特許第5699539号(P5699539)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5699539ディーゼルエンジンの過給圧制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5699539
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】ディーゼルエンジンの過給圧制御システム
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/14 20060101AFI20150326BHJP
   F02B 37/10 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
   F02B37/14
   F02B37/10 Z
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2010-242486(P2010-242486)
(22)【出願日】2010年10月28日
(65)【公開番号】特開2012-92786(P2012-92786A)
(43)【公開日】2012年5月17日
【審査請求日】2013年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 朝幸
(72)【発明者】
【氏名】菅野 知宏
(72)【発明者】
【氏名】阿部 義幸
(72)【発明者】
【氏名】飯島 章
(72)【発明者】
【氏名】水島 由加利
(72)【発明者】
【氏名】木村 治世
(72)【発明者】
【氏名】橘川 功
(72)【発明者】
【氏名】石橋 直樹
(72)【発明者】
【氏名】坂下 翔吾
【審査官】 川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−280723(JP,A)
【文献】 特開平07−071241(JP,A)
【文献】 特開平05−240058(JP,A)
【文献】 特開昭63−016131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/14
F02B 37/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低圧縮比化されたディーゼルエンジンの過給圧制御システムであって、前記ディーゼルエンジンにモータ発電機を有する電動ターボチャージャを搭載すると共に、前記ディーゼルエンジンの吸気圧を検出する吸気圧センサを設け、該吸気圧センサにより検出された検出吸気圧を、前記吸気圧センサにより吸気圧が検出されたときの吸入空気量及び燃料噴射タイミング値に基づいて設定された設定過給圧と比較して、検出吸気圧が設定過給圧よりも低いときには前記電動ターボチャージャを前記モータ発電機のモータ機能により駆動させて過給圧を上げ、検出吸気圧が設定過給圧よりも高いときには前記電動ターボチャージャを前記モータ発電機の発電機機能により制動回生させて過給圧を下げるように構成されていることを特徴とするディーゼルエンジンの過給圧制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの過給圧制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるディーゼルエンジンにおいては、低燃費化及び軽量化を図るために、ダウンサイジング(小型)化が図られている。一方、ダウンサイジング化に伴う出力の低下を補うべく馬力を上げる必要性から筒内圧(燃焼爆発時の圧力)を上げると、耐久性の低下を来す問題があることから、エンジンのいかなる状況でも筒内圧が最大値を超えないように設定されると共に、筒内の低圧縮比化も図られている。
【0003】
ただ、筒内の低圧縮比化は、シリンダ、ピストン、燃焼室で構成される内燃室の圧縮比を低くすることから、圧縮端温度が低下し、白煙の発生及び始動性の悪化が懸念される。そのため、前記白煙の発生及び始動性の悪化を防止すべく、前記圧縮比が高めに設定される。なお、筒内の圧縮比を制御する技術としては、例えばディーゼルエンジンの圧縮比可変システム(特許文献1参照)が知られている。また、ディーゼルエンジンには車両の発進性や加速性を向上させるためにターボチャージャ(過給機)が搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−296061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ターボチャージャは、アクチュエータにより駆動される可変ベーンの応答遅れや排気エネルギの慣性により瞬間的に過回転が発生し、これによりオーバーブーストとなり、筒内圧の上昇やポンピングロスの増加を招く虞がある。そのため、エンジンのいかなる状況でもオーバーブーストにならないように工夫がされている。
【0006】
しかしながら、前記ターボチャージャの工夫は、すべての条件に適合できているわけではなく、エンジンのパフォーマンス(例えば馬力)を最大に生かすことができなかった。なお、過給圧(ブースト圧)が規定値を超えると耐久性及び信頼性の低下を来す問題がある。
【0007】
本発明は、前記事情を考慮してなされたものであり、いかなる運転状況でも過給圧を適切にコントロールすることができ、エンジンのパフォーマンスを最大に生かすことができると共に耐久性及び信頼性の向上が図れるディーゼルエンジンの過給圧制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、低圧縮比化されたディーゼルエンジンの過給圧制御システムであって、前記ディーゼルエンジンにモータ発電機を有する電動ターボチャージャを搭載すると共に、前記ディーゼルエンジンの吸気圧を検出する吸気圧センサを設け、該吸気圧センサにより検出された検出吸気圧を吸入空気量、過給圧及び燃料噴射タイミングの関係から予めマップとして設定された設定過給圧と比較して、検出吸気圧が設定過給圧よりも低いときには前記電動ターボチャージャを前記モータ発電機のモータ機能により駆動させて過給圧を上げ、検出吸気圧が設定過給圧よりも高いときには前記電動ターボチャージャを前記モータ発電機の発電機機能により制動回生させて過給圧を下げるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、いかなる運転状況でも過給圧を適切にコントロールすることができ、エンジンのパフォーマンスを最大に生かすことができると共に耐久性及び信頼性の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るディーゼルエンジンの過給圧制御システムを概略的に示す図である。
図2】過給圧制御システムの作用を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための形態を添付図面に基いて詳述する。
【0012】
図1において、1は車両(図示省略)に搭載されるディーゼルエンジンで、そのエンジン本体1aの一側に吸気マニホールド2が、他側に排気マニホールド3がそれぞれ設けられている。前記吸気マニホールド2には吸気通路4が接続され、この吸気通路4の上流端には図示しないエアクリーナが設けられている。また、前記排気マニホールド3には排気通路5が接続され、この排気通路5の下流端には図示しない後処理装置を介してマフラが接続されている。
【0013】
前記ディーゼルエンジン1には吸気を加給するための過給機である電動ターボチャージャ(以下、電動ターボともいう)6が搭載されている。この電動ターボ6は、前記排気通路5に設けられ排気圧力により回転駆動されるタービン7と、吸気通路4に設けられ吸気を加圧するコンプレッサ8と、タービン7の動力をコンプレッサ8に伝達すべくこれらタービン7とコンプレッサ8を接続する回転軸9と、この回転軸9を回転駆動することが可能であり且つ制動回生することも可能なモータ発電機10とを備えている。前記モータ発電機10はインバータ11を介してバッテリ12に接続されている。また、電動ターボ6のモータ発電機10は、後述のECU13によりインバータ11を介して制御されるようになっている。
【0014】
前記コンプレッサ8よりも下流の吸気通路4にはインタークーラ14が設けられている。このインタークーラ14よりも下流の吸気通路4とタービン7よりも上流の排気通路5とは排気を吸気側に還流して排気ガス中のNoxの低減を図るためのEGR通路15で接続され、このEGR通路15にはEGR弁16及びEGRクーラー17が設けられている。
【0015】
前記ディーゼルエンジン1は、ダウンサイジングされていると共に低圧縮比化されている。このディーゼルエンジン1には、低圧縮比化されているが故に発生し易い白煙及び始動性悪化を防止すると共にいかなる運転状況でも過給圧を適切にコントロールするための過給圧制御システムが組み込まれたエンジンコントロールユニット(ECU)13が搭載されている。ディーゼルエンジン1の吸気マニホールド2には、吸気圧を検出する吸気圧センサ(インテークマニホールドプレッシャセンサ)18が設けられている。
【0016】
前記過給圧制御システムは、前記吸気圧センサ18により検出された吸気圧を吸入空気量(吸気量)と過給圧と燃料噴射タイミングとの関係から予めマップとして設定された設定過給圧と比較して、検出吸気圧が設定過給圧よりも低いときには過給圧を上げるべく前記電動ターボ6を前記モータ発電機10のモータ機能により駆動し、検出吸気圧が設定過給圧よりも高いときには過給圧を下げるべく前記電動ターボ6を前記モータ発電機10の発電機機能により制動回生させるように構成されている。
【0017】
具体的には、ECU13の記憶部19には、吸入空気量と過給圧と燃料噴射タイミングとの関係がマップとして記憶されており、ECU13の制御部20は、現時点の吸入空気量及び噴射タイミング値に基いてマップから必要過給圧を読み取り、その必要過給圧を設定過給圧とし、吸気圧センサ18により検出した現時点の吸気圧を前記設定過給圧と比較し、次のような制御を行うようになっている。
【0018】
ECU13の制御部20は、図2に示すように前記吸気圧センサ18により吸気マニホールド2内の吸気圧を直接検出しており(ステップS1)、その検出吸気圧がマップから読み取られた必要過給圧である設定過給圧以内か否かを判定し(ステップS2)、検出吸気圧が設定過給以内であるときには電動ターボ6をモータ発電機10のモータ機能により駆動させて過給圧を上げ(ステップS3)、吸気圧が設定過給圧を超えるときには電動ターボ6をモータ発電機10の発電機機能により制動回生させて過給圧を下げる(ステップS4)ように構成されている。
【0019】
すなわち、検出吸気圧が設定過給圧を超えているときには、排気圧力によるタービン7の回転力をモータ発電機10の駆動(発電)に用いるため、コンプレッサ8の回転力が抑制され、過給圧を下げることができると共に、発電により生じた電気をバッテリ12に蓄えることができ、省エネルギ化を図ることができる。
【0020】
以上の構成からなるディーゼルエンジン1の過給圧制御システムによれば、低圧縮比化されたディーゼルエンジン1の過給圧制御システムであって、前記ディーゼルエンジン1にモータ発電機10を有する電動ターボ6を搭載すると共に、前記ディーゼルエンジン1の吸気圧を検出する吸気圧センサ18を設け、該吸気圧センサ18により検出された吸気圧を吸入空気量、過給圧及び燃料噴射タイミングの関係から予めマップとして設定された設定過給圧と比較して、検出吸気圧が設定過給圧よりも低いときには過給圧を上げるべく前記電動ターボ6を前記モータ発電機10のモータ機能により駆動させて過給圧を上げ、検出吸気圧が設定過給圧よりも高いときには吸気圧を下げるべく前記電動ターボ6を前記モータ発電機10の発電機機能により制動回生させて過給圧を下げるように構成されているため、いかなる運転状況でも過給圧を適切にコントロールすることができ、エンジンのパフォーマンスを最大に生かすことができると共に耐久性及び信頼性の向上が図れる。
【0021】
以上、本発明の実施の形態を図面により詳述してきたが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 ディーゼルエンジン
6 電動ターボチャージャ
10 モータ発電機
13 ECU
18 吸気圧センサ
図1
図2