特許第5699056号(P5699056)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5699056
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】顕微鏡観察用加温装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/30 20060101AFI20150319BHJP
【FI】
   G02B21/30
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-181038(P2011-181038)
(22)【出願日】2011年8月23日
(65)【公開番号】特開2013-44825(P2013-44825A)
(43)【公開日】2013年3月4日
【審査請求日】2014年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】595040205
【氏名又は名称】株式会社東海ヒット
(74)【代理人】
【識別番号】100098936
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100098888
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 明子
(72)【発明者】
【氏名】土屋 秀治
【審査官】 堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−058910(JP,A)
【文献】 特開2003−185913(JP,A)
【文献】 特開2003−045621(JP,A)
【文献】 特開平07−301750(JP,A)
【文献】 特開昭61−177413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 21/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズが入り込む貫通穴が形成された試料載置部と前記試料載置部を加温するヒータとを有する穴開き加温プレート部と、透明材料によって構成された試料載置部と前記試料載置部を加温する透明ヒータとを有する透明加温プレート部とを具備し、前記穴開き加温プレート部と透明加温プレート部とが一体に設けられ、且つ、前記穴開き加温プレート部の上面と透明加温プレート部の上面とが同一平面上に設けられていることを特徴とする顕微鏡観察用加温装置。
【請求項2】
請求項1に記載した顕微鏡観察用加温装置において、
穴開き加温プレート部と透明加温プレート部は左右方向に並設されていることを特徴とする顕微鏡観察用加温装置。
【請求項3】
対物レンズが入り込む貫通穴が形成された試料載置部と前記試料載置部を加温するヒータとを有する穴開き加温プレート部と、透明材料によって構成された試料載置部と前記試料載置部を加温する透明ヒータとを有する透明加温プレート部とを具備し、前記穴開き加温プレート部と透明加温プレート部とが一体に設けられ、且つ、前記穴開き加温プレート部と透明加温プレート部は左右方向に並設されていることを特徴とする顕微鏡観察用加温装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載した顕微鏡観察用加温装置において、穴開き加温プレート部と透明加温プレート部は、ほぼ同じ形状、ほぼ同じ平面積の四角形の平板状に形成されていることを特徴とする顕微鏡観察用加温装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は顕微鏡観察用加温装置に係り、特に液浸を用いた観察と液浸を用いない観察の両方に適した顕微鏡観察用加温装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図5等に示された顕微鏡観察用加温装置は透明導電膜を有する加温プレートを備え、この加温プレート上に試料を載置して観察を行う。この顕微鏡観察用加温装置は加温プレートが透明であるため、試料を直接加温することができる等の長所をもつが、対物レンズと試料との間に加温プレートが介在することになるので液浸を用いることはできない。
一方、特許文献2の図4等に示されたヒータープレート(顕微鏡観察用加温装置)はその中央部に貫通穴が形成されているので、試料を直接加温することはできないが、液浸を用いることができる。
【0003】
ところで、例えば不妊治療のため人工授精を行う場合、デッシュに卵子と精子の両方を入れて、このデッシュを顕微鏡観察用加温装置に載置した状態で顕微鏡観察しながら操作を行う。この操作には、1500倍の倍率で観察しながら良好な精子を選択し、次いで400倍の倍率で観察しながら選択した精子を卵子に注入する作業が含まれる。
上記したように液浸を用いる場合には、特許文献2の穴あきの顕微鏡観察用加温装置を使用することになるが、温度管理を高い精度で行う必要のある人工授精においては特許文献1の透明な加温プレートの顕微鏡観察用加温装置を使用してデッシュ内の卵子と精子を直接加温することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−352672号公報
【特許文献2】特開2004−141143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来においては液浸を用いる都合上、人工授精の一連の操作において、穴開きの顕微鏡観察用加温装置を使用せざるを得ず、高い精度の温度管理という観点からは不十分であった。
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、人工授精における一連の操作のように、液浸を用いる観察と用いない観察の両方に対応でき、しかも液浸を用いないで観察を行う間は試料を直接加温でき、精度の高い温度管理が可能で、更に穴開き加温プレート部の上面と透明加温プレート部の上面において試料をスムーズにスライドさせて移動させることが可能な顕微鏡観察用加温装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、対物レンズが入り込む貫通穴が形成された試料載置部と前記試料載置部を加温するヒータとを有する穴開き加温プレート部と、透明材料によって構成された試料載置部と前記試料載置部を加温する透明ヒータとを有する透明加温プレート部とを具備し、前記穴開き加温プレート部と透明加温プレート部とが一体に設けられ、且つ、前記穴開き加温プレート部の上面と透明加温プレート部の上面とが同一平面上に設けられていることを特徴とする顕微鏡観察用加温装置である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載した顕微鏡観察用加温装置において、
穴開き加温プレート部と透明加温プレート部は左右方向に並設されていることを特徴とする顕微鏡観察用加温装置である。
【0008】
請求項3の発明は、対物レンズが入り込む貫通穴が形成された試料載置部と前記試料載置部を加温するヒータとを有する穴開き加温プレート部と、透明材料によって構成された試料載置部と前記試料載置部を加温する透明ヒータとを有する透明加温プレート部とを具備し、前記穴開き加温プレート部と透明加温プレート部とが一体に設けられ、且つ、前記穴開き加温プレート部と透明加温プレート部は左右方向に並設されていることを特徴とする顕微鏡観察用加温装置である。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれかに記載した顕微鏡観察用加温装置において、穴開き加温プレート部と透明加温プレート部は、ほぼ同じ形状、ほぼ同じ平面積の四角形の平板状に形成されていることを特徴とする顕微鏡観察用加温装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の顕微鏡観察用加温装置では、人工授精における一連の操作のように、液浸を用いる観察と用いない通常の観察の両方に対応できる。しかも通常の観察を行う間は試料を直接加温でき、精度の高い温度管理が可能となる。
また、穴開き加温プレート部の上面と透明加温プレート部の上面とが同一平面上に設けられ、段差部がないので、試料をスムーズにスライドさせて移動させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係る顕微鏡観察用加温装置の上面側から見た斜視図である。
図2図1の顕微鏡観察用加温装置の下面側から見た斜視図である。
図3図1の顕微鏡観察用加温装置を電動ステージに装着した状態の平面図である。
図4図3のA−A断面図である。
図5図4に示した状態から電動ステージをR方向へ駆動させた状態の断面図である。
図6図5示した状態からデッシュをL方向へ移動させた状態の断面図である。
図7図6に示した状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態に係る顕微鏡観察用加温装置1を図面にしたがって説明する。
符号3は長方形の外枠を示し、この外枠3の下面の縁部には後述する顕微鏡の電動ステージSの開口Kに嵌め込むための凸部4が形成されている。
外枠3には穴開き加温プレート部5と、透明加温プレート部7が保持されて一体に設けられている。穴開き加温プレート部5と透明加温プレート部7は左右方向(L−R方向)に並設されている
【0013】
穴開き加温プレート部5と透明加温プレート部7は、ほぼ同じ形状、ほぼ同じ平面積の長方形の平板状に形成されている。穴開き加温プレート部5の上面と透明加温プレート部7の上面とが同一平面上に設けられている。
穴開き加温プレート部5と透明加温プレート部7の詳細な構造について説明する。
【0014】
穴開き加温プレート部5は、重ね合わされた長方形のアルミニウム合金製の板材11、12等を有し、その中央に貫通穴としての丸穴9が形成されている。板材11と板材12との間にはヒータとしてのニクロム線13が備えられている(図3図4参照)。
上記板材11、12によって試料載置部が構成されている。
図3に示すようにニクロム線13は板材11、12の全体をカバーするように引き回されており、ニクロム線13には図示しないリード線が接続されている。また、穴開き加温プレート部5には温度センサ15が備えられ、この温度センサ15には図示しないセンサ線が接続され、このセンサ線は前記リード線と共に、1本の電気コード17にまとめられている。電気コード17は外枠3から引き出されて、図示しないコントローラに接続されている。
【0015】
図4に示すように透明加温プレート部7は、内枠19と、この内枠19に保持された下側ガラス21、上側ガラス22等を有している。下側ガラス21の上面には透明ヒータとしての透明導電膜23が形成されており、この透明導電膜23が形成された面に上側ガラス22が重ねられて固定されている。
上記下側ガラス21、上側ガラス22によって試料載置部が構成されている。
透明導電膜23には電極(図示せず)を介して図示しないリード線が接続されている。また、透明加温プレート部7には温度センサ27が備えられ、この温度センサ27には図示しないセンサ線が接続され、このセンサ線は前記リード線と共に、1本の電気コード29にまとめられている。電気コード29は外枠3から引き出されて、図示しないコントローラに接続されている。
【0016】
次に、この顕微鏡観察用加温装置1の使用方法を説明する。
図4に示すように顕微鏡観察用加温装置1は、その凸部4を電動ステージSの開口Kに嵌め込み、外枠3を電動ステージSの開口Kの縁部に設置して使用する。
図4に示す状態では、穴開き加温プレート部5の丸穴9は観察に使用される対物レンズT1(またはT2)が位置するポジションPに対向している。
穴開き加温プレート部5のニクロム線13にリード線を介して通電し、また透明加温プレート部7の透明導電膜23にリード線、電極を介して通電する。これによりニクロム線13、透明導電膜23が発熱して、穴開き加温プレート部5、透明加温プレート部7が加温される。
【0017】
穴開き加温プレート部5、透明加温プレート部7の温度が温度センサ15、27によってそれぞれ検知され、この検知結果に基づきコントローラによってニクロム線13、透明導電膜23に対する通電が制御されて、板材11、12と下側ガラス21、上側ガラス22が所定の温度に保たれる。
【0018】
図3図4に示すようにデッシュDには養液Yが収容され、養液Y中に試料としての精子Hと卵子Eが入れられている。このデッシュDは穴開き加温プレート部5の中央部に載置して、デッシュDの中央部が丸穴9に対応するように備えられる。
そして、1500倍観察用の対物レンズT1に液浸用液を滴下してから、対物レンズT1を丸穴9へ進入させ、デッシュDの底部の下に移動させる。次いで液浸を用い1500倍の倍率で観察しながら、器具を用いて良好な精子Hを選択する。
【0019】
次に図示しない顕微鏡のレボルバを回動させて、図5に示すように対物レンズT1をポジションPから退避させ、電動ステージSを図4に示した位置からR方向へ駆動させて、透明加温プレート部7の中央部がポジションPにくる位置で停止させる。
次いで、図6に示すように400倍用の対物レンズT2をポジションPに移動させて、透明加温プレート部7の中央部に対向させる。
【0020】
そして、図6図7において仮想線で示す穴開き加温プレート部5上のデッシュDを、実線で示すように透明加温プレート部7の中央部へ移動させる。このとき、デッシュDを穴開き加温プレート部5と透明加温プレート部7上においてL方向へスライドさせ移動する。
前述のように穴開き加温プレート部5の上面と透明加温プレート部7の上面とが同一平面上に設けられ、段差部がないので、デッシュDを穴開き加温プレート部5の上面と透明加温プレート部7の上面においてスムーズにスライドさせることが可能であり、迅速にデッシュDを透明加温プレート部7の中央部に備えることができる。このようにデッシュDを持ち上げることなくスライドさせて移動することができるので、デッシュDに加わる振動を最小限に抑えることが可能で、精子H、卵子Eに悪影響が及ぶのを防止することができる。
【0021】
次いで400倍の倍率で観察しながら、選択した精子Hを卵子Eに注入する作業を行う。透明加温プレート部7上のデッシュDは、その底部が透明加温プレート部7に接触しているので、精子H、卵子Eを直接加温でき、精度の高い温度管理が可能となる。
【0022】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
例えば、上記実施の形態では、穴開き加温プレート部5と透明加温プレート部7は左右方向に並設されているが、本発明はこれに限定されず、穴開き加温プレート部5と透明加温プレート部7を前後方向へ並設してもよい。
【0023】
上記実施の形態では、穴開き加温プレート部5と透明加温プレート部7を長方形の平板状に形成したが、これに限定されず、正方形等、他の形状としてもよい。
また、穴開き加温プレート部5と透明加温プレート部7を異なる形状、例えば長方形と正方形等としてもよく、更に、異なる平面積のものとしてもよい。
なお、穴開き加温プレート部のヒータとしてニクロム線13を用いたが、これに限定されず透明導電膜等、他の発熱体によってヒータを構成することも可能である。
なお、本発明の顕微鏡観察用加温装置は、実施の形態で示した不妊治療のための人工授精に関する操作に使用するだけでなく、その他の微生物等の観察しようすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の顕微鏡観察用加温装置は、理化学機器の製造、販売業において利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0025】
1…顕微鏡観察用加温装置 3…外枠 4…凸部
5…穴開き加温プレート部 7…透明加温プレート部
9…丸穴 11、12…板材
13…ニクロム線 15…温度センサ 17…電気コード
19…内枠 21…下側ガラス 22…上側ガラス
23…透明導電膜 27…温度センサ 29…電気コード
S…顕微鏡の電動ステージ K…顕微鏡のステージの開口
T1…1500倍用の対物レンズ T2…400倍用の対物レンズ
D…デッシュ Y…養液 H…精子 E…卵子
R…右方向 L…左方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7