特許第5698994号(P5698994)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビアメカニクス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5698994-ドリルの折損検出用のプログラム 図000002
  • 特許5698994-ドリルの折損検出用のプログラム 図000003
  • 特許5698994-ドリルの折損検出用のプログラム 図000004
  • 特許5698994-ドリルの折損検出用のプログラム 図000005
  • 特許5698994-ドリルの折損検出用のプログラム 図000006
  • 特許5698994-ドリルの折損検出用のプログラム 図000007
  • 特許5698994-ドリルの折損検出用のプログラム 図000008
  • 特許5698994-ドリルの折損検出用のプログラム 図000009
  • 特許5698994-ドリルの折損検出用のプログラム 図000010
  • 特許5698994-ドリルの折損検出用のプログラム 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698994
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】ドリルの折損検出用のプログラム
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/09 20060101AFI20150319BHJP
   B23Q 17/22 20060101ALI20150319BHJP
   B23B 49/00 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   B23Q17/09 C
   B23Q17/22 C
   B23B49/00 F
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-15782(P2011-15782)
(22)【出願日】2011年1月27日
(65)【公開番号】特開2012-152875(P2012-152875A)
(43)【公開日】2012年8月16日
【審査請求日】2013年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233332
【氏名又は名称】ビアメカニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩一
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 弘幸
【審査官】 大川 登志男
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−172409(JP,A)
【文献】 実開昭56−121547(JP,U)
【文献】 特開2001−341052(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2165803(EP,A1)
【文献】 特開2007−086359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/09
B23B 49/00
B23Q 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に導体層を有するワークに穴明けを行うためのドリルに電圧を印加し、前記導体層に前記ドリルが接触することにより発生する電圧を検出する高さが、設定した基準高さから所定の許容値内の高さまでに検出されるかどうかにより前記ドリルの折損を判定するドリルの折損検出用のプログラムにおいて、
前記基準高さとしてドリルがワークに突入する突入側基準高さと抜け出す側の抜け側基準高さとをそれぞれ設定し、
加工開始時、ドリル交換時、又はワークが所定距離以上移動した時に、所定回数の基準決め動作を行うことによって、前記突入側基準高さと前記抜け側基準高さをそれぞれの最も低い位置とし、
通常加工動作を行わせることを特徴とするドリルの折損検出用のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドリルを用いてプリント基板に穴あけ加工を行う際に好適なドリルの折損検出用のプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板穴あけ機における穴あけ加工中のドリル折損の検出方法は、加工中に排出される切粉の量を検出器により判定し、ドリルが折損しているかを判断する(例えば、特許文献1参照。)が、ドリル折損が発生後、数穴分の穴あけ動作を終了してしまう。そのため、ドリルを新しいものへ交換後、再度加工を続行する際にオペレータが目視にて再スタート位置を判断する必要がある。また、チッピング等の刃先が部分的に折れるような状態では、切粉が排出されるため、ドリル折損を判断することができない。このため、基板を数枚重ねて加工する際、最下層の基板に穴が開いていないといった状況が発生する。
【0003】
これらの問題を解決する方式として、スピンドルロータシャフトに発生する軸電圧を、ドリルと接触したプリント基板(少なくとも最上層は導体層を有する物)を通して検出することによりドリルがプリント基板に接触した位置のZ軸座標を認識し、その位置から指定量の切削を行なわせることにより正確な底付き穴(ブラインドホール)加工する方式の提案があり、その中に「ドリル先端のプリント基板表面からの高さがある範囲に入るように予め定めておき、ホルダを下降させてから予め定める時間内に軸電圧を検出できないときには、ドリルが折損していると判定する」とよいことが開示されている(特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−134635号公報
【特許文献2】特開2001−341052号公報 段落0030
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に開示された方法では、ドリルがプリント基板に突入した後に折損が発生した場合に検出することができなく、またドリルとプリント基板との接触信号の検出がノイズの影響やプリント基板の厚さばらつきやテーブルの平面度の影響によってばらつくために刃の先端部分のみが部分的に損失したチッピングを検出することも困難である。
【0006】
本願はそのような課題を解決し、チッピング等の部分的な折損を高精度に検出できるドリルの折損検出用のプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する為、表面に導体層を有するワークに穴明けを行うためのドリルに電圧を印加し、前記導体層に前記ドリルが接触することにより発生する電圧を検出する高さが、設定した基準高さから所定の許容値内の高さまでに検出されるかどうかにより前記ドリルの折損を判定するドリルの折損検出用のプログラムにおいて、前記基準高さとしてドリルがワークに突入する突入側基準高さと抜け出す側の抜け側基準高さとをそれぞれ設定し、加工開始時、ドリル交換時、又はワークが所定距離以上移動した時に、所定回数の基準決め動作を行うことによって、前記突入側基準高さと前記抜け側基準高さをそれぞれの最も低い位置とし、通常加工動作を行わせることを特徴とするドリルの折損検出用のプログラム、とするとドリルがプリント基板に突入した後に折損が発生した場合にも検出できることがわかった。
【発明の効果】
【0009】
本発明のプログラムによれば、ドリルがプリント基板に突入した後に折損が発生した場合にも検出すことができ、またチッピング等の部分的な折損を高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のプログラムのフローチャートである。
図2】本発明のプログラムに係る通常加工のサブルーチンのフローチャートである。
図3】本発明のプログラムに係る通常加工におけるドリルの動作を示す図である。
図4】本発明のプログラムに係る加工及び信号検出のサブルーチンのフローチャートである。
図5】本発明のプログラムに係る基準決めのサブルーチンのフローチャートである。
図6】本発明のプログラムに係る基準決めにおけるドリルの動作を示す図である。
図7】本発明のプログラムに係る基準決め用信号検出のサブルーチンのフローチャートである。
図8】本発明のプログラムに係る基準決め及びドリル折れ判定のサブルーチンのフローチャートである。
図9】本発明のプログラムに係る基準決めにおける接触信号のばらつきを示す図である。
図10】本発明のプログラムに係るドリル交換のサブルーチンのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明を説明する。図1は本発明のプログラムのフローチャートを示す。ワークは少なくとも表面層が導電体であるプリント基板である。プログラムが開始した後、まず加工の開始かどうかを判断する(S101)。NOの場合、次にドリル交換後かどうかを判断する(S102)。NOの場合、ドリルが所定距離以上移動したかどうかを判断する(S103)。これは、所定距離以上ドリルが移動するとワークの厚さやテーブルの平面度によって基準高さを変えなければならないためである。通常は所定距離を50mm以上に設定すれば良い。NOの場合、次にこれまでの基準決め動作が所定回数未満かどうかを判断する(S104)。これは基準決めのための高さ信号がばらつくために、後述する基準決め及びドリル折れ判定(S400)を何度か行わなければならないためである。通常は所定回数を5回に設定すれば良い。これは、基準決め動作を5回行うことに相当する。
【0012】
上記ステップS101〜S104のどれかがYESの場合、基準決めが1回目かどうかを判断(S105)した後、1回目の場合にはB:基準決め(S300)、それ以後の場合はC:基準決め及びドリル折れ判定(S400)を行う。これらはもちろんサブルーチンではなくメインのプログラムの中に組み込まれていても良い。他のサブルーチンについても同様である。B:基準決め(S300)、又はC:基準決め及びドリル折れ判定(S400)の終了後は加工終了かどうかの判断を行う(S106)。
【0013】
上記ステップS101〜S104の全てがNOの場合、A:通常加工(S200)を行い、終了後加工終了かどうかの判断を行う(S106)。NOの場合、ステップS101に戻り、YESの場合は終了する。
【0014】
次に各サブルーチンについて説明するが、まず図2を用いてA:通常加工(S200)のフローチャートを説明する。この時のドリルの動作及び各パラメータの定義を図3に示す。A:通常加工が開始されると、まずD:加工及び信号検出を行う(S500)。ここで、D:加工及び信号検出(S500)のフローチャートを図4により説明する。D:加工及び信号検出が開始されると、まずスピンドルの下降指令が開始され(S501)、図示しないスピンドル上下駆動モータのエンコーダ出力(スピンドルの実際の応答位置。以下、応答位置という。)が予め設定された検出開始高さに到達(S502)すると信号の検出を開始する(S503)。ここで、信号は軸電圧を印加したドリルがワークの表面導体層と接触して表面導体層に発生する電圧(以下、「接触信号」又は単に「信号」という。)のことをいう。また、ドリルに印加する軸電圧はステータコイルに交流を印加することによりロータシャフトに発生する軸電圧を用いると良い。
【0015】
指令位置が最下点(Z点)に到達すると(S504)、スピンドルの上昇指令を開始され(S505)、応答位置が予め設定された検出終了高さに到達すると(S506)、信号の検出を終了する(S507)。ここで、検出終了高さは検出開始高さよりΔhだけ高くすると良い。尚、高さは全て基準点(R点)を0として下向きにマイナス値で測られている。
【0016】
図2に戻り、上記のようにD:加工及び信号検出(S500)で信号を検出した後、ステップS201に進んで、信号を解析して応答位置が予め設定された検出限界高さに到達するまでに信号を検出したかを判断する。NOの場合は、ドリル折れと判断しF:ドリル交換(S700)に進む。
【0017】
YESの場合にはステップS202に進み、ドリルが表面に導体層を有するワーク1に接触を開始して接触信号が0より大きくなる高さ(以下、「突入側信号検出高さ」という。)が突入側許容高さより高いかどうかを判定する。ここで図3を用いて突入側許容高さを説明する。突入側許容高さは後述する基準決め(S300、S400)で決定された突入側基準高さ2に突入側許容値Δhinを加えた高さである。即ち、(突入側許容高さ)=(突入側基準高さ)+(突入側許容値)である。突入側許容値は−0.1mm程度であり、突入側基準高さは−20.0mm程度である。この突入側許容値はドリルの太さによって切り替えるのが望ましい。このステップでNOの場合はドリル折れと判断し、F:ドリル交換(S700)に進む。
【0018】
ステップS202でYESの場合ステップS203に進んで、抜け側検出区間内で接触信号を検出したかを判断する。抜け側検出区間は図3に示したようにドリルの応答位置の最下点から検出終了高さに到達するまでの区間である。この間に接触信号が検出されない場合はドリル折れと判断し、F:ドリル交換(S700)に進む。このステップS203は、ドリルが突入して直ぐに折れた場合、見かけ上、後述する抜け側信号検出高さが抜け側許容高さより高いと誤判断されてしまうのを防止するためのものである。
【0019】
ステップS203でYESの場合ステップS204に進んで、ドリルがワーク1から抜け出て接触信号が0になる高さ(以下、「抜け側信号検出高さ」という。)が抜け側許容高さより高いかどうかを判定する。抜け側許容高さは、図3に示したように上記突入側許容高さと同様に後述する基準決め(S300、S400)で決定された抜け側基準高さ3に抜け側許容値Δhoutを加えた高さである。即ち、(抜け側許容高さ)=(抜け側基準高さ)+(抜け側許容値)である。抜け側許容値は−0.1mm程度であり、抜け側基準高さは−20.0mm程度である。この抜け側許容値は突入側許容高さと同様にドリルの太さによって切り替えるのが望ましい。このステップでNOの場合はドリル折れと判断し、F:ドリル交換(S700)に進む。YESの場合はサブルーチンを終了する。
【0020】
次に図5を用いてB:基準決め(S300)を説明する。図2と同じステップに関しては同じステップ番号を付して記述を省略する。この時のドリルの動作及び各パラメータの定義を図6に示す。B:基準決めが開始されると、まずE:基準決め用信号検出を行う(S600)。ここで、E:基準決め用信号検出(S600)のフローチャートを図7により説明する。図4と同様なフローチャートであり、同じステップに関しては同じステップ番号を付して記述を省略する。E:基準決め用信号検出が開始されてスピンドルの下降指令が開始され、指令位置が予め設定された検出開始高さに到達(S601)すると所定の時間、加工指令を停止する(BH点ドウエル)(S602)。その後、下降指令を再開かつ信号検出を開始する(S603)。その後は図4と同様である。このように基準決めにおいて所定時間の下降停止を入れたのは、基準高さの検出をできるだけ正確に行うためである。
【0021】
図5に戻り、上記のようにE:基準決め用信号検出を行う(S600)で接触信号を検出した後、ステップS301で突入側信号検出高さを突入側基準高さ2とし、ステップS302で抜け側信号検出高さを抜け側基準高さ3とする。
【0022】
次に図8を用いてC:基準決め及びドリル折れ判定(S400)を説明する。図2又は図5と同じステップに関しては同じステップ番号を付して記述を省略する。この時のドリルの動作及び各パラメータの定義は図6と同じである。C:基準決め及びドリル折れ判定が開始されると、まず図5と同様にE:基準決め用信号検出を行う(S600)。E:基準決め用信号検出を行う(S600)で接触信号を検出した後、ステップS401で突入側信号検出高さが(これまでに設定された)突入側基準高さより低いかどうかを判断する。YESの場合は、ステップS402で突入側信号検出高さを突入側基準高さ2とする。その後、抜け側検出区間内で信号検出判定ステップ(S203)、抜け側信号検出高さは抜け側許容高さより高いかの判定ステップ(S204)を経て、ステップS403に進み、抜け側信号検出高さが(これまでに設定された)抜け側基準高さより低いかどうかを判断する。YESの場合は、ステップS404で抜け側信号検出高さを抜け側基準高さ3とする。
【0023】
即ち、図9に示したように、突入側信号検出高さ及び抜け側信号検出高さは毎回ばらつくものであるが、所定回数基準決めを行った中で最も低い高さをそれぞれ突入側基準高さ2及び抜け側基準高さ3と設定することがよい。
【0024】
最後に、F:ドリル交換の手順を図10で説明する。ドリル交換が開始されると、まずドリル交換機へ移動し(S701)、ドリル交換機に併設されたドリル径測定装置(例えば、特開平6−246569参照。)を用いてドリル折れは本当かどうかを判断する(S702)。YESの場合、ドリル交換を行い(S703)、NOの場合は交換しない。
【0025】
以上、本発明に係るプログラムの一例を説明したが、各判断において不等号が等号を含んでいても構わないのは当然である。(例:<→≦)
【符号の説明】
【0026】
1 表面に導体層を有するワーク
2 突入側基準高さ
3 抜け側基準高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10