(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリオレフィン樹脂(A)が、1−ブテンと他のオレフィンとから得られる共重合体を、さらに酸変性することにより得られることを特徴とする請求項1または2記載の接着剤組成物。
前記ポリオレフィン樹脂(A)1(g)当たりのカルボキシル基の含有量をX(mmol)、酸無水物基の含有量をY(mmol)とした場合に、X+2Yが0.05〜0.6であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の接着剤組成物。
前記ポリオレフィン樹脂(A)をP(g)、前記エポキシ化合物(B)由来のエポキシ基をZ(mmol)とした場合に、Z/[(X+2Y)P]が0.3〜10であることを特徴とする請求項4記載の接着剤組成物。
前記処理剤におけるエポキシ基と反応する官能基が、カルボキシル基、水酸基およびアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項7記載の積層体。
前記処理剤におけるエポキシ基と反応する官能基が、カルボキシル基、水酸基およびアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項10記載の蓄電デバイス用包装材。
請求項9〜11いずれか1項に記載の蓄電デバイス用包装材から形成されてなる蓄電デバイス用容器であって、ヒートシール層が内面を構成している、蓄電デバイス用容器。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、詳細に説明する。なお、本明細書において「任意の数A〜任意の数B」なる記載は、数Aおよび数Aより大きい範囲であって、数Bおよび数Bより小さい範囲を意味する。
本発明の蓄電デバイス用包装材は、
図1に示すように、外層側樹脂フィルム層(11)、外層側接着剤層(12)、金属箔層(13)、内層側接着剤層(14)およびヒートシール層(15)が順次積層されてなるものである。外層側接着剤層(12)は、外層側樹脂フィルム層(11)と金属箔層(13)とを積層(貼りあわせ)する役割を担う。内層側接着剤層(14)は、金属箔層(13)とヒートシール層(15)とを積層(貼りあわせ)する役割を担う。
【0018】
本発明の蓄電デバイス用容器は、本発明の蓄電デバイス用包装材を用いて形成されたものであり、その形態は特に制限されない。好適な例として、
図2に示すようなトレイ状のものが挙げられる。この例において、トレイの内部、即ち、電極や電解質等を収容するための空間を形成する凹面側にヒートシール層(15)が配置され、トレイの外側、即ち、凸面側に外層側樹脂フィルム層(11)が配置される。トレイ状の他、筒状(円筒、四角筒、楕円筒等)のものが例示できる。これらの蓄電デバイス用容器は、通常、平たい状態の蓄電デバイス用包装材を成型加工して得られる。蓄電デバイス用容器の内側、即ち電解液等と接する面は、ヒートシール層(15)である。フランジ部のヒートシール層(15)と、別の蓄電デバイス用包装材を構成するヒートシール層(15)や別の蓄電デバイス用容器のフランジ部のヒートシール層(15)とを対向・接触させ、加熱することにより、ヒートシール層(15)同士を融着させ、電解液や電極等の蓄電デバイス部材を封入する。
本発明の蓄電デバイス用の容器には、トレイ状の他、袋状用の容器(パウチタイプ)もある。
【0019】
蓄電デバイス用容器において、通常、金属箔層(13)を境に電解液に近い側を「内側」、「内層」、遠い側を「外側」、「外層」という。そこで、蓄電デバイス用容器を形成する予定の蓄電デバイス用包装材においても、金属箔層(13)を境に電解液に近くに位置する予定の側を「内側」、「内層」、遠くに位置する予定の側を「外側」、「外層」という。
【0020】
本発明の接着剤組成物は、内層側接着剤層(14)の形成に好適に用いられる。
本発明の接着剤組成物は、カルボキシル基もしくは酸無水物基を有するポリオレフィン樹脂(A)と、2つ以上のエポキシ基を有する化合物であって、芳香族アミノ基もしくはヘテロ原子として窒素原子を有する複素環の少なくとも一方を有するエポキシ化合物(B)とを含有する。カルボキシル基もしくは酸無水物基を有するポリオレフィン樹脂(A)を単にポリオレフィン樹脂(A)と略し、2つ以上のエポキシ基を有する化合物であって、芳香族アミノ基もしくはヘテロ原子として窒素原子を有する複素環の少なくとも一方を有するエポキシ化合物(B)を単にエポキシ化合物(B)と略すこともある。
本発明の接着剤組成物を、金属箔層(13)とヒートシール層(15)との間に挟んだ状態で、ポリオレフィン樹脂(A)中のカルボキシル基もしくは酸無水物基と、エポキシ化合物(B)中のエポキシ基とを反応させることにより、強固な架橋構造を形成し、十分な接着強度を発現でき、より高温の電解質溶液に長期間浸漬されてもその接着強度を高レベルで維持できる。
【0021】
<カルボキシル基もしくは酸無水物基を有するポリオレフィン樹脂(A)>
ポリオレフィン樹脂(A)は、接着剤組成物に使用する溶剤への溶解性や、その溶解した溶液が沈殿せず安定に保管できる(保存安定性を有する)ために、非結晶性を有することが好ましい。一方、積層体における接着剤層としての電解質耐性を向上するためには、結晶性部位も有すことが好ましく、そのバランスが重要となる。本発明で使用する前記ポリオレフィン樹脂(A)は、重量平均分子量が5万〜50万、融点が60〜110℃であり、融解エネルギー(ΔE)が15〜50(mJ/mg)であることが好ましい。
【0022】
ポリオレフィン樹脂(A)は、重量平均分子量(Mw)が5万〜50万であることによって、接着剤組成物を構成するポリオレフィン樹脂(A)の溶液としての保存安定性と、蓄電デバイス用包装材としての電解質耐性、ヒートシール性、塗工性を両立しやすくなる。より好ましくは、ポリオレフィン樹脂(A)のMwは10万〜40万である。
言い換えると、ポリオレフィン樹脂(A)のMwが5万未満であると、ポリオレフィン樹脂(A)のポリマー鎖の絡み合いが不足するため接着剤層の膜強度が低くなり電解質耐性が不足する恐れがある。また、Mwが50万より大きいとポリオレフィン樹脂(A)溶液としての25℃での保存安定性が低下したり、接着剤溶液の粘度が高すぎて塗工性が悪化したりする恐れがある。
【0023】
ポリオレフィン樹脂(A)は、融点が60〜110℃、融解エネルギー(ΔE)が15〜50(mJ/mg)であることによって、電池用包装材としての接着強度(初期、電解
液浸漬後)やヒートシール性をバランスよく満足することができる。
言い換えると、ポリオレフィン樹脂(A)の融点が60℃未満であると、電解液浸漬後の接着強度やヒートシール性が低下する恐れがある。融点が110℃より大きくなると接着強度(初期、電解液浸漬後)が低下する恐れがある。より好ましくはポリオレフィン樹脂(A)の融点は60〜90℃である。
また、ポリオレフィン樹脂(A)の融解エネルギー(ΔE)が15(mJ/mg)未満であると電解液浸漬後の接着強度やヒートシール性が低下し、50(mJ/mg)より大きくなると結晶性が高く、ポリオレフィン樹脂(A)溶液としての保存安定性が低下する場合がある。より好ましくは、ポリオレフィン樹脂(A)の融解エネルギー(ΔE)は、20〜50(mJ/mg)であり、さらに好ましくは20〜40(mJ/mg)である。
【0024】
ここで、ヒートシール性について説明する。
蓄電デバイス用包装材には、[解決しようとする課題]の項の冒頭で述べた2つの性能(接着強度が大きいこと、電解質耐性に優れること)の他に、さらにヒートシール性に優れることも求められる。
蓄電デバイス用包装材を構成するヒートシール層(15)は、前述の通り、熱により、ヒートシール層(15)同士を融着させ、蓄電デバイス用容器内に電解液や電極等の蓄電デバイス部材を封入する機能を担う。大きなヒートシール強度(ヒートシール層(15)同士の剥離強度)を確保するという観点からは、高温・高圧でのヒートシールが好ましいと考えられる。
しかし、ヒートシール時の熱と圧力により、ヒートシール層(15)と金属箔層(13)とを貼り合わせていた接着剤層(14)が溶融したり変形したりすると、電極端子と金属箔層(13)とが導通してしまうおそれがある。導通してしまうと、蓄電デバイスとして機能しない。そこで、電極端子と金属箔層(13)との絶縁性がヒートシールによって損なわれないよう、ヒートシール時の熱と圧力により、接着剤層(14)が溶融したり変形したりしないことが求められる。
融点や融解エネルギー(ΔE)を上記範囲内のポリオレフィン樹脂(A)のものを用いることにより、ヒートシール時の接着剤層(14)の溶融や変形を抑制・防止できる。
【0025】
なお、本発明において「保存安定性がある」とは、トルエン:90gに樹脂:10gを加え、樹脂を加熱溶解し、透明な溶液を得た後、25℃に冷却し、同温で一週間静置して沈殿を生じないものを言う。
【0026】
本発明におけるポリオレフィン樹脂(A)は、カルボキシル基または酸無水物基を有していればよく、例えば、カルボキシル基または酸無水物基を有していないポリオレフィン樹脂(A1)にエチレン性不飽和カルボキシル基またはその酸無水物をグラフト重合させた変性ポリオレフィン樹脂や、オレフィンモノマーとエチレン性不飽和カルボン酸またはその酸無水物との共重合体等が挙げられる。また、酸無水物基を有するポリオレフィンの酸無水物基と、水やアルコールと反応させることによりカルボキシル基を有するポリオレフィンを得ることもできる。カルボキシル基または酸無水物基を有していないポリオレフィン(A1)にエチレン性不飽和カルボキシル基またはその酸無水物をグラフト重合させた変性ポリオレフィン樹脂が好ましい。ポリオレフィン樹脂(A)は単独で使用しても良いし、2種以上を任意に組み合わせて使用しても良い。
ポリオレフィン樹脂(A)中のカルボキシル基または酸無水物基の量については、後述する。
【0027】
ポリオレフィンのグラフト重合方法は、特に限定されないが、例えば特開平11−293216に開示されている方法を用いることができる。
前記ポリオレフィン樹脂(A1)としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、ブタジエン、イソプレン、1−ヘキセン、1−オクテン等のオレフィンモノマーの単独重合体、オレフィンモノマー同士の共重合体、もしくはその他のモノマーとの共重合体、および得られた重合体の水素化物やハロゲン化物など、炭化水素骨格を主体とする重合体を指す。オレフィンモノマー同士の共重合体が好ましい。
【0028】
オレフィンモノマー同士の共重合体としては、1−ブテンと他のオレフィンモノマーとの共重合体が好ましい。他のオレフィンとしては、エチレン、プロピレンが好ましく、1−ブテンと他のオレフィンモノマーとの共重合体としては、エチレンと1−ブテンとの二元共重合体、プロピレンと1−ブテンとの二元共重合体、エチレンとプロピレンと1−ブテンとの三元共重合体が挙げられ、プロピレンと1−ブテンとの二元共重合体がより好ましい。共重合比は、プロピレン:1−ブテン=10:90〜80:20(モル比)であることが好ましく、40:60〜80:20(モル比)であることがより好ましい。プロピレンと1−ブテンの共重合体において、プロピレンが10モル%未満の場合は融点が60℃より低い場合があり、80モル%より多い場合は融点が110℃より高くなる場合がある。
【0029】
オレフィンモノマーに共重合してもよいその他のモノマーとしては、特に限定されず、例えば、
スチレン、α−メチルスチレン、インデン等の芳香族ビニル化合物;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート化合物;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環構造を有する(メタ)アクリレート化合物;
ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香環を有する(メタ)アクリレート化合物;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート化合物;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基を有する(メタ)アクリレート化合物;
(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド類;
(メタ)アクリロニトリル、アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
グラフト重合性の点およびポリオレフィンとの相溶性の点から、スチレン、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートが好ましい。
前記エチレン性不飽和カルボン酸としては、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等が挙げられる。これらエチレン性不飽和カルボン酸またはその酸無水物は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0030】
オレフィンモノマーの重合方法は、特に限定されないが、例えば、特公平07−080948号に開示されている方法などチーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒などの金属触媒や、必要に応じて(メチル)アルミノキサン等の助触媒を添加して、重合することができる。
【0031】
なお、ポリオレフィン樹脂(A)のMwは、以下のようにして求める。
TSKgel superHZM−Nのカラムを2本接続した東ソー株式会社製HLC−8220GPCシステムにより、カラム温度40℃、溶離液にテトラヒドロフラン、流量毎分0.35mlの条件にて測定した。サンプルは、2mgのポリオレフィン樹脂(A)を、5mlのテトラヒドロフランに溶解して調整した。また、Mwは標準ポリスチレン換算で算出した。
ポリオレフィン樹脂(A)を2種以上併用した場合は、その混合物全体の重量平均分子量を意味する。
【0032】
また融点、融解エネルギー(ΔE)は、JIS K7121に準じてDSC測定により求めることができる。具体的には以下のようにして求める。
約10mgのポリオレフィン樹脂(A)の直径または各辺が0.5mm以下の場合はそのまま使用し、0.5mmを超えるものは0.5mm以下に切断して容器に入れる。
毎分10℃で融点より約30℃高い温度まで加熱し、その後毎分10℃でTgより約50℃低い温度まで冷却する。明確なTgが観測されない場合は、融点より約50℃低い温度まで冷却する。その後、毎分10℃で融点より約30℃高い温度まで加熱した際に表れる融解に対応するピークのピークトップより求めた。また、ΔEは、融解に対応するピークが、ベースラインから離れてから再度ベースラインに戻るまでの部分の面積より求める。
ポリオレフィン樹脂(A)を2種以上併用する場合は、融点は高温側のピークのピークトップより求め、ΔEは融解により得られる全てのピーク面積の合計から算出する。
【0033】
ポリオレフィン樹脂(A)としては、市販品を用いることもでき、例えば、スミフィットCK1D(商品名、住友化学株式会社製)、ユニストールP−401、P−802、P−902(商品名)ユーメックス1001、1010、2000(商品名、三洋化成株式会社製)、アウローレン350S、351S、359S、S−5247S、S−5248S、S−5297S、S−5349S、S−5350Sなどが挙げられる。
【0034】
本発明では、発明の効果を損なわない範囲で、カルボキシル基または酸無水物基を有するポリオレフィン樹脂(A)の他に、カルボキシル基または酸無水物基を有さないポリオレフィン樹脂を併用しても良い。カルボキシル基または酸無水物基を有さないポリオレフィン樹脂を併用することにより、水分バリア性を向上させることができる。
【0035】
本発明で使用されるカルボキシル基または酸無水物基を有さないポリオレフィン樹脂としては、例えば、住友化学株式会社製のタフセレンT3712、T3722、T3522(プロピレン系エラストマー)、住友ノーブレン(ポリプロピレン)、三井化学社製タフマーDF&A、タフマーH、タフマーXM、タフマーBL、タフマーM(α−オレフィン共重合体)、株式会社クラレ製のクラプレンLIR−30(イソプレン重合体)、LIR−200(水素化イソプレン重合体)、LBR−300(ブタジエン重合体)、株式会社クラレ製のセプトン2002、2004(以上、水素化スチレン−イソプレン−スチレン共重合体)、2104、4033、HG252(以上、水素化スチレン−イソプレン/ブタジエン−スチレン共重合体)、旭化成ケミカルズ株式会社製のアサプレンT−432、T−437、クレイトンポリマージャパン株式会社製のクレイトンD1155(以上、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、旭化成ケミカルズ株式会社製のタフテックP1500、P2000、MP10(部分水素化スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、H1052、H1043(以上、水素化スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、日本製紙ケミカル株式会社製のスーパークロンC(プロピレン重合体の塩素化物)、日本ポリエチレン株式会社製のレクスパールEMA(エチレン−アクリル酸メチル共重合体)、レクスパールEEA(エチレン−アクリル酸エチル共重合体)、三井・デュポンポリケミカル株式会社製エバフレックス(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、住友化学株式会社製ボンドファースト(エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体)等が挙げられる。これらの樹脂は、そのままでも用いることができ、また特許第4076850号などに示されているような反応、即ち過酸化物から発生するラジカルを利用した熱分解反応により流動性を制御して用いることもできる。これらの中でも接着力および電解液耐性の点から、ポリプロピレン、α−オレフィン共重合体およびそれらの熱分解反応により得られる生成物が好ましい。カルボキシル基または酸無水物基を有さないポリオレフィン樹脂は、接着力や電解液耐性を損なわない範囲の量を添加することができる。カルボキシル基または酸無水物基を有するポリオレフィン樹脂(A)に対し、カルボキシル基または酸無水物基を有さないポリオレフィン樹脂は10〜80重量%が好ましく、より好ましくは10〜50重量%であり、さらに好ましくは10〜30重量%である。
これらは単独で使用しても良いし、2種以上を任意に組み合わせて使用しても良い。
【0036】
次に本発明で使用されるエポキシ化合物(B)について説明する。
エポキシ化合物(B)中のエポキシ基と、前記ポリオレフィン樹脂(A)中のカルボキシル基または酸無水物基とを反応させた強固な架橋構造により、十分な接着強度を発現でき、より高温の電解質溶液に長期間浸漬されてもその接着強度を高レベルで維持できる。
【0037】
本発明で使用されるエポキシ化合物(B)としては、以下に限定されるものではないが、2つ以上のエポキシ基を有する化合物であって、芳香族アミノ基もしくはヘテロ原子として窒素原子を有する複素環の少なくとも一方を有していれば良い。前記芳香属アミノ基は3級であり、前記複素環における窒素は活性水素を有しない。
前記芳香族アミノ基を有する化合物のうち、エポキシ基を2つ有する化合物としては、例えば、
N,N−ビス(2,3−エポキシプロピル)アニリン、
2−メチル−N,N−ビス(2,3−エポキシプロピル)アニリン、
N,N−ジグリシジルアニリン(「GAN」、日本化薬株式会社製)、
N,N−ジグリシジル−2−メチルベンゼンアミン(「GOT」、日本化薬株式会社製)などが挙げられる。
前記芳香族アミノ基を有する化合物のうち、エポキシ基を3つ以上有する化合物としては、例えば、
N,N,N’,N’−テトラキス(2,3−エポキシプロピル)−1,4−フェニレンジアミン、
N,N,N’,N’−テトラキス(オキシラン−2−イルメチル)−4,4’−メチレンビスアニリン(別名:テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、「jER−604」、三菱化学株式会社製)、
N,N−ジグリシジル−4−(グリシジルオキシ)アニリン(別名:N,N−ビス(2,3−エポキシプロピル)−4−(2,3−エポキシプロポキシ)アニリン、「jER−630」、三菱化学株式会社製)などが挙げられる。
その他、Araldite MY0600(商品名、Huntsman社製)、アデカレジンEP−3950S、 3950L、3980S(商品名、株式会社アデカ製)、YH−434、YH−434L(商品名、新日鐵化学株式会社製)なども2つ以上のエポキシ基と、芳香族アミノ基とを有する化合物として例示できる。
【0038】
エポキシ化合物(B)のうち、2つ以上のエポキシ基と、ヘテロ原子として窒素原子を有する複素環を有する化合物としては、例えば、TEPIC−G、TEPIC−S、TEPIC−SP、TEPIC−SS、TEPIC−HP、TEPIC−L、TEPIC−PAS、TEPIC−VL(商品名、日産化学株式会社製)、2,4,6−トリ(グリシジルオキシ)−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン骨格を有するエポキシ化合物などが挙げられる。
これらを単独で使用しても良いし、2種以上を任意に組み合わせても使用しても良い。
【0039】
また、上記エポキシ化合物(B)の一部のエポキシ基を、エポキシ基と反応性を有する化合物で反応させて得られる化合物を、エポキシ化合物(B)として使用してもよい。
エポキシ基と反応性を有する化合物としては、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ジブチルアミン、エチレンジアミン、ベンジルアミン、アニリン等のアミノ基を含有する化合物類;
メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、フェノール等の水酸基を含有する化合物類;
オクチルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等のイソシアネート基を有する化合物類;
酢酸、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸等のカルボン酸を含有する化合物等が挙げられる。
【0040】
本発明で使用されるエポキシ化合物(B)としては、電解質耐性が優れるという理由から、ヘテロ原子として窒素原子を有する複素環を有するものよりも、芳香族アミノ基を有する化合物か好ましく、3つ以上のエポキシ基と、芳香族アミノ基を有する化合物がさらに好ましい。
【0041】
本発明では、前記のエポキシ化合物(B)以外に、前記ポリオレフィン樹脂(A)中のカルボキシル基または酸無水物基と反応するエポキシ化合物(ただしエポキシ化合物(B)を除く)、オキセタン化合物、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物なども添加することができる。
エポキシ化合物(B)以外のエポキシ化合物としては、少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物であれば、特に限定されず、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂やフェノールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、およびそれらの変性エポキシ樹脂やそれらの水添エポキシ樹脂等が挙げられる。
エポキシ化合物(B)以外のエポキシ化合物としては、例えば、DIC社製EPICLON830、840、860や1055、アデカ社製アデカレジンEP‐4100、4400や4901、三菱化学社製jER−828、1001、1003、1010や4004P、新日鉄住金化学社製エポトートYD−128や170などのビスフェノール型エポキシ樹脂;
DIC社製EPICLON N−660やN−740、新日鉄住金化学社製YDPN−638やYDCN−704Aなどのノボラック型エポキシ樹脂;
DIC社製EPICLON N−865やTSR−601、アデカ社製アデカレジンEPR‐4030やEPR−49−23、新日鉄住金化学社製エポトートYD−172やST−3000などの変性エポキシ樹脂や水添エポキシ樹脂;
また、その他の構造のエポキシ化合物としては、ダイセル化学工業社製セロキサイド2021などの脂環式エポキシ化合物、三菱化学社製YX−4000などのビフェニル型エポキシ化合物、三菱ガス化学社製TETRAD−X,Cなどの脂肪族アミノ基含有エポキシ化合物等も使用することができる。
オキセタン化合物は、オキセタン基を有する化合物であれば、特に限定されず、例えば、
東亞合成社製アロンオキセタンOXT−121や221、ETERNACOLL OXMAなどが挙げられる。
イソシアネート化合物は、イソシアネート基を有する化合物であれば、特に限定されず、例えば、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、これらをポリマー化やヌレート化したもの、これらの混合物や他ポリマーとの共重合物などが挙げられる。
カルボジイミド化合物は、カルボジイミド基を有する化合物であれば、特に限定ず、例えば、日清紡ケミカル社製カルボジライトV−01、03、07などが挙げられる。
オキサゾリン化合物は、オキサゾリン骨格を有する化合物であれば、特に限定されず、例えば、日本触媒社製エポクロスRPSなどが挙げられる。
【0042】
本発明で使用されるポリオレフィン樹脂(A)は、接着性および溶解性に優れるという観点から、前記ポリオレフィン樹脂(A)1gあたりのカルボキシル基の含有量がX(mmol)、酸無水物基の含有量がY(mmol)とした場合に、X+2Yが0.05〜0.6であることが好ましい。
X+2Yが0.05未満であると、架橋点となる酸性基が少なく、架橋が十分でなく、十分な接着強度や電解質耐性が得られない場合がある。0.6より大きいと、塗膜の架橋収縮が大きいために接着強度が不十分であったり、溶剤への溶解性が低下したりする場合がある。
【0043】
接着剤組成物中に含まれるポリオレフィン樹脂(A)をP(g)、エポキシ化合物(B)由来のエポキシ基をZ(mmol)とした場合に、Z/[(X+2Y)P]が0.3〜10となる範囲でエポキシ化合物(B)を含み、0.5〜7の範囲で含むことがより好ましい。
Z/[(X+2Y)P]が0.3より小さいと、カルボキシル基または酸無水物基を有するポリオレフィン樹脂(A)のカルボキシル基由来の活性水素に対してエポキシ基の配合量が少ないために、十分な架橋構造が形成されず凝集力が不足し、接着強度、電解質耐性が不足する場合がある。10より大きいと、未反応のエポキシ化合物(B)が過量に存在することで電解質耐性を悪化させる場合がある。
【0044】
本発明で使用されるシランカップリング剤について説明する。
本発明の接着剤には、金属箔との接着強度を高めるため、さらに、シランカップリング剤を含有させることができる。シランカップリング剤としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するトリアルコキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するトリアルコキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシジル基を有するトリアルコキシシラン等が挙げられる。シランカップリング剤の添加量は、接着剤の固形分を基準として0.1〜5質量%であることが好ましく、0.5〜3質量%であることがより好ましい。
【0045】
また、本発明の接着剤には、電解液浸漬後の接着強度を高めるため、さらに、リンの酸素酸またはその誘導体を含有させることができる。リンの酸素酸またはその誘導体の内、リンの酸素酸としては、遊離の酸素酸を少なくとも1個有しているものであればよく、例えば、次亜リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、次リン酸等のリン酸類、メタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、ウルトラリン酸等の縮合リン酸類が挙げられる。また、リンの酸素酸の誘導体としては、上記のリンの酸素酸を遊離の酸素酸を少なくとも1個残した状態でアルコール類と部分的にエステル化されたもの等が挙げられる。これらのアルコールとしては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等の脂肪族アルコール、フェノール、キシレノール、ハイドロキノン、カテコール、フロログリシノール等の芳香族アルコール等が挙げられる。リンの酸素酸またはその誘導体は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。リンの酸素酸またはその誘導体の添加量は、接着剤の固形分を基準として0.01〜10質量%であることが好ましく、0.05〜5質量%であることがより好ましく、0.1〜1質量%であることが特に好ましい。
【0046】
本発明の接着剤は、電解液浸漬後の接着強度を高めるためにエポキシリン酸エステル樹脂を含有させることができる。前記のエポキシリン酸エステル樹脂は、エポキシ樹脂のエポキシ基がリン酸と反応して、エポキシ基が開環し、リン酸エステル結合で、エポキシ樹脂部分とリン酸部分とが結合したものである。
【0047】
好ましいエポキシリン酸エステル樹脂は、下記一般式(1)、(2)で表される化合物である。
【0050】
リン酸と反応するエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ジアリールスルホン型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂およびそれらの変性物などが挙げられる。
【0051】
エポキシリン酸エステル樹脂としては、市販品を用いることもでき、具体的には、URAD−DD79(DSMジャパン社製)が好ましい。更に、前記のURAD−DD79と同等の特性値を有するものも好適に使用することができる。
【0052】
本発明の接着剤は、金属箔との接着強度を高めるため、カテコールまたはその誘導体を含有することができる。具体的には、カテコール、t−ブチルカテコール、アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン、ノルジヒドログアヤレチック酸などが挙げられる。
【0053】
本発明の接着剤組成物は有機溶剤を含むことができる。単独もしくは混合溶剤として本接着剤組成物で使用する材料を溶解でき、エポキシ化合物(B)との反応性が不活性であり、接着剤塗工時の乾燥工程における過熱により揮発させて除去できるものであれば特に限定されない。これらの溶剤の具体例としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系有機溶剤;
n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族系有機溶剤;
シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族系有機溶剤;
メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;
酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;
エタノール、メタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、ヘキサノール等のアルコール系溶剤;
ジイソプロピルエーテル、ブチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ブチルカルビトール等のエーテル系溶剤;
ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングルコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロプレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエステル系溶剤等が挙げられ、これらは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
これらの中でも、ポリオレフィン樹脂(A)の溶液の保存安定性の点から、芳香族系有機溶剤とケトン系溶剤の併用、芳香族系有機溶剤とアルコール系溶剤の併用、脂環族系有機溶剤とケトン系溶剤の併用、脂環俗系有機溶剤とアルコール系溶剤の併用が好ましい。
【0054】
本発明の接着剤組成物において、発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、粘着付与剤、可塑剤等の公知の添加剤を配合しても良い。
本発明で使用できる粘着付与剤としては、ポリテルペン樹脂、ロジン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、スチレン樹脂および水添石油樹脂等が挙げられ、接着強度を向上させる目的で用いられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を任意に組み合わせて使用しても良い。
また、本発明で使用される可塑剤としては、ポリイソプレン、ポリブテン等の液状ゴムやプロセルオイル等が挙げられる。
【0055】
本発明の接着剤組成物は、金属箔層(13)とヒートシール層(15)との積層に好適に使用される。
金属箔層(13)の金属としては、アルミニウム、銅、ニッケル等が挙げられる。これらの金属箔は、各種表面処理を施したものであっても良い。表面処理の例としては、例えば、サンドブラスト処理、研磨処理などの物理的処理や蒸着による脱脂処理、エッチング処理、カップリング剤やコーティング剤を塗布するプライマー処理などの表面処理がある。
表面処理層を形成するための処理剤は、エポキシ基と反応する官能基を含むことが好ましく、より好ましくはカルボン酸、水酸基およびアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基の含むことが好ましい。ここでいうアミノ基とは1級アミンと2級アミン、およびイミノ基のいずれかの意である。このような官能基を含む表面処理層を金属箔層(13)表面に設けることにより、接着剤組成物を熱硬化する際、接着剤層中のエポキシ基と、表面処理層中の前記官能基とが反応することにより、初期接着強度が大きく、電解質耐性に優れた積層体を得ることができる。
【0056】
ヒートシール層(15)は特に限定されるものではないが、ポリオレフィン系フィルムであることが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系共重合体、これらの酸変成物およびアイオノマーからなる群より選ばれた少なくとも1種類の熱可塑性樹脂からなる未延伸フィルムであることが好ましい。ヒートシール層の厚さは特に限定されるものではないが、20〜150μmであることが好ましい。
【0057】
本発明の接着剤組成物を用いてなる積層体は、例えば、以下のようにして得ることができる。
金属箔層(13)(又はヒートシール層(15))の一方の面に、本発明の接着剤組成物を塗工し、溶剤を揮散させ(乾燥させ)、未硬化の接着剤層を形成し、60〜150℃、加圧下に前記未硬化の接着剤層の表面に、ヒートシール層(又は金属箔)を重ねた後、40〜80℃で3〜10日程度静置し、接着剤層を十分硬化させ(エージングとも称する)、金属箔とヒートシール層とを貼り合わせることで、積層体を得ることができる。
接着剤組成物の塗工には、コンマコーター等の一般的な塗工機を用いることができる。また、乾燥硬化時の硬化接着剤層の厚み(量)は、0.5〜10g/m
2程度であることが好ましい。
【0058】
本発明の蓄電デバイス用包装材は、金属箔層(13)の他方の面(本発明の接着剤組成物から形成される内層側接着剤層(14)が接していない面)に、外層側接着剤層(12)を介して外層側樹脂フィルム層(11)を具備することができる。
外層側樹脂フィルム層(11)は、予め接着剤組成物(本発明の接着剤組成物と同じであってもよいし、異なっていてもよい)を用いて、金属箔層(13)に積層されていてもよいし、本発明の接着剤組成物を用いて金属箔層(13)とヒートシール層(15)との積層体を得た後、金属箔層(13)に外層側接着剤層(12)を介して外層側樹脂フィルム層(11)を積層することもできる。
用いられる外層側樹脂フィルム層(11)としては、ポリエステル樹脂やポリアミド樹脂(ナイロン)等の延伸フィルム等が挙げられ、外層側樹脂フィルム層(11)は、積層体を蓄電デバイス用包装材として用い、蓄電デバイス用容器を形成する際、電解質液とは接触しない外側に位置するとなる。
【0059】
本発明の蓄電デバイス用容器は、前述の蓄電デバイス用包装材を用い、外層側樹脂フィルム層(11)が凸面を構成し、ヒートシール層(15)が凹面を構成するように成型して得ることができる。
なお、本発明でいう「凹面」とは、平たい状態の電池用包装材を成型加工して
図2に示すようなトレイ状とした場合に、電解質液を内部に収容し得る窪みを有する面という意であり、本発明でいう「凸面」とは、前記窪みを有する面の自背面(反対側の面、裏側の面)の意である。
【0060】
二次電池等の蓄電デバイスは、電池本体と、前記電池本体の正極と負極にそれぞれ接合されてなる複数の端子と、電池容器と、電解質液とを具備する。前記電池容器は、本発明の接着剤組成物から形成される接着剤層(14)を介して、金属箔層(13)とヒートシール層(15)とが積層されてなる積層体から得られるものであり、前記ヒートシール層が前記電解質液に接する。
【0061】
電解質溶液は、ヒートシール層(15)から金属箔層(13)に向かって浸透し始めるが、本発明の接着剤組成物から形成された接着剤層(14)は、電解質溶液に対する耐性に優れているので、ヒートシール層と金属箔との間の接着強度は低下せず、液漏れ等の問題が発生しない。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例中における各評価は下記の方法に従った。なお、実施例中、%は質量%を、部は質量部を示す。
<カルボキシル基の定量>
秤量した試料a(g)を還流させたキシレン中に溶解させ、室温まで冷却後、フェノールフタレインを指示薬とし、0.1Mのエタノール性水酸化カリウムを用いて滴定することにより定量を行った。指示薬の呈色が10秒間残留した時を滴定の終点とした。滴定量をb(ml)とすると、以下の式からXを求めることができる。
X=0.1*b/a
<酸無水物基の定量>
秤量した試料c(g)を還流させたキシレン中に溶解させ、室温まで冷却後、試料の酸無水物基の当量以上のオクチルアミンd(mmol)を添加した。残存するオクチルアミンを、0.1Mエタノール性過塩素酸を用いて滴定することにより定量を行った。滴定量をe(ml)とすると、以下の式からYを求めることができる。
Y=(0.1*e−d)/c
【0063】
<重量平均分子量>
TSKgel superHZM−Nのカラムを2本接続した東ソー株式会社製HLC−8220GPCシステムにより、溶離液にテトラヒドロフラン、カラム温度を40℃とし、流量毎分0.35mlの条件にて測定した。サンプルは、2mgのポリオレフィン樹脂(A)を、5mlのテトラヒドロフランに溶解して調整した。また、重量平均分子量は標準ポリスチレン換算で算出した。
【0064】
<融点、融解温度エネルギー(ΔE)>
融点、ΔEは、JIS K7121に準じてDSC測定により求めることができる。具体的には以下のようにして求める。
約10mgのポリオレフィン樹脂(A)の直径または各辺が0.5mm以下の場合はそのまま使用し、0.5mmを超えるものは0.5mm以下に切断して容器に入れる。
毎分10℃で融点より約30℃高い温度まで加熱し、その後毎分10℃でTgより約50℃低い温度まで冷却する。明確なTgが観測されない場合は、融点より約50℃低い温度まで冷却する。その後、毎分10℃で融点より約30℃高い温度まで加熱した際に表れる融解に対応するピークのピークトップより求めた。また、ΔEは、融解に対応するピークが、ベースラインから離れてから再度ベースラインに戻るまでの部分の面積より求めた。
ポリオレフィン樹脂(A)を2種以上併用した場合は、融点は高温側のピークのピークトップより求め、ΔEは融解により得られる全てのピーク面積の合計から算出した。
【0065】
<共重合組成比>
ポリオレフィンの共重合組成比は、日本電子株式会社製NMR(JNM−LA400)を用いて、
13Cの測定により求めた。
サンプル20mgを1mlの重クロロホルムに溶解して測定した。エチレン由来のメチレン基は40−50ppmに、プロピレン由来のメチン基は25−30ppmに、1−ブテン由来のメチン基は30−35ppmに含まれる。各ピークの積分比から共重合組成比を求めた。
【0066】
<合成例1>
窒素置換した内容積500mLのガラス製オートクレーブに精製トルエン250mL、メチルアルミノキサンをAl原子換算で0.5mg、ジメチルシリル−ビス−(4,5,6,7,8−ペンタヒドロアズレン−2−イル)ジルコニウムジクロライドをZr原子換算で1.25μg原子を投入し、40℃に昇温した。続いてエチレンとプロピレンを、それぞれ50L/hr、40L/hrの一定速度で供給しながら、40℃で1.32MPaの一定圧力を維持するように1−ブテンモノマーを連続供給し、重合を開始した。40℃、8時間、重合を行った後、イソプロパノールを添加して重合を停止した。得られたポリマー溶液を、多量のメタノールに添加し、ポリマーを析出させた。析出したポリマーをろ過、乾燥することにより、エチレン/プロピレン/1−ブテン=46/33/15(モル比)で共重合されたポリオレフィンを得た。
得られたポリオレフィン20gと、セロソルブアセテート20gとを仕込み、窒素気流下、加熱溶解させ、溶液温度の110℃にした。無水マレイン酸4g、ラウリルメタクリレート2gおよび過酸化ベンゾイル0.6gをセロソルブアセテート239.4gに溶解したものを2時間かけて滴下した。滴下終了後さらに1時間その温度で反応を続けた。得られたポリマー溶液を、多量のメタノールに添加し、ポリマーを析出させた。析出したポリマーをろ過、乾燥することにより、酸無水物基を有するポリオレフィン樹脂(A1)を得た。
ポリオレフィン樹脂(A1)のMw、融点、ΔEは、それぞれ4700、103℃、45mJ/mgであった。
【0067】
<合成例2〜4、6〜8>
表1に示すオレフィン重合時の混合ガスの流量比と重合温度、グラフト重合時のモノマー添加量以外は、合成例1と同様にして酸無水物基を有するポリオレフィン樹脂(A2)〜(A4)、(A6)〜(A8)を得た。
【0068】
<合成例5>
表1に示す混合ガスの流量比、グラフト重合時のモノマー添加量以外は、合成例1と同様にして酸無水物基を有するポリオレフィン樹脂を得た。得られたポリオレフィン樹脂を、85℃、85%RHの環境下に3日間保存することにより、カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂(A5)を得た。
【0069】
<合成例9>
プロピレン−エチレン共重合体(プロピレン/エチレン=82/18質量%、重量平均分子量85000)280gを4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下で加熱溶融させた後、系内温度を180℃に保って攪拌下、酸成分として無水マレイン酸35.0g、ラジカル発生剤としてジ−t−ブチルパーオキサイド6.0gをそれぞれ2時間かけて加え、その後
1時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。この樹脂をさらにアセトンで数回洗浄し、未反応の無水マレイン酸を除去した後、減圧乾燥機中で減圧乾燥して酸変性ポリプロピレン樹脂(重量平均分子量40000)を得た。
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの前記酸変性ポリプロピレン系樹脂、60.0gのテトラヒドロフラン、6.9gのN,N−ジメチルエタノールアミン(酸変性ポリプロピレン樹脂中の酸成分のカルボキシル基に対して1.0倍当量)及び173.1gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を140℃に保ってさらに60分間撹拌した後、ヒーターの電源を切り60℃まで自然冷却した。冷却後60℃に保持し、撹拌及び減圧下で脱溶剤を行い、必要に応じて水を添加し、媒体を水に置換することによりポリオレフィン樹脂(A9)の水分散体を得た。
【0070】
<合成例10>
トリグリシジルシアヌレートは、米国特許第2741607号明細書に準じて以下反応式によりシアヌル酸骨格含有エポキシ化合物(B−1)を合成した。
【化3】
【0071】
【表1】
表1中、記号は以下の通り。
LMA:ラウリルメタクリレート
St:スチレン
【0072】
<処理アルミの作製例1>
ポリカルボン酸樹脂(アクリセット、EMN−260E、日本触媒株式会社製)3.8部と、オルトリン酸2部と、フッ化クロム(III)4部とを蒸留水990部に溶解させ、
さらにオキサゾリン基含有ポリマー(エポクロス WS−700、日本触媒株式会社製)0.2部を溶解させることで、固形分濃度1%の処理剤1を作製した。
脱脂処理を施したアルミニウム箔(40μm)の一方の面に乾燥塗布量50mg/m
2になるように処理液1を塗工し、150℃で乾燥することにより表面処理層にポリカルボン酸樹脂由来のカルボキシル基を有するAL−1を得た。
【0073】
<処理アルミの作製例2>
アミノ化フェノール重合体1部と、フッ化クロム(III)0.5部と、リン酸2部とを
蒸留水346.5部に溶解させることで、固形分濃度1%の処理剤2を作製した。
脱脂処理を施したアルミニウム箔(40μm)の一方の面に乾燥塗布量50mg/m
2になるように処理液2を塗工し、150℃で乾燥することにより表面処理層にアミノ化フェノール重合体由来の水酸基を有するAL−2を得た。
【0074】
<処理アルミの作製例3>
酸化セリウム9.1部と、リン酸ナトリウム塩0.9部と、蒸留水90部とを混合することにより固形分濃度10%の酸化セリウムゾル(処理剤3)を得た。
脱脂処理を施したアルミニウム箔(40μm)の一方の面に乾燥塗布量80mg/m
2になるように処理液3を塗工し、200℃で乾燥することにより表面処理層にリン酸由来の水酸基を有するAL−3を得た。
【0075】
<処理アルミの作製例4>
ポリエチレンイミン4.5部と、アクリル−イソプロペニルオキサゾリン共重合体0.5部と、蒸留水95部と混合させることで、固形分濃度5%の処理剤4を作製した。
処理アルミAL−3の表面処理層面に、さらに乾燥塗布量25mg/m
2となるように処理液4を塗工し、200℃で乾燥することにより表面処理層にポリエチレンイミン由来のアミノ基を有するAL−4を得た。
【0076】
<処理アルミの作製例5>
メチルメタクリレート/ジエチルアミノエチルメタクリレート=80/20の共重合体5部をエタノール95部に溶解させることで、固形分濃度5%の処理剤5を作製した。
脱脂処理を施したアルミニウム箔(40μm)の一方の面に乾燥塗布量80mg/m
2になるように処理液5を塗工し、200℃で乾燥することにより表面処理層にエポキシ基と反応する官能基を有さないAL−5を得た。
【0077】
<添加剤の作製例1>
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた反応容器にjER1001(三菱化学株式会社製BPA型エポキシ樹脂エポキシ当量475)545.5部と、ジエチレングリコールジメチルエーテル259.0部とを仕込んで、加熱溶解させながら、80℃まで昇温した。溶解後、80℃にてアクリル酸59.7部を仕込み、続いてジブチルヒドロキシトルエン0.6部、トリフェニルホスフィン2.4部を仕込み、110℃まで1時間かけて昇温しながら撹拝した。110℃で3時間保持して反応を続行せしめて、酸価が1.0mgKOH/g以下となった所で、80℃にまで下げて、85%リン酸12.1部およびジエチレングリコールジメチルエーテル70.2部からなる混合物を、1時間かけて連続滴下した。滴下終了後も引き続いて、80℃で4時間反応させ、次いで、ジエチレングリコールジメチルエーテル50.5部仕込むことにより、不揮発分が64.0%で、かつ、酸価が9.0なる、リン酸変性エポキシ樹脂(C1)の溶液を得た。
【0078】
<実施例1>
ポリオレフィン樹脂(A1)15部をトルエン/MEK=7/3(重量比)130.3部に加熱溶解した。GAN(日本化薬株式会社製、エポキシ当量125のN,N−ジグリシジルアニリン)を8部添加して攪拌することで、固形分15%の接着剤溶液を得た。
処理アルミAL−1の処理面側に、前記接着剤溶液をバーコーターにて塗布し、100℃、1分間乾燥し、乾燥後の塗布量が約2g/m
2の接着剤層を得た。次いで、前記接着剤層に厚み40μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(以下CPPと呼ぶ)を重ね合わせ、80℃に設定した2つのロール間を通過させ、積層体を得た。その後、得られた積層体を40℃で5日間の硬化(エージング)を行った。こうして、得られたアルミニウム箔/CPPラミネートフィルムを、以下「Al/CPP積層フィルム」と呼ぶ。
後述する方法に従って、初期接着強度、耐溶剤性、電解質耐性を評価した。結果を表2に示す。
【0079】
<実施例2〜4>、<比較例1>
表2、4に示す組成にて、実施例1と同様にして接着剤溶液およびAl/CPP積層フィルムを得、同様に評価した。なお、実施例3は乾燥後の塗布量を約1g/m
2とした。
【0080】
<実施例5〜7、20>、<比較例2〜4>
表2〜4に示す組成にて、実施例1と同様にして接着剤溶液を得た。さらに処理アルミAL−2を使用した以外は、実施例1と同様にしてAl/CPP積層フィルムを得、同様に評価した。
【0081】
<実施例8〜12、21、22>、<比較例5>
表2〜4に示す組成にて、実施例1と同様にして接着剤溶液を得た。さらに処理アルミAL−3を使用した以外は、実施例1と同様にしてAl/CPP積層フィルムを得、同様に評価した。
【0082】
<実施例13〜16>、<比較例6>
表2〜4に示す組成にて、実施例1と同様にして接着剤溶液を得た。さらに処理アルミAL−4を使用した以外は、実施例1と同様にしてAl/CPP積層フィルムを得、同様に評価した。
【0083】
<実施例17〜19、23〜25>
表3〜4に示す組成にて、実施例1と同様にして接着剤溶液を得た。さらに処理アルミAL−5を使用した以外は、実施例1と同様にしてAl/CPP積層フィルムを得た、同様に評価した。
【0084】
【表2】
【0085】
表2〜4中の記号は以下の通り。
P−401:「ユニストールP−401」、三井化学株式会社製、酸変性ポリオレフィン樹脂、固形分酸価55mgKOH/g、加熱残分8%
P−902:「ユニストールP−902」、三井化学株式会社製、酸変性ポリオレフィン樹脂、固形分酸価55mgKOH/g、加熱残分22%
5070:「タフマーXM5070」、三井化学株式会社製、プロピレンと1−ブテンのランダム共重合体
GAN:日本化薬株式会社製、N,N−ジグリシジルアニリン
604:「jER604」、三菱化学株式会社製、N,N,N’,N’−テトラキス(2,3−エポキシプロピル)−1,4−フェニレンジアミン
630:「jER630」、三菱化学株式会社製、N,N−ビス(2,3−エポキシプロピル)−4−(2,3−エポキシプロポキシ)アニリン
3950S:「EP−3950S」、アデカ株式会社社製、エポキシ当量95g/eqのグリシジルアミン型エポキシ化合物
B−2:アデカレジンEM−0517(アデカ株式会社製、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂)を水で固形分濃度10%に希釈したもの
B−3:バソナートHW−100(BASF社製非ブロック型の多官能イソシアネート化合物、イソシアネート含有率約17%)を水で固形分濃度10%に希釈したもの
860:「EPICLON860」、DIC株式会社製、エポキシ当量245g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂
TETRAD−C:三菱がス化学株式会社製、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン
YD:「YD−172」、新日鉄住金株式会社製、ダイマー酸変性エポキシ樹脂、エポキシ当量650
TEPIC:「TEPIC−PAS」、日産化学工業株式会社社製、イソシアヌレート骨格含有エポキシ化合物
TG−G:「TG−G」、四国化成工業株式会社製、エポキシ基含有グリコールウリル誘導体
KBM−303:信越化学株式会社製、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
TPP:トリフェニルホスフィン
DD79:「URAD−DD79」、DSM社製、エポキシフォスフェートエステル
MEK:メチルエチルケトン
MCH:メチルシクロヘキサン
IPA:イソプロパノール
混合溶剤1:トルエン/MEK=7/3(質量比)
混合溶剤2:トルエン/IPA=8/2(質量比)
混合溶剤3:MCH/IPA=8/2(質量比)
【0086】
【表3】
【0087】
【表4】
【0088】
[初期接着強度]
Al/CPP積層フィルムを、25℃、湿度65%の環境下で6時間静置後、それぞれ200mm×15mmの大きさに切断し、ASTM−D1876−61の試験法に準じ、引張り試験機を用いて、25℃、湿度65%の環境下で、荷重速度100mm/分でT型剥離試験を行った。アルミニウム箔/CPP間の15mm巾の剥離強度(N)を5個の試験片の平均値で示す。以下の基準にて判定した。
A :10N以上
B :5N以上〜10N未満
C :5N未満
【0089】
[耐溶剤性、電解質耐性(接着強度の変化)]
初期接着強度試験に用いたのと同様の試験片を、下記の有機溶剤、電解質溶液にそれぞれ2週間または4週間浸漬した。その後、試験片を取り出し約10分程度流水で洗浄し、ペーパーワイパーで水を十分に拭き取った後に試験片の接着強度を、浸漬試験前の接着強度測定と同様にして測定した。以下の基準にて判定した。
A :初期接着強度に対して、変化率が±10%未満
B :初期接着強度に対して、変化率が±30%未満
C :初期接着強度に対して、変化率が±30%以上
[有機溶剤]:40℃のエチレンカーボネート。
[電解質溶液]:1.5mol/lになるように6フッ化リン酸リチウムをエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ジメチルカーボネート=1/1/1(容積比)に溶解した溶液としたもの。温度は85℃とした。
【0090】
表2の実施例1〜19に示すように、接着強度(初期、有機溶剤及び電解質溶液浸漬後)が良好な接着剤を提供することができる。
比較例1および5の接着剤は、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂を含有するものであり、本発明のエポキシ化合物(B)より反応性が落ちるために、有機溶剤や電解質溶液に浸漬後、接着強度が著しく低下する。
比較例2の接着剤は、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂に加え、耐溶剤性の低いイソシアネート化合物を硬化剤に用いるので、比較例1よりさらに耐溶剤性が落ちている。
比較例3および4の接着剤は、リン酸エポキシを用いるので、比較例5に比して耐溶剤性は向上するが、十分な電解質耐性は得られていない。
比較例6の接着剤は、アミノ基を有するエポキシ化合物を用いているが、本発明のエポキシ化合物(B)より反応性が落ちるために、十分な電解質耐性は得られていない。
【0091】
また、各実施例の積層体(長方形)2枚を用い、CPPが内面となるよう3辺をヒートシールし、パウチ(袋)を作成した。擬似電極端子としての2つアルミニウム片を開放端からアルミニウム片同士が相互に接触しないようパウチ内に挿入した(各アルミニウム片の他の端は開放端から外部に出した)。各アルミニウム片を挟んだ状態で開放端を、高温(150〜200℃)、高圧(0.5〜3.0kg/cm
2)でヒートシールしても、接着剤層が溶融したり著しく変形したりすることはなかった。
しかし、硬化剤にイソシアネート化合物を併用した比較例2では、高温・高圧下でヒートシールした場合に接着剤が溶融して端部からはみ出した結果、擬似電極端子とアルミニウムが接触することにより、絶縁性を確保できない場合があった。
【課題】 85℃の電解質溶液に2週間以上浸漬されても接着強度を高レベルで維持できる積層体を形成できる接着剤組成物の提供。従来よりも電解質耐性に優れる蓄電デバイス用包装材、蓄電デバイス用容器および蓄電デバイスの提供。
【解決手段】 カルボキシル基もしくは酸無水物基を有するポリオレフィン樹脂(A)と、2つ以上のエポキシ基を有する化合物であって、芳香族アミノ基もしくはヘテロ原子として窒素原子を有する複素環の少なくとも一方を有するエポキシ化合物(B)とを含有することを特徴とする接着剤組成物。