(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
  従来、タイヤ用ゴム組成物には、増量効果(コスト削減)や成形安定性を確保する目的でクレーが配合されることがある。しかし、カーボンブラックの代わりにクレーを配合したゴム組成物は、カーボンブラックを配合したゴム組成物に比べ、ゴム硬度、強度が低下するという課題があった。
【0003】
  特許文献1は、平均粒子径が10μm以下のクレー及びチッ素吸着比表面積が70〜300m
2/gのカーボンブラックを配合したタイヤトレッド用ゴム組成物を提案している。
【0004】
  しかし、平均粒子径10μm以下のクレーを配合したゴム組成物では、その加工性が悪化することがあり、ゴム硬度、強度と加工性とを両立するようなタイヤ用ゴム組成物は未だ確立されていない。
 
【発明を実施するための形態】
【0011】
  本発明のタイヤ用ゴム組成物のゴム成分はジエン系ゴムからなる。ジエン系ゴムとしては、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等が挙げられる。なかでも、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴムが好ましい。ジエン系ゴムが、天然ゴム及びスチレン−ブタジエンゴムからなるとき、その好適な組成は、天然ゴムがジエン系ゴム100重量%中、好ましくは30〜90重量%、より好ましくは50〜80重量%であり、スチレン−ブタジエンゴムが好ましくは10〜70重量%、より好ましくは20〜50重量%である。
 
【0012】
  このゴム組成物は、上述したジエン系ゴムに、カーボンブラック及び無機充填剤を必ず配合する。無機充填剤の配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し、10〜80重量部、好ましくは20〜60重量部である。無機充填剤の配合量を10〜80重量部にすることにより、特定の無機充填剤を配合する効果をゴム組成物の特性に反映させることができる。
 
【0013】
  無機充填剤は、粒子径が5μm以下の粒子の割合が20〜80%、好ましくは20〜60%にする。5μm以下の粒子の割合を20%以上にすることによりゴム組成物のゴム硬度、強度などの補強性能を高くすることができる。また5μm以下の粒子の割合を80%以下にすることによりゴム組成物の粘度の増大を抑制し良好な加工性を得ることができる。本明細書において無機充填剤の粒子径は、JIS  8825-1に基づき、レーザー回折法により測定するものとする。また5μm以下の粒子の割合は、得られた測定値から粒子径とその個数の関係を表す累積粒度分布を求め、5μm以下の粒子の数割合を算出した。
 
【0014】
  また無機充填剤は、アルミニウム含有率をWal重量%、ケイ素含有率をWsi重量%とするとき、アルミニウム含有率Walを11〜40重量%、アルミニウムとケイ素の合計に対するアルミニウムの割合Wal/(Wal+Wsi)×100を15〜38重量%にする。
 
【0015】
  無機充填剤のアルミニウム含有率Walは11〜40重量%、好ましくは11〜35重量%である。アルミニウム含有率Walを11重量%以上にすることにより、硬度を向上することができる。またアルミニウム含有率Walを40重量%以下にすることにより、加工性を良化することができる。
 
【0016】
  無機充填剤のアルミニウムとケイ素の合計に対するアルミニウムの割合Wal/(Wal+Wsi)×100は15〜38重量%、好ましくは16〜35重量%である。割合Wal/(Wal+Wsi)×100を15重量%以上にすることにより、ゴム組成物の硬度・引張り強度を増大し、良好な補強性を得ることができる。また割合Wal/(Wal+Wsi)×100を38重量%以下にすることにより、ゴム組成物の粘度の増大を抑制し良好な加工性を得ることができる。
 
【0017】
  本明細書において無機充填剤におけるアルミニウム含有率Wal重量%、ケイ素含有率Wsi重量%は、JIS  K0119に基づき、蛍光X線分析法により測定するものとする。
 
【0018】
  無機充填剤の種類としては、上述した粒子径及びアルミニウム、ケイ素の組成範囲を満たす限り特に限定されるものではない。無機充填剤としては、例えばクレー、雲母類、ろう石鉱物類等を例示することができる。なかでもクレーが好ましい。
 
【0019】
  本発明のゴム組成物は、カーボンブラックを必ず配合する。カーボンブラックの配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し、30〜100重量部、好ましくは40〜85重量部である。カーボンブラックの配合量を30重量部以上にすることにより、引張り強度・硬度を向上することができる。またカーボンブラックの配合量を100重量部以下にすることにより、加工性の悪化を抑制することができる。
 
【0020】
  また本発明のタイヤ用ゴム組成物において、上述した無機充填剤とカーボンブラックの配合量の比としては、重量比(無機充填剤/カーボンブラック)が好ましくは(10/90)〜(70/30)、より好ましくは(30/70)〜(60/40)にするとよい。重量比(無機充填剤/カーボンブラック)を(10/90)以上にすることにより、
加工性の悪化を抑制することができる。また重量比(無機充填剤/カーボンブラック)を(70/30)以下にすることにより、加工性を良化することができる。
 
【0021】
  カーボンブラックの窒素吸着比表面積は
、15〜40m
2/g
、好ましくは25〜35m
2/gにす
る。窒素吸着比表面積を15m
2/g以上にすることにより硬度を増大できる。また窒素吸着比表面積を40m
2/g以下にすることにより加工性を良化することができる。本明細書において、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、ASTM  D1993−03に基づきBET法で測定されたものである。
 
【0022】
  カーボンブラックのDBP吸収量は
、50〜120m
2/g
、好ましくは80〜100m
2/gにす
る。DBP吸収量を50m
2/g以上にすることにより、引張り強度・硬度を増大できる。またDBP吸収量を120m
2/g以下にすることにより加工性悪化を抑制できる。本明細書において、カーボンブラックのDBP吸収量は、JIS  K6217−4に基づきBET法で測定されたものである。
 
【0023】
  本発明において、ゴム組成物及びゴム組成物には、上記の限定された無機充填剤、カーボンブラック以外の他の充填剤を配合することができる。他の充填剤としては、例えばタルク、マイカ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン等が例示される。
 
【0024】
  本発明のタイヤ用ゴム組成物において、ゴム組成物及びゴム組成物は、加硫又は架橋剤、加硫促進剤、老化防止剤、可塑剤、加工助剤、液状ポリマー、テルペン系樹脂、熱硬化性樹脂などのタイヤ用ゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤を、本発明の目的を阻害しない範囲内で配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練してゴム組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。本発明のタイヤ用ゴム組成物は、通常のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用して、上記各成分を混合することによって製造することができる。
 
【0025】
  本発明のタイヤ用ゴム組成物は、空気入りタイヤのトレッド部、サイドウォール部、ビード部を形成するのに使用することができる。なかでもビード部をこのタイヤ用ゴム組成物で形成するのが好ましい。本発明のタイヤ用ゴム組成物を使用してビード部を形成した空気入りタイヤは、ゴム組成物のゴム硬度、強度が高いため、操縦安定性、耐久性などのタイヤ性能が優れる。またゴム組成物の加工性が良好であるため、その高い品質を安定的に維持して製造することができる。
 
【0026】
  以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
 
【実施例】
【0027】
  表4に示す配合剤を共通配合とし、表1,2に示す配合からなる
14種類のタイヤ用ゴム組成物(実施例1〜
6、比較例1〜8)を、硫黄、加硫促進剤を除く成分を1.8Lの密閉型ミキサーで160℃、5分間混練しマスターバッチとして放出した。このマスターバッチに、硫黄、加硫促進剤を加えてオープンロールで混練することによりタイヤ用ゴム組成物を調製した。なお、表4に記載した共通配合剤の添加量は、表1,2に記載したジエン系ゴム100重量部(正味のゴム量100重量部)に対する重量部で表わした。
【0028】
  得られた
14種類のタイヤ用ゴム組成物について、下記に示す方法でムーニー粘度を測定することにより加工性を評価した。
【0029】
      加工性(ムーニー粘度)
  得られたゴム組成物のムーニー粘度をJIS  K6300に準拠して、ムーニー粘度計にてL型ロータ(38.1mm径、5.5mm厚)を使用し、予熱時間1分、ロータの回転時間4分、100℃、2rpmの条件で測定した。得られた結果は、比較例1の値を100とする指数として、表1,2の「加工性」の欄に示した。この指数が小さいほど粘度が小さく加工性が優れることを意味する。
【0030】
  得られた
14種類のタイヤ用ゴム組成物を所定形状の金型中で、160℃、20分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を作製し、下記に示す方法でゴム硬度及び引張り強度を評価した。
【0031】
      ゴム硬度
  得られた加硫ゴム試験片のゴム硬度を、JIS  K6253に準拠し、デュロメータのタイプAにより温度20℃で測定した。得られた結果は、比較例1の値を100とする指数として、表1,2の「ゴム硬度」の欄に示した。この指数が大きいほど、ゴム硬度が高く機械的特性が優れること、また空気入りタイヤにしたとき操縦安定性が優れることを意味する。
【0032】
      引張り強度
  得られた加硫ゴム試験片から、JIS  K6251に準拠してJIS3号ダンベル型試験片(厚さ2mm)を打ち抜き、温度20℃で500mm/分の引張り速度で試験を行い、引張り破断強度を測定した。得られた結果は、比較例1の値を100とする指数として、表1,2の「引張り強度」の欄に示した。この指数が大きいほど、引張り破断強度が大きく機械的特性が優れること、また空気入りタイヤにしたとき耐摩耗性及び操縦安定性が優れることを意味する。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
  なお、表1,2において使用した原材料の種類を下記に示す。
・NR:天然ゴム、STR-20
・SBR:乳化重合スチレンーブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol 1502
・カーボンブラック1:窒素吸着比表面積(BET)が35m
2/g、DBP吸収量が
85ml/100g、新日化カーボン 社製N660(ニテロン#GN)
・カーボンブラック2:窒素吸着比表面積(BET)が90m
2/g、DBP吸収量が
122ml/100g、THAI CARBON  BLACK  PUBLICK  CO.製N339(THAIBLACK  N339)
・クレー1〜クレー9:表3に示す、5μm以下の粒子割合、アルミニウム含有率及びアルミニウムとケイ素の合計に対するアルミニウムの割合の化学組成のクレー
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】
  表4において使用した原材料の種類を下記に示す。
・酸化亜鉛:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
・ステアリン酸:日油社製ビーズステアリン酸YR
・オイル:昭和シェル石油社製エキストラクト4号S
・硫黄:細井化学工業社製油処理硫黄
・加硫促進剤:大内新興化学工業社製ノクセラーCZ-G
【0039】
  表1から明らかなように実施例1〜
6のタイヤ用ゴム組成物は、加工性、ゴム硬度及び引張り強度を従来レベル以上に改良することが確認された。
【0040】
  これに対し、比較例1のタイヤ用ゴム組成物は、クレー3のアルミニウム含有率Walが11重量%未満、アルミニウムとケイ素の合計に対するアルミニウムの割合Wal/(Wal+Wsi)が15重量%未満であるので、加工性、ゴム硬度及び引張り強度を、実施例1〜4のゴム組成物のようには改良することができない。
【0041】
  比較例2及び3のタイヤ用ゴム組成物は、クレー1及び2のアルミニウム含有率Walが11重量%未満、アルミニウムの割合Wal/(Wal+Wsi)が15重量%未満、かつ5μm以下の粒子割合が20%未満であるので、加工性及びゴム硬度を改良することができず、引張り強度が悪化する。
【0042】
  比較例4のタイヤ用ゴム組成物は、クレー4のアルミニウムの割合Wal/(Wal+Wsi)が38重量%を超え、かつ5μm以下の粒子割合が80%を超えるので、加工性が悪化する。
【0043】
  比較例5のタイヤ用ゴム組成物は、クレー5のアルミニウムの割合Wal/(Wal+Wsi)が38重量%を超えるので、加工性が悪化する。
【0044】
  比較例6のタイヤ用ゴム組成物は、特定のクレーを配合せずに、カーボンブラックだけを配合したので、加工性が悪化する。
【0045】
  比較例7のタイヤ用ゴム組成物は、カーボンブラックを配合しなかったので、引張り強度、硬度が悪化する。