【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、昨今の射出成形品の小型化に伴い、上記特許文献1のようには射出成形品に意図的なアンダーカット部を設けない場合であっても、射出成形品を射出成形用金型から離型させるに際し、物理的な干渉が生じる可能性が出てきた。以下、この問題を説明すべく、
図1〜4を参照しながら、射出成形機や射出成形用金型の一般的な構成を紹介する。
【0005】
(射出成形機1)
図1に示すように、射出成形機1は、機台2を有する。この機台2上に、射出ユニット3(溶融樹脂供給手段)、型締めユニット4(型締め手段)、射出成形用金型5が配置されている。
【0006】
射出ユニット3は、ホッパー6と加熱シリンダ7を有する。ホッパー6は、原料となる樹脂を保持する。加熱シリンダ7は、ホッパー6から供給された樹脂を加熱して溶融樹脂を形成する。加熱シリンダ7内で形成された溶融樹脂は、射出成形用金型5のキャビティ8(
図2を併せて参照)に射出される。
【0007】
型締めユニット4は、固定盤9、可動盤10、型締め駆動装置11、エジェクトピン駆動装置12を備えている。固定盤9には、射出成形用金型5の固定側取付板13(
図2を併せて参照)が取り付けられる。可動盤10には、射出成形用金型5の可動側取付板14が取り付けられる。型締め駆動装置11は、固定盤9に対して可動盤10を進退させることで射出成形用金型5の型締め及び型開きを行う。エジェクトピン駆動装置12は、射出成形用金型5のエジェクタプレート15を進退させる。
【0008】
(射出成形用金型5)
図1及び
図2に示すように、射出成形用金型5は、射出ユニット3側から順に、固定側取付板13、固定側型板16、可動側型板17、受け板18、スペーサブロック19、可動側取付板14が積層されて構成されている。
【0009】
固定側取付板13は、型締めユニット4の固定盤9に取り付けられる。固定側型板16と可動側型板17の間には、所望形状のキャビティ8が形成されている。
図2に示すように固定側型板16と可動側型板17は、通常、入れ子構造となっている。スペーサブロック19の内側には、エジェクタプレート15が収容されている。エジェクタプレート15は、上エジェクタプレート20と下エジェクトプレート21によって構成されている。エジェクタプレート15は、複数のエジェクタピン22を支持している。可動側取付板14は、型締めユニット4の可動盤10に取り付けられる。そして、
図2に示すように、固定側取付板13及び固定側型板16、可動側型板17には、スプルー23やランナー24、ゲート25が形成されている。
【0010】
(射出成形品26の製造手順)
以上の構成で、
図3に示すような射出成形品26を射出成形するには、先ず、型締めユニット4によって射出成形用金型5を型締めする。すると、
図2に示すように、射出成形用金型5には、スプルー23、ランナー24、ゲート25、キャビティ8が形成される。次に、射出ユニット3によって射出成形用金型5に溶融樹脂を射出する。射出ユニット3から射出された溶融樹脂は、スプルー23とランナー24、ゲート25を順に流動し、キャビティ8に充填される。そして、図示しない冷却手段により射出成形用金型5を冷却させることでキャビティ8に充填された溶融樹脂を固化させる。
【0011】
冷却開始から所定時間経過したら、型締めユニット4によって射出成形用金型5を型開きする。すると、キャビティ8で固化して形成された射出成形品26は、固定側型板16から引き離され、
図4に示す可動側型板17の凹部27の内壁面に付着した状態となる。この状態で、エジェクトピン駆動装置12によってエジェクタプレート15を進出させることで、複数のエジェクタピン22が射出成形品26を突き出し、射出成形品26は可動側型板17から離型する。
【0012】
(課題の所在)
次に、
図5〜
図7(e)を参照しながら、携帯電話機用のFPC用コネクタ200(Flexible Printed Circuits)の一例を紹介する。ここで、携帯電話機用のFPC用コネクタ200の一例を説明するのは、本願が解決しようとする問題が、特に、携帯電話機用のFPC用コネクタ200のハウジング201のように極めて小さな射出成形品で顕在化するからである。
【0013】
さて、
図5に示すようにFPC用コネクタ200のハウジング201には、多数のスリット202が等しい間隔で形成されている。そして、各スリット202には、
図6に示すようにコンタクト203が圧入されている。
図7(a)〜(e)には、FPC用コネクタ200のハウジング201の平面図、正面図、底面図、左側面図、右側面図が各々示されている。ここで、仮に、FPC用コネクタ200のハウジング201を射出成形する射出成形用金型5のゲート25(
図4を併せて参照)に対向するハウジング201の部位が符号Gで示す部位であるとする。すると、ウェルドラインが出現するようなハウジング201の充填末端としては、
図7(a)の末端上面P1、
図7(c)の末端下面P2、
図7(e)の末端側面P3が該当することになる。
【0014】
ところで、溶融樹脂がキャビティ8へスムーズに充填されるよう、キャビティ8の充填末端の内壁面には、充填前からキャビティ8に存在していた空気や溶融樹脂から発生したガスを外部へ排出するためのガス抜き孔が形成される場合がある。このガス抜き孔には、通常、溶融樹脂をキャビティ8に閉じ込めつつ空気やガスだけを外部へ選択的に排出するためのピン部材(通称、ガス抜きピン)が挿入されている。ピン部材のキャビティ8側の先端面は、キャビティ8の充填末端の内壁面に対して可及的に同一面となるように研磨されている。
【0015】
充填促進用のピン部材を、
図7(a)の末端上面P1、
図7(c)の末端下面P2、
図7(e)の末端側面P3のうち何れに対向するように配置するかは、基本的には任意である。
【0016】
しかしながら、
図7(a)に示すように、FPC用コネクタ200のハウジング201の上面201UPには多数のスリット202を形成する必要があり、これらのスリット202を形成するには、FPC用コネクタ200のハウジング201の上面201UPに対向する固定側型板16(
図2を併せて参照)に多数のコアピンを設ける必要がある。従って、
図7(a)の末端上面P1に対向する固定側型板16の内壁面には、もはや上記を目的としたピン部材を設けるスペースがない。
【0017】
同様に、
図7(c)に示すように、FPC用コネクタ200のハウジング201の下面201LWに対向する可動側型板17(
図2を併せて参照)にも多数のコアピンを設ける必要がある。従って、
図7(c)の末端下面P2に対向する可動側型板17の内壁面には、もはや上記を目的としたピン部材を設けるスペースがない。
【0018】
以上の理由から、ガス抜きや充填検知のためのピン部材を設けるスペースは、消去法により、
図7(e)の末端側面P3に対向する可動側型板17の内壁面にしか存在しないことになる。
【0019】
次に、
図8〜
図11を参照しながら、本願が解決しようとする課題を更に詳しく説明する。
【0020】
図8及び
図9には、キャビティ8の内壁面のうち
図7(e)の末端側面P3に対向する内壁面としての側壁面28にピン取り付け孔29(上記のガス抜き孔に相当。)を形成し、このピン取り付け孔29にピン部材30を挿入して取り付けた様子が示されている。
【0021】
さて、既に述べたように、ピン部材30のキャビティ8(
図2を併せて参照)側の先端面31は、キャビティ8の側壁面28に対して可及的に同一面となるように研磨されている。しかしながら、理論上、ピン部材30のキャビティ8側の先端面31と、キャビティ8の側壁面28とを完全に同一面とすることは当然不可能であり、例えば
図8に示すようにピン部材30の先端32がキャビティ8に突き出てしまっていたり、
図9に示すようにキャビティ8の側壁面28に窪み部33ができてしまったりする。なお、
図8及び
図9では、説明の便宜上、ピン部材30の先端面31の、キャビティ8の側壁面28からのズレ量は相当誇張している。
【0022】
実際には、このズレ量は、せいぜい50ミクロン程度ではある。しかし、その程度のズレ量であっても、以下のような問題を招くことになる。
【0023】
即ち、
図10には、
図8に示す可動側型板17を用いて射出成形した射出成形品26を示している。
図10に示すように、射出成形品26の外壁面34には、
図8に示すピン部材30の先端32が嵌合する窪み部35が形成される。従って、可動側型板17から射出成形品26を離型させる際、射出成形品26がピン部材30の先端32に対して物理的に干渉し、離型そのものが困難となる。また、この物理的干渉に抗して可動側型板17から射出成形品26を強引に離型させると、窪み部35を基準として離型方向と反対側の面領域36は、ピン部材30の先端32と擦れ合うことでササクレ立つことになる。そして、このササクレは樹脂のカスを生じさせる原因となり、FPC用コネクタ200へFPCケーブルを接続する際の接点不良などを誘発することになる。
【0024】
一方、
図11には、
図9に示す可動側型板17を用いて射出成形した射出成形品26を示している。
図11に示すように、射出成形品26の外壁面34には、
図9に示す側壁面28の窪み部33に嵌合する突起37が形成される。従って、可動側型板17から射出成形品26を離型させる際、射出成形品26の突起37が可動側型板17に対して物理的に干渉し、離型そのものが困難となる。また、この物理的干渉に抗して可動側型板17から射出成形品26を強引に離型させると、射出成形品26の突起37は離型方向と反対の方向に強引に押し下げられて大変形する。そして、この大変形は樹脂のカスを生じさせる原因となり、FPC用コネクタ200へFPCケーブルを接続する際の接点不良などを誘発することになる。
【0025】
そこで、本願発明の目的は、固定側型板と可動側型板を有し、前記固定側型板と前記可動側型板との間にキャビティが形成され、このキャビティに溶融樹脂を充填することで射出成形品が射出成形される射出成形用金型において、前記射出成形品の円滑な離型を阻害するようなピン部材が存在していたとしても、問題なく、前記射出成形品を前記射出成形用金型から離型させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本願発明の第1の観点によれば、固定側型板と可動側型板を有し、前記固定側型板と前記可動側型板との間にキャビティが形成され、このキャビティに溶融樹脂を充填することで射出成形品が射出成形される射出成形用金型は、以下のように構成されている。前記キャビティの内壁面のうち、前記射出成形品の離型方向に対して直交する内壁面以外の内壁面である側壁面には、ピン形状のピン部材を挿入して取り付けるためのピン取り付け孔が形成されている。前記ピン取り付け孔が形成されている前記側壁面のうち、前記ピン取り付け孔を基準として前記離型方向と反対側の面領域には、前記側壁面から隆起する隆起部が形成されている。
本願発明の第2の観点によれば、固定側型板と可動側型板を有し、前記固定側型板と前記可動側型板との間にキャビティが形成され、このキャビティに溶融樹脂を充填することで射出成形品が射出成形される射出成形用金型は、以下のように構成されている。前記キャビティの内壁面のうち、前記射出成形品の離型方向に対して直交する内壁面以外の内壁面である側壁面には、ピン形状のピン部材を挿入して取り付けるためのピン取り付け孔が形成されている。前記ピン取り付け孔が形成されている前記側壁面のうち、前記ピン取り付け孔を基準として前記離型方向側の面領域には、前記側壁面から窪んだ窪み部が形成されている。
好ましくは、前記ピン取り付け孔が形成されている前記側壁面は、前記離型方向に対して略平行である。
好ましくは、前記ピン取り付け孔が形成されている前記側壁面は、前記キャビティの前記内壁面のうち充填末端に相当する内壁面である。
好ましくは、前記ピン取り付け孔の中心軸は、前記ピン取り付け孔が形成されている前記側壁面に対して略直交している。
好ましくは、前記ピン部材の断面形状は、円形又は多角形である。
好ましくは、前記ピン取り付け孔に、前記ピン部材が取り付けられている。
好ましくは、前記射出成形品の射出成形は、上記の射出成形用金型を用いて行われる。
好ましくは、射出成形品は、上記の射出成形用金型を用いて射出成形される。
好ましくは、射出成形機は、上記の射出成形用金型と、前記射出成形用金型を型締め及び型開きする型締め手段と、前記射出成形用金型に溶融樹脂を供給する溶融樹脂供給手段と、を備えている。