(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筐体と、前記筐体の一側面に設けられた冷媒の導入口から前記冷媒の導入方向に向かって直線状に前記筐体内に延在された第1流路と、前記第1流路に並列に配置され、前記筐体の前記一側面の反対側の一側面に設けられた前記冷媒の排出口に向かって前記排出口まで直線状に前記筐体内に延在された第2流路と、前記筐体内の前記第1,第2流路の間の領域に略等間隔に平行に並設された複数の隔壁間の部分として、前記第1,第2流路の延在方向と直交して形成されて、前記第1,第2流路と連通する複数の第3流路と、前記第3流路に配置されたフィンと、前記第1流路内で、前記第3流路の少なくとも1つの近傍に、前記第1流路に導入された冷媒の一部を前記第3流路に分岐するガイドとを有する冷却器と、
前記冷却器に熱的に接続され、前記冷却器の前記延在方向及び前記第3流路の形成方向に対して垂直上方であって、前記第1流路の前記導入方向の終端側の前記第3流路上に配置された一の半導体素子と、
前記冷却器に熱的に接続され、前記冷却器の前記垂直上方であって、前記第1流路の前記導入口側の前記第3流路上に配置され、前記一の半導体素子よりも発熱の少ない他の半導体素子と、
を含むことを特徴とする半導体モジュール。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は半導体モジュールの一例の斜視模式図、
図2は
図1のL−L矢視断面模式図である。
図3は冷却器の一例の要部斜視模式図である。
【0012】
図1に示す半導体モジュール10は、冷却器20、及び、冷却器20の上に配置された複数の回路素子部30を有している。冷却器20は、
図1及び
図2に示すように、筐体(フィンカバー)21及び、フィン(ヒートシンク)22を有するフィンベース23を含んでいる。
【0013】
冷却器20の筐体21には、
図3に示すように、その一方の主面側に、冷媒導入流路21a、冷媒排出流路21b、及び複数(一例として、ここでは3列)の冷却用流路21cが設けられている。更に、筐体21には、対向する側面に、冷媒を筐体21の内部に導入するための導入口24、及び筐体21の内部に導入された冷媒を筐体21の外部に排出するための排出口25が設けられている。尚、冷媒導入流路21a、冷媒排出流路21b、冷却用流路21c、導入口24、及び排出口25の各部の断面は略方形であり、深さは等しく、底部には段差がなく平坦である。
【0014】
冷媒導入流路21aは、筐体21の一側面に設けられた冷媒の導入口24から、冷媒の流入方向に向かって直線状に延在されている。また、冷媒排出流路21bは、冷媒導入流路21aと並列に設けられており、筐体21の導入口24が設けられている側と反対側の側面に設けられた、冷媒の排出口25に向かって、その排出口25まで直線状に延在されている。複数の冷却用流路21cは、このような並列の冷媒導入流路21aと冷媒排出流路21bとの間の領域に並設された複数の隔壁21d間の部分として形成されている。
【0015】
複数の冷却用流路21cは、冷媒導入流路21aと冷媒排出流路21bとの間に並設され、冷媒導入流路21a及び冷媒排出流路21bと連通している。複数の冷却用流路21cは、ここでは、冷媒導入流路21aの延在方向、及び冷媒排出流路21bの延在方向と直交する方向に延在されている。
【0016】
導入口24から筐体21内に導入された冷媒は、冷媒導入流路21a、冷却用流路21c及び冷媒排出流路21bを通って、排出口25から排出されるようになっている。
【0017】
このような構成を有する筐体21は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等の金属材料を用いて形成することができる。このように金属材料を用いて筐体21を形成する場合には、例えば、上記のような冷媒導入流路21a、冷媒排出流路21b、冷却用流路21c、導入口24及び排出口25を有するように、ダイキャストにより筐体21を形成することができる。
【0018】
筐体21は、このほか、カーボンフィラーを含有する材料を用いることもできる。また、用いる冷媒の種類、筐体21内を流れる冷媒の温度等によっては、セラミック材料や樹脂材料等を用いて筐体21を形成することも可能である。
【0019】
上記のような構成を有する筐体21の、冷媒導入流路21a、冷媒排出流路21b及び複数の冷却用流路21cの形成面側に、
図1及び
図2に示したようにフィンベース23が設けられる。フィンベース23には、複数のフィン22が設けられている。フィン22は、例えば、基材26上に形成され、フィン22が形成された基材26をフィンベース23と一体化し、そのフィンベース23をフィン22側を筐体21に向けて配置したときに、筐体21の各冷却用流路21c内に配置されるようになっている。
ここで、フィン22の形状の例について述べる。
図4はフィン形状の例を示す図である。
【0020】
フィン22は、例えば、
図4(A)に示すように、縦横に整列配置した複数のピン状フィン22aとすることができる。このような複数のピン状フィン22aが、基材26及びフィンベース23に保持されて冷却用流路21c内に配置され、
図4(A)に矢印で示したような方向に冷媒が流通される。
【0021】
また、フィン22は、例えば、
図4(B)に示すように、並設された複数の板状フィン22bとすることもできる。板状フィン22bは、
図4(B)に矢印で示したような冷媒の流通方向(冷却用流路21cの延在方向)に沿って、延在されるように配置される。そして、このような板状フィン22bが、基材26及びフィンベース23に保持されて冷却用流路21c内に配置される。尚、
図4(B)には、平板の板状フィン22bを例示したが、波板状フィン22d(同図(D))、ちどり状フィン22c(同図(C))、コルゲートフィン22e(ピッチP,高さH;同図(E))等を用いることもできる。
【0022】
このようにピン状、平板状、波板状等の形状とすることができるフィン22は、例えば、
図2に示したように、フィンベース23と一体化してそれをフィン22側を筐体21に向けて配置したときに、先端と筐体21の底部内面との間に、一定のクリアランスCが存在するような寸法(高さ)とすることができる。
【0023】
尚、このようにフィン22には、ピン状、平板状、波板状等、種々の形状のものを用いることが可能である。但し、この冷却器20は、その冷却用流路21c内にフィン22を配置する構造であるため、その形状及び寸法によっては、冷却用流路21c内を流れる冷媒の抵抗となり、圧力損失を発生し得る点に留意する。フィン22の形状及び寸法は、冷却器20への冷媒の導入条件(ポンプ性能等)、冷媒の種類(粘性等)、目的とする除熱量等を考慮し、適宜設定する。
【0024】
フィン22及びフィンベース23は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等の金属材料を用いて形成することができる。フィン22は、例えば、金属材料を用いて形成された所定のピンや板(上記のピン状フィン22aや板状フィン22b等)を、金属の基材26に接合することによって形成することができる。このようにしてフィン22を接合した基材26が、金属板等のフィンベース23の所定領域、即ち
図2に示したような冷却用流路21cに対応する領域に接合される。
【0025】
尚、このように予め複数のピン状或いは板状等のフィン22を接合した基材26をフィンベース23に接合するほか、フィンベース23に直接複数のピン状や板状のフィン22を接合することも可能である。
【0026】
そして、最終的にフィン22と一体化されたフィンベース23は、
図1及び
図2に示したように筐体21上に配置される。フィンベース23と筐体21とは、例えば、適当なシール材(図示せず)を用いて接合される。これにより、筐体21、フィン22及びフィンベース23を備える冷却器20が構成される。
【0027】
冷却器20の使用時には、例えば、導入口24がその上流側に設けられるポンプに接続され、排出口25がその下流側に設けられる熱交換器に接続されて、これら冷却器20、ポンプ及び熱交換器を含む閉ループの冷媒流路が構成される。冷媒は、このような閉ループ内を、ポンプによって強制循環される。
【0028】
このような冷却器20の上には、
図1及び
図2に示したように、複数(一例として、ここでは2行3列の計6個)の回路素子部30が配置されている。
【0029】
各回路素子部30は、例えば、
図1に示したように、基板31上に、2種類の半導体素子32,33が2個ずつ、計4個搭載された構成を有する。基板31は、例えば、
図2に示したように、絶縁基板31aの両面に導体パターン31b,31cが形成された構成とされる。
【0030】
基板31の絶縁基板31aには、例えば、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム等のセラミック基板を用いることができる。絶縁基板31a上の導体パターン31b,31cは、銅等の金属(例えば、銅箔)を用いて形成することができる。
【0031】
このような基板31上に搭載する半導体素子32,33として、ここではパワー半導体を用いる。例えば、一方の半導体素子32を、フリーホイールダイオード(Free Wheeling Diode;FWD)とし、他方の半導体素子33を、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor;IGBT)とする。
【0032】
半導体素子32,33は、はんだ等の接合層34を用いて基板31の導体パターン31b側に接合され、その導体パターン31bに直接或いはワイヤ(図示せず)を介して電気的に接続される。半導体素子32,33が搭載された基板31は、もう一方の導体パターン31c側で、接合層35を介して、冷却器20のフィンベース23に接合される。基板31、基板31上に搭載された半導体素子32,33、及び冷却器20が、熱的に接続された状態になっている。
【0033】
尚、導体パターン31b,31cの露出表面や、半導体素子32,33と導体パターン31bとを電気的に接続するワイヤ表面には、ニッケルめっき等により、それらの表面を汚れ、腐食、外力等から保護するための保護層を形成するようにしてもよい。
【0034】
ここでは、上記のような構成を有する回路素子部30が、冷却器20のフィンベース23の上に、計6個配置されている。これらの回路素子部30は、例えば、冷却器20上でインバータ回路を構成するように接続することができる。
【0035】
図5は半導体モジュールの回路図の一例である。
【0036】
図5には、直流電流を交流電流に変換して三相交流モータ41に供給するインバータ回路40を例示している。このインバータ回路40は、U相、V相、W相の三相についてそれぞれ、IGBTである半導体素子33と、FWDである半導体素子32とのブリッジ回路を備える。半導体素子33のスイッチング制御を行うことで、直流電流を交流電流に変換し、三相交流モータ41を駆動することができるようになっている。
【0037】
例えば、上記半導体モジュール10には、その6個の回路素子部30により、このようなインバータ回路40を2つ構成することが可能である。
【0038】
冷却器20の上に配置される各回路素子部30は、
図2に示したように、冷却器20の冷却用流路21cの上方で、冷却用流路21cに対応する領域内に、配置される。上記の例では、
図2及び
図3に示した1列分の冷却用流路21cの上方に、
図1の列方向に並ぶ2個の回路素子部30が配置されるようになる。
【0039】
動作時に各回路素子部30で発生した熱は、それが接合されているフィンベース23へと伝わり、更にその下のフィン22へと伝わる。フィン22は、上記のように、冷却用流路21c内に配置されており、この冷却用流路21cに冷媒が流通されることで、フィン22が冷却される。発熱する回路素子部30は、このようにして冷却器20により冷却される。
【0040】
このように半導体モジュール10では、冷却器20のフィンベース23の上面に冷却用流路21cの位置に対応させて回路素子部30を配置し、且つ、その下方の回路素子部30の位置に対応する冷却用流路21c内であってフィンベース23の下面にフィン22を配置する。そのため、冷却用流路21c内にフィン22を設けず、冷却用流路21cへの冷媒流通のみで冷却を行った場合に比べて、回路素子部30を効果的に冷却することが可能になっている。
【0041】
また、この半導体モジュール10では、冷媒導入流路21aと冷媒排出流路21bとの間に、3列の冷却用流路21cを並設するようにしたことで、冷媒が導入口24から導入され、排出口25から排出される間の、圧力損失を低減することが可能になっている。そのため、冷却器20内に一定以上の流速で冷媒を流通させることができ、回路素子部30を効果的に冷却することができる。この点の詳細については後述する。
【0042】
尚、以上の説明では、半導体モジュール10の回路素子部30を6個とした場合を例示したが、その個数はこれに限定されるものではない。
【0043】
図6は半導体モジュールの第1変形例を示す図であって、(A)は半導体モジュールの斜視模式図、(B)は冷却器の筐体の要部斜視模式図である。
【0044】
図6(A)に示す半導体モジュール10Aは、2行6列の計12個の回路素子部30が冷却器20の上に配置されている。これらの回路素子部30は、適当に組み合わせ、例えば、上記
図5に例示したようなインバータ回路40を複数構成するように接続することができる。
【0045】
このような半導体モジュール10Aの場合、冷却器20の筐体21には、例えば、
図6(B)に示すように、6列の冷却用流路21cを設けたものを用いる。この筐体21上に配置するフィンベース23には、各冷却用流路21c内に配置されることとなるフィン22を設ける。
【0046】
そして、上記の
図2に示した例と同様に、この
図6(A)の半導体モジュール10Aにおいても、1列の冷却用流路21cにつき、列方向に並ぶ2個の回路素子部30が、その冷却用流路21cの上方であって冷却用流路21cに対応する領域内に、配置される。
【0047】
図7は半導体モジュールの第2変形例を示す図であって、(A)は半導体モジュールの斜視模式図、(B)は冷却器の筐体の要部斜視模式図である。
【0048】
図7(A)に示す半導体モジュール10Bは、2行6列の回路素子部30のほかに、更に2個の回路素子部30Bが冷却器20の上に配置されている。ここで追加する2個の回路素子部30Bには、その他の12個の回路素子部30とは異なる構成を有するものを用いることができる。
【0049】
12個の回路素子部30は、適当に組み合わせ、例えば、上記
図5に例示したようなインバータ回路40を複数構成するように接続することができる。また、回路素子部30Bは、例えば、所定数のIGBTとFWDを用いて構成される昇圧コンバータ回路とすることができる。このような場合には、例えば、昇圧コンバータ回路の回路素子部30Bをバッテリー及び上記インバータ回路40に接続し、バッテリー電圧を回路素子部30Bで昇圧し、その昇圧された直流電流をインバータ回路40によって交流電流に変換して上記三相交流モータ41に供給するような回路構成とすることが可能である。
【0050】
尚、このように回路素子部30とは種類の異なる回路素子部30Bを新たに追加する場合、設計上或いは製造上の配線レイアウト等を考慮すると、
図7(A)に示したように、回路素子部30Bを半導体モジュール10Bの端部に追加することが比較的容易である。
【0051】
上記のような半導体モジュール10Bの場合、冷却器20の筐体21には、例えば、
図7(B)に示すように、7列の冷却用流路21cを設けたものを用いる。この筐体21上に配置するフィンベース23には、各冷却用流路21c内に配置されることとなるフィン22を設ける。
【0052】
そして、上記の
図2に示した例と同様に、この
図7(A)の半導体モジュール10Bにおいても、1列の冷却用流路21cにつき、列方向に並ぶ2個の回路素子部30又は回路素子部30Bが、その冷却用流路21cの上方であって冷却用流路21cに対応する領域内に、配置される。尚、ここでは、回路素子部30を、導入口24側(冷媒導入流路21aの始端側に連通する冷却用流路21cの上方)に配置し、追加する回路素子部30Bを排出口25側(冷媒導入流路21aの終端側に連通する冷却用流路21cの上方)に配置している。
【0053】
図6及び
図7に示したように、冷却器20の冷却用流路21cの数は、冷却を行う回路素子部30等の個数に応じて変更することが可能である。
【0054】
ところで、上記のように、冷却器20では、冷媒導入流路21aと冷媒排出流路21bとの間に、これらに直交する、複数の冷却用流路21cを並設するようにしており、これにより、導入口24から排出口25までの間の冷媒の圧力損失を低減することが可能になっている。以下、この点について、より詳細に説明する。
【0055】
そこで、まず、冷却器20の性能に影響を及ぼす因子について説明する。そのような因子としては、例えば、(1)フィン22の材質(熱伝導率)及び形状、(2)冷媒導入のためのポンプの性能、(3)冷媒の性質(粘性、熱伝導率、温度等)、(4)冷媒流路の形状(幅、深さ、平面形状等)、等を挙げることができる。ここでは、(2),(4)の因子が冷却性能に及ぼす影響に着目する。
【0056】
図8は冷却器の冷却性能の説明図であって、(A)は冷媒の流速と圧力の関係を模式的に示す図、(B)は冷媒の流速と素子温度の関係を模式的に示す図である。
【0057】
図8(A)に示す曲線Xは、ポンプ性能を示しており、使用するポンプに固有の性能である。また、
図8(A)に示す曲線Y1,Y2はそれぞれ、ある冷却器の導入口と排出口との間における流速と圧力損失の関係を示しており、使用する冷却器ごとに、設計上或いは実験的に求められる。それぞれの冷却器に流通可能な冷媒の流速は、冷媒循環に使用するポンプのポンプ性能を示す曲線Xと、流速と圧力損失の関係を示す曲線Y1又は曲線Y2との交点の位置で決まってくる。
【0058】
例えば、
図8(A)に示す例では、冷媒の流速の増加に対する圧力損失の増加が比較的小さい曲線Y1を示す冷却器の場合、曲線Xとの交点より、その冷却器に流通可能な冷媒の流速はQ1となる。一方、冷媒の流速の増加に対する圧力損失の増加が比較的大きい曲線Y2を示す冷却器の場合には、曲線Xとの交点より、その冷却器に流通可能な冷媒の流速はQ2(<Q1)となり、より少なくなる。
【0059】
冷媒の流速と素子温度との関係について見ると、
図8(B)に曲線Zで示すように、素子温度は、冷媒の流速の減少に伴って増加していく傾向がある。そのため、上記のように、流通可能な冷媒の流速がQ1の冷却器を用いた場合よりも、流通可能な冷媒の流速が少ないQ2の冷却器を用いた場合の方が、当然、素子温度の上昇を抑えることは難しくなる。
【0060】
尚、圧力損失が大きくなる曲線Y2のような挙動を示す冷却器の場合でも、より性能の優れたポンプを使用すれば、その冷却器に流通可能な冷媒の流速を増加させることができ、従って、素子温度の上昇を抑えることも可能になる。しかしながら、そのようなポンプの使用は、その冷却器を有する半導体モジュールを搭載した電子機器等の大幅なコストアップを招く一因となる。
【0061】
そのため、ポンプ変更によるコストアップを抑えつつ、流通可能な冷媒の流速を一定以上確保して素子温度の上昇を抑えるためには、圧力損失の小さい冷却器を用いることが有効な手段となる。
【0062】
以下では、上記説明した冷却器20の冷却性能をシミュレーションにより検証した結果について説明していく。
【0063】
ここでは、冷却器20として、上記の
図7(B)に示したような、冷媒導入流路21aと冷媒排出流路21bとの間に7列の冷却用流路21cが並設された筐体21を備えているものを用いている。尚、このような筐体21を、便宜上、ここでは並列流路タイプと言う。また、この冷却器20との比較のため、次の
図9(A),(B)に示すような筐体100,110を備えた冷却器も用いている。
【0064】
図9(A)に示す筐体100は、冷媒の導入口24から排出口25までが1本の流路101でつながっている。この筐体100の流路101は、上記冷却器20と同様にしてその上方に配置される回路素子部30,30Bの配置(2行7列)に合わせて、蛇行させた形状としている。尚、このような筐体100を、便宜上、ここでは蛇行7段流路タイプと言う。
【0065】
また、
図9(B)に示す筐体110も、
図9(A)に示した筐体100と同様、冷媒の導入口24から排出口25までが1本の流路111でつながっている。但し、この
図9(B)に示した筐体110の流路111は、筐体110の上方に配置される回路素子部30,30Bの行方向に延在されるように蛇行させた形状としている。尚、このような筐体110を、便宜上、ここでは蛇行5段流路タイプと言う。
【0066】
まず、並列流路タイプの筐体21(
図7(B))内を流れる冷媒の流速分布をシミュレーションした結果について述べる。
【0067】
図10は流速分布のシミュレーション結果の一例を示す図である。
【0068】
シミュレーションの方法は、流れと熱伝達の物理現象を含む2方程式による熱流体解析であり、定常運転状態の解析結果である。この結果はマージンを考慮し、チップ損失を2割増し、冷媒温度を10℃高く見積もり設定した値である。
【0069】
筐体21は、導入口24から導入された冷媒を、冷却用流路21cから冷媒排出流路21bへと流し、排出口25から排出させる構造としている。尚、
図10中、四角で囲んだ数字(0.25,0.50,0.75,1.00,1.25,1.50,1.75,2.00)は、流速(m/s)を表している。
【0070】
冷媒の流速分布をシミュレーションすると、
図10に示すように、導入口24から筐体21内に導入された冷媒は、導入口24から直線状に延在する冷媒導入流路21aを速い流速で流れる。そして、
図10より、冷媒は、複数ある冷却用流路21cのうち、特に、冷媒の排出口25に近い側、即ち冷媒導入流路21aの終端側に連通する冷却用流路21cに比較的速い流速で、均一な分布で流れ込んでいる。尚、
図10は、導入口24と冷媒導入流路21aとの間に段差がない筐体21についてシミュレーションした結果である。導入口24と冷媒導入流路21aとの間に段差があると、冷媒導入流路21aの終端側に連通する冷却用流路21cでの流速が遅くなるとともに、各冷却用流路21c間の流速の分布の幅が大きくなる。
【0071】
続いて、並列流路タイプの筐体21(
図7(B))と蛇行5段流路タイプの筐体110(
図9(B))について、導入口24と排出口25における冷媒の流速をシミュレーションした結果について述べる。
【0072】
ここでは、ポンプ性能を30L/min(0.3MPa)で一定とする。また、筐体21の冷却用流路21c、及び筐体110の流路111には、いずれもフィンを配置する。
【0073】
図11はフィン及び筐体の説明図であって、(A)はフィン形状を示す図、(B)は並列流路タイプの筐体とフィンとの配置関係を概念的に示す図、(C)は蛇行5段流路タイプの筐体とフィンとの配置関係を概念的に示す図である。
【0074】
シミュレーションにあたり、筐体21の冷却用流路21c、及び筐体110の流路111に配置するフィンには、
図11(A)に示すような寸法を有する複数の板状フィン120を用いる。各板状フィン120は、厚さTが5mmの基材121の上に形成され、その厚さtを0.5mm、基材121からの高さhを10mm、ピッチpを0.9mmに設定している。
【0075】
このような複数の板状フィン120を形成した基材121を、
図11(B),(C)に示すように、板状フィン120形成面側を筐体21,110側に向けて配置し、各冷却用流路21c内、及び各流路111内に、それぞれ複数の板状フィン120を配置する。尚、
図11(B),(C)において、板状フィン120は、基材121配置領域の、各冷却用流路21c内のみ、及び各流路111内のみに配置されるものとする。因みに、実際の半導体モジュールでは、この
図11(B),(C)に示したような構造の上に、上記の
図1及び
図2に示したようなフィンベース23、回路素子部30,30Bが熱的に接合されることになる。
図12は流速のシミュレーション結果の一例を示す図である。
【0076】
図12より、並列流路タイプの筐体21の場合、その導入口24における冷媒の流速は4.06m/sで、その排出口25における冷媒の流速は3.83m/sとなる。一方、蛇行5段流路タイプの筐体110の場合には、その導入口24における冷媒の流速は3.67m/sで、その排出口25における冷媒の流速は1.32m/sとなる。
【0077】
このように、並列流路タイプの筐体21では、導入口24の流速に対する排出口25の流速が6%程度の減少で抑えられるのに対し、蛇行5段流路タイプの筐体110では、導入口24の流速に対する排出口25の流速が60%程度減少する。
【0078】
蛇行5段流路タイプの筐体110では、流路111に蛇行部(折り返し部)が存在するため、導入口24から導入された冷媒が流路111を通って排出口25から排出されるまでの間に、比較的大きな圧力損失が生じる。その結果、排出口25から排出される冷媒の流速は、比較的大きく減少してしまう(上記
図8の曲線Y2に相当)。筐体110の流路111内で冷媒の流れが滞ることで、その上方に配置されることとなる複数の回路素子部30,30Bそれぞれの冷却効果が低下してしまったり、複数の回路素子部30,30Bを均一に冷却することが難しくなったりする可能性がある。
【0079】
一方、並列流路タイプの筐体21では、冷媒導入流路21aと冷媒排出流路21bとの間に冷却用流路21cを並設している構造上、導入口24から排出口25までの間の圧力損失が比較的小さくなる。そのため、導入口24から導入された冷媒を排出口25まで比較的スムーズに流すことができる(上記
図8の曲線Y1に相当)。従って、この筐体21の上方に配置されることとなる複数の回路素子部30,30Bのそれぞれを効果的に冷却したり、複数の回路素子部30,30Bを均一に冷却したりすることが可能になる。
【0080】
続いて、ポンプ性能を変化させた場合における、回路素子部30,30Bの温度変化(半導体素子32又は33の表面温度の変化)をシミュレーションした結果について述べる。
【0081】
ここでは、ポンプ性能が30L/min,20L/min,10L/minの各場合における、回路素子部30,30Bの温度変化をシミュレーションしている。シミュレーションでは、まず、冷却用流路21cが7列の並列流路タイプの筐体21を備えた冷却器20の上に、12個の回路素子部30が2行6列で配置され、それらよりも動作時の発熱が大きい2個の回路素子部30Bが2行1列で配置された構造を用いる(
図7)。また、比較のため、7列の並列流路タイプの筐体21に替えて、
図9(A),(B)に示した筐体100,110を用いた構造も用いる。尚、回路素子部30,30Bの配置は変えないものとする。
【0082】
図13は筐体と回路素子部の配置関係を示す図であって、(A)は筐体が蛇行7段流路タイプの場合、(B)は筐体が蛇行5段流路タイプの場合、(C)は筐体が並列流路タイプの場合である。尚、
図13には、温度測定箇所も併せて図示している。
【0083】
回路素子部30,30Bは、冷却器の筐体100,110,21のそれぞれとの間で、この
図13(A),(B),(C)に示すような位置関係で配置する。尚、便宜上、
図13では、筐体100,110,21を点線で図示している。
【0084】
図13(A)に示した蛇行7段流路タイプの筐体100の場合、発熱の大きい回路素子部30Bは、冷媒の導入口24が配設されている側の端部に配置する。
図13(B)に示した蛇行5段タイプの筐体110の場合も、発熱の大きい回路素子部30Bは、冷媒の導入口24が配設されている側の端部に配置する。
【0085】
一方、
図13(C)に示した並列流路タイプの筐体21の場合には、発熱の大きい回路素子部30Bは、筐体21の上方で、冷媒の排出口25が配設されている側の端部に配置する。即ち、上記の
図10に示した流速分布のシミュレーション結果を踏まえ、筐体21に存在する複数の冷却用流路21cのうち、流速が大きくなる冷却用流路21c(冷媒導入流路21aの終端側に連通する冷却用流路21c)に対応する位置に、発熱の大きい回路素子部30Bを配置する。
【0086】
筐体100,110,21との間でこの
図13(A),(B),(C)に示したような配置関係を有する回路素子部30,30Bの温度測定箇所は、1行目(上段)、図面左から第4列目に配置される中央部の回路素子部30の位置M1と、第7列目に配置される端部の回路素子部30Bの位置M2としている。
【0087】
図14は温度のシミュレーション結果の一例を示す図であって、(A)は位置M1での結果、(B)は位置M2での結果である。
【0088】
図14(A)に示すように、蛇行7段流路タイプの筐体100を用いた場合、ポンプ性能を30L/min,20L/min,10L/minと低下させるのに伴い、位置M1の回路素子部30における温度は、166.2℃,176.9℃,206.1℃と上昇していく。同様に、蛇行5段流路タイプの筐体110を用いた場合には、位置M1の回路素子部30における温度は、155.5℃,161.9℃,174.6℃と上昇していく。また、並列流路タイプの筐体21を用いた場合では、位置M1の回路素子部30における温度は、162.0℃,163.1℃,173.4℃と上昇していく。
【0089】
また、
図14(B)に示すように、蛇行7段流路タイプの筐体100を用いた場合、ポンプ性能を30L/min,20L/min,10L/minと低下させるのに伴い、位置M2の回路素子部30Bにおける温度は、163.1℃,181.9℃,246.6℃と上昇していく。同様に、蛇行5段流路タイプの筐体110を用いた場合には、位置M2の回路素子部30Bにおける温度は、177.6℃,190.1℃,211.3℃と上昇していく。また、並列流路タイプの筐体21を用いた場合では、位置M2の回路素子部30Bにおける温度は、164.2℃,167.3℃,175.0℃と上昇していく。
【0090】
この
図14(A),(B)の結果より、並列流路タイプの筐体21を用いた場合には、蛇行7段流路タイプの筐体100及び蛇行5段流路タイプの筐体110を用いた場合に比べ、ポンプ性能を低下させたときの温度の上昇幅を、比較的小さく抑えることが可能になっている。即ち、並列流路タイプの筐体21は、回路素子部30,30Bの冷却性能について、ポンプ性能の影響を受け難くなっていると言える。これは、上記のように、このような筐体21が、冷媒の圧力損失が比較的小さくなる構造となっているためである。これに対し、蛇行7段流路タイプの筐体100及び蛇行5段流路タイプの筐体110は、蛇行部の存在により比較的圧力損失が大きくなるため、ポンプ性能の影響を受け易く、従って、ポンプ性能の低下により、冷媒の流速が低下し易く、回路素子部30,30Bの冷却効率が低下し易い。
【0091】
更に、
図14(A),(B)の結果より、並列流路タイプの筐体21を用いると、いずれのポンプ性能の場合にも、発熱量の異なる回路素子部30,30Bを、ほぼ同程度の温度に冷却することができる。従って、半導体モジュール10Bに含まれる複数の回路素子部30,30Bを、均一性良く冷却することが可能になる。
【0092】
続いて、並列流路タイプの筐体21(
図7(B))と蛇行7段流路タイプの筐体100(
図9(A))について、冷媒の流速と圧力損失(導入口24と排出口25での冷媒の圧力差)の関係をシミュレーションにより検証した結果について述べる。
【0093】
図15は冷媒の流速と圧力損失のシミュレーション結果の一例を示す図である。
【0094】
図15より、並列流路タイプの筐体21の場合(曲線Y1a)、蛇行7段流路タイプの筐体100の場合(曲線Y2a)共に、流速の増加に伴って圧力損失は大きくなる傾向がある。但し、流速の増加に対する圧力損失の増加の程度は、並列流路タイプの筐体21の場合(曲線Y1a)の方が小さくなる。尚、曲線Y1a,Y2aは、筐体21,100の各流路21c,101に所定のフィンを配置した場合のシミュレーション結果である。また、
図15には、筐体21,100の各流路21c,101に所定のフィンを配置しなかった場合のそれぞれのシミュレーション結果を、曲線Y1b,Y2bとして併せて図示している。
【0095】
この
図15に示した結果より、同じ流速の冷媒を流す場合にも、蛇行7段流路タイプの筐体100を用いたとき(曲線Y2a,Y2b)の方が、並列流路タイプの筐体21を用いたとき(曲線Y1a,Y2a)に比べ、圧力損失が大きい。即ち、圧力損失が生じてもなお、冷却に必要な一定以上の流速を確保するためには、蛇行7段流路タイプの筐体100では、並列流路タイプの筐体21に比べ、より高性能のポンプを使用して冷媒を循環させなければならない。
【0096】
また、
図15に示した結果によれば、圧力損失を一定とした場合には、並列流路タイプの筐体21を用いたとき(曲線Y1a,Y2a)の方が、蛇行7段流路タイプの筐体100を用いたとき(曲線Y2a,Y2b)に比べ、より大きな流速で冷媒を流すことができる。即ち、冷媒の循環に用いるポンプの性能が同等であれば、並列流路タイプの筐体21の方が、蛇行7段流路タイプの筐体100に比べ、より大きな流速で冷媒を流すことができる。例えば、この
図15のシミュレーション結果によれば、20kPaの圧力損失に対応できるポンプを使用する場合、並列流路タイプの筐体21では4m/s以上の冷媒を流すことができるが、蛇行7段流路タイプの筐体100では1m/sの冷媒を流すことも難しい。
【0097】
図16は冷媒の圧力損失と温度のシミュレーション結果の一例を示す図である。
【0098】
図16には、並列流路タイプの筐体21と蛇行7段流路タイプの筐体100について、上記の
図13(A),(C)に示したように回路素子部30,30Bを配置したときの、冷媒の圧力損失と位置M1,M2の温度の関係をシミュレーションした結果を示す。
【0099】
図16に示した結果より、並列流路タイプの筐体21を用いたときの位置M1,M2の温度、及び蛇行7段流路タイプの筐体100を用いたときの位置M1,M2の温度は、いずれも圧力損失の増加に伴って低下していき、ある圧力損失からほぼ一定の値で推移するようになる。そして、位置M1,M2の温度がほぼ一定の値で推移するようになるときの圧力損失は、蛇行7段流路タイプの筐体100を用いたときよりも、並列流路タイプの筐体21を用いたときの方が小さくなる。即ち、並列流路タイプの筐体21を用いたときの方が、回路素子部30,30Bの温度を一定レベルまで低下させるときの圧力損失が小さい。
【0100】
換言すれば、蛇行7段流路タイプの筐体100を用いたときには、並列流路タイプの筐体21を用いたときに比べて圧力損失が大きいため、回路素子部30,30Bの温度を一定レベルまで低下させるのに、より高性能のポンプを使用して冷媒を循環させる必要がある。並列流路タイプの筐体21では、大きなコストアップを招くようなポンプを使用しなくても、回路素子部30,30Bを冷却することが可能になっている。
【0101】
以上説明したように、上記の冷却器20では、冷媒導入流路21aと冷媒排出流路21bとの間に複数の冷却用流路21cを並設した筐体21を用いることにより、圧力損失を小さく抑え、冷却器20内に一定以上の流速で冷媒を流通させる。更に、この冷却器20では、その上に配置される回路素子部30,30Bと熱的に接続されたフィン22が、冷媒の流れる冷却用流路21c内に配置される。このような冷却器20を用いることにより、その上に配置される回路素子部30,30Bを効果的に冷却することができる。
【0102】
また、上記の冷却器20では、その筐体21の構造上、複数の冷却用流路21cのうち、冷媒導入流路21aの終端側に連通する冷却用流路21cを流れる冷媒の流速が速くなる。そのため、例えば、回路素子部30と、それより発熱の大きい回路素子部30Bを配置するような場合には、発熱の大きい回路素子部30Bを、冷媒の流速が速くなる冷却用流路21cの上方に配置する。それにより、回路素子部30,30B共に効果的に冷却することができ、冷却器20上の回路素子部30,30Bを均一性良く同程度の温度まで冷却することができる。
【0103】
尚、冷却器20に用いる筐体21は、上記したような構成のほか、以下に示すような構成とすることもできる。
【0104】
図17は筐体の第1〜第4変形例を示す図であって、(A)は第1変形例の平面模式図、(B)は第2変形例の平面模式図、(C)は第3変形例の平面模式図、(D)は第4変形例の平面模式図である。
【0105】
図17(A)に示す筐体21Aは、冷媒の導入口24から延在する冷媒導入流路21aと、排出口25に向かって延在する冷媒排出流路21bとに連通する複数の冷却用流路21cが、斜めに設けられている点で、上記筐体21と相違する。即ち、冷媒導入流路21a及び冷媒排出流路21bの延在方向と、冷却用流路21cの延在方向が、斜めに交差するように、冷却用流路21cが設けられている。このように冷却用流路21cを設けることにより、冷媒導入流路21aから冷却用流路21cへの冷媒の流れ、冷却用流路21cから冷媒排出流路21bへの冷媒の流れがスムーズになると共に、冷却用流路21cを流れる冷媒の流速を増加させることが可能になる。
【0106】
図17(B)に示す筐体21Bは、その外壁部内に、導入口24の近傍から、導入口24に直近の冷却用流路21cに達する、バイパス流路21eが設けられている点で、上記筐体21と相違する。このようなバイパス流路21eに冷媒を流すことにより(
図17(B)点線矢印)、冷媒排出流路21bを流れる冷媒の流速指向性を増加させ、それにより、冷却用流路21cを流れる冷媒の流速を均一にすることが可能になる。
【0107】
図17(C)に示す筐体21Cは、冷媒導入流路21aの終端側の外壁部内に、バイパス流路21fが設けられている点で、上記筐体21と相違する。このようなバイパス流路21fを設けることにより、例えば、
図17(C)に点線で示したように、冷却用流路21cの上方に2個の回路素子部30Cが並設されるような場合に、双方の回路素子部30Cを共に効果的に冷却することが可能になる。即ち、冷媒導入流路21aに近い側の、一方の回路素子部30Cは、冷媒導入流路21aから冷却用流路21cに流れ込む冷媒(
図17(C)鎖線矢印)で効果的に冷却することができる。また、冷媒排出流路21bに近い側の、もう一方の回路素子部30Cは、冷媒導入流路21aからバイパス流路21fを経て冷却用流路21cに流れ込む冷媒(
図17(C)点線矢印)で効果的に冷却することができる。尚、この筐体21Cに、上記
図17(B)で述べたバイパス流路21eを組み合わせることもできる。
【0108】
図17(D)に示す筐体21Dは、冷媒導入流路21aの終端側の冷却用流路21cの隔壁21dを略S字状にしている点で、上記筐体21と相違する。このような隔壁21dを設ける場合には、例えば、
図17(D)に点線で示したように、冷却用流路21cの上方に2個の回路素子部30Dを隔壁21dの一方の側と他方の側にそれぞれ1個ずつ配置する。このように2個の回路素子部30Dを異なる冷却用流路21cに配置することにより、双方の回路素子部30Cを共に効果的に冷却することが可能になる。尚、この筐体21Dに、上記
図17(B)で述べたバイパス流路21eを組み合わせることもできる。
【0109】
また、
図18は筐体の第5変形例を示す図であって、(A)は平面模式図、(B)は(A)のL1−L1矢視断面模式図である。
【0110】
図18(A),(B)に示す筐体21Eは、冷却用流路21cの底部内面を部分的に上方に隆起させた隆起部21gを有している点で、上記筐体21と相違する。このように冷却用流路21cに隆起部21gを設けることにより、その隆起部21gにおいては冷却用流路21cの流路面積が減少するため、その冷却用流路21cを流れる冷媒の流速を増加させることが可能になる。
【0111】
尚、このような隆起部21gは、上記の筐体21,21A〜21Dのいずれにも適用することが可能である。また、ここでは、冷却用流路21cの底部内面に隆起部21gを設けることで流路面積を減少させるようにしたが、冷却用流路21c両側の隔壁21dを部分的に肉厚にすることで冷却用流路21cの流路面積を減少させることも可能である。
【0112】
また、冷却器20には、その冷却用流路21cに効率的に冷媒を誘導するため、以下に示すような構成を有する筐体を用いることもできる。
【0113】
図19は筐体の第6〜第8変形例を示す図であって、(A)は第6変形例の平面模式図、(B)は第7変形例の平面模式図、(C)は第8変形例の平面模式図である。
【0114】
図19(A)に示す筐体21Fは、冷媒導入流路21aの、各冷却用流路21cの近傍に、板状のガイド21hが設けられている点で、上記筐体21と相違する。このようなガイド21hにより、冷媒導入流路21aを流れる冷媒は、そのまま冷媒導入流路21aを流れるものと、冷却用流路21cに流れ込むものとに分岐され易くなる。尚、このガイド21hは、筐体21Fの底部内面に形成されていても、或いは、この筐体21F上に配置されるフィンベース23に形成されていても、いずれであってもよい。また、ガイド21hは、筐体21Fの底部内面とフィンベース23の両方に、抵抗等を考慮し必要に応じて両者の先端を離間させて、対向するように形成されていてもよい。
【0115】
図19(B)に示す筐体21Gは、中心部の隔壁21dを、一方の外壁部まで延在させている点で、上記筐体21と相違する。これにより、各冷却用流路21cに、より均等に冷媒を誘導することが可能になる。
【0116】
図19(C)に示す筐体21Hは、冷媒導入流路21aに、複数の冷却用流路21cの近傍に跨って、板状のガイド21iが設けられている点で、上記筐体21と相違する。ここでは、一例として、2枚のガイド21iを、冷媒導入流路21aの延在方向と直交する方向に若干ずらして配置した場合を例示している。このようなガイド21iによっても、上記
図19(A)の場合と同様、冷媒導入流路21aを流れる冷媒は、そのまま冷媒導入流路21aを流れるものと、冷却用流路21cに流れ込むものとに分岐され易くなる。
【0117】
上記については単に本発明の原理を示すものである。さらに、多数の変形、変更が当業者にとって可能であり、本発明は上記に示し、説明した正確な構成および応用例に限定されるものではなく、対応するすべての変形例および均等物は、添付の請求項およびその均等物による本発明の範囲とみなされる。