(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記印加後の反力発生部のヤング率(2)の、当該印加直前の反力発生部のヤング率(1)に対する比の値[ヤング率(2)/ヤング率(1)]が、1.1〜2.4である請求項1〜3のいずれかに記載の2段スイッチ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、小型携帯機器等に使用される多段スイッチにおいて、押し込み操作中に少なくとも1回反力発生部に電圧を印加して反力発生部の弾性率を変化させ反力発生部に反力を生じさせることができ、部品点数が少なく、薄型化を可能とし、反力発生機構部品の作製が容易で、単純な構造を持つ多段スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明者らは、架橋ポリロタキサンゲルが含有する架橋ポリロタキサンの架橋点が可逆的に動くという特徴は、化学ゲルや物理ゲルと比較して、外力による変形に対して均一な網目構造を保持しやすく、このことは反力発生部が薄膜である(例えば1mm未満)場合においても架橋ポリロタキサンゲル中の溶媒の保持と溶媒移動の制御を容易にするのではないかと考えた。そして、架橋点が可動する架橋ポリロタキサンゲルに対して電場等の外部刺激に応じてゲルの弾性率を任意に変化させることができれば、上記の問題を解決する薄型の触感呈示型の入力デバイス(反力発生部)ならびにそれを用いた薄型の多段スイッチ(2段スイッチ)が提供できるものとの発想に至った。
本願発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、架橋点が可動する架橋ポリロタキサンを含有する架橋ポリロタキサンゲルに電場を印加することによりその弾性率が制御できる現象を新たに見出した。また、架橋ポリロタキサンゲルに電極を付与し電圧を印加するための電極システム(反力発生部)を構築し、この電極システムにおいて電圧(特に直流電圧)の印加に対して架橋ポリロタキサンゲルのヤング率が印加の前後で変化するといった粘弾特性を付与できることを見出した。
そして本願発明者らはさらに研究を進め、多段スイッチが、架橋点が可動し非イオン性の架橋ポリロタキサンと溶媒とを含有する架橋ポリロタキサンゲルと、前記架橋ポリロタキサンゲルに電圧を印加するための1対の電圧印加用電極とを持つ反力発生部を有することによって、押し込み操作において、少なくとも1回、前記架橋ポリロタキサンゲルに電圧を印加して前記反力発生部(架橋ポリロタキサンゲル)の弾性率を変化させ前記反力発生部に反力を生じさせることができ、部品点数が少なく、薄型化を可能とし、反力発生機構部品の作製が容易で、単純な構造を持つものとなりうることを見出し、本発明を完成させた。
架橋ポリロタキサンゲルに対し電場を印加して架橋ポリロタキサンゲルの弾性率を変化させて反力を生じさせるという現象は、従来の高分子ゲルの相転移(体積変化)による反力発生とはそのメカニズムが異なる。
【0006】
すなわち、本発明は、下記1〜13を提供する。
1. 架橋点が可動し非イオン性の架橋ポリロタキサンと溶媒とを含有する架橋ポリロタキサンゲルと、前記架橋ポリロタキサンゲルに電圧を印加するための1対の電圧印加用電極とを持つ反力発生部を有し、
押し込み操作において、少なくとも1回、前記架橋ポリロタキサンゲルに電圧を印加して前記反力発生部の弾性率を変化させ前記反力発生部に反力を生じさせることを特徴とした多段スイッチ。
2. 前記反力発生部の初期の弾性率がヤング率として30kPa以下である上記1に記載の多段スイッチ。
3. 前記溶媒が水である上記1または2に記載の多段スイッチ。
4. 前記印加後の反力発生部のヤング率(2)の、当該印加直前の反力発生部のヤング率(1)に対する比の値[ヤング率(2)/ヤング率(1)]が、1.1〜2.4である上記1〜3のいずれかに記載の多段スイッチ。
5. 前記電圧が直流電圧である上記1〜4のいずれかに記載の多段スイッチ。
6. 前記架橋ポリロタキサンが、
シクロデキストリン分子の開口部に直鎖状分子が串刺し状に包接され且つ該シクロデキストリン分子が脱離しないように前記直鎖状分子の両末端にブロック基が配置されるポリロタキサンの少なくとも2分子と、架橋剤とを反応させることによって製造され、
前記ポリロタキサンの量が前記架橋剤1質量部に対して1.5〜8質量部である上記1〜5のいずれかに記載の多段スイッチ。
7. 前記溶媒と前記架橋ポリロタキサンとの質量比(溶媒:架橋ポリロタキサン)が99:1〜70:30である上記1〜6のいずれかに記載の多段スイッチ。
8. 前記架橋ポリロタキサンゲルに含有される架橋ポリロタキサンを製造する際に使用される架橋剤が、アルキレンジオールジグリシジルエーテルである上記1〜7のいずれかに記載の多段スイッチ。
9. 前記架橋ポリロタキサンゲルに含有される架橋ポリロタキサンを構成する直鎖状分子の末端が非イオン性のブロック基で封鎖されている上記1〜8のいずれかに記載の多段スイッチ。
10. 前記架橋ポリロタキサンゲルのヤング率が30kPa以下である上記1〜9のいずれかに記載の多段スイッチ。
11. 上記1乃至10のいずれかに記載の多段スイッチが2段スイッチであり、基板の上に前記反力発生部を搭載し、
前記反力発生部はドーム形状もしくは半円筒形状をしており、前記架橋ポリロタキサンゲルの上下面に前記1対の電圧印加用電極を有し、
前記基板は1対の外縁電極、中央電極に分割された接点を有し、
前記反力発生部を押し下げることにより前記反力発生部の下面の電極を介して前記1対の外縁電極同士が導通し、1段目の接点を閉じるとともに前記反力発生部に前記1対の電圧印加用電極を介して電圧が印加されて前記弾性率が変化して前記反力発生部に前記反力が生じ、
さらに前記反力発生部を押し下げることにより前記反力発生部の下面の前記電極を介して前記中央電極が導通し、2段目の接点を閉じることを特徴とした2段スイッチ。
12. 上記1乃至10のいずれかに記載の多段スイッチが2段スイッチであり、
基板の上にスペーサー、前記反力発生部、カバー板、保護シートを順次搭載し、
前記基板は、1対の外縁電極、中央電極に分割された接点を有し、
前記反力発生部はドーム形状もしくは半円筒形状をしており、前記架橋ポリロタキサンゲルの上下面に前記1対の電圧印加用電極を第1の電極として有し、前記反力発生部の下面の第1の電極の上に、前記1対の外縁電極および前記中央電極と接触するための第2の電極を有し、
前記反力発生部を押し下げることにより前記第2の電極を介して前記1対の外縁電極同士が導通し、1段目の接点を閉じるとともに前記反力発生部には第1の電極を介して電圧が印加されて前記弾性率が変化して前記反力発生部に前記反力が生じ、
さらに前記反力発生部を押し下げることにより前記第2の電極を介して前記中央電極が導通し、2段目の接点を閉じることを特徴とした2段スイッチ。
13. 上記1乃至10のいずれかに記載の多段スイッチが2段スイッチであり、
タッチパネルの上に前記反力発生部、カバー板、ボタンを順次搭載し、
前記反力発生部は平面状をしており、前記架橋ポリロタキサンゲルの表面の両端は前記1対の電圧印加用電極を第1の電極として有し、
前記ボタンは前記カバー板と対向する面に第2の電極を有し、
前記カバー板は、前記第2の電極と接触するための第3の電極を有し、
前記ボタンを押し下げることにより前記第2の電極が前記第3の電極と導通して、1段目の接点を閉じるとともに前記反力発生部に前記第1の電極を介して電圧が印加されて前記弾性率が変化して前記反力発生部に前記反力が生じ、
さらに前記ボタンを押し下げることにより前記タッチパネルが押し下げを検知して、2段目の接点を閉じる2段スイッチ。
【発明の効果】
【0007】
本発明の多段スイッチは、押し込み操作において少なくとも1回架橋ポリロタキサンゲルに電圧を印加して反力発生部(架橋ポリロタキサンゲル)の弾性率を変化させ反力発生部に反力を生じさせることができ、部品点数が少なく、薄型化を可能とし、反力発生機構部品の作製が容易で、構造が単純である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について以下詳細に説明する。
本発明の多段スイッチは、
架橋点が可動し非イオン性の架橋ポリロタキサンと溶媒とを含有する架橋ポリロタキサンゲルと、前記架橋ポリロタキサンゲルに電圧を印加するための1対の電圧印加用電極とを持つ反力発生部を有し、
押し込み操作において、少なくとも1回、前記架橋ポリロタキサンゲルに電圧を印加して前記反力発生部の弾性率を変化させ前記反力発生部に反力を生じさせることを特徴とした多段スイッチである。
【0010】
反力発生部について以下に説明する。本発明の多段スイッチが有する反力発生部は、架橋点が可動し非イオン性の架橋ポリロタキサンと溶媒とを含有する架橋ポリロタキサンゲルと、前記架橋ポリロタキサンゲルに電圧を印加するための1対の電圧印加用電極とを持つ。
【0011】
架橋ポリロタキサンゲルについて以下に説明する。反力発生部に使用される架橋ポリロタキサンゲルは、架橋点が可動し非イオン性の架橋ポリロタキサンと溶媒とを含有するゲルである。
本発明において使用された架橋ポリロタキサンは、2個以上のポリロタキサン分子を有してなり、ポリロタキサン分子が有する環状分子同士が化学結合を介して架橋する架橋ポリロタキサンである。
架橋ポリロタキサンゲルを製造する際に使用されるポリロタキサン分子は「回転子」としての2つ以上の環状分子、該環状分子の開口部を串刺し状にして包接される「軸」としての直鎖状分子、及び該串刺し状の環状分子が脱離しないように該直鎖状分子の両端に位置するブロック基を有する。
架橋ポリロタキサンが非イオン性であるとは、詳細には、架橋ポリロタキサンゲルを構成するブロック基が非イオン性である(例えば、ブロック基自体が非イオン性である、ブロック基が有する置換基が非イオン性である)ことを意味する。本発明において、架橋ポリロタキサンが有するブロック基は、イオン性の官能基(例えば、カルボキシル基、スルホ基、アミノ基、これらの塩)ではなく、イオン性の官能基を有さない。
【0012】
架橋ポリロタキサンを製造する際に使用される直鎖状分子(架橋ポリロタキサンの主鎖を構成する。)としては、例えば、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、セルロース系樹脂(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、でんぷん等及び/またはこれらの共重合体のような親水性ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、およびその他オレフィン系単量体との共重合樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル−スチレン共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートや(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合樹脂などのアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂のような疎水性ポリマー;及びこれらの誘導体又は変性体(例えば、末端がカルボン酸変性されたもの)を挙げることができる。
これらのうち、再現安定性(反力の発生を再現する安定性。以下同様)に優れるという観点から、ポリエチレングリコール、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、及びポリプロピレンが好ましく、特にポリエチレングリコールであるのが好ましい。
架橋ポリロタキサンを製造する際に使用される原料としての直鎖状分子の重量平均分子量は、再現安定性に優れるという観点から、1万以上であるのがよく、好ましくは2万以上、より好ましくは3.5万以上であるのがよい。また直鎖状分子の重量平均分子量は20万以下とすることができる。本発明において直鎖状分子の重量平均分子量は、ジメチルスルホキシドを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によりポリエチレンオキシド換算で表わされるものである。
【0013】
架橋ポリロタキサンを構成するブロック基としては、例えば、2,4−ジニトロフェニル基、3,5−ジニトロフェニル基などのジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類及びピレン類、並びにこれらの誘導体又は変性体を挙げることができる。より具体的には、環状分子としてα−シクロデキストリン、及び直鎖状分子としてポリエチレングリコールを用いる場合、ブロック基を、シクロデキストリン類、2,4−ジニトロフェニル基、3,5−ジニトロフェニル基などのジニトロフェニル基類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類及びピレン類、並びにこれらの誘導体又は変性体とすることができる。
また、架橋ポリロタキサンを構成する直鎖状分子の末端は非イオン性のブロック基で封鎖されているのが好ましい態様の1つとして挙げられる。架橋ポリロタキサンを構成する直鎖状分子はその末端において、例えば、エステル結合、アミド結合を介してブロック基と結合することができる。ブロック基は、再現安定性に優れるという観点から、非イオン性のもの、かさ高いものであるのが好ましく、アダマンタン基類がより好ましい。非イオン性のブロック基、かさ高いブロック基としては上記のブロック基と同様のものが挙げられる。
【0014】
架橋ポリロタキサンを構成する環状分子は、ポリロタキサン分子が有する環状分子同士(少なくとも2個の環状分子)が化学結合(単結合、有機基)を介して架橋するものを含む。有機基は特に制限されない。有機基は例えば、脂肪族炭化水素基(脂肪族炭化水素基は鎖状、分岐状、環状、これらの組み合わせのいずれであってもよく、不飽和結合を有することができる。)、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせのいずれであってもよく、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有することができる。有機基としては、例えば、下記の架橋剤と、ポリロタキサンが有する環状分子が持つ、架橋剤と反応可能な官能基との反応により形成されるものが挙げられる。
架橋ポリロタキサンを構成する環状分子は少なくともその一部が架橋剤によって架橋されていればよい。また、架橋剤はその官能基の1つだけが架橋ポリロタキサンを構成する環状分子と反応することができる。この場合架橋剤が有する残りの官能基は環状分子とは未反応なので、1つの架橋剤は1つの環状分子を修飾するのみであり、環状分子同士を架橋しない。
架橋ポリロタキサンを製造する際に使用される環状分子は、環状構造、および架橋剤と反応し得る官能基を有する化合物であれば特に制限されない。架橋剤と反応し得る官能基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシル基が挙げられる。環状分子は具体的には例えば、種々のシクロデキストリン類(例えばα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、ジメチルシクロデキストリン及びグルコシルシクロデキストリン、これらの誘導体又は変性体など)、クラウンエーテル類、ベンゾクラウン類、ジベンゾクラウン類、及びジシクロヘキサノクラウン類、並びにこれらの誘導体又は変性体を挙げることができる。これらのうち、架橋反応に利用できる水酸基が豊富に存在するシクロデキストリン類が好ましく、特に、α−シクロデキストリンであることが好ましい。
架橋ポリロタキサンを製造する際に使用されるポリロタキサンの包接率は、初期の弾性率が適切な範囲となり、電圧印加による弾性率の変化が著しくユーザに明確なクリック感を付与することができ、再現安定性に優れるという観点から、0.01〜0.6であるのが好ましく、0.01〜0.5であるのがより好ましい。本発明において、包接率は環状分子が直鎖状分子に串刺し状に包接される際に直鎖状分子に包接される環状分子の個数について、直鎖状分子が環状分子を最大限に包接できる個数(計算値)を1(基準値)とした場合の基準値に対する値である。実際に製造されたポリロタキサン中の環状分子の数はNMRによって測定することができる。
なお、架橋ポリロタキサンを構成する環状分子は非イオン性基によって修飾されていてもよい。環状分子(例えばシクロデキストリン)を修飾する非イオン性基、環状分子(例えばシクロデキストリン)を非イオン性基で修飾する方法については、例えば、国際公開第2005/080469号に記載されたものが挙げられる。
【0015】
架橋ポリロタキサンゲルを製造する際に使用される架橋剤は、環状分子が有する官能基と反応可能な基を2個以上有する化合物であれば特に制限されない。環状分子が有する官能基と反応可能な基としては、例えば、ハロゲン原子、エポキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、イソシアネート基、イミダゾール基、ビニル基が挙げられる。架橋剤としては具体的には例えば、塩化シアヌル、トリメソイルクロリド、テレフタロイルクロリド、エピクロロヒドリン、ジブロモベンゼン、グルタールアルデヒド、フェニレンジイソシアネート、ジイソシアン酸トリレン(例えば2,4−ジイソシアン酸トリレン)、1,1′-カルボニルジイミダゾール、ジグリシジルエーテル(例えば、ブタンジオールジグリシジルエーテルのようなアルキレンジオールジグリシジルエーテル)及びジビニルスルホンなどを挙げることができる。
なかでも、再現安定性に優れ、水溶性の溶媒と相溶できる点で好ましいことから、アルキレンジオールジグリシジルエーテルが好ましく、ブタンジオールジグリシジルエーテルがより好ましい。
【0016】
原料としてのポリロタキサンの量は、初期の弾性率が適切な範囲となり、電圧印加による弾性率の変化が著しくユーザに明確なクリック感を付与することができ、再現安定性に優れるという観点から、架橋剤1質量部に対して、1.5〜8.0質量部であるのが好ましく、2.0〜6.0質量部であるのがより好ましい。
【0017】
架橋ポリロタキサンは、再現安定性に優れるという観点から、直鎖状分子(架橋ポリロタキサンの主鎖)が、ポリエチレングリコール、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、ブロック基がアダマンタン基類であり、直鎖状分子の末端はエステル結合および/またはアミド結合を介してブロック基と結合し、環状分子がシクロデキストリンであり、環状分子の少なくともその一部がアルキレンジオールジグリシジルエーテルによって架橋されているのが好ましい。
【0018】
架橋ポリロタキサンゲルはその製造について特に制限されない。例えば、シクロデキストリン分子の開口部に直鎖状分子が串刺し状に包接され且つ該シクロデキストリン分子が脱離しないように前記直鎖状分子の両末端にブロック基が配置されるポリロタキサンの少なくとも2分子と、架橋剤とを反応させることによって製造する方法が好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0019】
また、ポリロタキサンを架橋させる架橋反応と、得られた架橋ポリロタキサンのゲル化を1つの工程で行う方法としては、例えば、原料としてのポリロタキサンと架橋剤との反応を溶媒中において行う方法が挙げられる。具体的には例えば、モールドにゲル化時の溶媒(例えば、水、水酸化ナトリウム水溶液)、ポリロタキサン、および架橋剤を入れて、室温〜50℃の条件下において10〜30時間架橋反応およびゲル化を行う方法が挙げられる。架橋反応後、必要に応じて、モールドから架橋ポリロタキサンゲルを取り出し、これを水で洗浄し、2日間水置換を行うことができる。
なお、本発明において溶媒量および系内における架橋剤濃度を一定にして、ポリロタキサンの量を変更することで、架橋ポリロタキサンゲルの架橋密度を制御することができる。この架橋系において架橋剤はポリロタキサンと反応しながら、溶媒によっても失活する。つまり、速度論的に、反応できるポリロタキサンサイトが多ければ、架橋剤はポリロタキサンとより多く反応し、架橋ポリロタキサンゲルの架橋密度をより高くすることができる。本発明において、溶媒として1.5Nの水酸化ナトリウム水溶液3.5mLを使用し、系内の架橋剤濃度を0.21モル/L(架橋剤がブタンジオールジグリシジルエーテルである場合その使用量:140μL)とし、系内のポリロタキサンの量を0.2〜1.2gとすることによって架橋ポリロタキサンゲルの架橋密度を調製することができる。本発明において使用される架橋ポリロタキサンゲルは、架橋ポリロタキサンゲルの架橋密度を制御することができ、架橋密度が高く反力をより大きくできるという観点から、上記の方法で架橋されたものであるのが好ましい。
【0020】
本発明において、得られた架橋ポリロタキサンゲルの架橋密度を表す指標として、架橋ポリロタキサンゲルのヤング率を採用した。架橋ポリロタキサンゲルの製造の際、一定濃度の架橋剤に対して使用するポリロタキサンの量が多いほど、架橋ポリロタキサンゲルの架橋密度を高くすることができ、架橋ポリロタキサンゲルのヤング率を高くすることができる。架橋ポリロタキサンゲルのヤング率については後述する。
【0021】
ポリロタキサンと架橋剤との反応もしくはゲル化に使用することができる溶媒、および/または架橋ポリロタキサンゲルを膨潤させる溶媒としてはプロトン性の極性溶媒を用いることができる。すなわち、水、エタノール、メタノール、2級および3級のアルコール類、ポリエチレングリコールなどを用いることができる。なかでも、初期の弾性率が適切な範囲となり、電圧印加による弾性率の変化が著しくユーザに明確なクリック感を付与することができ、再現安定性に優れるという観点から、特に水が好ましい。ポリロタキサンと架橋剤との反応に使用することができる溶媒として水を使用する場合、水は水酸化ナトリウムのようなアルカリを含有することができる。
架橋ポリロタキサンゲルを製造する際に使用されるポリロタキサンはその製造について特に制限されない。例えば国際公開第2005/052026号、国際公開第2005/080469号に記載された方法によって製造することができる。
架橋ポリロタキサンゲルおよびその製造方法については例えば国際公開第2005/080469号を本願明細書に援用しこれに記載されたものを本発明において使用することができる。
【0022】
得られた架橋ポリロタキサンゲルにおいて、前記溶媒と前記架橋ポリロタキサンとの質量比(溶媒:架橋ポリロタキサン)は、初期の弾性率が適切な範囲となり、電圧印加による弾性率の変化が著しくユーザに明確なクリック感を付与することができ、再現安定性に優れるという観点から、99:1〜70:30であるのが好ましく、95:5〜80:20であるのがより好ましく、90:10〜85:15であるのがさらに好ましい。
架橋ポリロタキサンは溶媒を含むことにより膨潤することができる。膨潤時又は膨潤前の架橋ポリロタキサン濃度、即ち、架橋ポリロタキサンゲルの単位体積あたりの架橋ポリロタキサンの量は、初期の弾性率が適切な範囲となり、電圧印加による弾性率の変化が著しくユーザに明確なクリック感を付与することができ、再現安定性に優れるという観点から、0.02〜0.40g/cm
3、好ましくは0.04〜0.30g/cm
3、より好ましくは0.08〜0.20g/cm
3であるのがよい。
架橋ポリロタキサンゲルはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
架橋ポリロタキサンゲルの厚さは1mm以下とすることができ、1mm未満であるのが好ましい。また機械的強度を確保できるという観点から0.3mm以上であるのが好ましい。
架橋ポリロタキサンゲルの弾性率(印加なしの条件下)は、再現安定性に優れるという観点から、ヤング率として30kPa以下であるのが好ましい。本願発明者らは、架橋ポリロタキサンゲルの弾性率が上記のような範囲である場合、電圧を印加することによってその弾性率をより変化させることができ、反力発生部に反力を発生させるために使用する架橋ポリロタキサンゲルとしてより好適であることを見出した。
【0023】
反力発生部に使用される電極ついて以下に説明する。反力発生部を形成する際に使用される電極はその材料について特に制限されない。例えば、(i)活性炭、カーボンブラック、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維等の炭素材料、(ii)金、白金、イリジウム、パラジウム、ルテニウム、銀、銅、ニッケルなどの金属類、(iii)酸化ルテニウム、酸化チタン、酸化スズ、二酸化イリジウム、酸化タンタル、酸化バナジウム、酸化モリブデンなどの金属酸化物、(iv)ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン及びこれらの誘導体などのπ共役系導電性高分子などを用いることができる。これらは単独で用いてもよいし、複数を組み合わせてもよい。
電極の厚さは特に制限されない。10μm以下とすることができる。
本発明の多段スイッチに使用される架橋ポリロタキサンゲルの特徴のひとつとして、その高い透明性が挙げられる。前記電極材料として取り上げた酸化インジウムに少量の酸化スズを混ぜたITOやπ共役系導電性高分子を用いた電極は透明性も高いため、これらの電極を付与することで透明な触感呈示型の入力デバイス(反力発生部)を得ることができる。
電極の形成方法としては特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。すなわち、真空蒸着法、スパッタリング法、電解メッキ法、無電解メッキ法、印刷法、適切なバインダー中に電極材料を溶解もしくは分散させたインキを架橋ポリロタキサンゲル上に塗布する方法、架橋ポリロタキサンゲルと別途作製した電極シート又は金属箔膜とを圧着または溶着により貼り合せる方法、金属板(例えばL字状などの形状のもの、薄膜のもの)を架橋ポリロタキサンゲルに差し込む方法などが挙げられる。特に、金を用いた無電解メッキ法は、電極形成の容易性と形成された電極の安定性の観点から、好適に用いられる。金を用いた無電解メッキ法は従来公知のものが挙げられ、例えば、電極は以下に示す(a)〜(e)の工程を、3〜5回繰り返すことで作製することができる。
(a)架橋ポリロタキサンゲルの洗浄工程、(b)架橋ポリロタキサンゲルの膨潤工程、(c)架橋ポリロタキサンゲルへの金属イオンの吸着工程、(d)金属イオンの還元工程、(e)電極を有する架橋ポリロタキサンゲルの洗浄工程
反力発生部は架橋ポリロタキサンゲルと1対の電圧印加用電極とを持つものであれば特に制限されない。1対の電圧印加用電極の位置は、例えば、架橋ポリロタキサンゲルの表面上の左右の端部、架橋ポリロタキサンゲルの上下面、架橋ポリロタキサンゲルの両側面、架橋ポリロタキサンゲルの内部とすることができる。
1対の電圧印加用電極の位置が架橋ポリロタキサンゲルの上下面である場合、1対の電圧印加用電極は1mm以下とすることができ、1mm未満であるのが好ましい。
1対の電圧印加用電極の位置が架橋ポリロタキサンゲルの表面上の左右の端部、架橋ポリロタキサンゲルの両側面、架橋ポリロタキサンゲルの内部である場合、1対の電圧印加用電極の間は5mm以下とすることができる。
【0024】
本発明の多段スイッチは、押し込み操作において、少なくとも1回、架橋ポリロタキサンゲルに電圧を印加して架橋ポリロタキサンゲルの弾性率、つまりは反力発生部の弾性率を変化させ反力発生部に反力を生じさせる。
本発明において、架橋ポリロタキサンゲルまたは反力発生部のヤング率は原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope;AFM)を用いて測定された。ある架橋ポリロタキサンゲルとこの架橋ポリロタキサンゲルを持つ反力発生部とにおいて、両者の初期(印加なし)のヤング率はAFMによる測定の場合同じまたはほぼ同等とすることができる。また電圧印加によって生じる架橋ポリロタキサンゲルの弾性率の変化は反力発生部の弾性率の変化とすることができる。
本発明において、架橋ポリロタキサンゲル(反力発生部)に印加するための電圧は直流電圧である(この場合電源は直流電源とすることができる。)のが好ましい。電源は−3.0〜+3.0Vの電圧を電極間に印加することができる。電圧は、電圧印加による架橋ポリロタキサンゲル(反力発生部)の弾性率の変化を大きくすることができるという観点から、+2V以下であるのが好ましい。電圧の印加は、押し込み操作に関する、機器の回路からの制御信号に応じて制御される。
【0025】
反力発生部の初期(電圧を印加しない状態)の弾性率は、電圧印加による弾性率の変化が著しくユーザに明確なクリック感を付与することができ、再現安定性に優れるという観点から、ヤング率として30kPa以下であるのが好ましい。
初期(電圧を印加しない状態)における反力発生部の弾性率が上記のような範囲である場合、反力発生部が電圧の印加によってその弾性率をより変化させることができる。
反力発生部(架橋ポリロタキサンゲル)の印加後の弾性率は、電圧印加による弾性率の変化が著しくユーザに明確なクリック感を付与することができ、再現安定性に優れるという観点から、ヤング率として1.5〜30kPaであるのが好ましく、1.90〜25.26kPaであるのがより好ましい。
【0026】
前記印加後の反力発生部(架橋ポリロタキサンゲル)のヤング率(2)の、当該印加直前の反力発生部(架橋ポリロタキサンゲル)のヤング率(1)に対する比の値[ヤング率(2)/ヤング率(1)]は、電圧印加による弾性率の変化が著しくユーザに明確なクリック感を付与することができ、再現安定性に優れるという観点から、1.1〜2.4であるのが好ましい。なお本発明において「印加後」は印加開始後または印加をしている間を意味するものとする。
初期の反力発生部(架橋ポリロタキサンゲル)のヤング率(3)に対する第1回目の印加後の反力発生部(架橋ポリロタキサンゲル)のヤング率(4)の比の値[第1回目の印加後のヤング率(4)/初期のヤング率(3)]は、電圧印加による弾性率の変化が著しくユーザに明確なクリック感を付与することができ、再現安定性に優れるという観点から、1.1〜3であるのが好ましく、1.1〜2.4であるのがより好ましい。
【0027】
反力発生部(架橋ポリロタキサンゲル)の初期(電圧を印加しない状態)の弾性率と反力発生部(架橋ポリロタキサンゲル)の印加後の弾性率との差は、電圧印加による弾性率の変化が著しくユーザに明確なクリック感を付与することができ、再現安定性に優れるという観点から、ヤング率の差[印加後のヤング率−初期のヤング率]として、0.4〜2.5kPaであるのが好ましく、0.40〜2.08kPaであるのがより好ましい。
【0028】
反力発生部(または架橋ポリロタキサンゲル)はその形状について特に制限されない。例えば、平板状(平面状)、ドーム状、円筒状、半円筒状、シート状とすることができる。架橋ポリロタキサンゲルを上記の形状に対応するモールド内で製造することによって、所望の形状を有する架橋ポリロタキサンゲルを得ることができる。
【0029】
本発明において反力発生部は電圧印加用電極を持ち、電圧印加用電極は反力発生部の押し込みと共に可動するので、反力発生部は可動接点付き反力発生部として機能することができる。
【0030】
反力発生部を添付の図面を用いて以下に説明する。なお本発明は添付の図面に制限されない。
図1は本発明の多段スイッチに使用される反力発生部の一実施形態の概略を模式的に表す斜視図である。
図1において、反力発生部(電極システム)100は平板状の架橋ポリロタキサンゲル101と、架橋ポリロタキサンゲル101の表面の両端部(図示せず)の上にあり架橋ポリロタキサンゲル101に電圧を印加するための1対の電圧印加用電極103、105と、1対の電圧印加用電極103、105に電圧を印加する電源107とを有する。反力発生部100の動作は、まず、ユーザの押し込み操作によって反力発生部100が押し込まれると、押し込み操作に関する、機器の回路からの制御信号によって電源107が1対の電圧印加用電極103、105を介して電圧を架橋ポリロタキサンゲル101に印加し、反力発生部100(架橋ポリロタキサンゲル101)の弾性率を変化させて反力発生部100に反力を生じさせ、ユーザが反力発生部100の反力を感知することができる。
【0031】
図2は本発明の多段スイッチに使用される反力発生部の別の一実施形態の概略を模式的に表す断面図である。
図2において、反力発生部(電極システム)200は、中央部が周辺部より上方向に湾曲するように円形ドーム状に成型した架橋ポリロタキサンゲル201と、架橋ポリロタキサンゲル201の上下の両面(図示せず。)に架橋ポリロタキサンゲル201に電圧を印加するための1対の第1の電極(電圧印加用電極)203、205と、1対の第1の電極203、205に電圧を印加する電源207と、架橋ポリロタキサンゲル201の裏面に設けられ、押し込み時に基板(図示せず。)上に設けられた電極(固定接点。図示せず。)に接触して導通するための第2の電極209(可動接点)とを有する。反力発生部200の動作は、まず、ユーザの押し込み操作によって反力発生部200が押し込まれると、反力発生部200の反りが反転して第2の電極209(可動接点)と固定接点(図示せず。)が導通しこれとともに押し込み操作に関する、機器の回路からの制御信号によって電源207が1対の第1の電極203、205を介して電圧を架橋ポリロタキサンゲル201に印加し、反力発生部200(架橋ポリロタキサンゲル201)の弾性率を変化させて反力発生部200に反力が生じて、ユーザが反力発生部200の反力を感知することができる。
【0032】
本発明の多段スイッチを添付の図面を用いて以下に説明する。
図3は、本発明の多段スイッチが2段スイッチである場合の一実施形態の概略を模式的に表す分解斜視図であり、
図4は
図3に示す2段スイッチの概略を模式的に表す断面図であり、
図5は
図3に示す2段スイッチの動作を模式的に表す断面図である。
図3、
図4、
図5において、2段スイッチ300は、基板311上に、スペーサー313、反力発生部315、カバー板317、および保護シート319を順次搭載し、基板311は、1対の外縁電極321、323、中央電極325に分割された接点を有し、反力発生部315として
図2に示す反力発生部200と同様のものが適用され、反力発生部315はドーム形状をしており、反力発生部315の上下面は1対の第1の電極329、331、および反力発生部315の下面の電極331の表面に第2の電極333を有する。
図5(a)において、ユーザが指等で矢印501の方向に保護シート319の上から反力発生部315を押し下げ、次に
図5(b)において押し込み503によって、反力発生部315の中央部(図示せず。)がへこみ、次に
図5(c)においてさらなる押し込み507によって、反力発生部315の外縁部(図示せず。)の反りが反転して電極333を介して1対の外縁電極321、323同士が導通(接触)し、1段目の接点を閉じるとともに反力発生部315には1対の第1の電極329、331を介して電圧が印加されて反力発生部315(架橋ポリロタキサンゲル327)の弾性率が変化(増大)して反力発生部315には矢印505の方向に押し返す力が発生し、ユーザの指先に反力(押し返される感覚)を与えることができる。次に
図5(d)においてユーザがさらに強い力で矢印509の方向に反力発生部315を押し下げることにより反力発生部315の中央部分(図示せず。)の反りが反転して第2の電極333を介して中央電極325が1対の外縁電極321、323と、または第2の電極333から電気的に接続する外部電極(図示せず。)と導通(接続)し、2段目の接点を閉じる。
【0033】
図6は、本発明の多段スイッチが2段スイッチである場合の別の一実施形態の概略を模式的に表す断面図である。
図6(a)において、2段スイッチ600は、基板611、反力発生部615を順次搭載し、反力発生部615に電圧を印加するための電源を有する。基板611は、1対の外縁電極621、623、中央電極625に分割された接点を有し、反力発生部615はドーム形状をしており、反力発生部615の上下面は1対の第1の電極(電圧印加用電極)629、631(なお第1の電極631は可動接点を兼ねる。)を持つ。電極631は架橋ポリロタキサンゲル627の下表面の外縁を覆わず、架橋ポリロタキサンゲル627の下表面より小さく形成されており、反力発生部615は架橋ポリロタキサンゲル627の端部637、639において1対の外縁電極621、623に支持され、電極631は1対の外縁電極621、623とは接触していない。また2段スイッチ600は1対の外縁電極621、623、中央電極625で電気的に機器の回路635に接続されている。
図6(b)において、ユーザが指等で矢印641の方向に反力発生部615を押し下げ、この押し込み641によって反力発生部615の外縁部(図示せず。)の反りが反転して電極631を介して1対の外縁電極621、623同士が導通(接触)し、1段目の接点を閉じるとともに反力発生部615には1対の第1の電極(電圧印加用電極)629、631を介して電圧が印加されて反力発生部615(架橋ポリロタキサンゲル627)の弾性率が変化(増大)して反力発生部615には反力が発生し、ユーザの指先に押し返される感覚を与えることがきる。
次に
図6(c)においてユーザがさらに強い力で矢印643の方向に反力発生部615を押し下げることにより反力発生部615の中央部分(図示せず。)の反りが反転して電極631を介して中央電極625が1対の外縁電極621、623と、または電極631から電気的に接続する外部電極(図示せず。)と導通(接続)し、2段目の接点を閉じる。このとき反力発生部615には
図6(b)のときと同じ電圧が印加されたままであり、反力発生部615(架橋ポリロタキサンゲル627)の弾性率は
図6(b)のときと同じである。
【0034】
本発明の多段スイッチにおいて、保護シートは例えばフィルム状の絶縁材から形成される。カバー板は絶縁材から形成される平板で、ドーム状等に成型された架橋ポリロタキサンゲル(高分子薄膜)の直径より小さな貫通孔が設けられている。スペーサは絶縁材から形成される平板で、ドーム状等に成型された架橋ポリロタキサンゲル(高分子薄膜)とほぼ同じ直径の貫通孔が設けられている。基板はフレキシブル基板とすることができ、例えばフェノール樹脂等の平板の積層板で形成されており、表面には銅箔などの導電性の金属材料からなる2種類の接点(電極)が配置されている。この接点は中央に設けられた円形の接点部(中央電極)とその外周に円環状に設けられる接点部(1対の外縁電極)とであり、これらは、ドーム状等に成型された架橋ポリロタキサンゲル(高分子薄膜)または反力発生部の直径より内側に形成されている。外周に円環状に設けられた接点(1対の外縁電極)は左右で互いに絶縁しており、ドーム状等に成型された反力発生部[架橋ポリロタキサンゲル(高分子薄膜)]が押し込まれると、反力発生部が有する可動接点(反力発生部が有する1対の電圧印加用電極のうち下面にある電極、または反力発生部が有する1対の電圧印加用電極のうち下面にある電極上に設けられた第2の電極)により左右の接点(1対の外縁電極)が導通するとともに、反力発生部(高分子膜)が押されたことを検知する。中央部の接点は反力発生部が有する可動接点により左右の接点(1対の外縁電極)または反力発生部が有する可動接点から電気的に接続された外部電極と導通することで第2のスイッチの役割を果たす。
【0035】
図7は本発明の多段スイッチが2段スイッチである場合の別の一実施形態の概略を模式的に表す分解斜視図であり、
図8は
図7に示す2段スイッチの概略を模式的に表す断面図である。
図7、
図8において、2段スイッチ700は、タッチパネル717の上に、反力発生部715、カバー板719、ボタン721を順次搭載し、反力発生部715として
図1に示すものと同様のものを適用し、反力発生部715は平面状をしており、架橋ポリロタキサンゲル701はその表面上の左右の端部に1対の電圧印加用電極703、705を第1の電極として有し、ボタン721はカバー板719と対向する面に第2の電極723を有し、カバー板719は、第2の電極723と接触するための第3の電極725を有し、1対の電圧印加用電極703、705に電圧を印加するための電源727を有する。
図7、
図8に示す2段スイッチ700の動作は、まず、ボタン721を押し下げることにより第2の電極723が第3の電極725と導通して、1段目の接点を閉じるとともに反力発生部715に電源727から第1の電極703、705を介して電圧が印加されて反力発生部715(架橋ポリロタキサンゲル701)の弾性率が変化(増大)し、さらにボタン721を押し下げることによりタッチパネル717が押し込みを検知して、2段目の接点(図示せず。)を閉じる2段スイッチである。
【0036】
本発明において、ボタンは絶縁材から形成され、内側に円形の電極が設置されている。カバー板(電極端子付カバー板)は絶縁材から形成され、表面には銅箔などの導電性の金属材料からなる円環状の接点(電極)が配置されている。この円環状に設けられた接点は左右で互いに絶縁しており、ボタンが押し込まれたときに、ボタンの内側の電極と接触することにより左右の接点が互いに導通し、電極システムに電圧を印加するスイッチの役割を果たす。電極システムは
図1に示す反力発生部(素子)を用いる。操作者による2回目の押し込みを検知するセンサーとしてはタッチパネルを用いる。タッチパネルは、パネルに接触した操作者の指を検出して操作者による入力を検知する入力手段である。タッチパネルの具体的構成としては、接触圧力が加わった位置を検出する抵抗膜感圧方式のもの、および接触により表面を伝播する表面弾性波を検出する表面弾性波方式のものを使用しても良い。さらに、赤外線発光ダイオードとフォトトランジスタからなるセンサーを多数設けた赤外線検出方式のタッチパネルを使用することもできる。
【実施例】
【0037】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
[架橋ポリロタキサンゲルの製造]
1.未架橋ポリロタキサンの合成
ポリロタキサンの合成例:
<ポリエチレングリコールのTEMPO酸化によるPEG−カルボン酸の調製>
ポリエチレングリコール(PEG)(重量平均分子量:10万)10g、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル)50mg、及び臭化ナトリウム0.25gを水110mlに溶解した。得られた溶液に市販の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度約5%)2.5mlを添加し、室温で攪拌しながら反応させた。反応が進行すると添加直後から系のpHは急激に減少するが、なるべくpH:10〜11を保つように1N−NaOHを添加して調製した。pHの低下は概ね3分以内に見られなくなったが、さらに10分間攪拌した。過剰量のエタノールを添加して反応を終了させた。塩化メチレン50mlでの抽出を3回繰返して無機塩以外の成分を抽出した後、エバポレータで塩化メチレンを留去した。温エタノール250mlに溶解させた後、−4℃の冷凍庫に一晩おいてPEG−カルボン酸、即ちPEGの両末端をカルボン酸(−COOH)に置換したもの、を析出させた。析出したPEG−カルボン酸を遠心分離で回収した。この温エタノール溶解−析出−遠心分離のサイクルを数回繰り返し、最後に真空乾燥で乾燥させてPEG−カルボン酸を得た。収率95%以上。カルボキシル化率95%以上。
<PEG−カルボン酸とα−シクロデキストリンを用いた包接錯体の調製>
上記で調製したPEG−カルボン酸6g及びα−シクロデキストリン(α−CD)24gをそれぞれ別々に用意した70℃の温水100mlに溶解させた後、両者を混合し、その後、冷蔵庫(4℃)中で3日間静置した。クリーム状に析出した包接錯体を凍結乾燥し回収した。
<アダマンタンアミンとBOP試薬反応系を用いた包接錯体の封鎖>
上記包接錯体にアダマンタンアミン0.26g、BOP試薬(ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム・ヘキサフルオロフォスフェート)0.60g、ジイソプロピルエチルアミン0.28mlを脱水ジメチルホルムアミド(DMF)120mlに溶解した溶液を加え、よく振り混ぜた後、冷蔵庫中で一晩静置した。その後、メタノール120mlを加え、攪拌、遠心分離、上澄みの除去、を行った。次いで、DMF/メタノール=1:1混合溶液200mlを加え、同様の操作を2回行った。さらにメタノール200mlを用いて同様の操作を2回行い、得られた沈澱を真空乾燥した後、ジメチルスルホキシド(DMSO)140mlに溶解した。この溶液を純水1400ml中に滴下してポリロタキサンを析出させた。析出したポリロタキサンを遠心分離で回収し、真空乾燥した。さらに同様の再沈澱操作を行い、ポリロタキサン16gを得た。得られたポリロタキサンをNMR測定した結果、CDとPEGモノマーとの比(モル比)は、CD:PEGモノマー=13.5:100であった(包接率:0.27)。なお、包接率より、理論計算上、該ポリロタキサン1gにつき、シクロデキストリンが0.76ミリモル包接される。得られたポリロタキサンをポリロタキサン1とする。
【0038】
2.ポリロタキサン1の架橋および架橋ポリロタキサンのゲル化
上記のようにして得られたポリロタキサン1:0.35g、0.45g、0.53g、0.60g、0.70gをそれぞれ3.5mlの1.5N−NaOH水溶液に溶解し、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルを140μl(架橋剤の濃度として0.21mol/L)添加し、撹拌した。均一になった溶液を厚み0.5mmのシート状のモールドに注入し、25℃、20時間反応させた後、モールドから取り出し、水で洗浄し、2日間水置換を行った。得られた架橋ポリロタキサンゲルを上記のポリロタキサン1の使用量の順に架橋ポリロタキサンゲル1〜5とする。なお、水で膨潤させて得られた架橋ポリロタキサンゲル1の重量を1とした場合、架橋ポリロタキサンゲル1の含水率は0.91となる。同様に架橋ポリロタキサンゲル2〜5含水率はそれぞれ0.88、0.86、0.83、0.80になる。
【0039】
[ハイドロゲルの製造]
(株)クラレ製、PVA−124、重合度2400、ケン化度98〜99mol%のポリビニルアルコール(PVA)を水に溶解して、濃度6%のPVA水溶液を作製した。この水溶液を厚さ0.5mm、幅4mm、長さ4mmのシリコン型に流し込み、−15℃の温度下で10時間放置して水溶液を凍結させた後、5℃の温度下に24時間放置して氷を融解し、ポリビニルアルコールゲル(PVAゲル)を得た。得られたPVAゲルをハイドロゲルとする。
[オルガノゲルの製造]
モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製TSE3070を厚さ0.5mm、幅4mm、長さ4mmのシリコン型に流し込み、80℃の温度下で3時間放置し、シリコーンゲルを得た。得られたシリコーンゲルをオルガノゲルとする。
[イオン性架橋ポリロタキサンゲル]
3,5−ジメルカプトメチルピリジンで架橋されたα−シクロデキストリン2量体(1g)とポリエチレングリコール(重量平均分子量:1,500、シグマアルドリッチ社製)(5mg)とを水(10ml)に加え、超音波を照射しながら室温で混合した。2時間後沈殿物としてα−シクロデキストリン2量体による架橋ポリロタキサンを得た。
次に得られた架橋ポリロタキサン1gと過酸化水素水10mLとを混合し、0℃の条件下で反応させてポリエチレングリコールの末端のヒドロキシ基を酸化させてカルボキシル基とし、その後カルボキシル基と水酸化ナトリウムとを反応させることによって、カルボキシル基をナトリウム塩に変換させ、カルボン酸ナトリウム塩で変性された架橋ポリロタキサンを得た。得られた架橋ポリロタキサンをゲル化してこれをイオン性変性架橋ポリロタキサンゲルとして使用した。
【0040】
[ヤング率の測定]
本発明において、架橋ポリロタキサンゲル、反力発生部のヤング率は、原子間力顕微鏡(日本ビーコ社製 Nano ScopeIIIa Dimension3000)を用い、室温下で測定された。
架橋ポリロタキサンゲルのヤング率は、架橋ポリロタキサンゲルを印加なしの条件下でゲル表面のフォースボリューム測定を行い、得られたフォースディスタンスカーブより決定された。
反力発生部のヤング率は、反力発生部に、印加なしまたは+2Vの直流電圧を加えながらの条件下で、反力発生部の表面(反力発生部の上面における電極)上におけるフォースボリューム測定を行い、得られたフォースディスタンスカーブより決定された。結果を第1表に示す。
架橋ポリロタキサンゲルのヤング率は、厚さ0.5mmのモールド中で上述のとおり架橋反応、ゲル化を行った後、純水で置換して得られたものをサンプル(使用したサンプルの厚さは0.5mm)として用いた。
反力発生部のヤング率の評価に使用された評価サンプルについて添付の図面を用いて以下に説明する。
図1は架橋ポリロタキサンゲルのヤング率の評価に使用された評価サンプルを模式的に表す斜視図である。
図1において、反力発生部(電極システム)としての評価サンプル100は架橋ポリロタキサンゲル101(上記のようにして得られた架橋ポリロタキサンゲル1〜5をそれぞれ厚さ0.5mm、幅4mm、長さ4mmの平板状とし、この高分子薄膜を純水で1日膨潤させたもの、厚さ0.5mm)と、架橋ポリロタキサンゲル101の両端(図示せず)に架橋ポリロタキサンゲル101に電圧を印加するための1対の電圧印加用電極103、105(架橋ポリロタキサンゲル101の上面の両端からそれぞれ1mmの部分を金を用いた無電解メッキ法でメッキして電極化したもの。)を有する。電圧印加用電極103、105の厚さは1ミクロン(μm)である。電圧印加用電極103と105との間(架橋ポリロタキサンゲルの表面においてメッキされていない部分)の距離は2mmである。
金を用いた無電解メッキ法による金メッキは、上記のようにして得られた架橋ポリロタキサンゲル1〜5を基材としこれに対し、金フェナントロリン錯体溶液(2〜10g/L)中に室温下で基材の両端から1mm幅の部分をそれぞれ6時間浸漬した。還元液として、アスコルビン酸ナトリウム水溶液(4〜6mM)を50mL程度作製し、40℃の金フェナントロリン錯体溶液に5mL加えた。その後30分かけて5℃昇温した時点で還元液を5mL加えた。同様の添加を反応液が60℃に達するまで行い、液温が60℃に達した時点で生成したメッキ液をすべて投入し、2時間ほど還元反応を進行させた。生成したメッキ膜を蒸留水で洗浄し、再びメッキ溶液に浸透させた。この操作を3回繰り返すことにより、金メッキした架橋ポリロタキサンゲル(反力発生部)を得た。得られた反力発生部を反力発生部1〜5とする。
得られた反力発生部1〜5を
図1における評価サンプル100として用いて、
図1に示すように電源107から電圧印加用電極103、105を介して評価サンプル100に+2Vの直流電圧を印加した。
【0041】
【表1】
第1表においてポリロタキサン使用量は各架橋ポリロタキサンゲルを製造する際に使用されたポリロタキサン1の量である。
【0042】
第1表に示す結果から明らかなように、架橋ポリロタキサンゲルを使用せず代わりに別の材料を用いた比較例1〜3は電圧を印加しても顕著なヤング率の変化は確認されなかった。
これに対して、架橋ポリロタキサンゲルを使用する実施例1〜5は電圧(直流電圧)を印加することによりその弾性率が印加前後で変化した。実施例1〜5において初期のヤング率が高いほど弾性率が高く架橋ポリロタキサンゲルの架橋密度が高いと考えられる。架橋ポリロタキサンゲルの初期の弾性率がヤング率として30kPa以下である場合、印加前後のヤング率の比の値が高く印加後のヤング率を高くすることができることが明らかとなった。
【0043】
[ドーム型の反力発生部の2段スイッチへの適用]
図2に示すドーム型の反力発生部(電極システ)を用いて
図3に示す2段スイッチを作製し、その電場応答性を調べた。
電極システムとして、電極システムの材料候補として好適と判断した架橋ポリロタキサンゲル2〜5と同様の材料を用いて、これを直径10.6mm、深さ2.18mm、厚さ0.5mmをモールドに流し込んで架橋反応およびゲル化を行い、純水で1日膨潤させた後、ドーム状の架橋ポリロタキサンゲルを得た。得られたドーム状の架橋ポリロタキサンゲルを基材とし、金フェナントロリン錯体溶液(2〜10g/L)中に室温下で基材を6時間浸漬した。還元液として、アスコルビン酸ナトリウム水溶液(4〜6mM)を50mL程度作製し、40℃の金フェナントロリン錯体溶液に5mL加えた。その後30分かけて5℃昇温した時点で還元液を5mL加えた。同様の添加を反応液が60℃に達するまで行い、液温が60℃に達した時点で生成したメッキ液をすべて投入し、2時間ほど還元反応を進行させた。生成したメッキ膜を蒸留水で洗浄し、再びメッキ溶液に浸透させた。この操作を3回繰り返すことにより、金メッキした架橋ポリロタキサンゲル(反力発生部)を得た。得られた反力発生部を反力発生部6〜9とする。反力発生部6〜9における架橋ポリロタキサンゲルの含水率は上記と同様である。
得られた反力発生部を用いて上記と同様に電圧印加前後での反力発生部のヤング率を測定した。また、電圧印加前後の反力発生部のヤング率の比を指標として、感触変化の有無を評価した。つづいて、2段スイッチを実際に指で押し込むことにより、反力感触の有無を評価した。さらに、作製した2段スイッチを100回押し込んだ後の電圧印加前後の反力発生部のヤング率の比の値[100回目に印加中の反力発生部のヤング率/100回目印加直前の反力発生部のヤング率]を測定し、スイッチの繰り返し安定性を評価した。結果を第2表に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
第2表に示す結果から明らかなように、架橋ポリロタキサンゲルを使用せず代わりに別の材料を用いた比較例4〜6はいずれもスイッチの押し込みによる反力を認識することができなかった。また、比較例4では100回スイッチを押し込んだ後の電圧印加前後のヤング率の比は大きく減少した。
これに対して、実施例6〜9(反力発生部6〜9を用いて作製した2段スイッチ)は、スイッチの押し込みによる反力を確実に認識することができた。さらに、100回スイッチを押し込んだ後でもスイッチの押し込みによる反力は初回の場合と比較してほとんど変化しなかった。
【0046】
[平面上の反力発生部の2段スイッチへの適用]
図1に示す平面状の反力発生部(電極システム)を用いて
図7に示す2段スイッチを作製し、その電場応答性を調べた。
電極システムとして、電極システムの材料候補として好適と判断した架橋ポリロタキサンゲル2〜5と同様の材料を用いて、これを厚さ0.5mm、幅10mm、長さ10mmのモールドに流し込んで架橋反応およびゲル化を行い、純水で1日膨潤させた後、平面状の架橋ポリロタキサンゲルを得た。得られた平面状の架橋ポリロタキサンゲルを基材とし、金フェナントロリン錯体溶液(2〜10g/L)中に室温下で基材を6時間浸漬した。還元液として、アスコルビン酸ナトリウム水溶液(4〜6mM)を50mL程度作製し、40℃の金フェナントロリン錯体溶液に5mL加えた。その後30分かけて5℃昇温した時点で還元液を5mL加えた。同様の添加を反応液が60℃に達するまで行い、液温が60℃に達した時点で生成したメッキ液をすべて投入し、2時間ほど還元反応を進行させた。生成したメッキ膜を蒸留水で洗浄し、再びメッキ溶液に浸透させた。この操作を3回繰り返すことにより、金メッキした架橋ポリロタキサンゲル(反力発生部)を得た。得られた反力発生部を反力発生部10〜13とする。反力発生部10〜13における架橋ポリロタキサンゲルの含水率(質量%)はそれぞれ上記と同様である。
得られた反力発生部10〜13を
図1における評価サンプル100として用いて、
図1に示すように電源107から電圧印加用電極103、105を介して評価サンプル100に+2Vの直流電圧を印加した。また、電圧印加前後の反力発生部のヤング率の比を指標として、感触変化の有無、作製した2段スイッチを100回押し込んだ後の電圧印加前後の反力発生部のヤング率の比の値[100回目に印加中の反力発生部のヤング率/100回目印加直前の反力発生部のヤング率]を上記と同様に評価した。結果を第3表に示す。
【0047】
【表3】
【0048】
第3表に示す結果から明らかなように、架橋ポリロタキサンゲルを使用せず代わりに別の材料を用いた比較例7〜9はいずれもスイッチの押し込みによる反力を認識することができなかった。また、比較例7では100回スイッチを押し込んだ後の電圧印加前後のヤング率の比は大きく減少した。
これに対して、実施例10〜13(反力発生部10〜13を用いて作製した2段スイッチ)は、スイッチの押し込みによる反力を確実に認識することができた。さらに、100回スイッチを押し込んだ後でもスイッチの押し込みによる反力は初回の場合と比較してほとんど変化しなかった。