(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1、第2接合面の少なくともいずれかの端部に設けた前記第1、第2パネル面から離間する方向に突出する突起状の位置決め部と、前記基板部材に設けた嵌合部とを備え、
前記基板部材を前記第1、第2パネル面の裏面側に取り付ける際、前記基板部材の嵌合部に前記位置決め部が嵌合することで、該基板部材の位置決めが行われるようにした
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の電子機器のパネル構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載のパネル構造では、前後パネルの端辺が重なり合って接続されているため、接続箇所の表面に段差ができたり、接続箇所を固定するネジが表面側に露出するなどして、パネル面のデザイン自由度が低くなるおそれがあった。また、上下に重なった前後パネルの端辺をネジで締結するだけの固定方法では、パネル面の接続箇所の剛性を十分に高めることができない。
【0007】
また、特許文献2に記載のパネル構造では、前後パネル面の表面処理を異ならせているため、単一の部材で構成した場合よりもパネル面のデザイン性を高くできる。しかしながら、前後パネル面を構成する部材がいずれもアルミの押出成型品であるため、鍵盤装置のコストが高くなるという問題がある。また、両方のパネル部材がアルミの押出成型品であることで、パネル部材に操作子を実装した基板などの部品を取り付ける場合、板金製や合成樹脂製のパネル部材と比べて、部品の取付位置や取付方法に制限が生じ易いという問題があった。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な構造で、複数のパネル面を面方向に並べて接続した拡張パネル面の撓みや曲げに対する十分な剛性を確保できるとともに、拡張パネル面のデザイン性や設計自由度を高めることができる電子機器のパネル構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、電子機器のパネル構造であって、第1パネル面(31)と、該第1パネル面(31)の裏面側(31a)で該第1パネル面(31)から離間する方向に延在する第1接合面(32)とを有する第1パネル部材(20)と、第2パネル面(71)と、該第2パネル面(71)の裏面側(71a)で該第2パネル面(71)から離間する方向に延在する第2接合面(72)とを有する第2パネル部材(60)と、第1、第2接合面(32,72)の第1、第2パネル面(31,71)から離れた位置に設けた固定部(40)と、を備え、固定部(40)は、第1接合面(32)と第2接合面(72)のいずれか一方から突出する突出片(33)と、いずれか他方に設けた突出片(33)を挿入させる挿入部(73)と、該挿入部(73)内に設けた突出片(33)を面接触状態で固定させる固定面(74)と、突出片(33)を固定面(74)に固定する固定具(41)とで構成されており、挿入部(73)に挿入された突出片(33)が、固定具(41)により固定面(74)に固定されることで、第1接合面(32)と第2接合面(72)とが面接合され、これにより第1パネル面(31)と第2パネル面(71)とが連続する一の拡張パネル面(80)となることを特徴とする。
【0010】
複数のパネル部材が有するパネル面を面方向に並べて接続して、連続する一の拡張パネル面を形成する場合、単一のパネル部材のみで構成されたパネル面と比べて、面に対して垂直方向に掛かる力に弱く、接続箇所に撓みや曲げが生じ易い。そこで、本発明にかかるパネル構造のように、第1又は第2接合面の挿入部に挿入した第2又は第1接合面の突出片を挿入部内の固定面に面接触状態で固定することで、第1接合面と第2接合面とを面接合し、これにより、第1パネル面と第2パネル面とを面方向に並べて接続した一の拡張パネル面を形成すれば、簡単な構成で、拡張パネル面の剛性を効果的に高めることができ、撓みや曲げが生じ難い一の拡張パネル面を形成することができる。
【0011】
また、本発明の第1接合面は、第1パネル面の裏面側で該第1パネル面から離間する方向に延在し、第2接合面は、第2パネル面の裏面側で該第2パネル面から離間する方向に延在している。したがって、第1、第2パネル面の接続箇所の表面側には、第1、第2接合面が露出せず、接続箇所の表面側に段差が出来ないようにすることが可能となるので、拡張パネル面の見栄えが良好になる。
【0012】
また、上記の固定部による固定構造を用いれば、第1、第2パネル部材が互いに異なる材質の場合でも、第1、第2パネル部材を確実に接続することが可能となる。したがって、単一のパネル部材からなるパネル面と同等かそれ以上の剛性を確保しつつ、第1、第2パネル部材の材質を異ならせることで、第1、第2パネル面の接続箇所で材質を切り替えることができるので、電子機器の外観により高級感を持たせることができる。また、第1、第2パネル面のいずれか一方を外観の高級感を出すためのパネル面として用い、他方を基板などの部品を主体的に固定するためのパネル面として用いるなど、材質の異なる複数のパネル面を使い分けることが可能となる。したがって、パネル面に高級感を持たせながら、基板などの部品の取付性を向上させたり、電子機器の組立性を向上させたりすることができる。
【0013】
また、上記の電子機器のパネル構造では、第1パネル部材(20)は、第1パネル面(31)の裏面側(31a)に突出して第1接合面(32)に沿う突起状のレール部(23,26)が形成された押出成型部材であってよい。このように、第1パネル部材にアルミなどの押出成型品を用いることで、パネル部材の外観により高級感を持たせることができる。この場合、第2パネル部材は、押出成型品以外の部品とすることができ、第1パネル面と第2パネル面の材質を異ならせることができる。これにより、パネル部材の外観にさらなる高級感を持たせることが可能となる。また、第1パネル部材の第1パネル面に突起状のレール部を設けることで、押出成型品である第1パネル面の剛性を高めることができる。したがって、第1パネル面と第2パネル面とを接続した拡張パネル面の接続箇所にずれや段差が生じることを防止できる。
【0014】
また、上記の電子機器のパネル構造では、第2パネル部材(60)には、第2パネル面(71)の裏面側(71a)に突出する突起状の取付部(65)が設けられており、第1パネル部材(20)と第2パネル部材(60)との接続箇所を裏面側から補強する補強部材(55)を備え、補強部材(55)は、第1パネル部材(20)のレール部(23,26)と、第2パネル部材(60)の取付部(65)との両方に固定されているとよい。このような補強部材を備えていれば、第1パネル面と第2パネル面を面方向に並べて接続してなる拡張パネル面の撓みや曲げに対する剛性をさらに高めることができる。特に、拡張パネル面を押圧する方向の荷重がかかった場合でも、拡張パネル面が撓むことを効果的に防止できる。
【0015】
また、上記の補強部材を設ける場合は、第1パネル面(31)の裏面側(31a)と第2パネル面(71)の裏面側(71a)とに跨って設置される基板部材をさらに備えることが可能となる。すなわち、上記の補強部材による補強で、第1パネル面と第2パネル面を面方向に並べて接続した拡張パネル面が撓むことを防止できるので、板状の基板部材を第1パネル面と第2パネル面の裏面側に跨って取り付けることができる。つまり、第1パネル面と第2パネル面の接続箇所を撓ませようとする外力が作用しても、基板部材に無理な力が作用することを防止できる。このような理由から、第1パネル面と第2パネル面の裏面側のスペースを有効活用できるようになる。
【0016】
また、上記の電子機器のパネル構造では、第1パネル部材(20)のレール部(23、26)は、所定間隔で配置された複数の突条(24,25又は27,28)を備えており、補強部材(55)と基板部材(50)の少なくともいずれかは、突条(24,25又は27,28)の延伸方向における任意の位置に固定が可能なレール用固定具(53,58)でレール部(23,26)に固定されているとよい。このような固定具の一例として、一対の突条の間に新規のネジ溝を切りながら締結されるネジが挙げられる。これによれば、第1パネル面の裏面側で第1接合面に沿って形成されたレール部の長手方向に沿う任意の位置に補強部材又は基板部材を固定することができる。したがって、パネル部材に対する補強部材又は基板部材の取付位置の自由度が向上する。
【0017】
また、上記の電子機器のパネル構造では、第1、第2接合面(32,72)の少なくともいずれかの端部に設けた第1、第2パネル面(31,71)から離間する方向に突出する突起状の位置決め部(75)と、基板部材(50)に設けた嵌合部(51)とを備え、基板部材(50)を第1、第2パネル面(31,71)の裏面側(31a,71a)に取り付ける際、基板部材(50)の嵌合部(51)に位置決め部(75)が嵌合することで、該基板部材(50)の位置決めが行われるようにしてよい。これによれば、第1、第2パネル面の裏面側に取り付ける基板部材の位置決めを簡単かつ正確に行うことができるようになり、電子機器の組立性を向上させることができる。
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態の対応する構成要素の符号を本発明の一例として示したものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかる電子機器のパネル構造によれば、複数のパネル面を面方向に並べて接続した拡張パネル面の撓みや曲げに対する十分な剛性を確保できるとともに、デザイン性や設計自由度を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかるパネル構造を備えた電子鍵盤楽器(電子機器)の全体構成を示す斜視図である。
図1に示す電子鍵盤楽器1は、複数の鍵11(白鍵11a及び黒鍵11b)が配列された鍵盤10を備えている。また、鍵盤10を収容すると共に電子鍵盤楽器1の外装をなす筐体構造として、鍵盤10の後側の上部を覆う上ケース2と、鍵盤10の下面側を覆う下ケース3と、鍵盤10の両側面を覆う側板4,4とを備えている。なお、鍵盤10の両端部の外側には、拍子木5,5が設置されている。上ケース2及び下ケース3は、鍵11の配列方向に沿って延伸する略板状の部材からなる。上ケース2は、本発明にかかるパネル構造が適用される部材であり、鍵盤10の後側の上部において平面(水平面)内の手前側に配置された前パネル部材(第1パネル部材)20と、奥側に配置された後パネル部材(第2パネル部材)60との2部品で構成されている。なお、以下の説明では、横方向というときは、電子鍵盤楽器1における鍵11の配列方向を示し、前後方向あるいは手前側及び奥側というときは、各鍵11の長手方向を示す。
【0021】
図2は、前パネル部材20及び後パネル部材60を示す概略側断面図である。また、
図3は、前パネル部材20及び後パネル部材60を示す図で、(a)は、前パネル部材20の裏面図、(b)は、後パネル部材60の正面図、(c)は、後パネル部材60の裏面図、(d)は、(b)のC部分拡大図である。前パネル部材20は、アルミ製の押出成型品であり、鍵盤10の後端部10aの上面側を覆うように略水平面状に配置された上壁21と、該上壁21の前端辺から下方に延びて鍵盤10の後端部10aの上方に立設された前壁22とを有しており、断面形状が横向き略L字型に形成されている。上壁21の上面は、略水平面状の前パネル面(第1パネル面)31になっている。一方、上壁21の裏面側21aには、鍵11の配列方向に延在する直線状の第1レール部23及び第2レール部26が形成されている。第1レール部23は、上壁21の前端辺21eに沿う位置(前壁22の直後の位置)に形成された所定間隔で平行な二本の突条24,25を有しており、第2レール部26は、上壁21の後端辺21fに沿う位置に形成された所定間隔で平行な二本の突条27,28を有している。第1レール部23及び第2レール部26の各突条24,25,27,28は、上壁21から裏面側21aへの突出寸法がいずれも略同一寸法であり、前壁22の半分よりも若干小さい突出寸法になっている。
【0022】
第2レール部26が有する外側の突条28の外側面は、前パネル部材20を後パネル部材60に接続するための接合面(第1接合面)32になっている。この接合面32は、その面が前パネル面31(上壁21)の裏面側21aで前パネル面31に対して略直交する方向に延在している。また、この接合面32は、突条28に沿って鍵11の配列方向に延在している。そして、接合面32から後方に向かって略水平に突出する突出片33が形成されている。突出片33は、接合面32における前パネル面31から下方に離れた位置に設けられており、その面が前パネル面31と平行に配置された略矩形状の小舌片からなる。またこの突出片33は、接合面32の長手方向に沿って所定間隔で複数個が設けられている(
図3(a)参照)。各突出片33には、固定ネジ(固定具)41を固定するためのネジ穴33aが形成されている。
【0023】
なお、前パネル部材20の上壁21には、電子鍵盤楽器1の操作に用いるための各種操作スイッチやボリュームなどの操作子(
図1参照)6を設置するための開口部21cが形成されている。操作子6は、上壁21の裏面側21aに取り付けた回路基板50(
図7(a)、(b)参照)に実装されているもので、上壁21の開口部21cから前パネル面31に露出するようになっている。
【0024】
一方、後パネル部材60は、鉄製の板金を適宜に折り曲げて形成した板状の部材であり、前パネル部材20の上壁21の後端辺21fに連続する略水平面状の上壁61と、該上壁61の後端辺から下方に延びて電子鍵盤楽器1の後側を覆う後壁62とを有しており、断面形状が前パネル部材20に対して前後対称な横向き略L字型に形成されている。上壁61の上面は、略水平面状の後パネル面(第2パネル面)71になっている。また、上壁61の前端辺71eには、裏面側71aに向かって略垂直に折り曲げられた折曲壁63が連接されている。折曲壁63の外側面(前面)は、後パネル部材60を前パネル部材20に接続するための接合面(第2接合面)72になっている。接合面72は、その面が後パネル面71の裏面側71aで後パネル面71に対して略直交する方向に延在している。また、この接合面72は、上壁61の延伸方向である鍵11の配列方向に延在している。そして、接合面72には、略矩形状の開口部からなる挿入部73が形成されている。挿入部73は、前パネル部材20の突出片33を挿入させるためのスリット状の開口であり、接合面72の長手方向に沿って突出片33に対応する位置に複数個が設けられている。
【0025】
さらに、折曲壁63の下端辺には、後側に向かって略直角に折り曲げられた下壁64が連接されている。下壁64は、折曲壁63の下端辺に沿ってその面が上壁61と平行である略水平方向に延伸している。また、挿入部73に対応する位置の下壁64の上面は、挿入部73に挿入された突出片33を面接触状態で固定するための固定面74になっている。固定面74には、固定ネジ41を挿通するための挿通穴74aが形成されている。上記の前パネル部材20の接合面32から突出する突出片33と、後パネル部材60の接合面72に設けた挿入部73と、該挿入部73内に設けた突出片33を面接触状態で固定するための固定面74と、突出片33を固定面74に密着固定する固定ネジ41とによって、接合面32と接合面72とを面接合させて前後パネル部材20,60を一体に固定する固定部40が構成されている。
【0026】
また、折曲壁63の下端辺には、下壁64を越えて下方に突出する突起状の位置決め部75が形成されている。位置決め部75は、接合面72(折曲壁63)と同一面内でその下端から下方に突出する略矩形状の小片である。すなわち、この位置決め部75は、接合面72の下端において後パネル面71から離間する方向(下方)に突出している。位置決め部75は、折曲壁63の長手方向に沿って所定間隔で複数が形成されている。
【0027】
また、上壁61の裏面側61aには、小突起状のタップ(取付部)65が設置されている。タップ65は、その下端面の中央にネジ穴(図示せず)が形成された略円柱状の小部材で、上壁61の裏面側61aの適宜位置に複数個が溶接などで固着されている。タップ65は、後述する回路基板50や補強部材55を取り付けるために用いられる。
【0028】
次に、上記構成の前パネル部材20と後パネル部材60とを接続する手順について説明する。
図4は、前パネル部材20と後パネル部材60を接続した状態を示す図で、(a)は、前パネル部材20と後パネル部材60の側断面図、(b)は、前パネル部材20と後パネル部材60の一部を裏面側から見た図である。また、
図5は、固定部40の詳細構成を示す図で、
図4(a)のA部分拡大図である。前パネル部材20と後パネル部材60を接続するには、
図2に示すように、前パネル面31と後パネル面71が同じ高さで平行になるように前パネル部材20と後パネル部材60を前後に並べて配置し、その状態で、
図4(a)に示すように、前パネル部材20の接合面32と後パネル部材60の接合面72とを互いに突き合せて当接させる。このとき、前パネル部材20の突出片33の位置を後パネル部材60の挿入部73の位置に合わせて、突出片33を挿入部73に差し込む。これにより、突出片33が挿入部73内で固定面74(下壁64の上面)の真上に配置される。その状態で、
図5に示すように、下壁64の裏面側から挿通穴74aに挿通した固定ネジ41を突出片33のネジ穴33aに締結する。これにより、固定面74に対して突出片33が面接触状態で固定されることで、接合面32と接合面72とが面接合(面接触状態で結合)される。こうして、
図4(b)に示すように、前パネル面31と後パネル面71とを面方向に並べて接続した連続する一の拡張パネル面80が形成される。
【0029】
このように、本実施形態の電子鍵盤楽器のパネル構造では、後パネル部材60の挿入部73に挿入した前パネル部材20の突出片33を挿入部73内の固定面74に面接触状態で固定することで、接合面32と接合面72とを面接合し、これにより、前パネル面31と後パネル面71とを面方向に並べて接続した一の拡張パネル面80を形成している。したがって、簡単な構成で、拡張パネル面80の剛性を効果的に高めることができ、撓みや曲げが生じ難い一の拡張パネル面80を形成することができる。
【0030】
また、上記の固定構造を用いれば、本実施形態のように、前パネル部材20と後パネル部材60とが互いに異なる材質(アルミの押出成型部材と鉄製の板金部材)の場合でも、第1パネル部材20と第2パネル部材60とを確実に接続することが可能となる。したがって、従来の単一のパネル部材からなるパネル面と同等かそれ以上の剛性を確保しつつ、第1パネル部材20と第2パネル部材60の材質を異ならせることで、前パネル面31と後パネル面71との接続箇所で材質を切り替えることができるので、電子鍵盤楽器1の外観により高級感を持たせることができる。
【0031】
また、本実施形態のパネル構造では、前パネル面31と後パネル面71のうち、アルミの押出成型品に設けた前パネル面31を電子鍵盤楽器1の外観(拡張パネル面80の外観)の高級感を出すためのパネル面として用い、鉄製の板金に設けた他方の後パネル面71を回路基板50などの各種部品を主体的に固定するためのパネル面として用いている。これにより、材質の異なる複数のパネル面を使い分けている。したがって、拡張パネル面80の外観に高級感を持たせながら、回路基板50などの部品の取付性を向上させたり、電子鍵盤機器1の組立性を向上させたりすることができる。
【0032】
また、本実施形態のパネル構造は、上記のように、互いに異なる材質からなる第1パネル部材20と第2パネル部材60との二種類の部材を接続する構成なので、これら第1パネル部材20と第2パネル部材60のいずれかをさらに別のパネル部材(図示せず)と置換することで、第1パネル部材20と当該別のパネル部材との組み合わせ、又は第2パネル部材60と当該別のパネル部材の組み合わせも可能となる。なお、ここで用意する別のパネル部材は、第1パネル部材20と第2パネル部材60のいずれかと同一の材質からなるものでもよいし、第1パネル部材20と第2パネル部材60の両方と異なる材質のものであってもよい。このように構成すれば、用意する部品の種類を少なく抑えながら、電子鍵盤楽器のパネル構造に多種類のバリエーションを持たせることが可能となる。
【0033】
また、本実施形態のパネル構造では、前パネル部材20は、前パネル面31の裏面側21aに突出して接合面32に沿う突起状の第1レール部23及び第2レール部26が形成されたアルミの押出成型部材である。このように、前パネル部材20にアルミの押出成型品を用いることで、拡張パネル面80の外観により高級感を持たせることができる。また、本実施形態では、後パネル部材60は、鉄製の板金部材として、前パネル面31と後パネル面71の材質を異ならせている。これにより、拡張パネル面80の外観のデザイン性を高めることが可能となる。また、前パネル面31の裏面側21aに突起状のレール部23,26を設けていることで、押出成型品である前パネル部材20の剛性を高めることができる。また、これにより、前パネル面31と後パネル面71とを面方向に並べて接続した拡張パネル面80に撓みや曲げが生じることも抑制できる。
【0034】
図6は、前パネル面31の裏面側31aと後パネル面71の裏面側71aとに補強部材55を取り付けた状態を示す図で、(a)は、補強部材55の側方から見た前パネル部材20と後パネル部材60の側断面図、(b)は、前パネル部材20と後パネル部材60の一部を示す裏面図である。本実施形態の電子鍵盤楽器1のパネル構造は、上記の固定部40による固定構造で一体に接続した前後パネル部材20,60に対して、さらに、前パネル面31の裏面側31aから後パネル面71の裏面側71aに跨って設置した補強部材55を備えている。以下、この補強部材55の構成、及び該補強部材55を前後パネル部材20,60に取り付ける手順について説明する。
【0035】
図6(a)に示すように、補強部材55は、鉄製の板金を折り曲げて形成した板状の部材であり、短冊形状の上固定片56と、該上固定片56の一端辺から略直角に屈曲して下面側の下方に延びる平板状の立壁部57と、該立壁部57の下端から直交する横方向に屈曲した小片状の下固定片57aとを備えている。立壁部57は、上固定片56の側辺から屈曲して上固定片56の裏面側に延伸する平板状の部分であり、その下端が後パネル部材60の後壁62の下端よりも下側まで延伸するように形成されている。上固定片56の適宜位置には、第1、第2レール部23,26に固定される固定ネジ(レール用固定具)58を挿通するための挿通穴91aと、タップ65に固定される固定ネジ59を挿通するための挿通穴91bとが複数個ずつ形成されている。
【0036】
上記構成の補強部材55を前パネル面31の裏面側31aと後パネル面71の裏面側71aとに取り付けるには、
図6(a)及び(b)に示すように、補強部材55の上固定片56を前パネル面31の裏面側31aの第1、第2レール部23,26と後パネル面71の裏面側71aのタップ65との間に橋渡し状態となるように設置する。その状態で、上固定片56の挿通穴56bに挿通した固定ネジ59をタップ65のネジ穴に締結する。その後、上固定片56の挿通穴56aに挿通した固定ネジ58を第1レール部23の突条24,25の間と、第2レール部26の突条27,28の間とに締結する。この締結は、固定ネジ58で突条24,25又は突条27,28の側面に新規のネジ溝を切りながら行う。
【0037】
こうして、補強部材55の上固定片56が前パネル面31の裏面側31aと後パネル面71の裏面側71aとに跨って取り付けられる。また、
図6(a)に示すように、補強部材55の立壁部57が前後パネル面31,71から離間する方向(真下方向)に延びた状態となる。このような補強部材55を備えたことで、前パネル面31と後パネル面71を面方向に並べて接続した拡張パネル面80の撓みや曲げに対する剛性を効果的に高めることができる。なお、補強部材55は、前後パネル部材20,60を電子鍵盤楽器1に装着した状態で、
図6(a)に示すように、その下固定片57aが下ケース3の底板3aに当接する寸法形状に設定されている。なお、下固定片57aは、底板3aにその下面側から挿通した固定ネジ92を該下固定片57aのネジ穴91cに締結することで、底板3aに対して固定されるようになっている。これにより、前パネル面31と後パネル面71との接続箇所が補強部材55で下側から支持されるので、拡張パネル面80がより撓みにくくなる。また、前パネル面31と後パネル面71との接続箇所が補強部材55で支持されることで、前パネル面31と後パネル面71との接続箇所に表面側から荷重が掛かった場合でも、接続箇所が容易に撓まないようになる。
【0038】
図7は、前パネル面31の裏面側31aと後パネル面71の裏面側71aとに回路基板50を取り付けた状態を示す図で、(a)は、回路基板50を含む前パネル部材20と後パネル部材60の側断面図、(b)は、前パネル部材20と後パネル部材60の一部を裏面側から見た図である。本実施形態の電子鍵盤楽器1のパネル構造は、前パネル部材20と後パネル部材60に上記の補強部材55を取り付けた状態で、さらに、前パネル面31の裏面側31aと後パネル面71の裏面側71aとに跨る位置に回路基板(基板部材)50を設置している。以下、この回路基板50の構成、及び該回路基板50を前後パネル部材20,60に取り付ける手順について説明する。
【0039】
回路基板50は、平板状の硬質基板であり、その適宜位置には、第1、第2レール部23,26に固定される固定ネジ(レール用固定具)53を挿通するための挿通穴50aと、タップ65に固定される固ネジ54を挿通するための挿通穴50bとが複数個ずつ形成されている。また、回路基板50には、後パネル部材60の折曲壁63の下端に設けた位置決め部75を嵌合させる嵌合部51が設けられている。この嵌合部51には、位置決め部75に対応する大きさ及び形状の開口部として形成された嵌合部51aあるいは凹部(端辺の切り込み)として形成された嵌合部51bがある。また、回路基板50には、電子鍵盤楽器1の操作に用いるための各種操作スイッチやボリュームなどの操作子6が実装されている。この操作子6は、既述のように、回路基板50が前パネル面31の裏面側31aと後パネル面71の裏面側71aとに取り付けられた状態で、上壁21の開口部21cから前パネル面31に露出するようになっている。
【0040】
上記構成の回路基板50を前パネル部材20と後パネル部材60に取り付けるには、まず、
図7(a)及び(b)に示すように、回路基板50を、前パネル面31の裏面側31aの第1、第2レール部23,26と、後パネル面71の裏面側71aのタップ65との間に橋渡し状態で設置する。このとき、後パネル部材60の位置決め部75によって、前後パネル面31,71に対する回路基板50の位置決め(前後及び左右の位置決め)が行われるようになっている。
図8は、位置決め部75と嵌合部51(51b)の詳細構成を示す図で、
図7(b)のB部分拡大図である。回路基板50が前パネル面31の裏面側31aと後パネル面71の裏面側71aとの間に設置される際、同図に示すように、回路基板50の嵌合部51(51a又は51b)に後パネル部材60の位置決め部75が差し込まれて嵌合するようになっている。これにより、前パネル面31の裏面側31aと後パネル面71の裏面側71aに取り付ける回路基板50の位置決めを簡単かつ正確に行うことができるので、電子鍵盤楽器1の組立性を向上させることができる。
【0041】
その状態で、回路基板50の挿通穴50bに挿通した固定ネジ54をタップ65のネジ穴に締結する。その後、回路基板50の挿通穴50aに挿通した固定ネジ53を第1レール部23の突条24,25の間と第2レール部26の突条27,28の間に締結する。この締結は、固定ネジ53,58で一対の突条24,25又は27,28の間に新規のネジ溝を切りながら行われる。また、これにより、回路基板50が前パネル面31の裏面側31aと後パネル面71の裏面側71aとに跨ってこれらと平行に取り付けられる。
【0042】
このように、上記の補強部材55を設ける場合は、前パネル面31の裏面側31aから後パネル面71の裏面側71aに跨る回路基板50を設置することが可能となる。すなわち、補強部材55による補強で、前パネル面31と後パネル面71を面方向に並べて接続した拡張パネル面80が撓むことを防止できるので、回路基板50など平板状の部品を前パネル面31と後パネル面71に跨って取り付けることができる。すなわち、前パネル面31と後パネル面71の接続箇所を撓ませようとする外力が作用しても、回路基板50に無理な力が作用することを防止できる。このような理由から、前パネル面31の裏面側31aと後パネル面71の裏面側71aのスペースを有効活用できる。
【0043】
また、回路基板50及び補強部材55は、前パネル部材20の第1、第2レール部23,26に対して突条24,25及び突条27,28の間に固定される固定ネジ53,58で固定されるようになっている。これら固定ネジ53,58は、一対の突条24,25又は27,28の間に新規のネジ溝を切りながら締結するので、第1、第2レール部23,26の任意の位置に固定が可能である。したがって、後パネル部材60に設けたタップ65の位置に応じて、第1、第2レール部23,26の長手方向に沿う任意の位置に回路基板50又は補強部材55を固定することができる。よって、前後パネル部材20,60に対する回路基板50又は補強部材55の取り付けの自由度が向上する。また、固定ネジ53,58の固定において厳密な位置決めを行う必要が無いので、前後パネル部材20,60に回路基板50又は補強部材55を取り付ける際、先にタップ65に固定ネジ54,59を固定してから、それに合う位置の第1、第2レール部23,26に固定ネジ53,58を固定することができるので、回路基板50又は補強部材55の取付作業が簡単に行えるようになり、電子鍵盤楽器1の組立効率が向上する。
【0044】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお、直接明細書及び図面に記載のない何れの形状・構造・材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。
【0045】
たとえば、本発明にかかるパネル構造を適用する電子機器は、上記実施形態に示す電子鍵盤楽器には限らず、他の電子機器であってもよい。また、上記実施形態では、突出片33を前パネル部材20側に設け、挿入部73及び固定面74を後パネル部材60側に設けた場合を示したが、これとは逆に、突出片33を後パネル部材60側に設け、挿入部73及び固定面74を前パネル部材20側に設けるようにしてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、回路基板50を位置決めするための位置決め部75を後パネル部材60に設けた場合を示したが、位置決め部75は、前パネル部材20に設けることも可能である。ただし、本実施形態のように、後パネル部材60が鉄製の板金部材である場合には、突起片の形成の容易性から、位置決め部75を後パネル部材60に設けることが望ましい。また、本発明の固定部が備える突出片を固定面に固定するための固定具は、上記実施形態に示すネジ以外の固定具であってもよい。ネジ以外の固定具として、例えば、リベットなどが挙げられる。