可能になる。さらに本発明は、これまでの薬剤耐性に関与する突然変異の同定に依存しないため、ファージの宿主細菌に対する薬剤の有効性のインビトロでのアッセイにより評価され得る、全ての形態の薬剤耐性の診断に適用可能である。
【0044】
その3つの測定基準である、薬剤への曝露、ウイルス感染、および自動化されたNAAに基づく検出をわずかに修飾することで、本明細書中に記載される発明は、ウイルスおよび他の類似の系に感染した、あらゆるおよび全ての細菌病原体における薬剤耐性の検出に、容易に適用することができる。この系は、伝統的な方法では診断に長い時間を要する、増殖が遅い細菌の耐性プロフィールの決定において、とりわけ有用である可能性を有している。このような細菌には、例えば、Mycobacterium avium、Legionella pneumophilia、Heliobacter pylori、Streptococcus adjacent、Rickettsia prowazekii、およびAcinetobacter baumanniiが含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
一実施形態において、本願明細書中に記載される発明は、生存能力の有無および/または抗生物質耐性の細菌を検出するための、一般的なファージに基づく生物学的アッセイを含み、このアッセイにおいて、ファージの感染が成功すると、様々な核酸増幅技術により検出することができる、ファージおよび/もしくは宿主細胞の核酸配列における異なる変化、修飾、ならびに/または代謝が生じる。本明細書中に記載される発見に本発明者らが想到するまでは、いずれの他の団体も、ファージおよび/または宿主細胞の核酸を特異的および予想通りに改変し、かつ細胞の生存能力の、核酸に基づく代理マーカーとして作用する、外因性の機能を宿主細胞に送達するのにファージを用いていなかった。この技術的革新の利点は、ファージに基づく細胞の生存能力の生物学的決定と、核酸に基づく検出技術の速度および感度とを独自に組み合わせて、生物学的試料中の、生存能力を有する細菌、または薬剤耐性の細菌の存在についての、迅速かつ感度の高い試験を提供することである。
【0046】
したがって、本発明の目的は、感染性病原体、微生物、または病原菌により生じる疾患の診断のための方法および組成物を提供することである。
【0047】
本発明のさらなる目的は、感染性疾患の診断および検出のための方法および組成物を提供することである。
【0048】
本発明の別の目的は、結核を含むがこれに限定されない微生物による疾患の検出、治療、および予防のための方法および組成物を提供することである。
【0049】
本発明のさらに別の目的は、核酸増幅技術を用いた、感染性疾患の効果的な診断および検出のための方法および組成物を提供することである。
【0050】
本発明の別の目的は、核酸増幅技術を用いた、マイコバクテリアによる疾患の効果的な診断および検出のための方法および組成物を提供することである。
【0051】
本発明のさらに別の目的は、ファージに基づく薬剤耐性の生物学的検出法を用いた、感染性疾患の効果的な診断および検出のための方法および組成物を提供することである。
【0052】
本発明の別の目的は、ファージに基づく薬剤耐性の生物学的検出法を用いた、マイコバクテリアによる疾患の効果的な診断および検出のための方法および組成物を提供することである。
【0053】
本発明の別の目的は、核酸増幅技術およびファージに基づく薬剤耐性の生物学的検出法を用いた、感染性疾患の効果的な診断および検出のための方法および組成物を提供することである。
【0054】
本発明の別の目的は、核酸増幅技術およびファージに基づく薬剤耐性の生物学的検出法を用いた、マイコバクテリアによる疾患の効果的な診断および検出のための方法および組成物を提供することである。
【0055】
本発明のさらに別の目的は、核酸増幅技術およびファージに基づく薬剤耐性の生物学的検出法を用いた、感染性疾患の効果的な診断および検出のための方法および組成物を提供することであり、ここで、感染性疾患は、細菌性病原体、菌学的病原体、寄生性病原体、およびウイルス性病原体により生じるものである。
【0056】
本発明の別の目的は、核酸増幅技術およびファージに基づく薬剤耐性の生物学的検出法を用いた、感染性疾患の効果的な診断および検出のための方法および組成物を提供することであり、ここで、感染性疾患は、ブドウ球菌属、連鎖球菌科、ナイセリア科、球菌、腸内細菌科、シュードモナス科、ビブリオ科、カンピロバクター、パスツレラ科、ボルデテラ属、フランシセラ属、ブルセラ菌、レジオネラ科、バクテロイデス科、グラム陰性菌、クロストリジウム属、コリネバクテリウム属、プロピオニバクテリウム属、グラム陽性菌、炭疽菌、アクチノミセス属、ノカルジア菌、マイコバクテリウム、Helicobacter pylori、Streptococcus pneumoniae、Candida albicans、トレポネーマ属、ボレリア属、レプトスピラ属、マイコプラズマ属、ウレアプラズマ属、リケッチア属、クラミジア属、全身性真菌症、日和見真菌症、原虫、線虫、吸虫、条虫、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、パポバウイルス、肝炎ウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、コロナウイルス、ピコルナウイルス、レオウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、ブニヤウイルス科、ラブドウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、およびレトロウイルスにより生じるものである。
【0057】
本発明のさらに別の目的は、核酸増幅技術およびファージに基づく薬剤耐性の生物学的検出法を用いた、感染性疾患の効果的な診断および検出のための方法および組成物を提供することであり、ここで、感染性疾患は、ハンセン病、クローン病、後天性免疫不全症候群、ライム病、ネコ引っ掻き病、ロッキー山紅斑熱、およびインフルエンザを含む。
【0058】
本発明のさらに別の目的は、核酸増幅技術およびファージに基づく薬剤耐性の生物学的検出法を用いた、マイコバクテリアによる疾患の効果的な診断および検出のための方法および組成物を提供することであり、ここで、マイコバクテリアによる疾患は結核を含む。
【0059】
本発明のさらに別の目的は、M.tuberculosis群、M.avium intracellulare、M.kansarii、M.fortuitum、M.chelonoe、M.leprae、M.africanum、M.microti、M.bovis BCG、またはM.bovisを含むマイコバクテリア種により生じる、マイコバクテリアによる疾患の効果的な診断および検出のための方法および組成物を提供することである。
【0060】
本発明のさらに別の目的は、Mycobacterium−fortuitum、Mycobacterium marinum、Helicobacter pylori、Streptococcus pneumoniae、およびCandida albicansにより生じる感染性疾患の効果的な診断および検出のための方法および組成物を提供することである。
【0061】
本発明の別の目的は、感染性病原体の効果的な検出のための、およびこのような感染性病原体の生存能力の決定のための方法および組成物を提供することである。
【0062】
本発明のさらに別の目的は、感染性病原体の効果的な検出のための、およびこのような感染性病原体の薬剤感受性の決定のための方法および組成物を提供することである。
【0063】
本発明の別の目的は、感染性病原体の効果的な検出のための、およびこのような感染性病原体の薬剤感受性の決定のための方法および組成物を提供することであり、薬剤は、イソニアジド、リファンピシン、エタンブトール、ピラジナミド、ストレプトマイシン、クロファジミン、リファブチン、オフロキサシンおよびスパルフロキサシンなどのフルオロキノロン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ダプソン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、エリスロマイシン、シプロフロキサシン、ドキシサイクリン、エリスロマイシン、アンピシリン、アンフォテリシンB、ケトコナゾール、フルコナゾール、ピリメタミン、スルファジアジン、クリンダマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、アトバコン、ペンタミジン、パロモマイシン、ジクラザリル(diclazaril)、アシクロビル、トリフルオロウリジンなど、および2型抗ウイルスヌクレオシド誘導体、フォスコルナット、アンチセンスオリゴヌクレオチド、および三重鎖特異的DNA配列、フォスカルネット、ガンシクロビル、AZT、DDI、DDC、フォスカルナット、ウイルスプロテアーゼ阻害剤、ペプチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、三重鎖および他の核酸配列、またはリバビリンを含む。
【0064】
本発明のさらなる目的は、感染性病原体の効果的な検出のための、およびこのような感染性病原体の薬剤感受性の決定のための方法および組成物を提供することであり、薬剤は抗生物質を含む。
【0065】
本発明のさらなる目的は、感染性病原体の効果的な検出のための、およびこのような感染性病原体の薬剤感受性の決定のための方法および組成物を提供することであり、感染性病原体はマイコバクテリアを含み、薬剤は、リファンピシン、イソニアジド、ピラジナミド、モキシフロキサシン、およびエタンブトール、ならびにその誘導体を含む結核剤を含むが、これらに限定されない。
【0066】
本発明のさらなる目的は、感染性病原体の効果的な検出のための、およびこのような感染性病原体の薬剤感受性の決定のための方法および組成物を提供することであり、感染性病原体はマイコバクテリアを含み、薬剤は、リファンピシン、ならびにリファペンチン、リファラジル、およびリファブチンなどのリファンピシン誘導体を含む、抗結核剤を含むが、これらに限定されない。
【0067】
本発明のさらに別の目的は、感染性病原体の効果的な検出のための、およびこのような感染性病原体の薬剤感受性の決定のための方法および組成物を提供することであり、その方法は投与が容易であり、結果は、1〜20日、1〜10日、0.5時間〜10日、0.5〜24時間、2〜8時間で得られ、好ましくは2〜4時間で得られる。
【0068】
本発明のさらなる別の目的は、感染性病原体の効果的な検出のための、およびこのような感染性病原体の薬剤感受性の決定のための方法および組成物を提供することであり、その方法は自動化されたものである。
【0069】
本発明のこれらおよび他の目的、特徴、および利点は、開示される実施形態の以下の詳細な記載および添付の特許請求の範囲を参照することによって明らかとなろであろう。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1】本発明の核となる技術を示す概略図である。この概略図は、代理マーカー位置(SML)の生成をもたらす独自の機能をコードするマイコバクテリオファージによる、生存能力のあるMtbの感染を示し、このSMLはその後、確立されたNAAに基づく技術によって増幅および検出される。細胞の生存能力に干渉する抗生物質はSMLの生成を阻害し、かつ増幅産物は検出されないので、このことは抗生物質がMtbに対して効果的であることを示している。しかし、Mtbが薬剤に耐性である場合、細胞の代謝は影響を受けず、SMLは合成されることにより、試験された全ての薬剤に対するMtbの耐性を示す。ここでは、Mtbは代表的な感染性病原体として示されており、当業者には理解されるように、Mtbは別の疾患または感染状態との関連で、類似の生物で置換することができる。
【
図2】ここに記載される技術がいかにして薬剤耐性の分子検出を簡素化するかを示す、比較的な概略図である。
図2Aは、DNAを臨床試料から単離し、INHおよびRIFに対する耐性に関与する様々なMtbのゲノム位置を増幅する、HainのGenoType−MTBDR試験(先行技術)を示す。次に、増幅産物は、HainのDNAストリップ技術を用いたハイブリダイゼーションを介して分析される。対立遺伝子BでのINHに対する耐性(INH−R)が、野生型イソニアジド感受性対立遺伝子B(H−WT−B)の欠損、およびINHに対する耐性をもたらす対応する突然変異対立遺伝子(HrB)の検出を通して、この例において観察される。
図2Bは、臨床的に関連する濃度のINHの存在下で、臨床試料に由来するMtbをインキュベートすることにより、INHに対する耐性を決定し、その後、SMLファージ感染を行う本発明を示す概略図である。MtbおよびSMLの存在は、SMLと、Mtbに固有の領域であるIS
6110(Mtb IDで)とを増幅することにより決定される。当業者には明らかであるように、目的の病原菌に固有のあらゆる領域は、試料におけるその病原菌の存在を同定する目的にかなうものである。次に、増幅産物は、30以上の個別の位置ではなくIS
6110およびSMLのみが検出されればよいことを除いて、GenoType MtbDRのように分析される。SMLおよびIS
6110の存在は薬剤耐性を同定するが、IS
6110が存在しSMLが存在しない場合は、薬剤感受性であると診断される。
【
図3】MDR−TBの検出のための本発明の適用可能性を示す比較的な概略図である。
図3Aは、MDR−TBを規定する、INHおよびRIFの両方に対する耐性に関連する多くの遺伝子を検出するために設計された複雑な試験である、HainのGENOTYPE(登録商標)MtbDR試験(先行技術)の図示である。MDR−TBを検出するために、この試験は30以上の位置を分析しなくてはならず、一方はINHについて、もう一方はRIFについての、薬剤耐性をもたらす2つの対立遺伝子の存在を同時に検出し、一方でまた、対応するWT対立遺伝子の不存在も実証しなくてはならない。逆に、
図3Bは、いかにして本発明がINH耐性またはRIF耐性の検出に単純に適合されているかを示し、製造において、INHにRIFを含めるというただ1つの変更を行えばよい。どの抗結核薬が用いられるかに関わらず、読み取りは同一であるため(IS
6110およびSML)、本発明は、単独のまたは組み合わせたあらゆる薬剤試験に、容易に適合可能である。
【
図4】TM4、phAE142、およびCreをコードするレコンビナーゼレポーターファージ(RRP)の遺伝子構造を示す図である。TM4マイコバクテリオファージは、53kbの二本鎖の線状DNAゲノムをコードする。そのORFの全ては一方の鎖にコードされており、全てのファージの転写は一方向に生じる。phAE142は、gp71を調節可能なP
leftプロモーター(星印)により転写的に制御されるルシフェラーゼ遺伝子をコードする。phAE142におけるルシフェラーゼORFのP
left転写の方向は、点線の矢印で示されている。RRPを生じさせるために、ルシフェラーゼORFは、CreのORF、および介在するDNA配列により分離されている2つのloxP部位と置換される。loxP部位は互いに逆方向を向いており、介在するDNA配列の反転を仲介する。P1、P2、P3、およびP4は、RRPにおける固有のDNA配列(T1〜T4)にハイブリダイズし、組換え産物の分析において用いられる、NAAプライマーを示す。組換えられていないRRPにおいて、プライマー対P1−P3およびP2−P4は、NAA産物の生成が可能である。
【
図5】RRPにおけるSMLの生成を示す概略図である。RRPでの生存能力のあるマイコバクテリア細胞の感染の間、Creレコンビナーゼタンパク質が合成され、ウイルスのloxP部位の間での分子内組換えを仲介する。この例において、loxP部位の方向は、CreがloxP部位の間のDNA配列の反転を仲介するようなものである。例えばプライマーP1およびP2の間の領域は、元の、組換えられていないウイルスには存在しないため、この反転によりSMLが生じ、NAA産物は、レコンビナーゼ介在性の反転の後にこのプライマー対で生成され得る。プライマー対P3−P4はまた、ウイルスにおける新たなDNA配列またはSMLを検出することができる。
【
図6】介在するDNA配列の切除を介した、SMLのCre介在性の生成を示す概略図である。loxP部位が同一の方向にある場合、すなわち対向していない場合、Cre介在性の組換えにより、介在する配列が切除され、一方のloxP部位は基質に残り、介在する配列はそれ自体loxP部位を有する環状DNA分子となる。この構築物において、SMLは、プライマー対P2−P3を用いたNAAを介して検出される。
【
図7】Sp6のRNAポリメラーゼレポーターファージの遺伝子構造を示す図である。TM4に基づくマイコバクテリオファージにおける真正のファージの転写の方向は、図面の一番上の点線の矢印で示されている。phAE412におけるルシフェラーゼをコードする部位の遺伝子構造が示されており、P
leftプロモーターからのルシフェラーゼ遺伝子の転写の方向(灰色の星印および付随する矢印)が示されている。Sp6のRNAポリメラーゼレポーターファージの生成において、phAE142のルシフェラーゼ遺伝子はSP6のRNAと置換される(および付随する点線の矢印)。続いて、真正のファージの転写に関連する、アンチセンス鎖上のレポーター配列の、Sp6のRNAポリメラーゼ依存性の転写を指示するSp6プロモーターが、アンチセンス鎖上の転写されていないと思われる領域内に組み込まれる。Sp6依存性の転写(赤い星印および付随する矢印)は、RNAを増幅するNAA技術によってプライマーP1およびP2を用いて検出することができる。
【
図8】Sp6のRNAポリメラーゼレポーターファージによる感染の間の、SMLの生成を示す概略図である。ファージのゲノムが細胞内に挿入されると、SMLは一方の鎖上で転写および翻訳される。Sp6のRNAポリメラーゼが転写および翻訳されると、SMLは、転写されていない部位内に組み込まれたSp6プロモーター配列からの転写の開始を指示する。RNAはこの部位からのみ生じ得るため、Sp6のRNAポリメラーゼが合成されると、RNAはSMLを構成し、RNAに基づくNAA反応において適切なプライマーを用いて検出することができる。
【
図9】いくつかの細菌の属または種の同時同定およびASTのためのシステムを示す概略図である。臨床試料を、異なる抗病原菌剤(1、2、または3)をそれぞれ含む3つ(それ以上または以下であってよい)の容器に分割する。適切なインキュベーション時間の後、病原体A、B、またはCにそれぞれ感染する、異なる種または属に特異的なSMLファージを加え、適切な長さの時間インキュベートして、病原体A、B、またはCが存在するか、および試験した抗病原菌剤のいずれかに耐性であるかを決定する。次に、分析のために、核酸を増幅し、DNAストリップ様のアッセイシステムにハイブリダイズする(または加える)。この例において、種Bが、そのID領域が全てのストリップ上で検出されるため、臨床試料内に存在する病原体である。SMLは、抗病原菌剤1および3とのインキュベーションの後に検出されるが、2ではされない。したがって、薬剤2は病原体Bを死滅させ、患者に処方されるべきである。
【
図10】直接的な「自然に存在する」SMLの検出に用いることができる、バクテリオファージにおける転写的な調節メカニズムを示す概略図である(実施例5を参照されたい)。
【
図11】
図11Aは、phMM−001、phMM−002、およびphMM−003を示す概略図である。
図11Bは、phMM−002およびphMM−003についての適切な機能をコードする適切なPCR産物の適切な組込みを確認するために行われた実験の結果である(実施例6を参照されたい)。
【発明を実施するための形態】
【0071】
本発明は、本明細書に含まれる特定の実施形態の、以下の詳細な説明を参照することにより、より容易に理解することができる。しかしながら本発明は、その特定の実施形態の特定の詳細に関して記載されているが、そのような詳細は、本発明の範囲に対する限定であると考えられることを意図したものではない。2007年4月5日に出願された米国仮特許出願第60/922213号、2007年5月1日に出願された米国仮特許出願第60/927287号、および2007年5月2日に出願された米国仮特許出願第60/927217号を含む、本明細書において述べる参照の全記載は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0072】
感染性病原体、病原菌、および病原性生物は、依然として、ヒトおよび動物における疾病および死亡の主要な原因である。感染性病原体および病原菌を検出するための分子技術の開発は、疾患の早期診断および治療の発展に非常に貢献しており、これらは両方共に、多くの症例において感染によりもたらされた結果としての重症度を低減させている。感染性病原体、病原菌、および外来病原体の検出は、疾患などの、そのような生物の病原性の直接的な結果の管理だけではなく、飲料水における汚染物から実験室設備における病原菌の残存までの、多種多様な状況における汚染の監視にも重要である。
【0073】
感染性病原体の検出に加えて、このような感染性病原体の生存状態および薬剤感受性を同定する必要性も増加してきている。生存状態は、免疫原性治療がうまくいっているかの重要な指標であり、正確な薬剤感受性により、生物が耐性を有する薬剤が迅速に外され、より優れた有効性を有すると予想される薬剤に置換される、治療的介入の向上が可能になる。これまでに議論されているように、医学界は薬剤耐性感染の憂慮すべき増加を予想しているため、病原性/感染性病原体および病原菌の、効率的な、有意義な、かつ早期の検出は、成功すると思われる治療を患者に提供するための、極めて重要なツールである。
【0074】
特定の懸案事項をもたらす疾患の例は結核である。結核をもたらすマイコバクテリアなどの感染は、一度は発生が減少したと考えられていたが、再び増加し、再度、健康に対する深刻な脅威となっている。結核は、単一の病原因子に起因する最大のヒトの死亡原因であり、毎年、結核に感染した2〜300万人が死亡している。人が共に密集しているかまたは低水準の住宅に住んでいる地域では、マイコバクテリアに感染している人が増えている。免疫不全の個体は、マイコバクテリアに感染し、このような感染で死亡するリスクが最も高い。さらに、マイコバクテリアの薬剤耐性株の出現により、このような感染した人の治療における問題が生じている。
【0075】
マイコバクテリアに感染した多くの人は貧しいか、または不適切な医療設備を有する地域に住んでいる。様々な障害(経済レベル、教育レベルなど)の結果、これらの個体の多くが、規定の治療計画に従うことができない。最終的には、これらおよび他の個人がいつまでも順守しないことにより、疾患が流行する。この不順守は、マイコバクテリアの薬剤耐性株の出現によって悪化することが多い。マイコバクテリアの様々な株を標的とする効果的な組成物およびワクチンが、制御下にある結核症例の数を増やすために必要である。さらに、薬剤感受性の正確な検出および同定が、患者の生存および回復を向上させるために等しく重要である。
【0076】
数十年にわたる、既存の抗生物質の誤用および長期間で複雑な治療計画の順守不足により、Mycobacterium tuberculosisの突然変異が生じており、世界各地で結核の制御に脅威を与える薬剤耐性の蔓延が生じている。イソニアジド、リファンピシン、ピラジナミド、エタンブトール、およびストレプトマイシンなどの最前線の薬剤を含む、現在規定されている薬剤の大部分は、1950年代から1970年代に開発されたものである。したがって、先行開発の結核の化学療法は、Mycobacterium tuberculosisのゲノム配列の関与、最近数十年の調合薬の革新、ならびに全国的な薬剤試験およびコンビナトリアルケミストリーを、自由に使用することができなかった。
【0077】
したがって、薬剤耐性のM.tuberculosis株および潜伏期の結核感染の治療には、非常に効果的な治療をもたらす新たな抗結核薬、ならびに短縮および単純化された結核の化学療法が必要である。さらに、マイコバクテリアによる疾患を有する患者を第一に効果的に同定および治療するために、マイコバクテリアの種を同定するだけではなく、薬剤感受性に関する情報も提供する、改良された診断手順を有することが必要である。
【0078】
本発明は、核酸増幅技術およびファージに基づく薬剤耐性の生物学的検出を用いた、感染性疾患の効果的な診断および検出のための新規な方法および組成物を提供する。本発明の方法は、あらゆる感染性病原体または汚染物質の検出に適しており、薬剤感受性に関する関連した情報もさらに提供する。さらに、本発明の方法は、感染性病原体または汚染物質の生存能力に関する情報を提供する。
【0079】
本明細書において用いる場合、感染性病原体、病原菌、病原性生物、汚染物質という用語は、侵入される宿主または環境において感染、疾患、汚染、疾病、および正常な機能の混乱をもたらす能力を有するものを含む。
【0080】
本発明は、細菌性病原体、菌学的病原体、寄生性病原体、およびウイルス性病原体により生じたものを含む(がこれらに限定されない)、感染性疾患の効果的な診断および検出のための方法および組成物を含む。このような感染性病原体の例としては、ブドウ球菌属、連鎖球菌科、ナイセリア科、球菌、腸内細菌科、シュードモナス科、ビブリオ科、カンピロバクター、パスツレラ科、ボルデテラ属、フランシセラ属、ブルセラ菌、レジオネラ科、バクテロイデス科、グラム陰性菌、クロストリジウム属、コリネバクテリウム属、プロピオニバクテリウム属、グラム陽性菌、炭疽菌、アクチノミセス属、ノカルジア菌、マイコバクテリウム、Helicobacter pylori、Streptococcus pneumoniae、Candida albicans、トレポネーマ属、ボレリア属、レプトスピラ属、マイコプラズマ属、ウレアプラズマ属、リケッチア属、クラミジア属、全身性真菌症、日和見真菌症、原虫、線虫、吸虫、条虫、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、パポバウイルス、肝炎ウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、コロナウイルス、ピコルナウイルス、レオウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、ブニヤウイルス科、ラブドウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、およびレトロウイルスが含まれる。
【0081】
本明細書において用いる場合、「結核」という用語は、M.tuberculosis群を含むマイコバクテリア種により生じる感染に通常関連する疾患状態を含む。「結核」という用語はまた、M.tuberculosis以外のマイコバクテリア(MOTT)により生じるマイコバクテリア感染にも関連する。他のマイコバクテリア種には、M.avium−intracellulare、M.kansarii、M.fortuitum、M.chelonae、M.leprae、M.africanum、M.microti、M.avium paratuberculosis、M.intracellulare、M.scrofulaceum、M.xenopi、M.marinum、およびM.ulceransが含まれるが、これらに限定されない。
【0082】
本発明はさらに、結核、ハンセン病、クローン病、後天性免疫不全症候群、ライム病、ネコ引っ掻き病、ロッキー山紅斑熱、およびインフルエンザを含むがこれらに限定されない、感染性疾患の治療に有用な方法および組成物を提供する。
【0083】
本明細書中で用いる場合、「病原性状態」とは、感染性病原体、病原菌、あるいは、疾患、疾病、もしくは汚染を生じさせる、かつ/または宿主生物もしくは環境の正常な代謝、有機機能もしくは生理的機能を混乱させる他の生物学的病原体の能力を言う。この表現は、毒性、感染性病原体の潜在的な休眠、感染性病原体の生存能力、および抗感染性の介入(例えば、薬学的/生化学的な薬剤(すなわち抗生物質)治療)に対する感受性への言及を含み得る。
【0084】
本明細書中で用いる場合、「代謝状態」という表現は、生物が増殖し、再生し、構造を維持し、およびその環境に応答する能力をもたらすプロセスを言う。
【0085】
本発明の新規な方法はさらに、様々な生物についての薬剤感受性の検出を可能にする。以下の表(表1)は、病原性生物および対応する治療物質の代表的なリストを提供するものである。本発明の方法は、表に示されるそれぞれの例に適用可能であるが、これらに限定されない。
【0087】
本発明の方法は、体液(痰、涙、唾液、汗、粘液、血清、精液、尿、および血液など)、研究試験試料、環境試料(自然界の水辺、池、共同貯水池、親水施設、水泳プール、渦流プール、温水浴槽、温泉、親水公園、天然に存在する新鮮な水、および海面の水から選択される水試料を含む、水試料)、ならびに産業試料(発酵接種材料(乳酸菌など)、化学試薬、培地、洗浄溶液など)を含むがこれらに限定されない、様々な試料における目的の感染性病原体、病原菌、および生物の検出に用いることができる。
【0088】
要約すると、本発明の新規な方法は、代理マーカー位置(SML)の生成を介した核酸マーカー(NAM)の生成を含む。ファージにコードされたポリペプチドは、NAMの生成を仲介する。病原菌の検出に用いられる確立されたNAA技術は、NAMを特異的に増幅および検出して、薬剤耐性を決定する。RNAに基づく実施形態などの一実施形態において、ファージは異種RNAポリメラーゼをコードする。タンパク質合成が可能な生存能力のある細胞の感染により、RNAポリメラーゼの翻訳が生じる。次に、ポリメラーゼは、他では存在しないRNAを、ファージゲノム内に組み込まれたその異種プロモーターから転写する。NAMは、RNAに基づくNAA技術を用いて増幅し、その後検出することができる。
【0089】
本発明の新規な方法は、ファージに基づく薬剤耐性の生物学的検出の正確さと、NAAに基づく病原菌同定の速度および感度とを独自に組み合わせたものである。この技術は、NAAに基づく病原菌同定を、細菌感染の生存能力および生理機能の決定、ならびに、先行技術の装置とは異なり、耐性の原因である遺伝子突然変異が知られているかどうかに関わらず、あらゆる目的の薬剤を含む、病原菌または細菌の生理機能に対する抗生物質の効果を観察することによる、あらゆる臨床的分離株についての完全な感受性プロフィールの決定にまで拡張する。例えば、わずかな抗結核薬のみの遺伝子標的が明らかにされているにすぎず、そしてそのうち、耐性の原因である一部の突然変異のみが同定されているにすぎないため、本発明は、全ての既存の技術に対して顕著な利点を有する。同様の利点が、結核以外の疾患についても存在する。
【0090】
本発明の少なくとも1つの固有の態様は、代理マーカー位置(SML)を合成するための固有のファージ(SMLファージ)の使用である。理想的には、同一の酵素−SMLレポーターカセットが、目的の細菌(または標的生物)に感染する既存のファージ内に挿入される。少なくとも1つのこのような酵素−SMLレポーターカセットが本明細書に記載されている(実施例および図面を参照されたい)。特定のケースにおいて、酵素−レポーターカセットに対する修飾(すなわち、コドンの最適化)が、特定の宿主細菌−ファージ系において、より効率的に機能させるために必要であり得る。
【0091】
細菌または病原菌内への核酸の導入は主に、バクテリオファージを介した細菌へのDNAの導入に関して記載されているが、当業者には理解されるように、核酸(DNAおよびRNAを含むが、これらに限定されない)はまた、電気パルス、エレクトロポレーション、および浸透圧衝撃を含むがこれらに限定されない他の方法を介して導入することもできる。
【0092】
さらに特定の実施形態において、2つ以上のファージを用いることができる。このような実施形態において、ファージは2つ以上のマーカーをコードすることができ、それにより生物または感染性病原体の複数の特徴を観察することが可能となる。
【0093】
あらゆる抗病原菌薬または薬剤(例えば、RIFおよびINH)の組合せに曝露したMtbの感染の後、本発明の固有のファージ(SMLファージ)によってSMLを合成するが、これは薬剤治療の後に細胞が依然として代謝が十分に活性である場合に限る。したがって、SMLの合成は、Mtb生物の生存状態に関する情報を提供する。したがって、個体がMtbに感染しているがMtbが薬剤治療に応答している(例えば、RIFに対して陽性の応答を有している)状況において、SMLは生じない。しかしながら、逆に、伝統的なNAAに基づく病原菌同定の使用は、Mtbの同定に限定され、薬剤感受性に関する利用可能な情報はない。
【0094】
本発明の別の重要な特徴は、確立されたNAAに基づく分子診断技術による検出にSMLを用いることを可能にする、ファージにコードされた溶解機能によるその後の細胞溶解である(
図1)。ファージにコードされた溶解機能によるMtbの溶解により、機械的な細胞溶解に対する必要性が排除され、本明細書において記載される方法の自動化が簡素化される。HainのGENOTYPE(登録商標)MtbDR試験およびCepheidのGENEXPERT(登録商標)には、Mtbから15個もの突然変異対立遺伝子および15個もの野生型対立遺伝子を増幅および検出するために細胞完全性を機械的に混乱させることが必要である(
図2Aおよび
図3A)。逆に、本発明の方法は機械的溶解を必要とせず、一方は生物(すなわちMtbのDNA)の同定のためであり、もう一方は臨床的に関連する抗生物質耐性の診断であるファージ由来のSMLのためのものである、2つの対立遺伝子のみを増幅および検出するだけでよい(
図2Bおよび
図3B)。
【0095】
本明細書に記載される、発明の必須の構成成分のうちの1つは、生存能力のある宿主細胞内でのSMLの合成である。SMLの合成には、薬剤耐性を検出するための2つの一般的な戦略、すなわち生物学的試験および遺伝子試験との間の、固有の組合せが含まれる。
【0096】
現在利用可能な検出装置とは異なり、本発明は、細胞の生存能力または薬剤耐性についての生物学的試験および遺伝子試験を一度に行うという点で独特であり、それは、本発明では、細胞の生存能力または薬剤耐性の核酸に基づくレポーターであるSMLの生成を仲介する、ファージにコードされた機能を合成するために、細胞が十分に無傷であり代謝的に活性であることが必要であるためである。薬剤耐性についてのこれまでの生物学的アッセイの読み出しは、細胞の増殖、ファージの複製、または酵素の光産生であったが、本発明が含む技術は、生物学的読み出しが、NAAに基づく検出技術によって検出することができる新たな核酸種、すなわちSMLであるものである。
【0097】
これまでの生物学的アッセイと比較して、本発明は、NAAおよび検出に一部依存するため、より良好な有用性を提供する。分子診断の企業は既に、NAAおよび検出のための単純で、迅速で、かつ手頃な料金の装置を開発しており、それに対して大幅な改良を続けている。逆に、酵素の光産生に依存するアッセイに関しては、非常に高機能の照度計のみが、臨床標本に存在する少数の細菌からのルシフェラーゼの光産生を検出することができる。ルシフェラーゼの光産生のアッセイなどのアッセイは、高価な照度計を購入および稼動することができない、資金不足の状況においては用いることができない。
【0098】
SMLの生成は、あらゆる次のカテゴリーのポリペプチド機能、すなわちDNAレコンビナーゼ、RNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼによる特定の遺伝子の転写を指示するポリペプチド(転写因子またはシグマ因子)、DNAメチラーゼ、DNAデメチラーゼ、DNA制限エンドヌクレアーゼ、DNAリガーゼ、RNAリガーゼ、ヒストンアセチラーゼ、ヒストンデアセチラーゼ、ウリジンデアミナーゼ、および、類似の機能を有する(すなわち、核酸試験によって検出することができる、細胞内のまたはバクテリオファージによって提供された核酸配列において変化を生じさせるペプチドの発現を必要とする)当業者に知られているこのような他の方法を介して行うことができる。
【0099】
本発明の方法は、同時に、生物学的ASTの利点を利用し、NAAに基づく生存能力および薬剤耐性の検出を簡素化する。さらに本方法は、ウイルスの増殖を測定する代わりに、既に自動化された技術を用いてSMLを検出することができるため、BiotecのFASTPLAQUE−RESPONSE(商標)などの現在利用可能な装置よりも容易に自動化することができる。さらに、ここに記載されるSML技術を用いる方法は、薬剤耐性に関連する位置の増幅および検出に必要な試薬および機器を大幅に簡素化することで、本発明は、既存の分子診断システムと組み合わせるのに非常に優れた技術となる。
【0100】
本発明のさらなる利点および重要な特徴は、検出時間(TTD)の範囲が約1〜20日、または1〜10日もしくは0.5時間〜10日のであることであり、別の実施形態においては、TTDは約0.5〜24時間、2〜8時間、および好ましくは2〜4時間の範囲である。
【0101】
これは、確立された迅速な試験と同程度であり、適切な抗生物質治療の適時の実施を可能にするのに明らかに十分なものである(BiotecのFASTPLAQUE−RESPONSE(商標)、Hain LifescienceのGENOTYPE(登録商標)MtbDR、CepheidのGENEXPERT(登録商標)、および本発明の方法の比較である、表2を参照されたい)。
【0103】
本発明の別の所望の特徴は、記載された方法による、細菌などの生存能力のある生物を特異的に検出する能力である。本方法は、ASTの情報を提供するように設計することができるが、薬剤または抗生物質が含まれない特定の実施形態においては、SMLファージ技術を用いて、臨床試料における生存能力のある細菌の高感度で正確な検出を提供することができる。ASTの特徴が排除されている(薬剤または抗生物質が含まれていない)このような実施形態において、類似しているが非病原性の細菌または死んだ細菌の存在による汚染により、病原性細菌の分子同定はもはや複雑になることはない。逆に、現在のNAAに基づく病原菌同定技術は、死んだ細菌から生存能力のある細菌を区別することができない。SMLは生存能力のある細菌において合成されるため、この方法は、臨床試料における生存能力のある細菌の正確な検出に用いることができる。さらに、抗生物質感受性が必要ではない実施形態において、TTDは1日よりも短い。
【0104】
以下の特定の実施例は、本発明の固有の検出方法に適用された発明を説明するものである。手順におけるわずかな変化を含む他の実施例が当業者には明らかであること、および本発明はこれらの特定の説明された実施例に限定されるものではないことを理解されたい。
【実施例1】
【0105】
抗病原菌剤耐性のマイコバクテリアを同定するための新規なマイコバクテリオファージレコンビナーゼシステム
転写的に調節されたCreレコンビナーゼおよびシグネチャータグ付けされたLoxP部位をコードするマイコバクテリオファージphAE142は、LRAアッセイにおいて現在用いられているマイコバクテリオファージである(Albert Einstein College of Medicine、Bronx、NY)。高レベルなルシフェラーゼ酵素が、その転写を強力なL5 P
leftプロモーターの制御下に置くことにより産生される。このプロモーターのさらなる利点は、L5 gp71ポリペプチドにより非常に抑制されることにより、構成的にgp71を発現するMycobacterium smegmatis(M.smeg)宿主細胞を用いることによる高力価ストックの調製の際に、ウイルスの増殖に対するルシフェラーゼの毒性効果が打ち消されるということである。本発明において、phAE142のルシフェラーゼのオープンリーディングフレーム(ORF)は、例えば、確立された分子生物学技術を用いて、バクテリオファージP1から得たCreレコンビナーゼ遺伝子で置換される。CreはP
leftプロモーターの制御下にあることにより、ファージストックの産生の際の、Cre介在性のSMLの生成が阻害される。2つのloxP部位もまた、CreのORFの下流に位置する(
図4)。レコンビナーゼレポーターファージ(RRP)は、その後loxP部位のファージゲノムを結合するCreレコンビナーゼの転写および翻訳を指示することにより、感染の際のマイコバクテリア細胞の代謝活性を測定し、かつloxP部位は互いに逆方向を向いているため、Creは介在するDNA配列の反転を仲介する。この反転は、SMLの生成を構成するファージゲノムのDNA配列を変化させる。SMLは次に、あらゆるNAAに基づく検出技術を用いて、プライマー対P1−P2またはP3−P4を用いて検出することができる(
図5)。
【0106】
loxP部位が同一の方向に向くようにloxP部位を配置すると、反転ではなく介在する配列のCre介在性の切除が生じる。この場合、切除された環状DNA分子内にSMLは生じる(
図6)。SMLが、ファージヘッド内へのパッケージングのためのcos部位を有していない環状DNA分子の一部であるために、ファージストックの増殖の際のSMLのあらゆる偽生成が感染性ファージのゲノム内に含まれないため、この戦略は、RRP製造により適している可能性がある。この偽SMLは、サイズ排除クロマトグラフィーまたは同様の分離法によってファージストックから容易に除去することができる。
【実施例2】
【0107】
抗病原菌剤耐性のマイコバクテリアを同定するための新規なマイコバクテリオファージ転写システム
この実施例は、RNAに基づくSMLレポーターファージの原理を示すものである。この戦略は、他では存在しないファージにコードされたRNAを生成するためにSp6 RNAポリメラーゼを用いる。これを達成するために、phAE142のルシフェラーゼのORFを、Salmonella typhimiriumから得た、P
left転写制御下にあるSp6 RNAポリメラーゼで置換する。さらに、Sp6プロモーターを、ファージゲノム内の、他では転写されていない部位内に組み込む。Sp6に依存したRNA転写産物を次に、RNAの検出が可能なあらゆるNAA技術を用いて検出することができる。
【0108】
RNAに基づくSMLレポーターマイコバクテリオファージ
phAE142はTM4に基づくレポーターファージである。TM4の有利な特徴は、全ての既知のORFが二本鎖ゲノムDNAの一方の鎖に含まれ、全てがゲノムの一方の末端にある単一のプロモーターから転写されることである(
図7)。その結果、ファージRNAの一方の鎖のみが、マイコバクテリアの感染の際に転写される。転写されていない部位におけるファージゲノム内への、異種RNAポリメラーゼの、コグネートDNAを結合しているコンセンサス配列の挿入により、その部位が、異種RNAポリメラーゼにより転写的に調節されるようになる。したがって、RNAポリメラーゼがまた、転写的に活性な部位におけるファージゲノム内に組み込まれる場合、RNAポリメラーゼが合成されると、コグネートプロモーター配列からのRNA転写が開始する。この系統的論述において、Sp6 RNAポリメラーゼに依存した様式でSp6プロモーターから転写されたRNAは、SMLの生成を構成する(
図8を参照されたい)。
【0109】
(実施例3〜4)
以下の実施例は、本発明のSMLファージ技術を、Mtbの薬剤耐性についての既存の遺伝子試験であるHainのGENOTYPE(登録商標)MtbDR試験に組み込むことにより、いかにして本発明が薬剤耐性についての分子遺伝子試験を簡素化し、かついかにして本発明があらゆる薬剤に対する耐性の検出に拡張され得るかを示すものである。さらに、生存能力があり薬剤耐性である細菌の検出に対する、本発明の他の適用が説明されている。実施例が、DNAに基づくNAAの方法またはRNAに基づくNAAの方法(例えば、PCRまたはRT−PCR)のいずれを用いるかに依存して、これまでの実施例において説明されている、2つのタイプのSMLレポーターファージのいずれかを、以下の実施例において用いることができる。
【実施例3】
【0110】
図2Aおよび
図2Bは、生物学的ASTの精度を、NAAに基づく病原菌検出法の速度および感度と結びつけるために、いかにしてSMLファージ技術を用い得るかを説明するものである。Hain LifescienceのGENOTYPE(登録商標)MtbDR試験は、イソニアジド(INH)およびリファンピシン(RIF)の両方に対する耐性に関与する特定のMtb遺伝子に特異的なプライマーセットを用いて、このケースにおいては痰である臨床標本から単離されたDNAを増幅する。Hainの核となる技術は、小さな断片のDNAにおける一塩基置換を区別することができる、妊娠検査薬のようなラテラルフローアッセイである、DNAストリップである。DNAストリップに増幅反応生成物を塗布した後、生成物を、DNAストリップ上に固定された完全に相同なプローブ配列にハイブリダイズする。このアッセイは、RIFおよびINHに対する耐性に関与するいくつかの突然変異の野生型対立遺伝子および突然変異対立遺伝子の両方を検出する。それぞれの形態の薬剤耐性に関与する3つの塩基置換突然変異のみが図面に示されているが、INHおよびRIFの両方に対する臨床的耐性に関与する、15個を超える共通した個別の点突然変異が存在するため、実際のHainの生成物はさらにいっそう複雑である。
図2Aは、GenoType−MtbDR生成物における耐性突然変異の検出のための全体的な戦略を示すものである。MtbをINHに耐性(INH−R)であると同定するためには、INHに対する耐性をもたらす突然変異対立遺伝子(HrB)の1つが検出されなくてはならないが、一方で、対応するWT対立遺伝子(H−WT−B)は検出される必要はない。全てのWT対立遺伝子が検出され、薬剤耐性に関与する対立遺伝子が全く検出されなかった場合、分離株はINH感受性(INH−S)であると同定される。本発明は、このシステムを著しく簡素化し得る一方で、このシステムを、薬剤耐性に関与するWT対立遺伝子および突然変異対立遺伝子の全てを単一のSMLで置換することにより、全ての臨床的なINH耐性株の検出を含むように拡張するものである。
図2Bに示されるように、痰とINHとを24〜36時間インキュベートし、その後、SMLファージでMtbを感染させることにより、増幅後のSMLの検出で、INHとのインキュベーション後の生存能力を有する細菌の存在が診断される。ファージは細胞に感染し得、SMLの生成を仲介するファージにコードされるポリペプチドを合成し得たため、細胞はINHの効果に対して耐性である。
図2に明らかに示されるように、ここに記載されるSMLファージ技術の利点は、現在薬剤耐性の生物学的アッセイは、現在のNAAに基づく分子診断技術の簡素化されたバージョンを介して分析され得るということである。
【0111】
HainのGENOTYPE(登録商標)MtbDR試験は、DNAストリップを用いて分析された30以上の位置を用いてさえも、INHおよびRIFへの薬剤耐性の全ての事例を網羅することはできないが、本発明は、臨床試料から単離されたMtbをインキュベートするために用いる抗生物質を単純に変えるだけで、あらゆる関連する薬剤に対する耐性について試験することができる。
図3Aおよび
図3Bは、いかにして本発明の技術が、RIFおよびINHの両方に耐性であると規定される多剤耐性Mtbを検出するために用いられ得るかを示すものである。Genotype MtbDRでは、一方はINH、もう一方はRIFについての、2つの耐性に関連する対立遺伝子が、対応するWT対立遺伝子の不存在と共に検出されなければならない必要があるが、ファージ感染前のMtbのインキュベーションの際にINHおよびRIFを共に加えるだけで、Mtbゲノムにおける小さな突然変異からRIFおよびINHへの耐性を推測するのではなく、RIFおよびINHへの耐性を表現型で示すというさらに良好な目標が達成される。薬剤耐性の生物学的検出は、遺伝子型ではなく表現型を測定するため、病院において観察される最も一般的な耐性突然変異を個別に検出するよりも、本質的に正確で包括的である。さらに、HainのDNAストリップ技術は一塩基対のハイブリダイゼーションの差異を区別しなくてはならないが、SMLファージ技術は、ハイブリダイゼーションのアーチファクトへの傾向が著しく低い方法である、核酸の完全に異なるセグメントの検出を必要とするだけである。さらに、本発明により、新たな抗病原菌剤、または臨床的に関連する薬剤耐性についての分子遺伝的な基礎がほとんど知られていない抗病原菌剤に対する突発的な薬剤耐性を検出するための、新たなAST装置の迅速な作製が可能になる。
【0112】
多剤耐性についての本発明の読み出しは単一薬剤耐性についてと同一であり、SMLの合成である。これにより、同一のNAAおよび検出システムを、Mtbの薬剤耐性に関連する全ての生成物に用いることが可能になる。これにより、Mtbの薬剤耐性の全ての順列についての個別の試験、すなわち
1.MDR−TB試験(INHおよびRIFへの耐性)
2.個別の第一選択薬(INH、RIF、エタンブトール、またはストレプトマイシン)への耐性
3.個別の第二選択薬への耐性
4.XDR−TB試験(INH、RIF、および主要な第二選択薬)
の作成におけるコストおよび困難性が劇的に減少する。
【0113】
最終的に、SML合成をもたらす遺伝子モジュール(RRPでは、レコンビナーゼおよびコグネート組換えコンセンサス配列)は、DNAまたはRNAに基づくあらゆるウイルスに移すことができるため、本発明のSMLファージ技術は、ウイルスに感染したあらゆる細胞において薬剤耐性を検出するために用いることができる。
【実施例4】
【0114】
医師が適切な治療を開始するために、どの生存能力のある病原性細菌が臨床試料内に存在し、どの抗生物質がそれを死滅させるかを決定するための、複数のSMLファージの同時使用。
SMLファージ技術はあらゆるウイルスに移行させることができるため、臨床的に関連する病原体の異なる属または種にそれぞれ特異的な複数のファージを生成することができる。これらのファージのそれぞれは、同一のまたは固有のSMLを合成することができ、確立されたNAAおよび検出技術を用いて分析され得る迅速な生物学的ASTを生じさせるために、ここに記載されるものに類似した装置またはシステム内に組み込まれ得る。換言すると、本願においてMtbについて提案された全範囲のAST装置はまた、SML技術が目的の細菌に感染するウイルスに移行可能である限り、あらゆる他の細菌についても作成され得る。
【0115】
一見して明らかではない別の適用は、いくつかのSMLファージを共に1つの感染容器内に組み合わせることである。それぞれのSMLファージは、細菌の異なる属または種に感染し、生存能力のある宿主細胞の感染の後、同一のSMLを生じさせる。装置は、単一の臨床試料が、いくつかの反応室間で等しく分割されるように構築され得る。それぞれの反応室は全てのファージを含むが、異なる抗病原菌剤を含む。これにより、医者が臨床試料を分析して、
1.どの生存能力のある病原性細菌が試料中に存在するか?
2.どの抗病原菌剤が細菌を死滅させ、したがって患者に処方されるべきか?
という2つの非常に重要な疑問を解決することが可能になる。
【0116】
図9は、どのようにしてこのようなシステムが組織化されるかを示す。特異性を増すために、このテーマでは様々な順列が存在する。例えば、それぞれの属または種に特異的なファージは固有のSMLを生じさせる。完全な診断結果は、陽性種の同定と種特異的なSMLファージのSMLとの両方の検出を含むことにより、精度を確実にするために分析が冗長となる。また、治療の成功への格別な信頼のために、薬剤カクテルが処方され得るよう、いくつかの抗病原菌剤を1つの容器に加えることもできる。
【実施例5】
【0117】
「天然に存在する」SMLを検出するためのバクテリオファージ転写調節メカニズムの使用
この実施例は、「天然に存在する」SMLの検出に用いられ得る、バクテリオファージにおける転写調節メカニズムを説明するものである。
【0118】
多くのウイルスが、それらの遺伝子発現プログラムにわたり一時的な制御を示す。換言すると、いくつかの遺伝子が感染において他よりも早く発現することを可能にする、様々な機能が存在し、逆もまた同様である。ファージ転写の終結/抗終結は、いくつかの遺伝子の一時的な発現を調節するための一般的なメカニズムである。この実施例において、このメカニズムが説明される。この実施例において、全てのプロモーターは、早期のファージ感染の間に活性に転写される。それぞれの自らのプロモーターの制御下にある遺伝子Aおよび遺伝子Bでは、mRNA転写産物は合成されるが、ヘアピンループが、転写複合体を不安定化させる増殖しているRNAポリマーにおいて形成され、例えば遺伝子Aおよび遺伝子Bのように、mRNAが完全に転写され得る前にmRNAを終結させる。しかし、感染が進むにつれ、別の遺伝子である抗ターミネーターの転写および翻訳が比較的スムーズに生じる。抗ターミネーターポリペプチド複合体の蓄積は、遺伝子AおよびBのプロモーターで開始した転写産物のヘアピンRNAを結合し得るまで、経時的に進む。このポリペプチド−RNA複合体は、mRNAの効率的な伸長、および下流の、それまで転写されなかった遺伝子(例えば遺伝子B)の転写を容易にする。遺伝子Bの転写は、抗ターミネーターのそれまでの発現および合成に依存するため、生存能力のない細胞、あるいは抗病原菌剤または細胞の生存能力および/もしくは代謝を阻害する他の化合物にさらされた細胞の感染の際には、遺伝子Bは転写されない。したがって、例えば効果的な薬剤での感受性細胞の処理を介した細胞の生存能力の低下により、遺伝子Bの転写が排除または制限され、SMLを生じさせるために外因性の機能をウイルスに組み込む必要がないという点で、遺伝子Bは「天然に存在するSML」の例である。したがって、RNAに基づくNAAと、遺伝子Bの抗ターミネーターに調節された転写の検出技術とを介した検出は、実施例2において説明されたものと類似の様式で、代理耐性位置として役立つ。
【0119】
細胞の薬剤感受性または生存能力について報告するファージ転写の一時的な調節のあらゆる事例またはメカニズムの検出は、SMLまたはそれと類似の生存能力位置の検出を構成し得る。
【実施例6】
【0120】
FlpレコンビナーゼをコードするマイコバクテリオファージおよびFRTをコードするマイコバクテリオファージの生成
原理実験の最初の裏付けのために、SMLをレコンビナーゼから分離し、ファージストックの増殖間のSMLの偽生成を、完全に排除する。カナマイシン耐性(KanR)カセットの、Flp介在性の反転(すなわちSMLの生成)を、次に、マイコバクテリア細胞とphMM−002およびphMM−003との共感染の間に測定する(
図11A)。3つの新たなプラスミド(phasmid)が生じた。プラスミドは、大腸菌において複製可能な環状DNA分子であり、抗生物質の選択を介して維持される(図示せず)。phMM−001は、T4 DNAリガーゼを用いて分子内ライゲーション後、大腸菌DH10B細胞内に形質転換することによって、phAE142バクテリオファージのDNAから直接誘導した。phMM−002およびphMM−003は、phMM−001と、phMM−001のDNA内へのPCR産物の相同組換えを指示するエンテロバクテリアファージから得たred組換え系を発現する分離したプラスミド(plasmid)とを有する大腸菌細胞内に、直鎖状PCR産物をエレクトロポレーションすることにより生成した。PCR産物の5’および3’末端は、ルシフェラーゼのオープンリーディングフレームを直鎖状PCR産物で置換する相同組換えを指示するための、ルシフェラーゼ遺伝子の5’および3’のすぐそばのDNA配列に相同なDNAの42個のヌクレオチドを含むものであった。PCR産物はまた、KanRカセットをコードすることにより、カナマイシンを含む寒天上での組換え体の選択が可能になった。phMM−002では、直鎖状PCR産物は、反転したFRT反復に隣接するKanRカセットをコードするものであった。FRT配列は、Flpレコンビナーゼに対する、コンセンサスDNAの結合および組換えの位置である。反転したFRT反復は、活性なFlpレコンビナーゼの存在下で、介在するDNA配列の反転を仲介する。Flpレコンビナーゼによるこの配列の反転は、SMLの生成を構成する。phMM−003では、直鎖状PCR産物は、組換え体の選択のためのKanRカセットに隣接するFlpレコンビナーゼをコードするものであった。phMM−003において、Flpレコンビナーゼのオープンリーディングフレームは、マイコバクテリオファージL5から得た強力なP
leftプロモーター(灰色の星印)の直接的な転写制御下にある。このプロモーターはまた、FRTが脇にあるKanRカセット位置にわたって転写するが、KanRのオープンリーディングフレームは対抗する鎖にコードされており、KanRポリペプチドはP
leftにより転写されたRNAの翻訳によっては合成されない。phMM−002におけるP
leftによる、より低い鎖での転写により、RNAおよびDNAに基づくNAA法を、Flp介在性のKanRの反転(すなわちSMLの生成)を検出するために用いることが可能になる。P1およびP2は、phMM−001内へのそれぞれのPCR産物の的確な部位特異的組換えを確認するために用いられる、PCRプライマー対のプライミングの位置および方向を指示しプラスミド(phasmid)phMM−002およびphMM−003を生じさせる。
【0121】
(
図11B)phMM−002およびphMM−003についての適切な機能をコードする適切なPCR産物の適切な組込みを確認するために、プライマーP1およびP2を用いた。phMM−001、phMM−002、およびphMM−003について、正確な抗生物質耐性プロフィールを示す大腸菌の個別のコロニーを、適切な緩衝液、Taq酵素、ならびにプライマーP1およびP2を含むPCR試験管に加えた。phAE142から得た精製DNAを、対照として用いた。PCRを25サイクル実施し、反応体積の10%を、1μg/mlのエチジウムブロマイドを含浸させた1%アガロース/TAEゲル上に添加した。DNAサイズマーカーもゲル上に添加し、80ボルトで45分間泳動後、紫外線光で可視化した。それぞれのプラスミド(phasmid)の全分離株が、アガロースゲル上での同一の移動を示すPCR産物を産生し、これらは予想されたサイズであった。