特許第5700163号(P5700163)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5700163ヒートシール容器、ヒートシール容器入り食品及びヒートシール容器の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5700163
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】ヒートシール容器、ヒートシール容器入り食品及びヒートシール容器の製造装置
(51)【国際特許分類】
   B65D 77/20 20060101AFI20150326BHJP
【FI】
   B65D77/20 J
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-112780(P2014-112780)
(22)【出願日】2014年5月30日
【審査請求日】2014年7月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000145068
【氏名又は名称】株式会社寺岡精工
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100145481
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 昌邦
(72)【発明者】
【氏名】片山 隆
【審査官】 藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭61−021414(JP,Y1)
【文献】 スイス国特許発明第00677473(CH,A5)
【文献】 欧州特許出願公開第00513888(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 77/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口して被包装物を収容する収容部および前記収容部の上端部から外周側に張り出すフランジ部を有する容器本体と、
前記収容部を塞いで前記フランジ部に熱溶着された蓋体と、を備えたヒートシール容器であって
前記フランジ部において下方に向けて断面略半円状に湾曲形成させた膨出部と、
前記膨出部の略中央に形成して前記容器本体の内周側と外周側とに切り離し可能とする切り込みと、
前記膨出部において前記切り込みを切り離すことによって互いに係合可能な内周側と外周側の係合片を形成する係合部とを備え、
再封止に際し、前記切り込みで切り離した前記内周側と外周側の係合片同士を上下に当接させて押圧することで上下位置を入れ替えて互いに係合させるようにしたことを特徴とするヒートシール容器。
【請求項2】
前記係合部は、前記フランジ部の周方向の一部に一つまたは複数形成されていることを特徴とする請求項1に記載のヒートシール容器。
【請求項3】
前記フランジ部の周方向の一部に前記切り込みが形成されていない部分を有することを特徴とする請求項1または2に記載のヒートシール容器。
【請求項4】
前記フランジ部に、前記収容部の外周縁部に沿って形成されていて前記蓋体側に突出する凸条部と、
前記凸条部の外周側に沿って形成されていて下方に向けて凹んだ凹溝部と、が形成され、
前記切り込み及び前記係合部を備えた膨出部が前記凹溝部に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のヒートシール容器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のヒートシール容器の製造装置であって、
被包装物が収容された前記容器本体を供給する手段と、
前記供給された容器本体の前記収容部を塞ぐように蓋体を配置する手段と、
前記蓋体を前記収容部の外周部の前記フランジ部に熱溶着する手段と、
を備えていることを特徴とするヒートシール容器の製造装置。
【請求項6】
上方に開口して被包装物として食品を収容した収容部および前記収容部の上端部から外周側に張り出すフランジ部を有する容器本体と、
前記収容部を塞いで前記フランジ部に熱溶着された蓋体と、を備えたヒートシール容器入り食品であって
前記フランジ部において下方に向けて断面略半円状に湾曲形成させた膨出部と、
前記膨出部の略中央に形成して前記容器本体の内周側と外周側とに切り離し可能とする切り込みと、
前記膨出部において前記切り込みを切り離すことによって互いに係合可能な内周側と外周側の係合片を形成する係合部とを備え、
再封止に際し、前記切り込みで切り離した前記内周側と外周側の係合片同士を上下に当接させて押圧することで上下位置を入れ替えて互いに係合させるようにしたことを特徴とするヒートシール容器入り食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被包装物を収容した容器本体の開口部に、フィルム状の蓋体を熱溶着してなるヒートシール容器、ヒートシール容器入り食品及びヒートシール容器の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品等を収容する場合に、未開封の状態の容器から収容された食品の汁や液体が漏れるのを防ぐために密閉容器が広く用いられている。密閉容器は、被包装物を収容する容器本体の開口部に対し、開口部を塞ぐ蓋体を密閉状態で熱溶着して装着する。
このような密閉容器の一種として、容器本体の開口部の周囲に、フィルム状の蓋体を熱溶着するヒートシール容器がある。このようなヒートシール容器は、容器本体内に被包装物を収容した状態で、開口部にフィルム状の蓋体を被せて、開口部の外周部と蓋体とを熱溶着する。容器を開封する際には、蓋体の外周部を掴んで容器本体から引き剥がす。これにより熱溶着した部分で容器本体と蓋体とが破断し、容器を開封することができる。
【0003】
特許文献1には、容器本体の開口部の周囲にミシン目が入ったフランジ部が形成され、蓋体をフランジ部に対して被せて熱溶着した容器の構成が開示されている。そして、開封時には、このミシン目に沿ってフランジ部を切断し、ミシン目の外周側のフランジ部と蓋体とを一体化したまま開封する構成が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、フィルム状の蓋体に、内外層からなる多層フィルムを積層して形成した容器本体の開口部外周側のフランジ部に沿って内層と外層に切り込みを形成した簡易ピール容器が提案されている。この容器の開封時には、フランジ部の内層と外層の切り込みに沿って多層フィルムをはがして蓋体と一体に容器本体のフランジ部を切断することで、フランジ部の一部が被着した蓋体を開封することができる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5082008号公報
【特許文献2】特公平5−67508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、被包装物の種類によってはガス(例えば窒素、二酸化炭素(炭酸ガス)、酸素あるいはこれらの混合気)を充填することがあるが、従来のヒートシール容器では、密封性が低くフランジ部のミシン目から充填したガスが漏れるおそれがあった。また、蓋体を開封した後は、熱溶着部が剥がれてしまうため、蓋体を再封止(リクローズ)することができなかった。したがって、ヒートシール容器の開封後に、食べきれずに残った食品等の被包装物を保存する場合には、被包装物を別の容器に移す等の手間がかかるため、使用者にとって煩雑である上に別の容器を使用後に洗浄しなければならないという問題があった。
【0007】
また、蓋体を容器本体のフランジ部に対して粘着させることによって、蓋体を閉じることもできるが、粘着部に、容器に収容していた食品等の汁や液体等が付着すると粘着性が損なわれやすい上に不衛生になるという欠点がある。
【0008】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、低コストで、ヒートシール後の容器の密封性が高く、開封後に蓋体を確実に再封止することのできるヒートシール容器とヒートシール容器入り食品及びヒートシール容器の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るヒートシール容器は、上方に開口して被包装物を収容する収容部および前記収容部の上端部から外周側に張り出すフランジ部を有する容器本体と、前記収容部を塞いで前記フランジ部に熱溶着された蓋体とを備えたヒートシール容器であって、前記フランジ部において下方に向けて断面略半円状に湾曲形成させた膨出部と、前記膨出部の略中央に形成して前記容器本体の内周側と外周側とに切り離し可能とする切り込みと、前記膨出部において前記切り込みを切り離すことによって互いに係合可能な内周側と外周側の係合片を形成する係合部とを備え、再封止に際し、前記切り込みで切り離した前記内周側と外周側の係合片同士を上下に当接させて押圧することで上下位置を入れ替えて互いに係合させるようにしたことを特徴とする。
本発明によれば、ヒートシール後における容器の密封性が高く、被包装物の種類によって充填したガス(例えば窒素、二酸化炭素(炭酸ガス)、酸素あるいはこれらの混合気)の漏れや、容器に収容した被包装物からの液漏れ等を防止することができ、密閉状態の容器を開封するときには、切り込みに沿ってフランジ部の膨出部を蓋体と共に容器本体の内周側と外周側とに切り離す。すると、フランジ部の外周側と蓋体とが一体のまま開き、開口を通して容器本体の収容部内の被包装物を取り出すことが可能となる。そして、開封後に再び蓋体を閉じるには、容器本体の開口を蓋体で塞いで切り込みを挟んで両側に形成された内周側と外周側の係合片同士を互いに係合させる。これによって、蓋体を容器本体に再封止できる。
【0010】
また、本発明によるヒートシール容器では、前記係合部は、前記フランジ部の周方向の一部に一つまたは複数形成されていてもよい。
容器本体に蓋体を覆って、1または複数の係合部同士を係合させることで再封止できる。
【0011】
また、本発明によるヒートシール容器では、フランジ部の周方向の一部に切り込みが形成されていない部分を有するようにしてもよい。
フランジ部の周方向の一部に切り込みを形成しない部分を残すことで、切り込みの部分でフランジ部を内周側と外周側とに切り離して蓋体を開いても、蓋体およびフランジ部は、切り込みが形成されていない部分で容器本体に繋がった状態となる。これにより、蓋体が容器本体に繋がった部分を蝶番のように機能させ、蓋体の開閉動作を容易に行うとともに、蓋体が容器本体と分離しない。
【0012】
また、本発明によるヒートシール容器では、フランジ部に、前記収容部の外周縁部に沿って形成されていて前記蓋体側に突出する凸条部と、前記凸条部の外周側に沿って形成されていて下方に向けて凹んだ凹溝部とが形成され、前記切り込み及び前記係合部を備えた膨出部が前記凹溝部に形成されていてもよい。
このように、収容部の外周縁部に凸条部が形成されることで、容器本体の収容部内に収容された被収容物の液体がこぼれることを防いで、凹溝部で蓋体の切り離しと再封止を繰り返して行うことができる。
【0013】
また、本発明によるヒートシール容器では、前記容器本体の側面部に、側面部が変形することを抑える補強部が形成されていてもよい。
これにより、蓋体を開封するときや蓋体を再封止するとき等に容器本体に荷重がかかっても、容器本体の外周側面部が変形するのを抑えて係合部の係脱を行なうことができる。
【0014】
また、本発明によるヒートシール容器の製造装置は、上述したいずれかに記載のヒートシール容器の製造装置であって、被包装物が収容された容器本体を供給する手段と、供給された容器本体の収容部を塞ぐように蓋体を配置する手段と、蓋体を収容部の外周部のフランジ部に熱溶着する手段と、を備えていることを特徴とする。
本発明によれば、フランジ部と切り込みと係合部を備えた容器本体を供給し、被収容物を容器本体内に収容して蓋体を被せてフランジ部と熱溶着することで封止されたヒートシール容器を製造することができる。そして、蓋体を切り込みで容器本体と切り離した後も係合部で再封止することができる。
【0015】
また、本発明によるヒートシール容器入り食品は、上方に開口して被包装物として食品を収容した収容部および収容部の上端部から外周側に張り出すフランジ部を有する容器本体と、収容部を塞いでフランジ部に熱溶着された蓋体と、を備えたヒートシール容器入り食品であって、フランジ部において下方に向けて断面略半円状に湾曲形成させた膨出部と、膨出部の略中央に形成して前記容器本体の内周側と外周側とに切り離し可能とする切り込みと、膨出部において前記切り込みを切り離すことによって互いに係合可能な内周側と外周側の係合片を形成する係合部とを備え、再封止に際し、前記切り込みで切り離した前記内周側と外周側の係合片同士を上下に当接させて押圧することで上下位置を入れ替えて互いに係合させるようにしたことを特徴とする。
本発明によるヒートシール容器入り食品は、フランジ部に形成した切り込みを分離切断開封して食品を取り出した後、容器本体に残った食品を封入するために、容器本体の開口に蓋体を被せてフランジ部の内周側と外周側の係合片同士を係合させることで再封止できる。そして、再使用時に、フランジ部の係合片同士を分離することで蓋体を再度開封して容器本体内に残った食品を取り出すことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るヒートシール容器とヒートシール容器入り食品とヒートシール容器の製造装置によれば、低コストで、しかも簡単な構成で、ヒートシール後の容器の密封性が高く、蓋体を開封した後にヒートシール容器の蓋体を係合部で簡単且つ確実に再封止することができる。また、再封止できる蓋体は、フランジ部に係合部を形成することで実現でき、別の蓋体等を用意する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態における、ヒートシール容器の全体構成を示す斜視図である。
図2図1に示すヒートシール容器のA−A線縦断面図である。
図3図2に示すフランジ部のB部拡大断面図である。
図4】本発明の第1実施形態における、ヒートシール容器の下面図である。
図5】本発明の第1実施形態における、ヒートシール容器の係合部を示す図4のC−C線断面図であり、(a)は切り込みを切り離す前の状態の係合部を示す断面図、(b)は切り込みを切り離した状態の係合部を示す断面図である。
図6】本発明の第1実施形態における、ヒートシール容器の係合部の再封止工程を示す図であり、(a)は開封後の再封止する際に、係合片同士が当接した状態を示す断面図、(b)は係合片同士を係合させた再封止状態を示す断面図である。
図7】本発明の第1実施形態における、ヒートシール容器の変形例を示す下面図である。
図8】本発明の第2実施形態における、ヒートシール容器を示すもので、図10のD−D線断面図である。
図9図8に示すヒートシール容器のE部拡大断面図である。
図10】本発明の第2実施形態における、ヒートシール容器の下面図である。
図11】ヒートシール容器の係合部を示す図10のF−F線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明によるヒートシール容器及びその容器入り食品、そしてヒートシール容器の製造装置を実施するための形態を説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態によるヒートシール容器10について図1乃至図6により説明する。図1及び図2に示すように、本実施形態によるヒートシール容器10は、容器本体20と、蓋体30とを備えており、容器本体20の内部に食品等の被収容物が収容されて蓋体30によって熱溶着で密封されている。
【0019】
図2図4に示すように、容器本体20は、樹脂製で、例えば平面視矩形状をなしている。容器本体20は、矩形状の底板部21と、底板部21の外周部全周から上方に立ち上がる外周側面部(側面部)22と、外周側面部22の上端部22tから容器本体20の外周側に張り出すフランジ部23と、が一体に形成されている。容器本体20は、底板部21と、外周側面部22とにより、上方に開口した有底開口容器であり、食品等の被包装物を内部に収容する収容部24が形成されている。
また、四面をなす各外周側面部22には、容器本体20の外方に向けて突出する補強凸部(補強部)22rが形成されている。補強凸部22rは、下方から上方に向かうにしたがってその幅が漸次広くなるよう略V字状またはU字状に突出形成されている。この補強凸部22rにより、外周側面部22の面外方向への変形が抑えられ、その強度が高められている。
【0020】
フランジ部23には、外周側面部22の上端部22tから外周側に延びた位置に、容器本体20の開口に沿った周方向に連続する凹溝部25が形成されている。図3に示すように、凹溝部25は、断面視でフランジ部23から直交して下方に延びる一対の側壁部25aと、これら一対の側壁部25a,25a間に設けられた底板部25bと、を有する断面略U字状をなしている。
このような凹溝部25は、平面視矩形の容器本体20の略四角形状の開口の四辺のうちの三辺に沿うフランジ部23に連続して形成されている。また、この凹溝部25により、フランジ部23には、凹溝部25に対して容器本体20の開口の内周側に、上方に凸となる凸条部26が形成されている。
【0021】
また、凹溝部25の底板部(底部)25bには、例えば溝幅方向中央部に、凹溝部25が連続する方向に沿って切り込み27が形成されている。この切り込み27は、例えば凹溝部25の底板部25bの厚さ方向に形成した例えばV字状の溝を有するミシン目や、凹溝部25の底板部25bを厚さ方向に貫通する長いスリットを凹溝部25が連続する方向に沿って小さい間隔を開けて多数形成する切れ目である。
【0022】
また、図4に示すように、フランジ部23には、容器本体20の三辺に沿って形成された凹溝部25の一部に、下方に突出する突部からなるノッチ部28が形成されている。この実施形態において、ノッチ部28は、凹溝部25が形成されていないフランジ部23の一辺23zに対向する辺の中央部に形成されている。
【0023】
図5(a)に示すように、このノッチ部28において、凹溝部25の底板部25bは、下方に向けて断面略半円状に膨出した膨出部28bが形成されている。そして、膨出部28bは、切り込み27によって、凹溝部25の溝幅方向に二つに分割可能とされている。この膨出部28bは、切り込み27の一方の側と他方の側とで、後述するように互いに係合可能な係合片(係合部)29A,29Bを形成している。
図5(b)に示すように、このような係合片29A,29Bは、凹溝部25の側壁部25aと底板部25bとからなる断面L字状で、フランジ部23の外周部を外側に撓ませることによって、係合片29A,29Bどうしが離間する方向に弾性変形できるようになっている。
【0024】
蓋体30は、熱溶着性の樹脂材料からなるフィルム状である。フランジ部23において、凹溝部25よりも外周側の熱溶着部23nに熱溶着されている。ここで、図4に示すように、フランジ部23の一つの角部から外周側に張り出すタブ部23tが形成され、蓋体30にもタブ部23tに重なる同一形状のタブ部30tが形成されている。なお、タブ部23t、30tは複数の角部に形成されていてもよく、また、フランジ部23と蓋体30の一方にのみタブ部23t、30tを形成してもよい。
【0025】
次に、本実施形態によるヒートシール容器10の製造装置による製造方法を説明すると、まず、ヒートシール容器10の製造ラインの上流側において、樹脂製シートをプレス成型し、または樹脂製シートを型枠の上方に位置させて、型枠の下方に設けた吸引口よりバキューム(吸引)装置により吸引することによって容器本体20を成形する。次に、包装ラインの中流段階で容器本体20内に食品等の被収容物を収容した後、食品等の被包装物が収容された容器本体20を包装ライン下流側へ供給し、容器本体20の収容部24の開口を塞ぐように樹脂フィルムからなる蓋体30を被せる。
なお、容器本体20を成形する機構を備えていないヒートシール容器10の製造装置の場合、包装ラインの上流側で、食品等の被包装物が収容された容器本体20を包装ライン下流側へ供給する容器供給手段を備え、容器供給手段から供給された被包装物が収容された容器本体20の収容部24の開口を塞ぐように樹脂フィルムからなる蓋体30(蓋用フィルム)で被覆するようにしてもよい。
次に、熱溶着手段によって、蓋体30を、容器本体20における収容部24の外周側のフランジ部23に熱溶着することで、ヒートシール容器10を製造できる。このとき、凸条部26の頂面も蓋体30と熱溶着する。これにより、ヒートシール容器10は容器本体20の収容部24が蓋体30によって気密または液密に封止されている。
【0026】
しかも、フィルム状の蓋体30を容器本体20のフランジ部23に熱溶着することで、蓋体30が熱収縮して容器本体20が内側に引っ張られ、ノッチ部28の係合片29A、29B同士が圧縮されて当接しており、強度が高い。
なお、多数のヒートシール容器10を連続的に包装処理する場合には、例えば特開2012−236615号公報に開示のヒートシール包装装置等を用いることが可能である。
【0027】
そして、使用時に、密閉状態のヒートシール容器10を開封するには、容器本体20を固定した状態で、タブ部23tをつかみ、蓋体30と共に上方に引き上げる。すると、蓋体30が熱溶着された容器本体20のフランジ部23が、切り込み27に沿って切断される。これにより、蓋体30が開いて開封状態となる。このとき、図5(b)に示すように、フランジ部23において切り込み27よりも外周側の熱溶着部23nは、蓋体30に溶着されたまま一体化している。そして、ノッチ部28は、係合片29A,29Bが切り込み27で切り離される。
このようにして蓋体30を開封した状態で、蓋体30は、切り込み27が形成されていない一辺23zにおいて、容器本体20のフランジ部23に熱溶着されたまま一体化している。したがって、蓋体30を開封しても、蓋体30が容器本体20から分離することがない。
【0028】
蓋体30を開封した状態では、容器本体20の収容部24の外周縁部には、上方に突出した凸条部26が形成されている。これにより、収容部24内に収容された食品等の汁や液体が収容部24の外部に漏出するのを防ぐことができる。
【0029】
次に、蓋体30を開封した後に蓋体30を再封止(リクローズ)するには、ノッチ部28の、係合片29A,29Bを互いに係合させればよい。即ち、図6(a)に示すように、容器本体20の開口を蓋体30で閉じて、容器本体20の係合片29A上に蓋体30の係合片29Bを載せる。次いで、蓋体30の外周部および蓋体30に溶着されているフランジ部23を押さえながら、ノッチ部28の係合片29Aを蓋体30の29Bに対して上方に向けて押圧する。すると、図6(b)に示すように、係合片29Aが係合片29Bを乗り越えて上下入れ替わり、内周側の係合片29Aの下側に外周側の係合片29Bが嵌まり込み、係合片29A,29Bが互いに係合した状態になる。互いに係合する係合片29A,29Bによって、開封後の蓋体30は容器本体20に閉塞された再封止状態になる。
【0030】
この後、蓋体30を再び開くには、蓋体30に溶着されたフランジ部23を外側に開くことで、図5(b)に示すように、容器本体20のノッチ部28の係合片29Aに対して、蓋体30に溶着されたフランジ部23の他方の係合片29Bが外側に分離するため、係合片29A,29Bの係合が解除される。これにより、蓋体30を再開封できる。
なお、蓋体30の再封止に際し、容器本体20の係合片29Aの下に蓋体30の係合片29Bを載せ、係合片29Bを係合片29Aに対して上方に向けて押圧して乗り越えるようにしても係合片29A,29Bを係合させて再封止するようにしてもよい。
【0031】
上述したように、本実施形態によるヒートシール容器10によれば、密閉状態のヒートシール容器10を開封するときには、切り込み27に沿ってフランジ部23を容器本体20の内周側と外周側とに切り離すことで、蓋体30をフランジ部23の熱溶着部23nと一体のまま開封でき、容器本体20の収容部24内の被包装物を取り出すことが可能となる。
また、開封後に残った食品等を容器本体20に収納した状態で、蓋体30を再封止するには、蓋体30で容器本体20の開口を閉鎖させて係合片29A,29B同士を上下に当接させた後に、押し込んで上下位置を入れ替えることで互いに係合させて再封止できる。
そのため、本実施形態によるヒートシール容器10によれば、容器本体20のフランジ部23の切り込み27にノッチ部28を設けて係合片29A,29Bを形成することで再封止可能であり、別体の蓋等を用意する必要がない。したがって、低コストで、開封後にヒートシール容器10の蓋体30を確実に再封止することが可能となる。
【0032】
また、フランジ部23の周方向の一部に切り込み27を形成しない構成としたことで、蓋体30を容器本体20から切り込み27の部分で切り離しても、切り込み27を形成しない部分(辺23z)で容器本体20に繋がった状態となる。これにより、蓋体30が容器本体20に繋がった部分を蝶番のように機能させ、蓋体30の開閉動作を容易に行うとともに、蓋体30が容器本体20から分離することを防ぐことができる。
【0033】
また、収容部24の外周縁部に凸条部26が形成されているので、容器本体20の収容部24内に収容された食品等の被収容物の液体や、充填したガス(例えば窒素、二酸化炭素(炭酸ガス)、酸素あるいはこれらの混合気)が凹溝部25や外部にこぼれる(漏れる)ことを防止できる。
また、容器本体20の外周側面部22に補強凸部22rを形成したから、外周側面部22の強度が向上し、蓋体30の開封時や蓋体30の再封止時に荷重をかけても容器本体20の外周側面部22が変形することを抑えることができる。したがって、蓋体30の開閉作業を簡単且つ確実に行うことができる。
【0034】
なお、本発明によるヒートシール容器は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り、上記実施の形態の構成を適宜置換したり変更したりすることができる。以下に、本発明によるヒートシール容器の変形例や他の実施形態について説明するが、上述した実施形態と同一または同様な部品や部分等については同一の符号を用いて説明する。
【0035】
(第1実施形態の変形例)
上記第1実施形態では、凹溝部25および切り込み27を、平面視矩形の容器本体20の四辺のうちの三辺に沿って形成したが、これに限らない。
図7は、第1実施形態によるヒートシール容器の変形例を示す下面図である。
図7に示すように、凹溝部25、凸条部26および切り込み27を、平面視矩形の容器本体20のフランジ部23の全周にわたって連続形成してもよい。
また、上述した実施形態では、ノッチ部28を凹溝部25の一辺の中央部にのみ設けたが、これに限らない。例えば、図7に示すようにノッチ部28を容器本体20の各角部に設けてもよい。
【0036】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態によるヒートシール容器40について図8乃至図11によって説明する。
上記第1実施形態では、フランジ部23に凹溝部25を形成したが、本第2実施形態によるヒートシール容器40では、図8図11に示すように、凹溝部25を形成せず、フランジ部23を平板状に形成した。
【0037】
しかも、本実施形態によるヒートシール容器40において、フランジ部23には、フランジ部23が連続する方向に沿って切り込み37が形成されている。この切り込み37として、フランジ部23の厚さ方向に形成した例えばV字状の溝を有するミシン目や、フランジ部23を厚さ方向に貫通するスリットをフランジ部23が連続する方向に沿って小さな間隔をあけて多数形成する切れ目等を形成してもよい。
【0038】
また、図10に示すように、断面四角形状の容器本体50において、四辺に形成された各フランジ部23の一部にノッチ部38がそれぞれ形成されている。図10に示す例では、ノッチ部38はフランジ部23の四辺のそれぞれの中央部に形成されている。
図11に示すように、各辺のフランジ部23に設けたノッチ部38において、下方に向けて断面略半円状に膨出した膨出部38bが形成されている。そして、膨出部38bは、切り込み37によって、フランジ部23の幅方向に二つに分割可能とされている。この膨出部38bは、切り込み27の一方の側と他方の側とで、後述するように互いに係合可能な係合片(係合部)39A,39Bを構成している。
【0039】
本実施形態による、密閉状態のヒートシール容器40を開封するには、フランジ部23の外周部に形成されたタブ部23tおよび蓋体30のタブ部30tをつかみ、上方に引き上げる。すると、容器本体50のフランジ部23が、切り込み37に沿って切断される。このとき、フランジ部23において切り込み37よりも外周側の熱溶着部23nは、蓋体30に溶着されたまま一体化している。また、ノッチ部38においては、係合片39A,39Bが切り込み37で切り離される。
【0040】
蓋体30を開封した後に蓋体30を再封止(リクローズ)するには、ノッチ部38の係合片39A,39Bを互いに係合させる。即ち、図6に示す再封止工程と同様に、蓋体30を閉じて内周側の係合片39A上に外周側の係合片39Bを載せる。次いで、蓋体30および容器本体50を押さえながら、ノッチ部38の係合片39Aを上方に押圧すると、内周側の係合片39Aが外周側の係合片29Bを乗り越えて上下位置が入れ替わり、内周側の係合片39Aの下側に外周側の係合片39Bが嵌まり込み、係合片39A,39Bが互いに係合する。
これにより、開封後の蓋体30を再封止することができる。
【0041】
この後、蓋体30を再開封するには、蓋体30の外周部と溶着されたフランジ部23を外側上方に向けて開けば、外周側の係合片39Bが内周側の係合片39Aから離れて係合片39A,39Bの互いの係合が解除される。これにより、蓋体30を再開封することができる。
【0042】
上述したように本第2実施形態によるヒートシール容器40によれば、容器本体50のフランジ部23が平板状であるから、製造時におけるフィルム状の蓋体30との熱溶着をより確実に広い面積にわたって行うことができるので、製造が比較的容易で高強度で封止できる。
しかも、開封後に再封止するには、容器本体50のフランジ部23と蓋体30の外周部とが共に平面状であるため、片方の手で容器本体50のフランジ部23と蓋体30を挟んで、互いに上下位置で当接する係合片39Aと係合片39Bどうしを押圧することで、容易に上下位置を切り替えて係合させて再封止できる。
したがって、上記第1実施形態と比較して、より低コストでヒートシール容器40を製造することができて、再封止の作業が一層容易である。
【0043】
(その他の実施形態)
なお、本発明のヒートシール容器、ヒートシール容器入り食品、ヒートシール容器の製造装置は、図面を参照して説明した上述の各実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が考えられる。
例えば、上記各実施形態では、容器本体20は平面視矩形状をなしているが、その平面視形状については何ら限定するものではなく、平面視円形状、楕円形状、多角形状等、任意の形状であってもよい。
また、ノッチ部28,38の位置、設置数等は、任意の数を設定してもよい。
さらに、補強凸部22rにより容器本体20の外周側面部22の面外方向への変形を抑えるようにしたが、補強凸部22rは必ずしも設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0044】
10、40 ヒートシール容器
20、50 容器本体
21 底板部
22 外周側面部(外周側面部)
22t 上端部
22r 補強凸部(補強部)
23 フランジ部
23L 縁部
24 収容部
25 凹溝部
25b 底板部(底部)
26 凸条部
27 切り込み
28,38 ノッチ部
29A,29B、39A,39B 係合片(係合部)
30 蓋体
【要約】
【課題】低コストで、開封後に蓋体を再封止できる。
【解決手段】ヒートシール容器10は、被包装物を収容する収容部の上端部から外周側に張り出すフランジ部23を有する容器本体20と、収容部を覆ってフランジ部23に熱溶着する蓋体30とを備える。フランジ部23には、容器本体20の内周側と外周側とを切り離し可能な切り込み27を形成した。フランジ部23の切り込み27に突起状のノッチ部28を有し、ノッチ部28には切り込み部27を挟んだ両側に係合片29A,29Bを形成した。切り込み27を切り離すことで係合片29A,29Bが分離され、蓋体30が容器本体20から開封される。再封止時に、容器本体20を蓋体30で覆い、一方の係合片29Aの上に他方の係合片29Bを載せ、係合片29Aを押圧すると係合片29Aが係合片29Bを乗り越えて係合し、蓋体30を容器本体20に再封止する。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11