特許第5699420号(P5699420)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5699420
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】MOS型半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20150319BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20150319BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20150319BHJP
   H01L 23/532 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   H01L29/78 301N
   H01L29/78 301D
   H01L29/78 301S
   H01L21/90 M
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2009-139125(P2009-139125)
(22)【出願日】2009年6月10日
(65)【公開番号】特開2010-258396(P2010-258396A)
(43)【公開日】2010年11月11日
【審査請求日】2011年12月12日
(31)【優先権主張番号】特願2008-156099(P2008-156099)
(32)【優先日】2008年6月16日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2009-90001(P2009-90001)
(32)【優先日】2009年4月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150441
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 洋一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 泰正
【審査官】 宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−501837(JP,A)
【文献】 特開2000−022163(JP,A)
【文献】 特開2005−005443(JP,A)
【文献】 特開2006−222210(JP,A)
【文献】 特開平06−037306(JP,A)
【文献】 特開平11−307527(JP,A)
【文献】 特開昭61−276352(JP,A)
【文献】 特開平11−330456(JP,A)
【文献】 特開昭63−307757(JP,A)
【文献】 特開平01−164059(JP,A)
【文献】 特開平02−065254(JP,A)
【文献】 特開平03−034462(JP,A)
【文献】 特開平07−115126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 21/768
H01L 23/532
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MOS型半導体装置において、半導体基板上に配置され、ゲート絶縁膜と接する素子分離絶縁膜と、該素子分離絶縁膜の表面に配置された該素子分離絶縁膜より抵抗率の低い薄膜と、ソース領域と接触するソース電極と、ドレイン領域と接触するドレイン電極と、を有し、前記薄膜がソース電極とドレイン電極の両電極に電気的に接続し、前記薄膜は、前記ソース電極と前記ドレイン電極の間に素子の定格電圧を印加した時1pA〜1nAの電流が流れる抵抗率であることを特徴とするMOS型半導体装置。
【請求項2】
MOS型半導体装置において、半導体基板上に配置され、ゲート絶縁膜と接する素子分離絶縁膜と、該素子分離絶縁膜の表面に配置された該素子分離絶縁膜より抵抗率の低い薄膜と、ソース領域と接触するソース電極と、ドレイン領域と接触するドレイン電極と、を有し、前記薄膜がソース電極に電気的に接続し、前記薄膜は、前記ソース電極と前記ドレイン電極の間に素子の定格電圧を印加した時1pA〜1nAの電流が流れる抵抗率であることを特徴とするMOS型半導体装置。
【請求項3】
前記ソース領域および前記ドレイン領域は、ストライプ状の平面形状からなり、前記薄膜は、前記ドレイン領域の長手方向の端部に隣接して形成されることを特徴とする請求項2に記載のMOS型半導体装置。
【請求項4】
前記素子分離絶縁膜が、LOCOS膜または熱酸化膜であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のMOS型半導体装置。
【請求項5】
前記薄膜は、前記ソース領域および前記ドレイン領域を取り囲むように配置されたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載のMOS型半導体装置。
【請求項6】
前記薄膜の上に配置され前記薄膜より抵抗率が高い第2絶縁膜を備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載のMOS型半導体装置。
【請求項7】
前記薄膜が、半絶縁性薄膜であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載のMOS型半導体装置。
【請求項8】
前記半絶縁性薄膜が、屈折率が2.0〜2.1の窒化膜または負の固定電荷を発生させる膜のいずれかであることを特徴とする請求項7に記載のMOS型半導体装置。
【請求項9】
前記薄膜が、導電性薄膜であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載のMOS型半導体装置。
【請求項10】
前記導電性薄膜が、平均膜厚が0.1nm〜0.5nmのカーボン薄膜または高融点金属薄膜であることを特徴とする請求項9に記載のMOS型半導体装置。
【請求項11】
前記高融点金属薄膜が、タングステン薄膜、チタン薄膜またはクロム薄膜のいずれかであることを特徴とする請求項10に記載のMOS型半導体装置。
【請求項12】
ゲート電極は、前記素子分離絶縁膜の上まで延在して配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のMOS型半導体装置。
【請求項13】
前記半導体基板が第1導電型であり、
前記半導体基板の表面層に形成された第1導電型の第1領域を備え、前記ソース領域および前記ドレイン領域は、前記第1領域の表面層に互いに離れて形成された第2導電型の領域であり、前記ソース領域から前記第1領域を介して前記ドレイン領域までの前記半導体基板の表面上に前記ゲート絶縁膜を介して配置されるゲート電極を備え、
前記ゲート電極は、前記素子分離絶縁膜の上まで延在して配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のMOS型半導体装置。
【請求項14】
前記薄膜は、前記ゲート電極に隣接して形成されることを特徴とする請求項12または13に記載のMOS型半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、耐放射線特性の向上を図ったMOS型半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MOS型半導体装置の素子分離は、厚い分離酸化膜を設けて行うのが一般的である。主電流が流れる素子の活性部の周辺部には、例えば、厚さ1μm程度のフィールド酸化膜と呼ばれる酸化膜が形成される。通常、このフィールド酸化膜および厚い分離酸化膜はLOCOS(選択酸化)膜で形成される。
このようなMOS型半導体装置にγ線などの電離性放射線を照射すると、LOCOS膜中やゲート酸化膜中に電子−正孔対が発生する。MOS型半導体装置に電圧が印加されると、発生した電子はプラス極(ドレイン電極側)に、正孔はマイナス極(ソース電極側)に向かって酸化膜中を移動することになる。
酸化膜中の電子は移動度が大きいため、速やかにドレイン側に移動して酸化膜から抜き取られる。一方、酸化膜中の正孔は移動度が小さいため、酸化膜中にある正孔トラップにトラップされ正の固定電荷となって蓄積する。あるいは、シリコン−酸化膜界面の結合を切って界面準位を発生させる。
【0003】
正の固定電荷や界面準位が発生すると、シリコン界面での正味の不純物濃度が変化する。また、正の固定電荷や界面準位が極めて多くなるとシリコン界面に蓄積層や反転層が形成される。その結果として、耐圧の低下やリーク電流の増加などのMOS型半導体装置の特性に変化が生じる。
電子−正孔対の発生量は酸化膜の厚さに比例する。厚さ25nm以下の薄いゲート酸化膜ではその発生量は小さいが、素子分離膜やフィールド酸化膜に用いられるLOCOS膜などの厚い酸化膜では、その膜の厚さは0.8μm以上にもなるため、正の固定電荷の蓄積量や界面準位の発生量が多くなり、その結果として特性劣化が著しくなる。
図11は、MOSFETの要部構成図であり、同図(a)は要部平面図、同図(b)は同図(a)のY1−Y1線で切断した要部断面図、同図(b)は同図(a)のY2−Y2線で切断した要部断面図である。
【0004】
同図(a)では、このMOSFETは半導体チップ1の隅に形成された場合を示しているが、集積回路を構成するMOSFETの場合にはMOSFETは内側に形成されることもあり、その場合には同図(a)で示すチップ端部21は他の素子との境界となる。
同図(a)において、半導体チップ1の表面部分にはドレイン部2を、このドレイン部2と対向する部分にはソース部3を配置する。この平面図は説明のための便宜的な図であり、ドレイン部2とソース部3は島状とした。またドレイン部2に形成されるドレイン電極13およびソース部2に形成されるソース電極12も島状である。実際の素子では、ドレイン部2とソース部3の平面パターンはくしの歯状に互いに入り組んでいる場合が多く、島状のドレイン電極13は実際は一つのドレイン電極で繋がっており、島状のソース電極12も実際は一つのドレイン電極で繋がっている場合が多い。
【0005】
同図(b)および同図(c)において、MOSFETは、p型シリコン基板4に形成した低濃度p型拡散層5(p型ウェル領域)、低濃度n型拡散層6(n型オフセット領域)、高濃度n型拡散層7、17(7はn型ソース領域、17はn型ドレイン領域)、高濃度p型拡散層8(p型コンタクト領域)、LOCOS膜9、BPSG(ボロン・リンガラス)膜10、ゲート電極11、ソース電極12およびドレイン電極13から構成される活性部と、チップ外周部22に形成されるLOCOS膜18およびBPSG膜10の2層膜からなる分離構造部から成り立っている。
尚、LOCOS膜9およびLOCOS膜18は同時に形成され繋がっている。また、ソース部3は高濃度p型拡散層8と高濃度n型拡散層7で構成され、ドレイン部2は高濃度n型拡散層17で構成される。
【0006】
図12は、図11の構成においてγ線が照射されない場合の電界集中箇所を示す図であり、同図(a)は平面図、同図(b)は同図(a)のY1−Y1で切断した断面図である。電位分布のシミュレーションの結果、チップコーナー部23の表面のA点の箇所での電位は30Vである。また、ブレイクダウンポイントは同図(b)で示すようにドレイン部2とソース部3が対向しているB部分であり、低濃度n型拡散層6のゲート電極11下部で、その耐圧(ブレークダウン電圧)は163Vである。
図13は、図11の構成においてγ線照射により、5×1011cm-2の正の固定電荷がLOCOS膜内で素子周辺部に生じた場合の電界集中箇所を示す図であり、同図(a)は平面図、同図(b)は同図(a)のY3−Y3線で切断した断面図である。
素子全面にγ線を照射した場合に、LOCOS膜18内に発生した電子−正孔対のうち電子は移動度が大きいのでLOCOS膜18外へ素早く逃げて行く。しかし、正孔は移動度が小さいためLOCOS膜18内でトラップされ正の固定電荷33となる。チップコーナー部23では面積が広いため、電子−正孔対の発生総数が多く、そのために、チップコーナー部23に正の固定電荷33が多数存在することになる。図12において正の固定電荷33が素子周辺部(チップコーナー部23)に生じるようにしたのはそれを模擬したためである。
【0007】
勿論、LOCOS膜9にも正の固定電荷33は発生するがチップコーナー部23に比べれば正の固定電荷33の総数は極めて少ないので電位分布のシミュレーションではLOCOS膜9の正の固定電荷33を省いて行なった。
電位分布のシミュレーションの結果、図13に示すチップコーナー部23の表面のC点(図12のA点に相当する箇所)での電位は47Vとなり、γ線を照射しない時より17V上昇した。また、耐圧は43V低下して120Vとなり、ブレイクダウンポイントは、ソース部3の外周表面部分D点に移動した。
これは、正の固定電荷33の蓄積により、ソース部3の端部にブレイクダウンポイントが移動し耐圧が低下したものである。
この対策として、例えば特許文献1に開示されている。それによると、薄い酸化膜(数十nm程度の薄い酸化膜と推定される)とBPSG膜の積層構造を用いている。BPSG膜は、膜中に多量の再結合中心や電子・正孔トラップを有しており、放射線で発生した電子−正孔対はこれらに捕らえられる。そのため、BPSG膜内にトラップに捕らえられた電子や正孔は互いに相殺して電気的に中性状態となりチャージ現象は発生しない。また、薄い酸化膜では正孔が電子より勝ってトラップされるが、厚みが薄いため全体からみれば極僅かであり無視できる。
【0008】
また、従来の別の構成のMOSFETについて説明する。
図14は、集積回路を構成するn型MOSFETの要部平面図である。LOCOS膜59で囲まれた活性領域51内にソース領域52とドレイン領域53を、活性領域51を跨ぐ形でゲート電極54を配置する。
図15は、図14のA−A線で切断した要部断面図、図16は、図14のB−B線で切断した要部断面図である。
このMOSFETは、p型シリコン基板55に形成したp型拡散層56、高濃度n型拡散層であるソース領域52、高濃度n型拡散層であるドレイン領域53、p型拡散層56の表面層に選択的に形成されp型拡散層56より不純物濃度が高くソース領域52やドレイン領域53より低い中濃度p型拡散層58、LOCOS膜59、ソース領域52とドレイン領域53に挟まれたp拡散領域56上に形成されたゲート絶縁膜60、ゲート絶縁膜60上に形成されたゲート電極54、表面を被覆する保護膜61から成り立っている。
【0009】
n型絶縁ゲート半導体素子では、ゲート極性を正とした時にオン状態となるため、酸化膜中に発生した正孔は、シリコンとの界面に移動し、Si−Hの結合を切り、Hを分離する。その結果として0から2価までとれる空孔準位が発生する。ゲートを正バイアスにした状態で放射線を照射すると、LOCOSのバーズピーク近辺で電界強度が増大し表面が反転する。
また、放射線照射による電荷発生量は酸化膜の厚さに比例する。ゲート端部で保護膜として、例えば、HTO、BPSGおよびTEOS(テトラエトキシシラン)等、合計厚さ2μmの酸化膜を堆積するため、ゲート端からの電界により、前記酸化膜に発生した電荷の影響が無視できなくなる。
対策としては、n型半導体素子の場合には、LOCOS膜59下のp型不純物濃度を高める方法が有効であり、トータルドーズ量として1kGy程度まではリーク電流の増加が抑えられる。ただし、耐圧の低下が避けられない。耐圧はp型不純物の表面濃度が約5×1016cm-3の時、12.0V、約1×1017cm-3の時9.6Vであった。
【0010】
図17は、コバルト60をγ線源とする放射線の照射前後のNMOSFETのしきい値特性を示す図である。NMOSFETのチャネル幅およびチャネル長はそれぞれ25μm、トータルドーズ量は1kGyである。Aは照射前、Bは照射後の特性を示す。また、図の縦軸のEはべき数を表し、例えば、E−10とは10-10を表す。
ガンマ線照射前のしきい値電圧は0.66V、ドレイン耐圧は12.0V、リーク電流は1.0pAであった。ガンマ線照射後のしきい値電圧は0.60V、リーク電流は200nA、ドレイン耐圧は12.0Vであった。しきい値電圧は60mV低下し、リーク電流は5桁程度増加した。耐圧は変化しなかった。
耐放射線性向上対策が特許文献1に開示されている。薄い酸化膜とBPSG膜の積層構造を用いている。BPSG膜は、膜中に多量の再結合中心や電子、正孔トラップを有しており、発生した電子−正孔対はこれらに捕らえられるため、電荷が蓄積しにくい。したがって特性変動も生じにくいため高い耐放射線性を示す。また、シリコン界面には厚さ30nm程度の熱酸化膜を形成しているためリーク電流の増加も防止できる効果がある。
【0011】
また、特許文献2では、SiO2膜中では、放射線による電離効果により生じた正孔が捕獲され、一方、シリコン窒化膜とSiO2膜の界面では電子捕獲が支配的になることから、活性領域表面上のSiO2膜を取り除き、この活性領域表面上に新たに1000℃以下の温度で100nm以下(例えば、50nm)のSiO2膜を、さらに約800℃の温度でシリコン窒化膜(例えば、膜厚100nm)を形成することで、耐放射線特性に優れた半導体装置を形成できることが記載されている。
また、特許文献3では、フィールド酸化膜上に窒化シリコン膜を形成し、さらにその上に酸化シリコン膜を形成することで、耐放射線特性に優れた半導体装置を形成できることが記載されている。
また、特許文献4では、熱酸化膜上にシリコン酸化膜もしくはリンガラスとシリコン窒化膜を交互に形成することで、耐放射線特性に優れた半導体装置を形成できることが記載されている。
【0012】
また、特許文献5では、トランジスタの絶縁層に導電材料(アルミニウムなどの良導体)を混入することで、放射線により絶縁層内に発生した電子と正孔を積極的にトラップし中和することで、耐放射線特性に優れた半導体装置を形成できることが記載されている。
また、特許文献6では、フィールド酸化膜内にアモルファスシリコン層を形成することで、耐放射線特性に優れた半導体装置を形成できることが記載されている。
また、特許文献7では、パッシベーション膜である層間絶縁膜とモールド樹脂である封止用樹脂層の間にカーボン不連続薄膜を挿入することで、封止用樹脂層と層間絶縁膜の界面に蓄積する可動イオンをカーボンや金属の不連続薄膜を介して中性化し、この可動イオンによるMOSFETの耐圧変動を防止することが記載されている。
また、特許文献8では、積層構造の保護絶縁膜として、引張り応力を有する熱CVD法による保護窒化膜の上に圧縮応力を有するプラズマCVD法による保護酸化膜或いは保護窒化膜を形成することで、水分の浸入により形成される電子や正孔のトラップ準位を減少させ、水分自体の進入も阻止できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開昭62−104158号公報
【特許文献2】特開昭60−193342号公報
【特許文献3】特開昭62−133726号公報
【特許文献4】特開昭61−93641号公報
【特許文献5】特開昭60−218850号公報
【特許文献6】特開平4−6832号公報
【特許文献7】特開2006−222210号公報
【特許文献8】特開平11−145464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1で説明したように、薄い酸化膜上にBPSG膜を形成することにより、前記のように耐放射線特性は改善される。しかしながら、薄い酸化膜とBPSG膜の組み合わせでは高耐圧のMOS型半導体装置を製作することは困難である。
また、放射線量が増大した場合には、放射線で発生した電荷がトラップされずに表面を反転させて、リーク経路が形成されるため、高耐圧のMOS型半導体装置を製作することは困難である。
また、特許文献2〜6,8では、絶縁膜上に、屈折率を規定した半絶縁性窒化膜やnmオーダー以下の膜厚のカーボン薄膜でできた半絶縁性薄膜などを形成し、この半絶縁性薄膜をソース電極に接続することで、耐放射線特性に優れた半導体装置を形成することについては記載されていない。
【0015】
また、特許文献7では、モールド樹脂に含まれる+イオンや−イオンを防止することを目的に不連続膜を設けたが、半導体基板表面上に形成された絶縁膜において放射線照射により発生した正孔を除去することに関しては記載されていない。
この発明の目的は、前記の課題を解決して、耐放射線特性の改善と高耐圧化が図れるMOS型半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記の目的を達成するために、MOS型半導体装置において、MOS型半導体装置において、半導体基板上に配置され、ゲート絶縁膜と接する素子分離絶縁膜と、該素子分離絶縁膜上に配置された該素子分離絶縁膜より抵抗率の低い薄膜と、ソース領域と接触するソース電極と、ドレイン領域と接触するドレイン電極と、を有し、前記薄膜がソース電極または該ソース電極とドレイン電極の両電極に電気的に接続し、前記薄膜は、前記ソース電極と前記ドレイン電極の間に素子の定格電圧を印加した時1pA〜1nAの電流が流れる抵抗率である構成とする。この構成とすることで、放射線によって素子分離絶縁膜に発生した電荷を薄膜とソース電極を通して外部へ速やかに逃がすことができる。
また、前記素子分離絶縁膜が、LOCOS膜または熱酸化膜であるとよい。集積回路が形成された場合の絶縁膜としてはLOCOS膜が多用される。一方、微細加工を必要としない単独デバイスの場合の絶縁膜としては熱酸化膜を用いることが多い。
また、前記薄膜は、前記ソース領域および前記ドレイン領域を取り囲むように配置された構成とする。
【0017】
また、前記薄膜の上に配置され前記薄膜より抵抗率が高い第2絶縁膜を備えた構成であるとよい。
また、前記薄膜が、半絶縁性薄膜であるとよい。
また、前記半絶縁性薄膜が、屈折率が2.0〜2.1の窒化膜または負の固定電荷を発生させる膜のいずれかであるとよい。このような屈折率とすることで適正な抵抗率が得られる。
また、前記薄膜が、導電性薄膜であるとよい。
【0018】
また、前記導電性薄膜が、平均膜厚が0.1nm〜0.5nmのカーボン薄膜または高融点金属薄膜であるとよい。このように極めて薄い膜とすることで高い抵抗値が得られる。
また、前記高融点金属薄膜が、タングステン薄膜、チタン薄膜またはクロム薄膜のいずれかであるとよい。
また、ゲート電極は、前記素子分離絶縁膜の上まで延在して配置されているとよい。
また、前記半導体基板が第1導電型であり、前記半導体基板の表面層に形成された第1導電型の第1領域を備え、前記ソース領域および前記ドレイン領域は、前記第1領域の表面層に互いに離れて形成された第2導電型の領域であり、前記ソース領域から前記第1領域を介して前記ドレイン領域までの前記半導体基板の表面上に前記ゲート絶縁膜を介して配置されるゲート電極を備え、前記ゲート電極は、前記素子分離絶縁膜の上まで延在して配置されているとよい。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、MOSFETの分離構造部を3層構造として形成し、1層目であるLOCOS膜や熱酸化膜をシリコン界面に、電荷の移動し易い膜(半絶縁性薄膜や導電性薄膜など)を2層目に、そして絶縁膜(BPSG膜やHTO膜とBPSG膜の積層膜など)を3層目に設けて、2層目をソース電極と接続することで、放射線照射によるシリコン界面部への正の固定電荷の蓄積量を抑えて、耐放射線性を向上したMOS型半導体装置を実現するものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】この発明の第1実施例のMOS型半導体装置の要部構成図であり、(a)は要部平面図、(b)は(a)のY1−Y1線で切断した要部断面図である。
図2】この発明の第2実施例のMOS型半導体装置の要部断面図である。
図3】この発明の第3実施例のMOS型半導体装置の要部断面図である。
図4】この発明の第4実施例のMOS型半導体装置の要部平面図である。
図5図4のX−X線で切断した要部断面図である。
図6図4のY−Y線で切断した要部断面図である
図7】コバルト60をγ線源とする放射線の照射前後のNMOSFETのしきい値特性を示す図である。
図8】この発明の第5実施例のMOS型半導体装置の要部平面図である。
図9図8の変形例を示す要部平面図
図10】この発明の第6実施例のMOS型半導体装置の要部断面図である。
図11】MOSFETの要部構成図であり、(a)は要部平面図、(b)は(a)のY1−Y1線で切断した要部断面図、(b)は(a)のY2−Y2線で切断した要部断面図である。
図12図11の構成においてγ線が照射されない場合の電界集中箇所を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のY1−Y1で切断した断面図である。
図13図11の構成においてγ線照射により、5×1011cm-2の正の固定電荷がLOCOS膜内で素子周辺部に生じた場合の電界集中箇所を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のY3−Y3線で切断した断面図である。
図14】集積回路を構成するn型MOSFETの要部平面図である。
図15図14のA−A線で切断した要部断面図である。
図16図14のB−B線で切断した要部断面図である。
図17】コバルト60をγ線源とする放射線の照射前後のNMOSFETのしきい値特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施の形態を以下の実施例で説明する。以下の説明で従来の構造と同一部位には同一の符号を付した。
【実施例1】
【0022】
図1は、この発明の第1実施例のMOS型半導体装置の要部構成図であり、(a)は要部平面図、(b)は(a)のY1−Y1線で切断した要部断面図である。このMOS型半導体装置はMOSFETを例に挙げた。従来構造とは、LOCOS膜18上に半絶縁性薄膜である窒化膜14を形成し、この窒化膜14とソース電極とを電気的に接続している点が異なる。
p型シリコン基板4の表面層に低濃度p型拡散層5(p型ウェル領域)とこの低濃度p型拡散層5と離して低濃度n型拡散層6(n型オフセット領域)を形成する。低濃度p型拡散層5の表面層に高濃度n型拡散層7(n型ソース領域)と高濃度p型拡散層8(p型コンタクト領域)を形成し、低濃度n拡散層6の表面層に高濃度n拡散層17(n型ドレイン領域)を形成する。
【0023】
高濃度p型拡散層8(p型コンタクト領域)と接してp型シリコン基板4の表面に厚さが0.6μm程度のLOCOS膜18を形成し、高濃度n型拡散層17(n型ドレイン領域)と接してp型シリコン基板の表面にLOCOS膜9を形成する。前記のLOCOS膜18の膜厚は信頼性の観点から0.2μm〜0.6μmの範囲が好ましい。
高濃度n型拡散層7と低濃度n型拡散層6に挟まれた低濃度p型拡散層5上とp型シリコン基板上のゲート絶縁膜19(例えば、ゲート酸化膜)を介してLOCOS膜18上に延在させてゲート電極11を形成する。
LOCOS膜18の表面に高濃度p型拡散層8に接するように窒化膜14を形成する。この窒化膜14上とゲート電極11上とLOCOS膜9上に厚さが0.6μm程度のBPSG膜10を形成し、このBPSG膜10にコンタクトホール20を形成する。前記のBPSG膜10の膜厚は信頼性の観点から0.4μm〜1μmの範囲が好ましい。
【0024】
このコンタクトホール20を介してBPSG膜10上に高濃度n型拡散層7と高濃度p型拡散層8に電気的に接続するソース電極12を形成し、高濃度n型拡散層17にコンタクトホール20を介して電気的に接続するドレイン電極を形成する。
尚、前記の高濃度n型拡散層7はn型ソース領域であり、高濃度n型拡散層17はn型ドレイン領域であり、高濃度p型拡散層8はp型コンタクト領域である。また、低濃度p型拡散層5はp型ウェル領域であり、低濃度n型拡散層6はn型オフセット領域である。
窒化膜14の膜厚と屈折率を所定の値にすることで半絶縁性薄膜にできる。γ線照射中にLOCOS膜18に発生した正孔31を、窒化膜14から高濃度p型拡散層8を通りソース電極12に達する経路25で引き抜くことができる。その結果、LOCOS膜18内に正の固定電荷33が蓄積するのを大幅に減少させることができる。また、図示しないがBPSG膜10に図示しないコンタクトホールを形成してソース電極12に窒化膜14を電気的に直接接続させるとさらに効果的である。
【0025】
この実施例では、LOCOS膜18とBPSG膜10の間に厚さ0.1μm、屈折率2.0の窒化膜14を形成した。その結果、放射線を照射しない場合に比べて耐圧低下は13Vとなり、従来例より低下の程度は低減した。また、リーク電流は従来と同じレベルであった。
尚、この実施例では、屈折率2.0の窒化膜14を用いたが、屈折率の範囲は2.0以上で2.1以下であれば良い。この窒化膜14の屈折率はシリコンの組成比率が増大すると(シリコンリッチになると)大きくなり、窒化膜14の抵抗率は低下する。
この屈折率が2.0未満になるとシリコンの組成比率が小さくなるため、抵抗率が高くなり、正孔31の引き抜きが悪くなりBPSG膜18内に正の固定電荷33が蓄積する。また、界面準位も増える。そのため、耐圧低下と漏れ電流の増大を招く。
【0026】
一方、屈折率が2.1超になるシリコンの組成比率が大きくなり過ぎ、抵抗率が小さくなり過ぎて素子の耐圧低下と漏れ電流の増大を招く。
前記の条件の窒化膜14を選定することで、素子に定格電圧を印加した時に半絶縁性薄膜である窒化膜14に流れる電流は1pA〜1nA程度になる。つまり、定格電圧印加時に窒化膜14に流れる電流を1pA〜1nAになるように窒化膜14の抵抗率を設定すればLOCOS膜18内での正の固定電荷33の蓄積を大幅に減少させることができる。さらに好ましくは、窒化膜14に流れる電流を1pA〜100pAとするとよい。
【実施例2】
【0027】
図2は、この発明の第2実施例のMOS型半導体装置の要部断面図である。このMOS型半導体装置はMOSFETを例に上げた。図1との違いは、窒化膜14の代わりにカーボン薄膜15を用いた点が異なる。
LOCOS膜18とBPSG10の間に平均膜厚が0.1nmの導電性薄膜であるカーボン薄膜15を形成した。本実施例での耐圧低下は15Vとなり、従来例より改善されている。また、リーク電流は従来と同じレベルであった。
本実施例では、カーボンの薄膜15を平均膜厚が0.5nmとなるようにスパッタ法を用いて形成した。このカーボンの他に、例えば、タングステン、チタンあるクロムなどの高融点金属を用いても良い。
これらはLOCOS膜18との濡れ性が一般的に悪いため、膜形状とはならず、孤立的な粒子形状となるため、高い抵抗率を実現することが出来る。正孔31はカーボン粒子が繋がった箇所(図示せず)を通って引き抜かれる。前記の平均膜厚とは、孤立した粒子全体が表面全域に均一に広がったと仮定したときの高さ(膜厚)をいう。
【0028】
また、カーボン薄膜15の平均膜厚としては0.1nm以上で0.5nm以下の厚さとする。この平均膜厚とすることで耐圧低下の防止と、リーク電流増加の防止を両立することが出来る。
また、平均膜厚が0.1nm未満になると抵抗率が高過ぎて、LOCOS膜18からの正孔31の引き抜きが悪く、LOCOS膜18内に固定電荷量が蓄積する。一方、平均膜厚が0.5nm超になると抵抗率が小さくなり過ぎて素子の漏れ電流が増大する。
薄膜の形成方法としては、スパッタ法を用いているが、これはイオン注入法を用いても良い。カーボンのドーズ量は、5×1011atom/cm2〜1×1013atom/cm2とすれば良い。この条件のカーボン薄膜15とすることで、定格電圧印加時にカーボン薄膜15を流れる電流は1pA〜1nA程度になる。
【0029】
つまり、定格電圧印加時にカーボン薄膜15に流れる電流を1pA〜1nAになるようにカーボン薄膜15の抵抗率を設定すればLOCOS膜18内での正の固定電荷33の蓄積を大幅に減少させることができる。更に好ましくは、カーボン薄膜15に流れる電流を1pA〜100pAとするとよい。
【実施例3】
【0030】
図3は、この発明の第3実施例のMOS型半導体装置の要部断面図である。このMOS型半導体装置はMOSFETを例に上げた。図1(b)との違いは、窒化膜14の代わりに負の固定電界を発生する絶縁性薄膜である例えばHTO(High Temperature Oxide)膜16を中間層を用いた点が異なる。これはHTO膜16内に負の固定電荷32を存在させることにより負の固定電界が発生する。
本実施例では、LOCOS膜18とBPSG10の間に厚さ0.2μm程度の絶縁性薄膜であるHTO膜16を形成した。HTO膜16は、成膜後に負に帯電しやすいため、膜内に負の固定電荷32を存在させることができる。その結果、LOCOS膜18/HTO膜16/BPSG膜10からなるシリコン界面の固定電荷を負にオフセットする事ができ、LOCOS膜18の正の固定電荷33を相殺して、結果として正の固定電荷33の影響を低減することが出来る。
【0031】
本実施例での耐圧低下は20Vであり従来例より低下率は改善された。絶縁性薄膜であるHTO膜16の膜厚は0.1μm〜0.5μmがよい。0.1μm未満の膜厚はCVDではHTO膜16の形成が困難である。一方、0.5μm超の膜厚では膜に割れが入りHTO膜16の形成が困難である。
また、リーク電流は従来と同じレベルであった。また、この条件のHTO膜16を選定することで、定格電圧印加時にHTO膜16に流れる電流は1pA〜1nA程度になる。つまり、定格電圧印加時にHTO膜16に流れる電流を1pA〜1nAになるようにHTO膜16の膜厚を変えて適正な抵抗率に設定すればLOCOS膜18内での正の固定電荷33の影響を大幅に減少できる。さらに好ましくは、HTO膜16に流れる電流を1pA〜100pAとするとよい。
【実施例4】
【0032】
図4図6は、この発明の第4実施例のMOS型半導体装置の構成図であり、図4は要部平面図、図5図4のX−X線で切断した要部断面図、図6図4のY−Y線で切断した要部断面図である。このMOS型半導体装置はMOSFETを例に挙げた。本実施例では、半絶縁性薄膜として半絶縁性窒化膜62(これは図1で説明した窒化膜14と同じものである)を用い、この半絶縁性窒化膜62はLOCOS膜59上に形成されており、特に、ゲート電極54に隣接して形成されることが望ましい。この実施例では、ゲート電極54の端部の周囲(以下ゲート周囲部と記す)を囲んでいる。LOCOS膜59下には中濃度p型拡散層58が形成されている。
図4は集積回路を構成するn型MOSFETの簡略化した平面構造であり、活性領域51内にソース領域52とドレイン領域53を、活性領域をまたぐ形でゲート電極54を配置する。図4ではLOCOS膜59やソース電極64およびドレイン電極65は省略されている。
【0033】
図5および図6において、このn型MOSFETは、p型シリコン基板55に形成したp型シリコン基板55より不純物濃度が高いp型拡散層56と、高濃度n型拡散層で形成されたソース領域52と、高濃度n型拡散層で形成されたドレイン領域53と、ソース領域52上に形成されたソース電極64と、ドレイン領域53上に形成されたドレイン電極65で構成される。
また、p型拡散層56の表面層に選択的に形成されp型拡散層56より不純物濃度が高くソース領域52およびドレイン領域53の不純物濃度より低く形成された中濃度p型拡散層58(例えば、不純物濃度が1×1017cm-3程度)と、活性領域51を囲むLOCOS膜59と、ソース領域52およびドレイン領域53に接触部で接しゲート周囲部のLOCOS膜59上に形成される半絶縁性窒化膜62とで構成される。この半絶縁性窒化膜62はソース領域52を介してソース電極64やドレイン領域53を介してドレイン電極65に電気的に接続する。
【0034】
また、ソース領域52とドレイン領域53に挟まれたp拡散領域56上に形成されたゲート絶縁膜60(例えば、ゲート酸化膜)と、ゲート絶縁膜60上に形成されたゲート電極54および表面を被覆する絶縁膜からなる保護膜61とで構成されている。ここではゲート電極54は活性領域53の外側に延在しゲート配線の役割も有している。
ゲート電極53となるポリシリコン膜を厚さ0.6μm形成した後に、LOCOS膜59上に厚さ0.1μm、屈折率2.0の半絶縁性窒化膜62を形成する。その後、半絶縁性窒化膜62上に、HTO膜とBPSG膜とをこの順に積層した保護膜61を厚さ1μm形成する。この保護膜61は、実施例1〜3のようにBPSG膜であってもよいし、その他の絶縁膜であっても構わない。また、実施例1〜3においても、BPSG膜10の代わりに、この実施例の保護膜61を用いることができるし、その他の絶縁膜を用いてもよい。半絶縁性窒化膜62は前記したようにソース領域52およびドレイン領域53と接触部で接続する。尚、半絶縁性窒化膜62はソース領域52のみに接続しても構わない。
【0035】
このようにソース領域52に半絶縁性窒化膜62が接することでLOCOS膜59内に放射線で発生した正孔が半絶縁性薄膜62を通してソース領域52に素早く移動するため、LOCOS膜59内に正電荷が蓄積されない。
また、半絶縁性窒化膜62の代わりに、0.1nm厚みのカーボン薄膜などを用いてもよい。また、カーボン薄膜をスパッタ法で0.5nmの厚みにして導電性薄膜を形成しこれを用いても同様の効果が得られる。そのため、カーボン薄膜を用いた場合の膜厚としては0.1nm以上で0.5nm以下とするとよい。また、イオン注入でカーボン薄膜を形成する場合には、カーボンのドーズ量(打ち込み量)を5×1011atom/cm2〜1×1013atom/cm2とすれば良い。この条件のカーボン薄膜とすることで、定格電圧印加時にカーボン薄膜を流れる電流は1pA〜1nA程度になる。さらに好ましくは、カーボン薄膜を流れる電流を1pA〜100pAとするとよい。
【0036】
また、カーボンの他に、例えば、タングステン、チタンあるクロム等の高融点金属を用いて導電性薄膜を形成しても良い。これらの金属はLOCOS膜59などの絶縁膜と濡れ性が一般的に悪いため、膜形状とはならず、孤立的な粒子形状となるため、高い抵抗率を実現することが出来る。この場合もイオン注入法を用いた場合のドーズ量は5×1011atom/cm2〜1×1013atom/cm2とすれば良い。この条件の薄膜とすることで、定格電圧印加時に薄膜を流れる電流は1pA〜1nA程度になる。さらに好ましくは、薄膜を流れる電流を1pA〜100pAとするとよい。
図7は、コバルト60をγ線源とする放射線の照射前後のNMOSFETのしきい値特性を示す図である。半絶縁性薄膜として0.1μm厚さで屈折率が2.0の半絶縁性窒化膜62を用いた場合である。
【0037】
照射後(点線B)、しきい値電圧は従来と同じで60mV低下したがリーク電流は初期値(実線A)とほぼ同じレベルで従来と比べて大幅に改善された。また、このMOSFETの耐圧は12.0Vである。本実施例では、半絶縁性窒化膜62として屈折率2.0の窒化膜を用いたが、屈折率の範囲は図1で説明したのと同じであり、2.0以上2.1以下であれば良い。この条件の半絶縁性窒化膜62とすることで、定格電圧印加時に半絶縁性窒化膜62を流れる電流は1pA〜1nA程度になる。さらに好ましくは、半絶縁性窒化膜62を流れる電流を1pA〜100pAとするとよい。
また、前記した絶縁性窒化膜62の代わりにカーボン薄膜を用いた場合も同様の結果が得られた。
本発明を適用することで、これらゲート周囲部の電荷蓄積を防止できるため、リーク電流の増大や耐圧の低下を伴わずに放射線特性の向上が図れる。
【実施例5】
【0038】
図8は、この発明の第5実施例のMOS型半導体装置の要部平面図である。実施例4と異なるのは、半絶縁性窒化膜62がソース領域52にのみ接続している点であり、その他は実施例4と同様の構成である。この場合も実施例4と同様の効果が得られる。
また、図9図8の変形例で、半絶縁性窒化膜62がドレイン領域53の周囲の一部を被覆していない場合の例である。このような場合でもゲート周囲部が半絶縁性窒化膜62で被覆され、ソース領域52に電気的に接続していれば図8の場合と同じ効果が得られる。
【実施例6】
【0039】
図10は、この発明の第6実施例のMOS型半導体装置の要部断面図である。この図は実施例4の図6に相当する断面図であり、平面図は実施例4の場合と同じであるので説明は省略する。
実施例4と異なるのは、半絶縁性窒化膜62の下に形成されるLOCOS膜59を熱酸化膜63に代えた点である。この場合は半絶縁性窒化膜62は直接ソース電極64およびドレイン電極65に接続する。またゲート電極54上に保護膜61(層間絶縁膜を含む)が形成されている。
また、半絶縁性窒化膜62下に形成される熱酸化膜63は、シリコン表面を水蒸気雰囲気で高温に晒し、厚い酸化膜をシリコン表面の全域に形成し、その後でパターニングして形成される。前記のLOCOS膜9,18は窒化膜をマスクにシリコン表面を水蒸気雰囲気で高温に晒し、選択的に形成される厚い酸化膜のことである。実施例1〜3において、LOCOS膜9,18を熱酸化膜63に代えた場合にも実施例1〜3で説明した効果と同様の効果が得られる。
【0040】
以上の実施例では、MOSFETを取り上げたが、IGBTなどのような絶縁型ゲート構造(MOS型ゲート構造)を有する素子であれば適用できる。IGBTの構成は、例えば、図1で示した、MOSFETにおいて、高濃度n型拡散層17を高濃度p型拡散層に置き換えたものである。
【符号の説明】
【0041】
1 半導体チップ
2 ドレイン部
3 ソース部
4 p型シリコン基板
5 低濃度p型拡散層
6 低濃度n型拡散層
7、17 高濃度n型拡散層
8 高濃度p型拡散層
9、18、59 LOCOS膜
10 BPSG膜
11、54 ゲート電極
12、64 ソース電極
13、65 ドレイン電極
14 窒化膜
15 カーボン薄膜
16 HTO膜
19、60 ゲート絶縁膜
20 コンタクトホール
21 チップ端部
22 チップ周辺部
23 チップコーナー部
25 経路
31 正孔
32 負の固定電荷
33 正の固定電荷
51 活性領域
52 ソース領域
53 ドレイン領域
55 p型シリコン基板
56 p型拡散層
58 中濃度p型拡散層
61 保護膜
62 半絶縁性窒化膜
63 熱酸化膜
64 ソース電極
65 ドレイン電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17